JP3009383U - 水耕栽培における定植資材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本考案は、植物の栽培において、例えば、ミ
ツバ等の各種野菜、叉はハーブを始めとする水耕栽培全
般に利用可能な定植資材に関する。 【構成】 水耕栽培における定植資材は、栽培槽の水面
上に浮遊状に装置される栽培床と、この栽培床に穿設し
た多数個の嵌合孔と、この嵌合孔に差込まれる播種用の
スポンジブロック１と、からなる水耕栽培装置におい
て、前記スポンジブロックの上面に遮光シート２（黒色
ビニールフィルム）を設けて、当該スポンジブロックの
上面を被覆し、かつこの遮光シートの上方に栽培作物の
葉面が支持される構成である。 【効果】 スポンジブロックよりの水耕液の蒸発防止、
スポンジブロックの塩類集積発生を回避できる効果、又
は植物の枯死及び生育障害（奇形化）等を防止できる。
加工の容易化、取扱いの容易化等が達成される。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、植物の栽培において、例えば、ミツバ等の各種野菜、叉はハーブを 始めとする水耕栽培全般に利用可能な定植資材に関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来、栽培槽（栽培トレイ、水路）の水面上に浮遊状に装置された発泡スチロ ール製の栽培床（栽培ベッド）に多数穿設した嵌合孔に嵌合されるスポンジブロ ック（ウレタンフォーム）を利用して、作物の播種、育成並びに栽培出荷する方 式の水耕栽培が最も一般的である。この場合、ウレタンフォームからの水耕液の 蒸発に伴い、スポンジ表面に水耕液中の塩類が集積することは避けられなかった が、生産量に及ぼす阻害の程度が不明のため、抜本的な対策が放置されてきた。

【０００３】 生長阻害の原因と程度は本明細書の

【実施例】で初めて明らかになることである が、これまでも吸水シート表面に塩類が析出し、乾燥して美観や吸水性を損ねる 点に対しては改善が試みられている。

【０００４】 その改良の一例として、特開昭６４−１３９２４号の水耕栽培器の発明がある 。この明細書中に、毛管吸水シート培地のほぼ全部を被覆カバーで包囲し、当該 毛管吸水シート培地を常に湿潤状態に維持管理する構成が開示されている。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

前述した発明は、確かに塩類の表面析出を緩和する効果を有する。しかし、水 耕栽培器という単体の装置における改良にとどまっている。また弾性を有する毛 管吸水シート培地を被覆カバーで包囲する構成では、毛管吸水シート培地の弾性 がなくなり、その結果として、例えば、次のような課題が考えられる。先ず、本 考案が目的とする嵌合孔に挿設する水耕栽培装置では、嵌合孔へのスムーズな挿 設が達成されず、栽培作業の不合理性、困難性が発生すること、並びに栽培農家 （業者）にとっては、毛管吸水シート培地のほぼ全体が包囲されていることから 、従来の資材と著しく異なり、その適用面で大いに困難が発生する。本考案は、 前述した発明のようなシステムに関するものでなく、栽培資材、即ち定植資材に 塩類集積を防止する対策を施したものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

上記に鑑み、本考案は、塩類集積を防止するための水耕液面上浮遊式の栽培床 に最適な定植資材とすること、又はその際に必要となるスポンジブロックの上面 に遮光シート（黒色ビニールフィルム）を張装し、水耕液の蒸発により塩類が集 積したスポンジブロック表面への子葉の接触による枯死を防止して、栽培作物等 の順調な生育保証すること、等を意図し、下記の構成を採用する。

【０００７】 即ち、本発明の水耕栽培における定植資材は、 栽培槽の水面上に浮遊状に装置される栽培床と、この栽培床に穿設した多数個 の嵌合孔と、この嵌合孔に差込まれる播種用等のスポンジブロックと、からなる 水耕栽培装置において、前記スポンジブロックの上面に黒色ビニールフイルムを 設けて、当該スポンジブロックの上面を被覆する構成とし、この構成された遮光 シート被覆のスポンジブロックにより栽培作物が支持される構成である。

【０００８】

【作用】

以下、本考案の作用及び実際データー等の説明をする。 本考案は、水耕栽培全般に使用されているスポンジブロック群の上面に、当
該 上面を全面覆うように薄い黒色ビニールフィルムを生成或いは接着剤を介して張 装し、当該黒色ビニールフィルムで前記スポンジブロック群の上面を被覆するも のである。この黒色ビニールフィルムで被覆されたスポンジブロック群に、それ ぞれ播種又は移植する。その後、植物が所定の大きさに成長した段階（発芽、幼 苗等の段階）で、ミシン目の入ったスポンジブロック群から各スポンジブロック を分割する。この際に、分割された植物を含むスポンジブロックを栽培槽の液面 上に浮遊する栽培床の嵌合孔に挿設し、当該各スポンジブロックの上面が黒色ビ ニールフィルムで隠蔽される構成とする。このようにスポンジブロックの上面が 黒色ビニールフィルムで隠蔽されているので、水耕液の蒸発が抑制され、前記上 面に塩類が集積されず、塩類への接触による子葉の枯死等の弊害が一掃される。 尚、嵌合孔への挿設の際、黒色ビニールフィルムは、薄いうえ上面の一部である ので、当該黒色ビニールフィルムはスポンジブロックの変形性になじみ、この変 形したスポンジブロックとともに容易に前記嵌合孔に挿設される利点、並びにス ポンジブロック群からの分離等の作業性は従来どおりで、実用的かつ使用の容易 性が維持される。またスポンジブロックの上面のみが隠蔽される構成であるので 、加工は容易である。

