JP2982969B2 - アモルファス合金薄帯の製造方法 - Google Patents

アモルファス合金薄帯の製造方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、高周波磁界において、優れた高透磁率特性
ないし高角形磁気特性を発揮するCo系アモルファス合金
薄帯の製造方法に関する。
〔従来の技術〕
従来、スイッチング電源のコモンモードチョークコイ
ル、磁気ヘッド、磁気センサー等の高透磁率材料には、
フェライトが、また、スイッチング電源の可飽和リアク
トルやノイズアブソーバ等高角形比材料には、50Ni−Fe
合金ストリップよりなる巻磁心が、それぞれ使われてき
た。
フェライトは、渦電流損が少ない利点はあるが、飽和
磁束密度が低く、温度特性が悪いという欠点があった。
また、50Ni−Fe合金は、飽和磁束密度が高く、低周波数
域における角形比は高いものの、渦電流損、ヒステリシ
ス損が大きく、高周波用途には対応できない。
このため、フェライトに比して磁束密度が高く、50Ni
−Fe合金など結晶金属に比して渦電流損を含むコア損失
が小さい高周波磁性材料として、アモルファス磁性合金
が有望視され、主に巻磁心として上記二様の用途に実用
されるようになった。特にCoを主元素とし、これにFe,N
i,Mn等原子の最外殻電子数がCoに近い元素を少量添加す
ることによって、飽和磁歪定数を零に近づけたCo系のア
モルファス合金は、保磁力が小さく、軟磁性材料として
最も優れた素材ということができる。Co系のアモルファ
ス合金は、高周波帯域においても、電気抵抗が高くかつ
10〜50μmの薄肉リボンとして使用されることから、渦
電流損失が低くフェライトと同等以上の低損失特性を有
している。
上記磁歪が零ないし零に近いCo系アモルファス合金
は、キューリー温度以上、結晶化温度以下の温度で加熱
保持後、常温に10℃/sec以上の冷却速度で急冷する熱処
理を施すことによって、透磁率を高めて、コモンモード
チョークコイル、磁気へッド、各種磁気センサーに供し
たり、磁界中焼なまし−冷却処理によって磁路方向に一
軸異方性を付与して角形比を高め、可飽和リアクトルや
ノイズアブソーバ等に実用されている。なお、両用途と
も添加元素として、上記以外の広義の遷移金属元素を一
種以上含むことによって、熱的安定性を高めたり、飽和
磁歪定数を微細に調整することが行なわれている。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記従来技術の中で、高透磁率化すること、および高
角形化することは、以下のようになされてきた。
すなわち組成的にはCoを主体とし、これに強磁性元素
としてFe,Ni,反強磁性元素Mnを適宜添加し、磁気異方性
の原因である磁歪を零ないし零に近づけること、および
熱処理による内部応力の除去の2点により種々の高透磁
率アモルファス合金が開発されてきた。前者の組成に関
しては、例えば、S.Ohnuma and T.Masumoto:“Rapidly
Quenched Metals III"(ed.B.Cantor,The Metals Socie
ty,London,1978)P.197.において、Fe/(Co+Fe)の原
子比が5/100となるCo−Fe−Si−B,ないしCo−Fe−P−
Bの合金では、ほぼ飽和磁歪定数が零となること、これ
ら合金が良好な軟磁気特性を示すことが示されている。
また、Feばかりでなく、Niについても上記文献の中で提
案され、Feの代わりにMnによっても同様の効果が得られ
ることが、H.R.Hilzinger and W.Kung:J/Magn.Mater.15
−18(1980)P.1357,先納,榊間,広田:第3回日本応
用磁気学会学術講演概要集3(1979)P.71に示されてい
る。
これらの磁歪零合金でも、より高透磁率の特性を得る
