JP2525975B2 - 低分子量キトサン含有植物機能調節用組成物 - Google Patents

低分子量キトサン含有植物機能調節用組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、植物細胞内に取り込ま
れDNA・RNAの賦活を基本として生理活性を誘導
し、植物の休眠打破による発芽促進や葉根のバランスの
とれた伸長・生育の促進等の植物の機能を調節する低分
子量キトサン含有植物機能調節用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】キトサンは金属吸着剤、酵素固定化担
体、医薬徐放性担体、医用材、種子前処理剤、化粧品等
に使用され、人工皮膚、縫合糸、シャンプー、リンス、
キトサンビーズ、キトサン繊維等が製造販売されてい
る。またキトサンはその有効成分と共に残留農薬と結合
し、その残留農薬を不活性化させるので、有機無農薬野
菜の栽培に最適で、キトサンを施用するとフザリュウム
菌、リゾクトニア菌等に対して抗菌抗ウイルス効果があ
り、野菜や果樹に対して耐病性が発現されるものであ
る。また、土壌中へ投入すると土壌中の放線菌が増殖
し、これによる拮抗作用が働くため、土壌病害の発生が
抑制され、更に、キュウリのつる割れ病を防ぎ、トマト
の発病抑制効果もある。稲に対しては収量、耐病性、耐
寒性、耐熱性、施肥量、倒伏防止、作業量等でキトサン
の効果が認められ、根の成長促進作用があるとされてい
る。
【0003】このキトサンは、2−アミノ−2−デオキ
シ−D−グルコース(β−D−グルコサミン)が直鎖状
にβ−(1→4)結合したホモ多糖で、化学的には
(1,4)−2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルカ
ンの構造を有する。通常キトサンは、エビ、カニなど甲
殻類の殻、甲虫の甲皮など節足動物の外骨格、軟体動物
の器官、カビ・酵母・キノコ等の真菌類の細胞壁等に含
まれるムコ多糖の一種であるキチンを脱アセチル化して
製造する。従ってキトサンの分子量はキチンの100万程
度より若干低いと考えられるが、それでも数10万の高分
子化合物である。このような高分子量キトサンは希酸に
しか溶解せず、用途も凝集剤等に限られていた。
【0004】近年キトサンの多方面への利用を目的とし
た低分子化技術が種々検討されてきた。化学的に反応を
行う方法としては酸化剤によるものが主流であり、例え
ば過酸化水素、塩素ガス、二酸化塩素、アスコルビン
酸、亜塩素酸ソーダ、臭素、亜硝酸塩、濃塩酸等が使用
されている。これらの化学的方法に対して、他の技術と
して提案されている方法が微生物もしくは酵素による方
法である。この方法によれば低分子化キトサンというよ
りもキトオリゴ糖の生産が主流となる。
【0005】しかし、これらの方法によるキトサンは植
物細胞内に透過確認される限界とされている平均分子量
30000より高分子量のもの、或いは植物細胞内に取り込
まれても酵素活性の誘導効果が認められない平均分子量
500以下の低分子のものである。また平均分子量500〜30
000に調整されたキトサンであっても、その分子末端に
2,5アンヒドロマンノースを1分子以上持つものでな
ければ、植物生体内での酵素活性の誘導が顕著ではな
い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】植物生体内で酵素活性
を誘導することの出来る平均分子量500〜30000で分子末
