JP2945438B2 - 光半導体装置及びそれを用いた受光器 - Google Patents

光半導体装置及びそれを用いた受光器

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、光ファイバ伝送システム、光信号処理シス
テム等において光信号を電気信号に変換する光半導体装
置及びそれを用いた受光器に係り、特にフリップチップ
実装(フェイスダウン ボンディング)に適用できる光
半導体装置及びそれを用いた受光器に関する。
〔従来の技術〕
光ファイバ伝送システムに用いる光受信部の光信号を
電気信号に変換する受光素子には、受信感度向上のため
に受光素子自体に増倍作用のあるなだれ降伏ホトダイオ
ード(Avalanche Photo−diode、以後APDと略す)が一
般に用いられる。近年この光ファイバ伝送システムの長
距離、大容量化は急速に進み、現在では日本及び米国に
おいてそれぞれ1.6Gb/s、1.7Gb/sの光伝送システムが実
用に供されている。各所の研究開発機関では、さらに高
速、大容量化を目指して数Gb/s〜10Gb/s光ファイバ伝送
システムの研究開発が活発化している。このような大容
量光伝送システムに用いるAPDは数GHz以上の高速広帯域
であつ低雑音特性が要求される。そのためには受光素子
自体の特性向上のみならず、受光素子の寄生効果低減も
重要技術課題の1つとなっている。
例えば、アイ・イー・イー・イー、ジャーナル オブ
クォンタム エレクトロニクス 第24巻、第3号(19
88年)、第496頁から500頁(IEEE Journal of Quantum
Electronicsvol.24,No.3(1988)pp496−500)で論じら
れているような基板に対しメサ型構造の裏面光入射方式
のAPDがある。この従来の受光素子の構造を第2図に示
す。この受光素子は、p+−InP基板2上にバッファー層
3、InP系の増倍層4、障壁緩和層5を積層し、さらに
その上に、光ファイバの最低損失波長1.55μm帯に感度
を有するInGaAs系からなる光吸収層6、コンタクト層
7、n電極8を形成し、p+−InP基板2の裏面にp電極
9を設けた構造であり、1.6Gb/s光伝送システムで高
速、低雑音特性の実績を持つ、いわゆるInP/InGaAs系AP
Dである。
この従来の受光素子の特長は1.6Gb/s光伝送システム
等で用いられているプレーナ型表面光入射方式に換えて
メサ型構造の裏面光入射方式を採用している点である。
プレーナ型ではエッジブレークダウン防止のために必要
であったガードリングがこのメサ型構造では不要となる
ため、受光素子自体のpn接合径を30%以上小さくするこ
とができ、これによりpn接合容量は半分以下にすること
が可能となった。また、表面光入射方式では、電気接続
のためのワイヤボンディングパッドを半導体表面に新た
に設ける必要があり、このため寄生容量として0.2〜0.3
pFが付加されることになる。しかし、上記の裏面入射方
式にすると受光部の表面をこのボンディングパッドとし
て用いることができ、0.2〜0.3pFの寄生容量を低減する
ことが可能となった。以上より第2図に示した従来の受
光素子は、素子容量0.2pFと市販品の0.6〜0.7pFと比べ
極めて低容量を実現し、遮断周波数8GHzの高速特性を達
成している。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記従来技術は、素子容量の低減による高速性劣化す
なわち周波数特性の劣化については十分考慮されている
が、実装に伴うボンディングワイヤの寄生インダクタン
スの低減については配慮されておらず、素子容量とこの
寄生インダクタンスによる共振現象による周波数特性の
劣化の問題があった。
第3図にこのLC共振による周波数特性劣化の計算結果
を示す。計算は素子容量0.2pFと固定し、寄生インダク
タンスをパラメータとし、0、0.5、1.0、2.0、4.0nHの
値を用いて行った。図から分かるように寄生インダクタ
ンスがない場合、20GHz以上まで平坦、良好な周波数特
性が得られているが、寄生インダクタンスが0.5、1.0、
2.0、4.0nHとついてくると共振特性が20GHzから6GHzへ
と下がりながら現われてくるのが分かる。
上記従来の技術は、寄生インダクタンスが極めて小さ
い高周波特性評価用治具にマウントされているが、実シ
ステムで用いる場合、プリアンプ回路との電気的接続の
ために2mm程度のAu又はAlのボンディングワイヤが必要
である。通常のボンディングワイヤは長さ1mmに付き1nH
のインダクタンスを持つことを考慮すると、2nH程度の
寄生インダクタンスによる共振が8GHz付近に現われ、10