には、磁区の固着化を回避しつつ焼なまし処理する必要
がある。すなわち、一軸磁気異方性の生成を避けなが
ら、磁区の固着を取り除く熱処理として、キュリー点以
上で焼なましした後、急冷(水焼入など)する方法が有
効である。この指針は、H.Fujimori and T.Masumoto:Su
ppl.Sci.Rep.RITU,A(1978),P,181によって実験的に明
らかにされた。この場合、キュリー点が結晶化温度を越
えていると、このような焼なましが不可能となるので、
合金のキュリー点は結晶化温度よりも低くなければなら
ない。このため、ある一定程度飽和磁束密度の減少を犠
牲にして、C,B,P,,Si,Geなど半金属含有量を高めるこ
と、ないしはCr,Mo,Nb等遷移金属を添加することなどが
なされている。特に後者の遷移金属の添加は、キュリー
点の低下だけでなく、一般に結晶化温度をも高めるの
で、より有効であり、また軟磁性の熱的安定性を高める
面でも効果的である。
これら磁歪零の高透磁率合金の実例としては、Co
65・7Fe4・3Si17B13,Co61・6Fe4・2Ni4・2Si10
B20,Co69・6Fe4・6Mo1・8Si8B16,Co66・8Fe
4・5Ni1・5Nb2・2Si10B15,Co70Mn6B24等が挙げら
れる。これらの最適熱処理後の1KHzにおける実効透磁率
μe1kは、各々55×103,120×103,10×103,26×103と報
告されている。〔出典は各々、高橋、藤森、増本:日本
金属学会講演概要(1977.4)P.393,S,Ohnoma and T.Mas
umoto:“Repidly Quenched Metals III"(ed.B.Cantor,
The Metals Society,London,1978)P.197,船越,金森,
真鍋:電子通信学会講演概要(1977)1−221,長谷川,
島貫,猪俣:日本金属学会講演概要(1978.4)P72,金
平,大沼,白川,井上,増本:日本金属学会講演概要
(1981.4)P.162による〕 以上が、高透磁率化に関する従来技術であるが、磁区
の固着化を回避させる熱処理条件として、むしろ当初考
えられたのは、アモルファス巻磁心の磁路方向に磁場を
印加しつつ、キュリー温度以下で熱処理するいわゆる磁
界中焼なましである。これは、磁界中では磁壁が存在し
ないので、磁壁の固着化が起こり得ず、軟磁性が向上す
ることに依っている。しかし、この場合には、一軸磁気
異方性が誘発されるためB−Hヒステリシスループが角
形性となり、最大透磁率は高いが、初透磁率は大きくな
らない。したがって、磁化初期の急峻な立上がりを利用
する高透磁率用途には、磁界中焼なまし−冷却処理は適
用されず、むしろこの方法は、高角形性を積極的に利用
して、スイッチング電源の可飽和リアクトルやノイズア
ブソーバ等へ適用されるように至った。
しかしながら、山内、吉沢、中島、宮崎:電気学会マ
グネティクス研究会資料MAG−84−115(1984)に指摘さ
れるように、一般に高角形比となるとコア損失が大きく
なる。たとえば、80%以上の高い角形比(Br/Bs≧80
%)を維持しつつ、低損失化するには、磁歪原因による
誘導異方性を排除する(すなわち飽和磁歪定数を零とす
る)ことが前提となる。したがって、組成的には、高角
形比材料と高透磁率材料は、基本的には同一範疇の組成
が適用されている。具体的には、猪俣.沢:電気学会全
国大会シンポジウム〔S.3〕,S.3−17,1982に示された
(Co0・90Fe0・06Nb0・0475Si15B10合金などを挙
げることができる。
本発明の課題は、これら磁歪の低いCo系アモルファス
合金の高透磁率ないし高角形比用途の合金の性能、特に
高周波磁性をさらに向上させようとするものである。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的に鑑み、鋭意検討の結果、本発明者は、いわ
