JP2986706B2 - 圧電素子及びそれを用いた圧電アクチュエータ - Google Patents

圧電素子及びそれを用いた圧電アクチュエータ

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JP2986706B2 JP7070771A JP7077195A JP2986706B2 JP 2986706 B2 JP2986706 B2 JP 2986706B2 JP 7070771 A JP7070771 A JP 7070771A JP 7077195 A JP7077195 A JP 7077195A JP 2986706 B2 JP2986706 B2 JP 2986706B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、X−Yステージの位置
決め機構、超音波モータ、マスフローコントローラ等に
使用される積層型の圧電素子及びこれを用いた圧電アク
チュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、X−Yステージの位置決め機
構、超音波モータ、マスフローコントローラ等のアクチ
ュエータとして使用する微小変位素子として、圧電セラ
ミック材と薄膜電極とを交互に積層してなる圧電素子が
知られており、電界により圧電セラミック材が伸縮して
歪む効果を利用して小ストロークで大きな荷重を必要と
する部位のアクチュエータとして使用されている。この
素子は製造ラインの主要部品に組み込まれていることか
ら、長期信頼性が要求され、しいては、機械的強度や耐
湿性が高いことが要求されている。
【0003】この種の従来の圧電素子の構造を図10に
基づいて説明する。図10は全面電極型の従来の圧電素
子の斜視図を示し、この圧電素子は、例えばチタン酸・
ジルコン酸鉛(PZT)等のセラミック材よりなる圧電
シート2と白金或いは銀−パラジウム等の薄膜よりなる
内部電極4とを交互に多数、例えば100層程度積層し
て構成されている。内部電極4の端部は全周に亘って外
へ露出しており、この内部電極4には、交互に異なる極
性の電圧を印加しなければならないことから、その印加
電極を形成するために、ブロック状の圧電素子の直交す
る2つの側面に絶縁層6、8を塗布形成し、一方の絶縁
層6においては一層おきに内部電極4の端部に沿ってダ
イサーで削って内部電極の端部を再度露出させ、そし
て、他方の絶縁層8においては上記と異なる一層おきの
内部電極4の端部に沿って同様にダイサーで削って内部
電極の端部を再度露出させる。
【0004】そして、上記各絶縁層6、8上に銀ペース
ト等よりなる外部電極10、12を塗布形成して露出さ
せた内部電極4を一層おきに電気的に接続する。従っ
て、一方の外部電極10には、一層おきに内部電極が共
通に接続され、他方の外部電極12には上記と異なった
一層おきの内部電極が共通に接続されるので、これらの
外部電極10、12間に直流電圧を印加することにより
各圧電シート2に電界を印加してこれに電歪効果を生ぜ
しめることができる。
【0005】ところで、各圧電シート2の厚みは、約1
00μmと非常に薄いことから僅かな水分が素子側面に
付着しただけでも隣設する内部電極4同士が容易に短絡
して使用不能になったり、或いは、内部電極として白金
と比較して安価な銀−パラジウムを用いた場合にはこれ
がマイグレーションを起こしてツリー状に針状結晶が生
長し、これが隣設する内部電極4に至って同様に短絡現
象を起こしてしまい、湿度対策が重要課題となってい
る。そこで、耐湿性を向上させるために、圧電素子全体
を、伸縮可能な密閉型のステンレススチール缶内に収容
して耐湿性を向上させた技術や、特開平3−27008
5号公報に示すような交互電極型の圧電素子が開発され
た。図11は交互電極型の従来の圧電素子を示す斜視
図、図12は図11に示す圧電素子の各圧電シートの表
面状態と積層状態を示す図である。