端に2,5アンヒドロマンノースを1分子以上持った低
分子量キトサン及びキトオリゴ糖(以下2,5A.H.Mキ
トサンと称す)の製造方法は「特開平2-41301号」及び
「特開平5-65302号」によるところのものである。すな
わち、キチン質に濃アルカリ溶液を加えて加熱又はカリ
融解をして、脱アセチル化し精製したキトサンを原料と
して、これを、無水酢酸に過酸化水素を混合し、更に好
ましくは硫酸を加えて合成した高濃度過酢酸水溶液に投
入し、空気又は酸素を吹き込みながら攪拌して反応させ
ることにより、極めて短時間に反応を実施することが可
能であることを特徴とする製造方法であり、キトサンに
対する過酢酸の重量比を3〜15、好ましくは5〜10と
し、反応開始後60〜90分後に、使用された過酢酸量の40
〜60%の温水を添加することにより、平均分子量が500
〜30000の2,5A.H.Mキトサンを90%の収率で得たと
している。
【0007】この方法で製造された2,5A.H.Mキト
サンは3重量%前後の希薄水溶液であるが、結合水を形
成しており透析膜及び逆浸透膜によっても濃縮が甚だ難
しいことと、特異的にカンジダ菌などの寄生・増殖が発
生するため粉末化した製品にせざるを得ない。粉末化に
はスプレードライ法等によるところとなるが、これでは
著しく高い乾燥コストを伴う。また、現在市場に出回っ
ている平均分子量30000以上の高分子量キトサンは殆ど
酢酸又は乳酸などの希酸による水溶液状である。特に、
生体由来の酢酸はカンジダ菌などの増殖に必要な炭素源
であるので、水溶液状では特定の細菌の増殖原因となり
現場レベルでの使用に問題がある。
【0008】従って、何れのキトサンについても粉末化
が望まれるが、実際に植物に賦与する場合は、濃度が1
0〜1000PPMでpH値5.0〜7.5を呈する水溶液に
調整しなければ、植物生体内で酵素活性の誘導は期待で
きないため、使用に際しハンドリングの煩わしさを伴な
わざるを得ない。
【0009】更に、植物生体内の細胞壁の構築誘導を行
なう微小管の重合、脱重合はカルモジュリンを含む複数
の成分により調整されているが、カルモジュリンは別名
カルシウム結合タンパク質とも云われCa2+の結合により
構造変化を起こすことが判明し、植物生体内の不活性な
酵素に結合してこれら酵素を活性化することがわかっ
た。
【0010】このように、植物生体内で有効な2,5A.
H.Mキトサンも、製造コストと使用時のハンドリング
の煩雑さを伴うのが実情であり、これを解決し、また植
物に施用した場合に土壌の保水性を高め2,5A.H.M
キトサンの流出を防ぎ、しかもCa2+との相乗効果を付与
することのできる手段が解決するべき課題となってい
た。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者等はかかる実情
に鑑み、低分子量キトサンとカルシウム元素含有無機物
質とを主成分とする低分子量キトサン含有植物機能調節
用組成物を開発した。この場合の低分子量キトサンは平
均分子量500〜30000で分子末端に2,5アンヒドロマン
ノースを1分子以上持つ低分子量キトサン及びキトオリ
ゴ糖である。また、カルシウム元素含有無機物質として
の炭酸カルシウムを担体として、これに低分子量キトサ
ン及び水溶性結晶形有機酸の1種又は2種以上、アルミ
ニウム元素を含む無機物質並びに必要に応じて賦形剤、
結合剤、崩壊剤、滑沢剤を混和し、造粒成形する。
【0012】より詳しくは、植物生体内で2,5A.H.
