JP2908234B2 - 活性化二酸化マンガンおよびその製造方法 - Google Patents

活性化二酸化マンガンおよびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、活性化二酸化マンガン
およびそれの製造方法にかかり、とくに、比表面積が大
きく経時劣化の小さい活性二酸化マンガンとそれの製造
方法に関するものである。
【0002】本発明にかかる二酸化マンガンは、比表面
積が大きい特長を生かして、下記の用途に用いられるも
のである。 空気浄化用の吸着剤…メルカプタン、アミン類等の悪
臭の除去用吸着剤、二酸化硫黄等有害な気体の吸着剤と
しての効果がある。 有害金属類の吸着剤…Hg, Cr, Pb等の重金属水溶液か
ら、これらの金属を除去するための吸着剤として有効で
ある。 有価金属類の吸着剤…地熱水等や海水等に含まれるL
i, Au等有価金属回収のための吸着剤として有効であ
る。 特殊気体の酸化剤…トリメチルアミン等、特殊なガス
を酸化するのに有効である。 その他…電池用原料、フェライト用原料、触媒等の二
酸化マンガンが使われる用途に有効である。
【0003】
【従来の技術】従来、二酸化マンガン(粉・粒状)の製
造方法としては、硫酸マンガン液を電解する方法、酸化
マンガンを酸素の存在下で加熱する方法、硝酸マンガン
を加熱する方法などが知られている。しかし、これらの
従来方法は、単に二酸化マンガンを得ることに主眼があ
り、機械的な粉砕や酸化加熱等の処理を経て製造されて
いるために、微粉化が難しく製品粒度に限界があった。
また、粒子表面を複雑な形状に加工することも不可能で
あった。その結果として、比表面積(BET値)が30〜
40m2/g程度のものしか得られないのが実情である。
【0004】これに対して、微細な酸化マンガンを得る
従来技術として、特開昭63−210029号公報では、フェロ
マンガン溶湯に酸素を吹きつける方法を提案している。
ただし、この方法の下で製造された酸化マンガンは、四
酸化三マンガン(Mn3O4)が主体であり、二酸化マンガン
(MnO2) ではない。そこで、従来、四酸化三マンガン(M
n3O4) を酸化性雰囲気中で加熱処理することにより、二
酸化マンガンにする方法も検討されてきたが、この方法
では、粒子表面の形状にはあまり変化がなく、粒度的に
は満足できても、比表面積(BET値)はせいぜい1〜
5m2/g程度のものしか得られないことが判った。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】結局、上記各従来技術
では、微細でしかも粒子の表面に多数の突起を有する比
表面積の大きな二酸化マンガンを製造することができな
かったのである。本発明の主たる目的は、特殊なガスや
重金属類等の吸着剤あるいは酸化剤として好適に用いら
れる、いわゆる粒度が小さくてしかも比表面積の大きな
活性二酸化マンガンを提供することにある。また、本発
明の他の目的は、上記の活性二酸化マンガンを、簡易に
かつ安価に製造する技術を確立することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の各目的に対し、本
発明は、 (1) 表面が凸凹で多数の気孔を有し、かつ平均粒径:0.
