JP2977147B2 - 自動車用内装部品の製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、自動車用ドアトリム
等の自動車用内装部品の製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】図１１，図１２は、自動車用内装部品の
１つである自動車用ドアトリムを示す正面図ならびに断
面図であり、説明の便宜上、ドアトリムに装着されるイ
ンサイドハンドルユニット，プルハンドルユニット等の
装着部品を省略した半製品状態のものを示している。

【０００３】図面において、自動車用ドアトリム１は、
所望の曲面形状に成形され、保形性ならびに車体パネル
への取付剛性を備えた樹脂芯材２の表面に、装飾性なら
びにクッション性を付与する表皮材３を一体貼着して構
成されている。

【０００４】そして、ドアトリム１には、インサイドハ
ンドルユニットを取付けるための開口４ａ，スピーカグ
リルを取付けるための開口４ｂ，プルハンドルユニット
を取付けるための開口４ｃ，そして、ポケットエスカッ
ションを取付けるための開口４ｄのように、多くの開口
が形成されている。

【０００５】ところで、最近では、樹脂芯材２の成形工
法として、モールドプレス成形工法が多用される傾向に
ある。

【０００６】このモールドプレス成形工法は、モールド
プレス成形用上下型内に溶融状態の樹脂材料を分配供給
して、上下型の型締めにより、材料ロスの少ない、成形
性の優れた内装部品を得ることが可能である。

【０００７】そして、このモールドプレス成形工法を使
用して、図１１，図１２に示すドアトリム１を成形する
には、図１３に示すように、モールドプレス成形用上型
５ａの型面に表皮材３を予めセットしておき、上型５ａ
を所定ストローク下降させたのち、下型５ｂの型面上に
ゲート５ｃを通じて溶融樹脂Ｍを分配供給し、モールド
プレス成形用上下型５ａ，５ｂを係合圧締めすることに
より、樹脂芯材２を所要形状に成形するとともに、樹脂
芯材２の表面側に表皮材３を一体プレスするというもの
である。

【０００８】なお、ゲート５ｃは、通常２，３箇所に設
定されている。

【０００９】ところで、モールドプレス成形用上下型５
ａ，５ｂから成形品を取出した状態では、図１４に示す
ように、樹脂芯材２の裏面にゲート部６が一体化した状
態である。

【００１０】したがって、まずこのゲート部６を切断除
去するゲートカット工程が必要であり、その後、図１５
に示すように、ピアス金型７ａ，７ｂにより各種開口４
ａ，４ｂ，４ｃ，４ｄについて、ピアス上型７ｂに設置
したカット刃８によりピアス加工を行ない、図１１，図
１２に示す自動車用ドアトリム１の製作を完了する。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】このように、モールド
プレス成形工法を利用して内装部品を製作する場合、モ
ールドプレス成形後、余分なゲート部６を樹脂芯材２か
ら切断除去するゲートカット工程と、ドアトリム１に複
数の開口４ａ〜４ｄをそれぞれ打抜くピアス工程の２工
程が必要であり、内装部品の製造工程上、作業性ならび
に生産性を大幅に低下させる大きな要因となっている。

【００１２】さらに、ゲート５ｃ周辺の樹脂は樹脂温度
が高いため、表皮材３の裏面に悪影響を与えやすく、特
に、表皮材３として、発泡体を裏打ちして、クッション
性のある材質のものを使用した場合、発泡体のセル破壊
等を招きやすく、良好なクッション性能が得られないと
ともに、ゲート５ｃ相当箇所の製品表面に凹凸、あばた
が生じる等の不具合が指摘されている。

【００１３】また、樹脂芯材単体で内装部品を構成する
場合、ゲート設定箇所における製品表面には、フローマ
ーク（波状流れ模様）やシルバストリーク（銀状）等の
外観不良が生じやすく、これら外観不良を防止して、成
形精度を高めるためには、各種成形条件を精密に管理す
る必要があり、この管理が非常に面倒であり、このこと
も生産性を引き下げる要因となっている。

【００１４】この発明は、このような事情に鑑みてなさ
れたもので、モールドプレス成形を利用するとともに、
別部品取付用の多数の開口を開設した自動車用内装部品
の製造方法において、製造工程を短縮化することによ
り、作業性ならびに生産性を大幅に向上させるととも
に、外観性能を高めた自動車用内装部品の製造方法を提
供することを目的としている。

【００１５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、モールドプレス成形用上下型内に溶融樹
脂を多点ゲートを介して分配供給して、所望の曲面形状
の内装部品を成形した後、内装部品の所定部分に別部品
取付用の開口を打ち抜き形成した自動車用内装部品の製
造方法において、前記モールドプレス成形用下型に穿設
された複数のゲートの樹脂注入口が内装部品における開
口予定部分に設定されていることにより、開口の打抜き
工程で開口の端材とともにゲート部を同時に切断除去す
ることを特徴とする。

【００１６】

【作用】以上の構成から明らかなように、樹脂芯材の各
種開口の予定箇所に複数のゲートが設定されているた
め、成形品のピアス工程で開口を打抜き加工すれば、端
材とともにゲート部が切断除去され、従来のゲートカッ
ト工程が廃止できる。

