JP2942023B2 - 圧延用ロール、その研磨方法および金属板の圧延方法 - Google Patents

圧延用ロール、その研磨方法および金属板の圧延方法

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JP2942023B2
JP2942023B2 JP21241291A JP21241291A JP2942023B2 JP 2942023 B2 JP2942023 B2 JP 2942023B2 JP 21241291 A JP21241291 A JP 21241291A JP 21241291 A JP21241291 A JP 21241291A JP 2942023 B2 JP2942023 B2 JP 2942023B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ロール周方向に対し
て傾斜した研磨目をもつ金属板圧延用ロールおよびその
ようなロールを製造するためのロールの表面研磨方法、
並びにこのようなロールを使用し光沢の良い金属板を製
造する圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】金属板の圧延においては、ワークロール
(以下、単にロールと記す)の表面の凹凸が金属板に転
写されるから、ロール表面は製品金属板に要求される表
面粗さに応じてその表面が研磨される。例えば、優れた
光沢が必要とされる冷延鋼板などの圧延には、高番手の
砥石で研磨した表面粗さの小さいロールを使用する。し
かし、ロール表面粗さを小さくするほどロール表面の研
磨作業には時間がかかり、ロールの作製、補修(再研
磨)のコスト、ひいては金属板の製造コストの増大を招
く。
【0003】従来、薄鋼板、特にステンレス薄鋼板の冷
間圧延はセンジミアミルで 100mmφ以下の小径ワークロ
ールを用いて圧延されてきたが、最近、表面品質がそれ
ほど厳しくない製品では、例えば 180φmm以上という大
径ロールを用いた普通鋼用圧延機であるタンデムミルや
レバースミルによる圧延が行われるようになってきた。
これはワークロールのロール径が大きく、また圧延油に
冷却能力の大きい水溶性エマルジョンを使用するため高
速圧延が可能となり、高生産性が期待できるためであ
る。しかし、普通鋼用圧延機で圧延した薄鋼板はセンジ
ミアミル圧延で得られる薄鋼板に比較して表面の光沢度
が劣る。上述のような大径ワークロールで高速圧延を行
うと、ワークロールと鋼板との間に油膜ができ、油圧に
より鋼板が部分的に凹状(オイルピット)となるためで
ある。
【0004】上記のオイルピットによる光沢の低下を防
ぐという発想で、特開昭60−227904号公報には、圧延材
表面に存在する研削目の方向とワークロール表面の研削
目の方向を交叉させて圧延する方法が開示されている。
この方法では、圧延前の金属板の表面研削目が分断され
てオイルピットが減るという効果が述べられているが、
そこで使用されるロールの研削目は一定方向に傾斜した
もので、その傾斜角度(後述するθ)も高々10°であ
る。また、ロールの作製方法としても、研削砥石を回転
させながらロール軸に平行に通常より早送りするという
方法が記述されているに過ぎず、それだけではθの大き
な、かつ後述するようにロール中央部を境にして対称で
あるような研削目をつけることは極めて困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、圧延用ロー
ルの表面状態の改良によって、従来のロールを使用する
圧延では得られないような優れた光沢度をもつ金属板を
製造すること、特に、生産性の高い高速圧延ミルを用い
ても、センジミアミルで低速圧延した製品のそれに匹敵
する優れた光沢度をもつ金属板(特にステンレス薄鋼
板)を高能率で生産し得る冷間圧延技術の開発を課題と
してなされたものである。
