JP4272372B2 - マイクロカプセルおよびその製造方法 - Google Patents

マイクロカプセルおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロカプセルの技術分野に属し、特に、液中乾燥法を利用するマイクロカプセルの新規な製造方法および該方法によって得られるマイクロカプセルに関する。
【0002】
【従来の技術】
マイクロカプセルは、目的に応じた活性を有する液体または固体の芯物質がポリマーから成る皮膜内に内包されたミクロメーター(μm)オーダーの粒径を有する微粒子であり、農薬、医薬品、固定化酵素、カーボンレス複写紙、接着剤などに広く利用されている。
【0003】
マイクロカプセルの代表的な製造方法としては、(1)モノマーを界面またはin situで重合反応させて得られるポリマーの皮膜で芯物質を内包する重合法、(2)芯物質とポリマーの水溶液または有機溶媒溶液に電解質、pH調節剤、または別の有機溶媒などを加えることにより相分離したポリマーによって芯物質を内包する相分離法、および(3)液中乾燥法が挙げられる。このうち液中乾燥法は、前二者(1)および(2)のように激しい化学反応に供されたり反応性物質の添加などを伴わないので、環境や条件の変化に敏感な物質のマイクロカプセル化に特に適している。
【0004】
液中乾燥法は、界面沈殿法または二次エマルション法とも呼ばれ、芯物質と疎水性ポリマーの溶液から(W/O)型のエマルションを調製し、これを別の水溶液に添加して((W/O)/W)型の複合エマルションとし、この複合エマルションからポリマーの溶媒を除去するか、または、これとは逆に、芯物質と親水性ポリマーの水溶液とから先ず(O/W)型エマルションを調製し、これを油溶液中に分散させて((O/W)/O)型の複合エマルションとし、この複合エマルションから水を除去することにより、ポリマーの皮膜内に芯物質が内包されたマイクロカプセルを製造するものである。
【0005】
このような従来の液中乾燥法によるマイクロカプセルの製造においては、芯物質をそのままの状態で使用していた。すなわち、前者の水中での液中乾燥法によりマイクロカプセルを製造するに当たっては、芯物質の水溶液を疎水性ポリマーに添加して(W/O)型のエマルションを調製し、また、後者の油中での液中乾燥法によりマイクロカプセルを製造するに際しては、油性の芯物質または芯物質を溶解させた油状物を親水性ポリマーの水溶液に添加して(O/W)型エマルションを調製していた。しかしながら、このような方法によっては、マイクロカプセルの製造時に芯物質が消失し、したがって、最終的に得られるマイクロカプセル内に内包される芯物質の量が少なく、また、廃液に混入して公害を引き起こす原因にもなる。さらに、用いる芯物質によっては、皮膜を形成するポリマーを溶解するものがあり、カプセルが形成されない場合もある。また、従来のマイクロカプセル化法は、専ら限られた範囲の粒径のマイクロカプセルを対象としており、一般にマイクロカプセルの粒径の制御が困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、マイクロカプセル製造時における芯物質の消失が少なく多量の芯物質を内包するマイクロカプセルを得ることができ、さらに、用途に応じてその粒径の制御も容易で汎用性のある新しいマイクロカプセル化技術を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、液中乾燥法を工夫することにより、上述の目的を達成し得る新しいタイプのマイクロカプセル化技術を導き出した。