【００１７】さらに、ゲート周辺の樹脂は樹脂温度が高
いため、樹脂芯材表面に表皮材を一体成形する場合に
は、ゲート設定部における表皮材の表面に凹凸、あばた
等の不良が生じやすいが、この部分は開口の端材とな
り、外観性能を低下させることがない。

【００１８】また、ゲート設定箇所の樹脂成形体表面に
は、フローマーク，シルバストリーク等の外観不良が生
じても、この部分は開口の端材となるため、各種成形条
件を緩和させることができる。

【００１９】

【実施例】以下、本発明に係る自動車用内装部品の製造
方法の実施例ついて、添付図面を参照しながら詳細に説
明する。

【００２０】図１は本発明方法を使用して製作した自動
車用ドアトリムを示す正面図、図２は同自動車用ドアト
リムの構成を示す断面図、図３，図４は本発明方法に使
用するモールドプレス成形用金型を示す断面図並びに平
面図、図５ないし図８は本発明方法の各工程を示す断面
図、図９，図１０は本発明方法の別実施例を示す各断面
図である。

【００２１】まず、図１，図２に基づき、本発明方法に
より製作された自動車用ドアトリム１０の構成について
簡単に説明する。

【００２２】ただし、ドアトリムに付設されるインサイ
ドハンドルユニット，スピーカグリル，プルハンドルユ
ニット等を取付ける前の状態を示す。

【００２３】自動車用ドアトリム１０は、所望の曲面形
状に成形された樹脂芯材１１と、その表面にプレス一体
化された表皮材１２とから構成されており、樹脂芯材１
１としては、ポリプロピレン樹脂にフィラーとしてタル
クを混入したポリプロピレン複合樹脂材料を使用してお
り、表皮材１２としては、ＰＶＣシート裏面にポリエチ
レンフォームを裏打ちしたクッション性の良好なものを
使用している。

【００２４】さらに、この自動車用ドアトリム１０に
は、インサイドハンドルユニットを取付けるための開口
１３，スピーカグリルを取付けるための開口１４，プル
ハンドルユニットを取付けるための開口１５，ポケット
エスカッションを取付けるための開口１６のように、多
数の開口が開設されている。

【００２５】本発明方法の特徴は、図１，図２に示すド
アトリム１０（多数の開口１３，１４，１５，１６が開
設されている）を簡単な工程で製作できるようにした点
にある。

【００２６】図３，図４はドアトリム１０をモールドプ
レス成形する際に使用する金型２０を示すものであり、
モールドプレス成形用金型２０は、所望の曲面形状を備
えたモールドプレス成形用下型３０と、このモールドプ
レス成形用下型３０と係合圧締めできる昇降可能なモー
ルドプレス成形用上型４０と、モールドプレス成形用下
型３０の型面上に樹脂芯材１１の素材である溶融樹脂Ｍ
を供給する射出成形機５０とから大略構成されている。

【００２７】さらに詳しくは、図４に示すように、下型
３０には、ドアトリム１０の外形状を形作るキャビティ
３１が凹設されているとともに、射出成形機５０から下
型３０に溶融樹脂Ｍを分配供給する複数のゲート３２が
穿設されている。

【００２８】そして、本発明は、このゲート３２の樹脂
注入口３２ａ，３２ｂ，３２ｃがドアトリム１０に形成
される開口１３，１４，１６相当箇所に設定されている
ことが特徴である。

【００２９】なお、上型４０には、昇降用シリンダ４１
が連結されており、かつ上型４０の型面に表皮材１２を
セットするためのセットピン４２が設置されている。

【００３０】次に、図１，図２に示す自動車用ドアトリ
ム１０の製造工程について説明すると、まず、図５に示
すように、表皮材１２を上型４０にセットするが、この
とき、上型４０は最上方位置に位置している。

【００３１】そして、表皮材１２のセットが完了すれ
ば、昇降用シリンダ４１が動作して、モールドプレス成
形用上型４０が所定ストローク下降動作して、上下型３
０，４０のクリアランスが１０〜２０mmの段階で停止す
る。

【００３２】この段階で、図６に示すように、射出成形
機５０からゲート３２を通じて、３箇所の樹脂注入口３
２ａ，３２ｂ，３２ｃから下型３０の型面上の３箇所に
溶融樹脂Ｍが分配供給される。

【００３３】その後、図７に示すように、上型４０が再
度下降を始め、上下型３０，４０の係合圧締めにより、
溶融樹脂Ｍを賦形し、所望の曲面形状の樹脂芯材１１を
成形するとともに、樹脂芯材１１の表面側に表皮材１２
を一体化して、モールドプレス成形工程を完了する。

【００３４】ところで、モールドプレス成形完了後の状
態では、樹脂芯材１１の裏面３箇所にゲート部６０が一
体化しているが、図８に示すように、ピアス用下型７０
にモールドプレス成形後の成形品をセットしたのち、ピ
アス上型７１に設けたカット刃７２により、インサイド
ハンドルユニット用の開口１３を打抜けば、この部分の
端材１３ａとゲート部６０が一体化していることから、
ゲート部６０が同時に切断除去でき、従来のゲートカッ
ト工程が廃止でき、作業性ならびに生産性が大幅に向上
する。