ゆる磁歪を零ないし零近傍に調整し、磁場中熱処理を施
して高角形比と低損失特性を得る、あるいは高透磁率を
得るためキュリー温度以上結晶化温度以下の温度におい
て加熱保持後常温に10℃/sec以上の冷却速度で急冷する
熱処理を施して実用に供されるCo系アモルファス合金に
おいて、以下に示す特定の溶湯がノズルを介して、回転
中のロール表面に押し出され、該ロール表面で急冷凝固
されて薄帯となる際に、該ロール表面の温度が100℃以
上、かつ当該組成のアモルファス合金の結晶化温度Txよ
り50℃低い温度(Tx−50)℃以下に制御されて製造され
ることで、該Co系アモルファス合金の高周波磁性が向上
することを見出し、本発明に想到した。
すなわち本発明は、 一般式(Co1-a-b-cNiaFebMncxTYMZ ここで、T:遷移金属, M:C,B,P,Si,Geからなる元素の一種以上 x,y,zは原子%であって、 x+y+z=100,0≦y≦8, 13≦z≦28 a,b,cは原子比であって、 0≦a≦0.20,0≦b≦0.20 0≦c≦0.20 で示される組成を有する溶湯をノズルを介して、回転中
のロール表面に供給し、該ロール表面で急冷凝固せしめ
る飽和磁歪定数±5×10-6以下のアモルファス合金薄帯
の製造方法であって、前記ロール表面の温度を100℃以
上、かつ当該組成のアモルファス合金の結晶化温度Txよ
り50℃低い温度(Tx−50)℃以下に制御することを特徴
とするアモルファス合金薄帯の製造方法である。
また、上記ロール表面の温度を、一定に維持するこ
と、特にロール表面が熱的平衡に至るまでの間、外部か
ら該ロール表面を加熱して、その温度を一定に維持する
ことがより好ましく、そのための加熱手段として、赤外
線輻射加熱ヒーターを用いることが望ましい。
なお、本発明が対象とするアモルファス合金薄帯の板
厚は、単ロール法によって作製し得る範囲内であって、
前述のように10〜50μmである。実際上は、高周波帯域
での軟磁性の面では薄肉ほど好ましいが、大気中で安定
して製造し得ることを考慮すれば、15〜25μmが代表的
な板厚範囲である。また、上記板厚の薄帯を得るための
ロールの回転速度は、周速20m/sec以上が必要であり、
代表的には25〜40m/secである。
本発明において、ロール表面の温度を100℃以上、か
つ当該組成のアモルファス合金の結晶化温度Txより50℃
低い温度(Tx−50)℃以下とすることによって、急冷熱
処理後の透磁率あるいは磁場中熱処理後の角形比Br/Bm
が向上し、かつ急冷凝固ままのアモルファス合金薄帯の
靭性が向上する。ロール表面の温度の相違によって得ら
れるアモルファス合金薄帯の熱処理後の高周波磁性が異
なるメカニズムについて、明確なところは解明されてい
ないが、ロール表面の温度が100℃未満と低い場合に
は、アモルファス合金薄帯のロール接触面側の表面粗度
が粗いとか、溶湯がロール表面に供給されてからアモル
ファス薄帯となってロール表面から剥離するまでのロー
ル表面上の接触時間(密着時間)が短いなどの現象が認
められる。したがって、初期の微細なロール表面の凹凸
に起因して、溶湯が凝固する間にロール表面上に巻き込
まれる気流が薄帯のロール接触面側の気泡の痕跡となっ
ているが、ロール表面温度が高い場合には気泡の痕跡の
サイズが小さく、故にロール表面温度が低い場合に比べ
溶湯の実効的な冷却が速くなっている可能性がある。薄
帯のロール表面上の接触時間(密着時間)も気泡の大小
による差と関連していると思われる。この点の傍証とし
て、ロール表面粗度を細かく仕上げた場合に、薄帯のロ
ール表面上の接触時間(密着時間)が長くなることを本
発明者は確認している。
また、ロール表面温度を当該組成のアモルファス合金
の結晶化温度Txより50℃低い温度(Tx−50)℃以下とす
ることは、急冷凝固ままでアモルファス構造を取得する
上で必須である。急冷凝固によりアモルファス構造を得
