JP2961045B2 - 腸管粘膜増強促進剤 - Google Patents

腸管粘膜増強促進剤

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JP2961045B2 JP5326698A JP32669893A JP2961045B2 JP 2961045 B2 JP2961045 B2 JP 2961045B2 JP 5326698 A JP5326698 A JP 5326698A JP 32669893 A JP32669893 A JP 32669893A JP 2961045 B2 JP2961045 B2 JP 2961045B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、グリセンチンを有効成
分として含有する腸管粘膜増殖促進剤並びに該腸管粘膜
増殖促進剤からなる腸管粘膜障害治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】エンテログルカゴンの一つであるグリセ
ンチンは、69個のアミノ酸残基を有するペプチドで、
例えばヒトグリセンチンは以下の配列からなる。 Arg-Ser-Leu-Gln-Asp-Thr-Glu-Glu-Lys-Ser-Arg-Ser-Ph
e-Ser-Ala-Ser-Gln-Ala-Asp-Pro-Leu-Ser-Asp-Pro-Asp-
Gln-Met-Asn-Glu-Asp-Lys-Arg-His-Ser-Gln-Gly-Thr-Ph
e-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-Ser-Arg-Arg-
Ala-Gln-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr-Lys-Ar
g-Asn-Arg-Asn-Asn-Ile-Ala
【0003】その構造内の第33番目から第61番目ま
でに、29個のアミノ酸からなるペプチドホルモンであ
るグルカゴンの構造を含んでいる。両者は同一の前駆体
であるプレプログルカゴンから組織特異的にプロセッシ
ングされ、膵臓ではアミノ酸残基29個のグルカゴンと
して、腸管ではグリセンチンとして生産される。これら
ペプチドの生理作用に関して、グルカゴンは解糖および
血糖値を調節することが公知であるが、一方グリセンチ
ンについては不明である。
【0004】グルカゴン産生腫瘍は極めて希なもので、
その中でもGleesonら(Gut, 12, 773-782, 1971)によ
って報告された例は、特にその症状において、小腸絨毛
の肥大、食物の消化管通過速度の遅延、便秘等の小腸の
構造および機能に関して特徴的であった。そして手術に
よる腫瘍の摘出後、それらの所見および症状が消失した
ことにより、それらの小腸の構造および機能の変化に対
して、腫瘍の産生する因子が関与している可能性が考え
られた。その後、この腫瘍はエンテログルカゴンを産生
していることがBloomにより発見され(Gut, 13, 520-52
3, 1972)、これらの症状はエンテログルカゴンの生物
活性によるものと示唆された。さらに動物実験におい
て、空腸切除後に血中エンテログルカゴン濃度が上昇
し、同時にクリプト細胞形成率の促進が認められてお
り、エンテログルカゴンの腸管上皮細胞増殖作用が支持
されている(Br. J. Surg., 69, 14-18, 1982)。しか
しながら、エンテログルカゴンが、栄養因子として作用
することによって小腸粘膜増殖を引き起こしているの
か、あるいはその血中濃度の上昇と粘膜増殖が、共に他
の因子の作用によるものかは不明である。一方、エンテ
ログルカゴンの粗抽出物が、培養小腸細胞のDNA合成
を刺激したとの報告はあるが(O. Ottenthal et al.,Re
gul. Pept., 3, 84, 1982)、この標品は多くの不純物
を含んでおり、エンテログルカゴンそのもの、なかんず
くグリセンチンの作用かどうかは明確ではない。
【0005】さらに、エンテログルカゴンは、gut gluc
agon-like immunoreactivityとも呼ばれ、特異性の低い
抗グルカゴン抗血清に対する免疫反応性から定義されて
おり、同じプレプログルカゴンから組織特異的にプロセ
ッシングされたいくつかのペプチドを含んでいる。血中
での活性型に関しては、オキシントモジュリンすなわち
上記したグリセンチンのアミノ酸配列のうちの第33番
目から第69番目までのペプチドホルモン、グルカゴン
1−21すなわちグリセンチンのアミノ酸配列のうちの
第33番目から第53番目までのペプチド、グルカゴン
様ペプチド−1すなわちプレプログルカゴンのうちグリ
センチンを含まない他の領域にあるペプチドホルモン、
またこれと同様のグルカゴン様ペプチド−2等の複数の
候補が上げられる。このように、エンテログルカゴンの
一種であるグリセンチンの作用は未だ明確にされておら
ず、その標的組織および細胞も不明である。さらにその
上、これまでにヒトグリセンチンが物質として単離され
ておらず、これを用いた研究は例が無い。
【0006】ところで本発明者らは、さきにBell, G.