【0006】この交互電極型の圧電素子は、圧電シート
全面に内部電極を形成した図10に示す全面電極型の圧
電素子と異なり、一部のみに圧電シート2の端辺に至る
電極取り出し部14を形成しておく以外は圧電シート2
の表面の周縁部には何ら内部電極を形成せずにシート端
辺より僅かな間隔を隔てて内部電極4を形成する。そし
て、このように形成した圧電シート2を図12に示すよ
うに一層おきに内部電極の電極取り出し部14が交いに
反対方向になるように積層し、これにより電極取り出し
部14の端部が外側に露出するので、ここに外部電極1
0、12を塗布することにより、一層おきの内部電極同
士を電気的に接続する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前者のよう
に圧電素子全体を密閉型のステンレススチール缶に収容
する構造にあっては、耐湿性は向上できるが、密閉缶を
用いることから素子が大型化して省スペース化に反する
のみならず、余分な部品を用いなければならないことか
らコスト高を招来するという問題点があった。また、後
者の交互電極型の圧電素子の場合には、内部電極の露出
部分が少なくて耐湿性を改善でき、しかも工程数も少な
いのでコスト低減には寄与できたが、内部電極を埋め込
んだ部分と埋め込んでいない部分との間に、動作時に大
きな応力が発生し、クラック等が発生し易くなるという
新たな問題が発生した。これを図13を参照して詳しく
説明する。
【0008】図13は図12に示す交互電極型の圧電素
子の断面図であり、図中30、32は一層おきの内部電
極に電気的に接続される外部電極である。多数の圧電シ
ートを積層してなる圧電素子は、図中縦方向において上
下に隣設する内部電極4同士がシートを介して重なって
伸縮に寄与する部分である圧電活性部16と、隣設内部
電極が重ならずに伸縮に寄与しない部分である圧電不活
性部18とに分かれる。この圧電素子を駆動すると圧電
活性部16が電歪効果で伸縮するのに対して圧電不活性
部18は何ら伸縮しないので上記伸縮作用を拘束するよ
うに作用し、この結果、主に圧電活性部16と圧電不活
性部18との境界部分20に大きな応力が作用してクラ
ックが発生し易くなるという問題があった。
【0009】このような拘束力を軽減するために、後者
にあっては、圧電活性部と圧電不活性部との応力を極力
緩和するために薄いセラミック層を10〜25層程度の
低積層枚数で構成される小型のサブユニットを形成し、
このサブユニットを複数個接続して大きなアクチュエー
タユニットを製造するようにしているが、前述のように
長期的な使用に際しては、断続的な応力が印加されるた
め、圧電不活性部と圧電活性部間に徐々にクッラクが生
じ、そのクッラクから水分が侵入し、やがては素子の破
壊につながるのが現状である。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、圧電素子
の構造について鋭意研究の結果、圧電活性領域と圧電不
活性領域との間にクッラクが発生する一つの原因は、圧
電活性領域と圧電不活性領域との焼成時の収縮率の差に
起因することを明らかにした。つまり、圧電活性領域は
圧電不活性領域に比べて焼成時の収縮率が大きいため
に、焼成後の冷却中に圧電活性領域は圧縮の応力を、圧
電不活性領域は引張の応力を残したままとなる。すなわ
ち、焼成時の残留応力が内在した状態の素子に交番電圧
を印加するなどの長期的な繰り返し応力を加えた場合、
その残留応力が解放される方向に素子が徐々に変形し、
やがてはクラックを生じるのである。これを解消するた
めには、圧電活性領域と、圧電不活性領域の焼成時の収
縮率の整合をはかるために、圧電シートの表面の圧電不
活性領域に金属膜等の収縮率整合薄膜を形成し、前記の
残留応力の低減を図れば良いという知見を得ることによ
り、本発明がなされた。すなわち、上記問題点を解決す
るために、本発明は、圧電シートの表面に、その端辺か
ら所定の間隔を隔てて内部電極を形成することにより、
