JP2912965B2 - 駆動試験機の電気慣性補償制御方法 - Google Patents

駆動試験機の電気慣性補償制御方法

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JP2912965B2 JP63287457A JP28745788A JP2912965B2 JP 2912965 B2 JP2912965 B2 JP 2912965B2 JP 63287457 A JP63287457 A JP 63287457A JP 28745788 A JP28745788 A JP 28745788A JP 2912965 B2 JP2912965 B2 JP 2912965B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は自動車等の駆動系の実車等価試験を実施する
駆動試験機の慣性補償制御方法に係り、特に高応答の補
償と高範囲の慣性量補償を可能とする電気慣性補償制御
方法に関する。
〔従来の技術〕
この種の慣性補償制御装置に関しては特開昭56−1015
31号公報に記載の駆動試験機の慣性補償制御装置が公知
である。
第6図は上記公知例における構成図を示す。1はエン
ジン、2はトランスミッション、3はトランスミッショ
ン軸、4はカップリング、5はトルクピックアップ、6
は直流電動機または電気動力計(以下たんに電動機と称
す)、8はパルスピックアップ、9は電流検出器、10は
サイリスタ電源装置、11はサイリスタゲートパルス発生
器、12は定電流制御演算増幅器(以下ACRと称す)、14
はトルク制御演算増幅器(以下ATRと称す)、15はF/V
(周波数/電圧)変換器、16は定常吸収トルク設定演算
器である。
以上はトルクピックアップ5をフィードバックとする
自動トルク制御系を構成しており、定常吸収トルク設定
演算器16の出力及び後述の慣性補償演算に出力に一致し
たトルクを電動機6に発生させている。
慣性補償は第6図において、微分器17,20で電動機6
の回転角加速度が算出され、それに慣性量設定器19、補
償量演算器22の出力が掛算された結果が、それぞれATR1
4、ACR12に与えられ、上述のトルク制御系で電気的に慣
性補償トルクを発生させて行なわれていた。
以下の説明に用いる記号の意味は、以下の通りであ
る。
Ie ;各図において、トルクピックアップ5より左側の
慣性量 Im ;各図において、トルクピックアップ5より右側の
慣性量 Ia ;試験機の全慣性量すなわち(Ie+Im) IΣ;被試験駆動系すなわち実車の全慣性量従って(I
Σ−Ia)が実車と試験機の慣性量の差になる ζφ;電動機6のトルク係数 FC ;定電流制御系の電流検出利得(ゲイン) KT ;トルク検出利得(ゲイン) Kω;エンジン回転検出利得(ゲイン)すなわちF/V変
換器107,パルスピックアップ106の利得 Ke ;エンジン速度制御系の利得(ゲイン) T1,T2;トルク制御系の補償時定数 T3 ;トルク検出遅れ時定数 T5 ;微分器17,20の遅れ時定数(F/V変換器15の遅れも
含) T6 ;微分器109の遅れ時定数 T7 ;エンジン速度制御系の応答時定数 TC ;定電流制御系の応答時定数 Te ;エンジン1の発生トルク Td ;試験機に対する駆動トルク Tm ;電動機6の発生トルク Tf ;トルクピックアップ5の検出トルク ωm;回転角速度(実回転数) ωp;回転角速度指令値(回転数指令値)mの角加速度pの角加速度 Vf ;トルクピックアップ5の検出電圧 VTp ;定常吸収トルク指令値 VIC ;過渡吸収もしくは駆動トルク指令値すなわち慣性
補償トルク VAC ;VICの電流指令換算値 VCp ;定電流制御系に対する指令値 〔発明が解決しようとする課題〕 電気慣性補償は、供試品の等価慣性モーメント分の慣
