JP3605298B2 - 可逆性感熱記録材料 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、温度によって可視画像を表示および消去可能な可逆性感熱記録材料に関し、詳しくは定期券、入場許可証、各種プリペイドカードなどのカード類やOHPシートなどに適用できる可逆性感熱記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、交通機関の利用者が使用する定期券、催し物会場や所定の建物への入場許可証その他の繰り返し使用されるカード類は、表面に印刷された文字等を管理者が肉眼でチェックするか、またはカード類に記録された磁気記録情報を装置で読み取って不正使用を防止している。
【0003】
しかし、カード類の表面に記載された内容と磁気記録された情報が一致しない場合は、管理者が表面の記載内容だけで正否を直ちに判別できず、また磁気記録の読み取り装置が誤作動する場合もあるので、カード類の不正使用を完全に防止することは困難であった。
【0004】
また、プリペイドカードなどのような磁気記録カードやICチップを付設したICカードにおいても、過去の支払い金額や残額などのカードに記録された情報を使用時毎に目で見て確認できないので、管理者および使用者共に不便さがあった。
【0005】
このような不便さを解消するために、目で識別可能な記録情報を可逆性感熱記録層によって表示するカード形記録装置(特開昭54−19377号公報、特開昭55−154198号公報)が知られている。
【0006】
この装置は、高分子樹脂母材の中に結晶性の有機低分子物質を分散させた記録材料を層状に設け、この記録材料を特定温度領域(T1)に加熱して透明化するステップと、前記特定温度領域以上の領域(T2)に加熱して白濁化させるステップとを選択的に用い、層状の記録材料の要所にコントラストの違いを生じさせて可視画像を表示しまたは消去するという機構を有する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した従来の可逆性感熱記録材料は、透明性の高い状態になる温度領域、すなわち可視画像を消去可能な温度領域が狭いので、書き直しの際に加熱温度の制御が困難である。
【0008】
すなわち、従来の可逆性感熱記録材料は、広い領域を大熱量で加熱する加熱スタンプや加熱バーによる画像消去は可能であるが、特に、サーマルヘッドを用いたドット(点)単位の瞬間的な加熱処理では、記録層の厚み方向に温度分布が大きくなるので、画像を完全に消去することが困難であった。
【0009】
透明化温度領域の拡大を図り、上記問題に対処した従来技術としては、高級脂肪酸と脂肪族飽和二塩基酸を分散した可逆性感熱記録材料(特開平2−1363号公報)が知られているが、このような技術でもサーマルヘッドを用いて可視画像を確実に消去することはできなかった。
【0010】
さらに透明化温度領域の低温側を広げる技術としては、前記した結晶性の有機低分子物質として、低融点(60℃程度)の高級脂肪酸エステルを採用した可逆性感熱記録材料も知られている。
【0011】
しかし、低融点(60℃程度)の高級脂肪酸エステルを採用すると、夏期の気温(30℃以上)程度の高温の使用環境や可逆性感熱記録材料がヒトの体温(約36℃)で温められている場合に結晶化し難くなり、印字等により画像の表示が確実にできなくなるという問題点が起こる。
【0012】
なお、上記したような高温の使用条件では、完全に白濁化されていない画像を透明化温度領域に加熱しても消去することはできず、画像表示機能ばかりでなく消去機能も低下した。
【0013】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して可逆性感熱記録材料の透明化温度領域を充分に拡大し、通常の使用状態で想定される温度範囲のうち、比較的高い温度でも確実に画像表示および消去が可能な可逆性感熱記録材料とし、特に夏期の使用環境温度やヒトの体温で温められた状態でもサーマルヘッドによる可視画像の消去や表示を確実に行なえる可逆性感熱記録材料とすることである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明は樹脂母材に結晶性の有機低分子化合物を分散状態に配合し、前記配合物の透明性を温度によって可逆的に変化させることにより可視画像を表示および消去可能な可逆性感熱記録材料において、
前記有機低分子化合物が、以下の式で表わされる脂肪族チオエーテル
R1 −S−R2
(式中、R1 =C10〜C30のアルキル基、R2 =C10〜C30のアルキル基)
および脂肪族二塩基酸を主成分とし、融点が前記脂肪族チオエーテルの融点より高い有機低分子化合物を、前記脂肪族チオエーテル100重量部に対して10〜40重量部含有する可逆性感熱記録材料としたのである。
【0015】
この発明でいう融点(mp)とは、示差熱走査型熱量計(DSC)で昇温速度10℃/分で昇温させたとき、化合物が溶融する温度である。
