JP5200697B2 - シャシーダイナモメータの速度制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、シャシーダイナモメータの速度制御装置に係り、特に一般化プラントモデルに基づき、H∞制御、μ設計法と呼称されるコントローラ設計手法により作成した軸トルク制御部と速度制御コントローラを組み合わせたシャシーダイナモメータの速度制御装置に関するものである。
図11は特許文献1などによって公知となっているシャシーダイナモメータシステムの構成図を示したもので、Dyは動力計、Rは動力計Dyに連結されたローラ、IVはインバータ、SCは速度制御回路、TMは軸トルクメータ、EC1は動力計の回転数を検出するためのエンコーダ、EC2はローラ回転数を検出するためのエンコーダで、これら軸トルクメータTM、エンコーダEC1,EC2によって検出された各検出信号は速度制御回路RPに入力されてトルク電流指令が演算される。
図12は速度制御回路の構成図を示したもので、シャシーダイナモメータシステムやドライブトレインベンチシステムの動力計システムで速度制御する場合、PID制御による速度制御方式が採用されている。この速度制御方式では、角速度指令値w.refと角速度検出値w.detとの関係にのみ着目して制御ゲインを調整している。
特開2004−361255
シャシーダイナモメータシステムでは、動力計の機械系モデルは共振特性を持つ2慣性系となっている。また、特許文献1で示すように計測システムの負荷側、または駆動側で動力計測対象の機械慣性成分を電気的に補償する電気慣性制御方式が採られており、電気慣性制御はPID制御方式となっている。同様に、動力計もしくはローラの速度制御を行う場合もPID制御となっている。このPID制御方式は、前述のように角速度指令値w.refと角速度検出値w.detとの関係にのみ着目して制御ゲインを調整し、機械系の共振特性が考慮されていないため、速度制御応答を高めようとしたときに、機械系の共振特性に起因するハンチングや発散等の不安定現象が発生する。
また、シャシーダイナモメータシステムでは、機械系の共振特性以外に速度検出遅れやインバータのトルク応答遅れなども存在し、これら速度検出遅れやインバータのトルク制御応答遅れ要素なども考慮しないと、より高応答で安定した制御ができない。
そこで、本発明が目的とするとこは、高応答で安定な速度制御装置を提供することにある。
本発明の請求項1は、ローラをシャフトにて連結した動力計を設け、動力計とローラの回転数、及び軸トルクの各検出信号を速度制御回路に入力してトルク電流指令を生成し、このトルク電流指令に基づきインバータを介して動力計を制御する動力計システムの速度制御装置において、
前記速度制御回路に角速度指令と角速度検出を入力して軸トルク制御指令を出力する速度制御コントローラと、一般化プラントモデルに基づき、H∞制御、μ設計法と呼称されるコントローラ設計手法により算出した軸トルク制御回路で構成され、少なくとも前記動力計トルク指令と軸トルク検出を入力してトルク電流指令を生成する軸トルク制御コントローラを設け、この軸トルク制御コントローラを速度制御のマイナーループで用いることを特徴としたものである。
本発明の請求項2は、前記軸トルク制御コントローラに入力される信号は、前記軸トルク制御指令と軸トルク検出との差による軸トルク制御偏差であることを特徴としたものである。
本発明の請求項3は、前記軸トルク制御コントローラに入力される信号は、前記軸トルク制御指令と軸トルク検出との差による軸トルク制御偏差と、動力計角速度検出であることを特徴としたものである。
本発明の請求項4は、前記軸トルク制御コントローラに入力される信号は、前記軸トルク制御指令と軸トルク検出との差による軸トルク制御偏差と、ローラ角速度検出であることを特徴としたものである。
本発明の請求項5は、前記軸トルク制御コントローラに入力される信号は、前記軸トルク制御指令と軸トルク検出との差による軸トルク制御偏差、動力計角速度検出、及びローラ角速度検出であることを特徴としたものである。
本発明の請求項6は、前記軸トルク制御コントローラに入力される信号は、前記軸トルク制御指令、軸トルク検出、動力計角速度検出、及びローラ角速度検出のうちから任意に選択された複数であることを特徴としたものである。
以上のとおり本発明は、機械系の共振特性、軸トルク検出特性、動力計角速度検出特性、ローラ角速度検出特性、及びインバータ応答特性から任意の特性が考慮された軸トルク制御コントローラを速度制御のマイナーループ構成したものである。これにより、任意の各特性の考慮されたトルク電流指令を得ることが可能となり、共振特性が抑制されて高応答で安定なシャシーダイナモメータシステムの速度制御が可能となるものである。
