JP2925657B2 - 合成カプサイシン類及びそのマイクロカプセル剤の同一浴製造法 - Google Patents

合成カプサイシン類及びそのマイクロカプセル剤の同一浴製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 カプサイシン類はトウガラシの辛味成分として知ら
れ、貼り薬の成分としての使用、あるいはその強烈な辛
味や刺激性を利用してネズミ類およびその他動物類の食
害や咬害を防止するための忌避剤としての使用、更には
子供達が口に入れるべきでない対象物に塗布しておき、
嘗めたり噛んだりすることを防止する目的の使用等が知
られている。しかしその特性からしてカプサイシン類は
人体とりわけ粘膜に対しての強い刺激性及び辛味性を有
し、時には微量でも接触したり吸入したりするとかぶれ
やくしゃみ或いは眼に入った場合は一時的に盲目状態に
陥ることもあり、また、人体或いは衣類に付着するとい
つまでも強烈な辛味が残り、極めて取り扱い難いもので
ある。本発明はこのカプサイシン類を密閉した状態で合
成し、そのまま刺激性の少ないマイクロカプセル剤にし
たものであり、安全にかつ容易に取り扱える形態になっ
た為、例えば種々の塗料や樹脂のなかに混ぜたりして使
用することがより容易になり、また、マイクロカプセル
剤の特長である長期間に亘る効力の持続性も付与される
ことから、電力、通信、信号等のケーブル被覆材、包装
資材、機器類、建築物の構造物等や樹木等に処理するこ
とにより、動物類による食害や咬害防止剤として、ま
た、持続性がより付与された貼り薬等、いろいろな分野
での使用が期待されることから産業上に果たす役割は大
きい。
〔従来の技術〕
上述のようにカプサイシン類は強烈な刺激性や辛味を
有する為、製造にあたっては合成中はもとより、合成後
の取出しや計量、包装等のあらゆる取り扱い場面に極め
て困難をもたらし、その上、種々の製品に加工する際に
も細心の注意を必要とした。例えばカプサイシン類の合
成は完全密閉式で行っていたということが文献に記載さ
れている(上田博夫:香料NO.129,41〜46,昭和55年10
月)。
〔発明が解決しようとする課題〕
カプサイシン類は貼り薬やネズミ等の動物の忌避成分
として有用性が認められていたものの、その強刺激性等
のために取り扱いに極めて慎重な操作が必要とされるた
め、工業的に生産するに当たっては特に安全衛生面から
のかなりの設備が必要とされ、操作的にもかなり繁雑に
ならざるをえなかった。このような点を鑑み本発明は刺
激性の少ない原料から発して、製造に係わる作業者に強
刺激性のカプサイシン類に接触する機械を与えないで製
造し、製品として取り出す時には既に刺激性の少ない製
剤形態にしてしまうことを課題とした。
〔課題を解決するための手段〕
発明者等は上述の課題を解決すべく鋭意研究した結
果、刺激性の少ない原料を用いてカプサイシン類を製造
し、そのままマイクロカプセル化に必要な原材料をこの
反応器に投入して強刺激性のカプサイシン類原体に直接
触れることなく、低刺激性のカプサイシン類のマイクロ
カプセル剤を一浴にて製造することに成功し、本発明に
達した。
即ち、式(I) (式中、RはC4〜C12のアルキル基、アルケニル基また
はアルキニル基を表す。) で示されるカプサイシン類を、 式(II)と (式中、RはC4〜C12のアルキル基、アルケニル基また
はアルキニル基を、Halはハロゲン原子を表す。)で示
される化合物をバニリルアミン或いはその塩を溶媒中、
必要に応じて酸結合剤の存在下で縮合させて得た後、そ
のままカプセル化剤等のマイクロカプセル化に必要な原
材料をその反応浴中に投入して水中油型のマイクロカプ
セル剤を製造すると製造作業者にとって安全でかつ極め
て取り扱いの容易なカプサイシン類のマイクロカプセル
剤を得ることができる。
縮合反応に用いる溶媒としては水やベンゼン、トルエ
ン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタ
ン、石油ベンジン等の脂肪族炭化水素、クロロホルム、
ジクロルメタン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエー
テル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル
類、およびフタル酸エステル、アジピン酸エステル、リ
ン酸エステル、マレイン酸エステル等の主に樹脂類の可
塑剤として使用される溶剤等が挙げられ、これらは2種
以上(例えば水とベンゼン等)の混合溶媒として用いる
こともできる。酸結合剤は式(II)の化合物に対してバ
ニリルアミンを2当量以上使用する際には必要としない
が、バニリルアミンを当量使用するときには1当量以上
の酸結合剤を、バニリルアミンの塩酸塩、臭化水素酸塩
或いはその他の塩を使用するときに塩をはずし、かつ式
(II)の化合物と縮合させ、反応を完結させるために塩
に対し2当量以上の1種又は2種以上の酸結合剤を必要