Gb/sの光伝送では大きな伝送特性劣化要因となることが
分かる。
本発明の目的は、寄生インダクタンスによる周波数特
性の劣化を解決する光半導体装置及びそれを用いた受光
器を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的は、(1)透光性基板、該基板上に積層され
た光電変換領域を有する半導体積層構造、該半導体積層
構造内に電界を印加するための一対の電極を有し、該一
対の電極は、該基板に対し該半導体積層構造が形成され
ている側に設けられていることを特徴とする光半導体装
置、(2)透光性基板、該基板上に積層された光電変換
領域を有する半導体積層構造、該半導体積層構造内に電
界を印加するための一対の電極を有し、該一対の電極
は、実質的に同一平面上に設けられていることを特徴と
する光半導体装置、(3)上記1又は2記載の光半導体
装置において、上記一対の電極の一方は、上記透光性基
板又は該透光性基板と同一の導電型の半導体層と電気的
に接続する電極であることを特徴とする光半導体装置、
(4)上記1、2又は3記載の光半導体装置において、
上記光電変換領域は、なだれ増倍機構を利用した増倍層
と光吸収層とを有することを特徴とする光半導体装置、
(5)上記1から4までのいずれかに記載の光半導体装
置において、上記透光性基板は、上記半導体積層構造が
形成されている側と反対の側は、その上部から侵入する
光を上記光電変換領域に集光するための曲面構造を有す
ることを特徴とする光半導体装置、(6)上記1から4
までのいずれかに記載の光半導体装置において、上記透
光性基板は、上記半導体積層構造が形成されている側と
反対の側の上記光電変換領域と対応する位置に凹部を有
することを特徴とする光半導体装置、(7)所望の配線
パターンを有する回路基板上に、上記1から6までのい
ずれかに記載の光半導体装置を、上記一対の電極を有す
る側を該回路基板と向き合わせて接続したことを特徴と
する受光器によって達成される。
本発明の光半導体装置の好ましい構造の一例は、受光
部をメサ型構造とし、一対の電極の一方をその表面に設
け、他方の電極を第2のメサ型構造の表面に設けたもの
である。また、他方の電極を、メサ型構造の表面から基
板又は基板と同一の導電形の半導体層まで段差のある所
に一面に形成することが好ましい。4〜5μmの段差が
ある状態でも段切れが起きないことが実験的に確認され
ている。素子設計上もメサ型構造の高さは数μm程度と
見積られ、段切れなく素子を形成することが可能であ
る。
上記5項は基板裏面上にマイクロレンズ、球面ドーム
層等を形成し、光ファイバとの光結合を高めたものであ
る。このレンズ効果により実効的に受光径を2〜4倍程
度拡大した素子と等価の光結合特性を得ている。これに
よりさらに実際のpn接合径を縮小し、0.1pF以下の素子
容量も達成可能である。
上記6項は基板裏面の受光部をエッチングして基板の
厚みを薄くし、光ファイバとの光結合を高めたものであ
る。これは特にp−InP基板のようにn−InP基板より1.
5μm帯での光吸収係数が高く、基板での光信号吸収が
無視できない場合に有効である。
〔作用〕
本発明の光半導体装置は、半導体表面のほぼ同一平面
上にAPDバイアス用p、n電極を有し、またこの電極用
パターンは十分大きいため、安定したフリップチップ実
装となった。また、この光半導体装置をフリップチップ
実装した受光器は、ボンディングワイヤを必要としない
ため、ボンディングワイヤの寄生インダクタンスの寄与
による共振現象がなくなり、良好な高速応答性が実現で
きる。
〔実施例〕
以下、本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
第1図は、本発明の一実施例の受光素子(APD)の断
面図である。表面が(100)面のp+−InP基板2の上に、
MOCVD法により、Beドープp+−InPよりなるバッファ層
(1×1019cm-3、0.5μm)3、Seドープn−InPよりな
る増倍層(4×1016cm-3、0.7μm)4、n−InGaAsよ
りなる障壁緩和層(8×1015cm-3、0.1μm)5、n-InG
aAsよりなる光吸収層(6×1015cm-3、3μm)6、n
−InPよりなるコンタクト層(2×1017cm-3、1μm)
7を順次連続成長させ、InP/InGaAs/InGaAs層のSAGM構
造を得る。なお、上記各層は、気相成長法や液相成長法
によって形成することもできる。
次いで、重クロム酸系エッチング液を用いて、第1図
に示す構造にメサエッチングした後、n電極、p電極9
を真空蒸着する。この時、n電極8、p電極9の材料と
しては、それぞれn−InPのコンタクト層7、p+−InP基
板2又はp+−InPのバッファ層3とオーミック接合とれ