Mキトサンの作用に相乗効果が期待できるカルシウム元
素を含有する無機物質の中で、pH5.0〜7.5の水系
において容易にCa2+に解離する炭酸カルシウムを担体と
して、これに2,5A.H.Mキトサン及び水溶性結晶形
有機酸の1種又は2種以上、アルミニウム元素を含む無
機物質並びに賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を混和
し、造粒成形することにより成る低分子量キトサン含有
植物機能調節用組成物が、前記の製造コストの問題と使
用時のハンドリングの煩雑さを解決し、土壌の保水性を
高め、かつ組成物中のCa2+が植物生体内における2,5
A.H.Mキトサンの酵素活性の誘導作用に対し相乗効果
のあることを見出した。
【0013】即ち、I)炭酸カルシウム100部に対し、
2,5A.H.Mキトサン0.1〜50部と水溶性結晶形有機酸
10〜100部、アルミニウム元素を含む無機物を0.1〜10
部、賦形剤・崩壊剤を併せて0.5〜10部とを加えて乾式
法により成形された顆粒状成形物、及び(又は)更に滑沢
剤0.1〜5部とを加えて乾式顆粒圧縮法又は直接粉末圧
縮法により成形された錠剤状成形物とする。II)炭酸カ
ルシウム100部に対し、2,5A.H.Mキトサン水溶液
(純分換算)0.1〜50部と結合剤水溶液(純分換算)0.5〜10
部との混合液に、アルミニウム元素を含む無機物0.1〜1
0部を加えた懸濁液を添加して湿式法により成形された
顆粒状成形物に、更に水溶性結晶形有機酸10〜100部と
滑沢剤0.1〜5部を加えて、いわゆる湿式顆粒圧縮法に
より成形された錠剤状成形物とする。
【0014】上記の各製造方法において、成形物を重量
比で10〜1000倍の範囲で各倍率の純水に溶解した時、
水溶液のpH値が5.0〜7.5を呈するように各々を予
め有機酸の重量部数で調整することにより、植物細胞内
に取り込まれ酵素活性を誘導する低分子量キトサン含有
植物機能調節用組成物を得ることができた。本発明で用
いる炭酸カルシウムは天然品でも合成品でも良く、結晶
形態はカルサイト、アラゴナイト、バテライト等、或い
はアモルファスのもの何れかを限定するものではない。
また粒度範囲も限定しないが成形する上で好ましくは平
均粒子径0.5〜30μmのものである。更に純度につ
いては、可溶性重金属類の多量の含有は植物生体への悪
影響が考慮されるため、日本薬局法に規定する炭酸カル
シウムの定量法による数値が98.5%以上であること
が好ましい。
【0015】以上の手段を更に詳述すると次のようにな
る。 I)炭酸カルシウム100部に対し、2,5A.H.Mキトサ
ンを0.1〜50部、好ましくは0.5〜3部と、水溶性結晶形
有機酸は所定の希釈倍率で純水に希釈した時のpH値が
5.0〜7.5、好ましくは5.5〜7.0を呈するように予め調整
された必要量及びアルミニウム元素を含む無機物質を0.
1〜10部、好ましくは0.5〜3部と賦形剤・崩壊剤を併せ
て0.5〜10部好ましくは1〜2.5部とを加えて均等に混和
し、この混合粉末を圧縮成形ロールと製粒機を組み合わ
せた乾式造粒機に供給すれば顆粒状の成形物を得ること
ができる。ここで賦形剤・崩壊剤の添加量が0.5部以下
の場合は崩れ易い顆粒状成形物となり、また10部以上添
加した場合は顆粒が固くなり、後工程の錠剤成形が難し
くなる。次に上記顆粒状成形物に更に滑沢剤を0.1〜5
部、好ましくは0.5〜2部を加えた混合物、或いは上記
配合に滑沢剤を同じく0.1〜5部、好ましくは0.5〜2部
を加えた混合粉末を単発打錠機、ロータリー打錠機、ブ
リケッティングロール等によるいわゆる乾式顆粒圧縮
法、或いは、直接粉末圧縮法により錠剤状の成形物にする
ことができる。
【0016】II)炭酸カルシウム100部に対し、2,5A.
