JP3033433B2 - 自昇式型枠工法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、高橋脚等のコンクリ
ート構造物の構築に用いて好適な自昇式型枠工法に関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】この種のコンクリート構造物の構築作業
を連続して行う工法として、滑動型枠工法が開発されて
いる。滑動型枠工法は、構造物の断面形状に応じて配置
された型枠を上昇ジャッキにより該構造物に反力をとっ
て小刻みに上昇させつつ型枠内にコンクリートを打設す
ることでコンクリート構造物を上方に連続して構築する
ものであり、コンクリートの打設と型枠の組立、解体、
再組立の作業サイクルを繰返す工法に比べて、コンクリ
ート構造物を短期で構築することができる。

【０００３】ところが、この工法においては、コンクリ
ートが十分に強度を発現しないうちにその表面に接した
まま型枠が上昇するため、コンクリートの表面に擦り傷
や錆汁等による色むらが生じる惧れがあるだけでなく、
型枠がコンクリートの外表面全面に接した状態でコンク
リートとの付着を切りながら該型枠を上昇させるので摺
動抵抗が大きく上昇ジャッキの容量を大きく設定する必
要があるため、装置全体を大型化する必要があった。

【０００４】そこで本出願人は、型枠との間で相対的な
滑りを生じさせる縁切りシートを該型枠の内側に介在さ
せることにより、型枠が上昇する際にその内面がコンク
リートの表面を直接擦ることを防止する工法を既に提案
している。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、型枠の
内側に縁切りシートを介在させる工法にあっては、型枠
とシートとの間に生ずる摩擦力が、シートとコンクリー
トとの間に生ずる摩擦力より大きい場合、シートが型枠
の上昇に引きずられて上昇する、いわゆる共上り現象が
生じ、その結果コンクリート表面に擦れ跡が残る惧れが
あった。

【０００６】これに対し、縁切りシートの共上りを防止
するため、コンクリート構造物の適宜位置に予めアンカ
ーを打っておき、縁切りシートを該アンカーに結合する
ことが考えられるが、型枠の上昇に連動してアンカーを
打つ作業が面倒であるばかりか、縁切りシートをコンク
リート構造物の表面から撤去する際にも該アンカーとの
結合を外す作業が面倒であった。

【０００７】この発明は以上の課題を解決するためにな
されたものであって、その目的は、面倒な作業を伴うこ
となく、縁切りシートの共上りを防止してコンクリート
の表面仕上げを良好にすることができる自昇式型枠工法
を提供することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、請求項１にかかる発明は、コンクリート構造物の断
面形状に沿って型枠を配置するとともに、該型枠の内側
に型枠との間で相対的な滑りを生じさせる縁切りシート
を設け、該縁切りシートの内側にコンクリートを打設
し、該コンクリートの硬化後に前記型枠を上昇する工程
を繰り返すことによりコンクリート構造物を構築する自
昇式型枠工法において、前記型枠を縁切りシートの離接
方向に移動可能とし、前記型枠の上昇前に該型枠を縁切
りシートと離間する方向に移動して型枠と縁切りシート
との面圧を低減し、この状態で前記型枠を上昇した後、
前記型枠を縁切りシートが介在されるコンクリートの打
設位置まで移動しコンクリートの打設に備えることを特
徴とする。

【０００９】また、請求項２にかかる発明は、前記型枠
を接合フランジを介して連結される複数の型枠パネルに
より構成するとともに、該接合フランジ同士を水平方向
のボルトナットにより締結してなり、前記ボルトナット
を緩めることによって前記型枠を水平断面方向に拡開し
て縁切りシートとの面圧を低減する一方、緊締すること
により型枠をコンクリートの打設位置まで移動すること
を特徴とする。

【００１０】さらに、請求項３にかかる発明は、前記型
枠を支保工に対し伸縮駆動機構を介して支持される複数
の型枠パネルにより構成し、該駆動機構の伸縮動作によ
って前記各型枠パネルを水平断面方向に拡開して縁切り
シートとの面圧を低減する一方、縮小することにより型
枠をコンクリートの打設位置まで移動することを特徴と
する。

