【発明の詳細な説明】
胃腸管上部の機能を強化する方法 発明の分野
本発明は、グルカゴン関連ペプチドと、胃腸管上部にかかわる障害を予防また
は治療するための前記ペプチドの単独での使用または他のペプチドホルモンと組
合わせた使用とに関する。発明の背景
グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)は、多面発現性グルカゴン遺伝子から組織
特異的に発現される33アミノ酸ペプチドである。GLP-2は、アミノ酸配列がグル
カゴンおよびグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)に対して著しいホモロジーを有
する。また、種々の哺乳動物形態GLP-2が高度に保存されている。例えば、ヒトG
LP-2およびデグー(南米の齧歯類)GLP-2は、ラットGLP-2に対してそれぞれアミ
ノ酸1個およびアミノ酸3個だけ異なる。GLP-2を外因的に与えると、望ましく
ない副作用を明らかに伴わずに、被検マウスの小腸上皮の増殖が著しく増加し得
る(Druckerら,1996,PNAS:USA 93:7911-7916)。次いで、ペプチド配列にある種
の修飾を有する天然GLP-2のペプチド類似体が、小腸で大きな栄養活性(trophic
activity)を示すことが明らかにされた(1996年6月28日出願の同時係属米国特
許出願第08/669,791号参照。これは本明細書に参考として包含される)。さらに
、GLP-2は大腸の組織を増殖させ得ることも判明した(1996年12月10日出願の同
時係属米国特許出願第08/763,177号および1997年5月2日出願の米国特許出願第08
/850,664号、並びにLitvakら,1997,Gastroenterology,vol.112(4 Suppl.),第A14
55ページ参照。これらは総て本明細書に参考として包含される)。GLP-2はまた
、腸の基底側面膜(basolateral membrane)を通るD-グルコースの最大輸送率を
増加させることも明らかになった(CheesemanおよびTseng,1996,American Journ
al of Physiology 271:G477-G482)。
GLP-2とは構造的に無関係の多くのペプチドホルモンが、種々の度合いの栄養
活性を有することが判明した。例えば、インスリン様増殖因子2(IGF-2)は、i
n v
ivoで小腸の陰窩細胞(crypt cell)の有糸分裂を促進することが判明した(米
国特許第5,482,926号)。配列の64%がIGF-2と同一であるインスリン様増殖因子
1(IGF-1)およびそのペプチド類似体も、in vivoで腸組織の増殖を促進するこ
とが判明した(WO第91/12018号)。成長ホルモン(GH)は、腸粘膜の増殖(例え
ばWillmore,米国特許第5,288,703号参照)を含む多くの生理学的作用を有し、そ
れによって腸の吸収能力を増強することが判明した。しかしながら、上述のペプ
チドホルモンはいずれも、胃腸管下部の組織の増殖促進でGLP-2が示す効力また
は特異性をもたない。発明の概要
本発明は、GLP-2受容体アゴニストが胃腸管上部の機能を強化するという知見
に部分的に基づく。特に、GLP-2は食道および胃の組織を増殖させ得ることが明
らかにされた。従って、本発明の一般的目的は、GLP-2受容体アゴニストを治療
および関連目的のために利用することにある。
特に、GLP-2およびGLP-2ペプチド類似体は、胃腸管上部の組織の増殖を生起し
得ることが判明した。従って本発明は、その態様の一つとして、胃腸管上部組織
の増殖を必要とする被験者の胃腸管上部組織を増殖させる方法であって、被験者
の胃腸管上部に胃腸管上部増殖量のGLP-2またはGLP-2類似体を送達することを含
む方法を提供する。
GLP-2は非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)誘導胃腸毒性を改善できることも判
明した。従って本発明は、胃腸管上部を含む胃腸の炎症状態を有するかまたはそ
の危険のある被験者を、治療的または予防的に処置する方法であって、胃腸管上
部に有効量のGLP-2またはGLP-2類似体を送達することを含む方法を提供する。
より特定的には、本発明の態様の一つとして、胃腸管上部にかかわる症状を有
する被験者の治療方法であって、GLP-2またはGLP-2類似体を前記症状を改善でき
る量で胃腸管上部に送達することからなる方法を提供する。
これに関連した本発明の態様として、食道が損傷した、部分的に切除された、
むしばまれた、または炎症を起こしている被験者の治療方法であって、胃腸管上
部損傷または炎症を改善する量のGLP-2またはGLP-2類似体を、医薬的または獣医
学的に許容し得る担体で被験者に送達するステップを含む方法を提供する。別の
態様では、GLP-2またはGLP-2類似体を医薬的または獣医学的に許容し得る形態で
、胃腸管上部の増殖生起に有効な量で投与する。
本発明のさらに別の態様では、胃が損傷した、萎縮性である、または炎症を起
こしている被験者の治療方法であって、胃の損傷または炎症を改善する量のGLP-
2またはGLP-2類似体を、医薬的または獣医学的に許容し得る担体で被験者に送達
するステップを含む方法を提供する。別の態様では、GLP-2を医薬的または獣医
学的に許容し得る形態で、胃の組織増殖に有効な量で投与する。
本発明は別の態様で、胃腸管上部を含む胃腸の炎症状態を起こす危険がある被
験者を予防的に処置する方法であって、
a)胃腸管上部にかかわる炎症状態を起こす危険がある被験者を識別し、
b)前記被験者に炎症状態発生の抑止に有効な量のGLP-2またはGLP-2類似体を
投与するステップを含む方法を提供する。
本発明はさらに別の態様として、胃腸管上部にかかわる炎症状態の治療に有用
なペプチドの同定方法であって、
a)少なくとも一つのアミノ酸置換、欠失、付加、またはブロッキング基含有
アミノ酸を有する脊椎動物GLP-2ペプチド類似体を得、
b)被検動物体内で胃腸管上部の炎症状態を誘導し、
c)胃腸管上部の炎症状態が誘導された被検動物を、ヒト[Gly2]GLP-2に利用
した時に胃脳管上部の炎症状態の改善を生起することができる治療計画(regime
n)を用いて、前記類似体で治療し、
d)ペプチドを投与していない対照動物と比較した被検動物の健康状態もしく
は死亡率に関する類似体の効果を決定するか、またはペプチドを投与していない
対照動物と比較した被検動物の胃腸管上部の量(mass)を決定するステップを含む
方法を提供する。
本発明の別の態様では、胃腸管上部にかかわる炎症状態の防止または改善に有
用なペプチドの同定方法であって、
a)少なくとも一つのアミノ酸置換、欠失、付加、またはブロッキング基含有
アミノ酸を有する脊椎動物GLP-2ペプチド類似体を得、
b)被検動物を、ヒト[Gly2]GLP-2に利用した時に胃腸管上部の炎症状態の改
善を生起することができる治療計画を用いて、前記類似体で治療し、
c)被検動物体内で胃腸管上部の炎症状態を誘導し、
d)ペプチドを投与していない対照動物と比較した被検動物の健康状態もしく
は死亡率に関する類似体の効果を決定するか、またはペプチドを投与していない
対照動物と比較した被検動物の胃腸管上部の量を決定するステップを含む方法を
提供する。
さらに別の態様で本発明は、胃腸管上部を含む胃腸の炎症状態を起こす危険が
ある被験者を予防的に処置する方法であって、
a)胃腸管上部にかかわる炎症状態を起こす危険がある被験者を識別し、
b)前記被験者に、炎症状態の発生の抑止および/または改善に有効な量のGL
P-2またはGLP-2類似体を投与するステップを含む方法を提供する。
関連した態様で本発明は、胃脳管上部の組織を増殖させることができるペプチ
ドの同定に有用な方法であって、
a)少なくとも一つのアミノ酸置換、欠失、付加、またはブロッキング基含有
アミノ酸を有する脊椎動物GLP-2ペプチド類似体を得、
b)前記類似体を、ヒト[Gly2]GLP-2に利用した時に胃腸管上部を増殖させる
ことができる治療計画を用いて、被検動物の胃腸管上部に送達し、
c)治療計画完了後に、胃腸管上部または代表的部分の量、長さ、または総タ
ンパク質含量の増加を評価するステップを含む方法を提供する。
別の態様で本発明は、胃脳管上部の組織またはその細胞を増殖させる方法であ
って、該組織または細胞を、増殖促進量のGLP-2またはGLP-2類似体を補充した培
養培地で培地するステップを含む方法を提供する。
本発明はまた、GLP-2またはGLP-2類似体がペプチドホルモンIGF-1および/ま
たはGHと相乗的に作用して、細胞の増殖を促進するという予想に部分的に基づく
。さらに、GLP-2をIGF-1またはGHと同時投与すると細胞が増殖する。この組合わ
せ療法が小腸および大腸に及ぼす栄養効果は、GLP-2、IGF-1またはGHのいずれか
を単独で投与した時に見られるものより大きい。本発明の別の態様では、GLP-2
をIGF-2またはGHと同時投与して増殖を促進する。
従って、本発明の態様の一つは、哺乳動物体内で胃腸管上部組織の増殖を促進
するための組成物であって、GLP-2またはGLP-2の栄養類似体(trophic analog)
を、IGF-1、IGF-2およびGHの中から選択した1種類以上の別のペプチドホルモン
並びに医薬的に許容し得る担体と混合した状態で含む組成物である。本発明の前
記組成物は、栄養活性を示すGLP-2類似体、IGF-1、IGF-2および/またはGHを含
んでいてもよい。
別の態様で本発明は、哺乳動物体内で胃腸管上部組織の増殖を促進する方法で
あって、GLP-2またはGLP-2類似体、並びにIGF-1、IGF-1類似体、IGF-2、IGF-2類
似体、GHおよびGH類似体の中から選択した1種類以上の別のペプチドホルモンの
血清レベルを上昇させるように唾乳動物を処置することを含む方法を提供する。
本発明のこの種の方法は、GLP-2と、IGF-1、IGF-1類似体、IGF-2、IGF-2類似体
、GHおよびGH類似体の中から選択した1種類以上の別のペプチドホルモンとを、
それぞれ有効量で哺乳動物に同時投与し、該哺乳動物を、GLP-2、IGF-1、IGF-2
および/またはGHの血清レベルを上昇させる作用を有するホルモンまたは小有機
分子で処置し、遺伝子治療を実施して哺乳動物体内で細胞を誘発し、GLP-2、IGF
-1、IGF-2および/またはGHを内因的に産生するか、または細胞を工学的に操作
して、所望の生物学的効果を発生させるために哺乳動物に移植し得るGLP-2、IGF
-1、IGF-2および/またはGHを単独でまたは組合わせて産生することを含む。
本発明は、胃腸管上部の機能を強化するために被験者を処置する方法も提供す
る。この方法は、GLP-2またはGLP-2類似体、並びにIGF-1、IGF-1類似体、IGF-2
、IGF-2類似体、GHおよびGH類似体の中から選択した1種類以上の別のペプチド
