JP2005073679A - 発酵液状食品の滓下げ方法 - Google Patents

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Hiroyasu Nishida
弘泰 西田
Manabu Watanabe
学 渡辺
Noboru Senju
登 千住
Yoshinori Wakamiya
義徳 若宮
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Abstract

【課題】発酵液状食品の滓下げ速度が早く、蛋白混濁物質の凝集沈降分離を行うに要する時間が短縮できる滓下げ方法の提供。
【解決手段】発酵液状食品の蛋白混濁物質の凝集沈降分離を行うに際し、発酵液状食品に、▲1▼シリカゾル、▲2▼ベントナイト、▲3▼高分子量凝集剤の添加順序でそれぞれを添加することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、発酵液状食品の滓下げ方法に関し、さらに詳しくは、シリカゾル、ベントナイト及び高分子量凝集剤を使用した蛋白混濁を生ずる清酒、味醂、ビール、食酢、醤油などの発酵液状食品の滓下げ方法に関するものである。
従来、蛋白混濁を生ずる液状食品、例えば、清酒、味醂、ビール、その他の醸造酒、食酢、醤油などの滓下げ剤としてシリカゾルが使用されてきた。例えば特許文献1には、シリカ微粒子が水に分散したゾルであって、該ゾルのpH4〜6範囲における該微粒子のゼーター電位が負の値で絶対値が35mV以上であることを特徴とする発酵液状食品の滓下げ剤が記載されている。
また、液状物からの蛋白質を、簡単でより効率的に除去する方法として、特許文献2には、蛋白質を含有する液状物に、シリカゾル及び水溶性高分子ゼラチンを添加することを特徴とする方法が記載されている。さらに該公報には、シリカゾル及び水溶性高分子ゼラチンに加えて、さらにゼラチン、ペプタイド、小麦蛋白等の蛋白質、アルギン酸、カラーギナン、寒天、キトサン等の多糖類、ポリアクリル酸ソーダ等のゲル化剤、柿渋、タンニン酸、ポリビニルポリピロリドン、シリカゲル、ベントナイト、酸性白土、タルク、ミョウバン、活性炭等の吸着剤、セルロース、ケイソウ土等の濾過助剤を併用してもよいこと、また、液状物にシリカゾル及び水溶性高分子ゼラチン、場合によりその他の成分を添加する順序としては、特に制限はなく任意の順序で若しくは同時に添加することができることが開示されている。
しかし、従来の滓下げ剤は滓下げ速度の点で必ずしも満足の行くものではなく、改善が望まれていた。
特開2001−352966号公報 特開平10−201463号公報
本発明の目的は、従来技術の問題点を解決し、数種類の滓下げ剤を併用使用することにより、発酵液状食品の滓下げ速度が早く、蛋白混濁物質の凝集沈降分離を行うに要する時間を短縮できる滓下げ方法を提供することにある。
本発明の第1は、発酵液状食品の蛋白混濁物質の凝集沈降分離を行うに際し、発酵液状食品に、▲1▼シリカゾル、▲2▼ベントナイト、▲3▼高分子量凝集剤の添加順序でそれぞれを添加することを特徴とする発酵液状食品の滓下げ方法に関する。
本発明の第2は、前記高分子量凝集剤が、ゼラチン、カラギーナン、アルギン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の発酵液状食品の滓下げ方法に関する。
本発明の第3は、前記発酵液状食品に添加するシリカゾル、ベントナイトおよび高分子量凝集剤の添加量が固形分重量比で、シリカゾルの固形分を100としたとき、ベントナイトが0.5〜35の範囲、高分子量凝集剤が7〜360の範囲にあることを特徴とする請求項1または2記載の発酵液状食品の滓下げ方法に関する。
本発明の発酵液状食品の滓下げ方法は、清酒、味醂、ビール、その他の醸造酒、醤油、食酢、果汁などの蛋白混濁を生ずる液状食品の滓下げに好適な方法である。