とする。酸結合剤としては塩基として例えば水酸化アル
カリ金属(NaOH,KOH等)、水酸化アルカリ土類金属(Ca
(OH)、Mg(OH)等)、水素化アルカリ金属(NaH
等)、アルカリ金属アルコラート(NaOC2H5等)、アル
カリ金属酸化物(Na2O、K2O等)、アルカリ金属炭酸塩
(K2CO3、Na2CO3等)、ナトリウムアミド、トリエチル
アミン、N,N−ジアルキルアニリン、ピリジン等の脂肪
族および芳香族第3級アミン等が挙げられるし、また、
酸化銀の使用もできる。更に水と水に不溶の溶媒とを混
ぜて2相系で反応を行う場合はテトラ−n−ブチルアン
モニウムやトリエチルベンジルアンモニウムクロライド
等で代表される相関移動触媒を用いることも可能であ
る。
上記縮合反応は通常室温〜溶媒の沸点の温度で行うこ
とができる。
また、式の(II)化合物で示される原料は試薬として
購入可能なものもあるが、 式 (式中、RはC4〜C12のアルキル基、アルケニル基また
はアルキニル基を表す。)で示される化合物を所望によ
り前記のような縮合溶媒中例えば過剰のチオニルクロラ
イド三塩化リン、三臭化リンなどと反応させることによ
り容易に得ることができる。したがって、本願発明は式
(III)の化合物を出発物質にして式(II)の化合物を
製造し、次いで縮合反応を行い式(I)の化合物を製造
し、最後にマイクロカプセル化する三つの工程を一浴で
行うこともできる。
本発明の式(I)のカプサイシン類としては例えばN
−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−8−メ
チルノン−トランス−6−エナミド(カプサイン)、N
−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−8−メ
チルノナナミド(ジヒドロカプサイシン)、N−(4−
ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−7−メチルオク
タナミド(ノルジヒドロカプサイシン)、N−(4−ヒ
ドロキシ−3−メトキシベンジル)−9−メチルデカナ
ミド(ホモジヒドロカプサイシン)、N−(4−ヒドロ
キシ−3−メトキシベンジル)−9−メチルデク−トラ
ンス−7−エナミド(ホモカプサイシン)、N−(4−
ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−ノナナミド等を
挙げることができる。こうして溶媒中で粗製のカプサイ
シン類を得た後、その反応器中でそのままマイクロカプ
セル化を行うが、必要に応じてはその反応器に水と不溶
若しくは難溶性の溶媒を加えてしばらく撹拌した後、水
層を除去する精製操作を加えた後にマイクロカプセル化
を行うか、または、カプセル化の前に反応で使用した溶
媒を減圧蒸留等で留去して得た残渣をマイクロカプセル
化して刺激性の強いカプサイシン類をカプセル内に封じ
込めた刺激性のほとんどないカプサイシン類のマイクロ
カプセル剤を得る。
本発明に使用する反応容器は合成からマイクロカプセ
ル化まで一浴で行うために回転数が低速から高速まで可
変の撹拌機を有し、ジャケット、投げ込みヒーター等で
内容物を加温でき、底部にストッパー付きの排出口を有
する必要がある。また、場合によっては減圧蒸留が必要
となるため減圧蒸留可能の反応浴であれば好都合であ
る。
カプサイシン原体の製造の際、水より比重の大きい溶
媒を使用しかつ、後処理で水洗等を行う時、目的物は下
層に来る。その為、排出口に接続して目的物の貯蔵タン
クを置くことが望まれる。そして水層を排出した後、目
的物を貯蔵タンクから反応釜に再び戻してマイクロカプ
セル化工程を行うこともある。もちろんこれら一連の操
作は密閉系で行われる。このカプセル化においてはほと
んどのカプサイシン類を効率的にカプセル内に封入する
ために、カプセル化条件を十分に検討する必要があり、
また、1段のカプセル化だけでなく場合によっては多段
のカプセル化法によって製造することもできる。また、
マイクロカプセルの平均粒径はカプセル化条件等を検討
して用途に最適な径を選択すればよいが、一般的に1〜
150μm程度が製造しやすい。本発明のマイクロカプセ
ル化は水に不溶性または難溶性のカプサイシン類を水中
に分散させてその分散粒子の表面でカプサイシン類を含
む芯物質および水に不溶の高分子膜を以下に説明する界
面重合法やIn−situ重合法等の水中油型の重合法で形成
せしめる方法によるが、水中油型の重合法であればこの
2法に限定される訳ではない。
界面重合法の場合について説明する。
合成されたカプサイシン類を含む疎水性芯物質に油溶
性膜剤Aを溶解し、これに水および分酸剤等の補助物質
を加えて所定の撹拌条件で撹拌し、水相に疎水性芯物質
と油溶性膜剤Aの溶解液が所望する粒子径で分散した系
を作成する。この系を撹拌しながら水溶性膜剤Bの水溶
液を加えて分散粒子の界面で両膜剤を反応させて芯物質
と水の双方に不溶の高分子膜を形成せしめて疎水性芯物