【００１１】

【作用】以上の自昇式型枠工法によれば、型枠の上昇前
に該型枠を縁切りシートと離間する方向に移動すると、
型枠と縁切りシートとの面圧が低減され、或いは型枠と
縁切りシートとの間に隙間が形成される程型枠が移動し
た場合には両者の面圧が低減する。このため、型枠が上
昇する際に、該型枠の上昇に伴って縁切りシートが共上
がりすることを防止することができる。

【００１２】しかも、型枠とコンクリートとの面圧が低
減されるので、型枠の上昇時における摺動抵抗が小さく
なり、上昇ジャッキ等の上昇手段の容量を小さくするこ
とができ、装置全体の小型化を図ることができる。

【００１３】請求項２の構成とした場合には、型枠上昇
時にボルトナットを緩めるだけで面圧を低減できる。

【００１４】さらに、請求項３の構成とした場合には、
駆動機構の伸縮動作によって面圧の調整ができ、自動化
に好適である。

【００１５】

【実施例】以下、この発明の実施例を図面を用いて詳細
に説明する。図１ないし図４はこの発明の第一実施例を
示すもので、この発明の工法を高橋脚の構築に適用した
場合を例示している。

【００１６】図１，２における高橋脚１は、地上部に構
築された基礎２上に例えば４本の中空鋼管３を立設し、
中空鋼管３の周囲を囲んで多数の主筋５を配筋するとと
もに、さらにその外周に横筋を構成するＰＣストランド
６を巻回しつつ自昇式型枠装置７によって囲われる内側
にコンクリートＣを打設することによって順次上方に向
けて構築されるものである。

【００１７】前記中空鋼管３の頂部にはＨ形鋼材８が井
桁状に組み合わされた状態で設置され、型枠装置７は、
Ｈ形鋼材８から垂下した反力受けとなる多数のＰＣ鋼線
９により吊下されている。

【００１８】型枠装置７は、高橋脚１の断面形状に沿っ
て配置される型枠１５と、型枠１５の背面側に連結され
た多数の支持バー１６と、型枠１５の外方を囲うととも
に各支持バー１６の他端を固定した支保工１８と、支保
工１８の周囲に三段に配備された作業架台１９，２０，
２１を備えている。上部作業架台１９には、前記ＰＣ鋼
線９を挿通する上昇ジャッキ２４が設置され、ジャッキ
２４の駆動によりＰＣ鋼線９に反力をとって型枠装置７
が尺取り虫状に上昇する。

【００１９】型枠１５は、図２及び図３に示すように、
高橋脚１の断面を囲う四枚の型枠パネル１５ａ〜１５ｄ
に分割構成されてなり、その内側には型枠１５と同じく
四枚に分割された縁切り用のシート２６が上下三段に配
置されている。各シート２６は、ポリエチレン，ポリプ
ロピレンなどの滑性のあるやや厚手のシート材から構成
され、型枠１５との間で相対的な滑りを生じさせるもの
である。各シート２６を構成する複数のシート片２６ａ
〜２６ｄの横方向接合端及び上下のシート２６同士はそ
の継ぎ目を粘着テープ等によって連結され、型枠１５の
内側形状に組立てられる。

【００２０】この実施例では、型枠１５を構成する各型
枠パネル１５ａ〜１５ｄの各接合縁部はコーナ部に設け
られ、このコーナ部に該型枠パネルの面から４５°の角
度をなして突設される接合フランジ２８が一体化され、
このフランジ２８に開口された複数の連結孔にボルト３
０ａを挿通し、他方側のナット３０ｂを捩じ込むことに
よって断面方向に縮小しつつ締結され型枠１５が形成さ
れる。

【００２１】なお、前記支持バー１６は各型枠パネル１
５ａ〜１５ｄを支持するが、水平断面方向に対してはル
ーズに結合するか、あるいは適宜な伸縮機構を介して前
記各型枠パネル１５ａ〜１５ｄに連結し、ボルトナット
３０ａ，３ｂの締結及び緩め操作による各型枠パネル１
５ａ〜１５ｄの水平断面方向に対する進退を可能として
いる。

