JP2957365B2 - 植物用カルシウム付与剤 - Google Patents

植物用カルシウム付与剤

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JP2957365B2 JP4273179A JP27317992A JP2957365B2 JP 2957365 B2 JP2957365 B2 JP 2957365B2 JP 4273179 A JP4273179 A JP 4273179A JP 27317992 A JP27317992 A JP 27317992A JP 2957365 B2 JP2957365 B2 JP 2957365B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、植物細胞内に取り込ま
れDNA・RNAの賦活を基本として生理活性を誘導
し、植物生体内へのカルシウムの吸収性を高める植物用
カルシウム付与剤に関する。
【0002】
【従来の技術】野菜・果樹栽培における酸性土壌の中和
や、石灰分の供給、土壌の保肥力の増大、微生物活性の
増大、有機物の分解促進、土壌団粒の形成等、幅広い土
壌改良効果を目的として、石灰質肥料が使用される。石
灰質肥料としては、公定規格に規定されている生石灰、
消石灰、炭酸カルシウム肥料、貝化石肥料、副産石灰肥
料、混合石灰肥料、更に石灰質肥料又は石膏の配合が認
められている肥料としては、石灰窒素、鉱滓加工リン酸
肥料、加工苦汁カリ肥料、珪酸カリ肥料、過リン酸石
灰、重過リン酸石灰、化成肥料、配合肥料等である。
【0003】また、糖類を結合剤として造粒した石灰質
肥料の製造方法に関する文献としては、次のようなもの
が見られる。てん菜製糖副産物であるステフェン廃水濃
縮液を造粒剤とした石灰質含有物の造粒方法としては、
特公昭59-38181号、特公昭59-9513号、特公昭59-30675
号に記載され、炭酸カルシウムとウィスキー蒸留廃液及
び残渣粕とを混合し造粒化した石灰質肥料製造方法とし
ては特開昭57−196783号に記載されている。更
に、特公昭62−28117号には、ギ酸カルシウムと
して葉面から生体内に積極的にカルシウムを吸収させる
ことを目的とした石灰質肥料が記載されている。
【0004】本発明者らは、先に出願した特開平5-6536
8号(特許第2525975号)において、低分子量キトサンと
酸カルシウムとを主成分とする低分子量キトサン含有植
物機能調節用組成物を提案した。この2成分系の開示の
際に、本発明と類似した水溶性結晶形有機酸を添加した
3成分系もあるが、これは、造粒を目的としたものであ
るし、あくまでもキトサンの生理活性に注目したもので
あった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】野菜・果樹・樹木等の
植物の生育に必要な多量要素は窒素、リン、カリウム、
カルシウムの4要素であることは周知の通りである。こ
れらの要素の中でカルシウムの欠乏に由来する生理障害
は野菜・果樹類において、トマト・ピーマン・ナス・リ
ンゴ・ナシ等の果実の尻腐れ症、キュウリの落下傘葉、
白菜・キャベツの芯腐れ症、セルリー・シュンキク等の
芯枯れ症、ホウレン草・小松菜等の芯葉萎縮症等のいわ
ゆる石灰欠乏症状として発現することが判明している。
【0006】このような欠乏症は、土壌中に石灰が欠乏
する場合だけでなく、土壌中に可給態石灰が十分にあっ
ても、土壌が乾燥したり、土壌の塩類濃度が高いために
吸水が妨げられたような場合や、またアンモニア態窒素
やカリ肥料が過剰に存在する状態になると、石灰の吸収
が抑制されて、現在旺盛に生育している部分、すなわち
細胞分裂が盛んな組織の部位に、急激に石灰欠乏症が発
現することがある。
【0007】現在これらの石灰欠乏症の完全な防止策は
なく、それぞれの状況に応じて、土壌診断に基づいた
石灰の施肥の励行、応急対策として3〜4日に一度の
塩化カルシウム水溶液の葉面散布、土壌の乾燥を防ぐ
為の適当な灌水等の方法が行われているに過ぎない。前
述の各特許公報に示されている石灰質肥料等も、これら
の石灰欠乏症を根本的に解決するものではない。