圧電不活性領域を設けた圧電素子板を複数枚積層してな
る圧電素子において、前記圧電素子板の前記圧電不活性
領域に、収縮率整合薄膜を形成したものである。
【0011】
【作用】本発明は、以上のように構成したので、内部電
極を形成していない圧電不活性領域に収縮率整合薄膜が
設けられた結果、この部分における圧電素子の焼成時に
おける収縮状態が他の部分と略同じになり、残留応力の
低減によりクラック等の発生を抑制することが可能とな
る。この場合、収縮率整合薄膜としては、金属薄膜をベ
タ状に形成してもよいが、圧電シート間の密着性を考慮
してこれを散在させて設けるのがよく、特に水玉模様状
に金属薄膜を散在させることにより密着性も高く維持す
ることができる。
【0012】このような金属薄膜は、内部電極と同じ材
料を用いることにより、内部電極の形成時に同時に作成
することができ、工程数を増やすことなく簡単に作成す
ることができる。この圧電素子に、内部電極へ交互に異
なる極性の電圧を印加するための第1と第2の外部電極
を形成する。このように形成された圧電素子は、必要と
する伸縮ストロークを得られる個数だけ、複数個積み重
ねて接合され、圧電アクチュエータを得ることができ
る。
【0013】
【実施例】以下に、本発明に係る圧電素子及びこれを用
いた圧電アクチュエータの一実施例について詳述する。
図1は本発明に係る圧電素子及びこれを用いた圧電アク
チュエータの基本的製造工程を示す工程図、図2は圧電
シートに設けた収縮率整合薄膜を示す拡大図、図3は図
1に示す圧電素子を示す側面図である。尚、先に説明し
た従来装置と同一部分については同一符号を付して説明
する。
【0014】図1に示すようにこの圧電素子22は、P
ZT等のセラミック材よりなる厚さ100μm程度、縦
横25mm程度の薄板状の圧電シート2の表面に、その
端辺2Aから所定の間隔Dを隔てて、例えば銀−パラジ
ウム等よりなる非常に薄い内部電極4を形成しており、
一部の端辺2Bに対してのみ内部電極4の薄膜金属を部
分的に延在させて端辺2Bから外部に露出させて、電極
取り出し部14を形成している。これにより圧電素子板
21が形成されることになる。圧電シートの薄板形成
は、例えばドクターブレード法により行なわれ、内部電
極4の形成はスクリーン印刷等を用いて行なう。この場
合、電極取り出し部14以外の内部電極4を取り囲むよ
うにコ字状になされた領域、すなわち圧電シート上の、
内部電極4を形成していない領域は、後述するように電
界が印加されずに圧電効果に寄与しない領域となること
から圧電不活性領域24となり、これに対して内部電極
4が形成されている領域は圧電活性領域26となる。
【0015】そして、略コ字状の圧電不活性領域24に
本発明の特長とする収縮率整合薄膜28を、内部電極と
同じくスクリーン印刷等を用いて形成する。この場合、
この整合薄膜28は、内部電極4と同じ位い薄い金属薄
膜により形成し、圧電シート2の各端辺2A,2Bより
も僅かに内側に位置させると同時に、内部電極4からも
必ず僅かに離間させて形成し、後述するように積層した
ときに電気的に浮遊状態となるように設定する。圧電不
活性領域の幅Dが、約1.0mmであるのに対して、整
合薄膜28の幅は、約0.5mm程度に設定する。整合
薄膜28としては、全面ベタ状の金属薄膜として形成し
てもよいが、積層時の圧電シート間の密着性を考慮する
と、例えば図2に示す拡大図のように微小円形状の整合
薄膜28を密集させて例えば水玉模様状に散在させて設
けるように形成するのが好ましい。これは、圧電シート
同士の焼成後の強度よりも、圧電シートと電極間の焼成
後の強度が弱く、圧電素子全体の強度を考えると、でき
るだけ圧電シート同士の密着を多くする必要があるため
である。尚図2において、円形の整合薄膜28間の距離
は説明の容易化のために大きく記載しているが実際には
非常に小さく、例えば0.06〜0.15mm程度に設
定されている。
【0016】また、整合薄膜を散在させて設ける場合に