性トルクを電動機で電気的に発生させ、機械フライホイ
ールの代りに使用されるものである。しかし、電気慣性
補償には種々の制御遅れが存在し、この遅れをいかに小
さくして、機械フライホイールに近づけるか従来より課
題となっていた。
前記公知例では、トルクピックアップ5の検出遅れの
影響を無くすため、電流制御系にフォーシング電流指令
として、慣性補償を与える手段を採択し、応答の改善を
図ったものであった。
しかし、トルクピックアップ5の検出遅れについては
解決をみたが、以下に示す問題があった。
(a)回転角加速度の検出遅れの影響については解決さ
れていないため、応答が制限されていた。
第6図の等価変換制御ブロック図を第7図に示す。第
7図中の12bの伝達ブロックのT5が、上記の検出遅れに
相当するものである。又、12bは公知例における慣性補
償の過渡応答伝達関数であり、T5が大となることは応答
が悪くなることを示す。T5は第6図のF/V変換器15及び
微分器17,20の遅れである。
周知の通りF/V変換器には、速度に比例した周波数
(又はパルス)を電圧に変換するための変換遅れがあ
り、特に低速度では応答はいちじるしく劣化する。微分
器17,20は回転速度を微分して回転角加速度を演算する
ものであり、理想的には遅れ無しの完全微分器がよいこ
とはいうまでもない。しかし、完全微分器は対ノイズ,
微分器を構成するアンプの安定性上から原理的に成立し
ないのも又、周知の通りである。そのためアンプの発振
防止、および実用となるS/N比を確保した遅れを有する
不完全微分器が用いられているのである。
(b)前記従来技術は、第6図に示す通り慣性補償の制
御ループは電動機6の回転をパルスピックアップ8で検
知し、F/V変換器15で回転パルスを電圧に変換して、さ
らに微分器17,20で回転角加速度を演算し、それに補償
慣性量を掛算器18,21で掛算して慣性補償トルクを算出
して、その値を電動機6のトルク制御系で発生させるも
のである。以上で分る通り、従来の慣性補償制御系は、
電動機6の自己の回転からのフィードバックで、電動機
6自身が慣性補償トルクを発生する閉ループ制御であ
る。
このため以下の2つの問題があった。
(b)−1,閉ループ制御においては応答の速さと安定性
は裏腹の関係にあり、無条件で応答を上げることができ
ないことと、系として調整が難しいという問題があっ
た。
(b)−2,第7図の等価制御ブロック図に示す通り、慣
性補償の電流制御系へのフィードバックを含む等価伝達
関係12cの応答の早さを示す時定数が、試験機の全慣性
量Iaと被試験体の全慣性量IΣの比(即ち慣性補償範囲
で以下Ia/IΣと称す)により変化する。そのため、Ia/I
Σ比の変化により、系の安定性に限界が生じるという問
題があった。
従来技術でもIa/IΣの比により、時定数Tc,T5を増減
させ系の応答の一定化を図っている。しかし近年、低μ
路(低慣性シミュレーション)試験,電動機の交流モー
タ化のため、Ia/IΣの比が0.1〜10の高範囲補償の要求
がでて来ている。
これに対応するためには伝達関数12cの(Tc+T5)を1
00倍変化させる必要がある。Tcは定電流制御系の応答時
定数であるから、定電流制御系単独で考えれば、最少で
なければならない。よって変化させるとすればT5とな
る。T5の変化は伝達関数12cにおいて、分子の項が変化
する。自動制御理論上からいって、係る場合のT5の増減
は0.3〜3位が限界である。したがって従来技術におい
ては、上記(b)−2で述べた如く慣性補償の大幅な拡
大に対しては、系が不安定となるため対応できないとい
う問題が生じていた。
本発明の目的は、高応答,高範囲慣性補償を可能とす
るにある。
〔課題を解決するための手段〕
係る駆動試験機は、自動車等の走行をシミュレーショ
ンするものであるからして、駆動側のエンジン1は走行