【0008】また樹木については、大気汚染地区である
種の菌類や昆虫類が非汚染地区より増加する例が認めら
れている。たとえばマツのすす葉枯病は、SO2濃度が
高い地域に多発し、アカマツに恒常的な被害を与えてい
るが、これはその病原菌接触だけでは発病せず、SO2
接触との組合わせによって発病するという。更にマツの
葉ふるい病などの病害や、カイガラムシ、アブラムシ類
等の樹木寄生による虫害も大気汚染地区で目立ち、大気
汚染との関係は否定できないところであるし、全国に波
及したマツノザイセンチュウによる松枯れの遠因を大気
汚染に求めることもできる。アカマツ、ヒノキ、スギ等
の大気汚染に対する抵抗性の特に弱い種類は、統計的に
樹体中のカルシウム量が他の養分であるリン、カリウ
ム、マグネシウム等よりも多いのが特徴であり、従って
それだけカルシウムを必要としているともいえる。
【0009】このように、国内で栽培される殆ど総ての
野菜・果樹類に発生する可能性のある石灰欠乏症の根本
的な防止策、及び地球的規模で問題となっている樹木の
大気汚染による衰退化を防止する手段が、早急に解決す
るべき課題となっていた。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等はかかる実情
に鑑み、平均分子量500〜30000の低分子キトサンキト
オリゴ糖又はこれらの誘導体からなる水溶性低分子量
キトサンと、カルシウム元素含有無機物質と水溶性有
機酸とを主成分とする植物用カルシウム付与剤を開発し
た。すなわち、本発明にいう水溶性低分子量キトサン類
とは、平均分子量500〜30000の低分子キトサン、キトオ
リゴ糖、又はこれらの誘導体を総称するもので、誘導体
については後に定義する。ここで、上記カルシウム元素
含有無機物質と水溶性有機酸の混合物に代えて水溶性カ
ルシウム元素含有有機物質を加えたり、あるいはこれと
水溶性有機酸との混合物を加えたものも、本発明の解決
手段として有効である。
【0011】キトサンは金属吸着剤、酵素固定化担体、
医薬徐放性担体、医用材、種子前処理剤、化粧品等に使
用され、人工皮膚、縫合糸、シャンプー、リンス、キト
サンビーズ、キトサン繊維等が製造販売されている。ま
た、キトサンはその有効成分と共に残留農薬と結合しそ
の残留農薬を不活性化させるので、有機無農薬野菜の栽
培に最適で、キトサンを施用するとフザリュウム菌、リ
ゾクトニア菌等に対して抗菌抗ウイルス効果があり、野
菜や果樹に対して耐病性が発現されるものである。キト
サンを土壌中へ投入すると土壌中の放線菌が増殖し、こ
れによる拮抗作用が働くため土壌病害の発生が抑制さ
れ、更にキュウリのつる割れ病を防ぎ、トマトの発病抑
制効果もある。稲に対しては収量、耐病性、耐寒、耐
熱、少肥料、倒伏防止、小作業量等でキトサンの効果が
認められ、根の成長促進作用があるとされている。
【0012】このキトサンの中で植物細胞内に透過確認
される平均分子量500〜30000の水溶性低分子量キトサン
は、細胞内に取り込まれて酵素活性を高めることがで
き、カルシウム元素含有無機物質と水溶性有機酸、又は
水溶性カルシウム元素含有有機物質、更にこれと水溶性
有機酸との各種水溶液において、イオン化したカルシウ
ム(Ca2+)の植物生体内への吸収量を増大させることを見
いだした。
【0013】ここで、本発明の植物用カルシウム付与剤
は、I)カルシウム元素含有無機物質及び(又は)水溶性
カルシウム元素含有有機物質の粉末100部に対し、水溶
性低分子量キトサンの乾燥粉末を0.01〜50部と水溶性
結晶形有機酸の粉末を1〜100部、賦形剤・崩壊剤を併
せて0.5〜10部とを加えて乾式法により成形された顆粒
状成形物、および(又は)更に滑沢剤0.1〜5部を加えて
乾式顆粒圧縮法又は直接粉末圧縮法により成形された錠
剤状成形物である。
【0014】あるいは、II)カルシウム元素含有無機物
質及び(又は)水溶性カルシウム元素含有有機物質の粉末
100部に対し水溶性結晶形有機酸の粉末を1〜100部加
え、これに水溶性低分子量キトサンの誘導体の水溶液
(純分換算)を0.01〜50部と結合剤水溶液(純分換算)を0.
