JP2001016984A - 果菜類の栽培方法 - Google Patents

果菜類の栽培方法

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JP2001016984A
JP2001016984A JP11190387A JP19038799A JP2001016984A JP 2001016984 A JP2001016984 A JP 2001016984A JP 11190387 A JP11190387 A JP 11190387A JP 19038799 A JP19038799 A JP 19038799A JP 2001016984 A JP2001016984 A JP 2001016984A
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roots
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Masahiro Kodama
政廣 児玉
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Taiyo Kogyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】果菜類の苗の畑土壌への定植に際して、育苗鉢
から苗を抜き取る作業で生じる根の損傷や作業労力を低
減できるとともに、定植後の生育時における葉や茎の過
繁茂に起因する果実収量や品質の低下を抑制できる、果
菜類の栽培方法を提供する。 【解決手段】不透水性で根の貫通を許さないプラスチッ
クのごとき素材により成型され、底部に水の出入りと根
の伸び出しのための穴を多数穿ってある鉢を用いて果菜
類の苗を育成した後、苗を鉢から抜き取ることなく苗を
鉢ごと畑土壌に定植して栽培する。定植時に苗を鉢から
抜き取らないから、根の損傷もなく、定植労力も低減で
きる。定植後に根は鉢底面の穴から伸び出すが、鉢底面
より上方の土壌上層部へ伸び広がらないため、過度の養
水分吸収による葉や茎の過繁茂を抑制できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、果菜類の栽培に好
適な栽培方法に関し、さらに詳しくは、苗の畑土壌への
定植作業に伴う労力を大幅に低減できるとともに、定植
後に葉や茎の過繁茂を抑制して果実の収量増加を図るこ
とができる、新規かつ改良された果菜類の栽培方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に果菜類の育苗は、培養土を充填し
たプラスチック製の鉢に種子を直接播種するか、ないし
は予め別場所で播種し発芽させた小さな苗を移植して、
適度な潅水管理、温度管理などを行い、苗を育成する。
苗が一定の大きさになったら、畑土壌に植え付ける(以
下、定植と称す)。定植の際、苗は鉢から抜き取られ、
根及び根が絡んで鉢状に形成された鉢土(以下、根鉢と
称す)とともに、畑土壌に植え付けられる。
【0003】近年、ごく一部であるが、鉢の材質をプラ
スチックではなく、例えば紙やピートモスなど、透水性
があり根が貫通する材質により成型された鉢を用いて、
上述の方法で苗を作り、定植の際に、鉢を抜かずに鉢ご
と定植する方法が行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のようにして鉢か
ら抜かれて畑土壌に定植された苗は、定植後に根鉢の側
面及び底面より周辺土壌に新しい根を伸ばして生育す
る。また、根が貫通する材質で成型された鉢で育成され
苗は、鉢ごと定植された後、まず根が鉢の側面及び底面
で鉢材料を貫通して鉢の外に伸び出し、以後、上記と同
様に周辺土壌に伸び広がり生育する。
【0005】その際、根は土中深くへ伸び広がるだけで
なく、畑土壌の上層付近にもたくさん伸び広がる。この
ような根の発育の様相は、耕作用に育成されてきた作物
が備えた特性である。また通常、畑土壌の上層は土壌水
分、肥料分、温度、土中酸素量などが、作物が十分生育
できるよう人為的に準備されている。これらによって、
作物の根は広い範囲の土壌から水や肥料を吸収し、葉や
茎を伸ばし、旺盛に生育することとなる。
【0006】ところで、葉や茎を収穫対象物とする葉菜
類の栽培では、葉や茎の旺盛な生育は直接的に収量を高
