JP3013688B2 - コンクリート構造物の構築方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、高橋脚等のコンクリ
ート構造物を構築する方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】この種のコンクリート構造物の構築作業
を連続して行う工法として、滑動型枠工法が一般に採用
されている。この工法に用いられる滑動型枠装置として
は、構造物の断面形状に沿って配設された型枠と、該型
枠の外側にあってこれを支持する支持装置と、該支持装
置に固定され構造物に埋設される主筋或いはガイドロッ
ドに反力をとって上昇する上昇ジャッキとを備えたもの
が知られている。

【０００３】そして、該型枠装置を一度セットしてしま
えば、型枠内にコンクリートを打設しつつ前記上昇ジャ
ッキを駆動して型枠を順次上昇させることによりコンク
リート構造物を上方に連続して構築することができ、コ
ンクリートの打設と型枠の組立、解体、再組立の作業サ
イクルを繰返す作業方法に比べ、特に水平断面形状が上
下方向でほぼ同一なコンクリート構造物を短期で構築す
ることができる。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の滑動型枠工法にあっては、コンクリートが十
分に強度を発現しないうちに型枠がその表面に接した状
態でコンクリートとの付着を切りながら上昇するので、
コンクリート表面に擦り傷が生じたり、錆汁等が付着す
るという問題があった。これに対し、以上の問題を改良
する目的で型枠の内面に縁切り用のシート材を設ける方
法も提案されているが、型枠の上昇に伴ってシート材が
共上がりしやすく、共上がりを防止するためには既に構
築されたコンクリート構造物にアンカーをとる必要があ
るといった欠点があった。

【０００５】また、この工法では、型枠上昇時における
安全性を確保するため、上昇作業を小刻みに行わなけれ
ばならないので、上昇作業と並行して行われる配筋作
業，コンクリート打設作業をもその都度中断、再開しな
ければならず、作業管理が煩雑であった。

【０００６】この発明は、以上の問題を解決するもので
あって、その目的は、コンクリート表面の仕上がりを良
好にすることができとともに、配筋、型枠建込み、コン
クリート打設および型枠の解体作業を各作業毎に一括し
て行えるようにし、工期の短縮を図ることができるコン
クリート構造物の構築方法を提供するものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、この発明によるコンクリート構造物の構築方法は、
構築されるコンクリート構造物の断面形状に沿って配置
される複数の型枠パネルと、該型枠パネルの背面を上下
方向に相対摺動する複数の支保工と、該支保工を固定支
持して上昇する作業架台とを備えた自昇式型枠装置を用
いてコンクリート構造物を構築する方法であって、前記
作業架台上において、鉄筋を上方に打ち継いで配筋する
工程と、既に建込まれた型枠パネルの上方に新たな型枠
パネルを建込む工程と、前記型枠パネルの背面を支保工
が相対摺動するように作業架台を上昇して該支保工によ
り型枠パネルを支持する工程と、前記型枠パネル内にコ
ンクリートを打設する工程を順に繰り返すとともに、前
記いずれかの工程と並行して下部に位置する型枠パネル
を解体撤去する工程を行うことを特徴とする。

【０００８】

【作用】以上の構築方法によれば、コンクリートの表面
には型枠パネルが残置され、型枠パネルがコンクリート
の表面を擦ることがないのでコンクリートの表面仕上げ
を良好にすることができる。また、配筋および型枠パネ
ルの建込み、作業架台及び支保工の上昇、コンクリート
の打設、型枠パネルの解体、の各作業を小刻みに中断、
再開することなく、作業毎に一括して行うことができる
ので作業管理が容易である。

【０００９】

【実施例】以下、この発明方法一実施例を図面を用いて
詳細に説明する。図１，図２はこの発明方法を高橋脚構
築に適用した場合の全体構成を示すものである。

【００１０】図における高橋脚１は、地上部に構築され
た基礎２上に例えば４本の中空鋼管３を立設し、中空鋼
管３の周囲を囲んで多数の主筋５を配筋するとともに、
さらにその外周に横筋を構成するＰＣストランド６を巻
回しつつ自昇式型枠装置７によって囲われる内側にコン
クリートＣを打設することによって順次上方に向けて構
築されるものである。

【００１１】前記中空鋼管３の頂部にはＨ形鋼材８が井
桁状に組合わされた状態で設置され、型枠装置７は、Ｈ
形鋼材８から垂下した反力受けとなる多数のＰＣ鋼線９
により吊下されている。また、地上部にはコンクリート
ポンプ車などが配置され、そのホース１２を延ばしつつ
コンクリート打設位置にコンクリートを供給するように
している。