5〜10部との混合液を添加して湿式法により成形された
顆粒状成形物、及び(又は)更に滑沢剤を0.1〜5部加え
て、いわゆる湿式顆粒圧縮法により成形された錠剤状成
形物である。
【0015】更に、III)カルシウム元素含有無機物質
の粉末及び(又は)水溶性カルシウム元素含有有機物質を
0.1〜80重量%と、水溶性有機酸を0.1〜50重量%と、水
溶性低分子量キトサンを0.0001〜20重量%とを含む水
溶液及び(又は)水懸濁液であり、その他、粉体状、粒状
等の何れかの形態を規制するものではない。
【0016】本発明の水溶性低分子量キトサン類を構成
する水溶性低分子量キトサン又キトオリゴ糖の誘導体
とは、D−グルコサミンを基本単位とした誘導体であっ
て、(1,4)−2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グ
ルカン(キトサン)、N−カルボキシメチルキトサン、グ
リコールキトサン、リン酸化キトサン、N−サリチリデ
ンキトサン、4−ニトロベンジリデンキトサン、N−
(O−カルボキシベンジル)キトサン、ジカルバメートキ
トサン、キトサン−2,5−アンヒドロマンノース、キ
トサン−ヘパリン、キトサン−デキストラン硫酸、キト
サン−カルボキシメチルデキストラン、N−アシル化キ
トサン−酸性グルコサミノグリカン、キトサン−カルボ
キシメチルセルロース、キトサン−ポリリン酸、グリコ
ールキトサン−デキストラン硫酸、グリコールキトサン
−カルボキシメチルセルロース、グリコールキトサン−
ポリガラクツロン酸、グリコールキトサン−アルギン
酸、キトサン−メチルグリコールキトサン−ポリビニ
ールアルコール硫酸の内、平均分子量500〜30000で、且
水に溶解するものである。
【0017】本発明で用いるカルシウム元素含有無機物
質及び水溶性カルシウム元素含有有機物質は、炭酸カル
シウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、過酸化カ
ルシウム、塩基性炭酸カルシウム、過マンガン酸カルシ
ウム、クロム酸カルシウム、ケイ化カルシウム、ケイ酸
カルシウム、メタケイ酸カルシウム、ウァラストナイ
ト、次亜塩素酸カルシウム、臭化カルシウム、修酸カル
シウム、ドロマイト、硫化カルシウム、硫酸カルシウ
ム、亜硫酸カルシウム、チオ硫酸カルシウム、スルフォ
アルミン酸カルシウム、硝酸カルシウム、水硫化カルシ
ウム、塩化カルシウム、塩素酸カルシウム、第一リン酸
カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシ
ウム、ピロリン酸二水素カルシウム、窒化カルシウム、
フッ化カルシウム、ヨウ化カルシウム、エチレンジアミ
ン四酢酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカル
シウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシ
ウム、ギ酸カルシウム、クエン酸カルシウム、コハク酸
カルシウム、酢酸カルシウム、D−酒石酸カルシウム、
ステアリル乳酸カルシウム、乳酸カルシウム、パントテ
ン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、グルコノガ
ラクト−グルコン酸カルシウム、L−アスパラギン酸カ
ルシウム、L−リンゴ酸カルシウム等の天然品及び合成
品の中から1種類又は2種類以上を用いることができ
る。
【0018】ここで使用される水溶性有機酸としては、
アジピン酸、L−アスパラギン酸、DL−アスパラギン
酸、アセチルサリチル酸、アリルマロン酸、アロキサン
酸、イサチン酸、イソ糖酸、イソプロピリデンコハク
酸、イタコン酸、オキサル酢酸、3−オキシフタル酸、
D−ガラクトン酸、キナ酸、クエン酸、グリコール酸、
グルタコン酸、L−グルタミン酸、グルタル酸、クロト
