JP2924263B2 - 高強度アルミニウム合金製ポンプロータ - Google Patents

高強度アルミニウム合金製ポンプロータ

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JP2924263B2
JP2924263B2 JP8247691A JP8247691A JP2924263B2 JP 2924263 B2 JP2924263 B2 JP 2924263B2 JP 8247691 A JP8247691 A JP 8247691A JP 8247691 A JP8247691 A JP 8247691A JP 2924263 B2 JP2924263 B2 JP 2924263B2
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勝義 近藤
義信 武田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、オイルポンプロータ、
例えばA/T(Automatic Transmission)用オイルポン
プに使用されるロータとして適するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車の燃費向上策の一貫として
自動車部品の軽量化が進められている中、そのひとつと
してオイルポンプの軽量化が重要視されている。従来の
オイルポンプは、鉄系の材料で作られており(ポンプケ
ースは主として鋳物もしくはダイカスト)、そのため、
例えば、A/T用オイルポンプではその重量が5kgを越
えている。これをAl合金化するとポンプ重量は2kg以
下となり、約60%の軽量化が図れる。
【0003】ところが、既存のAl系材料は、ポンプケ
ース用としては使用できるものがあるが、ポンプロータ
用材料としては適切なものが無く(いずれも後述する課
題を有する)、また、溶製法(鋳造法、ダイカスト法)
では要求特性を満足するAl系材料を作ること自体が難
しかった。そこで、ポンプケースのみをAl合金化する
ことが考えられるが、この場合には次のことが問題とな
る。即ち、Al合金製のポンプケースを、これまでの鉄
製ロータと組合わせて使用すると、140〜160℃の
摺動条件下では両者の熱膨張率の差でケースとロータ間
に15〜20μm程度の隙間が生じてポンプ性能が著し
く低下する。また、逆にロータの熱膨張計数がポンプケ
ースのそれより大きいと、ケースとロータ間のクリアラ
ンスが無くなってロータの回転に支障が生じることか
ら、A/T用ポンプ等のAl合金化はまだ実現していな
かった。
【0004】なお、これまでに実用化されているAl系
の材料でオイルポンプロータ用として検討の対象になる
ものとしては、ピストンや軸受等の摺動部材として使用
されているAC8BやA390等に代表されるAl溶製
合金(I/M:Ingot Metallugy)、急冷凝固粉末冶金法
で作られるAl−高Si系の粉末合金(P/M:Powder
Metallugy) やAl−高Zn系のP/M合金、或いは近
年、新素材の1つとして注目を集めているSiCやAl
2 3 等のセラミック繊維或いはセラミックス粒子で強
化されたAl金属基複合材料(MMC:Metal Matrix C
omposites)などがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来のAl系
材料をロータ材として使用すると次のようなことが問題
となる。
【0006】(1)I/M合金をロータに採用すると、
Al合金同志の摺動摩耗や面圧疲労に対する強度不足の
ため、歯面においてはピッチング摩耗を出発点とする著
しい摩耗損傷が生じ、また、端面や外周部ではポンプケ
ースとの焼付きから生じる著しい摩耗が発生する。さら
に、高速回転下においてはシャフト接合部での強度不足
による疲労破壊を生じる。また、精密・複雑な形状創成
に対しては冷間鍛造加工等では不十分であるため切削加
工が必要となるが、耐摩耗性を高めるためにSi含有量
を増やすと高Si化に伴って初晶Siが粗大化するため
切削性が悪化し、強度の低下をも生じる。さらに、高温
強度を向上させるために必要なFeの含有量は3〜10
%であるが、5%を越えて添加すると粗大な針状組織と
なるため合金の靱性が低下し、従って、高温強度も満足
に確保できない。
【0007】(2)Al−高Si系のP/M合金は、高