るように選べば良い。すなわち、n電極8の材料として
はAuZn/Pt/Au、p電極9としてはTi/Auを用いた。な
お、AuGeNiのようなp、n両性半導体ともオーミック接
合とれる電極材料を用いることもできる。絶縁保護膜は
APDの暗電流特性等から必要に応じて設ければ良い。材
料としてはSiN、PSG、SiO2等がありCVD法により形成す
る。本実施例では絶縁保護膜は設けていない。p+−InP
基板2裏面には反射防止膜10を設け、p+−InP基板2で
の反射による光結合効率の劣化を防止する。以上、本実
施例の作製について述べた。
次に本実施例の受光素子の動作について述べる。電極
8、9を介してAPDを逆バイアス状態にする。光信号11
(波長は1.3又は1.55μm帯)はAPDの裏面より反射防止
膜10を介して入射され、コンタクト層3、増倍層4、障
壁緩和層5を通り抜け、n-InGaAsからなる光吸収層6で
吸収されホール・電子対の電気信号に変換される。この
光吸収層6で発生したホールは電界により障壁緩和層
5、増倍層4をp+−InP基板2裏面に向かってドリフト
しp−InPのコンタクト層3とn−InPの増倍層4のpn接
合界面の増倍層4側でアバランシェ増倍し、電極9より
増倍電気信号として外部に送出される。
本実施例では得られた特性は、素子容量の0.15pF、暗
電流506nA以下と10GHz以上の高速・低雑音動作が可能で
ある。同様の構造で作製したPINホトダイオードでは15G
Hz以上の高速動作が得られた。
以上、第1図を用いて本発明の一実施例について述べ
た。本発明では、光結合系の構成には様々な応用が考え
られるのでそのうちいくつかの実施例について以下に述
べる。その一実施例の受光素子の断面図を第4図に示
す。第1図に示した実施例と同様にP+−InP基板2上にI
nP/InGaAsP/InGaAsの層構造を得、所望のパターン構造
にメサエッチし、電極形成を行った後、次にp+−InP基
板2の裏面を研摩し、光吸収層6に光信号11が集光する
ような曲率を持つマイクロレンズ12を設ける。その後、
反射防止膜10を第1図に示した実施例と同様にして形成
する。このマイクロレンズ12のレンズ効果により実効的
に受光径が2〜4倍拡大した素子と等価な光結合特性が
得られ、第1図に示した実施例に比べて受光径を30%低
減可能となり素子容量の0.1pFが得られた。
他の実施例の受光素子の断面図を第5図に示す。第5
図に示す実施例は半導体基板が光信号の波長に対して吸
収係数が無視できない場合に有効である。すなわち基板
裏面の受光部を化学エッチング等により適当に薄くす
る。本実施例の作製について述べる。第1図に示した実
施例と同様にp+−InP基板2上にInP/InGaAsP/InGaAsの
層構造を形成し、所望のパターン構造にメサエッチング
し、p、n電極形成を行った後、次にp+−InP基板2の
裏面受光部をBr系エッチング液を用いて適当な薄さにな
るまでエッチング除去を行う。本実施例では、基板強度
も考慮して450μm厚基板を上記のエッチングにより受
光部を150μm以下の厚みにした後、反射防止膜10を第
1図に示した実施例と同様にして形成した。これにより
10%程度の量子効率の改善を得た。
以上、InP系APDを中心に3つの実施例について述べた
が、本発明はAPDに限らずPINホトダイオード等の縦構造
受光素子、半導体材料はその他のIII−V族化合物半導
体系やSi、Ge等の半導体にも適用可能である。
第6図は本発明の一実施例の受光器の断面図である。
回路基板13は、受光素子1と電気接続し受光素子1へバ
イアスを供給し電気信号を取り出すための配線パターン
14を有し、配線パターン14の受光素子1との電気接続部
にハンダバンプ15を設けてある。受光素子1をフェイス
ダウンして第6図に示すように回路基板13上に置き、ホ
ットプレートで加熱しハンダバンプを溶かして受光素子
1と配線パターン14と接続固定する。この際、溶けたハ
ンダの表面張力により受光素子1は配線パターン14の所
定位置に設置することが出来る。このように本発明の構
造を採用することにより電気接続用のボンディングワイ
ヤを不要とするフリップチップ実装が可能となり、ボン
ディングワイヤのインダクタンスの影響による高周波特
性の劣化がなくなり、受光素子本来の持つ良好な高周波
特性を持つ受光器を実現した。
〔発明の効果〕
本発明によれば、光半導体装置の光電変換領域を有す
る半導体積層構造内に電界を印加するための一対の電極
を基板に対し上記半導体積層構造を有する側に設け、又
はほぼ同一平面上に設けるため、安定にフリップチップ
実装を取ることができる。
また、上記光半導体装置を用い、フリップチップ実装
した受光器は、電気接続用のボンディングワイヤがない