【0016】
脂肪族チオエーテルの融点より高い融点の有機低分子化合物としては、高級脂肪酸または高級ケトンを採用することができる。
【0017】
この発明における可逆性感熱記録材料の記録・消去の推定メカニズムを以下に簡略に説明する。
【0018】
図3のグラフ中に、樹脂母材に分散された結晶相の模式図(a)〜(g)を付記した。同図中の(a)に示す状態の可逆性感熱記録材料は、常温で硬質の樹脂母材と有機低分子化合物の結晶(分散相)とが密接した状態で接しており、両者の屈折率が近いので透明状態である。この透明状態から加熱すると、(b)のように分散相の結晶および樹脂母材が共に軟化した状態になり、さらに高温になると(c)のように一部融解した結晶が樹脂母材に分散した状態になり、ここまではいずれも透明状態である。
【0019】
次いで、結晶の融点を越えた温度に加熱されると、(d)のように分散相は完全に液状になり、軟化した母材と液体との屈折率差によって記録材料は半濁状態になる。この状態から温度を低下させると、母材樹脂は次第に硬化するが分散相の結晶化温度まで(e)のように記録材料は半濁状態の状態を維持する。
【0020】
さらに冷却が進んで分散相の結晶化温度以下になると、何らかの種結晶に基づいて成長した幾つかの小結晶が形成されて分散相の体積が収縮し、一方、硬化した樹脂母材と樹脂母材の間には、(f)のように空隙が生じて記録材料は完全に白濁する。
【0021】
この白濁状態から再び加熱すると、(g)のように樹脂母材が昇温に伴って軟化し前記空隙を徐々に埋めるので、記録材料は次第に透明化する。さらに高温になると前記(c)のように、結晶が一部融解して透明状態になる。
【0022】
この透明状態(c)にある記録材料は、その後に冷却されても軟化した樹脂母材が分散相に密着して境界に空隙が生じないので、常温にまで冷却されても(a)部分に示す透明状態に戻ることになる。
【0023】
上記したメカニズムに従った透明と不透明化であれば、分散相である有機低分子化合物の結晶の融点が低ければそれだけ低温で記録材料を透明化することができ、一方、有機低分子化合物の結晶化温度を高くすれば、それだけ高温側で結晶が形成されやすくなり、高温でも表示機能のある感熱記録材料になる。
【0024】
この発明の可逆性感熱記録材料は、上記作用機構の知見に基づいており、樹脂母材に対して、低融点の脂肪族チオエーテルと高融点の脂肪族二塩基酸を主成分とする有機低分子化合物を配合することにより、広範囲の透明化温度領域を確保できる。また結晶化温度(Tc )が前記脂肪族チオエーテルのTc より高い有機低分子化合物を添加することにより、夏期の外気温やヒトの体温で温められた条件でも有機低分子化合物が確実に結晶化して表示および消去可能な可逆性感熱記録材料を得ることができる。
【0025】
この発明の可逆性感熱記録材料が、広範囲の透明化温度領域を有しかつ高温でも表示機能がある理由は、分散相の結晶性の有機低分子化合物を加熱融解した後、冷却した時に高い結晶化温度の有機低分子化合物がまず結晶化し、これが結晶核になって他に配合されている結晶化温度の低い脂肪族チオエーテルの結晶化を促すためと考えられる。尚、通常、結晶化温度は融点より若干低い温度であることから、2つの化合物の結晶化温度を比較する場合に融点を参考にできる。
【0026】
【発明の実施の形態】
この発明における母材樹脂を構成する樹脂は、透明性、成膜性、高温領域での弾性その他の耐熱性、繰り返し加熱される条件での耐久性等の点で良好なものが好ましく、例えば以下のものが適当な母材樹脂種の例として挙げられる。
【0027】
すなわち、母材樹脂種としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−アルコール共重合体、その他の酢酸ビニル化合物、塩化ビニル系共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)クリレート、またはその共重合体などが挙げられる。
【0028】
特に塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、または塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体と紫外線(UV)硬化樹脂等の光硬化性樹脂もしくは電子線(EB)硬化樹脂等の放射線硬化性樹脂との混合物は、高温領域での弾性率が高く、繰り返しリライト(表示・消去)した際の耐久性が良好である。
【0029】
樹脂母材に分散状態に配合される結晶性の有機低分子化合物は、サーマルヘッドによる消去方式を採用できる感熱記録材料であるために、比較的低い融点の脂肪族チオエーテルと、比較的高い融点の脂肪族二塩基酸を主成分(全有機低分子化合物中の50重量%以上)とする。
【0030】
低い融点の脂肪族チオエーテルは、硫化アルキルとも呼ばれる化合物であり、前記した式中のR1 とR2 は同じアルキル基であっても異なっていてもよく、これらのアルキル基の炭素数は10〜30である。
【0031】
