JP3027548B2 - 液状物からの蛋白質の除去方法 - Google Patents

液状物からの蛋白質の除去方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、キトサンを用いた
液状物からの蛋白質の除去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】清酒や醤油の醸造工程や食品工場におけ
る廃液処理工程をはじめとする各種の蛋白質除去工程に
おいては、蛋白質を凝集し濾過するための凝集剤や濾過
助剤が用いられており、これらの凝集剤や濾過助剤とし
て、これまで多くの種類のものが提案されている。中で
も凝集効果や濾過速度の向上に効果のある方法として、
シリカゾルとキトサンを併用する方法が知られている
(特開平8−322547号公報)。また、凝集剤とし
てキトサンとアルギン酸ソーダを併用する方法も提案さ
れている(特開平2−174654号公報)。
【0003】これらの従来技術において、キトサンを濾
過助剤として用いる場合には、微粉砕したキトサンを粉
末状のまま被処理液に添加している。また、キトサンを
ボディフィード剤として用いる場合には、粉末状のキト
サンをオリに混ぜ込む方法により用いており、プリコー
ト剤として用いる場合には、濾紙にキトサン粉末をまぶ
す方法により用いている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一方、キトサンは熱の
影響を受け易いため微粉化が困難な材料である。上記従
来技術において用いられているキトサン粉末は、例えば
液体窒素により約−20℃〜−10℃で1〜20秒間冷
却した後に粉砕するか、あるいは極めて長時間要する粉
砕工程により粉砕されている。このため、キトサンは極
めて高価な材料となっており、当該分野における利用が
十分に進んでいないのが現状である。
【0005】本発明の目的は、キトサンを用いた液状物
からの蛋白質の除去において、従来から使用されている
キトサン粉末と同等以上の凝集効果及び濾過性能を示
し、より簡便でかつ経済的な蛋白質の除去方法を提供す
ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、蛋白質を含有
する液状物から蛋白質を除去する方法であり、キトサン
溶解液からキトサンを析出させることにより表面をキト
サンで被覆したキトサン被覆物を用い、該キトサン被覆
物に被処理液を接触させて処理することを特徴としてい
る。
【0007】本発明に従う好ましい実施形態の一つにお
いては、蛋白質を含有する液状物に凝集剤としてシリカ
ゾル及び上記キトサン被覆物を添加して蛋白質を凝集除
去する。
【0008】本発明に従う他の好ましい実施形態におい
ては、蛋白質を含有する液状物にシリカゾルを添加して
蛋白質を凝集させ、該凝集物にボディフィード剤として
上記キトサン被覆物を添加混合した後、加圧濾過もしく
は遠心濾過する。
【0009】本発明に従うさらに他の好ましい実施形態
においては、蛋白質を含有する液状物にシリカゾルを添
加して蛋白質を凝集させ、上記キトサン被覆物をプリコ
ートした濾過器を用いて該凝集物を濾過する。
【0010】本発明において用いるキトサン被覆物は、
セルロース、シリカ、ワラストナイト、活性炭、ケイソ
ウ土等の有機または無機の繊維状、鱗片状もしくは粉末
状物質などの芯材の存在下に、キトサン溶解液からキト
サンを析出させることにより、該芯材の表面をキトサン
で被覆したキトサン被覆物である。もっとも、キトサン
被膜は、必ずしも芯材の全面を被覆している必要はな
く、少なくともその表面の一部にキトサンが存在してい
ればよい。従って、キトサン溶解液中に芯材の一部が溶
解しており、キトサンの析出とともに芯材の一部が析出
し、表面にキトサンと芯材とが混在したような状態のも
のも、本発明におけるキトサン被覆物として用いること
ができる。
【0011】キトサン被覆物の具体的な製造方法として
は、例えば、乳酸、酢酸、クエン酸等の酸性溶液にキト
サンを溶解し、このものにセルロース等の芯材を添加し
た後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ
を添加して、芯材の表面にキトサン被膜を形成し、その
後、洗浄、濾過、乾燥する方法を挙げることができる。
このような製造方法において、セルロース等の芯材のよ
うに酸性溶液に一部溶解するものを芯材として用いる場
合には、芯材の一部が溶解し、アルカリ添加により、キ
トサンとともに芯材の一部が析出するが、上述のよう
に、このようなものも本発明のキトサン被覆物に含まれ
る。
【0012】また、キトサンは、キチンを脱アセチル化
することにより製造されるが、製造工程においてキトサ
ン溶解液が生じる場合には、製造工程におけるキトサン
溶解液中に芯材を添加し、芯材の存在下にキトサンを析
出させることによりキトサン被覆物を製造してもよい。
これにより、より簡便でかつ経済的にキトサン被覆物を
製造することができる。
【0013】キトサン被覆物の製造に用いるキトサンと
しては、脱アセチル化度が70%以上のものが好まし
く、さらに好ましくは85%以上のものである。本発明
におけるキトサン被覆物のキトサンの被覆量としては、
特に制限はないが、通常、芯材100重量部に対して5
〜300重量部の割合で被覆したものが用いられる。
【0014】本発明におけるキトサン被覆物の形状とし
ては、粉末状物の場合、粒径1μm〜5mm程度が好ま
しく、繊維状物の場合、繊維径1μm〜1mm程度、ア
スペクト比2〜100程度のものが好ましい。これらの
キトサン被覆物の形状は、芯材の形状を選択することに
より適宜設定することができる。従って、液状物の種類
に応じて、キトサン被覆物の粒子径、比重、比表面積等
を自由に調整することができ、これによってキトサン被
覆物の沈降速度や濾過速度等を適宜設定することができ
る。また、繊維状のキトサン被覆物を抄紙し、濾紙とし
て用いることも可能である。
【0015】本発明において、キトサン被覆物を、蛋白
質を含有する液状物に添加して、凝集剤として用いる場
合、その使用量は、通常、液状物1キロリットル当たり
10〜100g程度が好ましい。また、使用に際して
は、被処理液に直接添加して用いることができる。その
際、シリカゾルを併用すると凝集効果を相乗的に向上さ
せることができる。
【0016】本発明において、キトサン被覆物をボディ
フィード剤として用いる場合、すなわちシリカゾルを添
加して蛋白質を凝集させ、この凝集物にキトサン被覆物
を添加混合する場合のキトサン被覆物の使用量は、上記
凝集剤としての使用量から換算して定めることができ、
凝集前の液状物1キロリットルに対して10〜100g
程度となるような量を添加することが好ましい。
【0017】本発明においてキトサン被覆物を濾過器に
プリコートして用いる場合、すなわち、シリカゾルを添
加して蛋白質を凝集させ、この凝集物を濾過する際にキ
トサン被覆物をプリコートした濾過器を用いて濾過する
場合のキトサン被覆物の使用量は、濾過器の濾過面積の
平方メートル当たり、100g〜2kgが好ましく、さ
らに好ましくは300g〜800gである。
【0018】本発明において用いるシリカゾルとして
は、特に制限はなく、各種の変性または未変性のシリカ
ゾルを用いることができる。通常、シリカ含有量15〜
45重量%程度のシリカゾルが用いられ、市販品として
はコポロック300及び306(大塚化学株式会社製、
シリカ含有量30重量%)等が好ましく用いられる。
【0019】シリカゾルの使用量として、シリカ含有量
30重量%のシリカゾルの場合、通常、蛋白質を含有す
る液状物1キロリットルに対して100〜3000ミリ
リットル程度が好ましく、さらに好ましくは300〜2
000ミリリットル程度である。また、シリカ含有量が
20重量%のシリカゾルの場合には、300〜3000
ミリリットル程度使用するのが好ましい。
【0020】本発明において、キトサン被覆物を凝集剤
として用いる場合は、本発明の効果を損なわない範囲
で、ゼラチン、ペプタイド、小麦蛋白質等の蛋白質、ア
ルギン酸、カラーギナン、寒天等の多糖類、ポリアクリ
ル酸ソーダ等のゲル化剤、柿渋、タンニン酸、PVPP
(ポリビニルポリピロリドン)、シリカゲル、ベントナ
イト、酸性白土、タルク、ミョウバン、活性炭等の吸着