かくして、本発明に従えば、目的の活性を有する芯物質、多孔性で芯物質を吸着し保持し得る芯物質担体、疎水性の皮膜形成性ポリマー、および該ポリマーを溶解させ得る有機溶媒から、芯物質を吸着・保持した芯物質担体が、ポリマーを溶解した有機溶媒中に分散した第1のエマルション〔以下、(S/O)エマルションまたは(S/O)相と称することがある:Sは固体(solid)を意味する〕を調製する工程;この第1のエマルションを水溶液に添加して第1のエマルションが水中に分散した第2のエマルション〔以下、((S/O)/W)エマルションまたは((S/O)/W)相と称することがある〕を調製する工程;および第2のエマルションから有機溶媒を除去してポリマーから成る皮膜内に芯物質担体に吸着・保持された芯物質が内包されたマイクロカプセルを得る工程を含むマイクロカプセルの製造方法が提供される〔以下、この本発明のマイクロカプセルの製造方法を((S/O)/W)式マイクロカプセル化法と称することがある〕。
【0008】
さらに、本発明に従えば、目的の活性を有する芯物質、多孔性で芯物質を吸着し保持し得る芯物質担体、親水性の皮膜形成性ポリマーおよび水から、芯物質を吸着・保持した芯物質担体が、ポリマーを溶解した水中に分散した第1のエマルション〔以下、(S/W)エマルションまたは(S/W)相と称することがある〕を調製する工程;この第1のエマルションを油溶液に添加して第1のエマルションが油中に分散した第2のエマルション〔以下、((S/W)/O)エマルションまたは((S/W)/O)相と称することがある〕を調製する工程;および第2のエマルションから水を除去してポリマーから成る皮膜内に芯物質担体に吸着・保持された前記芯物質が内包されたマイクロカプセルを得る工程を含むことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法が提供される〔以下、この本発明のマイクロカプセルの製造方法を((S/W)/O)式マイクロカプセル化法と称することがある〕。
【0009】
本発明に従うマイクロカプセルの製造方法の特に好ましい具体例は、芯物質としてフェニトロチオン、芯物質担体として活性炭、ポリマーとしてポリ−ε−カプロラクタム、有機溶媒として酢酸エチルを用いる((S/O)/W)式マイクロカプセル化法であり、この方法によって、ポリ−ε−カプロラクタムから成る皮膜内に内包率30%以上のフェニトロチオンが内包され、20μm〜5mmの粒径を有するフェニトロチオン内包生分解性マイクロカプセルが得られる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のマイクロカプセルの製造方法における重要な特徴の一つは、芯物質を予め多孔性の担体に吸着(含浸)させ該担体に保持された安定した状態で、第1のエマルションを調製した後、第2のエマルションの調製に供することにある。これによって、芯物質が、第1のエマルションの連続相〔((S/O)/W)式マイクロカプセル化法においてはポリマーを溶解した有機溶媒相、((S/W)/O)式マイクロカプセル化法においてはポリマーを溶解した水相〕および第2のエマルションの連続相〔((S/O)/W)式マイクロカプセル化法においては水相、((S/W)/O)式マイクロカプセル化法においては油相)〕のいずれにも放出されることが激減し、マイクロカプセル製造時における芯物質の消失が少なく芯物質の内包率のきわめて高いマイクロカプセルが得られる。
【0011】
例えば、本発明が適用される好ましい具体例として挙げられるフェニトロチオン内包マイクロカプセルの製造において芯物質担体として活性炭を使用すると、マイクロカプセル製造時に仕込まれるフェニトロチオン(芯物質)の殆ど(約95%以上)を内包し、30〜60%の高内包率のマイクロカプセルが得られる(従来の方法では最大15%程度)ことが確認されている。(なお、ここで内包率とはマイクロカプセル全体の重量に対する芯物質重量の百分率で表わしたものである。)また、芯物質(フェニトロチオン)が皮膜形成性ポリマーを溶解することもなく、確実にマイクロカプセルが形成される。
【0012】