質を内包するマイクロカプセル剤を得る(1段カプセル
化法)。より遊離のカプサイシン類の少ないマイクロカ
プセル剤を得るために次のような多段のカプセル化を行
うこともできる。つまり、1度マイクロカプセル化した
系に水に相溶しにくく、カプサイシン類の溶解性の高い
溶剤で油溶性膜剤Cを溶解したものをそのまま或いは予
め水に分散させて加え、所定の撹拌条件及び温度条件で
水溶性膜剤Dを反応させて分散粒子の界面で再び高分子
膜を形成せしめる(2段カプセル化法)。この操作を多
段に繰り返すことにより遊離カプサイシン類を効率よく
芯物質となる溶剤中に取り込み、遊離カプサイシンの極
めて少ないマイクロカプセルを製造する(多段カプセル
化法)。ここで使用する油浴性膜剤AはCと、また、水
溶性膜剤BはDと同じ物でも異なった物でもよく、例え
ば以下のものが挙げられる。
油溶性膜剤としては、多価イソシアネート、多価カル
ボン酸クロライド、多価スルホン酸クロライド等、例え
ばヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサ
メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネー
ト、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシア
ネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイ
ソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネー
ト、セバシン酸ジクロライド、ジアピン酸ジクロライ
ド、アゼライン酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロラ
イド、トリメシン酸ジクロライド、ベンゼンスルホニル
ジクロライド等、一方、水溶性膜材としては多価アミ
ン、多価ヒドロキシ化合物等、例えばエチレンジアミ
ン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、ジ
エチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ピペラ
ジン、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサン
ジオール、ポリエチレングリコール等がある。
In situ重合法について説明する。
In situ重合法は膜材を有効成分を含む疎水性芯物質
が水相のどちらか一方に溶解しておき、疎水性芯物質を
水相に分散させ、分散粒子の界面で芯物質と水相の両方
に不溶の高分子膜を形成せしめてマイクロカプセルを製
造する方法であり、界面重合法とは異なる。本発明の方
法の場合、この重合法で一旦水相に合成されたカプサイ
シン類のマイクロカプセルの懸濁液を作成した後(1段
カプセル化法)、この系にカプサイシン類の溶解性が
高く、水に相溶しにくいに溶剤で油溶性膜材Eを溶解し
た疎水性芯物質を分散させるか、或いはカプサイシン
類の溶解性が高く、水に相溶しにくい溶剤を分散させた
後、この系に水溶性膜材Fをそのまま又は水に溶かして
添加して分散粒子の界面で芯物質と水相の両方に不溶の
高分子膜を形成せしめる(2段カプセル化法)。この操
作を多段に繰り返すことにより遊離有効成分を効率よく
芯物質となる溶剤中に取り込み、遊離カプサイシン類の
少ないマイクロカプセルを製造する(多段カプセル化
法)。膜材E、Fは例えば以下のものが挙げられる。油
溶性膜材Eとしてはアクリル酸エステル、メタクリン酸
エステル、酢酸ビニル、スチレン、ジビニルベンゼン、
エチレンジメタクリレート等のラジカル重合によるもの
を用いるのが、また、水溶性膜材Fとしては尿素/ホル
マリン、メラミン/ホルマリン、フェノール/ホルマリ
ン等の重付加反応により、カプセル膜を形成するのが好
ましい。
本発明の方法に使用する膜材の種類および使用量は芯
物質の種類、マイクロカプセル剤の使用目的によって選
択される。また、本発明の方法は界面重合法とIn situ
重合法を組み合わせて多段にカプセル化してもよい。ま
た、用途によって粉体等の固体状のマイクロカプセル剤
が要望される時は製造された懸濁状のマイクロカプセル
剤をスプレードライヤーや多段式熱風乾燥機等で乾燥
し、水分や、揮発しやすい溶剤をカプセル内に内包して
いる場合はその溶剤を除去してドライ化製剤を得ること
もできる。
次にマイクロカプセル化をするときに使用する補助剤
としては必須のものとして疎水性芯物質を水相に分散さ
せる為の分散剤があるが、具体的にはアラビアガム、ア
ルギン酸ソーダ、ローカストビーンガム、ザンタンサン
ガム等の天然多糖類、カルボキシメチルセルロース、メ
チルセルロース等の半合成多糖類、ポリビニルアルコー
ル等の合成高分子等を単独または二種以上をマイクロカ
プセル化を行った時点での懸濁組成物に対して通常は0.
