JP3007773B2 - 熱可逆性感熱記録材料における記録部分の消去方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、可視画像を繰り返し表
示、消去することができる熱可逆性感熱記録材料の記録
を消去する方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】交通機関の定期券、催し会場や建物への
入場許可証などは、毎日繰り返し使用されるが、管理上
不正乗車、不正入場をチエツクする手段がない。近年、
一部で磁気カ−ドによるチエツク法も採用されつつある
が、チエツクの有無が目視できないため、装置上のトラ
ブルによるチエツクもれのおそれがあり、管理者、利用
者とも不便を感じていた。また各種プリペイドカ−ドに
おいても、磁気カ−ドやＩＣカ−ドが使用されている
が、記録内容が直接目視できないため、支払い金額や残
額を簡単にチエツクできず、使用者に対する内容保証の
点で問題があった。

【０００３】そのため従来、記録媒体に目視可能な記録
を行い、またそれを消去する方法が提案されている。例
えば、合成樹脂母材の中に有機低分子物質を分散させ、
温度により透明状態と不透明（白濁）状態に変化する材
料（特開昭５５−１５４１９８）を使用することが提案
されている。この材料は、熱処理温度条件を変えること
により透明状態と不透明状態との可逆変化を生じ、室温
においてこれら２水準の状態を維持できるため、それを
利用して可視画像を可逆的に印字・消去することができ
る。

【０００４】この媒体の熱可逆静特性は一般には図２の
ようになっており、Ｔ_ａ〜Ｔ_ｂ間の温度を与えて室温ま
で冷却すると反射濃度が高い状態、すなわち透明状態に
保持され、Ｔ_ｂよりも高い温度を与えて室温まで冷却す
ると反射濃度が低い状態、すなわち不透明（白濁）状態
に保持される。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】この感熱記録材料の印
字・消去の手段としては、各温度に設定された加熱スタ
ンプや加熱ローラーなどが考えられるが、印字・消去の
高速化、および装置の簡易化・コンパクト化などの点か
らサーマルヘツドを用いることが多い。しかしながらサ
ーマルヘツドを用いた場合、Ｔ_ｂよりも高い温度を与え
る（白濁に印字）する場合は問題がないが、Ｔ_ａとＴ_ｂ
の間の温度を与える（透明に消去する）場合、サーマル
ヘツドの処理速度が速くなるにつれて記録層の上層と下
層の温度分布が大きくなり、その温度分布差がＴ_ａ〜Ｔ
_ｂ間の温度域の幅ΔＴよりも大きくなることがあり、そ
の場合にはきれいに消去できないという問題があった。

【０００６】そのため、記録層の膜厚を薄くする方法
や、サーマルヘツドの処理速度を遅くする方法がある
が、前者の場合には記録層のコントラストが悪くなり、
後者の場合には処理時間が大幅に長くなるという問題が
あった。なお、ここで消去すると表現しているのはＴ_ａ
〜Ｔ_ｂ間の温度で処理することであって、記録材料の熱
可逆静特性が図２とは逆になる場合、すなわちＴ_ａ〜Ｔ
_ｂ間の温度で反射濃度が低く不透明（白濁）になる場合
には、白濁に消去すると考えるものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明はこれらの問題を
解決するために、２本以上のサーマルヘツドを用い、そ
れぞれの印加エネルギーを少しずつずらし、消去部分を
まず高い印加エネルギーのサーマルヘツドで消去してか
ら順次低い印加エネルギーのサーマルヘツドで消去して
いく方法を提案するものである。以下この方法について
詳細に述べる。図１は本発明方法が適用される感熱記録
シートの一例の断面図、図３はサーマルヘツドで高エネ
ルギーで消去した場合の記録層内の温度分布を示す図、
図４はサーマルヘツドで低エネルギーで消去した場合の
記録層内の温度分布を示す図、図５は本発明方法におけ
る２本のサーマルヘツドの温度の関係を示す図である。

【０００８】１は基材であり、一般にはポリエチレンテ
レフタレート（ＰＥＴ）などの樹脂シートが用いられ
る。２は感熱記録層であり、１と２の間に記録のコント
ラストを上げるための光反射層があっても良い。３は保
護層であり、サーマルヘツドに接触する層である。必要
であれば各層間にアンカー剤や接着剤の層を設けること
もできる。また図示しないが、通常は磁気記録層などの
情報記録層を有している。