I. らによってヒトプレプログルカゴン遺伝子の配列か
ら解明された(Nature, Vol, 304, 368-371(1983)参
照)ヒト型グリセンチンのアミノ酸配列に対応するDN
Aを合成し、これを用いた遺伝子操作技術によりヒトグ
リセンチンを製造することに成功した(特開平4-364199
号参照)。かくしてヒト型グリセンチンが大量にかつ精
製品として容易に入手することが出来るようになった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】腸管は、主として食物
の消化と栄養素の吸収を司る臓器であり、生命の維持に
必要な栄養素の摂取は殆どすべて腸管の管腔内にある粘
膜層を通じて行われている。それ故病的または外科的障
害により、この粘膜が組織学的に萎縮したり、潰瘍を生
じたり、あるいは機能的に低下して消化管機能障害をお
こすこと、さらにまた腸管粘膜の透過性が異常に亢進
し、細菌や異物が浸透することは、生体にとって重篤な
問題である。そこで消化管が侵襲を受けたり萎縮した場
合、速やかな治癒と消化管機能の回復が望まれる。ある
いはまた消化管組織の発育不全の場合には、発育を促進
したり機能を高めることが必要である。
【0008】また腸粘膜細胞のターンオーバーは非常に
早く、強力な放射線被曝や他の細胞増殖を障害するよう
な刺激によって、腸粘膜の萎縮がおこることは知られて
いる。さらに、腸管の機能が低下したり腸管手術後のよ
うに腸管での消化吸収が行えない場合には、腸機能を必
要としない経静脈栄養または正常の消化機能を必要とし
ない経腸成分栄養を行うことによって腸粘膜萎縮のおこ
ることが知られている。ところが、これらの腸粘膜萎縮
による消化管機能障害に対して、腸粘膜の細胞増殖を惹
起することによって治療する医薬品は現在のところ知ら
れておらず、かかる医薬品の開発が強く求められてい
る。
【0009】さらには、消化管切除に伴う疾患、例えば
胃の広範な切除に伴うダンピング症候群は胃の内容物の
排出が異常に亢進し、完全に消化されていない食物が急
速に空腸に移行するために空腸の内容が高張性となり、
そのために発汗、頻脈、悪心などの様々な病態が起こる
とされている。また種々の疾患の治療による腸管の広範
な切除により、または小腸機能の低下により引き起こさ
れる短腸症候群(Short gut syndrome)では消化管粘膜
に存在する消化管ホルモン、生理活性ペプチドなどの産
生細胞が欠如するためにフィードバック機構に破綻をき
たし、胃酸分泌亢進、胃蠕動運動亢進なども引き起こさ
れる。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した
課題解決のために鋭意研究を行ったところ、ヒトグリセ
ンチンが、腸粘膜増殖作用を持つことと、ヒトグリセン
チンが胃の蠕動運動を抑制することとを初めて直接的に
証明し、グリセンチンが腸管疾患の治療剤として有用で
あることを解明して本発明を完成させるに至った。
【0011】本発明によれば、グリセンチンを有効成分
として含有することを特徴とする、腸管粘膜増殖促進剤
が提供される。本発明におけるグリセンチンは、腸粘膜
の増殖を促進することから、消化および吸収不全の病態
に対する治療および予防、すなわち腸管粘膜萎縮の治療
および予防、または腸管組織の発育不全や外科切除によ
り腸管組織が減少した場合の治療および消化吸収改善に
用いることができる。さらには、腸炎、クローン病、潰
瘍性大腸炎等の炎症性疾患による腸管粘膜病態の治療
や、グリセンチンが胃の蠕動運動を抑制し胃から空腸へ
の急速な食物の移行を抑制することと併せ、ダンピング
症候群等の術後の腸管機能低下等の治療にも用いること
が可能である。
【0012】すなわち、グリセンチンの投与によって腸
管粘膜の増殖が促進され、腸管粘膜の萎縮、あるいは減
少によってもたらされる腸管機能障害の治療、および予
防のためにこのグリセンチンが用いられるのである。さ
らには、胃の蠕動運動が抑制され、食物の急激な小腸へ
の移行が抑制されるため、さらに効果的に術後の腸管機
能低下の治療にも用いられるのである。
【0013】グリセンチンの製剤化にあたっては、その
もの単独または製薬上の補助成分、例えば賦形剤、結合
剤、安定化剤、緩衝剤その他と混合して製剤化される。
その剤形としては経口投与、非経口投与の投与形態に応
じて粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、注射剤等の任意の
ものとすることが出来る。必要に応じて他の薬剤、例え
ば制酸剤、ムスカリン受容体拮抗薬、プロスタグランジ