芯物質の担体としては、芯物質を吸着し保持し得るような多孔性を有し、((S/O)/W)式マイクロカプセル化法に用いられる場合には有機溶媒中で安定に分散し、また、((S/W)/O)式マイクロカプセル化法に用いられる場合には水中で安定に分散し得る各種の材料を使用することができる。((S/O)/W)式マイクロカプセル化法に用いられる芯物質担体として好適な材料は活性炭に代表される親油性多孔質固体である。また、((S/W)/O)式マイクロカプセル化法に用いられる芯物質担体として好適な材料はシリカゲルに代表される親水性多孔質固体である。
【0013】
本発明に従う((S/O)/W)式マイクロカプセル化法は、マイクロカプセルの皮膜を形成するものとして知られた各種の疎水性の皮膜形成性ポリマーと、該ポリマーに対する溶解性の優れた有機溶媒とを組み合わせて実施することができる。例えば、疎水性ポリマーとして、ポリスチレンを塩化メチルや四塩化炭素のような有機溶媒、また、エチルセルロースをベンゼンやシクロヘキサンのような有機溶媒と組み合わせて用いることができるが、これらの例に限られるものではない。
【0014】
一方、本発明の((S/W)/O)式マイクロカプセル化法を実施すれば、マイクロカプセルの皮膜を形成するものとして知られた各種の親水性の皮膜形成性ポリマーを用いてマイクロカプセルを製造することもできる。そのような親水性の皮膜形成性ポリマーとしては、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、多糖類などが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0015】
また、本発明に従いマイクロカプセルを製造するに当たっては、マイクロカプセルの用途に応じて生分解性の皮膜形成性ポリマーを使用することが好ましい。この点に関し、本発明の((S/O)/W)式マイクロカプセル化法は、フェニトロチオンのような殺虫剤を内包する徐放性で生分解性のマイクロカプセルから成る農薬の製造に適している。このようなマイクロカプセルを得るのに特に好ましいポリマーと有機溶媒の組み合わせは、生分解性ポリマーであるポリ−ε−カプロラクタムを有機溶媒として酢酸エチルとともに用いる場合であり、この他に、ポリ乳酸をアセトニトリルとともに使用することもできる。
【0016】
本発明に従えば、以上のような材料を用いて、マイクロカプセルの使用目的に応じた活性を有する各種の液体または固体の芯物質、例えば、上述したような殺虫剤の他、各種の薬効成分、酵素などを内包した各種のマイクロカプセルを得ることができる。図1は、本発明に従い((S/O)/W)式マイクロカプセル化法または((S/W)/O)式マイクロカプセル化法によりマイクロカプセルを製造する工程を模式的に示すものである。
【0017】
図1に示されるように、本発明の方法に従いマイクロカプセルを製造するには、先ず、芯物質、芯物質担体、疎水性の皮膜形成性ポリマー、および有機溶媒から、芯物質を吸着・保持した芯物質担体が、ポリマーを溶解した有機溶媒中に分散した第1のエマルション〔((S/O)/W)式マイクロカプセル化の場合〕、または、芯物質、芯物質担体、親水性の皮膜形成性ポリマーおよび水から芯物質を吸着・保持した芯物質担体が、ポリマーを溶解した水中に分散した第1のエマルション〔((S/W)/O)式マイクロカプセル化法の場合〕を調製する。このようなエマルションは、一般に、疎水性の皮膜形成性ポリマーを有機溶媒に溶かした溶液〔((S/O)/W)式マイクロカプセル化法の場合〕または親水性の皮膜形成性ポリマーを溶かした水溶液〔((S/W)/O)式マイクロカプセル化法の場合〕に、芯物質を添加した後、芯物質担体を添加して充分に攪拌することによって得られる。この際、エマルションを安定化するため、必要に応じて分散安定剤(乳化剤)を加える。
【0018】