速度パターンに従って運転される。即ち、駆動側のエン
ジン1は、速度パターンを再現する速度制御装置で運転
される。速度パターンで運転されるエンジン1の速度に
対して、慣性補償トルクを電動機6で発生させるのが慣
性補償の目的とする機能である。従来はこの機能を達成
するに、前に述べている通り電動機6の自己回転、即ち
エンジン1の実回転(速度)の角加速度で慣性補償を行
なっていた。しかし、以上から分る通り、エンジン1の
回転は速度パターンに従って再現されるのであるから、
速度パターンから直接演算された回転角加速度をもって
して慣性補償を行なっても、同一の機能を得られること
は明らかである。
よって、高応答かつ高範囲の慣性補償は上述の速度パ
ターンに基いて回転角加速度を検出する手段と、慣性量
設定器を設け、両者の信号を掛算した慣性補償トルクを
電動機のトルク制御系にトルクパターンとして与える手
段を設けることにより、実現される。
すなわち、上記の目的は、駆動原動機の回転速度が速
度パターン発生器の出力に基づいて速度制御装置により
制御され、該駆動原動機にトルクピックアップを備えた
出力軸を介して結合された吸収側電動機に、電流制御演
算手段とトルク制御演算手段とを介して慣性補償トルク
値が与えられる駆動試験機の電気慣性補償制御方法であ
って、慣性補償トルク値を与える方法が、前記速度パタ
ーン発生器の出力から回転角加速度を算出する手順と、
該回転角加速度と必要補償慣性量の設定値からトルク換
算慣性補償トルク値と電流換算慣性補償トルク値とを算
出する手順と、前記トルク換算慣性補償トルク値を前記
トルク制御演算手段の入力に加え、前記電流換算慣性補
償トルク値を前記電流制御演算手段の入力に加える手順
とを備えている電気慣性補償制御方法において、前記速
度制御装置の応答t1と、前記電流制御演算手段の応答Tc
と、前記回転角加速度の算出応答時間T6とが、t1≧T6
Tcとなるように設定されていることを特徴とする駆動試
験機の電気慣性補償制御方法により達成される。
また、駆動原動機の回転速度が速度パターン発生器の
出力に基づいて速度制御装置により制御され、該駆動原
動機にトルクピックアップを備えた出力軸を介して結合
された吸収側電動機に、電流制御演算手段とトルク制御
演算手段とを介して慣性補償トルク値が与えられる駆動
試験機の電気慣性補償制御方法であって、慣性補償トル
ク値を与える方法が、前記速度パターン発生器の出力か
ら回転角加速度を算出する手順と、該回転角加速度と必
要補償慣性量の設定値からトルク換算慣性補償トルク値
と電流換算慣性補償トルク値とを算出する手順と、前記
トルク換算慣性補償トルク値を前記トルク制御演算手段
の入力に加え、前記電流換算慣性補償トルク値を前記電
流制御演算手段の入力に加える手順とを備えている電気
慣性補償制御方法において、前記トルク換算慣性補償ト
ルク値は、被試験駆動系の全慣性量IΣ、試験機の全慣
性量Ia、トルクピックアップからみて駆動側の慣性量
Ie、回転角加速度ω′を用いて、ω′×(IΣ−Ie)で
与えられ、前記電流換算慣性補償トルク値は、同じく
ω′×(IΣ−Ia)で与えられることを特徴とする駆動
試験機の電気慣性補償制御方法としてもよい。
〔作用〕
被試験駆動系をなす駆動側原動機出力軸の回転速度
が、速度パターン発生器から出力される速度パターンに
従って制御され、該速度パターン発生器から出力される
前記速度パターンから前記出力軸の回転角加速度が算出
される。算出された回転角加速度に電流換算慣性量設定
器の出力が乗算され、電流換算慣性補償トルク値とし
て、電流制御演算手段が入力され、該電流制御演算手段
が、それに基いて吸収側電動機をその発生トルクが前記
速度パターンの場合に必要なトルクとなるように制御す
る。さらに、前記回転角加速度にトルク換算慣性量設定
