JPH11107932A - 自動変速機用アルミニウム合金製トロコイドポンプ - Google Patents

自動変速機用アルミニウム合金製トロコイドポンプ

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JPH11107932A
JPH11107932A JP27463397A JP27463397A JPH11107932A JP H11107932 A JPH11107932 A JP H11107932A JP 27463397 A JP27463397 A JP 27463397A JP 27463397 A JP27463397 A JP 27463397A JP H11107932 A JPH11107932 A JP H11107932A
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alloy
pump
inner rotor
weight
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JP27463397A
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Toshiyuki Kosuge
敏行 小菅
Katsuyoshi Kondo
勝義 近藤
Yoshinobu Takeda
義信 武田
Masao Sagara
政夫 相良
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Toyo Advanced Technologies Co Ltd
Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Toyo Advanced Technologies Co Ltd
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ハウジングは勿論、ロータの加工も容易で経
済的に作れるA/T用Al合金製トロコイドポンプを提
供することである。 【解決手段】 ポンプハウジング4をブリネル硬さ70
〜120のAl−10〜15%(重量比で以下も同じ)
の溶体化時効硬化性鋳造合金で形成し、インナーロータ
1とアウターロータ2はAl−12〜15%Si−3〜
6%Fe−3〜6%Ni−1〜3%CrにMo、Zr、
Vの少なくともどれかを1〜3%添加した加工性の良い
P/MAl合金で形成し、さらに、圧力変動の抑制に有
効な円弧溝7と連絡溝8を付加した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動車用自動変
速機に用いられる軽量、高効率でしかも経済的に有利な
アルミニウム合金製トロコイドポンプに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】自動車用オイルポンプは軽量である程望
ましい。例えば、自動変速機(以下A/Tと称す)用オ
イルポンプの従来品は、鉄製(主に鋳鉄)のポンプハウ
ジングを使用しており、トロコイドポンプの場合、全体
重量が5kgを越えているが、これをAl合金化すると
ポンプ重量は2kg以下となり、約60%の軽量化が図
れ、自動車の燃費向上やポンプ駆動力の低減等に大きく
貢献することができる。
【0003】ところが、実機使用に耐え、しかも工業的
に満足できるAl合金製A/T用オイルポンプは今だに
実現されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】実用的で製造し易くて
経済的なAl合金製A/T用オイルポンプを実現できて
いない理由は、ロータに要求される性能を材料合金の特
性のみに依存して確保しようとしていたことにある。
【0005】以下、この点に関し、この発明を完成する
に至った経緯を混じえて詳しく説明する。
【0006】先ず、オイルポンプ用として検討の対象に
挙げられる既存のAl合金としては、ピストンや軸受等
の摺動部品に利用されているAC8BやA390等のA
l−Si系溶製(I/M)合金、急冷凝固粉末冶金法で
得られるAl−高Si系(Si含有量20〜40重量
%)の粉末(P/M)合金、この合金のSiに代えてS