01〜10.0%好ましくは0.1〜3.0%を使用する。また、必
要に応じてポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリ
オキシエチレンアルキルアリルエーテル、アルキルフェ
ニル縮合物エーテル、ポリオキシエチレンアルキルエス
テル、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ポ
リオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチンポ
リオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチ
レン植物油エーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリ
オキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の界面活性
剤の1種または2種以上を通常は10%以下好ましくは3
%以下を用いる。また、溶剤でカプサイシン類を溶解し
てカプセルの芯物質とする場合は例えばブチルエーテ
ル、エチルビニルエーテル、等のエーテル類、ヘプタ
ン、キシレン等の脂肪族、芳香族の炭化水素類、ジクロ
ロメタン、トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素
類、マシン油等の鉱油類、植物油類、フタル酸エステ
ル、アジピン酸エステル、リン酸エステル、マレイン酸
エステル、低分子エポキシ化合物等の主に樹脂類の可塑
剤として使用される溶剤等の1種または2種以上の溶剤
が使用される。その他の補助剤としては防黴剤、比重調
整剤や有効成分によっては分解防止剤やpH調整剤等を芯
物質及び/又は水相中に添加することができる。
〔発明の効果〕
本発明でカプサイシン類を製造した結果、微量でも強
い刺激性を有するカプサイシン類が刺激性のほとんどな
い原材料から合成され、その同一浴中で遊離のカプサイ
シン類の極めて少ないマイクロカプセル剤を製造するこ
とができ、製造に携わる作業者が直接触れることなく、
刺激性が少なく安全で取り扱い易い製剤を得ることがで
きた。
〔実施例〕
以下実施例により本発明を説明する(部は重量部を表
す)。
実施例1 4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジルアミン塩酸塩
58.5部、ベンゼン200部および200部を回転数が可変のス
リーワンモーターと底部にストッパーの付いた排出口を
有する反応器に入れ撹拌する。ここに炭酸カリウム58部
を加え、更にペラルゴン酸クロライド54部を室温で滴下
する。このまま、3時間撹拌を続けると反応は終了す
る。撹拌を停止し30分静置した後、下層の水層を底部よ
り排出する。次に減圧蒸留して溶媒をほとんど完全に除
去するとN−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジ
ル)−ノナナミドの組成物を得ることができる。極少量
を採取し、N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジ
ル)−ノナナミドの純度を高速液体クロマトグラフィー
(以下、HPLCと記す)で定量したところ92.1%であり、
このものの皮膚とりわけ粘膜に対する刺激性は強烈であ
った。この反応器中にジオクチルフタレート85.6部、ミ
リオネート3040(日本ポリウレタン社製)25.7部、及び
ニューカルゲンD−230(竹本油脂社製)5.1部を入れ撹
拌し、更にアラビアガムの1%水溶液284部を加え、撹
拌後650rpmで10分間撹拌し、分散系を得る。次に撹拌を
250rpmに下げて、エチレンジアミンおよびジエチレント
リアミンの各4.3部に水を加えて42.8部にした水溶液を
この系に徐々に滴下し、滴下後に液温を60℃にして2時
間反応させ、懸濁状の1段目のマイクロカプセル剤を得
た{4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−ノナナ
ミドのマイクロカプセル外の遊離率(以下、遊離成分率
と記す)は1.5%であった}。目的によってはこのまま
の剤でも刺激性はかなり少なくなり使用可能であるが、
更に遊離成分率を少なくし、刺激性を軽減するために次
のようにして2段目のマイクロカプセル化を行った。即
ち別に用意した同タイプの反応器にジオクチルフタレー
ト85.6部、ミリオネート3040 17.1部及びニューカルゲ
ンD−230 3.4部の混合液を調整する。これにアラビア