剤、セルロース、ケイソウ土等の濾過助剤の1種または
2種以上を併用してもよい。
【0021】本発明において、キトサン被覆物をボディ
フィードやプリコートに用いる場合は、キトサン被覆物
に加えてケイソウ土やセルロース等の濾過助剤や活性炭
等の吸着剤を適宜混合して使用することができる。
【0022】本発明の蛋白質除去方法は、清酒、味醂、
ワイン、ビール、食酢、醤油、魚醤、果汁等の蛋白質を
含有する液状物の製造工程の原料調整、精製、廃液処理
に至るまでの様々な工程で適用することができる。
【0023】本発明の方法によれば、加圧や水との接触
を伴う濾過工程においても蛋白質の凝集フロックの破壊
が防止され、良好な蛋白質の分離除去が可能となる。ま
た本発明の方法によれば、高価なキトサンの使用をより
少量とすることができ、良好な凝集と迅速な濾過が可能
となる。
【0024】
【実施例】以下、本発明に従う具体的な実施例を示し本
発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例
に限定されるものではない。
【0025】調製例1(キトサン被覆物の調製) 水100mlにキトサン1g及び乳酸(90重量%)5
mlを加えて、キトサンを完全に溶解させ、その中にセ
ルロース(平均繊維径0.7mm、平均繊維長3mm)
を1.5g添加した。次いで水酸化ナトリウム水溶液を
加えて中和し、濾別、水洗、乾燥させ、キトサン被覆物
(キトサン含有率35重量%)2.3gを得た。
【0026】実施例1〜2及び比較例1 清酒に、活性炭(武田薬品工業株式会社製、商品名「特
選白鷺」)を500g/klの割合となるように添加・
攪拌した後、100mlのメスシリンダーに移し、シリ
カゾル(大塚化学株式会社製、商品名「コポロック30
0」、シリカ含有量30重量%)を600ml/klの
割合となるように0.06ml添加・攪拌し、さらに低
分子ゼラチン(株式会社トミヤマ製、「精製ゼラチ
ン」)を3mg添加・攪拌して、24時間後の上澄液及
びオリ部分を以下のようにして濾過し、濾過液の濁度を
測定した。なお、濁度は、日本電色工業株式会社製、N
DH−20D型濁度計で測定した。
【0027】上記濾過は、アドバンテック東洋株式会社
製のNo.5Aの濾紙を使用し、この濾紙に予め米国セ
ライト社製のケイソウ土(商品名「スタンダードスーパ
ーセル」)を酸洗したものを1gプリコートし、さらに
その上に上記調製例1で得られたキトサン被覆物を0.
03g(実施例1)及び0.1g(実施例2)プリコー
トし、このプリコートした濾紙を用いて、上記上澄液及
びオリ部分を吸引濾過し、上述のように、濾過液の濁度
を測定した。
【0028】比較として、比較例1では、濾紙の上にケ
イソウ土のみをプリコートし、キトサン被覆物をプリコ
ートしていない濾紙を用いて同様に上澄液及びオリ部分
を吸引濾過し、濾過液の濁度を測定した。
【0029】これらの測定結果を、表1に「上澄濾過液
濁度」として示す。次に、濾紙上に残ったオリ部分に1
00mlの水を添加し、1.0kgf/m 2 の加圧下で
濾過(水押し)し、このときの濾過液の濁度を測定し
た。測定結果を、表1に「水押し濾過液濁度」として示
す。
【0030】
【表1】
【0031】表1の結果から明らかなように、キトサン
被覆物をプリコートした濾紙を用いて濾過した実施例1
及び2は、比較例1に比べ、上澄濾過液及び水押し後の
濾過液の濁度が小さくなっており、清澄性が著しく向上
していることがわかる。
【0032】実施例3 清酒に、上記実施例と同様の活性炭を500g/klの
割合となるように添加・攪拌した後、100mlのメス
シリンダーに移し、上記実施例と同様のシリカゾルを
0.06ml、上記実施例と同様の低分子ゼラチンを3
mg添加・攪拌し、24時間後に、上記調製例1で調製
したキトサン被覆物を0.1g添加・攪拌した後、上記
実施例と同様のNo.5Aの濾紙に上記実施例と同様の
ケイソウ土を酸洗したものを1gプリコートした濾紙を
用いて、上澄液及びオリ部分を吸引濾過し、上澄液の濾
過液の濁度を測定した。
【0033】次に残ったオリ部分に100mlの水を添
加し、上記実施例と同様に加圧下で濾過(水押し)し、