iC、TiC、Al2 3 等の硬質セラミック粒子を添
加したAl基複合材料(MMC)、Al−高Zn系のP
/M合金などがあるが、これ等はいずれも耐摩耗性、高
温強度、靱性などに問題があり、高圧下で高速摺動する
A/T用オイルポンプのロータ材料としては適正に欠け
る。このため、本出願人の1社は、ロータ材料として適
した高耐摩耗性、高強度Al合金を開発して特開平4−
314983号で提案している。
【0007】これは、Feを最大で12%(重量比表
示、以下も同じ)、Niを最大で10%、Siを最大で
20%含有させ、さらに、Cu、Mg、Mn、Cr、M
o、Zrをそれぞれ少量ずつ添加したP/MAl合金で
ある。ところが、この合金は、A/T用オイルポンプの
ロータとして実機使用に充分に耐えるものとなすには、
Fe、Ni、Si等の添加量を上限近くまで増やす必要
があり、非常に加工し難いものになっている。
【0008】Siは、耐摩耗性を向上させるが、その量
が多くなるにつれて粉末の鍛造性が低下する。また、F
e、Niは、FeAl3 、Al9 FeNi、NiAl、
NiAl3 等の金属間化合物を生成して合金の高温強度
を向上させるが、その量が多くなるにつれて生成する金
属間化合物が粗大化し、合金の延性が低下する。このた
め、当該合金によるロータの製法は技術的に難度が高
く、製造コストを高める結果を招いている。
【0009】そこで、ロータに要求される性能を、材料
の特性のみに依存して確保するのではなく、他の方法で
材料の不充分な面を補って確保することを検討した。
【0010】その方法として、先ず、ロータの表面に、
実開昭60−147785号や実開昭62−12428
4号が提案しているような硬質皮膜(アルマイト、ニッ
ケル、クロムなどの膜)を形成して耐摩耗性を向上させ
ることを考えたが、これは、高圧、高速摺動条件下では
皮膜の剥離、破壊が生じる。即ち、高速摺動によりロー
タの温度は100〜150℃近くまで上昇することがあ
り、これにより素地のAlが軟化するため、高圧が加わ
ると素地と共に皮膜が破壊される。また、高速摺動では
ロータ同士或いはロータとポンプハウジングの焼付き
(凝着)摩耗が生じ易く、これによる皮膜の剥離、破壊
も起こる。さらに、摺動クリアランスを小さくしてポン
プ効率を高めようとすると皮膜厚みを高精度に制御する
必要があり、生産性にも問題があって好ましくなかっ
た。
【0011】このため、別法を摸索し、実験を重ねた結
果、Al合金製のロータを採用したオイルポンプでは吐
出圧力の変動(いわゆる脈動)によるポンプの微振動が
ロータの損傷、歯面の局所摩耗を助長させることを突き
止めた。
【0012】また、Al合金製オイルポンプにおいて
は、ロータの駆動方式もロータの摩耗に無視できない影
響を及ぼすことを見い出した。通常利用されている駆動
方式は、図2に示すように、インナーロータ1に、平行
な2面を有する小判形断面の軸穴1aをあけ、その穴に
駆動軸15を嵌合させてその軸からインナーロータに駆
動力を加えるが、Al合金製ロータを採用したポンプに
この駆動方式を採用すると、軸穴1aの穴面の異常摩耗
が起こる。
【0013】この圧力変動によるロータ摩耗、駆動方式
に起因するロータ摩耗は、焼結鉄のロータを用いた従来
のポンプでは、ロータが十分な強度、耐摩耗性を有する
ため、特に問題にはならず、一方、その摩耗が起こるよ
うなAl合金を用いると摩耗が起こる前にハウジングと
の焼付き等によってポンプが使用不能となることから、
全く予測できていなかった。
【0014】このように、Al合金製のオイルポンプで
は、圧力変動や駆動方式もロータ摩耗の原因となる。そ
こで、発明者等は、圧力変動の有効な抑制策並びに負荷
軽減効果の高い駆動方式と新しいAl合金材料を組合わ
せることを思いつき、種々の実験、検討を重ねてこの発
明を完成するに至った。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決したこ
の発明の自動変速機用アルミニウム合金製トロコイドポ
ンプは、駆動力を加えて回転させるインナーロータと、
このインナーロータに噛合させて従動回転させるアウタ
ーロータと、これ等のロータを収納するポンプハウジン
グとから成り、下記a)、b)、c)の条件を満たすも