次に、このようにして調製した第1のエマルションを、充分に攪拌している水溶液〔((S/O)/W)式マイクロカプセル化法の場合〕または油溶液〔((S/W)O)式マイクロカプセル化法の場合〕に添加することにより、第1のエマルションが水中に分散した第2のエマルション〔((S/O)/W)式マイクロカプセル化法〕または第1のエマルションが油中に分散した第2のエマルション〔((S/W)/O)式マイクロカプセル化法〕が得られる。すなわち、図1に模式的に示すように、((S/O)/W)式マイクロカプセル化法においては、芯物質を吸着・保持した芯物質担体およびその周りに存する有機溶媒/ポリマーから成る(S/O)相の微粒子が水中に分散した第2のエマルション(複合エマルション)、また、((S/W)/O)式マイクロカプセル化法においては、芯物質を吸着・保持した芯物質担体およびその周りに存する水/ポリマーから成る(S/W)相の微粒子が油中に分散した第2のエマルション(複合エマルション)が形成される。
【0019】
このような第2のエマルションの媒体となる水溶液または油溶液には、予め分散安定剤(乳化剤)を添加しておくことが好ましい。第1のエマルションおよび第2のエマルションの調製時に用いられる分散安定剤(乳化剤)としては、非イオン性界面活性剤が好ましいが、必要に応じて他の種類の乳化剤を併用することもできる。なお、((S/W)/O)式マイクロカプセル化法において第2のエマルションの媒体となる油溶液とは、一般に、水難溶性の有機溶媒であるが、必要に応じて、適当な油脂類を含有することもできる。
【0020】
以上のように調製された第2のエマルションは、次に、ポリマーを溶解した溶媒〔((S/O)/W)式マイクロカプセル化法の場合は有機溶媒、((S/W)/O)式マイクロカプセル化法の場合は水〕を除去する工程に供される。この溶媒除去は、加温、減圧、溶媒抽出、冷却、乾燥粉末添加、冷凍乾燥などによって行なわれる。
【0021】
((S/O)/W)式マイクロカプセル化法における溶媒除去としては、一般に、加温、減圧またはこれらの処理を組み合わせ(減圧下の加温)を採用するのが好ましい。このような操作によって、(S/O)相の有機溶媒が、((S/O)/W)エマルションの媒体(連続相)を構成している水(外水相)の中に溶け込み、この外水相表面から蒸発するとともに、ポリマーが、芯物質を吸着・保持している芯物質担体の周りに沈殿して皮膜を形成する。他方、((S/W)/O)式マイクロカプセル化法において、ポリマーを溶解している溶媒(水)を除去するに当たっては、第2のエマルションの媒体(連続相)を構成している油溶液の方が水よりも沸点が低いことが多いので、一般に加温や減圧は好ましくなく、溶媒除去(水分除去)には、冷却、乾燥粉末の添加、溶媒抽出などの手段を用いるのが好ましい。
【0022】
以上のようにして、ポリマーを溶解していた溶媒を除去した後、適当な精製処理(第2のエマルションの連続相を構成している溶液の除去、皮膜表面に付着した不純物の除去)および乾燥処理に付されることにより、芯物質担体に吸着・保持された芯物質がポリマー皮膜内に内包されたマイクロカプセルが得られる。
【0023】
本発明に従えば、芯物質担体に芯物質を吸着・保持させることにより安定なエマルションの調製が可能である(第1のエマルションおよび第2のエマルションのいずれも)ため、上述したようなエマルションの調製における諸条件を変えることによって、粒径の異なるエマルションの調製が容易である。その結果として、それらの調製条件、特に、芯物質の添加量(濃度)、芯物質担体の添加量(濃度)、第1のエマルション調製時および/または第2のエマルション調製時の攪拌速度(攪拌強さ)、第1のエマルション調製時および/または第2のエマルション調製時の分散安定剤(乳化剤)の添加量(濃度)、第2のエマルションにおける連続相に対する分散相の体積分率などを変えることにより、得られるマイクロカプセルの粒径の制御が容易となる。
【0024】
例えば、本発明が適用される好ましい具体例として後述の実施例に示すような芯物質担体として活性炭を用いるフェニトロチオンを内包する生分解性で徐放性のマイクロカプセルを製造する例においては、次のようなことが見出されている。