【０００９】 以上のようにして、栽培槽において生育させ、所定の大きさに生長した段階で 、従来と同様に栽培床より脱抜し、出荷ケースは出荷パックに収容して市場へ出 荷する。

【００１０】

【実施例】

以下、本考案の一実施例を図面を参照として説明する。

【００１１】 １はスポンジブロック（ウレタンフォーム塊）で、当該スポンジブロック１の 上面１ａには接着剤又は溶着等の手段により遮光シート２（黒色ビニールフィル ム）が設けられている。３は播種用の切込みを示す。スポンジブロック１は方形 に限定されない。

【００１２】 続いて、以下、本考案の遮光シート付き定植資材と従来の定植資材との比較実 験を、実験例として詳述する。尚、本実験により、スポンジブロック表面におけ る水耕液中の塩類集積がそれに接触した子葉を枯死させ、その後の生長を著しく 阻害すること、湿潤したスポンジ表面で繁茂する藻が幼苗の生長点を覆って、高 濃度の塩類が生長点で発生して本葉を奇形させ、成株段階で商品価値を失格させ る、等の生長阻害の実態と程度が明らかになった。

【００１３】 １．目的 ・ 水中発芽した幼苗のウレタンフォームへの定植資材が苗の生育に及ぼす 影響について検討する。

【００１４】 ２．材料 ・ 供試植物：レタス（レッドファイヤーＷ、タキイ種苗）、播種後３日経 過（２７℃、水中発芽処理） ・ 定植資材：ウレタンフォーム（２５mm×２５mm） ３．方法 ・ 従来から使用しているウレタンフォーム（資材Ｃ）、資材Ｃを割ったも の（資材Ｂ）、資材Ｂと同じ様に中央を割ったものの上面に黒色ビニールフ ィル（厚さ）を接着（接着剤）したもの（資材Ａ）を用いた（図１〜図３） 。

【００１５】 ・ 各定植資材に発芽した幼苗を定植した。資材Ａのウレタンフォームは資 材Ｂ、Ｃと比べて目の細かいものを使用した。あらかじめ、接着剤の影響を 調査したところ、成育に問題ないことを確認した。資材Ａの表面加工（ビニ ール貼り）は葉のウレタンへの接触を防ぐためのものである。

【００１６】 ・ 定植資材（Ａ、Ｂ、Ｃ）の生育に及ぼす影響を播種後１６日目の地上部 生体重で比較した。

【００１７】 ・ 播種後３日目から９日目までは２５℃／２３℃、湿度６０％、ＥＣ１． ０mS/cm、ｐH６．０、光強度５，０００lxで栽培した。播種後１０日目以降 は２５℃／２ ３℃、水温２３℃、湿度６０％、ＥＣ２．０mS/cm、ｐH６． ０、光強度１２，０００ｌxで栽培した。

【００１８】 ４．結果および考案 ● 資材Ａおよび資材Ｂは、根をウレタンフォームで挟むようにするため幼根が ウレタンフォームの下に貫通しているが、資材Ｃでは幼根を押し込むように して定植するため、幼根が貫通していない（図４、図５）。資材Ａ、Ｂでは 幼苗に物理的なストレスを与えないですむことがわかった。

【００１９】 ● 資材Ｃのウレタン中では幼根が曲がっており、根に対する物理的なダメージ が発生していた（図６）。植付１日後の根の状態を図７に示した。資材Ｃ幼 根に対するダメージが認められた。

【００２０】 ● 過去の栽培を通じて子葉が枯死する株がみられた（図８、（１）・（２）） 。子葉が早期に枯死するとその後の成長に大きなダメージを受けることが経 験的にわかっている。また、葉が奇形した生育不良株の発生が認められてい る（図９、（１）・（２））。これらは、ウレタンフォームにおける水耕液 の蒸発に伴う塩類集積による障害である。

【００２１】 ● 資材ＢとＣでは子葉の枯死が発生したが、資材Ａでは子葉の枯死が発生しな かった（表１）。本葉の生育障害（奇形化）が資材ＢとＣで認められ、成長 点に対するダメージが確認された（表１）。

