JP2927070B2 - α−L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステルの製造方法 - Google Patents
α−L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステルの製造方法Info
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Description
L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステ
ル(以下α−APMと略記する)の製造方法に関し、α
−APMの酸付加塩を塩基で中和してα−APMを製造
する方法における著しく改良された方法に関するもので
ある。本発明のα−APMは、蔗糖の約200倍の甘味
を呈するペプチド系の甘味料であり、その極めて良質な
甘味と低カロリーであることによって、近年ダイエット
甘味料として重用され、その全世界における需要は19
95年までに1万トンを越えるであろうと予測されてい
る。
ては、例えば次のような方法が知られている。(1)N
−置換アスパラギン酸無水物とフェニルアラニンメチル
エステルを有機溶媒中で結合させてから、常法により置
換基を脱離する方法(米国特許3,786,039)、
(2)α−L−アスパルチル−L−フェニルアラニンを
水、メタノール、塩酸からなる混合溶媒中でメチルエス
テル化せしめ、α−APMの塩酸塩として取得した後、
これを中和して、α−APMを得る方法(特開昭53−
82752)、及び(3)N−置換アスパラギン酸とフ
ェニルアラニンメチルエステルを酵素の存在下に縮合さ
せ、次いで置換基を脱離する方法(特開昭55−135
595)等である。
おいては必然的に副生するβ−異性体(β−L−アスパ
ルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル)を始め
とする不純物の選択的除去手段として、(4)不純物を
含むα−APMをハロゲン化水素酸と接触させ、次いで
固液分離し、α−APMをそのハロゲン化水素酸塩とし
て分離する精製法がある。
Mを工業規模で生産することを考えた場合、製造コスト
の観点から、現在では化学的方法が主流であるが、この
場合、上記(2)のように、エステル化手段として塩酸
塩を経由するか、または(4)のようにα−APM生成
後に、精製手段として塩酸塩等のハロゲン化水素酸塩を
経由することが多い。塩酸塩を始めとするα−APMの
ハロゲン化水素酸塩より、α−APMを得るためには、
水性溶媒中にα−APMのハロゲン化水素酸塩を溶解も
しくは懸濁せしめ、これに塩基として水酸化ナトリウム
や炭酸水素ナトリウムあるいはアンモニアなどを水溶液
で添加して中和を行うのが通常の方法である。
者等は、これらα−APMの酸付加塩の中和に際し、特
に工業操作としてリッタースケール以上の液量を扱う必
要がある場合、以下のような重大な問題点があることを
見いだした。
に、塩基を連続的にα−APMの等電点まで滴下した場
合、途中でα−APMの析出が急激に生じ、この結果、
系内の撹拌が不能な状態となり、最悪のケースとしては
撹拌機が停止してしまうことが明らかになった。実験室
に於て扱うような高々100ml程度の液量であれば、
実験者がスパチュラ等の器具を用いて、析出固相を突き
崩して流動状態を回復すれば良いのであるが、一般にベ
ンチプラントと称されるようなリッタースケール以上の
液量を扱う必要がある場合、またさらにパイロットプラ
ント、コマーシャルプラントの大規模な実施にあたっ
て、こうした手段では問題を解決することは困難であ
る。
し、希薄な濃度条件下で中和処理を行うことが考えられ
るが、これは装置の容積効率が著しく低下し、また収率
も大幅に下がるので、優れた方法とは云い難い。また、
塩基水溶液の滴下を、非常に時間をかけてゆっくり行う
ことも、液の流動性確保の点で有効ではあるが、生産性
の観点から非効率である。さらに、α−APMの析出が
開始されるpH領域、即ちpH=2.5前後で中和剤の
滴下を一時中断し、所謂結晶の熟成を図ることも考えら
れる(特開昭63−145298)が、この方法もα−
APM(またはその塩酸塩等の酸付加塩)の初期濃度が
厳密に一定していない限り、熟成に適当なpH領域が大
幅に変動してしまうという重大な欠点がある。そして、