ン酸、コハク酸、ジエトオキサル酸、4,5−ジオキシ
フタル酸、ジグリコール酸、1,1−シクロプロパンジ
カルボン酸、DL−シトラマル酸、α,α−ジメチルコハ
ク酸、ジメチルマロン酸、シュウ酸、D−酒石酸、3,
4,5,6−テトラヒドロフタル酸、トリカルバリル酸、
トリブロム酢酸、ナフトールスルフォン酸、乳酸、ビオ
ルル酸、ビダントイン酸、ビナコン酸、ピメリン酸、2
−ピロールカルボン酸、β−フェニル乳酸、β−フェニ
ルヒドロアクリル酸、フェノール−2,4−ジスルフォ
ン酸、フタル酸、ブドウ酸、フマール酸、ブロム酢酸、
マレイン酸、無水マレイン酸、マロン酸、無水フタル
酸、L−リンゴ酸、DL−リンゴ酸、蟻酸、酢酸、プロピ
オン酸、酪酸、吉草酸等の中から1種類又は2種類以上
が使用できる。これらの中でも生体由来の有機酸である
酢酸、乳酸、L−アスパラギン酸、DL−アスパラギン
酸、クエン酸等が好ましい。
【0019】賦形剤としては乳糖、白糖、ブドウ糖、で
んぷん、結晶セルロース、ポリビニールピロリドン等を
用い、結合剤としてはでんぷんのり液、ヒドロキシプロ
ピルセルロース液、カルボキシメチルセルロース液、ア
ラビアゴム液、ゼラチン液、ブドウ糖液、白糖液、トラ
ガント液、アルギン酸ナトリウム液、ポリビニールピロ
リドン液等が使用でき、崩壊剤はカルボキシメチルセル
ロースカルシウムを用いることができる。滑沢剤につい
てはステアリン酸マグネシウム、精製タルク、ステアリ
ン酸、ステアリン酸カルシウム等の中から選択できる。
【0020】
【作用】野菜・果樹類における石灰欠乏症は、土壌中に
可給態石灰が十分に存在している場合でも土壌が乾燥し
たり、塩類濃度が高いために吸水が妨げられたり、アン
モニア態窒素やカリ肥料が過剰に存在する状態になる
と、石灰の吸収が抑制されて、新葉や果実といった細胞
分裂が盛んな組織の部位に発現し易くなる。
【0021】このような現象が起こるのは、養分の種類
によって作物体内に吸収されてからの動きが異なるのが
主な原因と考えられる。窒素、リン酸、カリウム、マグ
ネシウム等は、作物体内に入った後も、根からの吸収が
衰えると新葉や果実に自由に動く性質を持ち、これらの
要素は作物の生育途中で欠乏しても、生育初期に吸収さ
れた古い葉に含まれている要素が若葉に移行する。これ
に対してカルシウム、ホウ素等は、いったん作物体内に
入ってそれぞれの葉に配分されると、根からの吸収が衰
えて成長部分が要素を必要としても、新葉や果実へ移行
しない性質を持つ。従って両者の要素が土壌中に十分に
存在している場合は、作物体内において移行性の良い前
者の窒素やカリウム等は多量に根から吸収されるが、そ
れに対して移行性の悪い後者のカルシウム等は吸収を妨
げられる結果となる。
【0022】ここで水溶性低分子量キトサン類の細胞
内に透過確認される平均分子量500〜30000あたりのもの
は、核に向かって存在が確認されており、これらは核膜
を透過してDNAの発現を制御していると考えられ、細
胞の増殖分化の促進を誘導する。更に、真核細胞に広く
分布するCa2+受容タンパク質であるカルモジュリンのCa
2+との結合を誘導し、この結合したカルモジュリンがα
−アミラーゼ、ATPアーゼ、などの不活性酵素をCa2+
存在下で活性化する。カルモジュリンはまた、細胞壁成
分であるペクチンのガラクツロノシル基に対するCa2+
結合及び架橋重合を誘導し、細胞壁の構築にも寄与す
る。
【0023】すなわち、本発明の植物用カルシウム付与
剤は、構成成分である水溶性低分子量キトサンが、植
物生体内の特に細胞の増殖分化部位において、カルモジ
ュリンの活性の誘導に起因するCaイオン流を生じさせる
結果、本来移行性の悪いCa2+の新葉や果樹への移行を促
進させ、それに伴い主成分のカルシウム元素含有無機物
質と水溶性有機酸は水溶性カルシウム元素含有有機
物質、更にこれと水溶性有機酸の各種水溶液からイオン
分離したCa2+の根部からの吸収量を増大させることがで