器の出力が乗算されてトルク換算慣性補償トルク値とし
て出力され、トルクピックアップで検出されたトルク値
と比較されて、その偏差が演算される。演算された偏差
は前記電流制御演算手段に入力され、該電流制御演算手
段は、前記電流換算慣性補償トルク値に基く吸収側電動
機の発生トルクを、入力される前記偏差に基づいて増減
させる。
〔実施例〕
本発明の一実施例を第1図〜第5図に基いて説明す
る。駆動原動機1のトランスミッション2の出力軸に
は、パルス発生用回転歯車105およびパルスピックアッ
プ106が設けられている(以下、パルス発生用回転歯車1
05とパルスピックアップ106を一体として回転ピックア
ップ106と記す)。駆動原動機1には、さらに、そのス
ロットル101を遠隔操作するプッシュプルワイヤ102と、
該ワイヤを駆動する操作アクチュエータ103,速度パター
ン発生器108の出力信号と回転ピックアップ106の出力信
号の偏差に基いて操作アクチュエータ103を駆動し、駆
動原動機1の回転を速度パターン発生器が出力する速度
パターンに追従制御する速度制御装置104が接続されて
いる。
尚、実エンジン回転数は、前記出力軸の回転数をトラ
ンスミッション2のギヤー比で除した値である。しか
し、慣性補償が実行される軸回転は、トランスミッショ
ン2の出力軸回転に対してであり、これまでに述べたエ
ンジン回転数も、この意味のものである。エンジン回転
そのものを、直接エンジンの点火パルスから検出する場
合は、逆にトランスミッション2のギヤー比を乗じて、
トランスミッション2の出力軸回転数を算出する。
トランスミッション2の出力軸には、カップリング4
を介してトルクピックアップ5を備えたトランスミッシ
ョン軸3の一端が結合され、該トランスミッション軸3
の他端には、更にカップリング4を介して吸収側電動機
6が結合されている。該電動機6には、その回転を検出
するパルスピックアップ8が接続され、該パルスピック
アップ8の出力線は、F/V変換器15,定常吸収トルク設定
演算器16を経て、加算器14Aに接続されている。また、
トルクピックアップ5の出力線も、加算器14Aに接続さ
れ、該加算器14Aの出力線はトルク制御演算手段である
トルク制御演算増幅器(以下ATRと記す)14に接続され
ている。ATR14の出力側には、加算器12A,電流制御演算
手段である定電流制御演算増幅器(以下ACRと記す)12,
サイリスタゲートパルス発生器11,サイリスタ電源装置1
0,がこの順に直列に接続され、サイリスタ電源装置10は
吸収側電動機6に接続されている。サイリスタ電源装置
10と電動機6を接続する線には、電流検出器9が設けら
れ、電流検出器9の出力線は、加算器12Aに接続されて
いる。トランスミッション軸3以降に述べた第1図点線
枠(イ)内の上述の構成は、前記第6図に示す従来例と
同じであり、トルクピックアップ5の検知するトルクを
フィードバックとするトルク制御系をなしている。
前記速度パターン発生器108の出力側には、該速度パ
ターン発生器108の出力信号ωを微分して回転角加速
を演算する微分演算器109が接続され、該微分演
算器109の出力側に、並列に掛算器110,111の入力側が接
続されている。掛算器110の他の入力側にはトルク換算
慣性量設定器(以下慣性量設定器という)112が接続さ
れ、出力線は前記加算器14Aの入力側に接続されてい
る。また、掛算器111の他の入力側には電流換算慣性量
設定器(以下慣性量設定及び補償器という)113が接続
され、出力側は前記加算器12Aの入力側に接続されてい
る。
本実施例が従来例と異なるのは、前述の微分演算器10
9,慣性量設定器112および慣性量設定及び補償器113が設
けられた点にある。
本実施例において、トルクピックアップ5の検出遅れ
の影響をなくすため、ACR12へ、掛算器111の出力信号V