【0006】本発明の具体的な目的は、適当な表面形状
(研磨目の付け方や粗さ)を有する金属板圧延用ロー
ル、およびそのような表面形状を得るための研磨方法、
並びにこのロールを使用して光沢度の高い金属板を製造
する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、金属板圧
延用のロールに関する研究の過程で、ロール表面の研磨
目(ロール研磨の際に表面に付与される微細な研磨筋)
の方向が、圧延後の金属板の性状に大きな影響を及ぼす
ことを知った。即ち、通常の研磨では、ロールを回転さ
せながら砥石をロール表面に押し当てるために、研磨目
はロールの軸方向にほぼ直角の方向(ロール周方向)に
揃ったものとなる。ところが、この研磨目をロール周方
向に対して傾斜させたロール(以下、傾斜研磨ロールと
いう)で圧延を行うと、表面粗さが同等の通常のロール
での圧延に較べて表面光沢度が大きく向上するのであ
る。
【0008】しかしながら、ロール表面全体にわたって
一定の方向に傾斜した研磨目を有するロールで圧延を行
った場合、圧延材の幅方向(ロールの軸方向)に摩擦力
が働き、圧延材が横方向にずれて、ねじれる現象が見ら
れる。このようなズレやネジレを防ぐには、単に傾斜し
た研磨目をつけるだけでなく、研磨目の分布状態にも特
殊な工夫をしなければならない。
【0009】本発明の要旨は下記の (1)〜(3) にある。
【0010】(1) 表面にロール周方向に対して傾斜した
研磨目を有し、その傾斜角度がロール幅中央部を境とし
て対称であり、かつ、研磨目の中心線平均粗さ(Ra)が
ロール軸方向またはロール周方向のいずれか大きい方で
0.1〜 0.5μm の範囲にある金属板圧延用ロール。
【0011】上記の研磨目のロール周方向に対する傾き
角度は20°以上であることが望ましい。また、研磨目の
傾き角度はロール幅方向に連続的に変化するものであっ
てもよい
【0012】(2) 半径r(mm)の円盤状砥石の回転軸を
ロールの法線と一致させて配置した後砥石の回転軸を傾
け、または傾けずにそのまま法線からずらして砥石の一
端をロール表面に接触させ、この接触点と砥石の回転軸
との間にロール軸に直角の方向にX(mm)の距離を持た
せ、その状態で砥石を回転させつつロールの軸方向に相
対的に移動させながらロールを回転させてロール表面を
研磨する方法であって、上記のX、砥石の回転速度 (V
T ) 、相対移動速度 (VF ) およびロールの回転速度
(VR ) のうちの一つ以上を調整し、下記式で定義さ
れるロール周方向に対する研磨目の傾斜角度θを調整す
ることを特徴とする上記(1) の圧延用ロールの研磨方
法。
【0013】
【数2】
【0014】ただし、VT は砥石の回転速度(m/分)
、VF は砥石のロール軸方向相対移動速度VF (m/
分) 、VR はロールの回転速度(m/分) 、α= sin-1
(X/r)、である。
【0015】(3) 上記(1) のロールを冷間圧延のワーク
ロールとして使用することを特徴とする光沢の優れた金
属板の圧延方法。
【0016】図1は、本発明のロールの概念を示すロー
ル表面の図で、(a)は研磨目の傾斜方向がロール中央
部を境にして逆になっているもの、(b)は研磨目の角
度が連続的に変化し、しかもロール中央部を境にして研
磨目のパターンが対称になっているものである。研磨目
は、実際には極めて微細な断続した筋目であるが、図に
はこれを誇張して描いてある。この研磨目のロール周方
向に対する傾斜角度をθとする。図1(a)の場合は、
θ≧20°であるのが望ましい。この傾斜の向きは便宜的
に図示の時計回りの方向を+、その反対を−とするが、
上記の20°以上というのは絶対値で20°以上を意味す
る。
【0017】図1(a)および(b)のいずれにおいて
も、ロール表面の粗さはロール軸方向またはロール周方
向の中心線平均粗さ(Ra)の大きい方 0.1〜0.5 μm