のである。 a)ポンプハウジングが、ブリネル硬さ70〜120の
Al−10〜15重量%Si溶体化時効硬化性鋳造合金
である。 b)インナーロータとアウターロータが、Al−12〜
15重量%Si−3〜6重量%Fe−3〜6重量%Ni
−1〜3重量%Crのベース合金中に、Mo、Zr、V
の中から選ばれた少なくとも1種以上の金属元素を合計
で1〜3重量%含む組成の急冷凝固粉末アルミニウム合
金を用いて作られた素地硬さがmHv200〜250の
合金である。 c)吸入ポートと吐出ポート間においてポンプハウジン
グにアウターロータの外周部表面に沿った円弧溝が設け
られ、さらに、アウターロータの端面に各歯底部から外
径側に向かって伸びる連絡溝が設けられ、その連絡溝と
前記円弧溝を介して圧縮工程に移行したロータ間の歯間
室が圧縮のより進行した歯間室と連通する構造をもつ。
【0016】なお、ロータ用合金には、Cu、Mg、M
nなどが少量添加されていてもよい。
【0017】このトロコイドポンプは、下記d)の条件
を併せて満たすと、駆動方式によるロータ摩耗の問題も
解決される。 d)ポンプハウジングの端壁内面にボス部を設けてその
ボス部で軸受合金を介してインナーロータを回転可能に
支持し、さらに前記ボス部とは反対側からインナーロー
タの軸穴に挿入するシャフトフランジを設け、このシャ
フトフランジの外周に周方向に等ピッチでエッジの無い
突起を3個設けて各突起をインナーロータの軸穴内面に
対応して設けられた凹部に嵌合させ、その嵌合部の径方
向のクリアランスを前記ボス部によるインナーロータ支
持部の摺動クリアランスよりも大として入力軸からの駆
動力をシャフトフランジ経由でインナーロータに伝達す
る。
【0018】
【作用】ポンプハウジングは、量産性を考えると鋳造で
きるものが好ましい。従って、ポンプハウジングの材料
は、Al−Si系の溶体化時効硬化性鋳造合金(素地は
熱処理型2000系合金)とする。この合金中に添加さ
れたSiは、マトリックスのAl中に分散して合金の強
度、硬度を向上させる。また、表層部のSi晶が素地よ
りもわずかに表面に突出し、その硬質のSi晶が優先的
にアウターロータ及びインナーロータと摺動することで
素地の焼付きを防止する。このSiは、添加量が10%
(重量比による添加量であり、以下も同じ)未満では添
加の効果が薄く、一方、15%を越えると合金の強度、
靱性が低下する。また、ロータとの摺動クリアランスを
小さくしてポンプ効率を高めようとすると、切削による
精密仕上げが必要になるが、Si添加量が過剰になる
と、切削性も低下する。
【0019】また、この材料は、硬さ(ブリネル硬さ)
が70未満であるとロータとの摺動によりポンプハウジ
ングが摩耗し、ハウジングの耐久性が不充分になる。一
方、その硬さが120を越えると、ハウジングの切削性
が低下し、経済的な加工が望めなくなる。
【0020】次に、インナーロータとアウターロータの
材料を、先に述べた組成でしかも素地硬さがmHv20
0〜250のP/MAl合金に限定した理由を述べる。
【0021】構成元素の種類と添加量を限定したのは次
の理由による。
【0022】Si:Al素地中に微細かつ均一に分散し
て合金の耐摩耗性を向上させる効果が添加元素の中では
最も大きい。また、Fe、Ni、Crなどの遷移金属元
素とAlが反応してできる金属間化合物の粗大化を抑制
する働きもする。さらに、素地中に微細かつ均一に分布
することで合金の強度、硬度を向上させる。このSi
は、共擦り摺動での耐摩耗性を考えると、その量が12
%未満では効果が薄い。一方、15%を越えて添加する
と、ロータの熱膨張率がポンプハウジングのそれに比べ
て著しく低下し、ポンプを100〜150℃のオイル雰
囲気中で使用したとき、ロータとポンプハウジングの熱
膨張差でそれ等の間の摺動クリアランスが増大して圧力
漏れが生じ、ポンプ効率が低下する。
【0023】Fe:AlやNiと結合してFeAl3
それよりも微細なAl9 FeNiなどの金属間化合物を
生成し、合金の高温強度を改善する働きをする。このF
eの添加量は、3%未満であると高温強度の改善効果が
十分に高まらず、一方、6%を越えると生成される金属
間化合物が粗大化して合金の延性が低下する。
【0024】Ni:Alと結合してNiAl、NiAl