AC115である慣性補償トルクの電流指令換算値、つま
り、電流換算慣性補償トルク値が加算器12Aを経て直接
フォーシングとして与えられている。また、ATR14へは
掛算器110の出力信号VIC114であるトルク換算慣性補償
トルク値が加算器14Aを経て与えられている。ATR14へは
トルクピックアップ5の検出トルクが加算器14Aを経て
フィードバックされる。よって、トルクピックアップ5
により検出されるトルクが、目的とする慣性補償トルク
相当となるような信号が、ATR14へ与えられる必要があ
る。加算器14Aでは、トルクピックアップ5の検出トル
クと信号114の偏差が演算され、ATR14を経て加算器12A
に入力される。
トランスミッション軸3の回転角加速度をとして、
目的とする慣性補償トルクをTaとすれば、 Ta=×IΣ ……(1) IΣ:実車の全慣性量 である。試験機の全慣性量IaとIΣの差分の慣性トルク
をΔTaとすれば、 ΔTa=×(IΣ−Ia) ……(2) であり、このΔTa分を電動機6で発生させてやれば駆動
原動機1に加わるトルクがTaとなる。
トルクピックアップ5の検出トルクTfは、第4図に示
されるように、 Tf=×Im+Tm ……(3) Im:トルクピックアップより電動機側の全慣性量 Tm:電動機の発生トルク である。Tmが電動機の発生トルクであるから、(3)式
において、Tm=ΔTaであるTfと同一の値を信号114の値
とすればよい。(3)式のTmに(2)式が代入される
と、 Tf=×Im+(IΣ−Ia) =×(IΣ−Ie) ……(4) 但しIa=Im−Ie となる。よって信号114は(4)式の値で与えられる必
要がある。
次に電動機の発生トルクと電動機の電流値は界磁電流
一定であれば、1対1で比例する(直流電動機等で界磁
制御がある場合は別に述べる)。ACR12で制御されるト
ルクはTmそのものであり、Tm=ΔTaであればよいから、
信号115は(2)式の値で与えられる必要がある。
以上のことから、慣性量設定および補償器113の設定
出力は(IΣ−Ia),慣性量設定器112の設定出力は
(IΣ−Ie)であれば、目的の慣性補償が実現される。
Ia,Ieは試験機に定まった既知の値であり、前記設定機1
12,113は試験時のIΣの設定値に基いて、それぞれ、I
Σ−Ie,IΣ−Iaの値を算出する。また、それぞれの設定
器の実際の出力には、後述する各制御系のゲインを補正
する定数が乗じられる。
本実施例の動作を以下に説明する。速度パターン発生
器108に設定される速度パターンは、時間によって変化
する速度またはトランスミッション軸の回転数として設
定される。速度とトランスミッション軸の回転数は一義
的な関係のものであるから、以後回転数として説明す
る。速度パターン発生器108が出力する設定回転数ω
と、回転ピックアップ106のフィードバック信号とが比
較され、その偏差が零となるよう、速度制御装置104が
制御信号を出力し、この制御信号により、操作アクチュ
エータ103,プッシュプルワイヤ102,を介して駆動電動機
(以下エンジンという)1のスロットル101が調節され
る。その結果、速度パターン発生器108の出力する設定
回転数に、トランスミッション軸3の回転数が一致する
ようにエンジン1が運転される。
速度パターン発生器108が出力する設定回転数ω
は、微分演算器109により微分されて回転角加速度
となる。エンジン1は上述の通り、トランスミッショ
ン軸3の実回転数ωが設定回転数ωと一致するよう
に運転されるから、前記回転角加速度の算出は、ト
ランスミッション軸3の回転角加速度を検出するの
と同等である。速度制御装置104に遅れも誤差もなけれ
ば、であるが、速度制御装置104は応答遅れ
を有するから、を前時間で検出した値とな
る。この点が応答の改善上、重要である。
信号114は、このと慣性量設定器112の出力(IΣ