は、個々の形状は円形に限らず、例えば楕円形状、矩形
状、三角形状などどのような形状でもよい。また、この
整合薄膜24の材料としては、内部電極と同じ材料、例
えば銀−パラジウムを用いればよく、その場合には、ス
クリーン印刷等により内部電極の形成時に同時に整合薄
膜28も形成することができ、工程数も増加させる必要
がない。ただし、収縮率の整合を図るための同様の効果
が得られるのであれば、内部電極と同一の材料でなくて
もよい。このように、圧電シート2上に内部電極4と整
合薄膜28を形成して圧電素子板21の形成が完了した
ならば、同様に形成した多数の圧電素子板21を複数
枚、例えば25枚、図1(B)に示すように積層し、冷
間静水圧法(CIP:Cold Isostatic
Press)によりプレスしつつ例えば120℃程度の
温度下で圧着処理し、更にこれを1075℃程度の高温
で焼結処理して図1(C)に示すような単体の圧電素子
22を形成する。
【0017】圧電素子板21の積層に際しては、上下方
向に隣り合って接合する圧電素子板21間の電極取り出
し部14の位置する方向を互いに逆方向となるように積
層する。従って、圧電シート2は一層おきに同じ方向に
電極取り出し部14が位置するようになっている。この
結果、焼結後の圧電素子の側壁には、図1(C)に示す
ように一層おきに電極取り出し部14の端部が外部に露
出することになる。そして、圧電素子の電極取り出し部
14が露出している2つの側面に沿って銀−ペースト等
を塗って例えば700℃程度で焼成することにより第1
及び第2の外部電極30、32を形成する。そして、こ
の外部電極30、32の間に直流電圧を印加することに
より、圧電シートのセラミック材を分極させ、圧電素子
を完成させる。
【0018】前述したように、一般に、圧電素子の伸縮
ストロークは非常に小さく、例えば0.1mm程度の厚
みの圧電シートに150ボルト程度の直流電圧を印加し
た時に得られる伸縮量は0.1μm程度なので、必要と
するストロークに見合った伸縮量を得るためにはこの圧
電素子を複数個直列に接続する。そこで、図1(C)に
示すように形成した圧電素子22を図1(D)に示すよ
うに複数個、図示例では7つ積み上げて接着剤等により
接合し、圧電アクチュエータ34を完成する。このよう
に、一層おきに内部電極を電気的に共通に接続すること
ができ、両外部電極30、32間に直流電圧を供給する
ことにより、圧電シートに電界を印加することが可能と
なる。
【0019】図1(C)に示すような形状に圧電素子を
焼結した時には、その表面に非常に僅かではあるが凹凸
が生じているので、これを積み上げるに先立って圧電素
子の上下面を表面研磨して平坦性を確保するのがよい。
この場合、表面研磨により内部電極が露出することを防
止するために、図3に示すように、圧電素子22の上下
面に圧電シートの約3層分に相当する厚み(300μm
程度)で、内部電極と整合薄膜を形成していない圧電シ
ートのみをダミーとして積層しておくのがよい。この表
面研磨により、例えば焼結時の高さが2.7mm程度で
あった圧電素子を削り込んで2.5mm程度に設定す
る。また、上述のように圧電素子板を約25枚程積層し
て圧電素子22を形成した理由は、上述のような圧電シ
ートの素材及び寸法では、この積層数を30枚以下の範
囲内、好ましくは25枚程度にした時に積層数をあまり
少なくし過ぎることなく内部応力を減少できるからであ
る。これを図4に示すシミュレーション結果に基づいて
説明する。図4は積層圧電シート数を種々変えたときの
圧電素子中心部からの距離と積層方向の応力との関係の
シミュレーション結果を示すグラフであり、グラフの上
方に圧電素子の対応部分を示している。
【0020】これは一枚のPZTの圧電シートの厚みを
0.09mmとし、圧電不活性部(圧電不活性領域)の
長さを0.6mmに設定して、150ボルトの直流電圧
を印加した時の結果を示す。図中、横軸の原点は素子の
中心部を示し、最大値2.5mmは素子の表面を示して