低い融点(以下、融点をmpと略記する。)の脂肪族チオエーテルのmpは50〜80℃であり、具体例としてはテトラデシルスルフィド(mp:50℃)、ペンタデシルスルフィド、ヘキサデシルスルフィド(mp:62℃)、ヘプタデシルスルフィド、オクタデシルスルフィド(mp:70℃)が挙げられる。
【0032】
高い融点(mp)の炭素数10以上の脂肪族二塩基酸しては、スベリン酸(mp:140℃)、セバシン酸(mp:134℃)、ドデカン二酸(mp:128℃)、テトラデカン二酸(mp:125℃)、ヘキサデカン二酸(mp:125℃)、オクタデカン二酸(mp:125℃)、エイコサン二酸(mp:123℃)などが挙げられる。
【0033】
このような脂肪族チオエーテルと脂肪族二塩基酸の配合割合を適当に調整することにより、透明化する温度領域や透明性の度合いおよび白濁状態の濁りの程度を任意に変化させることができる。実際に可逆性感熱記録材料を使用する印字・消去装置の性能や印字のコントラストの鮮明度などを考慮して、前記配合割合を設定することが好ましい。
【0034】
このような結晶性の有機低分子化合物として、融点の低い脂肪族チオエーテルおよび融点の高い脂肪族二塩基酸を併用することにより、共晶が形成され、分散相が幅広い融点をもつ可逆性感熱記録材料となり、透明性の高い温度領域が拡大してサーマルヘッドを用いた消去に必要な印加エネルギー領域が広くなると考えられる。
【0035】
融点(mp)が前記脂肪族チオエーテルの融点より高い有機低分子化合物の具体例としては、高級脂肪酸や高級ケトンが挙げられる。
【0036】
高級脂肪酸の具体例としては、ステアリン酸(炭素数C:18、mp:70℃)、ベヘン酸(C:22、mp:80℃)、リグノセリン酸(C:24、mp:84℃)、セロチン酸(C:26、mp:88℃)、メリシン酸(C:30、mp:94℃)が挙げられ(C:18以上)、いずれも脂肪族チオエーテルの融点より高い融点を有するものを1種または2種以上選択して採用できる。
【0037】
また、前記高級ケトンの具体例としては、ミリストン(14−ヘプタコサノン、C:27、mp:78℃)、パルミトン(16−ヘントリアコンタノン、C:31、mp:81℃)、ステアロン(18−ペンタトリアコンタノン、C:35、mp:90℃)が挙げられ(C:27以上)、いずれも脂肪族チオエーテルのmpより高いmpを有するものを1種または2種以上選択して採用する。
【0038】
また、脂肪族チオエーテルの融点より高い融点の有機低分子化合物の配合割合は、脂肪族チオエーテル100重量部に対して10〜40重量部であることが好ましい。なぜなら、高融点の有機低分子化合物の配合量が、上記所定範囲未満の少量では、結晶性有機低分子化合物の結晶化温度が所期した程度に上がらず、平均体温(36℃)未満の低温の使用条件でしかサーマルヘッドによる印字(画像の表示)ができなくなる。一方、上記所定範囲を越えて多量に配合すると、結晶化温度と共に融点が上がりすぎて、サーマルヘッドにより画像の消去が困難になるからである。
【0039】
この発明の可逆性感熱記録材料を使用したカード形記録装置の実施形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
【0040】
図1および図2に示すカード形記録材料は、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂シートからなるカード基材1の表面に、光学的反射面を形成するアルミニウム等の反射層2を設け、その上に重ねて可逆性感熱記録材料からなる記録層3を設け、さらにその上に保護被膜層4および記録表示窓5を形成するための印刷層6を設け、前記カード基材1の裏面には磁気記録層7および保護印刷層8を順次積層し一体化したものである。
【0041】
反射層2は、記録層3に形成された画像をカードの表面から見やすくするためのものであり、アルミニウムやスズなどの蒸着または箔の接着またはアルミ粉などを混ぜた光反射性の塗料の塗布層からなる。
【0042】
また、記録層3は、溶剤を添加して液状化した可逆性感熱記録材料を塗布し、これを加熱乾燥して反射層2と一体に形成することができる。
【0043】
記録層3の上に設ける保護被膜層4は、耐熱性の良い透明な樹脂被膜からなり、その具体的な樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアクリレート、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂などの耐熱性樹脂を挙げることができる。
【0044】
上述のように形成されたカード形記録材料は、記録層の透明化可能な温度領域が広く、かつ温度分布の広いサーマルヘッドでの瞬間的な加熱によって画像の消去が確実に行なえるものであり、一本のサーマルヘッドで印字と消去を兼用したり、消去と再印字を同時に行ない、全域消去による初期化を必要としないオーバーライトも可能となるので、再記録処理の速度を向上できるものである。