の範囲とする
【0018】図2は、本発明のロール研磨方法と前記
式中の記号の定義を説明する図であり、(a)はロール
と砥石の位置関係を示す側面図、(b)は平面図、
(c)は(b)のベクトルの拡大図、(d)は砥石端部
をロール表面に接触させる一つの態様を示す図である。
【0019】まず(a)図において、1はロール、2は
その軸(回転軸)、3は砥石、4はその回転軸、5はロ
ールの法線である。
【0020】図2(b)は砥石を当てる方向(この場合
は上方)から見た平面図である。本発明の研磨方法で
は、まず、半径r(mm)の円盤状 (カップ状を含む) の
砥石3の回転軸4をロールの法線5に一致させて配置す
る。次に、砥石回転軸4を法線5に対して傾ける。この
傾斜角をψとする。なお、(d)図に示すように特殊な
状態ではψは0でもよい。こうすることにより砥石の研
削面の周辺部の一部(以下、端部という)をロール表面
に接触させる。接触点をPとする。
【0021】上記のように砥石の端部とロール表面との
接触を保ったまま、砥石回転軸4をロール軸2から直角
方向にX(mm)だけずらしてセットする。このXをオフ
セット量という。さらに(a)図に示すように、この状
態で砥石およびロールを回転させ、かつ砥石とロールを
ロール軸2の方向に相対的に移動させる。相対的に移動
させるというのは、ロールを一定位置で回転させておい
て、回転する砥石をロール軸方向に送るか、砥石を一定
位置で回転させておいて、回転するロールを軸方向に送
るか、または両者の移動方向または速度を変えて相対的
に位置を変えていくことを意味する。
【0022】(b)図に示した接触点でのベクトルの拡
大図が(c)である。砥石の回転速度VT 、砥石のロー
ル軸方向相対移動速度VF 、およびロールの回転速度V
R のベクトルを示した。図中のαは sin-1(X/r)で
あり、これらの関係から研磨目の傾斜角θは下記−1
式で算出されることが明らかである。
【0023】
【数3】
【0024】また、図2(a)で砥石の傾け方向を逆に
した場合、傾斜角θは下記−2式で算出される。
【0025】
【数4】
【0026】ロール回転方向が逆方向の場合は、−1
式と−2式のVR の正負が逆になる。なお、本発明に
おいて用いる砥石の半径およびオフセット量に特に限定
はないが、研磨能率から砥石半径rは30〜300mm 、オフ
セット量Xは砥石半径の20%以上が望ましい。
【0027】図2の(d)は砥石の回転軸4を傾けず、
法線5と平行な状態(ψ=0)で法線5からロール軸に
直角の方向にずらした状態を示している。この場合は、
砥石端部とロール表面の接触点から砥石回転軸までの距
離、即ち、オフセット量Xは砥石の半径rに等しくな
る。砥石端部とロール表面の接触点におけるベクトルは
(c)の場合と同じである。即ち、このような状態でも
本発明の研磨方法は実施できる。
【0028】上記本発明の研磨方法によれば、研磨目の
傾斜角θを20°以上にすることが容易なだけでなく、研
磨目の方向をロール幅中央部を境にして対称にすること
もできる。図3は、その研磨作業の形態を説明する図で
ある。(a)に示すように、砥石の傾け方向または/お
よびオフセット量Xを変えることにより砥石の送り方
向、砥石回転方向、ロール回転方向あるいはそれぞれの
速度を変えることなく、研磨目の方向をロール幅中央部
を境に対称形にできる。また、(b)に示すように、砥
石、ロールの回転速度または/および回転方向を変える
ことにより研磨目の方向をロール幅方向で連続的に変化
させ、かつ幅中央部を境に対称形につけることもでき
る。さらに、オフセット量Xをロール幅方向で順次変え
ていくことによっても上記の連続的な研磨傾斜角度の変
更が可能である。
【0029】図4は、オフセット量Xの砥石半径rに対
する百分率(オフセット比)を変えた場合のθの変化を
示す図である。ここには、砥石の回転速度VT とロール