(1)芯物質担体の添加量が少なすぎるとカプセルそのものが形成されないことがある。カプセル形成が可能な量以上の芯物質担体を添加する場合、芯物質および/または芯物質担体の添加量が多いほど、得られるマイクロカプセルの粒径が大きくなる。
(2)第1のエマルション調製時および/または第2のエマルションの調製時の攪拌速度を大きくするほど、得られるマイクロカプセルの粒径は小さくなる。
(3)第1のエマルション調製時の界面活性剤の添加量が多すぎると、固形化が進まずマイクロカプセルが形成されない。
(4)第2のエマルション調製時の界面活性剤の濃度が高いほど、得られるマイクロカプセルの粒径は小さくなる。
(5)徐放性マイクロカプセルの場合、粒径が大きいほど芯物質の放出に長い時間が必要であり、上記のようなエマルション調製における諸条件を変えることによりマイクロカプセルの粒径を制御し、それによって徐放性を制御できる。
【0025】
如上のように、本発明に従えば、芯物質を多量に内包することができ、且つ、粒径が広範囲に制御されることにより、使用態様に応じた融通性を有し、経済性および環境の面からも好ましい各種のマイクロカプセルを得ることができる。
例えば、本発明によって得られる芯物質としてスミチオン内包するマイクロカプセルは、内包量が多いため小量の散布で効果が得られ、且つ、粒径を随意に制御することにより、最適な散布法(水溶液散布や固体散布等)に合わせるとともに、徐放性を制御して多量の内包物を徐々に長期間にわたって徐放させて散布回数を減らすことのできる優れた農薬(殺虫剤)として使用できる。さらに、そのようなマイクロカプセル製造に際して原料となる芯物質の殆どを内包できるため製造時における消失が少なく経済的であり、廃棄による汚染も少ない。また、皮膜として生分解ポリマーを使用することにより、皮膜が散布後に分解して土壌に残らず、この点からも環境汚染が少ない。
【0026】
【実施例】
以下に、本発明の特徴をさらに具体的に明らかにするため実施例を示すが、本発明はこの実施例によって制限されるものではない。
実施例1:フェニトロチオン内包マイクロカプセルの製造
酢酸エチルにPCL(ポリ−ε−カプロラクタム)とフェニトロチオン(MEP:スミチオン)を所定濃度溶解させたものを有機相として用いた。蒸留水480mlに分散安定剤として界面活性剤Q12−S(モノラウリン酸デカグリセリン)を所定濃度とTCP.10を60ml(1.1wt%)加えたものを外水相として用いた。有機相に活性炭を所定量加え、ホモジナイザーを用い323K、5000rpmで10分間攪拌した。このS/O溶液(S/Oエマルション)を、反応器中で323Kに加温され、500rpmで攪拌されている外水相に加え(S/O)/Wエマルションを調製した。
S/O溶液を外水相に加えてから5分後に、粒径を測定するため外水相を採取した。続いて、ダイヤフラムポンプで反応器中が722mmHgになるように吸引しながら、3時間攪拌して溶媒の酢酸エチルを蒸発させ(液中乾燥)、冷却、ろ過、乾燥することによりマイクロカプセルを調製した。このようにして調製したマイクロカプセルを用いてカプセルの特性を検討した。
【0027】
以上のようにして調製されたマイクロカプセルの粒径と各種調製条件との関係を図2〜図5に示す。なお、図に示す符号の意味は次のとおりである。
PCL:皮膜形成ポリマー、ポリ−ε−カプロラクタムの濃度:PCL(g)/有機相(g)(有機相:酢酸エチル+PCL+MEP)
MwPCL:皮膜形成ポリマー、ポリ−ε−カプロラクタムの分子量
MEP:芯物質、スミチオンの濃度:MEP(g)/有機相(g)
Q12S:界面活性剤、Q12−Sの濃度:Q12−S(g)/外水相(g)(外水相:蒸留水+TCP.10+Q12−S)
TCP:分散安定剤、TCP.10の濃度:TCP.10(g)/外水相(g)
(S/O):芯物質担体、活性炭の濃度:活性炭(g)/(活性炭+有機相)(g)
φ(S/O)/W:((S/O)/W)エマルションにおける外水相(連続相)に対する分散相(S/O相)の体積分率