るには、当該組成のアモルファス形成のための臨界冷却
速度以上の冷却速度で冷却し、該組成のアモルファスの
ガラス化温度以下にもち来たす必要がある。しかしなが
ら、ガラス化温度は冷却速度に依存すること、厳密には
ガラス化温度は結晶化温度より低いのであるが、アモル
ファス金属のガラス化温度は測定が困難でかつ測定の容
易な結晶化温度にほぼ等しいことから、アモルファス構
造を形成するためのロール表面温度の上限は、その該当
組成の結晶化温度と考えられる。もっとも、結晶化温度
(ガラス化温度)以下であっても、長時間の恒温加熱に
よって結晶化が進行するので、ロール上の冷却過程によ
っては、凝固した薄帯のアモルファス化が阻害されるこ
ともあり得る。本発明者の得た知見としては、ロール表
面温度を結晶化温度Txより50℃低い温度(Tx−50)℃以
下とすれば、全部もしくは部分的な結晶化および脆化を
生じることなく所定の目的である高周波磁性の向上を図
ることができる。
上述のようなロール表面温度により最適熱処理の施し
た後の高周波磁性に差異が生じることは、薄帯製造中の
ロール表面温度の計測によって関連付けられる。ロール
は多くの場合、周速20m/sec以上で高速回転しているた
め、非接触の放射温度計等により測定する。しかしなが
ら、通常アモルファス合金薄帯製造用のロールは、前述
のごとくロール接触面側の気泡の巻き込みを抑制して実
効的な冷却速度を高めること、およびこの要因が薄帯の
面粗さにも影響することから、鏡面に近い研磨加工を施
した金属製ロールであるために、その表面の放射率は著
しく低く、放射温度計による測定には細心の注意が必要
である。すなわち、測定サイトは、ノズル位置近傍で出
湯の反対側、薄帯の接触通過後の軌跡を測定するのが好
ましいが、輻射の大きいノズル、るつぼないしこれを加
熱するための高周波コイルが近く外乱が大きい。また、
ロールが静止している場合と回転している場合でも放射
率は異なる。このため、外乱防止のため、ロール表面
(信号発生面)からセンサー部までを鏡筒等で保護する
こと、黒体塗料を塗布したロール面を基準として接触式
温度計で較正すること(所定回転時と静止時の較正も含
む)、およひセンサーとしても薄帯の幅(測定対象物)
に見合った測定視野のものを選択することなどが重要な
ポイントとなる。特に、ロール表面を含めて周囲の熱気
が直接センサー部に当らない配慮が必要である。
単ロール溶湯急冷法による薄帯の冷却温度は、同一合
金の場合、主としてロールの熱伝導度、熱容量といった
ロールの冷却能と、融体(当該合金の溶湯)の厚さにほ
ぼ依存するとされている。(たとえば、増本、鈴木、藤
森、橋本:アモルファス金属の基礎,オーム社刊,1982,
P15)後者の溶湯の厚さは、溶湯の押出量とロールの周
速との相互関係で決まる。本発明の対象としている磁歪
が零に近い高周波用途のアモルファス合金薄帯の板厚は
15〜25μmであるが、巻磁心製造上最大でもその板厚変
動は±4μm内には制御される必要がある。この程度の
変動となるよう、ノズルのスリットサイズ、溶湯の押出
圧力、ノズル先端とロール表面間の距離、溶湯の流動
性、すなわち操作上は溶湯の温度などの要因により溶湯
の押出量を制御すると共に、ロール周速を調整して、板
厚を一定とすることがなされている。しかしながら、ロ
ール冷却能を定量的に示し得る因子は必ずしも明確にな
っておらず、したがって薄帯の板厚、幅が決まっても、
冷却速度の特定には困難がある。また冷却速度の実測例
も公表されておらず、少なくとも現実の製造諸因子の影
響を検証し得るような簡便な冷却速度(溶湯から薄帯に
凝固する過程の冷却曲線)の判定法も未確立な状態であ
る。
理想的には上述の溶湯の冷却曲線からアモルファス合
金の微細構造との関連、および微細構造と磁気的性質と
の関連を把握する中で、製造諸因子と磁気的性質の相関
が明確にされるべきだが、現状ではそのような統一的指