ため、ボンディングワイヤの寄生インダクタンスの寄与
による共振現象がなくなり、リップルのない周波数特性
となり、良好な高速応答性が実現できる。さらに、実装
用電極パターン部により、フリップチップ実装の際、実
装用回路基板に安定に設置することが可能となり組立て
の歩留りが向上する。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例の受光素子の断面図、第2図
は従来の受光素子の断面図、第3図は受光素子周波数特
性の寄生インダクタンス依存性を示す特性図、第4図及
び第5図は本発明の他の実施例の受光素子の断面図、第
6図は本発明の一実施例の受光器の断面図である。 1……受光素子、2……p+−InP基板 3……バッファ層、4……増倍層 5……障壁緩和層、6……光吸収層 7……コンタクト層、8……n電極 9……p電極、10……反射防止膜 11……光信号、12……マイクロレンズ 13……回路基板、14……配線パターン 15……ハンダバンプ
フロントページの続き (72)発明者 野津 千秋 千葉県茂原市早野3681番地 日立デバイ スエンジニアリング株式会社内 (72)発明者 大歳 創 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 石田 宏司 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (56)参考文献 特開 昭61−135168(JP,A) 特開 昭62−219675(JP,A) 特開 昭63−98158(JP,A) 実開 平1−146562(JP,U) 実開 昭54−20671(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01L 31/10 H01L 31/02

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】透光性半導体基板、前記透光性半導体基板
    の上部に積層された光電変換領域を有する半導体積層構
    造、前記半導体積層構造内に電界を印加するための一対
    の電極を有し、該一対の電極は、前記透光性半導体基板
    に対し前記半導体積層構造が形成されている側に実質的
    に同一平面上に設けられた領域を有し、前記一対の電極
    の一方は、前記透光性半導体基板又は前記透光性半導体
    基板と同一の導電型の半導体層と電気的に接続する電極
    であり、且つ当該光電変換領域がなだれ倍増機構を利用
    した増倍層と光吸収層とを有する光電変換領域又はPIN
    構造であり、前記透光性半導体基板側より光入射がなさ
    れることを特徴とする光半導体装置。
  2. 【請求項2】透光性半導体基板、前記透光性半導体基板
    の上部に積層された光電変換領域を有する半導体積層構
    造、前記半導体積層構造内に電界を印加するための一対
    の電極を有し、該一対の電極は、前記透光性半導体基板
    に対し前記半導体積層構造が形成されている側に実質的
    に同一平面上に設けられた領域を有し、前記透光性半導
    体基板に対し前記半導体積層構造が形成されている側で
    実質的に同一平面上設けられている電極は、前記半導体
    積層構造の側壁に延在して前記透光性半導体基板又は前
    記透光性半導体基板と同一の導電型の半導体層と電気的
    に接続し、且つ当該光電変換領域がなだれ倍増機構を利
    用した増倍層と光吸収層とを有する光電変換領域又はPI
    N構造であり、前記透光性半導体基板側より光入射がな
    されることを特徴とする光半導体装置。
  3. 【請求項3】前記透光性半導体基板は、前記半導体積層
    構造が形成されている側と反対の側は、その上部から侵
    入する光を前記光電変換領域に集光するための曲面構造
    を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載
    の光半導体装置。
  4. 【請求項4】前記透光性半導体基板は、前記半導体積層
    構造が形成されている側と反対の側の前記光電変換領域
    と対応する位置の凹部を有することを特徴とする請求項
    1又は請求項2に記載の光半導体装置。
  5. 【請求項5】所望の配線パターンを有する回路基板上
    に、請求項1より請求項4のいずれかに記載の光半導体
    装置を、前記一対の電極を有する側を当該回路基板に向
    き合わせて接続したことを特徴とする受光器。
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