図1は本発明の第1の実施例を示す構成図である。ASRは速度制御コントローラで、この速度制御コントローラASRは従来と同様に角速度指令値w.refと角速度検出値w.detを入力し、両者の関係にのみ着目してPID演算を施した制御ゲイン調整をし、軸トルク制御指令Dy.Trefを出力する。ATRは軸トルク制御コントローラで、軸トルク制御コントローラATRにはエンコーダEC2によって検出されたローラ角速度検出、エンコーダEC1によって検出された動力計角速度検出、及び前記軸トルク制御指令Dy.TrefとトルクメータTMにより検出された軸トルク検出との差信号である軸トルク制御偏差SHT.eが入力される。
軸トルク制御コントローラATRは、「H∞制御」「μ設計法」と呼称されるコントローラ設計手法により作成し、状態方程式のパラメータを算出して軸トルク制御部を構成するものである。なお、「H∞制御」「μ設計法」「一般化プラント」については、例えば、劉康志著、「線形ロバスト制御」、コロナ社、2002年などにおいて、ロバスト制御の一般的な教科書で説明されている。
図2は、軸トルク制御コントローラATRの一般化プラントの例で、また、図3はATR一般化プラントに用いられる機械系モデルを示したもので、それぞれは一般化プラントに基づき「H∞制御」または、「μ設計法」にて状態方程式のパラメータを算出するものである。
図2で示すATR一般化プラントモデルは、その外乱としてローラ表面駆動力w1、インバータトルク制御誤差w2、軸トルク指令w3、ローラ角速度観測ノイズw4、軸トルク観測ノイズw5、及び動力計角速度観測ノイズw6が入力され、制御量としてz1〜z5が出力される。30は軸トルク制御部で、観測量c-in1、c-in2、及びc-in3が入力される。軸トルク制御部30では軸トルク制御のための状態方程式のパラメータを設定し、ゲインが小さくなるようアルゴリズムに基づいてパラメータを決定するための所定の演算を実行し、動力計のトルク指令c-outを生成する。ここで、c-in1はローラ角速度検出、 c-in2は軸トルク制御偏差、c-in3は動力計角速度検出である。また、一般化プラントモデルでは、制御量としてz1〜z5が生成される。
入力された外乱には、それぞれは重み係数付加手段1(Gw1(s))〜6(Gw6(s))、及び20(Gz1(s))〜24(Gz5(s))において各別に重み付けされ、求める特性が得られるようになっている。すなわち、手段1は車両駆動力に重み付けされ、ある定数、または、高域でゲインが高くなるような特性となってローラの回転モーメントトルクJ1.Tとし機械系モデル40(Gmec(s))に入力される。手段2では、インバータのトルク電流制御誤差に重み付けし、ある定数、または、高域でゲインが高くなるような特性にする。手段3では、軸トルク指令に重み付けし、ある定数、または、高域でゲインが高くなるような特性にされて減算部12に出力する。手段4では、ローラ角速度観測ノイズに重み付けし、ある定数、または、高域でゲインが高くなるような特性にする。手段5では、軸トルク観測ノイズに重み付けてある定数とし、加算部11に出力する。手段6では、動力計角速度観測ノイズに重み付けし、ある定数、または、高域でゲインが高くなるような特性にして加算部15に出力する。
7はインバータ特性モデル部で、軸トルク制御部30の出力c-outに基づいてインバータの応答特性信号を生成し、手段2において重み付けされた信号と加算部13で加算され、動力計トルクJ2.Tとして機械系モデル40に入力される。
8は第1のエンコーダ特性モデルで、機械系モデル40で算出されたローラ角速度と、手段4で重み付けられたローラ角速度観測ノイズとの和(加算部14で)が入力されてローラ角速度を検出する。この信号はローラ角速度検出c-in1の観測量としてATRコントローラ30に入力される。また、加算部14でのローラ角速度検出信号は手段24に出力されて重み付けされ、ある定数、または、高域でゲインが高くなるような特性にされて、重み付きローラ角速度信号z5にされる。
9は軸トルクを検出するトルクメータ特性モデルで、機械系モデル40からの軸トルクK12.Tと、手段5で重み付けされた軸トルク観測ノイズとの和信号(加算部11での)に基づいてトルクメータ特性信号を生成して減算部12に出力する。減算部12では手段3で重み付けされた軸トルク指令との差演算が実行され、その差信号が軸トルク制御偏差c-in2としてATRコントローラ30に出力すると共に、手段16にも出力される。手段16では入力された軸トルク制御偏差に積分特性を持つ重み関数を付加し、ある定数、または、高域でゲインが低くなるような特性にされて、重み付き軸トルク制御偏差信号z3となる。
また、加算部11で求められた軸トルク観測誤差信号は、手段21に入力されて重み付けされ、ある定数、または、高域でゲインが高くなるような特性にされて、重み付き軸トルク信号z2となる。