通常、発酵液状食品のpHは4〜6の範囲にあり、蛋白混濁物質のゼーター電位(ζ−電位)は負の値で、その絶対値は小さく、せいぜい5mV程度であることが知られている。また、シリカゾル中のシリカ微粒子のゼーター電位はゾルのpH値によって変化するが、通常、pH4〜6範囲では負の値でその絶対値は約15mV以上ある。発酵液状食品中の蛋白混濁物質のゼーター電位とシリカゾル中のシリカ微粒子のゼーター電位との差が大きいためにヘテロ凝集により、小さい凝集体(一次フロック)を形成する。
本発明の発酵液状食品の滓下げ方法では、シリカゾルの添加により、最初に発酵液状食品中の蛋白混濁物質が凝集して形成された一次フロックは負電位を有するが、次いで、ベントナイトを添加すると、ベントナイトが正電位を有するために静電結合により一次フロック同士が結合して、絶対値の小さい負のゼーター電位を有する一次フロックの小さい集合体(二次フロック)を形成する。該二次フロックを含む発酵液状食品に絶対値の大きい負のゼーター電位を有する高分子量凝集剤を添加することにより、該二次フロックが凝集して大きい凝集体(アグリゲイト)形成する。該アグリゲイトは、重力で沈降し上澄み液の清澄部分の占める割合が大きくなる。本発明の方法では、蛋白混濁物質の一次フロックの形成からアグリゲイトの形成までを効率的に行うので蛋白混濁物質の凝集沈降分離を短時間で行うことができる。また、本発明の方法では、沈降分離された凝集体に含まれる発酵液状食品の量が少ないので、発酵液状食品の損失が少ないという効果をも有する。
以下、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明する。
本発明でのシリカゾルは、通常、発酵液状食品の滓下げ剤として使用されるシリカゾルが使用可能である。特に、分散質のシリカ微粒子のゼーター電位がpH4〜6範囲で負の値で絶対値が35mV以上のゼーター電位を有するシリカゾルが好ましく、発酵液状食品中の蛋白混濁物質のゼーター電位とシリカゾル中のシリカ微粒子のゼーター電位との差がー35〜−70mVの範囲にあるのが望ましい。シリカ微粒子のゼーター電位は、超音波方式ゼーター電位測定装置(例えば、Matec社製ESA8000)で測定される。測定条件としては、予め希釈塩酸水溶液で試料シリカゾルのpHを所定の値に調整し、シリカゾルのシリカ微粒子濃度5wt%、温度25℃で行われる。この様なシリカゾルは、例えば、特開2001−352966号公報に記載の方法で製造することができる。
また、本発明でのシリカゾルは、特に、少なくとも2つの異なる粒子径分布をもつシリカ微粒子群が分散してなるゾルが滓下げ速度が速いので好ましい。この様なシリカゾルは、典型的にはシリカ微粒子の粒子径分布分が少なくとも2つのピークを有する分布を示すもので、特公平8−13265号公報に記載されている。
本発明の方法では、発酵液状食品に対して前述のシリカゾルを固形分として30〜1000ppmの範囲で添加することが好ましい。シリカゾルの添加量が固形分として30ppmより少ない場合には、蛋白混濁物質の一次フロックの形成が十分に行われないために蛋白混濁物質の凝集沈降分離に長時間かかることがある。また、該添加量が固形分として1000ppmより多い場合でも、蛋白混濁物質のフロックの形成には1000ppmの場合と変わりがないので経済的でない。
本発明でのベントナイトは、発酵液状食品の滓下げに使用される通常のベントナイトが使用可能である。ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とし、一般に石英、クリストバライト、沸石、長石などを含む粘土状物質の総称である。
本発明の方法では、発酵液状食品に添加するシリカゾルとベントナイトの添加量が固形分重量比で、シリカゾルの固形分を100としたとき、ベントナイトの量が0.5〜35の範囲で添加することが好ましい。ベントナイトの添加量が0.5重量比より少ない場合には、二次フロックの形成能が劣ることがあり、また、該添加量が35重量比より多い場合には、添加したベントナイトが浮遊し、発酵液状食品の濁度が高くなる。