【００２２】また図面では簡略化のために型枠１５およ
び各シート２６を四分割したが、これらの分割数は構築
されるコンクリート構造物の断面寸法や、コーナ部の曲
率に応じて適宣の枚数に設定される。またシート２６は
三段としたが、型枠装置７の上昇ストロークに応じた段
数に任意に設定することができる。なお、この実施例で
は、型枠パネル１５の接合フランジ２８をコーナ部に該
型枠パネルの面から４５°の角度をなして突設したもの
を例示したが、接合フランジ２８をコーナ部以外の直線
部に９０°の角度をなして設けてもよい。この場合、型
枠１５の全断面に対するシート２６との面圧を低減する
ことはできないが、一部の面圧を低減することにより全
体としての面圧低減に寄与することができる。

【００２３】次に以上の構成における構築手順を説明す
る。まず、図４（ａ）に示すように、組立てられた型枠
１５の内側にシート２６が設けられた状態で、コンクリ
ートＣをシート２６の内側に打設し、既設コンクリート
Ｃ1 の上部に打ち継ぐ。

【００２４】シート２６の建込みは、中段の作業架台２
０にて行われる。コンクリートＣの打設圧力によって各
シート２６が型枠１５の内側に密着し、この状態でコン
クリートＣが養生される。なお、この養生期間中に最上
段のシート上に新たなシート２６を継ぎ足す作業や、ス
ライム除去、主筋およびＰＣストランドの配筋作業等が
行われる。

【００２５】コンクリートＣがある程度の強度を発現し
たならば、各型枠パネル１５ａ〜１５ｄ間を締結してい
るボルトナット３０ａ，３０ｂを緩めると、図４（ｂ）
に示すように、型枠パネル１５ａ〜１５ｄは互いに離間
し、シート２６の表面から離間する方向に移動する結
果、型枠１５が全体として水平断面上で拡開する。

【００２６】一方、シート２６はコンクリートＣに付着
した状態で残置される。同図では、型枠１５とシート２
６との間に隙間が形成されるまで型枠１５が移動してお
り、型枠１５とシート２６との面圧が０となっている
が、実際にはこのように完全に両者を離間することなく
両者が接した状態で面圧が低減した状態としてもよい。
次いで、図４（ｃ）に示すように、上昇ジャッキ２４を
駆動して型枠１５および支保工１８とともに型枠装置７
全体を、既に打設されたコンクリートＣの天端が型枠１
５の下端部で支持される程度まで上昇させる。

【００２７】この上昇時においては、型枠１５とシート
２６との間に隙間が形成されており（実際には両者間の
面圧の低減分に対してコンクリートＣに対するシート２
６の付着力が高い状態）、シート２６が型枠１５に引き
ずられることなくコンクリートＣの外面に残置した状態
を維持し、シート２６の共上がりを確実に防止すること
ができる。

【００２８】型枠装置７の上昇動作が完了した後、再び
ボルトナット３０ａ，３ｂを介して各フランジ２８同士
を締結すれば図４（ｄ）に示すように、型枠１５は縮小
して新たに継ぎ足されたシート２６の外表面に密着し、
次のコンクリート打設に備える。

【００２９】この打設作業と並行して、下段の作業架台
２１にて型枠１５の下部から露出したシート２６を解体
し、コンクリートＣの表面から引き剥がせば、露出した
コンクリートＣの表面はシート２６の平滑性に応じて滑
らかであり、良好な表面性が得られることになる。ま
た、この解体されたシート片２６ａ〜２６ｄは、中段の
作業架台２０に運搬されて順次転用される。

【００３０】したがって、以上の作業サイクルを順次繰
返すことにより所要高さの高橋脚１を完成することがで
きる。

【００３１】図５（ａ），（ｂ）はこの発明の第二実施
例を示すものである。図において、型枠１５を構成する
型枠パネル１５ａ〜１５ｄは前記支持バー１６に換えて
伸縮駆動機構、すなわち複数の支持ジャッキ４０を介し
て支保工１８の内側に支持され、各支持ジャッキ４０の
進退動作に応じてシート２６に離接可能としている。し
たがって、この実施例では（ａ）に示すように各型枠パ
ネル１５ａ〜１５ｄがシート２６に接している状態から
（ｂ）に示すように、一斉に支持ジャッキ４０を後退動
作させればシート２６から離間するので、前記第一実施
例のようにボルトナット３０ａ，３０ｂの締結及び緩め
作業が不要となり、作業の自動化を図ることができる。