H.Mキトサン水溶液(3〜5重量%)を純分換算で0.1〜
50部、好ましくは0.5〜3部と結合剤水溶液(5〜20重量
%)を純分換算で0.5〜10部、好ましくは1〜6部との混
合液に、アルミニウム元素を含む無機物質を0.1〜10
部、好ましくは0.5〜3部を加えた懸濁液を添加し混練
したスラリー状混合物を噴霧乾燥機や媒体流動層乾燥機
により顆粒状の成形物にすることができる。また、上記
混合物でやや水分の少ないペースト状のものについては
スクリュー式や回転多孔ダイス式、あるいは回転ブレー
ド(バスケット)式等の押出し成形機により造粒し、乾燥
・整粒工程を経て顆粒状の成形物にできる。ここでも上
記I)と同様に結合剤の添加量は0.5部以下の場合は崩れ
易い顆粒状成形物となり、また10部以上添加した場合は
顆粒が固くなり、後工程の錠剤成形が難しくなる。
【0017】更に、炭酸カルシウムを充填し、転動攪拌
方式、スクリュウ・リボン・羽根攪拌方式、流動層攪拌
方式等で粉体を攪拌させ、そこに上記懸濁液を徐々に添
加して造粒していく、いわゆる転動造粒法、攪拌造粒
法、流動層造粒法等によっても顆粒状の成形物を得るこ
とができる。この顆粒状成形物に、更に水溶性結晶形有
機酸を所定の希釈倍率で純水に希釈した時のpH値が5.
0〜7.5、好ましくは5.5〜7.0を呈するように予め調整さ
れた必要量と滑沢剤を0.1〜5部、好ましくは0.5〜2部
とを加えた混合物は、単発打錠機、ロータリー打錠機、
ブリケッティングロール等によるいわゆる湿式顆粒圧縮
法で錠剤状に成形される。上記I)II)において、アルミ
ニウム元素を含む無機物質の添加量が0.1部より少ない
場合は土壌の保水性は向上されず、更に10部より多い場
合は土壌の湿潤状態が長時間維持され、根腐れの原因と
もなるため、適正範囲の添加量が重要な点となる。
【0018】ここで使用される水溶性の結晶有機酸と
しては、アジピン酸、L-アスパラギン酸、DL-アスパラ
ギン酸、アセチルサリチル酸、アリルマロン酸、アロキ
サン酸、イサチン酸、イソ糖酸、イソプロピリデンコハ
ク酸、イタコン酸、オキサル酢酸、3-オキシフタル酸、
D-ガラクトン酸、キナ酸、クエン酸、グリコール酸、グ
ルタコン酸、L-グルタミン酸、グルタル酸、クロトン
酸、コハク酸、ジエトオキサル酸、4,5-ジオキシフタル
酸、ジグリコール酸、1,1-シクロプロパンジカルボン
酸、dl-シトラマル酸、α,α-ジメチルコハク酸、ジメ
チルマロン酸、シュウ酸、d-酒石酸、3,4,5,6-テトラヒ
ドロフタル酸、トリカルバリル酸、トリブロム酢酸、ナ
フトールスルフォン酸、乳酸、ビオルル酸、ビダントイ
ン酸、ビナコン酸、ピメリン酸、2-ピロールカルボン
酸、β-フェニル乳酸、β-フェニルヒドロアクリル酸、
フェノール-2,4-ジスルフォン酸、フタル酸、ブドウ
酸、フマル酸、ブロム酢酸、マレイン酸、無水マレイン
酸、マロン酸、無水フタル酸、l-リンゴ酸、dl-リンゴ
酸等の中から1種類又は2種類以上が使用できる。これ
らの中でも生体由来の有機酸であるL-アスパラギン酸、
DL-アスパラギン酸、クエン酸等が好ましい。
【0019】次に、アルミニウム元素を含む無機物質に
ついては、カオリン、焼成クレー、パイロフィライト、
ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、ネフェリン・
シナイト、セピオライト等が挙げられる。これら中では
ベントナイト、セピオライトが好適である。
【0020】また賦形剤としては、乳糖、白糖、ブドウ
糖、でんぷん、結晶セルロース、ポリビニールピロリド
ン等を用い、結合剤としてはでんぷんのり液、ヒドロキ
シプロピルセルロース液、カルボキシメチルセルロース
液、アラビアゴム液、ゼラチン液、ブドウ糖液、白糖
液、トラガント液、アルギン酸ナトリウム液、ポリビニ