いる。グラフから明らかなようにシートの積層枚数が多
くなるほど、圧電不活性部と圧電活性部との界面での応
力が大きくなり、特にクラック発生の最大原因である引
っ張り応力がその積層枚数に依存して増加する。従っ
て、積層枚数を低減することで、引っ張り応力の低減は
図れるが、残念ながら圧電活性部と圧電不活性部との界
面では必ず引っ張り応力が発生する。しかしながら、素
子の耐湿性の向上を検討する場合、水分の侵入経路を断
つことを最大の目的と考えると、素子の表面でのクラッ
クを防止することが望ましく、その部分でのクラックの
発生を最小限に抑えればよいといえる。本シミュレーシ
ョン結果では、積層枚数を30層以下にすることで、素
子表面部での応力が圧縮側に働くことが明らかになっ
た。従って、積層枚数を25枚程度にすることで、素子
表面にクラックの入りにくい圧電サブユニットを形成す
ることが可能となる。なお、積層枚数をあまり少なくし
すぎると生産効率が低下するのであまり好ましくない。
ここで、本シミュレーションの結果は、圧電シートと内
部電極間の密着状態が良好で、かつ内部に残留応力等が
内在していない、理想的な焼結体をモデルに用いてい
る。従って、前述のように焼結時の収縮率の整合を図る
ための薄膜を形成しない場合、素子内での密着強度が低
減し、例えば圧電活性部と圧電不活性部近傍に生じる引
っ張り応力により、素子の側面にまで到達するような致
命的なクラックを生じる。このように内部電極4を形成
していない圧電不活性領域24に収縮率整合薄膜28を
形成した圧電シート2を多数枚(本シミュレーションの
結果に基づく枚数)積層して圧電素子を形成することに
より、素子の焼結時の圧電不活性領域24と圧電活性領
域26におけるセラミック材の収縮率が略同じになり、
残留応力を生ぜしめることがなくなり、密着強度が高
く、クラックの発生し難い素子を提供することが可能と
なる。
【0021】この場合、上述のように整合薄膜を例えば
水玉模様状に散在させて形成することにより、圧電シー
ト間の密着強度の劣化も少なくなり、一層クラックの発
生を防止することができる。また、上述のように圧電シ
ートの積層枚数も最大25枚程度とすることにより、圧
電アクチュエータ製造時の素子積み上げ数もさほど多く
なることなく、クラックに対する強度の大きな圧電アク
チュエータを得ることができる。
【0022】上記結果を実際の素子の写真に基づいて説
明する。図5は水玉模様状の収縮率整合薄膜28を用い
た本発明の焼成後の圧電素子を示す断面写真、図6は従
来の、整合薄膜を用いていない焼成後の交互電極型の圧
電素子を示す断面写真であり、図7は図5に示す圧電素
子に用いた内部電極と整合薄膜のパターンを示す図であ
る。尚、図6に示す圧電素子に用いた電極パターンは、
図7に示すパターンから整合薄膜28を取り除いたパタ
ーンである。図5(B)、図6(B)は、それぞれ図5
(A)及び図6(A)の端部を示す拡大写真である。こ
の図5及び図6に示す圧電素子の焼結条件は、それぞれ
1150℃で5時間の焼結を行なった。この図6は、先
に説明した特開平3−270085号公報の技術に対応
するものである。この写真から明らかなように図5に示
す本発明の圧電素子の場合には、何らクラックや剥がれ
が生じていないが、図6に示す従来の圧電素子の場合に
は、特に図6(B)に示すように黒い横すじが観られ、
クラックや剥がれが発生しているのが分かる。尚、整合
薄膜は水玉模様状のために図5(B)においても明瞭に
は写真に表れていない。
【0023】図6(A)と図5(A)と比較すれば明ら
かなように図6(A)に示す従来素子の場合には、素子
中心側の内部電極のある圧電活性部と両端部の圧電不活
性部とのセラミック材の焼成後の収縮率が異なるため、
表面に凹部状に窪みができてしまって大きな内部応力が
発生していることが推測されるが、図5(A)に示す本
発明の素子の場合には、表面は平坦になって窪みは発生
しておらず、内部応力もほとんど発生していないことが