【００３５】なお、図８では、インサイドハンドルユニ
ットを取付けるための開口１３を打抜くカット刃７２だ
けが示されているが、スピーカグリル取付用の開口１４
や、プルハンドルユニットの開口１５，ポケットエスカ
ッションの開口１６をそれぞれ所定形状に打抜くカット
刃が設定されており、同様に開口１４，１６のパンチン
グ工程と同時にゲート部のカットも同時に行なえる。

【００３６】次に、図９，図１０は、本発明の第２実施
例を示すもので、本発明方法は、樹脂芯材１１単体のも
のに適用した実施例である。

【００３７】図９はモールドプレス成形工程を示すもの
で、モールドプレス成形用上下型３０，４０により樹脂
芯材１１が所要形状に成形される。

【００３８】そして、ゲート部６０の表面側にフローマ
ークやシルバストリーク等の外観不良が万一生じた場
合、図１０に示すように、開口１３を開設するためにこ
の部位をピアス工程により切断除去するため、ゲート設
定箇所に外観不良が生じた場合でも、製品の外観性能に
何等障害を与えないため、各種成形条件等を緩和でき、
工程管理を簡単に行なえるという有利さがある。

【００３９】

【発明の効果】以上説明した通り、本発明方法によれ
ば、以下に記載する格別の作用効果を有する。

【００４０】（１）本発明方法によれば、内装部品の開
口予定部分に、ゲートの樹脂注入口を設定するため、開
口のピアス工程で余剰のゲート部を同時に切断除去でき
ることから、従来のゲートカット工程が廃止でき、作業
性ならびに生産性が大幅に向上するという効果を有す
る。

【００４１】（２）本発明方法によれば、内装部品の開
口予定部分に、ゲートの樹脂注入口を設定するという構
成であるため、例えば、樹脂芯材表面に表皮材を一体成
形する場合、ゲート設定部における表皮材の表面に凹
凸、あばた等の不良が集中しやすいが、この表面不良部
分は開口の端材として切断除去されるため、外観性能に
悪影響を与えることなく、優れた意匠性が得られるとい
う効果を有する。

【００４２】（３）本発明方法によれば、内装部品の開
口予定部分にゲートの樹脂注入口を設定するため、例え
ば、樹脂成形体のみで内装部品を構成する場合、外観不
良が出やすいゲート部近辺は開口の端材として切断除去
されることになり、種々の成形条件を比較的ラフに行な
っても、外観性能に支障がなく、成形管理を容易に行な
うことができるという効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明方法を使用して製作した自動車用ドアト
リムを示す正面図。

【図２】図１中II−II線断面図。

【図３】本発明方法に使用するモールドプレス成形用金
型の構成を示す断面図。

【図４】図３中Ａ矢視図。

【図５】本発明方法の一工程を示すもので、表皮材のセ
ット工程を示す断面図。

【図６】本発明方法の一工程を示すもので、溶融樹脂の
供給工程を示す断面図。

【図７】本発明方法の一工程を示すもので、モールドプ
レス成形工程を示す断面図。

【図８】本発明方法の一工程を示すもので、ピアス加工
工程を示す断面図。

【図９】本発明方法の第２実施例におけるモールドプレ
ス成形工程を示す断面図。

【図１０】本発明方法の第２実施例におけるピアス工程
を示す断面図。

【図１１】従来の自動車用ドアトリムを示す正面図。

【図１２】図１１中ＸII−ＸII線断面図。

【図１３】従来のモールドプレス成形工程を示す断面
図。

【図１４】従来のゲートカット工程を示す説明図。

【図１５】従来のピアス工程を示す断面図。

【符号の説明】

１０ 自動車用ドアトリム １１ 樹脂芯材 １２ 表皮材 １３，１４，１５，１６ 開口 ２０ モールドプレス成形用金型 ３０ モールドプレス成形用下型 ３２ ゲート ３２ａ，３２ｂ，３２ｃ 樹脂注入口 ４０ モールドプレス成形用上型 ５０ 射出成形機 ６０ ゲート部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B29C 43/00 - 43/58 B29C 45/00 - 45/84

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 モールドプレス成形用上下型（３０，４
   ０）内に溶融樹脂（Ｍ）を多点ゲートを介して分配供給
   して、所望の曲面形状の内装部品（１０）を成形した
   後、内装部品（１０）の所定部分に別部品取付用の開口
   （１３，１４，１６）を打ち抜き形成した自動車用内装
   部品の製造方法において、 前記モールドプレス成形用下型（３０）に穿設された複
   数のゲート（３２）の樹脂注入口（３２ａ，３２ｂ，３
   ２ｃ）が内装部品（１０）における開口（１３，１４，
   １６）予定部分に設定されていることにより、開口（１
   ３，１４，１６）の打抜き工程で開口（１３，１４，１
   ６）の端材とともにゲート部（６０）を同時に切断除去
   することを特徴とする自動車用内装部品の製造方法。