3 などの金属間化合物を生成する。また、前述のAl9
FeNiなどの3元系金属間化合物も生じさせて合金の
高温強度を向上させる。このNiも、添加量が少な過ぎ
ると高温強度の改善効果が不充分になり、一方、過剰に
添加すると合金の延性低下が起こるので、その量を3〜
6%に制限する。
【0025】Cr:これは合金の耐食性を向上させる。
また、それ自身が素地中に微細に分散すること及びAl
との微細な金属間化合物(例えばCrAl3 )を生成す
ることにより合金の強度を向上させるが、添加量が1%
未満であるとその効果が薄い。また、3%を越えて添加
すると、生成する金属間化合物が粗大化して合金の延性
が低下する。
【0026】Mo、V、Zr:これ等の元素はAl素地
中に微細かつ均一に分散して素地の強度と硬度を向上さ
せる。その量が1%未満では添加の効果が充分に現れ
ず、逆に3%を越えると合金の延性が低下して鍛造加工
が難しくなる。
【0027】なお、このロータ用の材料合金は、硬度が
不足するとロータの耐摩耗性が不充分になり、また、硬
過ぎるとポンプハウジングの摩耗が促進されるので、素
地硬さをmHV200〜250の範囲にする必要があ
る。また、I/MAl合金は、急冷凝固の効果が無いた
め、組成を同一にしてもロータ材料としては適さず、従
って、ロータ材料は、前述の組成のP/MAl合金とす
る。
【0028】次に、構造面での作用について述べる。こ
の発明のポンプは、ポンプハウジングに円弧溝を設け、
その円弧溝とアウターロータの端面に設けた連絡溝を介
して圧縮工程に移行した歯間室(ポンピングチャンバ)
を圧縮のより進行した歯間室に連通する構造にしたの
で、ポンプの圧力変動とそれによる微振動が効果的に抑
制される。
【0029】この構造は、本願発明者の中の一部の発明
者等が、ポンプの騒音低減を目的として開発し、実開平
1−25484号で提案しているものである。本願発明
者等は、この技術が本来の目的であるポンプの騒音低減
だけでなく、Al合金性A/T用オイルポンプにおいて
はロータの摩耗抑制にも優れた効果を発揮することを見
い出した。
【0030】ロータを焼結鉄で形成した従来のオイルポ
ンプは、ロータが圧力変動による負荷に十分に耐えるた
め、圧力変動による摩耗の問題は生じておらず、従っ
て、その圧力変動がAl合金製ポンプのロータの局所摩
耗やロータ歯面のピッチング摩耗の原因となることにつ
いては予測がつかず、そのためにAl合金製ロータの摩
耗抑制は専ら、材料の特性を改善することによってなさ
れていたのである。
【0031】上記の構造によると、圧縮開始直後の歯間
室に圧縮の進行した歯間室を経由して吐出ポートから圧
力の一部が還流し、歯間室の圧力が徐々に吐出圧に近づ
いて圧力変動が抑制される。従って、騒音だけでなく、
圧力変動によるロータの微振動も小さくなり、その微振
動によって誘起されるロータ歯面部の異常摺動等が減少
する。この効果により、強度や耐摩耗性の極度に高い材
料(これは加工し難い)を使用する必要がなくなった。
【0032】なお、自動車のエンジン用或いはA/T用
のオイルポンプにおいては、騒音低減のために、吐出ポ
ートのトレーリング側から吸入ポートのリーディング側
に向かって延び出すノッチをハウジングに形成し、その
ノッチを介して圧縮工程に移った歯間室を吐出ポートに
連通させることにより歯間室の圧力上昇を緩慢にするこ
とが行われているが、この構造では、満足のいくポンプ
ができない。何故なら、ノッチによる脈動抑制の効果は
ノッチを長くするほど高まるが、限られたスペース内で
長いノッチをつけることは設計上不可能であり、従っ
て、この方法による脈動抑制の効果には限界があり、A
l合金製ポンプでは材料の特性に対する依存度を高めな
いと実用に耐えるものが出来ない。
【0033】次に、この発明のポンプに適したロータ駆
動方式の作用、効果について述べる。
【0034】図2の方式で駆動するポンプにAl合金製
ロータを採用したところ、インナーロータの動力伝達面
(駆動力を受ける面)にしばしば異常摩耗が観察され
た。
【0035】ポンプ駆動時にインナーロータの軸穴部に
加わる力Nは、駆動力をP、駆動中心と動力伝達面のな
す角をαとすると、下式で求まる。 N=P/cosα ・・・(1) 図2の駆動方式では、αが大きくなること、及び動力伝
