JP2973771B2 - 印刷層を形成したガスバリヤー性フィルム - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ガスバリヤー層として
の酸化ケイ素の薄膜を形成したガスバリヤー性フィルム
に関し、より詳しくは、印刷層を形成したガスバリヤー
性フィルムに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、ポリエチレンテレフタレート（Ｐ
ＥＴ）やナイロン（Ｎｙ）等の耐熱性を有するプラスチ
ックフィルム上に、酸化ケイ素（ＳｉＯ）の薄膜を真空
蒸着法などにより形成した、透明で、酸素バリヤー性や
水蒸気バリヤー性に優れる積層材料が提案されている。
例えば特公昭５１−４８５１１号公報には、ＰＥＴ／Ｐ
ＥＴ−ＳｉＯ／ＣＰＰという構成の積層材料が記載され
ている。上記ＰＥＴ−ＳｉＯ等の構成からなるガスバリ
ヤー性フィルムは、アルミニウム蒸着フィルムと同程度
のガスバリヤー性を示し、しかも透明であるため、従来
のアルミニウム蒸着フィルムを使用していた分野におい
て、その代替材料として使用することが可能である。

【０００３】ところで、一般に食品等の包装容器を作成
する場合、絵柄や文字等の印刷層を形成することが常識
である。この酸化ケイ素の薄膜を形成したフィルム（ガ
スバリヤー性フィルム）を用いて食品等の包装容器を作
成する場合にも、当然のことながら印刷層を形成する場
合がある。

【０００４】ところが、上記ガスバリヤー性フィルムを
含む積層体を作成した場合に、ガスバリヤー性フィルム
の酸化ケイ素の薄膜上に印刷層を形成することが必要な
場合がある。例えば、食品包装の場合には包装材料の表
面に印刷層が露出することは、食品等を汚染する恐れが
あるので避ける必要があるが、ＰＥＴ−ＳｉＯ／シーラ
ント（ポリエチレンなどのヒートシール性のある樹脂
層）というきわめて単純な構成でも包装材料としては十
分であり、この構成の場合は、酸化ケイ素の薄膜の上に
印刷層を形成することが必要となる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来公
知の、ＰＥＴ−ＳｉＯの酸化ケイ素の薄膜上に、印刷層
を直接設けた場合、酸化ケイ素の薄膜にクラックが発生
し、酸化ケイ素の薄膜のガスバリヤー性が低下してしま
うことがあった。この原因は明らかでないが、本発明者
の検討によれば、基材フィルムと酸化ケイ素の薄膜との
密着強度と、印刷層を形成した際のインキ被膜の収縮
（塗膜収縮）による応力が関係していることが予想され
た。

【０００６】いずれにせよ、本発明は、ガスバリヤー性
フィルムの酸化ケイ素の薄膜上に、直接印刷層を形成し
ても、酸化ケイ素の薄膜にクラックが発生せずにガスバ
リヤー性が低下しない、印刷層を形成したガスバリヤー
性フィルムを提供することにある。

【０００７】

【課題を解決しようとする課題】すなわち本発明は、酸
化ケイ素の薄膜を形成する基材フィルムとして、熱収縮
率が小さいフィルムを選定することにより、酸化ケイ素
の薄膜上にウレタン系インキからなる印刷層を直接形成
しても酸化ケイ素の薄膜にクラックが発生せずにガスバ
リヤー性が低下しないことを見出し、本発明を完成した
ものである。

【０００８】本発明において、基材フィルムは、１９０
℃での熱収縮率が縦方向２．０％未満、横方向０．５％
未満のポリエチレンテレフタレートである。

【０００９】

【作用】上述した本発明のガスバリヤー性フィルムにお
いては、基材フィルムの熱収縮が小さく、酸化ケイ素の
薄膜と基材フィルムの密着強度が十分となる。そして、
酸化ケイ素の薄膜上にウレタン系インキからなる印刷層
を直接形成した際、インキの塗膜が収縮しても、酸化ケ
イ素の薄膜と基材フィルムとの密着強度が十分なため酸
化ケイ素の薄膜にクラックが生じないものと考えられ
る。その結果、本発明によるガスバリヤー性フィルム
は、酸化ケイ素の薄膜上に印刷層を直接形成しても、十
分なガスバリヤー性を有する。

【００１０】

【実施例】以下、本発明を図面を参照して詳細に説明す
る。図１は本発明のガスバリヤー性フィルムの一実施例
を示す断面図である。本発明のガスバリヤー性フィルム
１は、図１に示すように、基材フィルム２と、その上に
形成された酸化ケイ素の薄膜３を有し、さらに酸化ケイ
素の薄膜３上に直接、印刷層４が形成されているもので
ある。

【００１１】基材フィルム２は、ポリエチレンテレフタ
レート（ＰＥＴ）で、１９０℃での熱収縮率が縦方向
２．０％未満、横方向０．５％未満のポリエチレンテレ
フタレートである。

