JP2936044B2 - トリフルオロプロピレンカーボナート及びその製造法 - Google Patents

トリフルオロプロピレンカーボナート及びその製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電解質、高分子材料中間
体、機能性材料の中間体として有用な光学活性なトリフ
ルオロプロピレンカーボナートとその製造方法に関す
る。さらに詳しくは光学活性なトリフルオロプロピレン
オキシドと二酸化炭素との反応から得られる、光学活性
なトリフルオロプロピレンカーボナート、及びその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】環状カーボナートはリチウム電池の液体
電解質やポリエステル合成原料等として有用である。エ
チレンカーボナートやプロピレンカーボナートはリチウ
ム電池の電解質としてよく用いられるが、その使用温度
域や安定性に問題があった。トリフルオロプロピレンカ
ーボナートは、化学的に安定なトリフルオロメチル基を
もち、低い融点を持つプロピレンカーボナートと似た構
造をとるため良好な電解質性能を期待できる。またトリ
フルオロプロピレンーカーボナートを原料とするポリエ
ステルでは含フッ素ポリマー特有の撥水性等も期待でき
る。しかし、これまでこのようなトリフルオロプロピレ
ンカーボナートについては報告例がない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
に電解質、高分子材料中間体、機能性材料として有用な
光学活性なトリフルオロプロピレンカーボナート及びそ
の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは光学活性な
トリフルオロプロピレンカーボナートを得る方法につい
て鋭意検討した結果、光学活性なトリフルオロプロピレ
ンオキシドと二酸化炭素を特定の条件の下で反応させる
ことにより、光学活性を保持したトリフルオロプロピレ
ンカーボナートが得られることを見出し、本発明に到達
した。
【0005】すなわち、本発明は、下記化学式(2)
【0006】
【化3】
【0007】(式中、 * Cは光学活性な炭素を示す)で
表わされる光学活性なトリフルオロプロピレンオキシド
を二酸化炭素と、不活性有機溶媒中、アルカリ金属ハロ
ゲン化物を触媒として、−20℃〜50℃の範囲から選
択される温度で反応させることを特徴とする前記化学式
(2)の光学活性なトリフルオロプロピレンオキシドの
2位炭素上の立体配置を保持する下記化学式(1)で表
わされる光学活性なトリフルオロプロピレンカーボナー
トの製造方法
【0008】
【化4】
【0009】(式中、 * Cは光学活性な炭素を示す)
その要旨とするものである。
【0010】本発明のトリフルオロプロピレンカーボナ
ートは、式(1)に示すその化学構造式から明らかなよ
うに−CH−の炭素は不斉炭素であるから、原料として
光学活性なトリフルオロプロピレンオキシドを用いるこ
とにより、光学活性体であるトリフルオロプロピレンカ
ーボナートを製造することができる。本発明はこのよう
な光学活性体であるトリフルオロプロピレンカーボナー
の製造方法である。
【0011】本発明のトリフルオロプロピレンカーボナ
ートの構造はプロトンNMR(1H−NMR)、赤外吸
収スペクトル(IR)、13C−NMR、19F−NMR及
びガスクロマトグラフィー質量分析によって同定するこ
とができる。
【0012】 (1)1H−NMR(図1) 下記の各シグナルが認められることから、CH、CH2
の存在が確認できる。
【0013】 5.5ppm(CH) 4.9,4.7ppm(CH2) (2)13C−NMR(図2) 153ppm(CO) 129〜117ppm(CF3) 72ppm(CH) 65ppm(CH2) のシグナルが認められ、これによりCO,CF3基を有
する構造を有することがわかる。
【0014】 (3)19F−NMR(図3) −3.8ppm(CF3) のシグナルが認められ、これによりCF3基を有する構
造であることがわかる。
【0015】 (4)IR(図4) 1820,1400,1280,1190,1150,
1100, 1050,980cm~1 に吸収が認められ、これによりカルボキシル基の存在が
確認できる。
【0016】 (5)GC−MS(図5) 156(M+),87(156−CF3),69(C
3) なお原料に光学活性なトリフルオロプロピレンオキシド
【0017】
【数1】
【0018】を用いると、得られるカーボナートは施光
【0019】
【数2】
【0020】の光学活性体となる。
【0021】本発明のトリフルオロプロピレンカーボナ
ート(1)は対応するトリフルオロプロピレンオキシド
(2)を二酸化炭素雰囲気下、特定の条件下で反応させ
ることにより製造することができる。
【0022】本発明方法において原料として用いるトリ
フルオロプロピレンオキシドは、トリフルオロアセトン
を臭素化して得られたブロモトリフルオロアセトンを水
素化リチウムアルミニウムで還元してブロモトリフルオ
ロイソプロピルアルコールを得、これをさらに苛性ソー
ダで処理する方法、あるいはトリフルオロプロピレンを
微生物を用いて酸化する方法(特公昭61−14798
号公報、特開昭61−202697号公報参照)などに
より製造することができる。
【0023】また、二酸化炭素は炭酸ガスを用いること
ができ、1モルのトリフルオロプロピレンオキシドに対
し、1.5モル以上の大過剰を用いることが好ましい。
また、常圧下で用いても加圧下で用いても良い。
【0024】本発明方法は、有機溶媒中にて、光学活性
なトリフルオロプロピレンオキシドと二酸化炭素とを反
応させ、当該トリフルオロプロピレンカーボナートを製
造する方法とすることができる。その際、反応温度は用
いる有機溶媒の融点以上且つ沸点以下の範囲に適宜定め