針は得られていない。
本発明者は、ロール表面温度と得られたアモルファス
合金薄帯の熱処理後の高周波磁性に関係があることを知
見し、本発明に致ったものである。
本発明における、ロール表面温度とは、出湯前に予め
制御された温度ではなく、出湯中すなわち、ロール表面
に溶湯が供給され薄帯として凝固し、ロール表面から剥
離している間の溶湯(または薄帯)とロールとの相互間
の熱収支によって結果として決まるロール表面温度を指
したものである。出湯前の予めの制御は、ロール構造を
内部循環冷却液によって冷却する構造とした上で、冷却
液を一定温度に加熱維持する方法、ヒーターをロール表
面内部側に内蔵する方法、またはロール外部からの輻
射、火炎、熱風などの加熱による方法が採用し得る。し
かし、溶湯流との接触によって、薄帯製造中に表面温度
は上昇し、熱的平衡がとれる十分な冷却能を有するロー
ルであれば、表面温度は飽和に至る。したがって、出湯
中のロール表面温度は、出湯前のロール表面温度ばかり
でなく、ロール上に接触する溶湯流の熱容量、ロール冷
却能(材質、構造などによる)等が総合された結果とし
てのパラメータである。
また、アモルファス合金薄帯の品質の一様性確保の観
点から長手方向の位置によって磁気特性がばらつかない
ことも要請される。このためには、ロール表面温度は時
間的に一定で変動しないことが望まれる。こののために
は、ロールの冷却能を大きくとることが基本で、出湯前
のロール表面温度に体して、溶湯がロール面上に接触し
始めてから、ロール表面での溶湯とロールの入熱−脱熱
のバランスがとれて一定のロール表面温度となるまでの
過渡的時間を極力短くすることが肝要である。さらに、
過渡的時間を減少するには、この間、ロール表面の外部
加熱ないしは内部加熱により、熱的平衡を得た一定値と
の差を補償する方法がとられることが好ましい。加熱方
法は前述した通り、種々の方法が可能だが、設備的に最
も簡便で有効なのは、回転しているロール表面に直接輻
射熱を与える方法である。高速回転しているロール周回
面には、高速気流が存在しているから、火炎による加熱
では炎を均一に当てること、および金属ロールの酸化防
止に配慮する必要がある。また、熱風による加熱では、
制御性は火炎より優れるが、高速気流を乱す傾向がある
ので、この点には注意が必要である。これらに比し、輻
射熱によれば高速気流の影響をほとんど受けず、制御し
易く有効な加熱がなされ得る。
これらロール表面温度を高めて、その熱処理後の高周
波磁性が改善されるベースとなる組成の限定理由につい
て、以下に述べる。
前述のように、高周波における低損失を得るため磁歪
は、零ないし零に近いことが必要で、具体的には、±5
×10-6内の飽和磁歪定数とすることが必要である。その
ためには、Co,Ni,Fe,Mnの原子比を適正となるように調
整してやればよく、(Co1-a-b-cNiaFebMnc)において、
a,b,cとも各々0から0.20の範囲の組合せで実施するこ
とができる。a,b,cのいずれか一つ以上が0.20を越える
と飽和磁歪定数は+5×10-6を越えて大きくなる。
遷移元素Tとしては、3A,4A,5A,6A,Mnを除く7A,Fe,C
o,Niを除く8族の元素が含まれる。これらは、1種以上
で合計8原子%以下まで含むことができるが、8原子%
を越えると飽和磁化の著しい減少ないしアモルファス形
成が困難になる。
非金属元素Mは、C,B,P,Si,Geからなる一種以上が13
原子%以上28原子%以下含有される必要がある。
13原子%未満では、アモルファス形成が困難になり、
28原子%を越えるとアモルファス形成の困難性とともに
飽和磁化の減少が著しくなる。また、これらC,B,P,Si,G
eは、通常の単ロール法の冷却速度104〜106℃/secで
は、単独でアモルファス形成が可能なのはB,Pで、その
他は2種以上の複合添加が必要となる。総合的には、増
本:「非晶質材料の特性と応用」日本金属学会セミナ