ガムの1%水溶液171部を加え、回転数650rpmで10分間
撹拌し、分散体を得る。この分散体を懸濁状の一段目の
マイクロカプセル剤に加えて250rpmで15分間撹拌する。
更にエチレンジアミン、ジエチレントリアミン各4.3部
に水を加えて42.8部にした溶液を徐々に滴下し、60℃で
2時間反応させ2段目のカプセル化を行い、9%のN−
(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−ノナナミ
ドを含む懸濁状マイクロカプセル製剤850部を得た。こ
のものの遊離成分率は0.2%であり、刺激性は極めて少
なかった。このマイクロカプセル化に使用したジオクチ
ルフタレートは溶剤であり、ミリオネート3040は油溶性
膜材、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンは水溶
性膜材、また、ニューカルゲンD−230、アラビアガム
は分散剤である。また、遊離成分率は試料500mgを500ml
の蒸留水中に加え、30分間振盪し、振盪液をメンブラン
フィルター(0.2μm)で濾過し、濾液中のN−(4−
ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−ノナナミドをHP
LCで定量し、カプセル化前の定量値で除して百分率とし
た(以下の実施例中の遊離成分率も同様の方法で測定し
た)。
実施例2 実施例1と同様の容器に使用し、4−ヒドロキシ−3
−メトキシベンジルアミン4.7部のジエチルエーテル25
部の溶液に8−メチルノン−トランス−6−エノイック
酸クロライド5.7部およびピリジン0.2部を加え、室温で
4時間撹拌する。ここに水10部を加え、5分間撹拌後、
5分間静置し、下層の水層を排出する。減圧にてエーテ
ルをほとんど完全に除去すると(E)−N−(4−ヒド
ロキシ−3−メトキシベンジル)−8−メチルノン−6
−エンアミドの粗成物を得ることができる。極少量を採
取し、N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)
−8−メチルノン−6−エンアミドの純度をHPLCで定量
したところ90.5%であり、このものの皮膚とりわけ粘膜
に対する刺激性は実施例1の成分と同様に強烈であっ
た。この反応器中にジメチルフタレート21.5部、セバシ
ン酸ジクロライド3.0部、ミリオネートMR−400(日本ポ
リウレタン社製)3.0部及びエマルゲン910(花王石鹸社
製)0.1部を入れ撹拌し、均一な混合液を得る。更にゴ
ーセノールGH−17(日本合成化学社製)の1.5%水溶液5
0.0部を加え、回転数650rpmで10分間撹拌し分散系を得
る。次に撹拌を250rpmに下げて水酸化ナトリウム1.0
部、エチレンジアミン1.0部およびジエチレントリアミ
ン1.0部に水を加えて13.9部にした水溶液をこの系に徐
々に滴下し、滴下後に液温を60℃にして2時間反応さ
せ、N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−
8−メチルノン−6−エンアミドを7.5%含有する懸濁
状のマイクロカプセル剤を得た。このものの遊離成分率
は0.6%と低く、刺激性は顕著に軽減され、容易に取り
扱える製剤となった。尚、このマイクロカプセル化に使
用したジブチルフタレートは溶剤、セバシン酸クロライ
ドおよびミリオネートMR−400は油溶性膜材、水酸化ナ
トリウム、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンは
水溶性膜材、また、エマルゲン910とゴーセノールGH−1
7は分散剤である。
実施例3 実施例1のベンゼン200部の代わりにジオクチルアジ
ペート171.2部を入れて、同様の操作でN−(4−ヒド
ロキシ−3−メトキシベンジル)−ノナナミドの合成反
応を行う。撹拌を停止し、30分静置後下層の水層を底部
より排出する。反応器中のジオクチルアジペートの溶液
を少量を採取し、N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ
ベンジル)−ノナナミドの純度をHPLCで定量したところ
30.3%であり、皮膚および粘膜への刺激性は実施例1と
同様に強烈であった。この反応器中にミリオネートMR−
200 42.8部、及びニューカルゲンD−410(竹本油脂社
製)8.8部を入れ撹拌し、更にアラビアガムの2%水溶
液455部を加え、撹拌数650rpmで10分間撹拌し、分散系
を得る。次に撹拌を250rpmに下げて、エチレンジアミン
およびジエチレントリアミンの各8.6部に水を加えて85.