めることに結びつくが、特に果菜類では、葉や茎の旺盛
な生育が十分な果実収量に結び付くとは限らない。必要
以上に葉や茎の量が増え繁茂すると、繁茂した葉は相互
に光を遮蔽することとなり(相互遮蔽と呼ぶ)、葉の受光
量の低下を起こす。この際、作物はより多く太陽光を受
けようとして、より一層、茎を伸ばし葉を広げる生態的
反応を行う。このため、光合成による同化生産物(糖や
澱粉などの炭水化物)は、葉や茎の生育のために優先的
に消費されることになる。また、葉の相互遮蔽は光合成
を低下させる。このため、同化生産物が蕾や花、果実に
十分供給されなくなり、それら器官の発育が不十分とな
る。作物体が繁茂している割に肝心の果実が着果しなか
ったり、あるいは十分肥大しない症状となる。「過繁
茂」とか「樹ぼけ」「つるぼけ」と一般に呼ばれる状態
であり、果菜類栽培、なかでもトマト栽培でしばしば起
きる。上述した従来の栽培方法およびこれにともなう
「過繁茂」のような作物の生育状態によれば、以下のよ
うな問題を引き起こし、経営栽培上大きな問題となって
いる。
【0007】収量、品質の低下 過繁茂の生育状態となって葉の相互遮蔽が強まると、作
物はより一層、茎を伸ばし葉を広げる生態的反応を行
い、同化生産物をこれらの発育のために優先的に消費す
る。また、葉の相互遮蔽は光合成そのものを低下させ
る。その結果、果実の発育、肥大に必要な花芽、蕾、果
柄などの発達、あるいは果実の成長肥大のために必要で
ある炭水化物が、それら器官に十分供給されなくなる。
このため、それら器官の十分な生育が得られず、落蕾、
落花、落果などの着果不良あるいは果実肥大不良が起こ
り、十分な果実収量が得られなくなる。同化生産物の供
給が不十分なことが要因となって起こる「空胴果」や、
日射量不足等で発生する「すじ腐れ果」など、商品性を
著しく損なう果実の生理障害が起こりやすくなる。ま
た、同化生産物の供給が不十分なことが要因となり、果
実中のビタミン、糖度などの成分が高まらない。これら
の品質低下は、商品性を著しく低下させることとなる。
【0008】病害虫の発生 葉や茎の繁茂は作物群落内の通気を悪くし、群落内の湿
度を高める。このため、「疫病」、「葉かび病」、「灰
色かび病」、「斑点細菌病」など、湿度が高くなると発
生する病害や、「アブラムシ」などの虫害が発生しやす
くなり、作柄を不安定にさせ、収量を低下させる。ま
た、農薬散布回数が増えるなどの労力の増加をもたら
す。
【0009】気象災害の発生 従来方法で定植された作物の根は、上述のごとく土壌の
上層部にたくさんの根を伸ばす。さらにまた、近年の作
物栽培では、土壌温度や水分の制御、雑草の防除などを
目的として、畑土壌の表面をプラスチックフィルムなど
でカバーすることが多い(マルチングと称す)。マルチ
ングされた土壌の表面は、一般に湿潤で酸素が豊富であ
ることから、作物の根は土壌上層部内に止まらず、土壌
の表面にまで根を伸張させる。
【0010】ところで、土壌上層部、とりわけ表面の地
温は外気温度に大きな影響を受ける。このため、外気温
が急激に低下したり上昇した時、表面の根は低温障害な
いし高温障害を受け、枯死することがしばしば起こる。
特に低温障害は冬季しばしば起こる(栽培農家は「寒
害」と呼ぶ)。土壌上層部の根は赤く変色した後枯死
し、茎や葉は萎凋する。このようになると、新しい根が
復活するまでの期間、すなわち1カ月前後、萎凋症状は
つづき、生育が大幅に遅れ、収量が低下することとな
る。
【0011】定植適期の問題 作物の定植適期は作物の種類によって異なるが、例えば
トマトの場合は、第一花房の開花直前が適期と一般にさ
れていて、適期の幅は1〜2日と狭い。しかし、限られ
た人数で定植適期に沢山の苗(通常、数千本)を一つ一
つ鉢から抜き取って短時日の内に定植することは容易で
はない。実際には、定植作業に日数がかかり、適期を過
ぎて定植されることがしばしば起こり、生育不良の一因
になっている。
【0012】移植に伴う「植え痛み」の問題 定植の際の鉢から苗を抜く作業において、鉢の内壁面に
絡み付いたり貼り着いたりしている根や、鉢底の排水穴
より伸び出た根は、鉢から抜かれる際に傷つけられ、生
育の遅延または活着不良の要因となる。一般に「植え痛
み」と呼ばれる症状である。
【0013】定植労力の問題 苗を鉢から抜き取って定植する方法では、根鉢の崩れを
起こさないように、根鉢を丁寧に扱いながら定植する必