達面が2箇所しかないことにより、各動力伝達面の外端
部に加わる力が大きく、その力が圧力変動による振動発
生下で動力伝達面に作用するため、いわゆる叩き摩耗の
現象が起こって動力伝達面の異常摩耗が生じると考えら
れる。
【0036】また、図2の駆動方式では、インナーロー
タ1を駆動軸15で支持しているので両者の嵌合面に液
圧による押付け力も作用し、これも前述の叩き摩耗を促
進する原因になっている。
【0037】焼結鉄のロータは、十分な強度、耐摩耗性
を有しているので、図2の方式で駆動しても上記の異常
摩耗は生じない。従って、この図2の駆動方式自体がA
l合金製ポンプで問題となることについては全く把握で
きていなかった。
【0038】この発明で採用するロータの駆動方式は、
図1から判るように上記(1)式のαが非常に小さい。
また、駆動力の伝達を3箇所で行うので、個々の動力伝
達部に加わる力が、Pを一定と考えた場合、図2の方式
に比べて相当小さくなる。また、動力伝達をエッジの無
い突起と凹部とによって行うので局所への圧力集中も起
こらない。
【0039】さらに、インナーロータを軸受合金を介し
てハウジングに設けたボス部で支持するので、液圧によ
るロータ押付け圧が動力伝達部に加わらない。
【0040】この発明では、かかる駆動方式を前述の圧
力変動抑制策と組合わせて用いるので、インナーロータ
の軸穴面の異常摩耗も防止される。
【0041】
【発明の実施の形態】図1に、この発明のA/T用Al
合金製トロコイドポンプの実施形態を示す。
【0042】図の符号1は外周に歯面を形成したインナ
ーロータ、2は内周に歯面を形成したアウターロータ、
3は両ロータの歯面間に作り出される歯間室、4はポン
プハウジング、5は吸入ポート、6は吐出ポートであ
る。
【0043】インナーロータ1とアウターロータ2は、
Al−12〜15%Si−3〜6%Fe−3〜6%Ni
−1〜3%Crのベース合金中に、Mo、Zn、Vのい
ずれか又はそれ等の複数種を合計で1〜3%添加した組
成の、素地硬さがmHv200〜250のP/M合金で
形成されている。
【0044】ポンプハウジング4は、ロータ収納用の凹
部を有する本体部4aとカバー4bとから成り、本体部
4aに前述の吸入ポート5と吐出ポート6が形成されて
いる。このポンプハウジング4は、本体部4a、カバー
4bが共にブリネル硬さ70〜120のAl−10〜1
5%Si溶体化時効硬化性鋳造合金によって形成されて
いる。
【0045】7は、吸入ポート5と吐出ポート6間にお
いて本体部1aの内面に設けた円弧溝である。この円弧
溝7は、ここではアウターロータ2の外周面に沿う位置
に設けたが、アウターロータ2の外周部端面に沿って設
けてもよい。
【0046】8は、アウターロータ2の端面に、各歯底
部からロータ外周面に至らせて設けた連絡溝である。こ
の連絡溝8と円弧溝7を介して圧縮工程に移った直後
(閉じ切り直後)の歯間室3がより圧縮の進行した歯間
室に連通する。また、連通先の歯間室を介して吐出ポー
ト6とも瞬間的に連通し、これによる吐出ポート6から
の圧力環流で歯間室3の圧力上昇が緩慢かつ円滑になっ
てポンプの圧力変動が抑制される。
【0047】ポンプハウジングの本体部4aには、ロー
タ収納用凹部内に突出するボス部9を設けてある。その
ボス部9の外周とインナーロータ1の軸穴1aの内面に
それぞれ軸受合金10、11が取付けられ、その軸受合
金10、11を介してボス部9でインナーロータ1を支
持している。
【0048】12は駆動軸15の外周に取付けてボス部
9とは反対側から軸穴1a内に挿入するシャフトフラン
ジである(ここでは焼結鉄製のものを用いた)。このシ
ャフトフランジ12の外周には略半円の突起13を12
0°ピッチで計3個設けてある。また、軸穴1aの内面
には、各突起13を嵌合させる略半円の凹部14を周方
向に120°ピッチで計3個設けてある。なお、突起1
3と凹部14の径方向嵌合クリアランスcは、軸受合金
10、11間に設けられる摺動クリアランスよりも大き
くしてある。従って、突起13と凹部14の嵌合部に
は、液圧によるロータ押付け圧が全く加わらない。
【0049】以下に、より詳細な実施例を挙げる。
【0050】
【実施例1】表1に示す組成のP/MAl合金を準備し