10は動力計角速度を検出する第2のエンコーダ特性モデルで、機械系モデル40からの動力計角速度J2.wと、手段6で重み付けされた動力計角速度観測誤差との和信号(加算部15にて)に基づいてエンコーダ特性信号を生成し、この信号は動力計角速度c-in3の観測量として軸トルク制御部30に入力される。また、加算部15での和信号は手段23で重み付けされ、ある定数、または、高域でゲインが高くなるような特性にされて、重み付き動力計角速度信号z4となる。
軸トルク制御部30では、入力された観測量c-in1, c-in2,及びc-in3に基づき軸トルク制御のための状態方程式のパラメータを設定し、ゲインが小さくなるようアルゴリズムに基づいてパラメータを決定するための所定の演算を実行し、演算された動力計トルク指令c-outを生成してインバータ特性モデル部7に出力すると共に、手段20に出力する。手段20ではインバータのトルク電流指令に重み付けをし、ある定数、または、高域でゲインが高くなるような特性にして重み付トルク電流指令信号z1として出力する。
図3で示すATRの機械系モデル40は、動力計の機械特性を伝達関数で表現したもので、2慣性機械系のモデルである。この例での機械系モデルは、J1.TとJ2.Tを入力として持ち、J1.w、K12.T、及びJ2.wを出力として持つ。
同図において、41はローラ慣性モーメント要素で、その出力はローラ角速度J1.wとして一般化プラントへ出力すると共に、減算手段46に出力する。42はばね剛性要素で、減算手段46により演算された動力計角速度とローラ角速度の差信号が入力されてシャフト捩れトルクK12.T信号として一般化プラントへ出力すると共に、加算手段44と減算手段45に出力する。加算手段44では、ローラ表面にかかる車両駆動力によるローラの回転モーメントJ1.Tとシャフト捩れトルクK12.Tが加算されてローラ慣性モーメント要素41に入力する。また、減算手段45では、入力された動力計トルク信号J2.Tとシャフト捩れトルクK12.Tの差信号が求められて動力計慣性モーメント要素43に出力され、この動力計慣性モーメント要素43において動力計角速度J2.wを演算して一般化プラントへ出力すると共に、減算手段46に出力する。
この実施例によれば、機械系の共振特性、軸トルク検出特性、動力計角速度検出特性、ローラ角速度検出特性、及びインバータ応答特性を考慮された軸トルク制御コントローラATRを速度制御のマイナーループに構成したものである。これにより、各特性の考慮されたトルク電流指令を得ることが可能となり、共振特性が抑制されて高応答で安定なシャシーダイナモメータシステムの速度制御が可能となる。
図4は、本発明の第2の実施例を示す構成図で、図1と異なる点は、軸トルク制御コントローラATRに入力される信号を、軸トルク制御指令Dy.TrefとトルクメータTMからの軸トルク検出との差による軸トルク制御偏差SHT.eと、動力計角速度検出としたことである。この場合、軸トルク制御コントローラATRにおける状態方程式のパラメータが異なってくるが、軸トルク制御を速度制御のマイナーループ構成としたことにより、共振特性が抑制されて高応答で安定なシャシーダイナモメータシステムの速度制御が可能となる。
図5は、本発明の第3の実施例を示す構成図で、図1と異なる点は、軸トルク制御コントローラATRに入力される信号を、軸トルク制御指令Dy.TrefとトルクメータTMからの軸トルク検出との差による軸トルク制御偏差SHT.eと、ローラ角速度検出としたことである。この場合も、軸トルク制御コントローラATRにおける状態方程式のパラメータが異なってくるが、軸トルク制御を速度制御のマイナーループ構成としたことにより、共振特性が抑制されて高応答で安定なシャシーダイナモメータシステムの速度制御が可能となる。
図6は、本発明の第4の実施例を示す構成図で、図1と異なる点は、軸トルク制御コントローラATRに入力される信号を、動力計トルク指令Dy.TrefとトルクメータTMからの軸トルク検出との差による軸トルク制御偏差SHT.eのみとしたことである。この場合も、軸トルク制御コントローラATRにおける状態方程式のパラメータが異なってくるが、軸トルク制御を速度制御のマイナーループ構成としたことにより、共振特性が抑制されて高応答で安定なシャシーダイナモメータシステムの速度制御が可能となる。
図7は、本発明の第5の実施例を示す構成図で、図1と異なる点は、軸トルク制御コントローラATRに入力される信号を、ローラ角速度検出、軸トルク制御指令、動力計角速度検出、及び軸トルク検出としたことである。
この場合も、軸トルク制御コントローラATRにおける状態方程式のパラメータは異なってくるが、軸トルク制御を速度制御のマイナーループ構成としたことにより、共振特性が抑制されて高応答で安定なシャシーダイナモメータシステムの速度制御が可能となる。