前工程たるα−APMの酸付加塩の晶析の微妙な条件に
より、分離された湿結晶(酸付加塩)中のα−APM含
量は毎回変動するのが常であり、工業生産でよく用いら
れる液量管理の溶解方式では、初期濃度を一定にするこ
とは困難である。そこでこの事態を回避するには、毎回
分析を行って必要に応じ結晶または水を追添するという
繁雑な濃度管理を行うか、熟練した監視者を専従せしめ
て、毎回適切な熟成pHを判定させる必要がある。加う
るに、上述の方式のいずれかにより、操作性の問題を回
避し得たとしても、その結果得られたα−APM結晶の
固液分離性は極めて不良であり、後工程たる漉過及び乾
燥工程に於て、所要設備とエネルギーの著しい増大をも
たらす。
なα−APMの酸付加塩の中和工程における問題点を解
決すべく、鋭意検討を重ねた結果、次のような新知見を
得るに至った。
塩を濃度が3%以上となるように水性媒体に溶解または
懸濁し、pH3以下の酸性液として保持する。一方、B
液としてpH3以上のα−APMを含むまたは含まない
液を調製して、撹拌しながらこれにA液を徐々に混合
し、必要により塩基物質を添加しつつ混合液のpHを3
以上に保って、α−APMの結晶を析出せしめることに
より、従来よりも高収率で、上述の操作性及び漉過性の
問題を些かの熟練を要することもなく、克服し得ること
を見いだしたのである。
業生産の実プロセスに適用することによって、所要設備
やエネルギー、作業要員の削減を含む大幅な工程合理化
を達成して、遂に本発明を完成させるに至った。
塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩または燐酸塩などの鉱酸
塩であるが、特に塩酸塩に用いられることが多い。
塩は水性溶液または懸濁液として中和に供される。その
際、ことさら酸付加塩結晶が全量溶解している必要はな
いし、溶媒としては水または水と混和する有機溶剤と水
の混合溶媒が適当である。使用する溶媒の量は、α−A
PMの酸付加塩の濃度が3%以上となるように設定す
る。即ち、これより低濃度となると、収率及び装置容積
当たりの生産性が低下し、中和後析出した結晶の漉過性
も急激に悪くなるので好ましくない。濃度上限について
特に制限はないが、ポンプ等送液に際しての機器仕様、
或いは操作性の観点より適宜定めれば良いが、通常の操
作範囲としては3〜25%が適当である。
で、α−APM酸付加塩の溶液または懸濁液はこの間保
持されていなければならない。しかし低pH条件下で、
水性溶媒に溶存したα−APMは、加水分解反応によっ
てα−L−アスパルチル−L−フェニルアラニン(以
下、α−APと略記する)を生成する。こうした分解反
応は、収率や品質を低下させるので、生産上好ましいこ
とではない。この分解は特に高温で起こりやすいので、
保持温度は50℃以下にすることが必要である。より好
ましくは40℃以下とする。
工程より分離されたままの湿潤状態にある結晶を用いる
場合、付着の母液中の過剰の酸により、酸付加塩溶解液
又は懸濁液は一層低pHとなって分解が促進される。こ
れを防止するためには部分的に中和して保持することが
望ましい。その際、適切なpH範囲としては2ないし3
であるが、望ましくは2.3から2.8とするのが良
い。部分中和で操作に支障をきたさない程度のα−AP
Mが析出することは差し支えないが、pHが3以上にな
ると急激に結晶の析出が生じるので、この範囲を越えて
しまわないよう留意すべきである。
などの水酸化アルカリ、炭酸ナトリウムなどの炭酸また
は重炭酸アルカリ、アンモニア及びその他の有機アミン
が使用できるが、中和時のα−APMの分解抑制及び価
格や扱い易さの点から、炭酸ナトリウムまたはアンモニ
アが水溶液として多用される。
だってα−APMを溶解もしくは懸濁状態で含んでいて
も良いし、含んでいなくとも良い。例えば、本発明の方
法によって得られたα−APM結晶の懸濁液を全量分離
せずに一部次回の混合中和に用いることも出来るし、分
離した母液のみを再度使用してもよい。ただし、中和に
よるα−APM結晶の急激な析出を緩和するためには、
種晶となるようにあらかじめα−APM結晶か存在して
いる方が、より好適である。
ない液を用いる場合、分離性改善及び収率向上の為に、
混合中和終了時の濃度がα−APMとして3%を下回ら
ぬよう設定すべきである。また、この液はあらかじめ中
和に要する塩基性物質を含んでいても良いが、高pH条