きる。これにより野菜・果樹類の石灰欠乏症は、根本的
な解決をみるのである。
【0024】また樹木の場合は、大気汚染を遠因とした
樹体の衰弱化が、種々の病害虫による被害をもたらして
いることは言うまでもない。大気汚染物質であるSO2
は気体成分として気孔より、酸性雨成分として根部より
必要以上の量が樹体内に吸収される。植物細胞の生理活
性は膜内外のpHによりコントロールされており、これら
の調節に使用される物質としてCa2+は特に重要である。
【0025】従ってSO2及び酸性土壌中で可溶化した
アルミニウムイオン等の酸性成分が樹体内に過剰に吸収
された場合、広葉樹等は紅葉落葉によりこれらの酸性成
分の一部を体外に排出することもできるが、針葉樹等は
pHの安定なカルシウム塩の形態で、樹体内に蓄積するし
かないと考えられる。
【0026】Ca2+と結合したカルモジュリンが、種々の
生理活性を誘導することは前述の通りである。つまり上
記のように、樹木は大気汚染物質である酸性成分を樹体
内に過剰に吸収すれば、Ca2+を中和に使用せざるを得な
いために、樹体内の総Ca2+量は足りていても、実際の生
命活動に必要なCa2+量は不足しているということにな
る。特にCa2+を必要とするマツ、スギ、ヒノキ、モミ等
が、大気汚染に対する抵抗性が弱いのは、樹体内での酸
性成分の中和と生理活性に必要なCa2+量を、土壌が供給
できなくなっていることを意味している。即ち、大気汚
染による樹木の衰退化は、汚染物質に端を発した樹木の
石灰欠乏症であると言うこともできる。
【0027】従って本発明の植物用カルシウム付与剤
は、樹木においても前述と同様の作用により、Ca2+の樹
体内への吸収を促進させ、カルモジュリンのCa2+との結
合を誘導することにより生理活性を高めることから、病
害虫に対する抵抗性を飛躍的に向上させるものである。
【0028】
【実施例】以下実施例によって本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれらによって何ら限定されるものでは
ない。
【0029】実施例1 平均粒子径5μmのカルサイト型炭酸カルシウム(Ca含
有量39.5%)750gに対して、平均分子量3000の(1,4)
−2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルカン(キト
サン)乾燥粉末を30gと乳酸粉末200gと乳糖粉末20gとを
加え、リボンブレンダーで十分に混和する。この混合粉
末を乾式造粒機であるローラーコンパクター;TF−15
6(フロイント産業製)に供給することにより、0.3〜1mm
の顆粒状成形物である植物用カルシウム付与剤1kgを得
た。
【0030】実施例2 平均粒子径(長径)20μmのウォラストナイト(Ca含有量3
4%)3kgとL−アスパラギン酸粉末2kgとをリボンブレ
ンダーで十分に混和した混合粉末を、流動層造粒機;F
LO−5(フロイント産業製)内に充填し、温度80℃の熱
風を3〜4Nm3/minの流量で吹き込み流動層を形成させ
る。ここに、平均分子量10000のN-カルボキシメチルキ
トサンの5重量%水溶液2kgとHPC−L(ヒドロキシ
プロピルセルロース)の7.5重量%水溶液1.3kgとの混合
液を、100ml/minの流量で添加し、徐々に粉末を造粒成
長させて0.3〜1mmの顆粒状成形物である植物用カルシ
ウム付与剤約5kgを得た。
【0031】実施例3 クエン酸カルシウム粉末(Ca含有量21%)950gに対し、平
均分子量20000のキトサン−カルボキシメチルセルロー
ス乾燥粉末を20gと乳糖を20gとステアリン酸マグネシウ
ム10gとを加え、リボンブレンダーで十分に混和する。
この混合粉末をロータリー打錠機;HT−P18A(畑
鉄工所製)に供給し、打錠圧力800kgでいわゆる直接粉末
圧縮法により、径8mmφ、重量0.2g/錠の錠剤状成形
物である植物用カルシウム付与剤1kgを得た。