【００１２】基材フィルム２上には、酸化ケイ素の薄膜
３が形成される。酸化ケイ素の薄膜３は、公知の、真空
蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の方法
により形成することができ、作業性、コストの点から真
空蒸着によることが好ましい。酸化ケイ素の薄膜３の厚
さは特に制限はなく、４００〜２０００Åの厚さとする
ことができる。酸化ケイ素の薄膜３は、きわめて高いガ
スバリヤー性を示し、例えばＰＥＴフィルム（厚さ１２
μｍ）に４００Åの酸化ケイ素の薄膜を設けたものは、
酸素透過度：１．５ｃｃ／ｍ² ・ｄａｙ・ａｔｍ、水蒸
気透過度：０．９ｇ／ｍ² ・ｄａｙのガスバリヤー性を
示し、ＰＥＴフィルム（厚さ１２μｍ）に１０００Åの
酸化ケイ素の薄膜を設けたものは、酸素透過度：０．７
ｃｃ／ｍ² ・ｄａｙ・ａｔｍ、水蒸気透過度：０．８ｇ
／ｍ² ・ｄａｙのガスバリヤー性を示す。

【００１３】本発明は、上記酸化ケイ素の薄膜の上に、
直接、印刷層を形成するものである。印刷層は、通常の
印刷方法、例えばグラビア印刷により形成することがで
きる。また、使用するインキも、従来プラスチックフィ
ルムに使用されている各種のインキを使用することがで
きる。具体的には、セルロース系、アクリル系、ウレタ
ン系、ポリアミド系、ポリエステル系の印刷用インキが
使用できる。一般に、これらの印刷インキは、フィルム
上に塗布された後、約８０℃のオーブン内を通過するこ
とにより乾燥され、印刷層３として形成される。このと
き、湿潤状態のインキが、乾燥に従い収縮（塗膜収縮）
を起こすのである。そして、従来公知の酸化ケイ素の薄
膜を形成したフィルムの酸化ケイ素の薄膜上に直接、印
刷層を形成した場合、この塗膜収縮の応力により、酸化
ケイ素の薄膜にクラックが発生していたものと考えられ
る。この印刷層３として用いるインキとしては、ウレタ
ン系インキが好ましい。

【００１４】以上のようにして得られた本発明のガスバ
リヤー性フィルム１は、他のプラスチックフィルムや金
属箔等と積層して、食品等の包装材料として使用するこ
とができる。例えば、本発明のガスバリヤー性フィルム
１の印刷層３上に、シーラントとしてのポリエチレンや
無延伸ポリプロピレン等を積層することにより、ヒート
シール性のある包装材料が得られる。従って、これを用
いて、４方シール袋、３方シール袋、スタンディングパ
ウチ、ガゼット袋、ピロー包装袋等の袋状容器を作成す
ることができる。

【００１５】＜実験１＞基材フィルムとして下記フィル
ムを使用し、真空蒸着法により、酸化ケイ素の薄膜を４
００Åの厚さに設けた。このフィルムの酸素透過度およ
び水蒸気透過度を測定した。次いで、これらのフィルム
の酸化ケイ素の薄膜上に、ウレタン系インキ（東洋イン
キ製造株式会社製、ＬＰスーパー）を用いて、グラビア
印刷法にて印刷層を形成した。印刷層を形成した後のこ
れらのフィルムの酸素透過度および水蒸気透過度を測定
した。結果を表１に示す。

【００１６】基材フィルム Ｎｏ．１：ＰＥＴ（帝人株式会社製、ＮＳ）、厚さ１２
μｍ 収縮率^*1：縦方向１．６％、横方向０．２％ Ｎｏ．２：ＰＥＴ（ＳＫＣ（韓国）製、ＳＭ６７）、厚
さ１２μｍ 収縮率^*1：縦方向２．２％、横方向０．６％ Ｎｏ．３：ＰＥＴ（東洋紡績株式会社製、Ｔ４２０
２）、厚さ１２μｍ 収縮率 ^*1 ：縦方向２．８％、横方向０．６％

【００１７】

【表１】

【００１８】以上の結果から明らかなように、基材フィ
ルムとしてＮｏ．１を用いたものは、印刷層の形成前も
後も、酸素透過度および水蒸気透過度がほとんど変化せ
ず、しかも印刷層の形成後小さい値を示しており、良好
な結果を示した。これに対し、Ｎｏ．２、Ｎｏ．３を用
いたものは、印刷層の形成前後で、酸素透過度および水
蒸気透過度が、大きく増加しており、しかも印刷層の形
成後は大きな値を示しており、ガスバリア性は劣ってい
る。

【００１９】

【発明の効果】以上述べたように、本発明のガスバリヤ
ー性フィルムは、印刷層を直接形成してもガスバリヤー
性が低下することがなく、食品等の包装材料として好適
に使用することかできる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のガスバリヤー性フィルムの一実施例を
示す断面図。

【符号の説明】

１……ガスバリヤー性フィルム ２……基材フィルム ３……酸化ケイ素の薄膜 ４……印刷層

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】１９０℃での熱収縮が縦方向２．０％未
   満、横方向０．５％未満のポリエチレンテレフタレート
   基材フィルム上に酸化ケイ素の薄膜を形成してなるガス
   バリア性フィルムの、酸化ケイ素の薄膜層上にウレタン
   系インキからなる印刷層を直接形成したことを特徴とす
   る、印刷層を形成したガスバリア性フィルム。