−Ie)が、掛算器110で掛算されたものに、以下に述べ
るゲイン補正値が乗じられたものである。第2図は第1
図に示される装置の制御ブロック図である。ブロック5a
がトルクピックアップ5の検出伝達関数で、KTがトルク
の検出ゲインであるから、信号114とトルク検出値とが
整合するには、信号114にゲインKTが乗算される必要が
ある。このため、第2図のブロック112に示される通
り、慣性量設定器112の設定値はKT(IΣ−Ie)とさ
れ、信号114の電圧値VICは、 VIC=KT(IΣ−Ie) ……(5) となる。同じく信号115はTmに整合するためには、第2
図のブロック12aで示されるACRの前向ゲインζφ/Fcで
除す必要があるから、慣性量設定および補償器113の設
定値は、(Fc/ζφ)・(IΣ−Ia)とされ、信号115の
電圧値VaCは、 となる。
つまり、が演算され、それに従って(6)式の値
である信号115(電流換算慣性補償トルク値)が、ACR12
に出力される。この電流換算慣性補償トルク値は、速度
パターンに従って駆動原動機が回転するとき、被試験駆
動系(例えば実車)の全慣性量と試験装置の慣性量の差
により補償されることが必要になるトルクを吸収側電動
機に、駆動側原動機の回転に遅れることなく発生させる
ためのものである。また、トルク換算慣性補償トルク値
として出力される、(5)式の値である信号114は、ト
ルクピックアップ5で検出されるべきトルク値であり、
トルクピックアップ5で検出されたトルク値との偏差
が、ACR12に加えられ、前記電流換算慣性補償トルク値
で制御される吸収側電動機の発生トルクの増減に用いら
れる。
信号114は・(IΣ−Ie),信号115は・(I
Σ−Ia)であれば、(1)〜(4)式を用いて述べたよ
うに、目的とする慣性補償トルクが得られ、これにゲイ
ン補正値 が乗ぜられて、装置を動作させる入力信号となり、慣性
補償が実施される。
第3図は第2図の等価制御ブロック図であり、F/V変
換器15,定常吸収トルク設定演算器16,は省略されてい
る。定常吸収トルクは走行抵抗相当のトルクであり、慣
性補償トルクの過渡特性に比して、一定値VTpとみなさ
れる。は実回転角加速度で(1)〜(4)式のと
同じであり、は前述のように、よりエンジンの
速度制御の応答遅れ時間分だけ前時間で出力される。し
たがって、第2図において、エンジン制御系のブロック
104a,107及び と、微分演算器109のT6,ACR系12aのTcとの遅れ時定数の
関係を決った条件で設定すれば、(6)式は(2)式の
ΔTa,即ち電動機のTmとして、時間基準に対して
は、遅れなく発生することが容易に想定される。その条
件は第3図において、104bはエンジン速度制御系の閉ル
ープ伝達関数,113aはACR系の慣性補償の過渡制御特性ブ
ロックであるから、両者の分母が、 であればよい。(7)式はT6,Tc,Kw,KeおよびT7の調整
によって実現される。実際的には、T6,Tcは最少とし
て、エンジン速度制御系のゲイン,Keと応答時定数T7
設定される。但し、Ia/(Kw・Ke)を必要以上に大きく
することは、速度パターン回転数が正しく実現されなく
なるという不具合が生じる懸念がある。各時定数のオダ
ーは、Tc=0.01〜0.025sec,T6=0.1〜0.2sec位である。
慣性補償の応答は、機械フライホイール(応答遅れ≒
零)と同等を目標とするから、T6の0.1〜0.2secのオダ
ーの遅れは慣性補償しては許容されないが、しかしエン
ジン速度制御系の応答遅れと比較すると同等オダーであ
り、よってエンジン速度制御系の応答を大幅に延ばす必
要はなく、エンジン速度制御系の応答の劣化を招くこと
なく、(7)式の設定は実現できる。
以上の応答の関係を第5図に時間Tを横軸に、回転速
度ω、回転角加速度、慣性補償トルクTaを縦軸にとっ