【0032】実施例4 平均粒子径10μmのドロマイト(Ca含有量21%)480gに対
し、平均分子量5000のキトサン−2,5−アンヒドロマ
ンノースの5重量%水溶液200gとアラビアゴムの20重量
%水溶液100gとの混合液を添加し、ニーダーで十分混練
してペースト状混合物とする。これを回転ブレード式押
出し成形機;HATA−HC−120(畑鉄工所製)に供給
し成形した物を、定温式オーブン乾燥機の温度60℃設定
下で乾燥し、解砕の後、篩により整粒を行い0.5〜1mm
の顆粒状成形物を得た。この成形物にクエン酸粉末を46
0gと精製タルク30gとを加えてリボンブレンダーにより
混合し、この混合物をロータリー打錠機;HT−P18
A(畑鉄工所製)に供給し、打錠圧力800kgでいわゆる湿
式顆粒圧縮法により、径8mmφ、重量0.2g/錠の錠剤
状成形物である植物用カルシウム付与剤1kgを得た。
【0033】実施例5 酢酸カルシウム(Ca含有量22%)450gと平均分子量3000の
グルコールキトサン乾燥粉末を10gと酢酸30gとを、510g
の水に常温で溶解することにより、水溶液状の植物用カ
ルシウム付与剤1kgを得た。
【0034】実施例6 酢酸カルシウム(Ca含有量22%)220gと実施例1のキトサ
ン乾燥粉末を50gと酢酸30gとを、700gの水に常温で溶解
することにより、水溶液状の植物用カルシウム付与剤1
kgを得た。
【0035】比較例1 酢酸カルシウム(Ca含有量22%)450gと平均分子量50000
の高分子量キトサンDAC(日本冷熱株式会社製)の乾燥
粉末を10gと酢酸30gとを、510gの水に常温で溶解するこ
とにより、水溶液1kgを得た。
【0036】比較例2 平均粒子径5μmのカルサイト型炭酸カルシウム(Ca含
有量39.5%)750gに対して、平均分子量360のD−グルコ
サミン(キトオリゴ糖)乾燥粉末を30gと乳酸粉末200gと
乳糖粉末20gとを加え、リボンブレンダーで十分に混和
する。この混合粉末を乾式造粒機であるローラーコンパ
クター;TF−156(フロイント産業製)に供給すること
により、0.3〜1mmの顆粒状成形物1kgを得た。
【0037】比較例3 平均粒子径5μmのカルサイト型炭酸カルシウム(Ca含
有量39.5%)750gに対して、乳酸粉末220gとステアリン
酸マグネシウム30gとを加え、リボンブレンダーで十分
に混和する。この混合粉末をロータリー打錠機;HT−
P18A(畑鉄工所製)に供給し、打錠圧力800kgでいわ
ゆる直接粉末圧縮法により、径8mmφ、重量0.2g/錠
の錠剤状成形物1kgを得た。
【0038】比較例4 平均粒子径5μmのカルサイト型炭酸カルシウム(Ca含
有量39.5%)。
【0039】比較例5 硝酸カルシウム粉末(Ca含有量24%)。
【0040】比較例6 酢酸カルシウム粉末(Ca含有量22%)。
【0041】以上の実施例及び比較例による生成物の組
成割合を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】応用例1 実施例1〜6の植物用カルシウム付与剤を表2に示した
施用量で、下記の栽培条件により小松菜の育成試験を行
い、Ca含有量の測定をした。その結果を同じく表2に示
す。
【0044】
【表2】 但しCa含有量の分析は、過マンガン酸カリウム容量法に
より行った。
【0045】[栽培条件]基本培地 表層腐植質黒ボク土(プランター栽培) 1m2 施肥 N/P/K=4/6/2 250g/m2 苦土石灰(Ca含有量22%) 50g/m2 育成温度 25℃育成日数 60日間照射条件 人工気象器;3日間遮光後7000ルクス×16時間×57日。灌水 1回/日種子 小松菜;20粒/試験区(プランター)を前処理無しで播
種。間引き 播種後10日経過後、優良成長株各10株を選択。施用方法 施用時期;間引き直後1回のみ。 施用法 ;各施用量を200mlの水に溶解又は懸濁し、プ