の回転速度VR と砥石のロール軸方向相対移動速度VF
の比を変えた2例を示したが、図示のとおり、研磨目の
角度は連続的に変化し、ロールの幅方向の任意の位置を
境にして対称形にすることが可能である。
【0030】
【作用】以下、上記本発明のロールを用いて高光沢度の
金属板を製造する圧延方法を例として本発明の作用効果
を説明する。
【0031】図5は、圧延時のロールと圧延材との関係
を模式的に示す図である。圧延材Sが板厚t1 からt2
に圧延されるとき、ロール入側(A点)での圧延材の速
度をv1 、出側(B点)でのそれをv2 とすれば、当
然、v1 <v2 となる。圧延材の速度vがロールの周速
Vと同じになる点(N点)を中立点と呼び、この点から
前方(ロール出側)を先進域、後方(ロール入側)を後
進域と呼ぶ。
【0032】図6の(a)は通常のロールを使用した金
属板の圧延を概念的に示した平面図、同(b)はこの圧
延によって金属板表面に形成されるパターン(以下、転
写パターンという)の説明図である。いまロール表面の
凸部の一点に着目すれば、この点の圧延材Sの表面での
軌跡は、前記のような先進域と後進域との速度差がある
ために、(b)図のA→N→Bのようになる。即ち、ロ
ール凸部は圧延材表面に転写されるだけでなく、ロール
表面と圧延材表面でのA→N→B方向の辷りによるパタ
ーンが形成される。この辷り方向はロール回転方向と同
じである。従って、ロールの研磨目の数だけ、しかも研
磨目の長さ以上に強調されて圧延材表面には転写パター
ン(凹凸)が形成されることになる。
【0033】図7の(a)は本発明の傾斜研磨ロールを
使用する圧延を概念的に示した平面図で、同(b)はこ
の圧延によって金属板表面に形成されるパターン(ただ
し、ロール右半分によるもの)の説明図である。この場
合もロール研磨目は圧延材表面でA→N→Bのように移
動するのであるが、研磨目の方向とロール回転方向とが
異なる(θの角度をもつ)から、研磨目は横滑りする状
態になる。この辷りによって隣接する幾つかの転写パタ
ーンは削られ、または押しつぶされることになる。即
ち、(b)の斜線部は平滑化されることになる。ロール
研磨目が傾斜している場合、転写されて残る研削目は出
側近傍でのものであり、入側で転写された研磨目は上記
の研削または押しつぶし作用によりほとんど消滅する。
【0034】図6に示したように、表面の研磨目がロー
ル周方向に平行になった通常のロールで圧延された後の
金属板(圧延材)Sの表面は、ロール表面の研磨目(ロ
ール肌)が転写され、さらに強調された筋目状の凹凸を
もつものとなる。従って、ロール研磨目の粗さを極限ま
で小さくしない限り、圧延材の光沢を低下させてしま
う。一方、ロール肌の転写が目立たないほど粗さが小さ
い場合には、粗さの方向性とロール回転方向が一致して
いるため圧延材とロールとの間でスリップが生じる。さ
らに高速圧延になるとオイルピットが発生し、圧延材の
光沢が一層低下する。
【0035】図7に示す本発明のロールを使用する圧延
の場合は、圧延材Sに転写されたロール肌が、前述の押
しつぶし又は研削作用によって平滑化され、きわめて光
沢度の高いものになる。この作用と、先に示した特開昭
60−227904号公報に述べられているような圧延前の金属
板の研磨筋の分断によるオイルピットの減少とによっ
て、圧延後の金属板の表面光沢は著しく向上するのであ
る。
【0036】図8は、図7の本発明の圧延方法において
研磨目間の距離bを1とした場合に、一つの研磨目が隣
接する研磨目に当たるまでの前述の圧延方向の移動(辷
り)の距離(L)と研磨目の傾斜角θとの関係を示す図
である。θが大きくなるほどすべり方向の長さLは短く
なり、押しつぶされる研削目転写マークの数が増す。
【0037】図8から明らかなようにθが20°未満では
Lが長く、押しつぶし効果が小さい。
【0038】θが大きい程、上記の効果は大きくなる。
望ましいθの範囲は20°以上であり、最も好ましいのは