Si含有のため熱膨張率が低下し、要求される熱膨張特
性を満足しなくなる。また、この系の合金は高温強度に
問題があることから高温環境下で使用するロータへの適
用は困難である。
【0008】(3)Al−高Zn系のP/M合金は、製
造時の著しい時効硬化により高温強度は有するものの、
耐熱性、耐摩耗性に問題があるため、やはり高温環境下
で使用するロータには適していない。
【0009】(4)MMC複合材は、耐摩耗性及び高温
強度に優れるが、Al合金に比べ材料の信頼性が乏し
く、また、切削性が極端に悪く、コストも高いことから
ロータに利用するのは難しい。
【0010】従って、オイルポンプのAl合金化を実現
するためには、このような問題を生じない材料が必要に
なる。
【0011】そこで、かかる材料に対しての要求特性に
ついて考えると、上記の温度即ち140〜160°の温
度下での高速耐久試験(例えば5000〜7000rpm
×100時間)においてロータの摺動部が損傷しないこ
と、いわゆる高速耐摩耗性が重要となる。また、熱膨張
特性がポンプケースのそれとほぼ同等であることも必要
である。これ等から今、ポンプケースをA390、B3
90、AC2B等で作ることを想定すると、ロータ用A
l合金に求められる不可欠の特性として次の3つの条件
が考えられる。
【0012】(1)熱膨張率:16.5〜20×10-6
-1
【0013】(2)引張強度:常温下で60kgf/mm2
上、140〜160℃下で50kgf/mm2 以上。
【0014】(3)硬 度 :HR Bにて100〜10
5以上、HV にて220〜240以上。
【0015】本発明は、かかる要求を満足させた高強度
のAl合金製ポンプロータを提供しようとするものであ
る。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明のポンプロータ
は、上記の課題を解決するため、アウターロータとイン
ナーロータの少なくとも一方を、重量基準で Fe:5〜12% Ni:3〜10% の範囲において両元素の合計含有量が8〜15%であ
り、これとSi:8〜20%、Cu:1〜3.5%、M
g:0.5〜2%、Mn:0.2〜1%、Cr:0.5〜2
%、Mo:0.3〜2%、Zr:0.5〜1.5%、残部Al
と不純物とからなる組成の粉末アルミニウム合金で作っ
たものである。
【0017】なお、摺動条件により更なる耐摩耗性が要
求されるポンプロータに対しては、摺動部の表面に電解
Ni−P−BNメッキ処理もしくは無電解Ni−Pメッ
キ処理やアルマイト処理を施したり、表層部をレーザ、
電子ビーム等の高密度熱線で熱処理してその要求に応え
ることができる。
【0018】
【作用】本発明のポンプロータは、原材料を急冷凝固の
Al粉末に限定し、さらに、材料の組成をうまく定めて
要求特性を満足させたものである。以下に本発明ロータ
のAl合金における各成分の作用とその含有量について
説明する。Si:耐摩耗性を向上させ、かつ熱膨張率を
小さくする効果があり、その量が8%未満では耐摩耗性
が不足する。逆に、20%を越えると粉末の鍛造性が悪
くなり、合金の靱性も低下する。
【0019】Fe及びNi:Feは高温強度を向上さ
せ、かつ熱膨張率を小さくする効果がある。その量が5
%未満ではこれらの特性改善に対する効果が不十分であ
り、また12%を越えるとAlとの金属間化合物(例え
ばFeAl3)が粗大化するため合金の靱性が低下す
る。NiはFeと同様に高温強度を向上させ、かつ熱膨
張率を小さくする。その量が3%未満ではこれらの特性
改善に関する効果が不十分であり、また10%を越える
とAlとの金属間化合物(例えば、NiAl、Ni2
l)が粗大化するため合金の靱性が低下する。両者の合
計含有量に関して高温強度の観点からはその量が8%未
満ではその効果が不十分であり、また、熱膨張性の観点
からは15%を越えると要求される熱膨張率の範囲を下
回る。
【0020】Cu及びMg:両者は固溶強化により強
度、硬度等の機械的特性を向上させる。
【0021】Cuについては1%未満では上記の効果が
不十分であり、また3.5%を越えてもその効果は向上せ
ず、耐食性はかえって低下する。Mgについては0.5%
未満では上記の効果は不十分であり、2%を越えてもそ
の効果は向上しない。
【0022】Mn:Al合金を固溶強化すると共に、繊
維組織化することにより強度を向上させる効果がある。
その量が0.2%未満では効果が不十分であり、また1%
を越えてもその効果は向上しないうえ粗大な晶出物が生