ー,(1979)P.85に示されているようにSi−Bの組合せ
が最も望ましい。
〔実施例〕
以下、本発明の詳細を実施例により説明する。
実施例1 原子%で、(Co0・94Fe0・0672Nb3Si15B10のアモ
ルファス合金薄帯を製造した。
予め成分調整をした母合金を溶製しておき、これを石
英るつぼ内で再溶解して1300℃の溶湯とした後、0.6mm
厚さの矩形スリットから押出し、内部水冷構造を有する
500mmφのCr銅単ロールを周速30m/secで回転させ、この
上で急冷凝固させ、5,10,25mm幅の19〜23μm厚さのア
モルファス合金薄帯とした。
ロール表面温度は、ロール内部を潤滑冷却する冷却水
の温度制御により初期ロール表面温度として第1表のよ
うに変化させたが、得られた薄帯の幅によっても結果と
して変動した。
一回に溶解・出湯した薄帯の重量は2.5kgとしたが、
ロール冷却能は十分高く、いずれの薄帯の幅において
も、全出湯時間の10〜20%経過後には、ロール表面温度
は一定値に至った。
ノズルは、ロール回転軸直上の最高位置から前方(薄
帯流れ方向)に10゜の位置で鉛直方向に取り付けた。ロ
ール表面温度は、ロール回転軸直上の最高位置から後方
45゜の位置で放射温度計により連続測定した。
薄帯は得られた薄帯幅をそのままとして外径22mmφ、
内径14mmφの形状に巻回し巻磁心とした後、巻磁心の円
周方向に800A/mの直流磁界を印加しつつ、450℃で1時
間加熱後、200℃まで徐冷するパターンで、磁場中熱処
理を施した。磁界は、銅製の棒に巻磁心をはめこみ、棒
に電流を流すことによって印加した。なお、本合金のキ
ュリー点Tcは約200℃、結晶化温度Txは約550℃である。
第1表に初期ロール表面温度をかえた各種幅の薄帯
の、出湯中熱平衡状態となったロール表面温度と、磁場
中熱処理後の巻磁心(各10ヶの平均)の20KHzにおけるH
cと、Br/B800(B800:Hm=800A/mのB)を示した。
出湯中のロール表面温度が高いほど、Hcが低減し、Br
/B800が向上するが、Br/B800でその傾向が大である。可
飽和リアクトルやノイズアブソーバとして最も重要なBr
/B800が95%以上という特性を満足するのは、No.3〜6
である。すなわち出湯中のロール表面温度は、100℃以
上であれば特性的に優れていることがわかる。
実施例2 実施例1と全く同様にして、原子%で、(Co0・94Fe
0・0675Si15B10のアモルファス合金薄帯を製造し、
6種類の巻磁心とし、これに400℃で30分間加熱保持後
水冷する熱処理を施した。本合金のキューリー点Tcは約
390℃、結晶化温度Txは約430℃である。
第2表に、6種の薄帯の熱処理後の巻磁心(各10ヶの
平均)の各周波数における実効透磁率μeを示す。
出湯中のロール表面温度が高いほど、μeが各周波数
で向上し、特に1KHzで効果が大きい。特にNo.3〜No.6で
は、10KHzまでのμeが高く、No.1,2では、明らかにμ
eのレベルが低下する。すなわち、出湯中のロール表面
温度は、100℃以上であれば特性的に優れていることが
わかる。
実施例3 原子%で、(Co0・92Fe0・01Mn0・0775W1Si15B9
の5mm幅のアモルファス合金薄帯を実施例1と同様に製
造するとともに、内部水冷の冷却水だけでなく、これに
ロール外部から極く表層を赤外線ヒータで加熱する方法
を加えて、磁場中熱処理を同様に施した巻磁心のの特性
比較を行なった。
内部水冷および外部加熱とも、溶湯をロール上に押し
出す前から加熱を開始した。いずれも全出湯期間の10%
以内にロール表面温度は一定となった。初期加熱温度が
高いほど一定値に至るまでの時間は短い。
第3表に、結果として観測された出湯中のロール表面
温度(一定値となった後の温度)と、特性の結果を示
す。
本合金のキュリー点Tcは約240℃、結晶化温度Txは約5