6部にした水溶液をこの系に徐々に滴下し、滴下後に液
温を60℃にして2時間反応させ、カプセル化を行い9%
のN−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジン)−ノ
ナナミドを含む懸濁状マイクロカプセル剤850部を得
た。このものの遊離成分率は0.9%であり、刺激性は顕
著に軽減された。
実施例4 実施例1のベンゼン200部の代わりにシクロヘキサン7
1.2部とジオクチルフタレート100部を入れて、同様の操
作でN−(4−ヒドロキシ−三−メトキシベンジル)−
ノナナミドの合成反応を行い、撹拌を停止し、30分静置
後下層の水層を底部より排出する。反応器中の溶液を少
量を採取し、N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベン
ジル)−ノナナミドの純度をHPLCで定量したところ30.6
%であり、皮膚および粘膜への刺激性は実施例1と同様
に強烈であった。この反応器中にミリオネートMR−200
22.8部、及びニューカルゲンD−225(竹本油脂社製)
8.5部を入れ撹拌し、更にゴーセノールGH−17の1.5%水
溶液455部を加え、撹拌数650rpmで10分間撹拌し、分散
系を得る。次に撹拌を250rpmに下げて、エチレンジアミ
ンおよびジエチレントリアミンの各8.6部に水を加えて8
5.6部にした水溶液をこの系に徐々に滴下し、滴下後に
液温を60℃にして2時間反応させ、カプセル化を行い9
%のN−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−
ノナナミドを含む懸濁状マイクロカプセル剤850部を得
た。このものの遊離成分率は0.9%であり、刺激性は顕
著に軽減された。更にこのものをスプレードライヤーで
乾燥して水分およびシクロヘキサンをほぼ完全に除去
し、約30%のN−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベン
ジル)−ノナナミドを含む粉末状のマイクロカプセル剤
250部を得た。このものの遊離成分率は1.0%であり、刺
激性は低かった。
試験例 実施例4の粉末状マイクロカプセル剤および実施例1
と同様の方法で合成したマイクロカプセル化前のN−
(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−ノナナミ
ド合成物をビニルコンパウンドSE−24(三井東圧化学社
製)にN−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)
−ノナナミドとして0.2%添加した後、加熱圧延ロール
機(西村工機社製NS−105(J)W型)にて180℃で10分
間加熱混和して厚さ1mmのポリ塩化ビニルシートを作成
し、ポリ塩化ビニルシートに対するN−(4−ヒドロキ
シ−3−メトキシベンジル)−ノナナミドのラットによ
る咬害防止効果を調べ試験をした。尚、無処理区はビニ
ルコンパウンドだけでシートにした物である。
試験方法 各シートを75×150mmに裁断し、2つ折りにしてラッ
ト用固形試料2個を入れ、3方をホチキスで止め、試験
試料とする。この試料を体重約300gのラットを3匹入れ
た飼育ケージに入れて1夜放置し、シートのラットによ
る咬害面積を調べた。1ケージには各試料を1個ずつ入
れ3ケージの試験をした。
実施例4のマイクロカプセル製剤は計量、混合等の作
業および高熱をかけてのシート加工の際、刺激性がほと
んどなく取り扱いやすかったのに対し、合成品の場合は
手にほんの僅かに付いただけでも強い刺激性があり、強
烈な辛味がいつまでも残った。また、加工時にも強い刺
激臭があり極めて取り扱いにくかった。ラットに対する
咬害防止効果はむしろ実施例4のマイクロカプセル製剤
によるシートの方が良かった。以上の結果からも本発明
の製造法の有用性が確認された。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A01N 37/18 A01N 25/28

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式 (式中、RはC4〜C12のアルキル基、アルケニル基また
    はアルキニル基を表す。) で示される強刺激性を有するカプサイシン類を、 式 (式中、RはC4〜C12のアルキル基、アルケニル基また
    はアルキニル基を、Halはハロゲン原子を表す。)で示
    される化合物とバニリルアミンあるいはその塩を溶媒
    中、必要に応じて酸結合剤の存在下で縮合させて得た
    後、そのままその反応浴中で水中に分散させ、水中油型
    のマイクロカプセル化を行うことを特徴とするカプサイ
    シン類及びそのマイクロプロセル剤の同一浴製造法。
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