て示す。t2はT6相当で、t3はT6+Tcであり、t1はエンジ
ン速度制御系の応答を示し、(7)式の条件t3≦t1と設
定されている状態であり、は実回転よりも先行
するに基づいて演算されるから、に遅れ
なく追従し、従って慣性補償トルクTaは実回転に遅
れなく追従している状態を示している。しかし、従来の
方法では、実回転に対し、検出される回転角加速度
は、破線で示される′であり、この′に対し
て、慣性補償トルクTa′が生じるので、実際のに対
しては応答遅れが生じる。
第3図の113aの伝達関数がACR系の慣性補償の過渡特
性を示し、公知例と同じく全体の過渡応答が決定される
ことは第3図のブロック図から明らかであり、第7図
(公知例)の12bに対応することになる。ATR系への慣性
補償の入力信号は、第3図の109,112aの伝達関数で示さ
れるもので、速度パターン発生器108より指令値(オー
プンループ)で与えられている。このループは以下の通
り機能する。ACR系はATR系のマイナーループになってい
る。よって、113aの信号はATR系に対しては外乱とな
り、そのままではATRの14のVcpはそれを打消すように作
用する。これを防止するため、113aの出力信号と等価値
の112aの出力VICが、ATR系にも与えられる必要がある。
又、電動機のトルクは電動機の界磁一定の条件では理論
的には入力電流に1対1で比例するが、正確には電動機
の機械損分だけ、入力電流に対して減少する。ATR系は
実トルクのフィードバック5aのVfと突合となるから、AT
R系のブロック14の出力Vcpが上記の機械損分を補償する
ように機能する。又、ATR系において第3図より分る通
り、従来方式の第7図のブロック12cのように、Ia/IΣ
比で変化する伝達関数は含まれていないから、従来のよ
うにIa/IΣ比により系が不安定となる欠点は解消されて
いる。これは慣性補償トルク値が、いずれもオープンル
ープで与えられることによる。
電動機が界磁調整による定出力特性を有する場合、定
出力範囲では、電動機のトルクと入力電流は1対1で比
例しなくなる。その場合は、以下の通り補正が行われ
る。定出力範囲での回転数をNcとし、定出力範囲では一
定である電動機電圧をEcとすると Ec×ia=kc×Nc×Tm ……(8) ia:電動機への入力電流,Kc:定数 が成立つ。(8)式より となり、Kc/Ecは一定値であるから、Ncで補正してやれ
ばよい。よって、第1図において、慣性量および補償設
定器113に、破線で示される回転数信号20を取りこみ、
定出力範囲でのNcを演算して、(6)式にNcを乗じた なる値の信号115を出力すれば補正される。
上述の実施例はエンジン駆動の例であるが、電動機駆
動の場合も駆動電動機が速度制御装置を有し、速度パタ
ーン発生器に従った回転数で運転されるのであれば、同
様に本発明の方法が適用できる。
本実施例によれば、以上説明したように慣性補償の元
信号である回転角加速度は、速度パターンより直接演算
されるから、駆動側原動機の速度制御装置の応答遅れ分
実回転角加速度より前時間で出力され、回転角加速度の
検出遅れの影響を無くすことができるので、応答の大幅
改善の効果がある。
また、慣性補償制御系は吸収側電動機の自己の回転角
加速度によらず、オープンループで構成され、従来のク
ローズループによるフィードバックの因果律の影響が無
いから、慣性補償量の範囲(IΣ/Iaの比)により系の
不安定を招くことが無いので高範囲慣性補償が実現でき
た。
また、制御系がオープンループで構成されるから、従
来のフィードバックの因果律による調整の困難性が無く
なり、調整は大幅に容易になる効果もある。
〔発明の効果〕 本発明によれば、慣性補償の元信号である回転角加速
度が、速度パターン発生器の出力信号を微分して求めら