ランター全面に散布。
【0046】応用比較例1 比較例1〜6の生成物についても応用例1と同様の試験
を行った。その結果を同じく表2に示す。
【0047】応用例2 実施例1〜6の植物用カルシウム付与剤を表3に示した
施用量で、下記の石灰欠乏症が発生しやすい栽培条件に
よりサラダ菜の育成試験を行い、Ca含有量とチップバー
ン発生率の測定をした。その結果を同じく表3に示す。
【0048】
【表3】 但しCa含有量の分析は、過マンガン酸カリウム容量法に
より行った。
【0049】[栽培条件]基本培地 表層腐植質黒ボク土(プランター栽培) 1m2 施肥 第一リン酸カリ;P/K=22/28
100g/m2 尿素 ; N=46 50g/m2 苦土石灰(Ca含有量22%) 50g/m2 育成温度 25℃育成日数 60日間照射条件 人工気象器;3日間遮光後20000ルクス×24時間×57
日。灌水 1回/日種子 サラダ菜;20粒/試験区(プランター)を前処理無しで播
種。間引き 播種後10日経過後、優良成長株各10株を選択。施用方法 施用時期;間引き直後1回のみ。 施用法 ;各施用量を200mlの水に溶解又は懸濁し、プ
ランター全面に散布。
【0050】応用比較例2 比較例1〜6の生成物についても応用例2と同様の試験
を行った。その結果を同じく表3に示す。
【0051】応用例3 実施例1〜6の植物用カルシウム付与剤を表4に示した
施用量で、下記の施用条件によりクロマツにおいてマツ
クイムシに対する耐性試験を行い、枯死率の測定をし
た。その結果を同じく表4に示す。
【0052】[試験期間] 4月上旬〜10月下旬 [施用条件]対象樹木 種類; クロマツ 樹丈; 5m前後 株数; 20株/試験区土壌 pH; 4.1施用方法 施用時期;4月上旬1回のみ 施用法 ;各施用量を20lの水に溶解又は懸濁し、根部
先端付近の土壌表面に散布。灌水 降雨のみ
【0053】
【表4】
【0054】応用比較例3 比較例1〜6の生成物についても応用例3と同様の試験
を行った。その結果を同じく表4に示す。
【0055】
【発明の効果】以上表2、表3に示したように、本発明
の植物用カルシウム付与剤は、小松菜及びサラダ菜に対
して生育を促進するだけでなく、カルシウムの吸収量を
も増大させ、サラダ菜におけるチップバーン等の石灰欠
乏症を防止できることが明かとなった。
【0056】また、表4から分かるように、クロマツに
おいてマツクイムシによる松枯れの防止効果が明らかと
なり、ここにおいて本発明の植物用カルシウム付与剤
が、野菜及び樹木等の植物生体内へのカルシウムの吸収
を促進させ、生理活性を高めることから、病害虫に対す
る抵抗性を飛躍的に向上させることが判明した。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C05D 3/00 A01G 7/00 604 C05G 1/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均分子量500〜30000の低分子キトサ
    キトオリゴ糖又はこれらの誘導体からなる水溶性
    低分子量キトサンと、カルシウム元素含有無機物質と
    水溶性有機酸とを主成分とする植物用カルシウム付与
    剤。
  2. 【請求項2】 平均分子量500〜30000の低分子キトサ
    キトオリゴ糖又はこれらの誘導体からなる水溶性
    低分子量キトサンと、水溶性カルシウム元素含有有機
    物質とを主成分とする植物用カルシウム付与剤。
  3. 【請求項3】 平均分子量500〜30000の低分子キトサ
    キトオリゴ糖又はこれらの誘導体からなる水溶性
    低分子量キトサンと、水溶性カルシウム元素含有有機
    物質と、更に水溶性有機酸とを主成分とする植物用カル
    シウム付与剤。
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