【００２２】 ● 播種後１６日目の地上部生体重は資材Ｂ＞資材Ａ＞資材Ｃの順に大きかった （表１）。但し、資材Ａと資材Ｂでは、地上部生体重に有意な差がなかった 。表２に各資材の植付方法別の地上部生体重の度数分布図を示した。また資 材Ａが生育の良さ、バラツキの小さい点で優れた。

【００２３】

【考案の効果】

本考案は、以上で詳述した如く、水耕栽培全般に使用されているスポンジブロ ックの上面を遮光シートで隠蔽する定植資材であるので、加工は容易であり、取 扱いは従来どおりである。当該スポンジブロックよりの水耕液の蒸発防止と、こ の蒸発防止に基づく塩類の集積と析出とを回避できる効果、又は植物の子葉の枯 死による生長阻害及び収穫物の品質の低下（奇形化）等を防止できる卓効が確認 された。また本考案は、スポンジブロックの上面のみを遮光シートで隠蔽する構 成であるので、栽培床の嵌合孔への挿脱が極めて、スムーズかつ簡便である効果 、及び水面浮遊式の栽培床に最適な定植資材である効果、等の実用面での特性が 発揮される。

【図面の簡単な説明】

【図１】図（１）〜（３）は、本考案の定植資材を示し
ており、同図（１）は平面図、同図（２）は側面図、同
図（３）は底面図、である。

【図２】図（１）〜（３）は、従来の定植資材で、中央
クロス状切込みを設けた例を示しており、同図（１）は
平面図、同図（２）は側面図、同図（３）は底面図、で
ある。

【図３】図（１）〜（３）は、従来の定植資材で、中央
クロス状切込みを設けた例を示しており、同図（１）は
平面図、同図（２）は側面図、同図（３）は底面図、で
ある。

【図４】植付直後の資材Ｂと資材Ｃにおけるレタス幼苗
の比較した図である。

【図５】植付直後の資材Ｂと資材Ｃにおけるレタス幼苗
の比較した他の図である。

【図６】植付直後の資材Ｃにおけるレタス幼根（根が曲
がっている。）の状況を示した図である。

【図７】植付１日後の資材Ｂと資材Ｃにおけるレタス幼
苗の外観を示した図である。

【図８】レタス子葉が、集積した高濃度塩類に接触して
枯死し個体の状況を示した図である。

【図９】本葉が生長点で発生している間に高濃度塩類に
接触し、奇形化して展開したレタス個体の状況を示した
図である。

【符号の説明】

１ スポンジブロック ２ 遮光シート ３ 切込み

【手続補正書】

【提出日】平成６年１１月３０日

【手続補正１】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】図面の簡単な説明

【補正方法】変更

【補正内容】

【図面の簡単な説明】

【図１】図（１）〜（３）は、本考案の定植資材を示し
ており、同図（１）は平面図、同図（２）は側面図、同
図（３）は底面図、である。

【図２】図（１）〜（３）は、従来の定植資材で、中央
クロス状切込みを設けた例を示しており、同図（１）は
平面図、同図（２）は側面図、同図（３）は底面図、で
ある。

【図３】図（１）〜（３）は、従来の定植資材で、中央
クロス状切込みを設けた例を示しており、同図（１）は
平面図、同図（２）は側面図、同図（３）は底面図、で
ある。

【図４】植付直後の資材Ｂと資材Ｃにおけるレタス幼苗
の比較した生物の形態を示 した写真である。

【図５】植付直後の資材Ｂと資材Ｃにおけるレタス幼苗
の比較した他の生物の形態 を示した写真である。

【図６】植付直後の資材Ｃにおけるレタス幼根（根が曲
がっている。）の状況を表 す生物の形態を示した写真で
ある。

【図７】植付１日後の資材Ｂと資材Ｃにおけるレタス幼
苗の外観を表す生物の形態 を示した写真である。

【図８】レタス子葉が、集積した高濃度塩類に接触して
枯死し個体の状況を表す生 物の形態を示した写真であ
る。

【図９】本葉が生長点で発生している間に高濃度塩類に
接触し、奇形化して展開したレタス個体の状況を表す生
物の形態を示した写真である。

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 栽培槽の水面上に浮遊状に装置される栽
   培床と、この栽培床に穿設した多数個の嵌合孔と、この
   嵌合孔に差込まれる播種用等のスポンジブロックと、か
   らなる水耕栽培装置において、前記スポンジブロックの
   上面に遮光シートを設けて、当該スポンジブロックの上
   面を被覆する構成とし、この構成された遮光シート被覆
   のスポンジブロックにより栽培作物が支持される構成と
   した水耕栽培における定植資材。
2. 【請求項２】 請求項１の遮光シートが、養分を含んだ
   スポンジ内で藻の発生を防ぐための黒色ビニールフイル
   ムで構成されている請求項１の水耕栽培における定植資
   材。
3. 【請求項３】 請求項１の遮光シートが、スポンジブロ
   ックの上面で生成、又は接着剤を介して設けられている
   請求項１の水耕栽培における定植資材。