【0045】
【実施例および比較例】
〔実施例1〜4、比較例1〜3〕
予め、裏面に磁気塗料を10μm厚に塗布した188μm厚のポリエチレンテレフタレート樹脂シート(カード基材)の表面にアルミ蒸着し、その上に表1に示した配合組成物(樹脂母材(1) に結晶性の有機低分子化合物(2) 〜(5) を分散状態に配合したもの)をテトラヒドロフランに溶解して記録材料に塗布し、加熱乾燥して10μm厚の記録層を形成した。なお、使用した材料のうち、ヘキサデシルスルフィドの融点(mp)は62℃であり、その他の材料のmpは、前述した通り、ドデカン二酸(mp:128℃)、ステアロン(mp:90℃)、メリシン酸(mp:94℃)である。
【0046】
そして、記録層の上に2μm厚のポリエチレンテレフタレート樹脂製の保護フィルムを貼着し、その上に記録表示窓を形成するための印刷をし、カード基材の裏面には磁気記録層および保護印刷層を順次重ねて設け、これらを積層一体化したカード形の可逆性感熱記録材料を作成した。
【0047】
得られたカード形の可逆性感熱記録材料に対して、以下の条件で印字テストを行なった。すなわち、カード形の可逆性感熱記録材料を0.30mJ/dotでサーマルヘッドで印字し白濁画像を形成した後、0.01mJ/dotから0.30mJ/dotまで0.01mJ/dot間隔でサーマルヘッドで加熱し、室温まで放冷する実験を繰り返して画像消去可能な印加エネルギー領域(mJ/dot)を測定し、またカード表面の消去(透明)部および印字(白濁画像)部の反射濃度をそれぞれマクベス反射濃度計(RD−914)で測定し、結果を表2に示した。反射濃度は、0.5以下を白濁状態、1.0以上を透明(消去)状態であると評価した。
【0048】
また、透明化したカードを30〜50℃の段階的な環境温度(大気中)において、サーマルヘッドにより室温(23℃)で印字可能な0.30mJ/dotで加熱し、印字可能な最高の環境温度を調べ、この結果を表2中に併記した。
【0049】
なお、製造工程で調製した低融点の脂肪族チオエーテルと高融点の脂肪族二塩基酸と有機低分子化合物を添加した組成物の結晶化温度について、示差熱走査型熱量計(DSC)を用いて降温速度10℃/分の条件で測定し、その結果を表2中に併記した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
表2の結果からも明らかなように、脂肪族チオエーテルより融点の高い高級ケトンまたは高級脂肪酸を所定量(脂肪族チオエーテル100重量部に対して10〜40重量部)配合した記録材料は、印字可能温度が36℃以上であるので平均体温以上または夏期の環境温度でもサーマルヘッドによる印字が可能であり、画像の消去特性、印字特性およびコントラストも良好であった。
【0053】
これに対して、高級ケトンまたは高級脂肪酸を無添加の比較例1は、印字可能温度が33℃であり、特に比較例1では、平均体温条件で使用できないものであった。
【0054】
また、比較例2は、脂肪族チオエーテルより融点の高い高級ケトンまたは高級脂肪酸の配合量が、10重量部未満であるので、夏期の環境温度(最低30〜33℃に設定した場合)では印字可能であるが、平均体温条件(36℃)以上では使用できないものであった。さらに比較例3は、脂肪族チオエーテルより融点の高い高級ケトンまたは高級脂肪酸の配合量が、40重量部を越えて多量であるので有機低分子化合物の融点が上昇しすぎであり、サーマルヘッドで消去できないものであった。
【0055】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように、低融点の脂肪族チオエーテルと高融点の脂肪族二塩基酸を主成分とし、さらに融点が前記脂肪族チオエーテルの融点より高い有機低分子化合物を添加したものを樹脂母材に分散状態に配合したことにより、通常の使用状態で想定される温度範囲のうち、比較的高い温度でも確実に画像表示および消去が可能な可逆性感熱記録材料となり、特に夏期の使用環境温度やヒトの体温に温められた状態でもサーマルヘッドによる可視画像の消去や表示を確実に行なえる可逆性感熱記録材料となる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】カード形の可逆性感熱記録材料の斜視図
【図2】図1のカード形の可逆性感熱記録材料の拡大断面図
【図3】可逆性感熱記録材料の記録・消去の推定メカニズムの説明図
【符号の説明】
1 カード基材
2 反射層
3 記録層
4 保護被膜層
5 記録表示窓
6 印刷層
7 磁気記録層
8 保護印刷層
【発明の属する技術分野】
この発明は、温度によって可視画像を表示および消去可能な可逆性感熱記録材料に関し、詳しくは定期券、入場許可証、各種プリペイドカードなどのカード類やOHPシートなどに適用できる可逆性感熱記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、交通機関の利用者が使用する定期券、催し物会場や所定の建物への入場許可証その他の繰り返し使用されるカード類は、表面に印刷された文字等を管理者が肉眼でチェックするか、またはカード類に記録された磁気記録情報を装置で読み取って不正使用を防止している。