30℃で、No.8の出湯中のロール表面温度490℃は、(Tx
−40)℃である。No.8ではHcが大幅に上昇し、Br/B800
も大きく低下している。
No.1〜4までは、出湯中のロール表面温度が高いほど
Hcが低減し、Br/B800が向上するが、No.4の161℃以上で
は、あまり大きな向上はない。すなわち、出湯中のロー
ル表面温度はNo.3〜No.7の100℃以上、(Tx−50)℃範
囲内ので特性的に優れていることがわかる。
実施例4 原子%で、(Co0・93Fe0・02Mn0・0570Cr7Si14B
9の5mm幅のアモルファス合金薄帯を実施例3と同様に製
造し、これに470℃で30分間の加熱保持後、水冷する熱
処理を施した。
第4表に結果として観測された出湯中のロール表面温
度と特性の結果を示す。
本合金のキュリー点Tcは約150℃、結晶化温度Txは約5
80℃で、No.8の出湯中のロール表面温度538℃は、(Tx
−42)℃である。No.8ではμeが各周波数で大幅に低下
している。No.1〜6までは、出湯中のロール表面温度が
高いほどμeが上昇するが、No.6,7では向上はない。以
上から出湯中のロール表面温度はNo.3〜No.7の100℃以
上、(Tx−50)℃の範囲内で特性的に優れていることが
わかる。
〔発明の効果〕
本発明のアモルファス合金によれば、スイッチング電
源の可飽和リアクトルやノイズアブソーバなど高周波に
おける高角形比が要求される用途、あるいはスイッチン
グ電源のコモンモードチョークや、磁気ヘッド、各種磁
気センサーなど、高周波における実効透磁率の高いこと
が要求される用途で、優れた特性のコア材やセンサーが
得られ、その工業的価値が高い。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B22D 11/06 360 C22C 1/02 501 C22C 1/02 503 C22C 45/04

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(Co1-a-b-cNiaFebMncxTYMZ ここで、T:遷移金属, M:C,B,P,Si,Geからなる元素の一種以上 x,y,zは原子%であって、 x+y+z=100,0≦y≦8, 13≦z≦28 a,b,cは原子比であって、 0≦a≦0.20,0≦b≦0.20 0≦c≦0.20 で示される組成を有する溶湯をノズルを介して、回転中
    のロール表面に供給し、該ロール表面で急冷凝固せしめ
    る飽和磁歪定数±5×10-6以下のアモルファス合金薄帯
    の製造方法であって、前記ロール表面の温度を、100℃
    以上、かつ当該組成のアモルファス合金の結晶化温度Tx
    より50℃低い温度(Tx−50)℃以下に制御することを特
    徴とするアモルファス合金薄帯の製造方法。
  2. 【請求項2】ロール表面の温度を、100℃以上、かつ当
    該組成のアモルファス合金の結晶化温度Txより50℃低い
    温度(Tx−50)℃以下の一定温度に維持することを特徴
    とする請求項1に記載のアモルファス合金薄帯の製造方
    法。
  3. 【請求項3】回転中のロール表面に溶湯をノズルから供
    給開始と同時ないしは供給開始以前から、前記ロール表
    面が熱的平衡を得てその温度が一定値に至るまでの間、
    ロールの外部ないし内部から該ロール表面を加熱して、
    その温度をほぼ一定に維持することを特徴とする請求項
    2に記載のアモルファス合金薄帯の製造方法。
  4. 【請求項4】外部からロール表面を加熱する手段とし
    て、赤外線輻射加熱ヒーターを用いることを特徴とする
    請求項3に記載のアモルファス合金薄帯の製造方法。
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