本発明での高分子量凝集剤としては、通常、滓下げ剤として使用される高分子量凝集剤が使用可能であり、例えば、ゼラチン、蛋白質、ペプタイド、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、寒天、キトサン、グルテン、ポリビニルピロリドン、コラーゲン、パパイン、プロテアーゼ、微小繊維状セルロースなどが挙げられる。特に、ゼラチン、カラギーナン、アルギン酸ナトリウムは好適である。
また、本発明の方法では、発酵液状食品に添加するシリカゾルと前記高分子量凝集剤の添加量が固形分重量比で、シリカゾルの固形分を100としたとき、前記高分子量凝集剤の量が7〜360の範囲で添加することが好ましい。高分子量凝集剤の添加量が7重量比より少ない場合には、前述のアグリゲイトの形成が十分に行われずフロック状態のものが沈降しないことがあり、また、該添加量が360重量比より多い場合には、形成されるアグリゲイトが小さくなるため沈降速度が遅くなることがある。
本発明の滓下げ方法では、前述発酵液状食品に前述のシリカゾルを添加、撹拌し、次いで前述のベントナイトを添加、撹拌して、更に前述の高分子量凝集剤を添加、撹拌すると液状食品中の蛋白混濁物質は直ちに凝集沈降する。凝集沈降物は、濾過など通常の方法により分離される。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
実施例1
清酒200ccを撹拌付きビーカーに採集し、活性炭を0.3g添加した。その後30wt%シリカゾル(触媒化成工業(株)製:カタロイド−SI−45P、10nmと37nmに粒径分布のピークを有する。)を0.3g添加して15分間撹拌し、その後1wt%ベントナイト水懸濁液0.2gを添加して15分間撹拌し、さらに1wt%アルギン酸ナトリウム水溶液0.4gを添加し15分間撹拌した。その後静置して1日放置した後、上澄み液濁度を測定した。なお、上澄み液濁度はコロナ式濁度計で測定した。滓下げの試験条件および上澄み液濁度の測定結果を表1に示す。
実施例2〜7
実施例1と同様な方法で清酒200ccに活性炭を0.3g添加した後、シリカゾル、ベントナイト水懸濁液、高分子凝集剤水溶液を表1に示す条件および割合で添加し、上澄み液濁度を測定した。なお、高分子凝集剤は実施例4ではカラギーナンを、実施例5ではゼラチンを使用した。滓下げの試験条件および上澄み液濁度の測定結果を表1に示す。
表1から本発明の方法は、比較例の方法に比較して、上澄み液濁度が低く滓下げ速度が速いことが分かる。
比較例1〜2
実施例1と同様な方法で清酒200ccに活性炭を0.3g添加した後、シリカゾル、ベントナイト水懸濁液、高分子凝集剤水溶液を表1に示す条件および割合で添加し、上澄み液濁度を測定した。滓下げの試験条件および上澄み液濁度の測定結果を表1に示す。
比較例3〜5
実施例1と同様な方法で清酒200ccに活性炭を0.3g添加した後、シリカゾル、ベントナイト水懸濁液、アルギン酸ナトリウム水溶液の添加順序を表1に示す順序に変更して添加し、上澄み液濁度を測定した。滓下げの試験条件および上澄み液濁度の測定結果を表1に示す。
Figure 2005073679

Claims (3)

  1. 発酵液状食品の蛋白混濁物質の凝集沈降分離を行うに際し、発酵液状食品に、▲1▼シリカゾル、▲2▼ベントナイト、▲3▼高分子量凝集剤の添加順序でそれぞれを添加することを特徴とする発酵液状食品の滓下げ方法。
  2. 前記高分子量凝集剤が、ゼラチン、カラギーナン、アルギン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の発酵液状食品の滓下げ方法。
  3. 前記発酵液状食品に添加するシリカゾル、ベントナイトおよび高分子量凝集剤の添加量が固形分重量比で、シリカゾルの固形分を100としたとき、ベントナイトが0.5〜35の範囲、高分子量凝集剤が7〜360の範囲にあることを特徴とする請求項1または2記載の発酵液状食品の滓下げ方法。
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