ホルモンの血清レベルを上昇させるように哺乳動物を処置することを含む。
本発明の組成物および方法は、胃腸機能の回復または維持、損傷または潰瘍化
した/炎症を起こした腸粘膜の治癒および再増殖の促進、腸疾患の危険の低下、
哺乳動物の栄養状態の改善、並びに哺乳動物、特にヒトの栄養障害または胃腸上
部障害の治療または予防に有用である。
あるいは、本発明の組成物および方法は、健康な哺乳動物の胃脳管上部の増殖
促進に使用し得、例えばウシが栄養分をより多く吸収するようにして、乳離れの
早期化、または乳および肉の生産の増加を可能にするために使用し得る。
本発明のさらに別の態様では、胃腸管上部組織の増殖を促進するための医薬ま
たは獣医学的製剤を製造するためのGLP-2またはGLP-2類似体の使用を提供する。
本発明の特に好ましい態様では、前記製剤はIGF-1、IGF-1類似体、IGF-2、IGF-2
類似体、GHおよびGH類似体の中から選択した別のペプチドホルモンも含む。
本発明はさらに、GLP-2またはGLP-2類似体と、IGF-1、IGF-1類似体、IGF-2、I
GF-2類似体、GHおよびGH類似体の中から選択した1種類以上の別のペプチドホル
モンとを含むキットも提供する。この種の組成物は、治療的に有効な単位用量ま
たは頻回用量(multi-dose amount)で投与する。
本発明はさらに、胃腸管上部組織または細胞の増殖を促進する方法であって、
前記組織または細胞を、GLP-2またはGLP-2類似体と、IGF-1、IGF-1類似体、IGF-
2、IGF-2類似体、GHおよびGH類似体の中から選択した1種類以上の別のペプチド
ホルモンとの増殖促進混合物を含有する培養培地で培養するステップを含む方法
を提供する。これらの方法は、培養細胞またはin vivoで実施し得る。
本発明のさらに別の態様では、胃腸管上部組織を修復するための患者の治療を
、(a)患者由来の組織または細胞を、組織増殖促進量のGLP-2またはGLP-2類似
体とIGF-1、IGF-1類似体、IGF-2、IGF-2類似体、GHおよびGH類似体の中から選択
した1種類以上の別のペプチドホルモンとの混合物と一緒に培養し、次いで(b
)前記組織または細胞を治療すべき患者に移植するステップによって実施する方
法を提供する。
本発明はまた、GLP-2と組合わせて使用した時のホルモンの活性を決定する方
法であって、(1)ホルモンを適量のGLP-2またはGLP-2類似体と一緒に被検哺乳
動物に同時投与し、(2)その後の被検哺乳動物の胃腸管上部組織の増殖を評価
し、(3)被検哺乳動物の胃腸管上部組織の増殖が、GLP-2のみで処置した対照
哺乳動物と比べて増加しているかどうかを決定するステップを含む方法も提供す
る。図面の簡単な説明
図1は、GLP-2で処置した後の食道の粘膜上皮および筋肉層の、ブロモデオキ
シウリジンで染色する細胞の数の変化を示す。
図2は、GLP-2で処置した後の食道の総タンパク質含量の変化を示す。
図3は、GLP-2で処置した後の胃の重量変化を示す。発明の詳細な説明
本発明は、特に、上部胃腸管の機能が、疾患又は損傷によって損なわれた、医
学的又は獣医学的状態の改善のための、GLP-2及びGLP-2アナログの治療的、予防
的及び関連する利用に関する。例えば、本方法は、上部胃腸管を含む炎症状態に
罹患している被験体、上部胃腸管の切除を受けている被験体、又はその上部胃腸
管が毒素などによって損傷されたことがある被験体の治療に有効に適用される。
本明細書中で用いられるように、用語「上部胃腸管」は、食道及び胃を含む胃
脂(GI)管の部分を意味する。食道は、咽頭食道連結(injunction)に近接して
現れ、後部縦隔(posterior mediastinum)を通って胃食道連結で終わる、末端
に続くGI管の部分である。胃は、胃食道連結から十二指腸に延びる膨張しうる構
造体である。
本明細書中で用いられるように、用語「被験体(subject)」はヒト又は他の
動物を含み、家畜及びペットを含む。
本明細書中で用いられるように、用語「GLP-2レセプター・アゴニスト」は、G
LP-2レセプターへの結合に関して、そのGLP-2レセプターの活性化をもたらす任
意の分子を意味し、例えばGLP-2又はGLP-2のペプチドアナログを含む。最近、GL
P-2レセプターがG-蛋白質結合(coupled)レセプターであることが証明された。
GLP-2レセプターをコードする核酸が単離された(同時係属中の1996年12月13日
出願の米国出願第08/767,224号、及び1997年4月24日出願の米国出願第08/845,54
6号参照。両出願は、参照によって本明細書に組み入れられる。)このように、G
-蛋白質結合レセプター・アゴニストを同定するために、この技術分野で普通に
使用される方法は、GLP-2レセプターに有効に応用できる。化合物のGLP-2レセプ
ター・アゴニスト活性を評価するための1つの特に有用な方法は、上記の同時係
属中の出願に開示されている。簡単に言えば、機能性レセプターがその細胞表面
に提供されるように、COS細胞などの好適な細胞をGLP-2レセプターをコードする
核酸で形質転換する。その後、被験化合物のアゴニスト活性は、形質転換された
細胞をその被験化合物と接触させることによって評価でき;形質転換された細胞
への被験化合物の結合に応答した環状アデノシン1リン酸の細胞内濃度の増加が
アゴニスト活性を示す。
GLP-2ペプチドアナログ及び選択された化学的ライブラリーは、このアプロー
チを用いてGLP-2レセプター・アゴニスト活性をスクリーニングができる。この
方法において有効に採用されるペプチドアナログのタイプに関するガイダンスが
、本明細書中並びに同時係属中の、両者とも1996年4月12日出願の米国出願第08/
632,533号及び08/631,273号中に与えられ、これらの米国出願は参照によって本
明細書に組み入れられる。さらに、商業的に入手可能な化学的ライブラリーのい
ずれも、高速処理(high throughput)又は超高速処理(high throughput)スク
リーニング技術を用いて、小分子であるGLP-2レセプター・アゴニストを有効に
スクリーニングできる。GLP-2レセプター・アゴニストとして同定されたGLP-2の
ペプチド性アナログ及び小分子アゴニストは、本明細書中及び科学文献中に記載
されたモデルを用いて上部胃腸管に関する障害を治療するための治療的及び関連
の有用性をスクリーニングすることができる。
上部胃腸管活性の増進(enhancement)を必要とするいかなる被験体も、本発
明によるGLP-2アゴニストによる治療の潜在的な候補者である。特に、本発明に
よって有効に治療される障害の1つのグループは、食道に関する疾患である。ヒ
ト患者は、1つ以上の次の症状を表した後の、そのような状態を有すると典型的
に診断される:嚥下時の痛み又は不快、液体若しくは固体の嚥下時の痛み又は不
快、胸焼け、口中の苦味、のどでの又は嚥下の間の食物がつかえる感じ(のどの
中のしこりとしてしばしば表れる)及び呼吸の短縮化。食道胃内視鏡(esophago
gastroscopy)を用いた食道の視覚化は、食道の損傷又は疾患の存在を確認する
のに使用できる。あるいは、食道は、バリウム造影嚥下X線(Barium contrast s
wallowing X-ray)、又は経口造影物質によるCTスキャンを用いて、放射線学的
に視覚化できる。食道機能は、マノメトリーによっても評価できる。食道疾患、
特に食道炎の存在は、バーンスタイン試験(Burnstein test)によって機能的に
評価できる。食道疾患のより正確な診断法として、生検は、炎症の組織学的証拠
の分析のために食道粘膜を採取し、さらに、培養物がこの物質から作成され、細
菌性、ウイルス性又は菌性感染及び炎症の存在を決定できる。
食道の炎症状態は、炎症-脈管炎(inflammation-vasculitis)、感染後炎症(p
ost-infection inflammation)、浸潤障害(infiltrative disorder)、例えば
、強皮症(scleroderma)及びアミロイド(amyloid)、並びに炎症が、予期せぬ
超過投与によるなどの、アルコール、酸及びアルカリなどの毒素の作用から生じ
た結果である状態を含む。
本発明によって有効に治療できる状態のもう1つのグループは、胃を含む疾患
、例えば、消化性潰瘍である。ヒト患者は、休息しているとき若しくは食事して
いるとき又はその両者のいずれかのときに、腹部の痛みの症状を表した後の胃障
害を有すると典型的に診断される。しかしながら、胃障害の症状は、特異的でな
く、そしてそれは、食道からの痛みと胃からの痛みとを区別するのは困難であり
得る。
さらに、GLP-2は、上部胃腸管の機能不全を発症する危険があることを示し得
る患者に、有効に投与され、そのような状態の発症(onset)に対して保護し、
又は発作の激しさを低減することができる。そのような患者は、喫煙者並びに十
二指腸潰瘍及び幽門前潰瘍(prepyloric ulcer)に関連する血液型O型の患者、1
種以上のNSAIDの投与を受けているか又は受けようとしている患者、化学療法を
受けているか又は受けようとしている患者、及びストレスによって誘導される潰
瘍形成を病んでいる患者が含まれる。
GLP-2アゴニストによる治療が、上部胃腸管での組織成長を増加することは証
明されている。GLP-2アナログが、上部胃腸管細胞増殖活性を有することを証明
するのに好適なモデルは、上部胃腸管の医学的又は獣医学的状態の治療に潜在的
に治療に有用であり、実施例1及び実施例3に記載されている。
食道に関する障害の研究に有用な動物モデルは、文献中に記載されており(例
えば、Ann.Surg.Oncol.1(3):252-261(1994);Ann.Emerg.Med.22(2):178-1
82(1993)参照)、食道の機械的損傷又は酸によって誘導される損傷を含む。この
ように、先行技術に記載された動物モデルは、上部胃脳管に関する炎症状態を改
善するGLP-2アゴニストと同定された化合物の能力を評価するのに使用できる。
胃に関する障害を研究するのに有用な動物モデルは、文献に記載されている(
例えば、実験的及び分子病理学(Experimental and Molecular Pathology)59:1
36-154(1993)参照)。これらのモデルは、胃十二指腸炎を起こす非特異的抗
炎症薬(anti-inflammatories)の投与、及びエタノール単独又はエタノールと
胃の損傷を起こす他の試薬との組み合わせでの投与を含む。このように、先行技
術に記載されている動物モデルは、胃に関する障害を改善するGLP-2アゴニスト
と同定された化合物の能力を評価するのに使用できる。
GLP-2の多様な脊椎動物の形態(forms)は、例えば、ラットGLP-2、並びに雄
牛GLP-2、ブタGLP-2、デギュ(degu)GLP-2、仔ウシGLP-2、モルモットGLP-2、