ン製剤と併用させてもよい。投与量は、投与すべき患者
の症状、年齢、性別、体重等によって適宜増減でき、ま
た投与形態、すなわち、経口投与か非経口投与かによっ
て変化することは当然である。いずれの投与形態で投与
する場合でも、血中濃度が100pM〜10,000pMの
範囲となるように投与するのが適当である。しかしなが
ら、安全な範囲でより少量あるいはより多量投与しう
る。
【0014】有利な経口医薬製剤は、単位投与形で適用
するのに好適な形態のもの、例えば、5ml当りグリセン
チンを0.01mg〜10mg、有利には0.1mg〜1mgの量
で含有する水性もしくは油性溶液、または懸濁液もしく
はエマルジョンの製剤であるか、またはグリセンチンを
0.01mg〜10mg、有利には0.1mg〜1mgの量で含有
する錠剤、カプセル剤、顆粒剤などでありうる。
【0015】そしてグリセンチンはその化学構造から人
体に投与する場合に、経口的投与によっては胃内におけ
る酸による変性、および消化による分解、変性によって
その活性の低下が考えられるので、腸溶性コーティング
による腸管内における有効成分の放出を考慮することが
好ましい。従ってグリセンチンを経口投与する場合につ
いては、公知の腸溶性コーティング剤によってコーティ
ングされる。かかる腸溶性コーティング剤としては合成
高分子化合物、例えばポリアクリレートを主成分とする
オイドラキット、半合成高分子化合物例えばセルロース
アセテートフタレートなどが用いられうる。
【0016】しかしながら、非経口投与による投与手段
が変性または分解をうけることなくグリセンチンを人体
に投与する手段として好ましいものである。この非経口
投与には皮下注射、静脈注射、筋肉注射、腹腔内注射な
どがあり、グリセンチンは上記したような水性もしくは
油性溶液、または懸濁液もしくはエマルジョンの形態で
製剤化されたものでありうる。またグリセンチンの効果
を長時間にわたって持続させるためにデポ製剤の形態で
投与することも好ましい。
【0017】この発明で用いるヒトグリセンチンは、次
のアミノ酸配列で示される。 Arg-Ser-Leu-Gln-Asp-Thr-Glu-Glu-Lys-Ser-Arg-Ser-Ph
e-Ser-Ala-Ser-Gln-Ala-Asp-Pro-Leu-Ser-Asp-Pro-Asp-
Gln-Met-Asn-Glu-Asp-Lys-Arg-His-Ser-Gln-Gly-Thr-Ph
e-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-Ser-Arg-Arg-
Ala-Gln-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr-Lys-Ar
g-Asn-Arg-Asn-Asn-Ile-Ala
【0018】またはN末端にメチオニンの付加したヒト
型グリセンチン Met-Arg-Ser-Leu-Gln-Arg-Thr-Gln-Glu-Lys-Ser-Arg-Se
r-Phe-Ser-Ala-Ser-Gln-Ala-Asp-Pro-Leu-Ser-Asp-Pro-
Asp-Gln-Met-Asn-Glu-Asp-Lys-Arg-His-Ser-Gln-Gly-Th
r-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-Ser-Arg-
Arg-Ala-Gln-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr-Ly
s-Arg-Asn-Arg-Asn-Asn-Ile-Ala である。
【0019】これらは対応するDNA配列の遺伝子を用
いて遺伝子工学的手法によって、また合成法によって製
造されうる。この遺伝子工学的手法の一例としては、本
発明者らがさきに特開平4−364199号で提案した
次のDNA配列
【0020】
【化1】
【0021】のヒト型グリセンチン合成遺伝子を調製し
これをプラスミド中に導入し、得られたプラスミドを用
いて形質転換された大腸菌を培養することにより、所望
のヒト型グリセンチンを製造する方法を挙げることがで
きる。しかしながら、このヒト型グリセンチンの製造方
法はヒト型グリセンチン製造のための1つの例にすぎ
ず、他の方法、または手段によって調製されたヒト型グ
リセンチンであっても、そのものが上記したアミノ酸配
列を有するものである限り本発明において使用しうるこ
とは勿論である。そしてヒト型グリセンチンの製造方法
としては、上記のグリセンチンのアミノ酸配列に対応す
る別のDNA配列の遺伝子をプラスミド中に導入し、得
られたプラスミドによって大腸菌、枯草菌、酵母その他