た。同表の試料(1)〜(10)はこの発明のロータ用合
金、試料(11)〜(17)は比較合金である。これ等の試
料について、機械的特性(引張強度、伸び)と耐焼付き
性を調べた。
【0051】耐焼付き性の評価は、図3に示すスラスト
摩耗試験機を用いて同図に示す条件で同一種の材料を共
擦りする方法で行った。その結果を表2に示す。
【0052】また、同試験機を用いて、この発明のロー
タ用合金の中から任意に選んだ数種の試料とポンプハウ
ジング材であるAl−Si系I/M合金(I〜Xがこの
発明の合金、XI〜XIV は比較合金)との焼付き試験を行
った。その結果を表3に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】なお、表1の試料(1)は、Si量が12
%を下回るため、共擦り摺動での耐焼付き性が悪かっ
た。
【0057】また、試料(12)、(13)、(14)は、そ
れぞれSi、Fe、Niが上限の15%、6%、6%を
越えるため靱性、延性が悪く、鍛造加工し難いものにな
っている。
【0058】試料(15)も、Fe、Ni、Crの添加量
がいずれも上限を越えているため、靱性、延性が悪く、
経済的な加工が望めなかった。
【0059】さらに、試料(16)は、遷移金属元素(F
e、Ni、Cr)が未添加のため、高温引張り特性が不
十分であった。
【0060】試料(17)も、Mo、V、Zrの合計添加
量が3%を越えているため靱性、延性が悪かった。
【0061】また、表3のXI〜XIV の組合わせは、いず
れもハウジング用合金のSi添加量が不足し、その合金
の性能不足のために耐焼付き性に問題があった。
【0062】
【実施例2】図1の円弧溝7と連絡溝8を設けた圧力変
動抑制策有りのトロコイドポンプと、円弧溝7、連絡溝
8の無いポンプと、インナーロータへの動力伝達を図1
の方式で行うポンプと、図2の方式で行うポンプを試作
した。各ポンプのロータは、下記のP/MAl合金で形
成した。AとBはこの発明の条件を満たす合金、C、D
は比較のために用いた延性の悪い合金である。
【0063】合金A:Al−12%Si−3%Fe−5
%Ni−1%Cr−1%Mo 合金B:Al−15%Si−3%Fe−3%Ni−1%
Cr−1%Zr 合金C:Al−15%Si−5%Fe−8%Ni−1%
Cr−1%Mo−1%Zr 合金D:Al−18%Si−6%Fe−5%Ni−2%
Cr−1%Mo−1%V なお、いずれのポンプも、ハウジングは本体部、カバー
ともAl−12%Siの溶体化時効硬化性鋳造合金(T
6処理後のブリネル硬さ110)で形成した。
【0064】これ等の試作ポンプを下記の条件で駆動し
て各ポンプの耐久性を調べた。 この実験の結果を表4に示す。
【0065】
【表4】
【0066】この表4から判るように、合金C、Dより
も加工性の良い合金A、Bを用いたポンプは、圧力変動
の抑制策や動力伝達の改善策無しでは耐久性に問題があ
ったが、これ等の策を併用すると材料の特性の不十分な
面が補われて実用に耐えるものになる。
【0067】なお、ロータの歯面の摩耗はポンプ効率に
影響を及ぼす。円弧溝、連絡溝無しではその歯面の摩耗
が著しく、従って、この発明では動力伝達方式の改善よ
りも脈動抑制のための円弧溝、連絡溝の設置を優先させ
てこれを必須の要素に加えた。それと併せて図1の動力
伝達方式を採用すると、ポンプの耐久性はより向上す
る。
【0068】
【発明の効果】以上述べたように、この発明は、ロータ
に要求される性能を材料の特性のみに依存して確保する
考え方を改め、圧力変動の効果的な抑制策や動力伝達方
式の改善策を加えて材料合金の不十分な面を補うように
したので、強度、耐摩耗性の極度に高いAl合金でなく
ても実用に耐えるロータを形成することができる。これ
により、従来ネックとなっていたロータ加工の容易化が
図れ、軽量、高効率で経済的に有利なA/T用Al合金
製トロコイドポンプを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)この発明のトロコイドポンプの実施形態
をハウジングのカバーを外した状態にして示す正面図 (b)同上のポンプの縦断断面図
【図2】(a)従来のトロコイドポンプをハウジングの
カバーを外した状態にして示す正面図 (b)同上のポンプの縦断断面図