推測される。また、内部電極として白金を用いた場合に
は、このメルティングポイントが非常に高いことから、
圧電素子を1200℃以上の高温で焼成できるので全て
のセラミック材が完全に焼き固められて一様に収縮して
密度が理論値に近くなり、焼成後の素子表面に凹凸等が
生ずることはないが、内部電極として白金に比べて安価
な銀−パラジウムを用いた場合には、この銀−パラジウ
ムのメルティングポイントが1150℃程度なので焼結
最高温度を白金の場合よりも低い、1000〜1150
℃の範囲に設定せざるを得ず、そのためにセラミック材
で焼結しきらない部分が残ってしまい、前述のように素
子表面に凹凸が発生していた。
【0024】しかしながら、本発明のように収縮率整合
薄膜を設けることにより、焼結後においても素子表面に
は凹凸が発生しない。従って、素子表面に凹凸を発生さ
せることなく白金を用いた場合よりも、低い温度で圧電
素子を焼結することができ、焼結操作を促進させること
が可能となる。また、本発明の圧電素子を複数個積み上
げて、5.5mm×40mmの角柱状の圧電アクチュエ
ータを作り、これと従来の全面電極型のアクチュエータ
と密閉缶封入型のアクチュエータとを用いて耐湿度試験
を行なった。図8はその試験結果を示すグラフである。
【0025】本発明のアクチュエータの仕様及び試験環
境は以下の通りである。 変位量 :30〜33μm 静電容量 :1.0〜1.1μF 絶縁抵抗 :1Gオーム以上 外径寸法 :5.5mm角×40mm 試験環境 :85℃/湿度90% コスト :現行品の1/3以下 印加電圧 :直流150V 試験装置 :アドバンテスト社製の高絶縁抵抗測
定器 R8340 このグラフから明らかなように全面電極型のアクチュエ
ータは試験開始直後に電気伝導率が急上昇して短絡現象
を生じており、また、密閉缶封入型のアクチュエータは
電気伝導率は比較的高い値で一定となっている。
【0026】これに対して本発明の圧電アクチュエータ
の場合には、電気伝導率が低い値で略一定となってお
り、耐湿性が非常に高く、好ましい特性を示しているこ
とが判明した。尚、本発明の圧電アクチュエータの試験
結果の値は、上下に振れているが、これはピコアンペア
レベルの低い電流値を検出していることからノイズによ
る影響を受けているためである。尚、上記実施例では、
説明を判り易くするために図1に示したように圧電シー
ト上には1つの内部電極しか形成しなかった場合につい
て説明したが、実際には1つの圧電シート上に多数の内
部電極を形成して量産効果を出している。例えば図9に
示すようにドクターブレード法により形成した1つの圧
電シート2の表面に複数、図示例にあっては4個の内部
電極4とこれに対応させて4つの収縮率整合薄膜28を
銀−パラジウムでスクリーン印刷を用いて同時に形成す
る(図9(A))。
【0027】そして、このように形成した圧電シート2
を多数枚、例えば前述と同様にして25枚積層して冷間
静水圧法により圧着する(図9(B))。この積層時に
は、電極取り出し部14が上下に隣り合うシート同士で
互いに逆になるように積層するのは勿論である。次に、
例えばダイシングソーを用いて上記積層シートを単体の
圧電素子サイズに切断し、図9(C)に示すように一度
に4個の圧電素子を形成する。後の処理は図1にて説明
したと同様に、素子の上下面に表面研磨処理を施して、
その側面に銀ペーストにより外部電極を焼き付ければよ
い。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように本発明の圧電素子及
びそれを用いた圧電アクチュエータによれば次のように
優れた作用効果を発揮することができる。圧電素子板の
圧電不活性領域に収縮率整合薄膜を設けるようにしたの
で、圧電活性領域に対してセラミック材の収縮率の差が
ほとんどなくなり、従って、内部歪みをなくして残留応
力の発生を抑制することができる。残留応力の発生を抑
制することができることからクラック等の発生も抑制で