D:エマルションの粒径またはマイクロカプセルの粒径
【0028】
図2〜図5は、いずれも、エマルション((S/O)/Wエマルション)の粒径が、最終的に得られるマイクロカプセルの粒径に対応していることを示す。図2は、エマルションおよびマイクロカプセルの粒径が、第2のエマルション調製時の界面活性剤の濃度とともに減少することを示す。図3は、エマルションの粒径およびマイクロカプセルの粒径が、第2のエマルション調製時の外水相に対する分散相の体積分率の増加に伴って減少することを示している。また、図4は、エマルションおよびマイクロカプセルの粒径が、第1のエマルション調製時の皮膜形成ポリマーの濃度の増加に伴って増大することを示す。さらに、図5は、エマルションおよびマイクロカプセルの粒径が、第1のエマルション調製時の芯物質担体(活性炭)の濃度の増加に伴い減少する傾向がある(特に低濃度)ことを示している。
【0029】
実施例2:徐放速度測定試験
実施例1に示したように、本発明に従えば、マイクロカプセルの調製時の諸条件を変えることにより、エマルションの粒径を制御し、延いては、最終的に得られるマイクロカプセルの粒径を制御することができる。そして、徐放性のマイクロカプセルにおいては、マイクロカプセルの粒径を制御することにより、内包物(芯物質)の徐放性を制御することもできる。図6および図7は、実施例1のように調製したスミチオン内包マイクロカプセルの芯物質であるスミチオン(MEP)の水中への徐放速度を測定した結果を示すものである。
すなわち、図6は、既述の図4の場合のように皮膜形成ポリマーの濃度が大きくなるに従いマイクロカプセルの粒径が大きくなり、それに伴い、徐放率が小さく(図6のA)、徐放量も小さくなり(図6のB)、緩やかに内包物(スミチオン)が放出されることを示している。
【0030】
また、図7は、図2に示した場合のようにエマルション調製時の界面活性剤の濃度の減少に伴いマイクロカプセルの粒径が大きくなり、それとともに、徐放率(図7のA)および徐放量(図7のB)が小さくなり、緩やかにスミチオンが放出されることを示している。
【0031】
なお、図6および図7に示すような徐放速度測定試験は、スミチオンの水への溶解度は約300ppmと微少であるため飽和になることを懸念して、以下の方法によって測定した:300mlの蒸留水にスミチオン内包のマイクロカプセル0.10gを加えて、一定時間振とう後、水溶液中のスミチオン濃度を測定した。その後、水溶液の全量を新しい蒸留水と交換して、再び一定時間振とうし、その濃度を測定した後、水溶液の全量を新しい蒸留水と交換する。この操作を繰り返して、水溶液中のスミチオン濃度を測定して、マイクロカプセルから水溶液中に徐放するスミチオン量を求めた。徐放量と徐放率は以下の式から求めた。
徐放量=徐放開始から任意の時間までに水溶液中に徐放してきたスミチオンの全量
徐放率=徐放量/調製時にマイクロカプセルに内包したスミチオン量
【0032】
実施例3:殺虫試験
実施例1のように調製したスミチオン内包マイクロカプセルのコガネムシ(ヒメコガネ)幼虫に対する殺虫効果を、土壌混和処理の残効により検討した。すなわち、サンプル土壌に所定濃度のマイクロカプセルを混合し、10日後および30日後に10匹ずつのコガネムシを放飼し、7日経過した後の死亡率を調べた。その結果を表1に示す。表中、スミチオンMCとは、本発明に従い実施例1のように調製されたスミチオン内包マイクロカプセルであり、No.1は平均粒径約155μm、内包率32%のマイクロカプセル、No.2は平均粒径約81μm、内包率32%のマイクロカプセルである。なお、スミチオンECとは、比較のために、同様の殺虫効果を調べたマイクロカプセル化を行なっていない市販のスミチオンである。
【0033】
【表1】
Figure 0004272372
【0034】