【0003】
しかし、カード類の表面に記載された内容と磁気記録された情報が一致しない場合は、管理者が表面の記載内容だけで正否を直ちに判別できず、また磁気記録の読み取り装置が誤作動する場合もあるので、カード類の不正使用を完全に防止することは困難であった。
【0004】
また、プリペイドカードなどのような磁気記録カードやICチップを付設したICカードにおいても、過去の支払い金額や残額などのカードに記録された情報を使用時毎に目で見て確認できないので、管理者および使用者共に不便さがあった。
【0005】
このような不便さを解消するために、目で識別可能な記録情報を可逆性感熱記録層によって表示するカード形記録装置(特開昭54−19377号公報、特開昭55−154198号公報)が知られている。
【0006】
この装置は、高分子樹脂母材の中に結晶性の有機低分子物質を分散させた記録材料を層状に設け、この記録材料を特定温度領域(T1)に加熱して透明化するステップと、前記特定温度領域以上の領域(T2)に加熱して白濁化させるステップとを選択的に用い、層状の記録材料の要所にコントラストの違いを生じさせて可視画像を表示しまたは消去するという機構を有する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した従来の可逆性感熱記録材料は、透明性の高い状態になる温度領域、すなわち可視画像を消去可能な温度領域が狭いので、書き直しの際に加熱温度の制御が困難である。
【0008】
すなわち、従来の可逆性感熱記録材料は、広い領域を大熱量で加熱する加熱スタンプや加熱バーによる画像消去は可能であるが、特に、サーマルヘッドを用いたドット(点)単位の瞬間的な加熱処理では、記録層の厚み方向に温度分布が大きくなるので、画像を完全に消去することが困難であった。
【0009】
透明化温度領域の拡大を図り、上記問題に対処した従来技術としては、高級脂肪酸と脂肪族飽和二塩基酸を分散した可逆性感熱記録材料(特開平2−1363号公報)が知られているが、このような技術でもサーマルヘッドを用いて可視画像を確実に消去することはできなかった。
【0010】
さらに透明化温度領域の低温側を広げる技術としては、前記した結晶性の有機低分子物質として、低融点(60℃程度)の高級脂肪酸エステルを採用した可逆性感熱記録材料も知られている。
【0011】
しかし、低融点(60℃程度)の高級脂肪酸エステルを採用すると、夏期の気温(30℃以上)程度の高温の使用環境や可逆性感熱記録材料がヒトの体温(約36℃)で温められている場合に結晶化し難くなり、印字等により画像の表示が確実にできなくなるという問題点が起こる。
【0012】
なお、上記したような高温の使用条件では、完全に白濁化されていない画像を透明化温度領域に加熱しても消去することはできず、画像表示機能ばかりでなく消去機能も低下した。
【0013】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して可逆性感熱記録材料の透明化温度領域を充分に拡大し、通常の使用状態で想定される温度範囲のうち、比較的高い温度でも確実に画像表示および消去が可能な可逆性感熱記録材料とし、特に夏期の使用環境温度やヒトの体温で温められた状態でもサーマルヘッドによる可視画像の消去や表示を確実に行なえる可逆性感熱記録材料とすることである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明は樹脂母材に結晶性の有機低分子化合物を分散状態に配合し、前記配合物の透明性を温度によって可逆的に変化させることにより可視画像を表示および消去可能な可逆性感熱記録材料において、
前記有機低分子化合物が、以下の式で表わされる脂肪族チオエーテル
R1 −S−R2
(式中、R1 =C10〜C30のアルキル基、R2 =C10〜C30のアルキル基)
および脂肪族二塩基酸を主成分とし、融点が前記脂肪族チオエーテルの融点より高い有機低分子化合物を、前記脂肪族チオエーテル100重量部に対して10〜40重量部含有する可逆性感熱記録材料としたのである。
【0015】
この発明でいう融点(mp)とは、示差熱走査型熱量計(DSC)で昇温速度10℃/分で昇温させたとき、化合物が溶融する温度である。
【0016】
脂肪族チオエーテルの融点より高い融点の有機低分子化合物としては、高級脂肪酸または高級ケトンを採用することができる。
【0017】
この発明における可逆性感熱記録材料の記録・消去の推定メカニズムを以下に簡略に説明する。
【0018】
図3のグラフ中に、樹脂母材に分散された結晶相の模式図(a)〜(g)を付記した。同図中の(a)に示す状態の可逆性感熱記録材料は、常温で硬質の樹脂母材と有機低分子化合物の結晶(分散相)とが密接した状態で接しており、両者の屈折率が近いので透明状態である。この透明状態から加熱すると、(b)のように分散相の結晶および樹脂母材が共に軟化した状態になり、さらに高温になると(c)のように一部融解した結晶が樹脂母材に分散した状態になり、ここまではいずれも透明状態である。