じるため逆に強度は低下する。
【0023】Cr:耐食性を向上させると共に、Alと
の晶出物を形成して強度を向上させる効果がある。0.5
%未満ではその効果が不十分であり、2%を越えてもそ
の効果は向上しないうえ逆に晶出物が粗大化するために
強度が低下する。
【0024】Mo:300℃以上の高温における耐熱性
の改善に効果がある。0.3%未満ではその効果が不十分
であり、2%を越えてもその効果は向上しない。
【0025】Zr:400℃付近の温度下にてその固溶
強化により高温強度を向上させる効果がある。0.5%未
満ではその効果が不十分であり、1.5%を越えてもその
効果は向上しない。
【0026】なお、I/M合金は、急冷凝固の効果がな
いため、本発明のロータ材料と同一組成であったとして
も高強度特性を確保できないが、本発明のロータは急冷
凝固粉末冶金法で作られたAl粉末を原材料としている
ので急冷凝固の効果も生かされ、熱膨張率、引張強度、
硬度について先に挙げた条件を全て満足させる。従っ
て、高温下での高速回転使用にも充分に耐えるものとな
る。
【0027】
【実施例1】表1に示す組成の5種類(タイプI〜V)
の急冷凝固Al合金粉末を作った。そして、その粉末を
用いて熱間鍛造でφ20×30mmのビレットを作製し、
各サンプルの特性を評価した。結果を表2に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【実施例2】実施例1で作ったI〜Vの合金のビレット
を冷間鍛造後、切削仕上げして図1に示すような歯面形
状を有する内接歯車ポンプ用のアウターロータ1、図2
に示すようなインナーロータ2をそれぞれ同一材料で作
成した。そして、これ等をAl合金(A390)製のポ
ンプケースに組込み、表3の条件下でポンプ性能の評価
を行った。その結果を表4に示す。IとIIの材料から成
るロータが本発明品である。
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】なお、本発明のポンプロータの歯面形状
は、インナーロータ、アウターロータのいずれかの側
が、トコロイド曲線、インボリュート曲線又はこれ等と
同等の性能を有する歯面形状となる。
【0034】
【発明の効果】以上述べたように、本発明のオイルポン
プロータは使用材料に対して要求される特性を全て満た
す。従って、Al合金製のポンプケースと組合わせても
熱膨張差に起因したポンプ性能の低下を来たさず、かつ
高温下で使用しても充分な耐久性を示し、このために軽
量で信頼性の高いA/T用オイルポンプ等を実現するこ
とが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のオイルポンプ用アウターロータの一例
を示す正面図
【図2】本発明のオイルポンプ用インナーロータの一例
を示す正面図
【符号の説明】
1 アウターロータ 2 インナーロータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F04C 2/10 341 F04C 15/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 歯面間にポンピングチャンバを作り出す
    アウターロータとインナーロータのいずれか一方又は双
    方が、重量基準で Fe:5〜12% Ni:3〜10% の範囲において両元素の合計含有量が8〜15%であ
    り、これとSi:8〜20%、Cu:1〜3.5%、M
    g:0.5〜2%、Mn:0.2〜1%、Cr:0.5〜2
    %、Mo:0.3〜2%、Zr:0.5〜1.5%、残部Al
    と不純物とからなる組成の粉末アルミニウム合金で作ら
    れていることを特徴とする高強度アルミニウム合金製ポ
    ンプロータ。
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JP2003106265A (ja) * 2001-09-27 2003-04-09 Aisin Aw Co Ltd アルミ製オイルポンプ及びその製造方法
DE102007035239A1 (de) * 2007-07-25 2009-01-29 Joma-Hydromechanic Gmbh Rotorpumpe
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