【図3】スラスト摩耗試験機の概要と試験条件を示す図
【符号の説明】
1 インナーロータ 1a 軸穴 2 アウターロータ 3 歯間室 4 ポンプハウジング 4a 本体部 4b カバー 5 吸入ポート 6 吐出ポート 7 円弧溝 8 連絡溝 9 ボス部 10、11 軸受合金 12 シャフトフランジ 13 突起 14 凹部 15 駆動軸
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 武田 義信 兵庫県伊丹市昆陽北1丁目1番1号 住友 電気工業株式会社伊丹製作所内 (72)発明者 相良 政夫 広島県広島市南区宇品東5丁目3番38号 トーヨーエイテック株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 駆動力を加えて回転させるインナーロー
    タと、このインナーロータに噛合させて従動回転させる
    アウターロータと、これ等のロータを収納するポンプハ
    ウジングとから成り、下記a)、b)、c)の条件を満
    たすことを特徴とする自動変速機用アルミニウム合金製
    トロコイドポンプ。 a)ポンプハウジングが、ブリネル硬さ70〜120の
    Al−10〜15重量%Si溶体化時効硬化性鋳造合金
    である。 b)インナーロータとアウターロータが、Al−12〜
    15重量%Si−3〜6重量%Fe−3〜6重量%Ni
    −1〜3重量%Crのベース合金中に、Mo、Zr、V
    の中から選ばれた少なくとも1種以上の金属元素を合計
    で1〜3重量%含む組成の急冷凝固粉末アルミニウム合
    金を用いて作られた素地硬さがmHv200〜250の
    合金である。 c)吸入ポートと吐出ポート間においてポンプハウジン
    グにアウターロータの外周部表面に沿った円弧溝が設け
    られ、さらに、アウターロータの端面に各歯底部から外
    径側に向かって伸びる連絡溝が設けられ、その連絡溝と
    前記円弧溝を介して圧縮工程に移行したロータ間の歯間
    室が圧縮のより進行した歯間室と連通する構造をもつ。
  2. 【請求項2】 ポンプハウジングの端壁内面にボス部を
    設けてそのボス部で軸受合金を介してインナーロータを
    回転可能に支持し、さらに前記ボス部とは反対側からイ
    ンナーロータの軸穴に挿入するシャフトフランジを設
    け、このシャフトフランジの外周に周方向に等ピッチで
    エッジの無い突起を3個設けて各突起をインナーロータ
    の軸穴内面に対応して設けられた凹部に嵌合させ、その
    嵌合部の径方向のクリアランスを前記ボス部によるイン
    ナーロータ支持部の摺動クリアランスよりも大として駆
    動軸からの駆動力をシャフトフランジ経由でインナーロ
    ータに伝達するようにした請求項1記載の自動変速機用
    アルミニウム合金製トロコイドポンプ。
JP27463397A 1997-10-07 1997-10-07 自動変速機用アルミニウム合金製トロコイドポンプ Pending JPH11107932A (ja)

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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012026294A (ja) * 2010-07-20 2012-02-09 Aisin Seiki Co Ltd 流体ポンプ
CN102678541A (zh) * 2012-05-25 2012-09-19 山东鑫亚工业股份有限公司 悬浮式摆线转子输油泵
CN103567696A (zh) * 2013-10-19 2014-02-12 沈阳黎明航空发动机(集团)有限责任公司 一种提高滑油泵流量性能的工艺加工方法
JP2021501279A (ja) * 2017-08-31 2021-01-14 杭州三花研究院有限公司Hangzhou Sanhua Research Institute Co.,Ltd. オイルポンプ

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