ハムスターGLP-2、ヒトGLP-2、虹マスGLP-2及びニワトリGLP-2を含むその相同体
(homologous)を含む。GLP-2のこれらの形態の配列は、Buhlら、J.Biol.Chem
.,1988,263(18):8621中、Nishi及びSteiner,Mol.Endocrinol.,1990,4:119
2-8及びIrwin及びWong,Mol.Endocrinol.,1995,9(3):267-77を含む多くの著
者によって報告されている。これらの著者によって報告された配列は、参照によ
って本明細書に組み入れられる。
脊椎動物GLP-2のアナログは、全て本明細書中で提供されるガイダンスに従っ
て、ペプチド化学の標準技術を用いて生産でき、上部胃腸管での栄養(trophic
)活性を評価できる。本発明の特に好ましいアナログは、以下のヒトGLP-2の配
列に基づくものである:
上記配列中、1つ以上のアミノ酸残基が、そのアナログが以下のパラメーターの
うちの少なくとも1つにおいて増加が測定される上部胃腸管におけるその栄養活
性を保持する限り、もう1つのアミノ酸残基と保存的に置換される:上部胃腸管
の長さ、蛋白質含量、例えば臭化デオキシウリジン(BrDU)などの有糸分裂の間
接指示薬の使用によって測定された、上部胃腸管の細胞の有糸分裂/細胞増殖の
重量又は速度。
天然に存在するいかなるGLP-2、好ましくはヒトGLP-2配列における保存的置換
は、以下の5つのグループのいずれかでの交換として定義される: 本発明は、いくつかの脊椎動物のGLP-2配列におけるアミノ酸の非保存的な置
換をも含む。ただし、非保存的な置換は、異なる種から単離されたGLP-2におい
て変化することが知られているアミノ酸位置で起こる。非保存的な残基の位置は
、公知の全ての脊椎動物GLP-2配列を一列に並べることによって容易に決定され
る。例えば、Buhlら、J.Biol.Chem.,1988,263(18):8621は、ヒト、ブタ、ラ
ット、ハムスター、モルモット及び仔ウシGLP-2の配列を比較し、13、16、19、2
7及び28位が、非保存的であることを見出した(位置番号は、ヒトGLP-2配列にお
ける類似位置を示す)。Nishi及びSteiner,Mol.Endocrinol.,1990,4:1192-8
は、GLP-2をコードする配列中の追加位置、上記ヒト配列の残基20も、デギュ、
南アメリカ原産のげっ歯類種においても変化することを見出した。このように、
この基準の下に、哺乳動物で変化し、好ましくは非保存的な残基と置換されるア
ミノ酸位置は、13、16、19、20、27及び28位である。脊椎動物において変化し、
また、非保存的な残基と置換される追加のアミノ酸残基は、2、5、7、8、9、10
、12、17、21、22、23、24、26、29、30、31、32及び33位に生じる。
あるいは、非保守的な置換は、アラニン走査(alanine-scanning)突然変異誘
発が、アラニンによるアミノ酸残基の置換が上部胃腸管の活性の全てを破壊しな
い突然変異に対するいくらかの抵抗性を示す、いかなる位置にも起こりうる。ア
ラニン走査突然変異誘発技術は、Cunningham及びWells,Science,1989,244:10
81によって記載されており、その全体の参照によって本明細書に組み入れられる
。殆どのGLP-2配列は、たった約33個のアミノ酸からなっているので(そして、
ヒトGLP-2アラニンは、すでに4つの位置に存在している)、当業者であれば、下
記の実施例の教示のように、効果をねらって残りの各位置でのアラニンアナログ
を容易に試験できるであろう。
本発明の特定の実施態様においては、GLP-2ペプチドは、
1)下記に示す配列を有するラットGLP-2: 2)ヒトGLP-2であって、下記に示すラットGLP-2のThr19をAla19に替えた等価
物
(equivalent):
3)ヒト[Gly2]GLP-2(2位のアラニンがグリシンによって置換されているヒトG
LP-2);
4)N末端ブロッキング基(blocking group)及び/又はArg若しくはArg-Argな
どのN-末端伸長を組み込み、及び/又はC末端ブロッキング基及び/又はArg
若しくはArg-ArgなどのC-末端伸張を組み込んだ、GLP-2及びGLP-2アナログ
から選択される。
さらに、1997年4月11日出願のPCT出願第PCT/CA97/00252号(参照によってその
全体が本明細書に組み入れられる)に記載されており、多数のアゴニストGLP-2
ペプチドは、本発明の方法においても使用できる。
R1及びR2で示される「ブロッキング基」は、生化学的安定性を与え、エキソペ
プチダーゼによる消化に抵抗するペプチド化学の当該技術分野において日常的に
使用される化学基である。好適なN末端保護基は、例えば、アセチルなどのC1-5
アルカノイル基を含む。また、好適なN末端保護基は、アミノ官能性(amino fun
ction)を欠くアミノ酸アナログである。好適なC末端保護基は、C末端カルボキ
シルの炭素原子においてケトン又はアミドを形成する基、又はカルボキシルの酸
素原子においてエステルを形成する基を含む。ケトン及びエステル形成基は、ア
ルキル基、特に分岐状又は非分岐状C1-5アルキル基、例えば、メチル基、エチル
基
及びプロピル基を含み、一方、アミド形成基は、第1級アミン官能基またはアル
キルアミン官能基などのアミノ官能基、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、
ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノなどのモノ-C1-5アルキ
ルアミノ基及びジ-C1-5アルキルアミノ基を含む。アミノ酸アナログも、本発明
の化合物のC末端の保護に好適であり、例えば、アグマチン(agmatine)などの
脱炭酸された(decarboxylated)アミノ酸アナログである。
本発明において有用なGLP-2ペプチドは、先に記載されたGLP-2種の誘導された
形態を含み、その中の種々の官能基は、ペプチドに結合し、例えば、半減期を延
長し、溶解性を高め、GLP-2作用に影響を与えるなどである。1つの実施態様にお
いては、GLP-2は、リシン及びアルギニンなどの存在する又は置換されたアミノ
酸において修飾され、半減期を延長する目的で疎水性部分を導入する。1998年3
月5日公開の国際公開第WO98/08872号に記載されているように、そのような疎水
性部分は、例えば、追加のC末端リジンのε(イプシロン)アミノ基に、又はGLP
-2(1-33)の20位のリジン置換アミノ酸に結合されている、テトラデカノイル基
及びカルボキシノナデカノイル基を含む。
上部胃腸管組織の成長を促進するために選択されたGLP-2の特別な形態は、ペ
プチド生成物を生産するための周知の多様な技術によって調製できる。GLP-2の
脊椎動物の形態は、もちろん蛋白質単離技術の適当な組み合わせを用いて、天然
の供給源から抽出によって得ることができる。Buhlら(前掲)によって記載され
ているように、ブタGLP-2の単離及び精製は、ワークアップ(work-up)をモニタ
ーするために、合成プログルカゴン126-159に対して生成される抗体の助けによ
って、サイズ選択(size selection)及びHPLCに基づく分画(HPLC-based fract
ionation)の組み合わせによって回腸粘膜の酸−エタノール抽出によって達成さ
れる。GLP-2抽出に代わるものとして、脊椎動物GLP-2又はそのアナログのいずれ
かに、L-アミノ酸のみを導入したGLP-2の形態は、組み替えDNA技術の応用によっ
て商業的な量で製造できる。この目的のためには、所望のGLP-2又はGLP-2アナロ
グをコードするDNAを、発現ベクターに導入し、微生物、例えば、酵母、又は他
の細胞性宿主中に形質転換し、そしてそれをGLP-2発現に適当な条件下に培養す
る。多様な遺伝子発現系が、この目的に適合しており、選択された宿主によって
天然において用いられる発現制御によって所望の遺伝子の発現を典型的に駆動す
る。GLP-2は、その活性のために翻訳後グリコシル化を必要としないので、その
製造は、大腸菌などの細菌宿主中で最も便利に達成できる。そのような製造のた
めには、選択されたGLP-2ペプチドをコードするDNAを、大腸菌のlac、trp又はPL
遺伝子の発現制御下に有益なように配置することができる。GLP-2それ自身をコ
ードするDNAの発現に代わるものとして、宿主が、GLP-2が、発現産物の単離及び
安定性を促進する、担体蛋白質に遊離可能に結合されている、融合蛋白質として
GLP-2ペプチド発現に適合させることができる。
選択されたGLP-2又はGLP-2アナログ、並びに非遺伝学的にコードされたアミノ
酸及びN及びC末端誘導形態を導入するGLP-2ペプチドを製造するのに必然的に用
いられるものの製造に普遍的に適用可能なアプローチにおいては、自動化された
ペプチド合成の十分確立した技術が採用され、その一般的記載は、例えば、J.M
.Stewart及びJ.D.Young著,固層ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthe sis)
、第2版、1984、Pierce Chemical Company,Rockford、Illinois;及びM
.Bodanszky及びA.Bodanszky著、ペプチド合成の実際(The Practice of Pepti de Synthesis)
、1984、Springer-Verlag、New York;Applied Biosystems 430A
ユーザー・マニュアル、1987、ABI Inc.、Foster City、Californiaにある。こ
れらの技術では、GLP-2ペプチドは、適当に保護されたアミノ酸の逐次付加(seq
uential addition)によって、例えばOrskovら、Febs Letters、1989、247(2):1
93-196に記載されている、Fmoc又はtBocプロトコールのいずれかを用いて、その
C末端の、樹脂-結合残基から成長する。
N及び/又はCブロッキング基の導入には、固層ペプチド合成法の従来のプロト
コールも適用できる。C末端ブロッキング基の導入としては、例えば、所望のペ
プチドの合成は、典型的には固層として、化学的に修飾されて、樹脂からの開裂
が所望のC末端ブロッキング基を有するGLP-2ペプチドをもたらす、支持樹脂(su
pporting resin)を用いて行われる。C末端が第1級アミノ・ブロッキング基を
有するペプチドを提供するためには、例えば、合成はp-メチルベンズヒドリル
アミン(MBHA)樹脂を用いて行い、ペプチド合成が完了したときに、フッ化水素
酸処理によって所望のC末端アミノ化ペプチドを遊離する。同様に、C末端でのN-
メチルアミン・ブロッキング基の導入は、N-メチルアミノエチル-誘導DVB樹脂を
用いて達成され、そしてHF処理時にN-メチルアミノ化されたC末端を有するペプ
