JP2990869B2 - 高分子固体電解質 - Google Patents

高分子固体電解質

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佳子 佐藤
裕史 上町
輝寿 神原
正 外邨
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高分子固体電解質に関
し、特に一次電池,二次電池,コンデンサー,エレクト
ロクロミック表示素子などの電気化学素子用電解質とし
て利用できる高分子固体電解質に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、一次電池,二次電池,コンデンサ
ー,エレクトロクロミック表示素子などの電気化学素子
の電解質としては液体が用いられてきた。
【0003】しかしながら、液体の電解質は漏液が発生
し、長期間の信頼性に欠ける欠点を有している。
【0004】一方、固体電解質はこのような欠点はな
く、前述の種々の電気化学素子に使用すると、素子の製
造の簡略化を図れると同時に、素子自身の小形・軽量化
を図れ、さらに耐漏液性で信頼性の高い素子を提供でき
ることが可能となる。このため、固体電解質に対する研
究開発が活発に行われている。
【0005】従来より、研究開発が行われている固体電
解質としては無機系材料,複合系材料および有機系材料
の三つに大別できる。無機系材料としては、よう化銀,
Li 2Ti37,β−アルミナ,RbAg45,りんタン
グステン酸などが知られている。しかし、無機系材料は
任意の形状に製膜したり成形することが困難な場合が多
い。さらに、原料が高価である。十分なイオン伝導性を
得るためには、室温より高い温度が必要となるものが多
い。このような欠点は、実用上の問題となる。
【0006】この無機系材料の製膜上の欠点をなくすた
め、樹脂と複合化する方法が提案されている(特開昭6
3−78405号公報など)。この方法も、無機材料相
互の界面が外部ストレスに起因する剥離からイオン伝導
性の不安定要因を有する。
【0007】上記の欠点を改良する材料として有機系材
料が注目され研究されている。有機系材料としては、マ
トリックスとなる高分子とキャリアとなる電解質塩とか
ら構成される。それらの系はボリエチレンオキシド(以
下PEOと略す)とアルカリ金属塩が結晶性の錯体を形
成して、高いイオン伝導性を示すことが報告されて以
来、PEO,プロピレンオキサイド,ポリエチレンイミ
ン,ポリエピクロロヒドリン,ポリホスファゼンなどの
高分子固体電解質の研究が活発に行なわれてきた。この
ような有機系材料の高分子固体電解質は無機系材料に比
較して、軽量で柔軟性,高エネルギ密度を有し、材料自
体フィルム加工性を有している。このような優れた特性
を維持しつつ、高いイオン伝導性を有する高分子電解質
を得るため研究が活発に行われている。
【0008】従来提案されている内容としては、前述の
直鎖状の高分子を固体電解質として使う方法がある。こ
の方法は、マトリックス高分子中へ解離したイオンはポ
リマー中の酸素(−O−)と会合体を作って溶媒和し、
電界を印加することにより、イオンは会合と解離を繰り
返しながら拡散輸送される現象を利用したものである。
この時、イオンは高分子の熱運動による高分子鎖の局所
的な配置を変化させ輸送される。従って、高分子はガラ
ス転移温度の低いものを選択すればよい。しかし、これ
らの直鎖状高分子では、室温付近では結晶化が起こり、
イオン伝導性が低下する。
【0009】高分子固体電解質において、室温で高いイ
オン伝導性を実現するためには、アモルファス領域を存
在させることが必要となる。この方法として、ポリ(オ
キシアルキレン)グリセリンをアルキレンジイソシアネ
ートで架橋する方法(特開昭63−55811号公報)
やトリレンジイソシアネートで架橋する方法が提案され
ている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】このような従来の方法
で使用されるイソシアネートは反応性が高く、水分の管
理や使用するイソシアネート自身の活性度の管理などを
材料調合時に行なわなければ、再現性のある架橋状態を
実現することは困難である。さらに、ウレタン架橋体を
電池に使用した場合、ウレタン結合中の活性水素が電気
化学反応により分解,切断を起こし高分子固体電解質が
安定性に欠けるという課題があった。
【0011】本発明は上記欠点を解消し、製造時に取扱
いが容易で、室温で高いイオン伝導性を有し、かつ安定
な高分子固体電解質を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
本発明の高分子固体電解質は、主たる構成成分として一
般式(化3)で示されるポリ(オキシエチレン)ジグリ
コール酸と、一般式(化4)で表わされる数平均分子量
が5000未満のポリ(オキシアルキレン)グリセリン
とを反応させて得られる架橋樹脂と、無機塩を主成分と
するものである。
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】
【0015】また、ポリ(オキシアルキレン)グリセリ
ンは、ポリオキシアルキレン部分が、オキシエチレン,
オキシプロピレン、または、2−オキシブチレンのホモ
ポリマー、または、この中の少なくとも2種類以上から
なるランダム共重合体とし、オキシアルキレン部分の結
晶化を抑えている。
【0016】
【作用】この構成により本発明の高分子固体電解質は、
主たる構成成分として用いるポリ(オキシエチレン)ジ
グリコール酸のカルボン酸と、ポリ(オキシアルキレ
ン)グリセリンの水酸基は加熱することでエステル結合
を形成する。この反応は加熱しなければ起こらないた
め、材料調合時に反応を起こすことはない、従って、再
現性のある架橋状態が実現可能となる。
【0017】さらに、得られる高分子固体電解質は、電
解質の分子中に活性水素が含有されない。このため、電
池などの電気化学素子を構成した場合、電気化学的反応
で構成電解質分子の分解,切断が起こらない。従って、
高分子電解質の劣化が起こらない。このため、一次電