ールピロリドン液等が使用でき、崩壊剤はカルボキシメ
チルセルロースカルシウムを用いることができる。滑沢
剤については、ステアリン酸マグネシウム、精製タル
ク、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、硬化ヒマ
シ油、硬化ナタネ油等の中から選択できる。
【0021】
【作用及び効果】前記手段I)における顆粒状及び(又
は)錠剤状成形物は、所定の希釈倍率の水又は温水に発
泡を伴いながら速やかに溶解し、その水溶液は求めるp
Hを示す。更に、II)の方法は炭酸カルシウムが乾燥助
剤として作用するため、キトサン単独で乾燥する場合と
比較して乾燥効率を大幅に向上させることができた。ま
た、保水性、塩基置換容量の高いベントナイト、セピオ
ライト等を適量添加することにより、土壌の保水力を高
め、かつ2,5A.H.Mキトサンの流出を防止し、植物
に対する2,5A.H.Mキトサンの機能調節効果を向上
させることができる。β−1,4−D−N−アセチルグ
ルコサミンと2,5アンヒドロマンノースの構成物質の
ヘテロ糖である2,5A.H.Mキトサンは植物の細胞壁
より取込まれ、細胞膜上でキチナーゼやキトサナーゼ等
の細胞内酵素により切断される。しかし、生体内糖類の
構成糖としてのN−アセチルグルコサミンは、糖構成量
体として生体内においては外来異物であり、植物の生体
内酵素の基質特異性により基質として認められ、酵素活
性中心のジスフィールド結合の解離を行い活性を誘導す
る。一方、糖鎖の量体の大きさによっては、生体内のシ
グナル系により抗体物質の産生を誘導させる。また細胞
内に透過確認される平均分子量5000あたりの2,5A.
H.Mキトサンは、核に向かって存在が確認されてお
り、これらは核膜を透過してDNAの発現を制御してい
ると考えられる。これら形態変化については、従来報告
されていない発現形態として、特定植物の花の色の変化
や矮化・球根類の分裂化・特定細胞培養において増殖分
化の促進を誘導することが確認される「特開平4-210589
号」及び「特開平3-297305号」。
【0022】炭酸カルシウムは、低分子量キトサン及び
キトオリゴ糖の水溶解時の発泡拡散の効果として、更に
炭酸成分とカルシウム成分の分解にともない発生するCa
2+は植物の根部より吸収され植物細胞内カルシウムイオ
ンプールに蓄積される。真核細胞に広く分布するCa2+受
容タンパク質であるカルモジュリンはCa2+と結合する
と、更に不活性酵素に結合してこれを活性型に変えると
され、カルモジュリン1分子あたり4分子のCa2+が結合
する。結合したカルモジュリンは、アデニル酸環化酵
素、ホスホリラーゼbキタナーゼ、赤血球膜Ca2+,Mg2
+,ATPアーゼ、NADキナーゼ、ミオシンL鎖キナー
ゼなどの酵素をCa2+存在下で活性化することが確認され
ている。また酵素の活性化だけでなく、植物細胞壁の構
築誘導を行う微小管の重合を調整するとされている、そ
の他カルモジュリンは多機能を有し屈性など形態変化の
誘導を行うと言われているが、これは細胞周期やフィト
クロムも関連すると考えられる。
【0023】一方動植物の細胞内においては、葉緑素を
除いて生体機能としての作用構造はほぼ同一である。生
体内解糖系においてヒドロキシトリカルボン酸の1種で
あるクエン酸は、細胞内では、クエン酸シンターゼによ
りアセチルCoAとオキサロ酢酸から生成するクエン酸
回路の中間体であり、レモン、ミカンなどの柑橘類の果
樹に多く存在し、またCa2+、Fe3+とキレートをつくる。
アスパラギンや、アスパラギン酸は、タンパク質の構成
物質であると同時に糖鎖の構成物質でもある。N−アセ
チルグルコサミンの2量体を構成している糖鎖末端部と
結合するアスパラギン結合糖鎖は機能性分枝糖鎖と呼ば
れる。これら生体内糖鎖に結合するアスパラギン及びア
スパラギン酸はアミノ基と結合し生体内酵素の活性を誘