チドを遊離する。エステル化によるC末端の保護は、従来の手順を用いても達成
できる。これは、樹脂から側鎖保護されたペプチドを遊離させ、所望のアルコー
ルでの続く反応を行わせ、エステル官能基を形成させる樹脂/ブロッキング基の
組み合わせでの使用を伴っている。FMOC保護基は、メトキシアルコキシベンジル
・アルコール又は同等のリンカーによって誘導されたDVB樹脂との組み合わせで
、ジクロロメタン中TFAによって行われる支持体からの開裂によって、この目的
に用いることができる。好適に活性化されたカルボキシル官能基、例えば、DCC
によるエステル化は、所望のアルコールの添加、次いでエステル化GLP-2ペプチ
ドの脱保護及び単離によって実施できる。
N末端ブロッキング基の導入は、合成GLP-2ペプチドが未だ樹脂に結合されてい
る間に、例えば、好適な無水物及びニトリルによる処理によって、達成できる。
N末端にアセチル・ブロッキング基を導入するには、例えば、樹脂-結合ペプチド
を、アセトニトリル中で20%無水酢酸によって処理することができる。Nブロッ
クGLP-2ペプチドは、その後、樹脂から開裂され、脱保護され、次いで単離され
る。
一旦所望のGLP-2ペプチドが合成され、樹脂から開裂され、十分に脱保護され
れば、そのペプチドは、次いで選択されたアミノ酸配列を有する単一のオリゴペ
プチドの回収を確実にするために精製される。精製は、標準アプローチの幾つか
を用いて達成でき、アルキル化シリカ・カラム、例えば、C4-、C8-又はC18-シリ
カでの逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を含む。そのようなカラム
分画法は、例えば、通常少量の(例えば、0.1%)TFA又はTEAなどの対をなす試
薬(pairing agent)を含む、水性バッファー中、有機溶媒、例えば、アセトニ
トリルの増加%が10-90%の線状グラジエントをかけることによって一般的に達
成される。あるいは、ペプチド種の電荷特性に基づいて、それらを分離するため
に、イオン交換HPLCが採用できる。カラム画分(Column fractions)を集め、所
望の/必要な純度を有するペプチドを含む画分を必要に応じて集める。本発明の
1つの実施態様においては、GLP-2ペプチドは、次いで確立された方法で処理さ
れ、
開裂酸(cleavage acid)(例えば、TFA)を、酢酸、塩酸、リン酸、マレイン酸
、酒石酸、コハク酸などの製薬的に許容可能な酸と交換し、ペプチドの製薬的に
許容可能な酸付加塩を生産する。
患者への投与のためには、GLP-2ペプチド又はその塩は、本発明の1つの態様
においては、製薬的に許容可能な形態で、例えば、0.22μのフィルターを通して
滅菌-濾過され、実質的に発熱物質を含まない調製物として提供される。望まし
くは、製剤化されるべきGLP-2ペプチドは、HPLCの単一の又は個々に区別された
ピークとして移動し、均一な、そして真正な(authentic)アミノ酸組成並びに
その分析時の配列を示し、さもなければ、製薬産物の品質を規制する種々の国家
団体によって設定されている基準に合っている。
治療的利用のためには、選択されたGLP-2又はGLP-2アナログは、製薬的に許容
可能であり、ペプチドを、上部胃腸管にペプチドを伝達するように、選択された
投与経路によって患者に投与するのに適当な担体と共に製剤化される。好適な製
薬的に許容可能な担体は、希釈剤、賦形剤などの、ペプチド系薬物と共に従来か
ら用いられているものである。薬物製剤一般に関するガイダンスとして、「レミ
ントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」、第17版、Mack
Publishing Company、Easton、Penn.、1985年を参照することもできる。本発明
の1つの実施態様においては、化合物は、輸注によって、例えば、総合非経口栄
養療法(total parenteral nutrition therapy)中の患者に対する液体栄養補給
剤として使用される場合、又は注射によって、例えば、腹腔内、筋肉内若しくは
静脈内に投与するために製剤され、従って、滅菌され、発熱物質を含まない形態
の水溶液として利用され、必要に応じて生理学的に耐えうるpH、例えば、わず
かに酸性又は生理学的pHに緩衝されている。このように、化合物は、蒸留水な
どの賦形剤中、又は、より望ましくは、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水若し
くは5%デキストロース溶液で投与される。GLP-2又はGLP-2アナログの水溶解性
は、所望ならば、酢酸又は水酸化ナトリウムなどの溶解性増大剤(solubility e
nhancer)を導入することによって高めることができる。
水性担体又は水性賦形剤は、10-20%の範囲にあることが期待される貯蔵効果
(depot effect)を達成するのに有効なゼラチンの量で注射可能な使用のために
補給できる。ヒアルロン酸などの別のゲル化剤も、貯蔵剤(depoting agents)
として(獣医学適用においても)有用である。
注射可能な製剤に代わるものとして、GLP-2又はGLP-2アナログは、他の経路に
よって患者に投与し、上部胃腸管に伝達するために製剤できる。錠剤、カプセル
剤などの経口投与形態は、標準製薬プラクティスに従って製剤化できる。
化合物は、食道及び胃と直接接触する液体形態、ロゼンジ(lozenge)形態又
は、食道又は胃の内面と化合物とを直接接触させる他の類似の製剤としても提供
される。さらに、標準的な製剤は、循環中の化合物の迅速で高い濃度を達成する
ように送達され得る。
本発明のGLP-2及びGLP-2アナログは、GLP-2の延長され維持された投与のため
の除放性インプランテーションデバイスとして製剤することもできる。そのよう
な持続放出製剤(sustained release formulation)の例は、ポリ(乳酸)、ポ
リ(乳酸-co-グリコール酸)、メチルセルロース、ヒアルロン酸、コラーゲンな
どの生体適合性ポリマーからなる複合物を含む。薬物送達賦形剤中の分解可能な
ポリマーの構造、選択及び使用は、A.Dombら、Polymers for Advanced Technol
ogies、3:279-292(1992)を含む多数の出版物中で概説されている。製薬的製
剤におけるポリマーの選択及び使用に関する追加的なガイダンスは、M.Chasin
及びR.Langer(編集)、「薬物及びその製薬科学(Drugs and the Pharmaceuti
cal Sciences)」の第45巻、「ドラッグ・デリバリー・システムとしての生体分
解可能なポリマー(Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems)」、M
.Dekker、New York,1990による本文中に見出すことができる。リポゾームも、
GLP-2又はGLP-2アナログの持続放出を提供するために使用できる。目的の薬物の
リポゾーム製剤の使用及び作製方法に関する詳細は、他の箇所、すなわち米国特
許第4,921,706号;米国特許第5,008,050号;米国特許第4,921,706号;米国特許
第4,927,637号:米国特許第4,452,747号;米国特許第4,016,100号;米国特許第4
,311,712号;米国特許第4,370,349号:米国特許第4,372,949号:米国特許第4,52
9,561号:米国特許第5,009,956号;米国特許第4,725,442号;米国特許第4,737,3
23号:米国特許第4,920,016号中に見出すことができる。持続放出製剤は、GLP-2
又はGLP-2アナログの高い局所濃度の提供が望ましい場合、例えば、上部胃腸管
の
近傍又は上部胃腸管で、炎症を起こした上部胃腸管中の上部胃腸管の成長を促進
する場合に、特に興味深い。
上部胃腸管の成長を刺激し、及び/又はヒトを含む哺乳動物の上部胃腸管機能
を高める使用のためには、本発明はその態様の1つにおいて、組織成長促進量のG
LP-2又はGLP-2アナログを、いずれかの単位用量又は複合用量で含む、滅菌-充填
バイアル又はアンプル形態のパッケージを提供し、ここでそのパッケージは、そ
のような成長の促進のためのその内容物のラベル指示されている使用を含む。本
発明の1つの実施態様においては、パッケージは、投与準備製剤として、GLP-2又
はGLP-2アナログ及び所望の担体を含む。あるいは、そして本発明のもう1つの実
施態様によれば、パッケージは、リン酸緩衝生理食塩水などの好適な担体中での
再構成に好適な凍結乾燥された形態でGLP-2又はGLP-2アナログを提供する。
1つの実施態様においては、パッケージは、水性賦形剤中に溶解された有効な
、上部胃腸管増殖量のGLP-2又はGLP-2アナログを含む注射可能な溶液を含む滅菌
-充填バイアル又はアンプルである。
本発明によれば、GLP-2又はGLP-2アナログは、上部胃腸管の組織の成長によっ
て利益を受けるだろう患者を治療するために投与される。さらに、増加した組織
成長の結果としてであるか否かを問わず、増加した上部胃腸管組織機能によって
利益を受けるだろう患者は、本発明による治療の候補者である。一般に、増加し
た上部胃腸管重量及び/又は増加した胃腸管粘膜機能のいずれかによって利益を
受けるだろう患者は、GLP-2又はGLP-2アナログによる治療の候補者である。GLP-
2によって治療される特別な状態は、胃又は食道の種々の形態の炎症疾患、並び
に上部胃腸管の部分的又は大半の切除を受けた患者を含む。便宜のため、目的の
GLP-2又は組み合わせによって治療される、胃及び食道を含む上部胃腸管の状態
の非網羅的なリストを下記の表で提供する。
表1 胃腸管学に関するテキストブック(Textbook on Gastroenterology)、第I巻、
Tadataka Yamada M.D.(第2版、1985)中の、John H.Yardley及びThomas R.H
endrixによる、胃炎、十二指腸炎、及び関連する潰瘍性病変(Gastritis,Duode
nitis,and Associated Ulcerative Lesions)参照。
表2 胃腸管学に関するテキストブック(Textbook on Gastroenterology)、第I巻、
Tadataka Yamada M.D.編(第2版、1985)中の、食道のその他の疾患(Miscella
neous Diseases of the Esophagus)参照。
食道に関してのGLP-2処置の治療効率は、例えば、内視鏡検査法、バリウム嚥
下又はCTによってモニターできる。例えば、GLP-2又はGLP-2アナログは、上部胃
腸管に関わる炎症状態を有する患者に、食道の不快感を改善し、痛みを減らし、
嚥下を改善し、胸の痛みを減らし、胸焼けを減らし、嚥下又は飲食後の固体若し