【0019】
次いで、結晶の融点を越えた温度に加熱されると、(d)のように分散相は完全に液状になり、軟化した母材と液体との屈折率差によって記録材料は半濁状態になる。この状態から温度を低下させると、母材樹脂は次第に硬化するが分散相の結晶化温度まで(e)のように記録材料は半濁状態の状態を維持する。
【0020】
さらに冷却が進んで分散相の結晶化温度以下になると、何らかの種結晶に基づいて成長した幾つかの小結晶が形成されて分散相の体積が収縮し、一方、硬化した樹脂母材と樹脂母材の間には、(f)のように空隙が生じて記録材料は完全に白濁する。
【0021】
この白濁状態から再び加熱すると、(g)のように樹脂母材が昇温に伴って軟化し前記空隙を徐々に埋めるので、記録材料は次第に透明化する。さらに高温になると前記(c)のように、結晶が一部融解して透明状態になる。
【0022】
この透明状態(c)にある記録材料は、その後に冷却されても軟化した樹脂母材が分散相に密着して境界に空隙が生じないので、常温にまで冷却されても(a)部分に示す透明状態に戻ることになる。
【0023】
上記したメカニズムに従った透明と不透明化であれば、分散相である有機低分子化合物の結晶の融点が低ければそれだけ低温で記録材料を透明化することができ、一方、有機低分子化合物の結晶化温度を高くすれば、それだけ高温側で結晶が形成されやすくなり、高温でも表示機能のある感熱記録材料になる。
【0024】
この発明の可逆性感熱記録材料は、上記作用機構の知見に基づいており、樹脂母材に対して、低融点の脂肪族チオエーテルと高融点の脂肪族二塩基酸を主成分とする有機低分子化合物を配合することにより、広範囲の透明化温度領域を確保できる。また結晶化温度(Tc )が前記脂肪族チオエーテルのTc より高い有機低分子化合物を添加することにより、夏期の外気温やヒトの体温で温められた条件でも有機低分子化合物が確実に結晶化して表示および消去可能な可逆性感熱記録材料を得ることができる。
【0025】
この発明の可逆性感熱記録材料が、広範囲の透明化温度領域を有しかつ高温でも表示機能がある理由は、分散相の結晶性の有機低分子化合物を加熱融解した後、冷却した時に高い結晶化温度の有機低分子化合物がまず結晶化し、これが結晶核になって他に配合されている結晶化温度の低い脂肪族チオエーテルの結晶化を促すためと考えられる。尚、通常、結晶化温度は融点より若干低い温度であることから、2つの化合物の結晶化温度を比較する場合に融点を参考にできる。
【0026】
【発明の実施の形態】
この発明における母材樹脂を構成する樹脂は、透明性、成膜性、高温領域での弾性その他の耐熱性、繰り返し加熱される条件での耐久性等の点で良好なものが好ましく、例えば以下のものが適当な母材樹脂種の例として挙げられる。
【0027】
すなわち、母材樹脂種としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−アルコール共重合体、その他の酢酸ビニル化合物、塩化ビニル系共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)クリレート、またはその共重合体などが挙げられる。
【0028】
特に塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、または塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体と紫外線(UV)硬化樹脂等の光硬化性樹脂もしくは電子線(EB)硬化樹脂等の放射線硬化性樹脂との混合物は、高温領域での弾性率が高く、繰り返しリライト(表示・消去)した際の耐久性が良好である。
【0029】
樹脂母材に分散状態に配合される結晶性の有機低分子化合物は、サーマルヘッドによる消去方式を採用できる感熱記録材料であるために、比較的低い融点の脂肪族チオエーテルと、比較的高い融点の脂肪族二塩基酸を主成分(全有機低分子化合物中の50重量%以上)とする。
【0030】
低い融点の脂肪族チオエーテルは、硫化アルキルとも呼ばれる化合物であり、前記した式中のR1 とR2 は同じアルキル基であっても異なっていてもよく、これらのアルキル基の炭素数は10〜30である。
【0031】
低い融点(以下、融点をmpと略記する。)の脂肪族チオエーテルのmpは50〜80℃であり、具体例としてはテトラデシルスルフィド(mp:50℃)、ペンタデシルスルフィド、ヘキサデシルスルフィド(mp:62℃)、ヘプタデシルスルフィド、オクタデシルスルフィド(mp:70℃)が挙げられる。
【0032】
高い融点(mp)の炭素数10以上の脂肪族二塩基酸しては、スベリン酸(mp:140℃)、セバシン酸(mp:134℃)、ドデカン二酸(mp:128℃)、テトラデカン二酸(mp:125℃)、ヘキサデカン二酸(mp:125℃)、オクタデカン二酸(mp:125℃)、エイコサン二酸(mp:123℃)などが挙げられる。