図8は、本発明の第6の実施例を示す構成図で、図1と異なる点は、軸トルク制御コントローラATRに入力される信号を、軸トルク制御指令、動力計角速度検出、及び軸トルク検出としたことである。
この場合も、軸トルク制御コントローラATRにおける状態方程式のパラメータは異なってくるが、軸トルク制御を速度制御のマイナーループ構成としたことにより、共振特性が抑制されて高応答で安定なシャシーダイナモメータシステムの速度制御が可能となる。
図9は、本発明の第7の実施例を示す構成図で、図1と異なる点は、軸トルク制御コントローラATRに入力される信号を、軸トルク制御指令、ローラ角速度検出、及び軸トルク検出としたことである。
この場合も、軸トルク制御コントローラATRにおける状態方程式のパラメータは異なってくるが、軸トルク制御を速度制御のマイナーループ構成としたことにより、共振特性が抑制されて高応答で安定なシャシーダイナモメータシステムの速度制御が可能となる。
図10は、本発明の第8の実施例を示す構成図で、図1と異なる点は、軸トルク制御コントローラATRに入力される信号を、軸トルク制御指令、及び軸トルク検出としたことである。
この場合も、軸トルク制御コントローラATRにおける状態方程式のパラメータは異なってくるが、軸トルク制御を速度制御のマイナーループ構成としたことにより、共振特性が抑制されて高応答で安定なシャシーダイナモメータシステムの速度制御が可能となる。
本発明の実施形態を示す速度制御装置の構成図。 本発明に用いられる軸トルク制御コントローラの一般化プラント構成図。 機械系モデルの構成図。 本発明の他の実施例を示す速度制御装置の構成図。 本発明の他の実施例を示す速度制御装置の構成図。 本発明の他の実施例を示す速度制御装置の構成図。 本発明の他の実施例を示す速度制御装置の構成図。 本発明の他の実施例を示す速度制御装置の構成図。 本発明の他の実施例を示す速度制御装置の構成図。 本発明の他の実施例を示す速度制御装置の構成図。 シャシーダイナモメータシステムの構成図。 従来の速度制御装置の構成図。
符号の説明
Dy…動力計
IV…インバータ
RP…速度制御回路
R…ローラ
EC(EC1,EC2)…エンコーダ
TM…トルクメータ
ASR…速度制御コントローラ
ATR…軸トルク制御コントローラ
7… インバータ特性モデル部
8… 軸トルク特性モデル部
9… 第1のエンコーダ特性モデル部
10… 第2のエンコーダ特性モデル部
30…軸トルク制御部
40…機械系モデル

Claims (6)

  1. ローラをシャフトにて連結した動力計を設け、動力計とローラの回転数、及び軸トルクの各検出信号を速度制御回路に入力してトルク電流指令を生成し、このトルク電流指令に基づきインバータを介して動力計を制御する動力計システムの速度制御装置において、
    前記速度制御回路に角速度指令と角速度検出を入力して軸トルク制御指令を出力する速度制御コントローラと、一般化プラントモデルに基づき、H∞制御、μ設計法と呼称されるコントローラ設計手法により算出した軸トルク制御回路で構成され、少なくとも前記動力計トルク指令と軸トルク検出を入力してトルク電流指令を生成する軸トルク制御コントローラを設け、この軸トルク制御コントローラを速度制御のマイナーループで用いることを特徴とした動力計システムの速度制御装置。
  2. 前記軸トルク制御コントローラに入力される信号は、前記軸トルク制御指令と軸トルク検出との差による軸トルク制御偏差であることを特徴とした請求項1記載の動力計システムの速度制御装置。
  3. 前記軸トルク制御コントローラに入力される信号は、前記軸トルク制御指令と軸トルク検出との差による軸トルク制御偏差と、動力計角速度検出であることを特徴とした請求項2記載の動力計システムの速度制御装置。
  4. 前記軸トルク制御コントローラに入力される信号は、前記軸トルク制御指令と軸トルク検出との差による軸トルク制御偏差と、ローラ角速度検出であることを特徴とした請求項2記載の動力計システムの速度制御装置。
  5. 前記軸トルク制御コントローラに入力される信号は、前記軸トルク制御指令と軸トルク検出との差による軸トルク制御偏差、動力計角速度検出、及びローラ角速度検出であることを特徴とした請求項2記載の動力計システムの速度制御装置。
  6. 前記軸トルク制御コントローラに入力される信号は、前記軸トルク制御指令、軸トルク検出、動力計角速度検出、及びローラ角速度検出のうちから任意に選択された複数であることを特徴とした請求項1記載の動力計システムの速度制御装置。
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