の微生物を形質転換し、これを培養するか、ヒト型グリ
センチン生産細胞を培養するなどの手法によって製造す
る方法が挙げられる。
【0022】以下の実施例によって本発明をさらに詳細
に説明するが、これらは本発明を単に説明するだけであ
って、本発明を限定するものではない。なお、表中の数
値は平均値±標準誤差を示す。
【0023】
【実施例】
実施例1 12時間の明暗周期条件下、標準飼料で飼育した体重1
40g〜160gのSDラット雄を用いて実験を行っ
た。飼育を1Kcal/mlの溶液にした成分栄養(エレンタ
ールR 森下ルセル)に替えて、自由摂取が行えるように
し、実験が終了するまで成分栄養で飼育した。成分栄養
で3日間飼育した後、以下のようにして調製したグリセ
ンチンの投与を開始した。ゼラチンを16%重量比とな
るように温水に溶かしてオートクレーブにかけた後、室
温まで冷してからこのゼラチン溶液40mlに対して、1
0mlの蒸留水に溶かしたグリセンチン1mgを室温で撹拌
して混ぜた。試験管に分注して使用するまで凍結保存し
た。
【0024】グリセンチン当り10μg量のゼラチン溶
液を12時間毎に7日間皮下投与し、腸粘膜に対するグ
リセンチンの栄養効果を調べた。グリセンチンを含まな
いゼラチン溶液を同様の期間投与し、コントロールとし
て比較した。最終投与終了12時間後、ラットを屠殺し
てトライツ靭帯から盲腸までの小腸を摘出した。摘出し
た小腸の中央部分で切断して空腸と回腸に分離し、それ
ぞれの内腔に生理食塩水を穏やかに流して洗浄した。次
に、それぞれの腸管を縦軸方向に切開し、空腸の十二指
腸側の一部と回腸の盲腸側の一部および空腸と回腸の境
界付近の一部組織を切り取り、それぞれ小腸の近位、遠
位および中間位として3.7%ホルマリン溶液で固定し
た。残りの腸管からは、スパチュラを用いて粘膜を剥離
して集め、それぞれの重量を測定した。この結果は次の
表1に示される。ホルマリンで固定した組織は、パラフ
ィンに包埋してプレパラートを作成し、ヘマトキシリン
−エオジン染色した後、光学顕微鏡下で腸絨毛の長さを
測定した。結果は表2に示される。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】また、これらのグリセンチン投与による腸
絨毛長の長さ増加効果および体重増加効果をコントロー
ル群と対比してグラフで示すと図1のとおりである。こ
れらの実験結果から、グリセンチンは空腸、および空腸
と回腸をあわせた全小腸の粘膜重量を有意に増加させる
ことが分かった。また回腸粘膜と小腸長の増加傾向を示
した。この実験結果はグリセンチンが腸粘膜に対して栄
養効果を持つことを示すものである。
【0028】実施例2 グリセンチンを少量の注射用蒸留水に溶かした後、注射
用生理食塩水で調製した2%ウシ血清アルブミン溶液を
用いて400μg/ml(50nmol/ml)の濃度に希釈し
た。この溶液は使用するまで凍結保存し、使用時に注射
用生理食塩水で10倍に希釈してラットに0.2mlすな
わち1nmolのグリセンチン量を皮下投与した。対照とし
て、グリセンチンのアミノ酸配列のうちの第1番目から
第30番目までのペプチドであるGRPP、オキシント
モジュリン、グルカゴン、グルカゴン1−21、グルカ
ゴン様ペプチド−1をグリセンチンと同様に投与量が1
nmolとなるように調製、投与を行った。なお、グルカゴ
ンはノボノルディスク社製のものを、その他対照に用い
たペプチドは、LKB社のペプチド合成機BIOLYNXを用
いて合成した。また、注射用生理食塩水を投与し、コン
トロール群とした。実施例1と同様にラットを屠殺後小
腸を取り出し、小腸を4等分し、十二指腸側から第3番
目の部分の粘膜質重量を測定した結果を表3に示す。こ
れらの結果より、GRPP、オキシントモジュリン、グ
ルカゴン、グルカゴン1−21、グルカゴン様ペプチド
−1とは異なり、グリセンチンのみが有為に腸管粘膜の
重量を増加させることが分かった。
【0029】
【表3】
【0030】実施例3 グリセンチンの食後期消化管運動への作用を調べるため
以下の実験を行った。体重16〜18kgの雑種犬6頭の
胃前庭部(幽門輪より4cmの部位)、十二指腸(主膵管
流入部)、空腸(トライツ靭帯より10cmの部位)にフ
ォーストランスデューサー(スターメディカル社製、F
−121S)を縫着し、2週間の回復期間を設けた。6
頭中3頭に体重1kgあたり400pmolのグリセンチンを
生理食塩水に溶解した溶液15mlを1時間にわたって静
脈内に投与した。残り3頭にはグリセンチンを含まない
生理食塩水を同様に投与し、コントロールとして比較し