水押し濾過液の濁度を測定した。測定結果を表2に示
す。なお表2には、比較例1の測定結果を再度示す。
【0034】
【表2】
【0035】表2の結果から明らかなように、キトサン
被覆物をボディフィード剤として用いた場合にも、濾過
液の濁度が小さくなっており、同様に優れた蛋白質除去
性能を示すことがわかる。
【0036】実施例4 清酒に、上記実施例と同様の活性炭を500g/klの
割合となるように添加・攪拌した後、100mlのメス
シリンダーに移し、上記実施例と同様のシリカゾルを
0.06ml、上記実施例と同様の低分子ゼラチンを3
mg、上記調製例1で調製したキトサン被覆物を0.1
g添加・攪拌し、24時間後に上澄液及びオリ部分を、
上記実施例3と同様にして吸引濾過し、上澄液の濾過液
の濁度を測定した。また、オリ部分について水押し後の
濾過液の濁度を測定した。測定結果を表3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】表3の結果から明らかなように、本発明に
従いキトサン被覆物をシリカゾルとともに凝集剤として
用いることにより、水押し後の濾過性能が向上している
ことがわかる。
【0039】
【発明の効果】本発明では、芯材の表面をキトサンで被
覆したキトサン被覆物を用い、蛋白質を含有する液状物
から蛋白質を除去している。このようなキトサン被覆物
は、従来から使用されているキトサン粉末と同等以上の
凝集効果及び濾過性能を有するものであるので、高価な
キトサンの使用をより少量とすることができ、簡便でか
つ経済的な蛋白質の除去を行うことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C12H 1/02 C12H 1/02 // C07K 1/22 C07K 1/22 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01D 37/02 C02F 1/56 JICSTファイル(JOIS)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 蛋白質を含有する液状物から蛋白質を除
    去する方法において、 キトサン溶解液からキトサンを析出させることにより表
    面をキトサンで被覆したキトサン被覆物を用い、該キト
    サン被覆物に被処理液を接触させて処理することを特徴
    とする液状物からの蛋白質の除去方法。
  2. 【請求項2】 蛋白質を含有する液状物にシリカゾル及
    びキトサンを添加して蛋白質を凝集除去する方法におい
    て、 キトサン溶解液からキトサンを析出させることにより表
    面をキトサンで被覆したキトサン被覆物を前記キトサン
    として用いることを特徴とする液状物からの蛋白質の除
    去方法。
  3. 【請求項3】 蛋白質を含有する液状物にシリカゾルを
    添加して蛋白質を凝集させ、さらに該凝集物を濾過する
    方法において、 キトサン溶解液からキトサンを析出させることにより表
    面をキトサンで被覆したキトサン被覆物を前記凝集物に
    添加混合した後、加圧濾過もしくは遠心濾過することを
    特徴とする液状物からの蛋白質の除去方法。
  4. 【請求項4】 蛋白質を含有する液状物にシリカゾルを
    添加して蛋白質を凝集させ、さらに該凝集物を濾過する
    方法において、 キトサン溶解液からキトサンを析出させることにより表
    面をキトサンで被覆したキトサン被覆物を濾過器にプリ
    コートし、該プリコートした濾過器を用いて濾過するこ
    とを特徴とする液状物からの蛋白質の除去方法。
  5. 【請求項5】 キトサン被覆物が、キトサンを溶解した
    酸性水溶液に、セルロース、活性炭及びケイソウ土より
    選ばれる少なくとも1種の芯材を添加した後、アルカリ
    を添加してキトサンを析出させることにより得られるキ
    トサン被覆物である請求項1〜4のいずれか1項に記載
    の液状物からの蛋白質の除去方法。
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