導する。以上により、本発明よりなる粉末状、顆粒状及
び(又は)錠剤状成形物である低分子量キトサン含有植
物機能調節用組成物が、2,5A.H.Mキトサンの製造
コストと植物へ施用時のハンドリングの煩雑さを解決
し、更に土壌の保水性を高め2,5A.H.Mキトサンの
流出を防ぎ、しかもCa2+との相乗効果を付与することが
できる等、全ての課題を解決することが明かとなったの
である。
【0024】
【実施例】以下実施例によって本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれらによって何ら限定されるものでは
ない。 実施例1 平均粒子径5μmで、純度99.9%のカルサイト型炭
酸カルシウム1000gに対し、2,5A.H.Mキトサンを
10gとクエン酸を300g、更にベントナイトを10g
と乳糖を60g加え、リボンブレンダーで十分に混和す
る。この混合粉末を乾式造粒機であるローラーコンパク
ター;TF−156(フロイント産業製)に供給すること
により、0.3〜1mmの顆粒状成形物である低分子量キ
トサン含有炭酸カルシウム組成物を得た。
【0025】実施例2 実施例1と同様の炭酸カルシウム1000gに対し、2,5
A.H.Mキトサン10gとクエン酸250g、DL-アスパラギン
酸50g、更にセピオライトを10g、乳糖を100gとステアリ
ン酸マグネシウムを10g加え、リボンブレンダーで十分
に混和する。この混合粉末をロータリー打錠機;HT−
P18A(畑鉄工所製)に供給し、打錠圧力800kgでいわゆ
る直接粉末圧縮法により、径8mmφで重量0.2g/錠の錠
剤状成形物である低分子量キトサン含有炭酸カルシウム
組成物を得た。
【0026】実施例3 実施例1と同様の炭酸カルシウム1000gに対し、5重量
%の2,5A.H.Mキトサン水溶液200gと20重量%のア
ラビアゴム水溶液100gとの混合液にセリサイト10gを加
えた懸濁液を添加し、ニーダーで十分混練してペースト
状混合物とする。これを回転ブレード式押出し成形機;
HATA-HC-120(畑鉄工所製)に供給し成形した物
を、定温式オーブン乾燥機の温度60℃設定下で乾燥し、
解砕の後、篩により整粒を行い0.5〜1mmの顆粒状成形
物を得た。この成形物にクエン酸を250g、dlリンゴ酸50
gと精製タルクを10g加えてリボンブレンダーにより混合
し、この混合物をロータリー打錠機;HT−P18A(畑
鉄工所製)に供給し、打錠圧力800kgでいわゆる湿式顆粒
圧縮法により、径8mmφ、重量0.2g/錠の錠剤状成形物
である低分子量キトサン含有炭酸カルシウム組成物を得
た。
【0027】実施例4 実施例1と同様の炭酸カルシウム5kgを流動層造粒機;
FLO−5(フロイント産業製)に充填し、温度80℃の熱
風を3〜4Nm3/minの流量で吹き込み流動層を形成させ
る。ここに、5重量%の2,5A.H.Mキトサン水溶液
1kgと7.5重量%のHPC−L水溶液2kgとの混合液に
ベントナイト10gを加えた懸濁液を、100ml/minの流量で
添加し、徐々に粉末を造粒成長させて0.3〜1mmの顆粒
状成形物を得た。この成形物にクエン酸を1.5kgと精製
タルクを50g加えてリボンブレンダーにより混合し、こ
の混合物をロータリー打錠機;HT−P18A(畑鉄工所
製)に供給し、打錠圧力800kgでいわゆる湿式顆粒圧縮法
により、径8mmφ、重量0.2g/錠の錠剤状成形物である
低分子量キトサン含有炭酸カルシウム組成物を得た。
【0028】比較例 実施例1と同様の炭酸カルシウム5kgを流動層造粒機;
FLO−5(フロイント産業製)に充填し、温度80℃の熱
風を3〜4Nm3/minの流量で吹き込み流動層を形成させ
る。ここに、5重量%のHPC−L水溶液3kgとベント
ナイト10gを加えた懸濁液を、100ml/minの流量で添加