くは液体の逆流を減らし、嘔吐を減らし、若しくは体重増加の改善又は活力を改
善するのに十分な量で投与される。胃に関するGLP-2の治療効率は、痛み又は不
快感の減少によってモニターできる。さらに、GLP-2又はGLP-2アナログは、非ス
テロイド抗炎症薬(「NSAIDS」)によって治療されている患者などの、上部胃脳
管に関わる炎症状態が発症(developing)する危険があると同定された患者に投
与できる。NSAIDSの2、3の例は、アスピリン、イブプロフェン、サリンダク(su
lindac)及びインドメタシンである。
患者の治療に最も適した治療的用量及び投与計画は、もちろん、治療されるべ
き疾患又は状態、及び患者の体重及び他のパラメーターによって変化する。後記
の実施例1-3で与えられた結果は、2日間にわたる1日2回のGLP-2又はGLP-2アナロ
グの投与による治療が、上部腎腸管の細胞増殖及び蛋白質合成の増加をもたらし
たことを証明する。12日間の治療は、胃重量の増加をもたらした。実施例4は、G
LP-2治療が非ステロイド抗炎症薬の胃脳管毒性を改善できることを証明する。非
常に少ない用量、及び治療の短い若しくは長い期間又は頻度が、治療的に有用な
結果、すなわち、上部胃腸管重量における統計的に特に顕著な増加、及び/又は
上部胃腸管機能の増強を創出することも期待される。ヒトへの使用に最も適した
投薬サイズ及び投与計画は、本明細書で与えられた結果によって導かれ、適切に
設計された臨床試験で確認できる。
効果的な投薬及び治療プロトコールは、従来の手段によって決定でき、実験動
物における低用量でスタートし、その効果をモニターしながら(例えば、組織学
、疾患活性スコアー、粘膜酵素活性、小及び大腸上皮特異的遺伝子発現、サイト
カイン類及びミエロペルオキシダーゼの発現などの炎症応答のマーカー、GLP-2
含量)用量を増加し、同様に体系的に投薬計画を変化させる。所与の患者に最適
の用量を決定するときに、多くのファクターが臨床医によって考慮に入れられる
。これらのうち第1のものは、血漿中で正常に循環するGLP-2の量であり、それ
は、休止状態(resting state)で151pmol/mLのオーダーであり、健康なヒト成
人の栄養摂取後で225pmol/mLに上昇する(Orskov,C.及びHolst,J.J,1987,Sc
and.J.Clin.Lab.Invest.47:165)。追加的なファクターは、患者の体格(s
ize)、患者の年齢、患者の一般的状態、治療されている特別な疾患、病気の重
さ、患者の他の薬物の存在、GLP-2ペプチドのin vivo活性などを含む。試験投薬
量(trial dosages)は、動物研究の結果及び臨床文献を考慮して選択されるで
あろう。当業者であれば、in vitroでのGLP-2結合競合アッセイ(binding compe
tition assays)から導かれる結合定数及びKiなどの情報も、用量を計算するの
に用いることができる。
GLP-2ペプチドの典型的なヒト用量は、約10μg/kg体重/日から約10mg/kg/日、
好ましくは、約50μg/kg/日から約5mg/kg/日、特に好ましくは、約100μg/kg/日
から1mg/kg/日である。
本発明のもう1つの態様においては、本発明は、前もってのインキュベーショ
ン又はGLP-2又はGLP-2アナログによる治療によって、in vitro又はin vivoのい
ずれかでコンディショニングされているか、又はそれを製造するために遺伝子的
に操作された、移植細胞を用いて先に同定された患者候補の治療方法(treatmen
t)を提供する。生体外での(ex vivo)細胞のコンディショニングは、成長促進
量のGLP-2又はGLP-2アナログが補給されているか、さもなければそれらの細胞の
培養に適当な培地中で移植されるべき細胞又は組織を培養することによって簡単
に達成できる。細胞は、適当なコンディショニング期間の後、直接患者に移植で
きるか、又は確立されている細胞カプセル化技術を用いてカプセル化後、移植す
ることができる。
本発明のさらにもう1つの態様は、食道の組織の成長を促進するためのGLP-2ペ
プチドによるin vivoでの動物の治療を含む。上部胃腸管の、引き続く増大の後
、これらの組織は、異種移植法に用いることができる。そのようなGLP-2ペプチ
ド処置は、移植された器官又は組織のサイズが、しばしばこの方法の成功を制限
するので、非ヒト動物からの組織のヒトへの異種移植の前が、都合がよい。例え
ば、ブタの提供動物は、ブタ上部胃腸管組織の、この器官を必要とするヒトへの
異種移植の前に上部胃腸管のサイズを増加させるために、GLP-2ペプチドによっ
て処置することができる。
あるいは、移植される細胞は、in vitroで、グルカゴン遺伝子又は、より直接
的には、単独でGLP-2をコードするDNAのいずれかを発現又は過発現(over-expre
ss)するように、遺伝子的に操作されている細胞から増加させる(raised)こと
ができる。そのようなDNA配列は、選択されたGLP-2のアミノ酸配列から容易に決
定できるが、遺伝的にコードされたアミノ酸を含むGLP-2形態のみが、この方法
で製造されるという制限がある。ヒト細胞中に遺伝的情報を導入するのに好適な
、種々のウイルス・ベクターが、採用でき、宿主細胞中で機能を有する発現制御
下に、GLP-2をコードするDNAを導入する。一旦、遺伝子的に変化すれば、その操
作された細胞は、従来技術で確立されている手順を用いて移植できる。(例えば
、
Druckerら、1996、PNAS:USA 93:7911-7916参照。)GLP-2 と他のペプチドホルモンの共投与
本発明は、GLP-2と、IGF-1、IGF-2およびGHからなる群から選択される少なく
とも1つの他のペプチドホルモンとの治療上有効な組み合わせに関する。驚くべ
きことに、哺乳動物に単独で投与されたGLP-2(およびその類似体)は、上部胃
腸管の成長を誘導する。予想された通り、GLP-2を、IGF-1、IGF-2およびGHから
なる群から選択される少なくとも1つの他のペプチドホルモンと組み合わせて投
与すると、上部胃腸管組織の成長に対する明らかな効果が見られる。
本発明のGLP-2およびGLP-2類似体はまた、食道または胃の成長因子であること
が知られている少なくとも1つの他のペプチドホルモンと混合して被験体に投与
することもできる。公知の食道および胃の成長因子には、表皮成長因子(EGF)、
インシュリン様成長因子1(IGF-1)、肝細胞成長因子(HGF)および角質細胞成長因
子(KGF)が含まれる。
胃に関係する病気、たとえば、消化性潰瘍(peptidic ulcer)の治療に有効なGL
P-2を用いた具体的な補助的治療には以下のものが含まれる:(1)胃からの酸の分
泌を遮断するように作用する医薬品、たとえば、H2受容体アンタゴニスト、プロ
トンポンプ阻害剤およびプロスタグランジン;(2)胃の中に保護障壁を形成する
ように作用する医薬品、たとえば、スクラルファート;(3)ビスマスを含む化合
物、および(4)Helicobacter pyloriを制御する医薬品。
より特定的には、本発明は、IGF-1およびGHからなる群から選択される少なく
とも1つの他のペプチドホルモンと共に投与される場合の、GLP-2の治療上のお
よび関連する使用法に関する。さらにより特定的には、本発明は、上記の組み合
わせを使用して上部胃腸管の機能を増強することに関する。最も特定的には、本
発明は、上記の組み合わせを治療および関連する目的に使用して上部胃腸管の粘
膜上皮および筋肉細胞の増殖を促進することに関する。
他に特定されない限り、本明細書において「GLP-2」という用語は、集合的にG
LP-2の天然に生産されるさまざまな形、特に哺乳動物の形を指す。本発明は、活
性を示すGLP-2の類似体をも包含する。GLP-2の類似体は、本明細書および同時係
属出願の米国特許出願番号08/631,273に記載されたマウスのモデルを用いて活性
を
試験することができる。簡単に述べると、この試験は、体重kgあたり2.5mgのGLP
-2類似体(PBS中)を1日2回(b.i.d)、10から14日間皮下注射するというレジメ
からなり、対照としてPBSのみを投与した同等の(matched)未処理動物を用いる。
別の方法として、類似体を1日1回または隔日に投与してもよい。レジメを終了
した後に、動物を犠牲にしてその上部胃腸管を取り出して重さを量る。この方法
で、上部胃腸管に対するGLP-2類似体の効果を評価することができる。
本発明に使用して有効である特定のGLP-2の類似体および変異体について、お
よび他のものの製造方法については、どちらも1996年4月12日に出願された同時
係属米国特許出願番号08/632,533および08/631,273に記載されており、これらの
開示を参照により本明細書に組み入れる。簡単に述べると、GLP-2の活性を破壊
しないようなGLP-2に対するいかなる置換、付加および欠失をおこなった化合物
も、本発明に使用して有効である。好ましい実施形態において、GLP-2類似体は
少なくとも天然のヒトGLP-2と同等である。最も好ましい実施形態において、GLP
-2類似体は天然のヒトGLP-2と比較して増大した活性を有する。たとえば、この
ような類似体は、増大した血清安定性、増大した受容体結合および増大したシグ
ナル伝達活性を示す。本発明に使用して有効である他のGLP-2の修飾およびGLP-2
類似体は、分子を酸化に対して抵抗性にするものである。
GLP-2類似体は、好ましくはヒトGLP-2(ヒト[Gly2]GLP-2)またはラットGLP-2(r
GLP-2)のいずれかの類似体である。本発明の好ましい実施形態において、ラット
またはヒトGLP-2を、2位を変換してAlaをGlyに置換することによりDPP-IV抵抗性
を与える。2位においてAlaをGlyに置換したヒトGLP-2を、本明細書では[Gly2]
ヒト[Gly2]GLP-2と表す。
同様に、本明細書において用いられる「IGF-1]、「IGF-2」および「GH」とい
う用語は、天然のペプチド、および、天然に生産されるペプチドの効果を有する
類似体および変異体を包含する。本発明に使用して有効であるIGF-1、IGF-2およ
びGHの特定の類似体および変異体については、以下の文献に記載されており、こ
れらの文献を参照により本明細書に組み入れる:Vanderhoofら、(1992)Gastro
enterology 102:1949-1956;Steebら、(1994)Am.J.Physiol.266:G1090-G109
8;およびJonesら、(1995)Endocrine Reviews 16:3-34;Conlonら、(1995)Jou
rn
al of Endocrinology 146:247-253;Francisら、(1993)Biochemical Journal 2 93
:713-719;Lewisら、WO 93/20836;およびBozyczko-Coyneら、WO93/08826。