【００１２】型枠装置７は、高橋脚１の断面形状に沿っ
て配置される複数の型枠パネル１５と、型枠パネル１５
の背面側に接し上下方向に相対摺動可能に支持された複
数の支保工１６と、支保工１６の背面側が溶接等によっ
て固定支持された中段作業架台２０ｂ、その上下に配備
された上段作業架台２０ａ、下段作業架台２０ｃが一体
化されてなる作業架台２０とを備えたものである。

【００１３】型枠パネル１５は、図３に示すように、コ
ンクリート構造物の直線部に配置される多数の直線状型
枠パネル１４ａ、またはコーナー部に配置される曲線状
型枠パネル１４ｂからなっている。それぞれの型枠パネ
ル１４ａ，１４ｂの横方向の接合縁部及び上下方向接合
縁部にアングル材からなるブラケット２２ａ，２２ｂが
設けられ、隣接する型枠パネルのブラケット２２ａ，２
２ｂを相互に当接させた状態でボルトナットを締結する
ことによって型枠パネル１４ａ，１４ａ、または１４
ａ，１４ｂが接合される。

【００１４】各支保工１６はほぼ矩形状の中空鋼材から
なり、ほぼ型枠パネル３枚分の高さ寸法を有している。
また、支保工１６の前記型枠パネル１５との摺接面には
図２の一部に拡大して示すように、ハイモラー（商品
名）等の滑り材シート２３が貼着され、型枠装置７の上
昇時における型枠パネル１５との摺動抵抗を減じてい
る。なお、支保工１６は、断面がほぼ円形状の中空鋼材
であってもよいし、矩形状或いは円形状の中実鋼材であ
ってもよいことは勿論である。

【００１５】前記上段作業架台２０ａには、上昇ジャッ
キ２４が配置されているとともに、ＰＣストランド６の
繰出し用の作業台車２５が配置されている。

【００１６】中段作業架台２０ｂは、組立用作業架台で
あり、ここに待機している作業員が、作業台車２５から
繰り出されたＰＣストランド６を主筋５の外周に巻き付
け固定するとともに、ＰＣストランド６の巻き付けが完
了した後に型枠パネル１５の建込みを行う。

【００１７】また下段作業架台２０ｃは前記型枠パネル
の解体用作業架台であり、ここで待機している作業員に
よって取り外された型枠パネル１４ａ，１４ｂは再び作
業架台２０上に戻され、型枠パネル１５の建込みに転用
される。

【００１８】上昇ジャッキ２４は、特に図２に示すよう
に、前記各ＰＣ鋼線９を挿通して型枠装置７の全体を吊
下状態に支持するとともに、この上昇ジャッキ２４を一
斉に駆動することによりＰＣ鋼線９に反力をとって作業
架台２０、支保工１６を尺取り虫状に上昇させる。

【００１９】作業架台２０ｂ上に待機する作業員はこの
ＰＣストランド６の巻き付け間隔の修正を行うととも
に、クリップなどを用いて順次主筋５の外周に固定する
だけで配筋作業が完了する。

【００２０】次に、以上の型枠装置７を用いて高橋脚を
構築する作業手順について図４のタイムテーブルを参照
しながら説明する。

【００２１】この例では、作業開始時刻を午前８時、終
了時刻を午後５時とした一日の作業時間内に１．８ｍ分
のコンクリート構造物を構築する場合を示している。

【００２２】作業開始時刻には中段の作業架台２０ｂが
コンクリート打設面のほぼ天端に位置した状態で停止
し、既に主筋５の周囲には前日の作業によりＰＣストラ
ンド６が巻回固定されている状態となっており、前日の
午後３時に打設が終了から１３時間経過したコンクリー
トが既設の型枠パネルに支持されている。

【００２３】まず、中断の作業架台２０ｂ上において、
既設の型枠パネル１５の上方に新たな型枠パネル１５を
建込む。型枠パネル１４ａ，１４ｂの高さは６０cmであ
るので、作業員の背の高さを考慮して二段分、つまり１
２０cmの高さの型枠パネル１４ａ，１４ｂの建込みが可
能となり、１時間半程度で作業が完了する。

【００２４】なお、この間に既設コンクリート天端のレ
イタンス除去作業などが行われる。型枠パネル１５の建
込み作業が完了したことを確認した後、型枠装置７の上
昇作業が行われる。すなわち、上昇ジャッキ２４を一斉
に駆動することで、支保工１６は型枠パネル１５の背面
に摺接しつつ上昇し、１２０cm上昇した時点でこれらの
背面に当接した状態で停止する。この上昇動作は約３０
分かけて行われる。型枠装置７の上昇時、コンクリート
の表面には型枠パネル１５が残置され、型枠パネル１５
がコンクリートの表面を擦ることがないのでコンクリー
トの表面仕上を良好にすることができる。

【００２５】そして、この上昇作業時間の間に下段作業
架台２１では下部一段分の型枠パネル１４ａ，１４ｂの
解体撤去作業が行われる。

【００２６】次にこの上昇停止位置で６０cmの高さに相
当するＰＣストランド６の巻回固定作業を行い、引き続
き１パネル分の型枠パネルを建込むことで、一日の構築
高さに相当する合計高さ１８０cmの型枠パネル１５が完
成する。