件では水性溶媒に溶存したα−APMは、分子内環化反
応によってジケトピペラジン化合物(以下DKPと略記
する)を生成し易い。もし、混合前には液中にα−AP
Mが存在していなかったとしても、混合開始直後の状況
を勘案すると、塩基性物質は酸性液の添加速度に見合っ
た量を徐々に補給する方法を採ることが望ましい。
局所的な分布が出来るだけ小さくなるようにすべきであ
る。本発明で云う撹拌とは、撹拌翼やポンプ循環、ある
いは気泡吹き込みによる強制流動を意味し、混合中和の
開始から終了に至るまで、少なくとも系内に存在する結
晶が液中に浮遊懸濁して、所謂スラリーを形成するのに
充分な強度を必要とする。
限は上述の分解防止の観点より6とするのが好ましい。
更に最終的なpHとしては、4ないし6にすると良い。
液温は高温下での分解抑制と収率向上の点から、40℃
以下に保持する。下限については、溶媒が氷結しない程
度であれば特に定める必要はないが、通常は30ないし
5℃の範囲に設定する。α−APM酸付加塩の溶液また
は懸濁液の添加速度は、実施するスケール(液量)によ
って異なるが、急激な中和、結晶析出に伴い操作に支障
をきたさない程度であれば良い。
施することも可能であるが、複数の容器を連続的に連ね
て、段階的に混合、中和及び必要により冷却を行うこと
も出来る。このような設備を用いた場合、α−APMの
析出負荷をいくつかの容器に分散できるので、操作性改
善の観点から非常に有効である。
として、特にリッタースケール以上でα−APM酸付加
塩を塩基によって中和しα−APMを製造する方法にお
いて、中和時の液の流動性などの操作性も著しく改善さ
れ、更に得られるα−APM結晶の固液分離性や収率が
大幅に向上し、工程が簡略化されるので、実用上価値の
高い方法である。
する。なお、実施例中のα−APM結晶の漉過性評価試
験は以下の方法によった。
ー1Lをサンプリングし、トップフィード方式の吸引漉
過器(リーフテスター)で漉過を行った。漉過の差圧は
70mmHgで、漉過期間中一定となるよう調整した。
漉過の開始から一定時間毎に漉液量V[cm3]を測定
し、漉液量を横軸に、漉過の経過時間θ[sec]を漉
液量で割った値θ/Vを縦軸にとり直線の傾きK[se
c/ml2]を最少2乗法で求めた。スラリー中の結晶
総量[g]をスラリー中の全液体総量[cm3]で割っ
た値をC′とし、以下の式に代入した。なお漉過面積A
は93[cm3]、漉液の粘度μは0.0135[g/
cm・sec]であった。このようにして算出されたケ
ーキ比抵抗αは、漉過しやすさの目安となり、その値が
小さいほど漉過は容易である。
m2]=△P[mmHg]×1333.22 A=漉過面積[cm2] C′=スラリー中の液体成分単位体積当たりの結晶重量
[g/cm3]=乾燥ケーキ重量[g]/(湿ケーキ重
量[g]−乾燥ケーキ重量[g]+最終漉液量[c
m3]) とする。
2%含有)を水1400mlに28℃で溶解し、16%
炭酸ナトリウムでpH2.5に調整してα−APM塩酸
塩溶解液を調製した。この液を、3.5℃の冷水を循環
させた2.5Lのジャケット付セパラブルフラスコ内
で、3.5℃の水500mlにα−APMを25g懸濁
した溶液に、翼径10cm錨型の撹拌羽根で200rp
m撹拌下一定速度で3時間をかけて滴下した。なおこの
間、溶液の温度は3.5〜5.0℃に、pHは16%炭
酸ナトリウムで常に5.0となるように調節した。この
間急激な結晶の析出は認められず、スラリーは良好な流
動性を保った。滴下終了後、得られたスラリーのリーフ
テストを行った結果9.8×109[m/kg]と良好
な値であった。乾燥後収量85.3g。収率90.9
%。
Lに溶解し(α−APM濃度で6g/dl)、10%炭
酸ナトリウムでpH2.5に調整してα−APM塩酸塩
溶解液を調製した。この液を、5℃の冷媒を流したジャ
ケット付フラスコ(撹拌200rpm)に15ml/分
の一定速度で滴下した。フラスコには実施例1の方法で
調製したスラリーをpH4.8に調整して受け液とし
た。なお滴下操作中、フラスコ中の溶液量は常に5Lに
なるようオーバーフローさせ、pHは10%炭酸ナトリ
ウムを1.25ml/分で滴下し常に4.8となるよう
に調節した。また溶液の濃度は、5℃のα−APM溶液
(α−APM濃度0.6g/dl)を2.7〜3.1m
l/分で加えて常にα−APM濃度で4.8g/dlと
なるよう調節した。この連続操作を24時間行ったが、