し、徐々に粉末を造粒成長させて実施例4と同様の0.3
〜1mmの顆粒状成形物を得た。同じくこの成形物にクエ
ン酸を1.5kgと精製タルクを50g加えてリボンブレンダー
により混合し、この混合物をロータリー打錠機;HT−
P18A(畑鉄工所製)に供給し、打錠圧力800kgでいわゆ
る湿式顆粒圧縮法により、径8mmφ、重量0.2g/錠の錠
剤状成形物を得た。
【0029】応用例1 実施例1〜4の各成形物1gを100mlの水に溶解して、
pH6.0の各水溶液を準備した。それぞれの水溶液に
発芽板を置床し、発芽板上にアスターの種子1を播種し
た。室温および自然光の環境下で30時間後に、実施例
1〜4の発芽板2上では植物の活性誘導物リグニン物質
3が確認された(図1)。更にこれらの種子を切断して
実体顕微鏡による観察を行なうと、実施例1〜4の水溶
液で浸漬処理したアスター種子については葉原基形成が
確認された。 応用比較例1 比較例についても応用例1と同様の試験を行ったが、発
芽板2上に活性誘導物リグニン物質3の存在は確認でき
なかった(図2)。また応用例1と同様の実体顕微鏡に
よる観察では、葉原基形成は確認できなかった。
【0030】応用例2〜5 実施例1〜4の各成形物1gを100mlの水に溶解して、pH
6.0の各水溶液を準備した。それぞれの水溶液に籾を48
時間浸漬した後、この籾を育苗床に播種して稲の育促
進試験を行った。その結果を表1に示す。 応用比較例2 比較例についても応用例2〜5と同様の試験を行った。
その結果を同じく表1に示す。 応用比較例3 市販のキトサン;DAC<平均分子量50000>(日本冷
熱株式会社製)について濃度を100 P.P.Mに調整して応
用例2〜5と同様の試験を行った。その結果を同じく表
1に示す。 応用比較例4 水のみによる慣行試験を応用例2〜5と同様に行った。
【0031】その結果を同じく表1に示す。
【0032】表中の各数値は、籾を育苗床に播種して約
1ヶ月後の田植え当日の各例個体数50個の各実測値の
平均値に基づき、応用比較例4(慣行試験)の各実測値
の平均値を100とした指数で表した。
【0033】以上、図1,2および表1から明かなよう
に、本発明よりなる粉末状、顆粒状および(又は)錠剤
状成形物である低分子量キトサン含有植物機能調節用組
成物が、慣行の水だけ或いは比較例の炭酸カルシウム錠
剤又は市販の高分子量キトサンと比較して、如何に植物
の休眠打破を行い、伸長育の促進を強く行うかが分か
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例の発芽板上アスター種子のスケッ
チ図である。
【図2】比較従来例の発芽板上アスター種子のスケッチ
図である。
【符号の説明】
1 アスター種子 2 発芽板 3 活性誘導物リグニン物質

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均分子量500〜30000で分子端末に2,
    5アンヒドロマンノースを1分子以上持つ低分子量キト
    サン及びキトオリゴ糖からなる低分子量キトサンと炭酸
    カルシウムとを主成分とする発芽・生長促進機能の調節
    可能な低分子量キトサン含有植物機能調節用組成物。
  2. 【請求項2】 炭酸カルシウムを担体として、これに低
    分子量キトサン及び水溶性結晶形有機酸の1種又は2種
    以上、アルミニウム元素を含む無機物質並びに必要に応
    じて賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤を混和し、造粒成
    形してなる請求項1記載の発芽・生長機能の調節可能な
    低分子量キトサン含有植物機能調節用組成物。
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