本発明のペプチドホルモンの分泌促進薬、内因性の生産を増大させる能力を持
つ因子も、それが放出を刺激する被験体のペプチドホルモンの代わりに、または
その補足として、治療のレジメに含まれる。このように、当業者に公知のこのよ
うな因子を含有させることは、本発明の範囲に含まれる。たとえば、内因性GHの
生産は、成長ホルモン放出因子(GHRF)により、また、アルギニンにより増加する
。同様に、適当な受容体上で作用して本発明のペプチドホルモンのいずれかの血
清レベルの増加を引き起こす、小さい分子のような化合物が、本発明に使用して
有効であることは、当業者の承知するところであろう。
本明細書において、両方の化合物の生理的効果または両方の化合物の血清濃度
の上昇のいずれかが同時に測定できるときに、ペプチドのような化合物は、もう
一つの化合物と「共投与される」または「組み合わされる」と言う。内因性の生産の
レベルを増加させる化合物と、「共投与された」または「組み合わせた」場合に、内
因性に生産されるホルモンおよび他の投与された医薬品の血清濃度もまた同時に
測定できる。このように、化合物は、別々にあるいは混合した組成物として同時
に投与されるか、または順次投与されて、血清中の化合物レベルの一定の上昇を
もたらす。
他に断りのない限り、本明細書において「組み合わせ療法」および「組み合わせ
治療」という用語は、患者の栄養状態の促進、または腸の質量の増加をもたらす
本発明のペプチドホルモンの共投与を含む治療上のレジメを表す。
本明細書において、「促進された栄養状態」および「促進された腸の機能」という
用語は、治療以前のレベルと比較した身体の栄養の摂取の増加であると定義され
る。このような栄養には、炭水化物、タンパク質ならびにアミノ酸、脂肪、コレ
ステロールおよび脂溶性ビタミン、水溶性ビタミン、および無機質が含まれるが
、これらに限定されるものではない。本発明の方法によってその摂取を増加させ
ることができる無機質には、Na、Ca、Mg、K、Zn、およびFeが含まれるがこれら
に限定されるものではない。本発明によりその吸収が増加するビタミンには、ビ
タミンA、D、EおよびKのような脂溶性ビタミン、ならびにB12および葉酸のよう
な
水溶性ビタミンが含まれる。
本明細書において、「患者」という用語には、ヒト、家畜およびペットが含まれ
ることを意図しているが、これらに限定されない。
哺乳動物は、その哺乳動物の腸の吸収特性が減少した場合および/または胃腸
管に炎症または損傷が存在して不快および病気を生じている場合に、腸の障害、
病気および医学的な症状を患うと言われている。哺乳動物が吸収不良症候群にか
かっているかどうかを決定するためにさまざまな試験をおこなうことができる。
これらには、便脂肪含有量、キシロース吸収、胃脳X-線検査、小脳生検試験、ビ
タミンB12吸収についてのシリング試験およびセクレチン試験が含まれる。
本発明の一つの態様において、GLP-2は、IGF-1、IGF-2およびGHからなる群か
ら選択される少なくとも一つの他のペプチドホルモンと混合して、製薬上許容さ
れる形で(たとえば、0.22μmフィルターによって滅菌濾過され、また実質的に
発熱物質を含まない製剤として)、患者への投与のために提供される。望ましく
は、混合されるペプチドはHPLCで1つのピークとして移動する。
本発明のために選択されたGLP-2、IGF-1、IGF-2およびGHの特定の形は、ペプ
チド製品を生産するためのさまざまな公知の技術により調製することができる。
もちろん、GLP-2、IGF-1、IGF-2およびGHの天然に存在する形は、適当なタン
パク質単離技術を組み合わせて用いて、天然物から抽出することによって得るこ
とができる。たとえば、Buhlら、(1988)J.Bio.Chem.263(18):8621-8624に
記載されるように、ブタのGLP-2の単離および精製は、回腸粘膜の酸-エタノール
抽出物から、サイズ選択とHPLCに基づく分画を組み合わせることにより、合成プ
ログルカゴン126-159に対して生成した抗体を検査のモニターとして補助的に用
いておこなわれる。同様に、GHは、米国特許第2,974,088号に記載されるように
、死骸から抽出することができる。
抽出の代わりに、GLP-2、IGF-1、IGF-2およびGHのL-アミノ酸のみを取り込む
形を、組換えDNA技術を適用して、再生的に、また商業的な量で生産することが
できる。この目的で、GLP-2、IGF-1(たとえば、米国特許番号第5,288,931号を
参照)、IGF-2およびGH(たとえば、Goeddelら、(1979)Nature 281:544-548参
照)の目的とする形をコードした核酸を、細胞宿主に発現するように取り込ませ
た後、この宿主を特定のペプチドまたはタンパク質の発現に適した条件下で培養
する。さまざまな遺伝子発現系が、この目的に適合され、典型的には、選択され
た宿主が自然の状態で用いる発現制御から目的とする遺伝子を発現させる。GLP-
2、IGF-1、IGF-2およびGHは活性のために翻訳後の修飾を必要としないので、こ
れらの生産は大腸菌(E.coli)のような細菌宿主中で都合よくおこなうことができ
る。このような生産のために、選択されたGLP-2、IGF-1、IGF-2またはGHをコー
ドするDNAを、大腸菌(E.coli)のlac、trpまたはPL遺伝子の発現制御のもとに置
くと有効である。GLP-2、IGF-1、IGF-2またはGHそれ自体をコードしたDNAの発現
の代わりに、宿主を適合させて、GLP-2、IGF-1、IGF-2またはGHを、GLP-2、IGF-
1、IGF-2またはGHが単離および発現生産物の安定性を促進する担体タンパク質に
放出可能に結合した融合タンパク質として発現させることができる。
治療に使用するために、組み合わせに治療において使用するために選択された
ペプチドホルモンは、製薬上許容され、選択された投与経路によりペプチドを送
達するのに適当な少なくとも1つの担体と共に製剤化される。適切な製薬上許容
される担体は、ペプチドを主成分とする薬物と共に通常使用されているもので、
たとえば、希釈剤、賦形剤等である。薬物の製剤一般に関しては、“Remington
の薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)”、第17版、Mack Publishing C
ompany,Easton,Penn.,1985を参照されたい。本発明の一つの実施形態におい
て、化合物は注入によって、または皮下あるいは静脈内のいずれかの注射によっ
て投与されるように製剤化され、そのため、無菌で発熱物質を含まない形態で、
必要に応じてわずかに酸性または生理的pHに緩衝された水溶液として利用される
。このように、化合物は蒸留水またはより望ましくは生理食塩水、緩衝生理食塩
水または5%デキストロース溶液中に入れて投与される。必要ならば、溶解度増加
剤を加えることによって、たとえば、GLP-2製剤に酢酸を加えることにより、こ
れらの化合物の水溶性を増大させることができる。
本発明はまた、さまざまなペプチドホルモンコンジュゲートを提供する。本発
明のペプチドホルモン組成物は、1以上の水溶性ポリマーと共有結合により結合
したペプチドホルモンを含んでなる。水溶性ポリマー、特にポリエチレングリコ
ールはタンパク質にコンジュゲート化して、ペプチドホルモンの成長を誘導する
特性を少なくとも部分的に保存しながら、別の望ましい特性を提供する。これら
の望ましい特性には、水溶液中での溶解度の増加、保存安定性の増加、免疫原性
の減少、タンパク質分解への抵抗性の増加、およびin vivoでの半減期の増加が
含まれる。本発明の組成物への使用に好適な水溶性ポリマーには、ポリエチレン
グリコールホモポリマー、ポリプロピレングリコールホモポリマー、エチレング
リコールとプロピレングリコールとのコポリマーが含まれ、ここで、上記のホモ
ポリマーおよびコポリマーは置換されていないか、一方の末端をアルキル基、ポ
リオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖、ポリビニルエチル
エーテル、およびα,β-ポリ[(2-ヒドロキシエチル)-DL-アスパルトアミド(aspa
rtamide)]で置換されている。ポリエチレングリコールが特に好ましい。タンパ
ク質の水溶性ポリマーコンジュゲートを作る方法は、米国特許番号第4,179,337
号;米国特許番号第4,609,546号;米国特許番号第4,261,973号;米国特許番号第
4,055,635号;米国特許番号第3,960,830号;米国特許番号第4,415,665号;米国
特許番号第4,412,989号;米国特許番号第4,002,531号;米国特許番号第4,414,14
7号;米国特許番号第3,788,948号;米国特許番号第4,732,863号;米国特許番号
第4,745,180号;欧州特許番号第152,847号;欧州特許番号第98,110号(1984年1
月11日公告);日本国特許番号5,792,435号等に記載されている。
本発明のもう1つの態様は、徐放性のペプチドホルモンを提供する製剤である
。このような徐放性製剤の例としては、ポリ(乳酸)、乳酸-グリコール酸共重合
物、メチルセルロース、ヒアルロン酸、コラーゲン等のような生体適合性ポリマ
ーの複合物が含まれる。薬剤送達媒体中の分解可能なポリマーの構造、選択およ
び使用については、A.Dombら、(1992)Polymers for Advanced Technologies 3
:279-292を初めとするいくつかの文献に概説されている。医薬製剤におけるボ
リマーの選択および使用に関しては、このほかに、M.ChasinおよびR.Langer(
編者)による、“薬物および薬学(Drugs and the Pharmaceutical Sciences)”M
.Dekker,New York,1990のVol.45、“薬物送達系としての生分解性ポリマー(
Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems)”に記載されている。徐放
性のペプチドホルモンを提供するためにリポソームもまた用いられる。目的の薬
物のリポソーム製剤の使用法および製造法に関する詳細は、米国特許番号第4,94
4,948号;米国特許番号第5,008,050号;米国特許番号第4,921,706号:米国特許
番号第4,927,637号;米国特許番号第4,452,747号;米国特許番号第4,016,100号
;米国特許番号第4,311,712号;米国特許番号第4,370,349号;米国特許番号第4,
372,949号;米国特許番号第4,529,561号;米国特許番号第5,009,956号;米国特
許番号第4,725,442号;米国特許番号第4,737,323号:米国特許番号第4,920,016
号等に記載されている。徐放性製剤は、本発明の組成物の高い局所濃度を、たと
えば、上部胃腸管の近くまたは中に実現することが望ましい場合に特に注目され