要があり、このため作業に時間を費やし、精神的にも気
をつかう作業となる。また、外した鉢の回収にも労力を
要する。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記した課題は全て、従
来方法の鉢育苗及び定植方法によって起こることであ
る。具体的に言えば、の“収量、品質の低下”、の
“病虫害の発生”及びの“気象災害の発生”の問題
は、定植した根鉢の側面より畑土壌の上層部ないし表面
にまで根が伸び出たことが根本要因である。畑土壌上層
部ないし表面に根が伸び出さなければ、上層部にある養
分や水分を吸収することはなく、過度の養水分吸収によ
る葉や茎の過繁茂は起こり得ない。また、土壌表面に根
が伸び出さなければ、急激な気温変化による根の枯死も
起こり得ない。さらに、の“定植適期の問題”、の
“移植に伴う「植え痛み」の問題”及びの“定植労力
の問題”は、定植の際に苗を鉢から抜き取ることにより
起こる問題であり、苗を鉢から抜き取らないで定植でき
れば起こり得ない問題である。
【0015】そこで本発明者は上記の観点から研究を重
ね、上記の課題を効果的に解決できる栽培方法を開発し
たものである。すなわち本発明による果菜類の栽培方法
は、不透水性で根の貫通を許さない素材により成型さ
れ、底部に水の出入りと根の伸び出しのための穴を多数
穿ってある鉢を用いて果菜類の苗を育成した後、苗を鉢
から抜き取ることなく苗を鉢ごと畑土壌に定植して栽培
することを特徴とするものである。
【0016】本発明によれば、苗は鉢ごと定植され、し
かも鉢は根の貫通を許さない素材でできているために、
畑土壌に定植後も根は鉢の側面から伸び出すことがかな
わず、鉢の底部に穿った穴から鉢の外部に伸び出すこと
となる。この結果、定植後の作物の根は畑土壌の上層部
に伸び出すものはほとんど無く、その多くは鉢底面より
深い所、すなわち畑土壌表面から8cm前後の深さより
深い所に伸び出すこととなる。これにより畑土壌中での
根の分布領域が制限され、過度の養水分吸収による葉や
茎の過繁茂は起こらず、葉や茎、花芽や果実がバランス
よく生育している作物を、容易に得ることができる。
【0017】また、作物の根が鉢底面より深い所で十分
に分布した後は、作物の根は伸び出すべき新しい領域と
して、畑土壌の上層部にも伸び広がる。この時は、作
物、特に果菜類は発育の後半期を迎え、葉や茎を優先的
に成長させる時期を終え果実を成長肥大させる時期にな
っており、根が畑土壌の上層部から養水分を吸収しても
過繁茂にはならず、吸収された養分は同化生産物ととも
に、果実の成長肥大に寄与することとなる。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明に使用する鉢の材質は、水
の透過及び根の貫通を許さない素材であればいかなるも
のでもよいが、製造コストや実用性の観点からは、ポリ
エチレンなどのプラスチック製が好ましく使用でき、軟
質性でも硬質性でも良い。鉢の形状は、従来から慣用さ
れている育苗鉢の形状でよい。すなわち上部が開口し、
上部から底部へ向かってやや先細とされた逆円錐形ある
いは逆角錐形とする。鉢の底面に排水用の穴を形成する
点は従来の育苗鉢と同じであるが、特に本発明で使用す
る鉢の底面には、排水用の穴の他に、苗の根が伸び出す
ための複数の穴を形成することが必要となる。
【0019】本発明で使用する鉢の一例を図1に示す。
この鉢は、高さ約100mm、上面直径約120mm、
底面直径約80mmの逆円錐形(図1A参照)であり、
底面中央部に直径18mmの穴1が一つあり、この穴1
の周囲に直径10mmの穴2が8個、等間隔で形成され
ている(図1B参照)。底面は突起部のない平面であ
る。材質は黒色の軟質ポリエチレン製である。
【0020】図2は図1に示した鉢の変形例であり、図
1の鉢と異なる点は、鉢の底面と側面の境の部分(底部
のへりの部分)に、直径約10mmの穴3が4カ所等間
隔でさらに形成されている点である。鉢の底面と側面の
境に穴3を形成することで、苗の根の外部への伸び出し
がより容易となる。なお、本件明細書において“鉢の底
部に多数の穴を穿つ”という表現は、鉢の底面に多数の
穴を形成する態様(図1)や、鉢の底面だけでなく、底
面と側面の境の部分にも穴を形成する態様(図2)をも
包含するものとして用いている。