60°以上である。
【0039】以上の説明から明らかなように、傾斜研磨
ロールで圧延すれば、同じ表面粗さの通常研磨のロール
で圧延した場合よりも光沢度の高い金属板が得られる。
言い換えれば、同じ光沢度の金属板を製造するのに、傾
斜研磨ロールであれば表面が粗くてもよいことになり、
ロール研磨の時間、工数を減らすことができる。
【0040】しかし、研磨目の方向がロール幅方向で一
定である場合、図5に示した圧延材とロールの接触円弧
上でロールと圧延材との速度差から圧延材にロール軸方
向の摩擦力が発生する。図9はその状態を模式的に示し
たものである。前記のとおり後進域(A−N間)では圧
延材の速度VS とロールの周速VR とは、VS <VR
関係にあり、先進域(N−B間)ではVS >VR の関係
にある。従って、ロール入側(後進域)では、図示のよ
うにロール軸方向で内向き(左向き)の摩擦力UINが働
き、ロール出側(先進域)では外向き(右向き)の摩擦
力Uout が働く。これらの摩擦力はその方向は逆である
が、図5に示すごとく、中立点は一般に出側にあるた
め、入側でのロール軸方向の摩擦力が支配的(UIN>U
out )になり、圧延材には図9の白矢印で示すUIN−U
out の摩擦力が働くことになって圧延材は横方向にず
れ、甚だしい場合には圧延材にネジレが発生する。
【0041】本発明のロールは、図1(a)および
(b)に示すように、ロール中央部を境にして研磨目が
対称形になっているので、このロールをワークロールと
して使用すれば上記ロール軸方向の摩擦力が相殺され圧
延材のズレがなくなり、圧延作業が安定して行える。
【0042】なお、図1(a)のようにロール幅中央で
研磨目の傾き角が逆方向になる場合は、不連続の中央部
分が潤滑過多あるいは潤滑不足になりやすく、周囲に比
べ光沢差を生じやすい。従って、図1(b)のような研
磨目の角度が連続的に変化し、かつロール中央部を境に
して対称であるパターンがより望ましい。
【0043】次にロール表面の粗さについて説明する。
【0044】本発明の傾斜研磨ロールを特に金属板の表
面光沢度改善に使用する場合は、ロールの軸方向または
周方向の中心線平均粗さ(Ra)のうち、大きい方の粗さを
0.1〜 0.5μm の範囲にするロール研磨目を傾斜させ
ることによる圧延材表面の光沢向上は、前記のような研
磨目による研削または押しつぶし効果である。従って、
研磨目はある程度の大きさが必要である。
【0045】図10はロール表面と圧延材表面の断面を拡
大して示す図である。(a)のようにロール表面粗さが
極端に小さい場合は、高速圧延ではスリップが生じやす
い。
【0046】またロール表面と圧延材表面との間に潤滑
油の湯膜ができ、その油圧によって圧延材が押圧されて
凹み(オイルピット)が発生し、圧延材の表面は粗くな
って光沢度が低下する。一方、(c)に示すようにロー
ル表面粗さが大きい場合には、ロールの凸部と圧延材凸
部の直接接触による焼付が起きる。また、ロール凸部の
摩耗あるいは圧延材が削られて発生する金属粉が圧延材
表面に疵をつけ、光沢度低下の原因になる。
【0047】図7の(b)に示すように、ロール表面粗
さが適切であれば、オイルピットの発生や焼付がなく、
研磨目の辷りによる平滑化によって圧延材の光沢度が著
しく向上する。なお、表面粗さの測定は方向を定めて行
うのであるが、本発明の傾斜研磨ロールの場合に、これ
までに述べた作用効果に主に影響するのはロール周方向
または軸方向のいずれかの粗い方向である。従って、表
面粗さRaは、軸方向または周方向のいずれか大きい方で
0.1〜 0.5μm の範囲にするこのような粗さの調整
は、研磨作業の際に使用する砥石の粗さを選ぶだけで簡
単にできる。
【0048】次に実施例によって本発明をさらに具体的
に説明する。
【0049】
【実施例】ロール研磨機としては、被加工材であるロー
ルの回転方向および回転速度が可変で、かつ、円盤状の