【００２７】その後、型枠装置７を１パネル分である６
０cm上昇させれば、三段分の型枠パネル１４ａ，１４ｂ
によって構成される型枠パネル１５の背面を支保工１６
で支持することになり、コンクリート打設準備が完了す
る。

【００２８】その他の作業を合わせて行うことにより１
２時となり、一時間の昼休み時間を迎える。

【００２９】午後１時以降はコンクリート打設作業が直
ちに開始され、コンクリートホース１２を通じてコンク
リートＣが打設される。コンクリートＣの打設作業は、
段取り、打設、後片付けを含めて午後３時半まで実施さ
れる。このコンクリートＣの打設作業と並行して、下段
作業架台２１では二段分の既存型枠パネル１５の解体撤
去作業およびケレン作業が行われる。露出したコンクリ
ート表面は型枠パネル１４ａ，１４ｂの平滑性に相当し
て美麗であり、左官補修を要することなく、その打放し
表面を仕上げ面とすることができる。また撤去された型
枠パネル１４ａ，１４ｂは上段の作業架台２０ａ上に持
ち上げられ、翌日の型枠パネル１５の建込み作業に転用
される。

【００３０】コンクリートの打設作業が終了した後は再
度ＰＣストランド６の巻き付け作業が翌日の２パネル分
の高さ（１．２ｍ）まで行われる。作業時間は１時間程
度であり、これの終了後に後片付けなどを行うことによ
り、作業終了時刻である午後５時となる。

【００３１】コンクリートの養生時間は打設後から、翌
日型枠パネル１５の建込みまで十分に取ることができ
る。そして、１日で型枠３パネル分のコンクリートの打
設を行うとすると、１日１．８ｍの高さで上昇しつつコ
ンクリート打設作業が行われる。

【００３２】なお、以上のサイクル手順はあくまでも一
例であって、得ようとする構築物の大きさや目標とする
工期などに応じて種々設定できる。また実施例ではこの
発明の型枠装置を高橋脚の構築に適用した場合を説明し
たが、これに限定適用されることなく、コンクリート構
造物であるならばいずれも適用可能であることは勿論で
ある。また、この発明によって構築されるコンクリート
構造物は、矩形状のものに限定されず、壁状のものであ
ってもよい。

【００３３】

【発明の効果】以上実施例によって詳細に説明したよう
に、この発明にかかるコンクリート構造物の構築方法に
あっては、型枠パネルはコンクリート打設後その位置に
残置されたままなので、従来のように摺動摩擦を生ずる
ことがなく、表面が打放しであっても美麗な表面となる
利点がある。

【００３４】また、配筋および型枠パネルの建込み、作
業架台及び支保工の上昇、コンクリートの打設、型枠パ
ネルの解体、の各作業を小刻みに中断、再開することな
く、作業毎に一括して行うことができるので作業管理が
容易であり、合理的な人員配置で作業を行うことができ
工期を短縮することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の構築方法を高橋脚の構築に適用した
場合における全体説明図である。

【図２】図１のＡ−Ａ線断面図である。

【図３】型枠の分解斜視図である。

【図４】同方法における１日の作業のタイムテーブルを
示すサイクル図表である。

【符号の説明】

１ 高橋脚（コンクリート構造物） ５ 縦主筋 ６ ＰＣストランド ７ 型枠装置 ９ ＰＣ鋼線（反力受け） １４ａ，１４ｂ 型枠パネル １５ 型枠パネル １６ 支保工 ２０ 作業架台 ２４ 上昇ジャッキ ２５ 作業台車 ２６ 軌条 Ｃ コンクリート

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) E01D 19/02 E04G 11/06 - 11/34 E04G 21/02 - 21/02 103 E04G 25/00

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 構築されるコンクリート構造物の断面形
   状に沿って配置される複数の型枠パネルと、該型枠パネ
   ルの背面を上下方向に相対摺動する複数の支保工と、該
   支保工を固定支持して上昇する作業架台とを備えた自昇
   式型枠装置を用いてコンクリート構造物を構築する方法
   であって、 前記作業架台上において、鉄筋を上方に打ち継いで配筋
   する工程と、既に建込まれた型枠パネルの上方に新たな
   型枠パネルを建込む工程と、前記型枠パネルの背面を支
   保工が相対摺動するように作業架台を上昇して該支保工
   により型枠パネルを支持する工程と、前記型枠パネル内
   にコンクリートを打設する工程を順に繰り返すととも
   に、前記いずれかの工程と並行して下部に位置する型枠
   パネルを解体撤去する工程を行うことを特徴とするコン
   クリート構造物の構築方法。