る。
上部胃腸の成長を刺激するためおよび/またはヒトを含む哺乳動物の上部胃腸
組織の機能を改善するための使用に関して、本発明はそのひとつの態様において
、滅菌充填されたバイアルびんまたはアンプルの形のパッケージを提供する。こ
のパッケージには組織の成長を促進する量のGLP-2が、IGF-1、IGF-2およびGHか
らなる群から選択された少なくとも1つの他のペプチドホルモンと混合して、一
回服用量または多数回服用量のいずれかの量で含まれる。そしてこのパッケージ
には、胃腸の機能の促進、たとえば、上部胃腸管の成長の促進のための内容物の
使用法を説明したラベルを添付する。本発明の1つの実施形態において、パッケ
ージには、GLP-2、およびIGF-1、IGF-2ならびにGHからなる群から選択される少
なくとも1つの他のペプチドホルモン、および要求される担体が、すぐに投与で
きる形の製剤として含まれる。別の方法として、また本発明の別の実施形態によ
れば、パッケージは、GLP-2、およびIGF-1、IGF-2ならびにGHからなる群から選
択される少なくとも1つの他のペプチドホルモンを、緩衝生理食塩水のような適
当な担体の中に再構成するのに適した形、たとえば、凍結乾燥した形で提供する
。さらに別の実施形態によれば、パッケージは、有効量のGLP-2、およびIGF-1、
IGF-2ならびにGHからなる群から選択される少なくとも1つの他のペプチドホル
モンを水性媒体に溶解したものからなる注入可能な溶液の入った滅菌充填された
バイアルびんまたはアンプルである。
本発明によれば、IGF-1、IGF-2およびGHからなる群から選択される少なくとも
1つの他のペプチドホルモンと組み合わせたGLP-2は、上部胃腸管の機能が増強
すると利益を受けるような患者を治療するために投与される。1つの態様におい
て、患者の候補者は上部胃腸管組織の増殖によって利益を受けるような患者であ
る。さらに、患者の候補者は、組織の成長の増加の結果であるか否かに関わらず
、上部胃腸管組織の機能の増加により利益を受けるような患者である。これらの
組織への組み合わせ治療の効果により、病気または異常によって生じた状態を患
っている患者に明らかな利益がもたらされる。一般的に、上部胃脳管の質量の増
加または以前から存在する正常な粘膜上皮の再生および治癒によって利益を受け
るような患者は、本発明の治療の候補者である。さらに、組織の成長の増加の結
果であるか否かに関わらず、上部胃腸管組織の機能の増加により利益を受ける患
者は本発明の治療の候補者である。たとえば、化学療法または放射線療法のレジ
メの前または後に、胃脳炎の開始の前、その間、または後に、非経口栄養の期間
の後に、活発な胃腸病の後またはその間に、または、患者が胃腸管が十分に成熟
していない、および/または壊死をおこす全腸炎の症状のような胃腸管の炎症を
有する未熟児である場合に、患者を治療できる。
GLP-2による治療の別の候補者として、入院して、多くの場合集中治療室に入
り、上部胃腸管の炎症および潰瘍の危険性が増していることがわかっている患者
、または、NSAIDおよび/または糖質コルチコイドのような、上部胃腸管の炎症/
潰瘍の危険性を増すような薬物を服用中の患者が含まれる。
被験者に対する最適用量を決める際、臨床医学者は多数のファクターを考慮す
ることができる。とりわけ重要なのは、身体によって正常に産生されるペプチド
ホルモンの量である。その他のファクターとして、患者の体格、患者の年齢、患
者の一般的な状態、治療中の特定の疾病、疾病の重篤度、患者の他剤の存在、ペ
プチドまたはペプチド類似体などのin vivo活性がある。動物実験の結果および
ペプチドホルモンやペプチドホルモン分泌促進剤の投与に関する臨床文献を考慮
した後、試用用量を選択する。当業者は、用量を判断するにあたって、in vitro
結合競合アッセイから得られる結合定数やKiのような情報も使用できることを理
解するであろう。0.1mg/kgのGLP-2およびGLP-2類似体を1日2回、約2mg/kgのIGF-
1を1日2回および/または1mg/kgのGHを1日1回と等しい組み合わせの用量を10日間
共に投与すると、上部胃腸管を非常に有意に増加させることができると期待され
る。μg/kg範囲、及びおそらくng/kg範囲といったはるかに少ない用量で
しかも治療の持続性を短くしたり長くしたりもしくは治療頻度を少なくしたり多
くしたりして治療上有効な結果、例えば、特に小腸塊における統計的に有意な増
加を生じると期待される。
ヒトに対するGLP-2ペプチドの典型的な用量は約10μg/kg体重/日〜約10mg/kg/
日、好ましくは約50μg/kg/日〜約5mg/kg/日、最も好ましくは約100μg/kg/日〜
約1mg/kg/日である。本発明のGLP-2類似体はGLP-2よりも10倍から100倍以上も強
力であり得るので、そのようなGLP-2類似体の用量はさらに低くなり、例えば、
約100ng/kg体重/日〜1mg/kg/日、好ましくは1μg/kg/日〜500μg/kg/日、そして
さらに好ましくは1μg/kg/日〜約100μg/kg/日である。
GHをほ乳類、特にヒトに投与するには、0.02〜2.5mg/kg/日の用量範囲を使用
することができる。好ましくはGHの用量は約0.1〜2mg/kg/日である。IGFを投与
するには、1μg〜1g/kg/日の範囲の用量を使用することができる。IGF-1はヒト
に対し、好ましくは約0.03〜10mg/kg/日の範囲で、さらに好ましくは約0.1〜4mg
/kg/日の範囲で、最も好ましくは約0.5〜1mg/kg/日の範囲で投与される。IGF-2
の典型的な用量は約0.5〜5mg/kg/日である。IGF類似体に要求される用量は、天
然のIGF-1よりも20〜50%少なくすることができる。さらに、ヒト用に最適な用量
規模および投薬管理は適正にデザインされた臨床試験で決定することができる。
その他の態様の一において、本発明は、受容者に再移植または移植する前に、
in vitroもしくはin vivoで再生されるかもしくは増殖を刺激する内植された小
腸細胞を用いて、必要性が確認された患者の治療を行うことを提供する。ex viv
o細胞の調節は、その組合せの増殖促進量を添加し、かつ、これらの細胞培養に
その他適切な培地で、移植すべき細胞もしくは組織を増殖させることによって簡
単に行うことができる。適当な調節期間の後、細胞を次いで患者に直接移植する
か、または、常法の細胞カプセル化技術を用いてカプセル化した後に移植するこ
とができる。皮膚など他の器官での同様な手法は既にヒト臨床試験で相当進んで
いる。例えば、ドナーから皮膚細胞を採取し、これを組織培養で増殖させた後、
治療を要する患者(例えば、火傷、潰瘍などの治療)に増殖した皮膚塊を移植する
ことにより、皮膚をin vitroで再生することができる。
さらに、本発明の方法は、遺伝子治療を用いて実施することもできる。受容者
であるほ乳類または患者の細胞(どのような型の細胞であってもよいが、好まし
くは繊維芽細胞もしくはケラチノサイトである)を遺伝子操作して、1若しくは
それ以上の本発明の増殖因子、又はGLP-2と、IGF-1および/またはIGF-2および/
またはGHとの組合せをin vitroで発現させた後、好ましくはこれらペプチドの治
療量を送達するカプセルにして、in vivoで再び移植することができる。現在、
様々なトランスフェクション手法を利用することができ、現にこれを用いてin v
itroでDNAを細胞に導入している。このトランスフェクション手法には、リン酸
カルシウム-DNA共沈法、DEAE-デキストラントランスフェクション、エレクトロ
ポレーション、リポソーム媒介DNA導入法または組換えウイルスベクターによる
形質導入法が含まれる。DNAを上皮細胞などの種々の異なる細胞型に導入するた
めにそのようなex vivo処理プロトコールが提案されている(US特許4,868,116;Mo
rgan and Mulligan WO87/00201;Morgan et al.,1987,Science 237:1476-1479;
Morgan and Mulllgan,US特許4,980,286);上皮細胞(WO89/05345);肝細胞(WO89/0
7136;Wolf et al.,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3344-3348;Ledley e
t al.,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:5335-5339;Wilson and Mulligan
,WO 89/07136;Wilson et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:8437-84
41);繊維芽細胞(Palmer et al.,1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:1055-1
059;Anson et al.,1987,Mol.Biol.Med.4:11-20;Rosenberg et al.,1988,
Science 242:1575-1578;Naughton & Naughton,US特許4,963,489);リンパ球(An
derson et al.,US特許5,399,346;Blaese,R.M.,et al.,1995,Science 270:4
75-480);および造血幹細胞(Lim,B.,et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.
USA 86:8892-8896;Anderson et al.,US特許5,399,346)。
遺伝子治療は本発明を実施するための成長ホルモンを提供する有力な方法であ
ると期待される。具体的に説明すると、すべてのグルカゴンペプチドを分泌する
細胞株の細胞をマウスに移植する実験を行うことができる。移植された細胞は、
GLP-2を分泌し小脳の増殖を誘導する腫瘍として増殖する。GLP-2は小隅増殖を顕
著に刺激することがわかっている唯一のグルカゴン由来のペプチドである。従っ
て、本実験で観察された小腸増殖の効果はGLP-2の分泌による可能性が大であっ
た。同様に、細胞を遺伝子操作してGLP-2のみ、および/またはIGF-1、IGF-2およ
びGHからなる群から選ばれる少なくとも1つのペプチドホルモンを作り、これを
ほ乳類に移植することもできる。
あるいは、遺伝子治療を利用して受容者の細胞にin vivoトランスフェクショ
ンを行ってもよい。そのようなin vivo方法用の核酸処方として、未処理DNA;リ
ポソームもしくはウイルスエンベロープ受容体タンパク質と組み合わせたリポソ
ームにカプセル化された核酸(Nicolau et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.