き、耐湿性の向上も図ることができる。製造が簡単で工
程数も増加することがないので、安価に提供することが
できる。収縮率整合薄膜を例えば水玉模様状に散在させ
ることにより、圧電シート間の密着性が劣化することも
なく、その分、クラックの発生を一層抑制することがで
きる。また、収縮率整合薄膜を内部電極と同一材料で形
成することによりこれらを同時に形成することができ、
一層コストの削減に寄与することができる。更に、この
ように圧電素子を用いて圧電アクチュエータを製造する
ことにより、安価で且つ耐湿性及び耐久性に優れたアク
チュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る圧電素子及びこれを用いた圧電ア
クチュエータの基本的製造工程を示す工程図である。
【図2】圧電シートに設けた収縮率整合薄膜を示す拡大
図である。
【図3】図1に示す圧電素子を示す側面図である。
【図4】積層圧電シート数を種々変えた時の圧電素子中
心部からの距離と積層方向の応力との関係のシミュレー
ション結果を示すグラフである。
【図5】水玉模様状の収縮率整合薄膜を用いた本発明の
圧電素子を示す断面写真である。
【図6】従来の交互電極型の圧電素子を示す断面写真で
ある。
【図7】図5に示す圧電素子に用いた内部電極と整合薄
膜のパターンを示す図である。
【図8】本発明の圧電アクチュエータと従来の圧電アク
チュエータの耐湿性の試験を行なった時の結果を示すグ
ラフである。
【図9】本発明の圧電アクチュエータの実際の製造工程
を示す工程図である。
【図10】従来の全面電極型の圧電アクチュエータを示
す斜視図である。
【図11】従来の交互電極型の圧電アクチュエータを示
す斜視図である。
【図12】図11に示すアクチュエータの圧電シートの
表面状態と積層状態を説明するための説明図である。
【図13】図11に示すアクチュエータの側面図であ
る。
【符号の説明】
2 圧電シート 2A,2B 端辺 4 内部電極 14 電極取り出し部 16 圧電活性部 18 圧電不活性部 21 圧電素子板 22 圧電素子 24 圧電不活性領域 26 圧電活性領域 28 収縮率整合薄膜 30 第1の外部電極 32 第2の外部電極 34 圧電アクチュエータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01L 41/083

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧電シートの表面に、その端辺から所定
    の間隔を隔てて内部電極を形成することにより、圧電不
    活性領域を設けた圧電素子板を複数枚積層してなる圧電
    素子において、前記圧電素子板の前記圧電不活性領域
    に、収縮率整合薄膜を形成したことを特徴とする圧電素
    子。
  2. 【請求項2】 前記収縮率整合薄膜は、前記圧電不活性
    領域に散在させて形成されることを特徴とする請求項1
    に記載の圧電素子。
  3. 【請求項3】 前記収縮率整合薄膜は、水玉模様状に散
    在されていることを特徴とする請求項1または2に記載
    の圧電素子。
  4. 【請求項4】 前記収縮率整合薄膜は、前記内部電極を
    形成する材料と同一材料により形成されていることを特
    徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の圧電素子。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに規定される
    圧電素子を、複数個積層し、前記内部電極を一層おきに
    第1の外部電極に電気的に接続すると共に前記とは異な
    った内部電極を一層おきに第2の外部電極に電気的に接
    続したことを特徴とする圧電アクチュエータ。
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