表1に示されるように、スミチオンECにおいては、30日後放飼の死亡率が10日後放飼に比べて減少しており、殺虫効果の経時的減少が認められるが、本発明に従うマイクロカプセルを殺虫剤として用いた場合には、日数の経過とともに殺虫効果は増加または持続されており、これは活性成分(スミチオン)が徐放されることに因るものと推測される。
【0035】
実施例4:薬害試験
実施例3で用いた薬剤を用いてキャベツに対する薬害を調べた。その結果を表2に示す。表2に示されるように、スミチオンECは高濃度(250倍)では激しい薬害が認められ、濃度低下に従いその程度は軽減されるものの、1000倍まで薬害が認められた。これに対し、本発明に従うスミチオン内包マイクロカプセルは、No.1、No.2ともにスミチオンECに比較し薬害程度は軽減され、1000倍における薬害は認められず、薬害の点からも優れた殺虫剤であることが理解される。
【0036】
【表2】
Figure 0004272372

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従いマイクロカプセルを製造する工程を模式的に示す。
【図2】本発明に従いマイクロカプセルを製造するときの界面活性剤の濃度とエマルションおよびマイクロカプセルの粒径との関係の1例を示す。
【図3】本発明に従いマイクロカプセルを製造するときの外水相に対する分散相の体積分率とエマルションおよびマイクロカプセルの粒径との関係の1例を示す。
【図4】本発明に従いマイクロカプセルを製造するときの皮膜形成ポリマーの濃度とエマルションおよびマイクロカプセルの粒径との関係の1例を示す。
【図5】本発明に従いマイクロカプセルを製造するときの芯物質の濃度とエマルションおよびマイクロカプセルの粒径との関係の1例を示す。
【図6】本発明に従いマイクロカプセルを製造するときの皮膜形成ポリマーの濃度とマイクロカプセルの徐放速度との関係の1例を示す。
【図7】本発明に従いマイクロカプセルを製造するときの界面活性剤の濃度とマイクロカプセルの徐放速度との関係の1例を示す。

Claims (3)

  1. 目的の活性を有する農薬である芯物質、および疎水性の皮膜形成性ポリマーを、該ポリマーを溶解させ得る有機溶媒に溶解して有機相とし、この有機相に多孔性で前記芯物質を吸着し保持し得る芯物質担体を加えることにより前記芯物質を吸着・保持した前記芯物質担体が、前記ポリマーを溶解した前記有機溶媒中に分散した第1のエマルションを調製する工程;前記第1のエマルションを水溶液に添加して該第1のエマルションが水中に分散した第2のエマルションを調製する工程;および前記第2のエマルションから前記有機溶媒を除去して前記ポリマーから成る皮膜内に前記芯物質担体に吸着・保持された前記芯物質が内包されたマイクロカプセルを得る工程を含むことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
  2. 目的の活性を有する農薬である芯物質、および親水性の皮膜形成性ポリマーを、水に溶解して水相とし、この水相に多孔性で前記芯物質を吸着し保持し得る芯物質担体を加えることにより前記芯物質を吸着・保持した前記芯物質担体が、前記ポリマーを溶解した前記水中に分散した第1のエマルションを調製する工程;前記第1のエマルションを油溶液に添加して該第1のエマルションが油中に分散した第2のエマルションを調製する工程;および前記第2のエマルションから前記水を除去して前記ポリマーから成る皮膜内に前記芯物質担体に吸着・保持された前記芯物質が内包されたマイクロカプセルを得る工程を含むことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
  3. 前記芯物質としてフェニトロチオン、前記芯物質担体として活性炭、前記ポリマーとしてポリ−ε−カプロラクタム、前記有機溶媒として酢酸エチルを用いることを特徴とする請求項1のマイクロカプセルの製造方法。
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