れ、駆動側の速度制御装置の応答遅れ分だけ実回転角加
速度より前時間で出力されるから、回転角加速度の検出
遅れが解消され、補償トルクの応答が改善される効果が
ある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例を示す系統図、第2図は第1図
の系統の制御ブロック図、第3図は第2図を等価変換し
て簡略化した制御ブロック図、第4図はトルクピックア
ップの検出トルクと各部慣性モーメントの関係を示す概
念図、第5図は慣性補償の応答を示す概念図、第6図は
従来例を示す系統図で、第7図は第6図の系統の制御ブ
ロック図である。 1……駆動側原動機、3……出力軸、5……トルクピッ
クアップ、6……吸収側電動機、12……電流制御演算手
段(ACR)、14……トルク制御演算手段(ATR)、101,10
2,103,104……速度制御装置、108……速度パターン発生
器、109……微分演算器、110,111……掛算器、112……
トルク換算慣性量設定器、113……電流換算慣性量設定
器。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】駆動原動機の回転速度が速度パターン発生
    器の出力に基づいて速度制御装置により制御され、該駆
    動原動機にトルクピックアップを備えた出力軸を介して
    結合された吸収側電動機に、電流制御演算手段とトルク
    制御演算手段とを介して慣性補償トルク値が与えられる
    駆動試験機の電気慣性補償制御方法であって、慣性補償
    トルク値を与える方法が、前記速度パターン発生器の出
    力から回転角加速度を算出する手順と、該回転角加速度
    と必要補償慣性量の設定値からトルク換算慣性補償トル
    ク値と電流換算慣性補償トルク値とを算出する手順と、
    前記トルク換算慣性補償トルク値を前記トルク制御演算
    手段の入力に加え、前記電流換算慣性補償トルク値を前
    記電流制御演算手段の入力に加える手順とを備えている
    電気慣性補償制御方法において、 前記速度制御装置の応答t1と、前記電流制御演算手段の
    応答Tcと、前記回転角加速度の算出応答時間T6とが、t1
    ≧T6+Tcとなるように設定されていることを特徴とする
    駆動試験機の電気慣性補償制御方法。
  2. 【請求項2】駆動原動機の回転速度が速度パターン発生
    器の出力に基づいて速度制御装置により制御され、該駆
    動原動機にトルクピックアップを備えた出力軸を介して
    結合された吸収側電動機に、電流制御演算手段とトルク
    制御演算手段とを介して慣性補償トルク値が与えられる
    駆動試験機の電気慣性補償制御方法であって、慣性補償
    トルク値を与える方法が、前記速度パターン発生器の出
    力から回転角加速度を算出する手順と、該回転角加速度
    と必要補償慣性量の設定値からトルク換算慣性補償トル
    ク値と電流換算慣性補償トルク値とを算出する手順と、
    前記トルク換算慣性補償トルク値を前記トルク制御演算
    手段の入力に加え、前記電流換算慣性補償トルク値を前
    記電流制御演算手段の入力に加える手順とを備えている
    電気慣性補償制御方法において、 前記トルク換算慣性補償トルク値は、被試験駆動系の全
    慣性量IΣ、試験機の全慣性量Ia、トルクピックアップ
    からみて駆動側の慣性量Ie、回転角加速度ω′を用い
    て、ω′×(IΣ−Ie)で与えられ、前記電流換算慣性
    補償トルク値は、同じくω′×(IΣ−Ia)で与えられ
    ることを特徴とする駆動試験機の電気慣性補償制御方
    法。
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