回転砥石の回転軸の取付位置、角度が変更できる機構を
備えたものを使用した。
【0050】ロールは、直径 380mm、胴長1450mm、全長
3400mmの4Hi圧延機用ワークロール(材質5%Cr鍛鋼、
硬度Hs≧95) を表1、2、3および4に示す条件で研磨
した。砥石はダイヤモンド砥石で直径 120mmのカップ状
のものを使用した。表1、表2および表3は本発明の実
施例に相当する例(ただし、表3の一部は比較例)で、
そのうちの表2は研磨目の角度をロール幅方向で連続的
に変化させた例である。表4は従来例および本実施例か
ら外れる比較例である。表中の研磨後の表面粗さは軸方
向または周方向の粗い方の粗さ(Ra)である。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】表1〜表4のロールを5スタンドタンデム
ミルの#5スタンドの上下のワークロールとし、表5に
示す圧延スケジュールで厚さ2.5m、幅1000mmのSUS430鋼
の熱間圧延−焼鈍材(酸洗済)を圧延した。その際、合
成エステル系圧延油(粘度60cSt/50℃)の3%エマルシ
ョン(温度50℃)をクーラントとして用いた。なお、上
下のワークロールの配列は、図11に示すように上下ロー
ルの研磨目が対称となるようにした。
【0056】圧延時の圧延安定性と、圧延後の鋼板表面
の光沢度を入射角20°、測定角20°の反射型光沢度計で
測定した結果を表6に示す。
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】
【0059】表6に示すとおり、本発明の実施例である
No.1〜では、いずれも光沢度が従来のロールで圧延し
た場合(比較例のNo.1)に比べ著しく高く、また光沢度
は研磨目の傾斜角度(θ)が大きいほど優れている。特
にθが60°以上で優れた光沢が得られている。また、比
較例のNo.2をみれば、研磨目が対称になっていない場合
は、圧延材が横 (幅) 方向にずれて圧延作業が不安定に
なるだけでなく、圧延後の鋼板にネジレが生じている。
【0060】実施例のNo.6およびNo.7に見られるよう
に、研磨目の角度を連続的に変化させることにより、研
磨目の角度の変曲点付近での光沢ムラがなくなる。さら
に、研磨目の粗さについては、実施例のNo.4およびNo.5
比較例のNo.9およびNo.10 との対比から、 0.1〜 0.5
μm Raが望ましいと言える。
【0061】なお、この実施例ではロールを圧延最終ス
タンドで使用したが、前段あるいは中間スタンドで使用
しても光沢の向上効果は同様に認められた。
【0062】
【発明の効果】本発明のロールは、タンデムミルやレバ
ースミルの大径ワークロールとして使用するのに特に好
適である。このようなミルで高速冷間圧延を実施しても
オイルピットやスリップ疵等の発生がなく、表面性状
(光沢度)に優れた薄鋼板、例えばステンレス鋼板を高
能率で圧延できる。さらに、ロール幅中央を中心に対称
形に研磨目の角度を変えることにより、圧延時の材料の
横行(横ずれ)、圧延後の金属板のネジレなどの支障な
しに安定した圧延ができる。
【0063】本発明の研磨方法によれば、ロールに付与
される研磨目の角度を周方向に対し最大の90°まで、し
かもロール幅方向に変化させて容易につけることができ
る。
【0064】ロール表面粗さは 0.1〜 0.5μm Raの比較
的粗いものでよく、従って、本発明はロール研磨の工程
短縮にも寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のロールの表面を説明する図で、(a)
はロール中央部を境にして研磨目の傾斜角度 (θ) が逆
になっているもの、(b)は傾斜角度 (θ) が連続的に
変化しているものである。
【図2】本発明のロール研磨方法を説明する図で、
(a)はロールと砥石の位置関係を示す側面図、(b)