USA 80:1068);ポリリジン-糖タンパク質担体複合体とカプリングしたDNA;およ
び核酸沈澱剤がある。核酸製剤は、直接注入、エレクトロポレーションおよび粒
子衝撃など、当分野に公知のいずれかの手法を用いて、in vivoで導入してもよ
い。さらに、細胞に遺伝子を届けるため「遺伝子銃」が使用されている(オース
トラリア特許9068389)。
関連アプローチとして、遺伝子治療の変法および、GLP-2、そしてIGF-1、IGF-
2およびGHからなる群から選ばれる少なくとも1つのペプチドホルモンの遺伝子生
成物をコードするウイルスベクターを使用してもよい。そのようなウイルスベク
ターを使用して腸中間物をもつ患者に残っている腸上皮を感染させてもよく、そ
れによってin vivoにおいて標的とする局所を治療するこれらの物質をその腸に
届けることができる。しかしながら、本発明を実施するにあたり、すべての細胞
を形質転換する必要はなく、腸細胞を形質転換する必要もない。実際、選択され
たホルモンを循環系に分泌できる組織の細胞であればどの細胞であっても使用す
ることができ、例えば、筋細胞を使用して内因性にホルモンを作ることができる
。
遺伝子治療法を実施するためのDNA配列は、選択されたGLP-2、IGF-1、IGF-2お
よびGHのアミノ酸配列から容易に決定することができるが、遺伝子コードされた
アミノ酸を含む形だけがこの方法で産生できるという制限がある。ヒト細胞に遺
伝情報を導入するのに適当な、ウイルスベクターなどの様々な発現ベクターを使
用することができ、これらのベクターは宿主細胞において機能的な発現制御下、
GLP-2、IGF-1、IGF-2およびGHをコードするDNAを組み込む。一旦遺伝子的変更が
行われると、遺伝子操作された細胞は、当分野の常法を用いて、移植することが
できる。
以上本発明を説明してきたが、以下の実施例は例示として掲げたものであり、
限定するためのものではない。実施例1
本実験では、食道の粘膜上皮と筋層の細胞増殖に及ぼすGLP-2の効果を調べた
。
雌のCD1マウス(6週令、約25グラム、Charles River)をプラスチック底の金網
ふた付きケージに入れ、12時間おきの明暗サイクルを維持し、食餌と水は自由に
摂取させた。Mettler PJ300スケールでマウスの体重を測り、対照群(リン酸緩衝
生理食塩水注射(「PBS」))かまたは処置群(ヒト[Gly2]GLP-2注射)のどちらか
へランダムに振り分けた。それぞれ2匹ずつからなる対照群も処置群も1ケージで
一緒に飼育した。
ブロモデオキシウリジン(「BrdU」)を注射(50ug/g体重、0.5ml中)する前2日
間、1日2回(午前8時及び午後6時)、雌CD1マウスをヒト[Gly2]GLP-2の2.5μg又
はPBSのみで処置した(皮下注)。マウスには、事前の50時間にわたり、ヒト[Gl
y2]GLP-2又は生理食塩水のどちらか一方を合計5回注射した。マウスは屠殺前21
時間絶食させた。BrdU注射2時間後にマウスを屠殺した。屠殺の際、組織学的分
析用に遠位食道切片(胃腸接合部に隣接する食道の最後2cm)を取った。
食道組織を24時間10%緩衝ホルマリンに固定した後、処理前に70%アルコールに
浸漬した。組織を処理して常法によりパラフィンに埋めた。4〜6ミクロンの断面
を切り取って、ヘマトキシリンとエオシンで染色し、第2セットのスライドをBrd
U-免疫陽性細胞用に染色した。Leica Q500MC Image Analysis Systemを用いて脳
マイクロメトリーを行った。結果を図1に示す。
本実験の結果は明らかに、ヒト[Gly2]GLP-2を50時間にわたって投与すると、B
rdU-陽性細胞数によって評価したように、食道の粘膜上皮と筋層の細胞増殖に有
意な増加があることを示している。実施例2
本実験では、マウス食道のタンパク質合成に及ぼすヒト[Gly2]GLP-2の効果を
調べた。実施例1に記載したように、雌CD1マウス(6週令)をケージに入れて飼育
した。2群のマウス(1群5匹)を、0.5mlのPBSのみ(対照)または0.5mlのPBS中2.5ug
のどちらか一方を毎日2回10日間処置(皮下注)した。処置後、マウスをCO2で麻
酔し分析のため屠殺した。胃腸接合部に近い2〜4cmの間で食道組織の1cm食道セ
グメントを、総細胞タンパク質分析用に採取した。PBS 1ml中に1cmセグメントを
おき、Polytronを用いてホモジネートした。Bradfordアッセイ変法(BIORAD)を用
いて、タンパク質量を測定するためホモジネートのアリコートを取つた。結果を
図2に示す。
タンパク質量測定結果は、ヒト[Gly2]GLP-2処置後の食道組織でタンパク質合
成が増加していることを示している。これらの結果は、この組織における標的受
容体に対するヒト[Gly2]GLP-2の細胞作用と一致するものである。実施例3
本実験では、胃の大きさに及ぼすGLP-2の効果を調べた。飲料水を経口投与す
ることによって、雌CD1マウス(6週令)をヒト[Gly2]GLP-2で処理した。飲料水は4
.3μg/mlのヒト[Gly2]GLP-2を含んでおり、毎日新しく調製した。各マウスは毎
日約100μgのヒト[Gly2]GLP-2を摂取した。処置12日後、マウスを24時間絶食さ
せ、CO2で麻酔し屠殺した。各マウスの胃を取り出し重さを測った。結果を図3に
示す。
胃の重さは、正常な飲料水を摂取した対照マウスに比べて、ヒト[Gly2]GLP-2(
p<0.05)処置により有意に増加する。実施例4
本実験では、インドメタシン誘発粘膜上皮障害に及ぼすGLP-2の予防および治
療効果を調べた。
非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)は、北米で最も普通に使われる薬剤である。
治療上、それは鎮痛、抗炎症、解熱および抗血小板作用をもっている。胃酸抑制
を狙った薬剤を用いて、あるいは、外因性プロスタグラジン類の投与による予防
の試みにも拘わらず、胃腸の毒性は依然として主要な病気の原因である。自覚症
状のない胃のただれから生命を脅かす腸内出血に及ぶNSAID誘発胃病発症率は、
慢性的なNSAID服用者の15%〜20%の間で変動している。小腸障害(NSAID誘発腸病)
の正確な発症率は今なおわかっていない。
NSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(プロスタグランジンシンターゼ)の結合部位に
アラキドン酸がアクセスするのをブロックし、プロスタグランジン類およびトロ
ンボキサンの生成を妨げる。プロスタグランジン合成の抑制は、しかしながら、
NSAID誘発小腸粘膜障害の主要な原因であるとは考えられない。むしろ、上皮の
障害には、上皮透過性の変化、ルーメン細菌荷重の増加および胆汁が影響してい
る。NSAIDsを与えた齧歯類では、胃病のほかに、小腸と結腸の炎症および潰瘍が
観察されており、従って、NSAID投与を利用して炎症性腸病の動物モデルを作る
ことができるかもしれない。
マウスおよびラットにGLP-2を投与すると、腺窩細胞増殖活性化と小腸細胞ア
ポトーシス阻害により、小腸及び大腸の両方で粘膜の増殖が刺激される。GLP-2
が粘膜上皮障害の治療および/または予防的処置に有効である可能性に注目して
、本発明者らは、実験的インドメタシン誘発胃腸結腸炎に罹ったマウスで、新規
なヒトGLP-2類似体であるh[Gly2]GLP-2の使用を検討した。材料および方法 動物
6〜8週令の雌CD1マウス(約22〜28g、Charles River)をプラスチック底の金網
ふた付きケージに入れ、12時間おきの明暗サイクルを維持し、本実験の間食餌と
水は自由に摂取させた。実験開始1日前に、Mettler PJ300スケールでマウスの体
重を測り、ランダムに処置群へ振り分けた。それぞれ5匹ずつからなる処置群は
一緒に飼育した。1日に2回、午前9時と午後7時に、PBSまたはh[Gly2]GLP-2ペプ
チドを右後ろ4半分に皮下注した。注射はインドメタシン投与の4日前から開始し
た。最初のインドメタシン量を与える前に一夜マウスを絶食させた。
午前9時と午後5時の間にマウスを屠殺した。胃、小腸および大腸についてその
重さを測定した。小腸および大腸の長さも測定した。心臓穿刺により血液を採取
し、10,000gで10分間遠心分離して血漿を分離した。さらに将来GLP-2レベルを
分析するため、血漿を-70℃で凍結した。組織学的分析、タンパク質、湿潤およ
び乾重量、RNAおよびミエロペルオキシダーゼアッセイ用に組織を取り出した。GLP-2 投与
1997年8月1日にAllelixから入手したh[Gly2]GLP-2の50.4mgを滅菌水に溶解した
。5N NaOHを使用して溶液の最終pHを7に調整した。このペプチドバッチを全実験
に使用した。0.2、0.5、1.0、2.0mg/mlのアリコートを-80℃に凍結した。1mlの
溶液中600μgのh[Gly2]GLP-2を399mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS-137mM NaCl,
2.7mM KCl,4.3mM Na2HPO4.7H2O,1.4mM KH2PO4,pH7.3)で希釈して1.5ug/mlの
最終濃度を得た。アリコート14mlを-80℃で保存し、注射前に37℃の水浴で解凍
した。注射量は、1/2cc U-100 Insulin Syringes(Becton Dickinson and Compan
y,NJ)を用いる1注射あたり0.5mlであった。PBSを注射した動物には、同一の投
与経路でh[Gly2]GLP-2の希釈に使用したものとと同じPBS溶液を与えた。インドメタシン投与
インドメタシン(1-[p-クロロベンゾイル]-5-メトキシ-2-メチルインドール-3-
酢酸)(Sigma Chemical Co.,St.Louis MO,lot 74H1212)の原液を作り、最初の
投与1時間前に希釈した。マウスの体重を測った後、一昼夜絶食させ、最初のイ
ンドメタシン注射1時間前に食餌を与えた。2回目のインドメタシン注射を行うた
め、マウスは絶食させなかった。Mettler AE166スケールを使って、インドメタ
シン(14.5mg)を測り、1mLの無水エチルアルコールに溶解した。溶液を5分間37℃
に加温し、完全に溶解するまで毎分ボルテックス処理した。998.1uLのインドメ
タシン原液を41mlの5% NaHCO3 pH7.3に希釈した。動物には2日間、午前10時O.D.
に0.5mlを注射した。2回目の注射に使用したインドメタシンは、一昼夜-20℃で
保存したもので、注射前に室温で解凍した。マウスには、両日とも、h[Gly2]GLP
-2投与約1時間後の同じ時間(午前10時)に注射した。インドメタシンを与えてい
ない動物には、ビヒクルだけを与えた(10.5mL NaHCO3 pH7.3中無水エチルアルコ
ール250μl-0.5mlの最終注射量は2日間毎日与えた)。PBSまたはh[Gly2]GLP-2の
どちらかを投与した14日後、CO2チエンバーで動物を屠殺した。結果
パイロット実験を行ってマウスに50%までの致死率を再現するインドメタシン
量を決定した。本研究においてインドメタシン処置を受ける全群には、一晩絶食
後2日間皮下注したインドメタシン量7mg/kgを7〜8週令の雌性CD1マウスに与えた
。この量は、生理食塩水で処置した対照動物の50%致死率と一致する結果を与え
た。それぞれの処置群で、PBSまたは.75μgのh[Gly2]GLP-2を、インドメタシン
を与えた動物および陰性対照の動物に1日2回皮下注した。
処置群Iを使用してインドメタシン(用量7mg/kg)による腸障害のタイプと程度
を特性化した。予め動物を生理食塩水またはh[Gly2]GLP-2で4日間処理し、さら
に2日間生理食塩水またはh[Gly2]GLP-2とインドメタシンで処理後、最初のイン
ドメタシン投与2日後に屠殺した。
処置群IIを使用し、h[Gly2]GLP-2または生理食塩水で4日間前処理した後さら
に10日間生理食塩水またはh[Gly2]GLP-2で処理した効果を調べた。
処置群IIIを使用し、予めh[Gly2]GLP-2または生理食塩水で4日間処理した後さ
らに2日間同時にインドメタシンを投与したマウスの効果を調べた。
本研究の処置群IVおよびVでは、生理食塩水またはh[Gly2]GLP-2の投与を、イ
ンドメタシンと同時(IV)またはその翌日(V)に行い、これを、10日間の実験期間
終了後に動物を屠殺するまで続けた。
II群からV群までのh[Gly2]GLP-2処理した全群は、75〜95%の範囲で顕著な生存
増加を示した。これに対し、生理食塩水処置対照群の生存は、45〜50%であった
。この違いは非常に統計的に有意であった(P<.05〜.01)。実験の終点は、小腸お
よび大腸の重さ、組織学、疾病活性スコア、粘膜酵素活性、小腸および大腸上皮
特異的遺伝子発現、サイトカイン発現のような炎症反応のマーカー、ミエロペル
オキシダーゼおよびGLP-2コンテントを含む。測定された主なパラメーター、特
に上皮障害/炎症のマーカーは、h[Gly2]GLP-2処理マウスで有意に改善された。均等
以上記載した明細書は当業者が本発明を実施するには十分である。実際、分子
生物学、医学または関連分野の当業者に自明な、本発明を実施するための上記手
段の種々の変更は、以下の請求範囲内に含まれるものである。
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(31)優先権主張番号 09/059,504
(32)優先日 平成10年4月13日(1998.4.13)
(33)優先権主張国 米国(US)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY,
DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I
T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ
,CF,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,
NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,L
S,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ
,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL
,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,
BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,E
E,ES,FI,GB,GE,GH,GM,GW,HU
,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR,
KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,M
D,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL
,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,
SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,UZ,V
N,YU,ZW