【0021】なお、底面に多数の穴を穿った鉢は従来か
ら一部の植物栽培で使用されている。例えば、鉢花栽培
でみられる鉢底面から潅水する栽培方法において、底面
からの水の供給及び排水を速やかにする目的で使用され
ているものであり、また別の例では、洋ラン栽培におい
て、鉢内の通気性を高める目的で使用されている。すな
わち、これらの鉢花栽培や洋ラン栽培で使用される鉢
は、本発明で使用される鉢とその形状は類似するもので
あるが、鉢底面から苗の根の伸び出しを行わせることを
目的としている本発明とは使用目的を全く異にし、その
使用方法も相違するものである。
【0022】この鉢を用いての育苗方法は、従来から慣
用されている方法を採用することができる。すなわち、
培養土を鉢の上端数cm残すまで充填し、鉢土に種子を
直接播種するか、ないしは予め別場所で播種し発芽させ
た小さな苗をこの鉢に移植し、上部から適度に潅水を行
って苗を育成する方法である。しかし、より好ましく
は、いわゆる底面給液法である。すなわち、毛管作用を
持つシート状の資材を敷設し、この上に上記方法で播種
ないし移植した鉢を並べて、このシート資材に給水する
ことで、水がシート資材の毛管作用により鉢底面に達
し、鉢底の穴部の土に接して鉢内に浸透し、鉢土壌を給
水する方法である。この底面給液法によれば、苗の根は
鉢の下部、特に底部の穴付近で成長が促進するため、か
ような生育状態の鉢を本発明の方法に従って畑土壌に定
植すれば、定植直後の周辺土壌への根の伸び出しが早
く、苗の活着を促すこととなる。
【0023】なお、上述した育苗方法のうち、鉢上部か
ら灌水を行う方法の場合には、鉢の底面に突起物があっ
ても良いが、底面給液法の場合は、鉢底面がシート資材
と密着する必要があり、そのためには鉢底面に突起部の
ない方が良い。
【0024】十分に生育した苗を本発明の方法に従って
畑土壌に定植する方法の一例を図3に示す。図3の例
は、図1に示した鉢(高さ約10cm)の鉢を用いて底
面給液法で育成した苗(播種後50日前後のトマト苗)
を、鉢ごと畑土壌に植えつけた状態を示しており、鉢の
上端部が畑地表面から約2cm突き出し、鉢底面が畑地
表面から約8cmの深さにあるように植え付けられてい
る。鉢は鉛直方向に植えるのが望ましく、また、鉢の埋
没部分、特に底部は畑土壌と密着することが肝要であ
る。鉢底部と畑土壌との間に空隙ができると、その部分
の根の伸長、発育が不正常になるためである。
【0025】定植後の畑土壌に対する灌水方法として
は、土壌表面に敷設した灌水パイプを用いて行う方法が
一般に普及している。この灌水方法によれば、潅漑水は
土壌の毛管作用によって、潅漑点から水平方向に畑土壌
中に広く拡散し、作物の主茎の基部までいきわたること
となる。ところで、主茎の基部は風による作物の揺さぶ
りや、栽培管理作業の際の不注意で傷がつきやすい。ま
た、作物を犯す病原菌は畑土の中に多数存在するが、特
に表層ほど種類、量とも多い。それ故、傷ついた茎の基
部が、湿った環境に置かれた場合、土の中に存在する病
原菌が傷口から侵入し、「疫病」や「つるがれ病」など
の病害が起こりやすくなる。
【0026】図3に示した例では、鉢の上端部が畑地表
面より約2cm突き出るように鉢を土壌中に埋め込んで
定植しているが、こうすることで、潅水パイプからの潅
漑水が土壌の毛細管作用により作物の主茎基部の方向へ
拡散しようとする際に、土壌表面から突出している鉢上
端部によって潅漑水の拡散は阻止され、作物の主茎基部
の鉢内部表面は常に乾燥状態に維持できるため、上述し
たような主茎基部が湿潤状態となることに起因する病害
発生を抑制することができる。
【0027】定植後の作物生育の様子について、苗を鉢
から抜き取って根鉢として定植する従来法で定植し栽培
したトマトの発育状況を模式的に図4Aに、苗を鉢から
抜き取らずに鉢ごと定植する本発明方法で定植し栽培し
たトマトの発育状況を模式的に図4Bに示す。
【0028】従来法による図4Aは、根は根鉢側面及び
底面からが畑土壌に広範囲にのび広がり、茎が太く、葉
柄が長く、小葉が大きく数も多くなること、並びに、葉
や茎の生育量に比べ、各果房の着果数が少なく果実(図
中の黒色部分)が小さいことを表している。
【0029】本発明方法の図4Bは、根は鉢の底部のみ
から伸び出し畑土壌の上層部への伸び広がりがほとんど
ないこと、茎の太さ、葉柄の長さ、小葉の大きさと数が