は同じく平面図、(c)は(b)のベクトルの拡大図、
(d)はロールと砥石のセット状態の一例をロール軸方
向から見た図、である。
【図3】本発明のロール研磨方法で研磨目の傾斜角度を
変える態様を説明する図である。
【図4】本発明のロール研磨方法でオフセット比を変え
た場合の研磨目の傾斜角度の変化の例を示す図である。
【図5】圧延時のロールと圧延材の関係を示す図であ
る。
【図6】従来のロールによる金属板の圧延を説明する図
で(a)は平面図、(b)は金属板表面の転写パターン
の形成を説明する模式図である。
【図7】本発明のロールによる金属板の圧延を説明する
図で(a)は平面図、(b)は金属板表面の転写パター
ンの形成と平滑化の状態を説明する模式図である。
【図8】研磨目の傾斜角(θ)と、研磨目の転写疵が隣
の研磨目により押しつぶされて平滑化されるための最少
すべり長さ(L)との関係を示す図である。
【図9】傾斜研磨ロールによる圧延で圧延材が幅方向に
ずれる原理を説明する図である。
【図10】圧延時のロール表面と圧延材表面の接触状態
を示す断面拡大図で、(a)はロール粗さが小さすぎる
場合、(c)は大きすぎる場合、(b)は適切な場合で
ある。
【図11】実施例における上下のワークロールの配置状
態を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B24B 5/37 B24B 5/37 (72)発明者 松平 行彦 新潟県上越市港町2丁目12番1号日本ス テンレス株式会社直江津製造所内 (56)参考文献 特開 昭52−114551(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B21B 1/00 B21B 27/00 - 29/00 B24B 5/00 - 7/30

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表面にロール周方向に対して傾斜した研磨
    目を有し、その傾斜角度がロール幅中央部を境として対
    称であり、かつ、研磨目の中心線平均粗さ(Ra)がロー
    ル軸方向またはロール周方向のいずれか大きい方で 0.1
    〜 0.5μm の範囲にある金属板圧延用ロール。
  2. 【請求項2】研磨目のロール周方向に対する傾き角度が
    20°以上である請求項1記載のロール。
  3. 【請求項3】研磨目の傾き角度がロール幅方向に連続的
    に変化した請求項1記載の金属板圧延用ロール。
  4. 【請求項4】半径r(mm)の円盤状砥石の回転軸をロー
    ルの法線と一致させて配置した後砥石の回転軸を傾け、
    または傾けずにそのまま法線からずらして砥石の一端を
    ロール表面に接触させ、この接触点と砥石の回転軸との
    間にロール軸に直角の方向にX(mm)の距離を持たせ、
    その状態で砥石を回転させつつロールの軸方向に相対的
    に移動させながらロールを回転させてロール表面を研磨
    する方法であって、上記のX、砥石の回転速度 (VT )
    、相対移動速度 (VF ) およびロールの回転速度 (V
    R ) のうちの一つ以上を調整し、下記式で定義される
    ロール周方向に対する研磨目の傾斜角度θを調整するこ
    とを特徴とする請求項1、2または3の圧延用ロールの
    研磨方法。 【数1】 ただし、VT は砥石の回転速度(m/分) 、 VF は砥石のロール軸方向相対移動速度VF (m/分)
    、 VR はロールの回転速度(m/分) 、 α= sin-1(X/r)、である。
  5. 【請求項5】請求項1、2または3のロールを冷間圧延
    のワークロールとして使用することを特徴とする光沢の
    優れた金属板の圧延方法。
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