た。投与と同時に体重1kgあたり15gの固形食(SD
(R)、オリエンタル酵母社製)および体重1kgあたり1
5gのビタワン(R)(日本ペットフード(株)、協同飼
料(株)社製)を給餌した。そこで、消化管運動及び食
後期の長さを測定した。結果は図2及び表4に示され
る。また、この図2により、食後期の収縮の強度の2時
間の測定値を積分し、空腹時における消化管運動のフェ
ーズ3のシグナルピークの平均値に対する比により数値
化し、これをモーターインデックス(Mortor Index)と
して評価を行った。結果は表5に示される。これらの実
験結果によりグリセンチンは食後期の長さには影響を与
えず、食後期運動を胃前庭部で抑制することがわかっ
た。これによりグリセンチンは胃や腸管の切除に伴うダ
ンピング症候群や短腸症候群の際の胃の蠕動運動の亢進
の治療に有効であることを示す。
【0031】
【表4】
【表5】
【0032】次に本発明のグリセンチンの製剤例を示
す。 製剤例1 グリセンチン5g、乳糖2kg、ステアリン酸マグネシウ
ム20gおよびコーンスターチ100gを混合し、この
混合物を圧縮し、圧縮した混合物を粉砕し、混合物顆粒
を調製した。得られた顆粒を打錠機にかけ、1錠当りグ
リセンチン50μgを含有する錠剤を得た。この錠剤に
腸溶性にするために、錠剤に酢酸セルロースフタレート
で腸溶コーティングを施した。
【0033】製剤例2 グリセンチン0.1g、白糖30g、70%D−ソルビ
トール26g、p−オキシ安息香酸エチル0.03gお
よびp−オキシ安息香酸プロピル0.015gを温水6
0gに溶解した。冷却後グリセリン0.15および96
%エタノール0.5gに溶解した香味料の溶液を加えつ
ぎにこの混合物に水を加えて全体で100mlのシロップ
剤を調製した。
【0034】製剤例3 グリセンチン1gと乳糖99gを混合した後、注射用蒸
留水1リットルに溶解し、この溶液を無菌のフィルタ
ー、例えば0.22μmの膜フィルターで濾過し、無菌
的に1mlずつバイアル瓶に分注して凍結乾燥し、注射用
製剤を調製した。本注射用製剤は、用時注射用蒸留水1
mlに溶解する。
【0035】製剤例4 グリセンチン5g、乳糖400g、クリスタリンセルロ
ース150g、ステアリン酸カルシウム150gおよび
タルク300gを充分混合し、この混合物を圧縮し、圧
縮した混合物を粉砕して混合物顆粒を調製した。得られ
た顆粒を2ピースカプセル中に封入して1カプセル当た
りグリセンチン1.0mgを含有するカプセル剤を得た。
【0036】
【発明の効果】グリセンチンにより腸粘膜の増殖が促進
されることから、このものはその腸管粘膜増殖効果によ
り、腸管疾患治療剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】グリセンチン投与による腸絨毛長増加効果を示
す図。
【図2】グリセンチンの消化管に於ける食後期運動に及
ぼす効果をコントロールと対比して示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 名取 與平 埼玉県入間郡大井町鶴ヶ岡5丁目3番1 号 日清製粉株式会社医薬研究所内 (72)発明者 長崎 倶久 埼玉県入間郡大井町鶴ヶ岡5丁目3番1 号 日清製粉株式会社医薬研究所内 (56)参考文献 日大医誌 Vol.45,No.8 (1986)p.683−693 Nature Vol.297,No. 5862(1982)p.156−157 社団法人 日本薬剤師会 「新訂 病 気と薬剤」株式会社 薬事日報社(昭和 61年)p.130−141 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A61K 38/22 - 38/32 CA,REGISTRY

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 グリセンチンを有効成分として含有する
    腸管粘膜増殖促進剤。
  2. 【請求項2】 腸管が空腸、回腸または大腸である請求
    項1に記載の腸管粘膜増殖促進剤。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の腸管粘膜増殖
    促進剤からなる腸管粘膜障害治療剤。
  4. 【請求項4】 腸管粘膜障害が炎症性腸管疾患、腸管切
    除、放射線被曝もしくは薬物に基づくものであるか、あ
    るいは経静脈栄養法もしくは経腸管栄養法に伴うもので
    ある請求項3に記載の治療剤。
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