適度であり、茎葉と果実の発育がバランス良く、各果房
の着果数や果実(図中の黒色部分)の大きさが良好であ
ることを表している。
【0030】
【実施例】神奈川県のハウス農家にて、下記の栽培方法
および栽培条件でトマト(品種:ハウス桃太郎)の栽培
を行った。 ・10月上旬に播種用トレーに播種し、発芽後、10月
下旬に図1Aに示した形状、材質の鉢に移植し、12月
上旬まで育苗した。播種および育苗用の土壌は、定植用
の栽培ベットの土壌と同じものを用いた。 ・12月上旬に苗をプラスチック製ハウス内の栽培ベッ
トに定植した。定植に際しては、2つあるハウスの一方
のハウスには、苗を鉢から抜き取って根鉢として植える
従来方法で定植し、もう一方のハウスには、苗を鉢から
抜き取らないで鉢ごと植える本発明方法で定植した。両
ハウスとも同じ性質の土壌を使用した。本発明方法の定
植における鉢の埋め込みに際しては、鉢の上端部約2c
mが土壌表面から突き出るようにした。
【0031】・施肥量は10アールあたり成分量とし
て、窒素9.5kg、リン酸9.7kg、カリ8.6k
gとし、使用肥料として、10アールあたり完熟堆肥3
00kg、有機炭100kg、配合肥料(7:7:7)
90kg、NK化成(16:16)20kg、過燐酸石
灰20kgを両ハウスに同じ量与えた。これら肥料を定
植前に、予め植え付け位置の下に、幅30cm、深さ2
0cmの溝を掘り、その中に施肥した。
【0032】・トマトの仕立て方法は「摘芯2本仕立
て」を採用した。 ・栽培土壌表面に潅水チューブを敷設し、さらにその上
からポリエチレンフィルムでマルチングした。定植後、
週1〜3回の割合で潅水した。 ・トマトの交配は「マルハナバチ」を利用した。 ・果実の収穫は3月中旬から始まり、7月上旬まで収穫
した。
【0033】本発明法および従来法による栽培結果の比
較は以下の通りである。 ・定植に要する労力は、従来法は10アールあたり約1
800本を植えるのに大人2名が1日かかった。一方、
本発明法では大人2名が半日以下(従来法の35%)で
済んだ。しかし、本発明では栽培終了時にトマトの株か
ら鉢を取り除く作業が必要となり、その労力は大人1人
が約3時間かかった。かような栽培終了後の労力を加算
した場合でも、本発明においては従来法の50%の労力
節減となった。
【0034】・トマトの茎および葉の発育状況を表1に
示す。 [表1] 平均節間長 最大葉長 最大葉幅 小葉の幅 (cm) (cm) (cm) (cm) 本発明法 6.1 30.3 40.5 4.1 従来法 6.8 42.4 42.8 5.2 表1からわかるように、従来法は節間が長く、複葉の長
さ、幅とも長く、小葉が大きく、明らかに「過繁茂」症
状を呈した。一方、本発明法では、節間が短くなり、複
葉の長さ、幅とも短くなり、小葉も小さくなり、「過繁
茂」を抑制することができた。
【0035】・トマトの着色は本発明法の方が、果実の
色、つやとも従来法より優れた。 ・トマトの果実収量は従来法が10アールあたり約9ト
ンであったのに対し、本発明法では10アールあたり1
0トン強であり、10%以上の収量の増加となった。 ・病虫害の発生は、従来法で「葉かび病」「疫病」の発
生が多く、農薬を週1回の割合で散布した。一方、本発
明法では10日に1回の散布で済み、約30%の労力及
び農薬代の節減となった。
【0036】
【発明の効果】上述したところからわかるように、本発
明によれば次のような効果が奏せられる。
【0037】鉢底部に根の伸び出しのための穴を多数穿
ったことにより、定植後の作物の根が畑土壌の上層部ま
で伸び広がることなく、過度の養水分吸収による過繁茂
が抑制できることから、以下の効果が生ずる。 (1)果実収量の増加 葉や茎の過度の成長が抑えられ、根からの養分や葉から
の同化生産物が葉や茎、蕾や花、果実にバランスよく移
行する。また、葉の相互遮蔽が少ないので、個々の葉に
日光が十分あたり、光合成が促される。これらにより、
蕾や花が十分発育し、落蕾、落花、落果が少なく、十分
な着果と果実肥大が得られ、十分な果実収量が得られる
こととなる。
【0038】(2)果実品質向上 果実への同化生産物の転流が十分なため、「空胴果」の
発生が抑えられる。さらには、果実の受光量が増加する
ので「すじ腐れ果」の発生が抑制される。また、同じ理
由から、果実の糖度、ビタミン濃度が増加する。
【0039】(3)熟期促進 鉢から苗を抜き取って根鉢として定植する従来法では、