池,二次電池,コンデンサー,エレクトロクロミック表
示素子などの電気化学素子の高分子固体電解質に適する
ものである。
【0018】また、ポリ(オキシアルキレン)グリセリ
ンのポリオキシアルキレン鎖をオキシエチレン,オキシ
プロピレン,2−オキシブチレンの中から2種類以上の
モノマーからなるランダム共重合体にすることで部分的
な結晶化を防ぎ、低温でのイオン伝導性の向上を図る。
【0019】
【実施例】以下、本発明の実施例の高分子固体電解質に
ついて説明する。
【0020】(実施例1)10gのポリ(オキシエチレ
ン)ジグリコール酸(数平均分子量:400、和光純薬
工業)と75gのポリ(オキシプロピレン)グリセリン
(数平均分子量:3500、第一工業製薬)を加熱器と
コンデンサーを付した200mlのフラスコに仕込み、窒
素などの不活性ガスの通気を行いながら、150℃に加
熱し反応系内に生成する水を留去した。得られた高分子
をモレキュラーシーブで脱水処理をしたアセトニトリル
に溶解し、10mol%の過塩素酸リチウムを添加した。
【0021】この溶液をチタン箔上にキャスティグ後、
溶媒をゆっくり蒸発させ、さらに減圧下で150℃,1
0時間処理し、溶媒を完全に除去した。
【0022】このようにして得られた膜(厚さ:30μ
m)を13mmの直径に打ち抜き、両面に13mm径のチタ
ン箔を張り合わせた。その後、インピーダンスアナライ
ザーを用い、1Hz〜1MHzでインピーダンスを測定し
た。複素インピーダンス法から25℃におけるイオン伝
導度を測定すると、1×10-3Scm-1であった。
【0023】次にチタン箔にかえて電極にリチウム箔を
用いて同様の測定を行なうとイオン伝導度は、1.2×
10-3Scm-1であった。
【0024】(実施例2)10gのポリ(オキシエチレ
ン)ジグリコール酸(数平均分子量:400、和光純薬
工業)と75gのポリオキシアルキレン鎖部分がオキシ
エチレンと、オキシプロピレンのランダム共重合体であ
るポリ(オキシアルキレン)グリセリン(数平均分子
量:3500、第一工業製薬)を用いて、他は上記実施
例1と同様の操作を行なって厚さ50μmの膜を得た。
【0025】このようにして得られた膜を13mmの直径
に打ち抜き、両面に13mm径のチタン箔を張り合わせ
た。その後、インピーダンスアナライザーを用い、1Hz
〜1MHzでインピーダンスを測定した。複素インピーダ
ンス法から25℃におけるイオン伝導度を測定すると、
5.0×10-3Scm-1であった。
【0026】次にチタン箔にかえて電極にリチウム箔を
用いて同様の測定を行なうとイオン伝導度は、4.5×
10-3Scm-1であった。
【0027】(実施例3)10gのポリ(オキシエチレ
ン)ジグリコール酸(数平均分子量:400、和光純薬
工業)と75gのポリオキシアルキレン鎖部分がオキシ
エチレンと、2−オキシブチレンのランダム共重合体で
あるポリ(オキシアルキレン)グリセリン(数平均分子
量:3500、第一工業製薬製)を用いて、他は上記実
施例1と同様の操作を行なって厚さ60μmの膜を得
た。
【0028】このようにして得られた膜を13mmの直径
に打ち抜き、両面に13mm径のチタン箔を張り合わせ
た。その後、インピーダンスアナライザーを用い、1Hz
〜1MHzでインピーダンスを測定した。複素インピーダ
ンス法から25℃におけるイオン伝導度を測定すると、
2.0×10-3Scm-1であった。
【0029】次にチタン箔にかえて電極にリチウム箔を
用いて同様の測定を行なうとイオン伝導度は、1.6×
10-3Scm-1であった。
【0030】なお、ポリ(オキシアルキレン)グリセリ
ンの数平均分子量を5000未満とするのは、5000
以上のものはオキシアルキレン鎖が長くなり結晶性が高
くなるため、分子鎖のセグメント運動が規制されるので
不適当なためである。
【0031】
【発明の効果】以上の実施例の説明から明らかなように
本発明の高分子固体電解質によれば、エステル結合を有
する高分子固体電解質であるので、材料調合時の取扱い
が容易であるとともに、活性水素の含有量が少ないた
め、電気化学素子を構成した場合、高分子固体電解質の
分解が起こらない。また、ポリオキシアルキレン鎖をラ
ンダム共重合体とすることで結晶化が抑制され、イオン
伝導度を飛躍的に改善するものである。したがって、一
次電池,二次電池,コンデンサー,エレクトロクロミッ
ク表示素子などの電気化学素子の高分子固体電解質に適
するものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 外邨 正 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (72)発明者 竹山 健一 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−357606(JP,A) 特開 平2−24975(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01B 1/06 - 1/12 C08G 63/668 H01M 6/18 H01M 10/40

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】主たる構成成分として一般式(化1)で示
    されるポリ(オキシエチレン)ジグリコール酸と、一般
    式(化2)で表わされる数平均分子量が5000未満の
    ポリ(オキシアルキレン)グリセリンとを反応させて得
    られる架橋樹脂と、無機塩を主成分とする高分子固体電
    解質。 【化1】 【化2】
  2. 【請求項2】ポリ(オキシアルキレン)グリセリンは、
    ポリオキシアルキレン部分が、オキシエチレン,オキシ
    プロピレン、または、2−オキシブチレンのホモポリマ
    ー、または、この中の少なくとも2種類以上からなるラ
    ンダム共重合体である請求項1記載の高分子固体電解
    質。
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