【0033】
このような脂肪族チオエーテルと脂肪族二塩基酸の配合割合を適当に調整することにより、透明化する温度領域や透明性の度合いおよび白濁状態の濁りの程度を任意に変化させることができる。実際に可逆性感熱記録材料を使用する印字・消去装置の性能や印字のコントラストの鮮明度などを考慮して、前記配合割合を設定することが好ましい。
【0034】
このような結晶性の有機低分子化合物として、融点の低い脂肪族チオエーテルおよび融点の高い脂肪族二塩基酸を併用することにより、共晶が形成され、分散相が幅広い融点をもつ可逆性感熱記録材料となり、透明性の高い温度領域が拡大してサーマルヘッドを用いた消去に必要な印加エネルギー領域が広くなると考えられる。
【0035】
融点(mp)が前記脂肪族チオエーテルの融点より高い有機低分子化合物の具体例としては、高級脂肪酸や高級ケトンが挙げられる。
【0036】
高級脂肪酸の具体例としては、ステアリン酸(炭素数C:18、mp:70℃)、ベヘン酸(C:22、mp:80℃)、リグノセリン酸(C:24、mp:84℃)、セロチン酸(C:26、mp:88℃)、メリシン酸(C:30、mp:94℃)が挙げられ(C:18以上)、いずれも脂肪族チオエーテルの融点より高い融点を有するものを1種または2種以上選択して採用できる。
【0037】
また、前記高級ケトンの具体例としては、ミリストン(14−ヘプタコサノン、C:27、mp:78℃)、パルミトン(16−ヘントリアコンタノン、C:31、mp:81℃)、ステアロン(18−ペンタトリアコンタノン、C:35、mp:90℃)が挙げられ(C:27以上)、いずれも脂肪族チオエーテルのmpより高いmpを有するものを1種または2種以上選択して採用する。
【0038】
また、脂肪族チオエーテルの融点より高い融点の有機低分子化合物の配合割合は、脂肪族チオエーテル100重量部に対して10〜40重量部であることが好ましい。なぜなら、高融点の有機低分子化合物の配合量が、上記所定範囲未満の少量では、結晶性有機低分子化合物の結晶化温度が所期した程度に上がらず、平均体温(36℃)未満の低温の使用条件でしかサーマルヘッドによる印字(画像の表示)ができなくなる。一方、上記所定範囲を越えて多量に配合すると、結晶化温度と共に融点が上がりすぎて、サーマルヘッドにより画像の消去が困難になるからである。
【0039】
この発明の可逆性感熱記録材料を使用したカード形記録装置の実施形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
【0040】
図1および図2に示すカード形記録材料は、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂シートからなるカード基材1の表面に、光学的反射面を形成するアルミニウム等の反射層2を設け、その上に重ねて可逆性感熱記録材料からなる記録層3を設け、さらにその上に保護被膜層4および記録表示窓5を形成するための印刷層6を設け、前記カード基材1の裏面には磁気記録層7および保護印刷層8を順次積層し一体化したものである。
【0041】
反射層2は、記録層3に形成された画像をカードの表面から見やすくするためのものであり、アルミニウムやスズなどの蒸着または箔の接着またはアルミ粉などを混ぜた光反射性の塗料の塗布層からなる。
【0042】
また、記録層3は、溶剤を添加して液状化した可逆性感熱記録材料を塗布し、これを加熱乾燥して反射層2と一体に形成することができる。
【0043】
記録層3の上に設ける保護被膜層4は、耐熱性の良い透明な樹脂被膜からなり、その具体的な樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアクリレート、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂などの耐熱性樹脂を挙げることができる。
【0044】
上述のように形成されたカード形記録材料は、記録層の透明化可能な温度領域が広く、かつ温度分布の広いサーマルヘッドでの瞬間的な加熱によって画像の消去が確実に行なえるものであり、一本のサーマルヘッドで印字と消去を兼用したり、消去と再印字を同時に行ない、全域消去による初期化を必要としないオーバーライトも可能となるので、再記録処理の速度を向上できるものである。
【0045】
【実施例および比較例】
〔実施例1〜4、比較例1〜3〕
予め、裏面に磁気塗料を10μm厚に塗布した188μm厚のポリエチレンテレフタレート樹脂シート(カード基材)の表面にアルミ蒸着し、その上に表1に示した配合組成物(樹脂母材(1) に結晶性の有機低分子化合物(2) 〜(5) を分散状態に配合したもの)をテトラヒドロフランに溶解して記録材料に塗布し、加熱乾燥して10μm厚の記録層を形成した。なお、使用した材料のうち、ヘキサデシルスルフィドの融点(mp)は62℃であり、その他の材料のmpは、前述した通り、ドデカン二酸(mp:128℃)、ステアロン(mp:90℃)、メリシン酸(mp:94℃)である。