【００３２】なお、以上の各実施例ではシート２６を所
定位置に建て込んでから型枠１５を上昇させたが、型枠
１５を上昇させてからその内側にシート２６を建て込む
こともできる。

【００３３】さらに、高橋脚以外のコンクリート構造物
にも適用することができることは勿論である。

【００３４】

【発明の効果】以上各実施例によって詳細に説明したよ
うに、この発明にかかる自昇式型枠工法にあっては、コ
ンクリート構造物にアンカーを打つ必要がないので作業
が容易でありながら、型枠の上昇時には型枠とコンクリ
ートとの面圧が低減されるので、型枠の上昇に伴って縁
切りシートが共上がりすることを防止することができ、
美麗なコンクリート表面を得ることができる。

【００３５】また、型枠を上昇する際の摩擦力が低減さ
れるため、型枠を上昇するジャッキ等の駆動動力を小さ
くすることができ、もって装置全体を小型化することが
できる利点もある。

【００３６】さらに、型枠が縁切りシートの離接方向に
移動する構成となっているので、実施例で説明したよう
に、コンクリート構造物が閉断面を有していたり、コー
ナー部を有する形状であっても、縁切りシートの共上が
りを防止することができ、各種形状のコンクリート構造
物に適用することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の第一実施例による全体説明図であ
る。

【図２】図１のＡ−Ａ線断面図である。

【図３】同装置における型枠およびシートを示す分解斜
視図である。

【図４】（ａ）〜（ｄ）は同工法における作業手順の半
断面説明図である。

【図５】（ａ），（ｂ）はこの発明の第二実施例を示す
半断面説明図である。

【符号の説明】

１ 高橋脚（コンクリート構造物） ５ 縦主筋 ６ ＰＣストランド ７ 型枠装置 １５ 型枠 １５ａ〜１５ｄ 型枠パネル １６ 支持バー（支持体） １８ 支保工 ２４ 上昇ジャッキ ２６ 縁切り用シート ２８ フランジ ３０ａ，３０ｂ ボルトナット ４０ 支持ジャッキ Ｃ コンクリート

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) E04G 11/22 E01D 19/02

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 コンクリート構造物の断面形状に沿って
   型枠を配置するとともに、該型枠の内側に型枠との間で
   相対的な滑りを生じさせる縁切りシートを設け、該縁切
   りシートの内側にコンクリートを打設し、該コンクリー
   トの硬化後に前記型枠を上昇する工程を繰り返すことに
   よりコンクリート構造物を構築する自昇式型枠工法にお
   いて、 前記型枠を縁切りシートの離接方向に移動可能とし、前
   記型枠の上昇前に該型枠を縁切りシートと離間する方向
   に移動して型枠と縁切りシートとの面圧を低減し、この
   状態で前記型枠を上昇した後、前記型枠を縁切りシート
   が介在されるコンクリートの打設位置まで移動しコンク
   リートの打設に備えることを特徴とする自昇式型枠工
   法。
2. 【請求項２】 前記型枠を接合フランジを介して連結さ
   れる複数の型枠パネルにより構成するとともに、該接合
   フランジ同士を水平方向のボルトナットにより締結して
   なり、前記ボルトナットを緩めることによって前記型枠
   を水平断面方向に拡開して縁切りシートとの面圧を低減
   する一方、緊締することにより型枠をコンクリートの打
   設位置まで移動することを特徴とする請求項１記載の自
   昇式型枠工法。
3. 【請求項３】 前記型枠を支保工に対し伸縮駆動機構を
   介して支持される複数の型枠パネルにより構成し、該駆
   動機構の伸縮動作によって前記各型枠パネルを水平断面
   方向に拡開して縁切りシートとの面圧を低減する一方、
   縮小することにより型枠をコンクリートの打設位置まで
   移動することを特徴とする請求項１記載の自昇式型枠工
   法。