【０００９】ここで図３〜４に示すように、不透明（白
濁）状態にある部分をサーマルヘツド１０により透明に
消去する場合について考える。記録材料が図２に示す熱
可逆静特性特性を示し、サーマルヘツド処理速度が速く
て記録層２内の上下の温度分布差がＴ_ａ〜Ｔ_ｂ間の温度
幅ΔＴよりも大きくなる場合、通常の１本のサーマルヘ
ツドで消去すると記録層２内の温度分布は図３か図４の
ようになってしまう。すなわち、サーマルヘツドの消去
エネルギーを大きくすると、図３に示すように、記録層
の最下層が消去範囲内の最低温度であるＴ_ａになると
き、記録層の上層部は消去範囲内の最高温度であるＴ_ｂ
を越えてしまい、白濁状態で残ってしまう。

【００１０】また、消去エネルギーを小さくすると、図
４に示すように、記録層の最上層が消去範囲内の最高温
度であるＴ_ｂになるとき、記録層の下層部は消去範囲内
の最低温度であるＴ_ａよりも低い温度のため、白濁のま
まで残ってしまう。すなわち記録層の上層から下層まで
すべてきれいに消去することはできない。

【００１１】そこで本発明方法においては、まず１本目
のサーマルヘツド印加エネルギーを図３のような温度分
布が得られるようにして記録層の最下層部を消去する。
この際記録層上層部は白濁してしまうが、それを２本目
のサーマルヘツド印加エネルギーを少なくとも図４の温
度分布が得られるようにして記録層上層部を消去する。
このとき記録層下層部は消去温度域に入っていないが、
既に１本目のサーマルヘツドにより消去されているの
で、透明のままとなっている。この２本のサーマルヘツ
ドの温度の関係を図示すると図５のようになる。

【００１２】すなわち２本のサーマルヘツドを用い、そ
れらの印加エネルギーを少しずらして、消去部分をまず
高い印加エネルギーのサーマルヘツドで消去してから順
次低い印加エネルギーのサーマルヘツドで消去していく
ことにより、記録層の上層から下層まですべてきれいに
消去することが可能となる。

【００１３】また２本のサーマルヘツドでは消去範囲を
カバーしきれない場合や、消去性を確実にするためにマ
ージンを広げたい場合には、上記の方法を考慮して３本
以上のサーマルヘツドで消去することができる。このよ
うに２本以上のサーマルヘツドを使えば、１回のシート
搬送のなかで処理速度を速くしてもきれいに消去するこ
とが可能となる。

【００１４】本発明における記録層２中の高分子樹脂母
材としては、透明で製膜性の良い樹脂が望ましく、ポリ
塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの塩
化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデ
ン共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレ
ン、ポリメチル（メタ）アクリレートまたはその共重合
体などが挙げられるが、繰り返し耐久性を良くするため
には耐熱性、高温での弾性率に優れたものが良い。

【００１５】またその中に分散させる有機低分子物質と
してはカルボン酸、ジカルボン酸、ケトン、エ−テル、
アルコ−ル、およびその誘導体等が挙げられる。保護層
３としてはＰＥＴ、ポリエーテルイミド、ポリエーテル
エーテルケトン、ポリサルフォン、ポリフェニレンサル
ファイド、ポリアリレート、ポリエーテルサルフォン、
ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリイ
ミド、アクリル樹脂、紫外線または電子線硬化樹脂など
の耐熱性の高い透明樹脂のフイルムあるいは塗膜を用い
ることができる。

【００１６】この本発明方法が適用される記録媒体は、
例えば入場、買物、レンタルなどのプリペイドカードと
して使用することができ、使用の都度、使用金額および
残額を磁気記録とともに記録層２に可視的に表示するこ
とにより、常に正確な残額を知ることができる。また各
種感熱記録紙として利用することができる。