この間急激な結晶の析出は認められず、スラリーは良好
な流動性を保った。オーバーフローしたスラリーは氷冷
した容器に受けて撹拌を続けた。最後の1時間にオーバ
ーフローして容器に受けたスラリーのリーフテストを行
った結果3.0×1010[m/kg]であった。
含有)を30℃の温水を循環した2.5Lのジャケット
付セパラブルフラスコ内で水1900mlに28℃で溶
解し、α−APM塩酸塩溶解液を調製した。この溶液を
28℃に保ったまま16%炭酸ナトリウムを一定速度
(7ml/分)で滴下した。pH5までの中和終了予定
時間は30分である。撹拌は翼径10cm錨型の撹拌羽
根を用い70rpmで行っていたが、結晶析出(pH
3.0、16分後)にともない液の流動性がなくなり、
実験開始から21分後撹拌が停止した。フラスコ内は固
まっていた。
2%含有)を30℃の温水を循環した2.5Lのジャケ
ット付セパラブルフラスコ内で水1900mlに28℃
で溶解し、α−APM塩酸塩溶解液を調製した。この溶
液を28℃に保ったまま16%炭酸ナトリウムを一定速
度で6時間かけてpH5となるまで滴下した(21.7
ml/時)。なお、撹拌は翼径10cm錨型の撹拌羽根
を用い200rpmで行っていたが、結晶析出(pH
3.4)にともないフラスコ上部の流動性がなくなり、
操作に支障をきたしたので、途中で撹拌速度を300r
pmに変更した。滴下終了後、3時間で5℃まで冷却を
行い、得られたスラリーのリーフテストを行った結果
1.0×1011[m/kg]であった。乾燥後収量8
3.9g。収率86%。
2%含有)を30℃の温水を循環した2.5Lのジャケ
ット付セパラブルフラスコ内で水1900mlに28℃
で溶解し、α−APM塩酸塩溶解液を調製した。この溶
液を28℃に保ったまま16%炭酸ナトリウムを一定速
度で4時間40分かけてpH5となるまで滴下した(1
9.6ml/時)。なお、撹拌は翼径8cm錨型の撹拌
羽根を用い200rpmで行った。結晶析出後(pH
3.8)もフラスコ内は流動性を保った。滴下終了後、
2時間で5℃まで冷却を行い、得られたスラリーのリー
フテストを行った結果1.08×1011[m/kg]
であった。乾燥後収量52.37g。収率84%。
Claims (7)
- 【請求項1】 α−L−アスパルチル−L−フェニルア
ラニンメチルエステルの酸付加塩を塩基で中和してα−
L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステ
ルを製造する方法において、(イ)α−L−アスパルチ
ル−L−フェニルアラニンメチルエステル酸付加物の濃
度が3%以上となるよう水性媒体に溶解または懸濁し、
液温50℃以下で塩基を加えあるいは加えることなくp
H3以下に保持し、(ロ)この液をα−L−アスパルチ
ル−L−フェニルアラニンメチルエステルを含むまたは
含まない水性溶媒に撹拌下に徐々に混合しつつ、(ハ)
混合液の液温を40℃以下、pHを3以上に保って、α
−L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエス
テルの結晶を析出せしめることを特徴とするα−L−ア
スパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステルの製
造方法。 - 【請求項2】 α−L−アスパルチル−L−フェニルア
ラニンメチルエステル酸付加塩の濃度が3%以上となる
よう水性媒体に溶解または懸濁し、塩基を加えpHを2
ないし3の範囲に保持する請求項1記載の方法。 - 【請求項3】 2液の混合の際に、同時に塩基をも添加
して、混合液のpHを3ないし6の範囲に保持する請求
項1ないし請求項2記載の方法。 - 【請求項4】 混合液の最終pHを4ないし6の範囲と
する請求項1ないし請求項3記載の方法。 - 【請求項5】 混合液を混合時、または混合後に冷却し
て30℃以下とする請求項1項ないし請求項4記載の方
法。 - 【請求項6】 2つ以上の混合容器を多段に連ねて設置
し、混合、中和、冷却あるいはそのどれかを段階的に実
施する請求項1ないし請求項5記載の方法。 - 【請求項7】 α−L−アスパルチル−L−フェニルア
ラニンメチルエステル酸付加塩が塩酸塩である請求項1
ないし請求項6記載の方法。
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