【0046】
そして、記録層の上に2μm厚のポリエチレンテレフタレート樹脂製の保護フィルムを貼着し、その上に記録表示窓を形成するための印刷をし、カード基材の裏面には磁気記録層および保護印刷層を順次重ねて設け、これらを積層一体化したカード形の可逆性感熱記録材料を作成した。
【0047】
得られたカード形の可逆性感熱記録材料に対して、以下の条件で印字テストを行なった。すなわち、カード形の可逆性感熱記録材料を0.30mJ/dotでサーマルヘッドで印字し白濁画像を形成した後、0.01mJ/dotから0.30mJ/dotまで0.01mJ/dot間隔でサーマルヘッドで加熱し、室温まで放冷する実験を繰り返して画像消去可能な印加エネルギー領域(mJ/dot)を測定し、またカード表面の消去(透明)部および印字(白濁画像)部の反射濃度をそれぞれマクベス反射濃度計(RD−914)で測定し、結果を表2に示した。反射濃度は、0.5以下を白濁状態、1.0以上を透明(消去)状態であると評価した。
【0048】
また、透明化したカードを30〜50℃の段階的な環境温度(大気中)において、サーマルヘッドにより室温(23℃)で印字可能な0.30mJ/dotで加熱し、印字可能な最高の環境温度を調べ、この結果を表2中に併記した。
【0049】
なお、製造工程で調製した低融点の脂肪族チオエーテルと高融点の脂肪族二塩基酸と有機低分子化合物を添加した組成物の結晶化温度について、示差熱走査型熱量計(DSC)を用いて降温速度10℃/分の条件で測定し、その結果を表2中に併記した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
表2の結果からも明らかなように、脂肪族チオエーテルより融点の高い高級ケトンまたは高級脂肪酸を所定量(脂肪族チオエーテル100重量部に対して10〜40重量部)配合した記録材料は、印字可能温度が36℃以上であるので平均体温以上または夏期の環境温度でもサーマルヘッドによる印字が可能であり、画像の消去特性、印字特性およびコントラストも良好であった。
【0053】
これに対して、高級ケトンまたは高級脂肪酸を無添加の比較例1は、印字可能温度が33℃であり、特に比較例1では、平均体温条件で使用できないものであった。
【0054】
また、比較例2は、脂肪族チオエーテルより融点の高い高級ケトンまたは高級脂肪酸の配合量が、10重量部未満であるので、夏期の環境温度(最低30〜33℃に設定した場合)では印字可能であるが、平均体温条件(36℃)以上では使用できないものであった。さらに比較例3は、脂肪族チオエーテルより融点の高い高級ケトンまたは高級脂肪酸の配合量が、40重量部を越えて多量であるので有機低分子化合物の融点が上昇しすぎであり、サーマルヘッドで消去できないものであった。
【0055】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように、低融点の脂肪族チオエーテルと高融点の脂肪族二塩基酸を主成分とし、さらに融点が前記脂肪族チオエーテルの融点より高い有機低分子化合物を添加したものを樹脂母材に分散状態に配合したことにより、通常の使用状態で想定される温度範囲のうち、比較的高い温度でも確実に画像表示および消去が可能な可逆性感熱記録材料となり、特に夏期の使用環境温度やヒトの体温に温められた状態でもサーマルヘッドによる可視画像の消去や表示を確実に行なえる可逆性感熱記録材料となる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】カード形の可逆性感熱記録材料の斜視図
【図2】図1のカード形の可逆性感熱記録材料の拡大断面図
【図3】可逆性感熱記録材料の記録・消去の推定メカニズムの説明図
【符号の説明】
1 カード基材
2 反射層
3 記録層
4 保護被膜層
5 記録表示窓
6 印刷層
7 磁気記録層
8 保護印刷層
Claims (3)
- 樹脂母材に結晶性の有機低分子化合物を分散状態に配合し、前記配合物の透明性を温度によって可逆的に変化させることにより可視画像を表示および消去可能な可逆性感熱記録材料において、
前記有機低分子化合物が、以下の式で表わされる脂肪族チオエーテル
R1 −S−R2
(式中、R1 =C10〜C30のアルキル基、R2 =C10〜C30のアルキル基)
および脂肪族二塩基酸を主成分とし、融点が前記脂肪族チオエーテルの融点より高い有機低分子化合物を、前記脂肪族チオエーテル100重量部に対して10〜40重量部含有するものであることを特徴とする可逆性感熱記録材料。 - 脂肪族チオエーテルの融点より高い融点の有機低分子化合物が、高級脂肪酸である請求項1記載の可逆性感熱記録材料。
- 脂肪族チオエーテルの融点より高い融点の有機低分子化合物が、高級ケトンである請求項1記載の可逆性感熱記録材料。
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