【００１７】

【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。 （比較例）基材１として１８８μｍ厚の透明ポリエチレ
ンテレフタレ−ト樹脂フイルムを使用し、その表面にア
ルミ蒸着を施し、光反射層を形成した。その上に記録層
２を１０μｍ厚に積層した。記録層を構成する樹脂とし
ては、 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体（日信化学ＭＲＰ−ＴＳ）…１００重量部 １２−トリコサノン … ３３重量部 １４−ヘプタコサノン … １１重量部 エイコサン二酸 … ４重量部 をテトラヒドロフランに溶解しアルミ蒸着層の上に塗布
し、加熱乾燥して記録層２を作成した。さらにその上に
２μｍのＰＥＴフイルムをラミネ−トして保護層３を形
成した。そしてカ−ド状に打抜き、カ−ドを作成した。

【００１８】このカードの熱可逆静特性をマクベス光学
反射濃度計ＲＤ−９１４で測定したところ、図６のよう
になり、透明化温度域は６０〜１００℃で、幅ΔＴは約
４０℃であった。このカードは初期状態で白濁であり、
これをサーマルヘツドの印加時間を変えて透明に消去し
た結果を図７に示した。これを見ると、印加時間１．５
ｍ秒では完全に消去できず、２．５ｍ秒以上は必要と考
えられる。なお、消去部分はサーマルヘツド進行方向に
対して２．５ｃｍのベタ印字で行い、反射濃度測定は中
央部にて行った。

【００１９】（実施例）上記比較例で作成した同サンプ
ルを用い、１本目のサーマルヘツドの印加エネルギーを
２本目のサーマルヘツドの印加エネルギーよりも大きく
して２本のサーマルヘツドで消去を行った。印加時間は
１．５ｍ秒とした。結果を図８に示す。図８において、
横軸は２本目のサーマルヘツドの印加エネルギーであ
り、曲線Ａ、Ｂ、およびＣは、１本目のサーマルヘツド
の印加エネルギーを２本目よりもそれぞれ０．０６ｍＪ
／ドツト、０．０４ｍＪ／ドツト、および０．０２ｍＪ
／ドツトずつ高くした場合の消去特性を示すものであ
る。

【００２０】図８から分かるように、１本のサーマルヘ
ツドで消去した場合には記録を完全に消去できなかった
印加時間１．５ｍ秒の条件でも、２本のサーマルヘツド
で消去すると１本の時よりもきれいに消去できるように
なり、２本のサーマルヘツドの印加エネルギー間隔をう
まく調節すれば消去範囲が広くなり、マージンが広がる
ことが確認できた。

【００２１】

【発明の効果】本発明の消去方法によれば、サーマルヘ
ツドの処理速度が速くても良好な消去が行えるものであ
る。これにより記録材料の消去温度範囲が狭くても良好
なサーマルヘツド消去が可能であり、またコントラスト
向上のために記録層の膜厚を厚くしても記録層の厚み方
向に均一に消去が行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明方法が適用される熱可逆性感熱記録シー
トの一例の断面図。

【図２】熱可逆性感熱記録材料の一般的な熱可逆静特性
を示す図。

【図３】サーマルヘツドで高エネルギーで消去した場合
の記録層内の温度分布を示す図。

【図４】サーマルヘツドで低エネルギーで消去した場合
の記録層内の温度分布を示す図。

【図５】本発明方法における２本のサーマルヘツドの温
度の関係を説明する図。

【図６】実施例サンプルの記録材料の熱可逆静特性を示
す図。

【図７】１本のサーマルヘツドで、印加時間を変えた場
合の消去特性を示す図。

【図８】２本のサーマルヘツドで消去を行なった場合の
消去特性を示す図。

【符号の説明】

１ 基材 ２ 記録層 ３ 保護層 １０ サーマルヘツド

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 熱処理温度条件を変えることにより透明
   状態と不透明状態との可逆変化を生じ、室温において透
   明状態と不透明状態の２つの状態を維持できる熱可逆性
   感熱記録材料における記録部分の消去方法において、上
   記記録部分の下層部が消去温度となる印加エネルギーの
   サーマルヘッドによって上記記録部分を加熱して、記録
   部分の下層部を消去し、その際に再記録された上層部を
   消去するのに十分な印加エネルギーを別のサーマルヘッ
   ドによって付与して記録部分の上層部を消去することを
   特徴とする熱可逆性感熱記録材料における記録部分の消
   去方法。