ることができるが、原料となるトリフルオロプロピレン
オキシドの沸点が40℃であるので、通常−20℃〜5
0℃の範囲、特には0℃〜30℃の範囲に選択すると好
ましい。なお、溶媒中に溶解している反応生成物トリフ
ルオロプロピレンカーボナートは、反応終了後、抽出、
蒸留などの既知の方法により、単離することができる。
【0025】上記の有機溶媒中にて反応させる方法にお
いて、種々の有機溶媒或いはその混合物を用いることが
できるが、特には高温において化学的に安定な有機溶媒
が好適である。好適な有機溶媒として、極性溶媒である
N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチ
ルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等を挙げること
ができる。
【0026】更には、本発明の方法においては、光学活
性なトリフルオロプロピレンオキシド及び二酸化炭素に
加え、他の物質(触媒)を存在させることにより反応を
促進することができる。該触媒は、1モルのトリフルオ
ロプロピレンオキシドに対して0.05〜1.00モ
ル、特には0.05〜0.20モルを用いることが好ま
しい。本発明の方法において好適に使用できる触媒とし
て、塩素や臭素等のハロゲン原子を含む化合物であり、
特には陰イオンとしてハロゲン原子を、陽イオンとして
アルカリイオンを含む塩と見做せる化合物である臭化リ
チウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、塩化リチウ
ム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等、或いはそれら化
合物の無水和物を挙げることができる。なお、前記の好
適に使用できる触媒を混合して用いても良く、或いは反
応系において当該触媒を生成する化合物を混合して用い
ても良い。本発明の方法、特には触媒の存在下、有機溶
媒中にて反応させる方法において、原料トリフルオロプ
ロピレンオキシドにおける2位の炭素(不斉炭素)に起
因する光学活性を保持するトリフルオロプロピレンカー
ボナートを選択的且つ効率よく製造することができる。
【0027】
【実施例】参考例1 本実施例では原料トリフルオロプロピレンオキシドはト
リフルオロプロピレンを特公昭61−14798号に記
載する方法に従い、微生物で酸化し得られたものを蒸留
により精製し用いた。
【0028】乾燥した臭化リチウム(無水物)0.65
g(7.5mmol)をナスフラスコに入れ、炭酸ガス
で置換した後、乾燥したN−メチルピロリドン12.5
mlを加えて溶解した。得られた溶液にトリフルオロプ
ロピレンオキシド4.3ml(50mmol)を加え
て、炭酸ガス雰囲気下、室温(約25℃)で24時間撹
拌した。その後、反応物を含む液にエーテル80mlを
加えて希釈し、水20mlで8回洗浄した。無水硫酸ナ
トリウムを加えて乾燥した後、当該溶液中のエーテルを
留去し、得られる残留物を減圧蒸留し、100℃〜10
5℃/29mmHgの留分を回収した。この留分は上記
する分析を行ない目的とするトリフルオロプロピレンカ
ーボナートであることが分かった。精製物として回収さ
れた留分は3.85gであり、原料トリフルオロプロピ
レンオキシドに対する収率は49%にあたる。
【0029】実施例1 本実施例では原料トリフルオロプロピレンオキシドとし
て、光学活性なもの
【0030】
【数3】
【0031】を用いた。上記の参考例1に従い反応さ
せ、得られたトリフルオロプロピレンカーボナートを減
圧蒸留し、回収した。その施光度は
【0032】
【数4】
【0033】と測定され、光学活性体であることが分か
った。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明により電解
質、高分子材料中間体、撥水、撥油性など機能性材料と
して有用な光学活性なトリフルオロプロピレンカーボナ
ートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】トリフルオロプロピレンカーボナートの1H−
NMRスペクトル、
【図2】同13C−NMRスペクトル、
【図3】同19F−NMRスペクトル、
【図4】同IRスペクトル、
【図5】同ガスクロマトグラフィースペクトル及び前記
スペクトル中のピーク1(トリフルオロプロピレンカー
ボナート)の質量分析スペクトル。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−22579(JP,A) 特開 昭63−68583(JP,A) 特開 昭56−128778(JP,A) 特開 平5−202022(JP,A) 特公 昭61−14798(JP,B2) Tetrahedron Vol. 40,No.9.p.1541−1599,1989 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07D 317/36 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記化学式(2)【化1】 (式中、*Cは光学活性な炭素を示す)で表わされる光
    学活性なトリフルオロプロピレンオキシドを二酸化炭素
    、不活性有機溶媒中、アルカリ金属ハロゲン化物を触
    媒として、−20℃〜50℃の範囲から選択される温度
    反応させることを特徴とする前記化学式(2)の光学
    活性なトリフルオロプロピレンオキシドの2位炭素上の
    立体配置を保持する下記化学式(1)で表わされる光学
    活性なトリフルオロプロピレンカーボナートの製造方
    法。【化2】 (式中、*Cは光学活性な炭素を示す)
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