果実肥大が遅れる上に、果実が葉の陰に置かれやすくな
り、太陽の直達光を受けにくくなる。これにより、果実
の着色も遅れることとなり、熟期が遅延する。これに対
して本発明によれば、果実肥大が進む上に、果実は葉の
陰に置かれることが少なく太陽光を十分受けることか
ら、果実の着色も早くなり、熟期が促進される。熟期の
促進により、初期収量の増加、栽培期間の延長などの効
果も生まれる。
【0040】(4)栽植密度の増加による収量増加 過繁茂が抑制されることから、果菜類の樹体はコンパク
トになり、作物の植え付け密度を従来より高くすること
が可能となる。一般に作物は、ある範囲内では植え付け
密度が高い程、収量は増加する。例えばトマトの場合、
一般に10アールあたり1,800本前後植え付けられ
るが、本発明によれば植え付け本数は10%前後多く植
え付けることができ、それによる収量増加が得られる。
【0041】(5)病虫害低減 過繁茂が抑制されることから、作物群落内の風通しが良
くなり、群落内の湿度は低下する。このため湿度が高く
なると発生する、「疫病」「葉かび病」「灰色かび病」
「斑点細菌病」などの発生が抑えられ、「アブラムシ」
などの虫害の発生も抑制できることとなる。これによ
り、作柄は安定化し、望ましい果実収量が得られ、農薬
散布などの労力が低減される。
【0042】さらに本発明においては、鉢から苗を抜き
取ることなく、鉢のまま定植するため、以下の効果が生
ずる。 (6)定植労力節減 従来方法における苗を鉢から抜き取る作業や、鉢から抜
き取った根鉢が崩れないよう丁寧に扱いながら植え付け
る作業が不要となるため、定植時間の大幅な短縮とな
る。その結果、1日当たりの定植本数が増加し、従来法
での問題点であった、労力不足による定植遅れや、それ
に起因する生育不良問題も解消される。 (7)移植に伴う「植え痛み」の解消 定植時に鉢から苗を抜き取る作業の際に起きる根の損傷
が生じないため、根の損傷に起因する生育不良である
「植え痛み」が起ることがない。
【0043】さらに、畑土壌への定植に際して、鉢の上
端部が畑土壌表面から若干突き出るような深さに定植し
た場合には、灌水パイプからの潅漑水が鉢内部表面にま
で拡散できず、作物の主茎基部は常に乾燥状態に維持さ
れるため、作物の主茎基部が湿潤状態となることにより
発生しやすい病害を抑制することができ、その結果、作
柄は安定化し、望ましい果実収量が得られ、土壌消毒、
農薬散布などの労力が低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する鉢の一例を示す斜視図(図1
A)および底面図(図1B)である。
【図2】本発明で使用する鉢の変形例を示す斜視図(図
2A)および底面図(図2B)である。
【図3】本発明に従って畑土壌に定植した状態を示す説
明図である。
【図4】定植後のトマトの生育状況を示す模式的説明図
であり、図4Aは従来法によるもの、図4Bは本発明方
法によるものである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 不透水性で根の貫通を許さない素材によ
    り成型され、底部に水の出入りと根の伸び出しのための
    穴を多数穿ってある鉢を用いて果菜類の苗を育成した
    後、苗を鉢から抜き取ることなく苗を鉢ごと畑土壌に定
    植して栽培することを特徴とする果菜類の栽培方法。
  2. 【請求項2】 苗を鉢ごと畑土壌に定植する際に、鉢の
    上端部が畑土壌表面から若干突き出るような深さに定植
    することを特徴とする請求項1記載の栽培方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012060982A (ja) * 2010-09-17 2012-03-29 Japan Research Institute Ltd トマトの栽培方法
CN105875171A (zh) * 2016-06-15 2016-08-24 安徽菲扬农业科技有限公司 一种黄瓜种植方法
CN109644737A (zh) * 2019-02-21 2019-04-19 中国农业科学院农业资源与农业区划研究所 一种土柱栽培装置及施工方法

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