1 〜5μm で、比表面積(BET値)が50m2/g以上、好
ましくは150 m2/g以上である、ほぼ球状の多孔質体から
なる活性化二酸化マンガンを提案する。 (2) なお、上記微粒子表面の凸凹は、単に粗面という程
度のものではなく、多数の突起の連なりによって凸凹表
面を形造っているものである。 (3) 上記微粒子は、多孔質体であり、これは、連通する
開気孔のために二酸化マンガンが網状に骨格を形成して
なるものである。即ち、この多孔質体の気孔率は20〜70
%程度である。
【0007】上記の活性化二酸化マンガンは、下記の方
法によって製造することができる。即ち、 (4) 金属マンガンもしくはマンガン合金の塊または粒子
に対し、酸素ガスまたは酸素アセチレンガス, 酸素LP
Gガスである酸化性ガスを吹きつけることにより、前記
塊または粒子内マンガン分を蒸発気散させて急冷するこ
とにより粒子化させ、これによってMn3O4 を主成分と
する平均粒径が0.1 〜5μmのほぼ球状の微粒子状マン
ガン酸化物を形成し、この微粒子状マンガン酸化物を酸
処理して、Mn2+成分および他の不純物成分を溶解・除去
して、MnO2を骨格状に残し、開気孔率が20〜70%の多孔
状とすること、によって製造する。そして、この製造方
法の実施に当たっては、(5) 上記酸処理に当たっては、塩酸、硫酸および硝酸の
いずれか少なくとも1種以上の酸もしくはそれらの混酸
を用いることが好ましい。 (6) 上記酸処理に当たっては、常温常圧下でもよく、ま
た酸処理の温度を高温で行ってもよく、この場合、50℃
以上で処理することが好ましい方法である。
【0008】
【作用】上述したような構成にかかる本発明の活性化二
酸化マンガンは、比表面積が大きいことが第1の特徴で
ある。即ち、Mn3O4 を主体とする微粒子状マンガン酸化
物の比表面積が1m2/g程度にしかすぎないのに対し、
本発明触媒は、比表面積の値が 50 m2/g以上、好まし
くは150 m2/g以上と極めて大きい点にある。これは、
本発明者らの研究によれば、粒子状の四酸化三マンガ
ンの酸化物を、さらに酸処理することに起因して生じる
ものと考えている。特に、酸処理の温度を60℃以上と高
くした場合には、200 m2/g以上もの比表面積の触媒を
極めて容易に得ることができる。
【0009】本発明にかかる活性化二酸化マンガンの第
2の特徴は、表面に多数の突起が林立した状態の凸凹表
面を有すること、および、内・外部にわたって連通する
気孔によって、二酸化マンガンが網状(骨格状)に形成
された多孔質のほぼ球状の微粒子にしたことにある。し
かも、平均粒径が0.1 〜5μm で比較的純度の高い骨格
状に成長した二酸化マンガンを主成分とし、他に極少量
のFe2O3 , SiO2, Al2O3 , CaO, MgOなどの不純物で構
成した点にある。
【0010】なお、上記微粒子の凸凹表面は、多数の突
起群によって実質的に凸凹を形造って形成されている。
また、この微粒子は、酸処理に伴って生成する内・外部
にわたって連通する開気孔により、二酸化マンガンが網
状に成長して骨格を形成してなる、実質的に多孔質体と
なったものであり、粒子としての気孔率は20〜70%程度
である。
【0011】上述したように、多孔質二酸化マンガンの
表面が多くの突起による凸凹表面となる理由は明らかで
はないが、内部に形成される気孔が、酸処理によるMn2+
の溶け出した跡と考えられることから、おそらく、表面
の多数の突起もMn2+の溶け出したために、結果として形
成されたものと考えられる。
【0012】次に、本発明にかかる上記活性化二酸化マ
ンガンの製造について説明する。 (1) まず、反応容器内に収容した金属マンガンまたはフ
ェロマンガン等のマンガン合金塊または粒子に対し、酸
素ガス, あるいは酸素アセチレンガス、酸素LPGガス
などの酸化性ガスを吹きつけることにより、前記金属マ
ンガンまたはマンガン合金中のマンガン分を蒸発気散さ
せ、さらに気散飛行中に急冷して微粒子化させ、Mn3O4
を主成分とする平均粒径が 0.1〜5μm であるほぼ球状
の微粒子状マンガン酸化物とする。
【0013】(2) 次に、得られた微粒子状マンガン酸化
物を、塩酸、硫酸および硝酸のいずれか少なくとも1種
の酸もしくはそれらの混酸を加えることにより、酸処理
前の粒径を維持しつつ、粒子内部まで存在するMn2+成分
(すなわち、Mn3O4 中、MnO成分)および不純物成分等
を溶解し、除去し、MnO2を骨格(スケルトン)とする凹
凸表面で網状になった多孔質な表面積の大きい触媒、即
ち、二酸化マンガンを得ることができる。
【0014】本発明製造方法において、出発原料として
は、上述したように、金属マンガンの他、マンガン合
金、例えば、フェロマンガンの塊または粒子を用いる。
なかでも転炉にて高炭素フェロマンガンから中・低炭素
フェロマンガンに脱炭・溶製する際に発生する酸化マン
ガンなどを出発原料とすることがとりわけ有効である。
【0015】発明において、上記出発原料は、酸処理
に先立って下記のように処理して、微粒子状マンガン酸
化物とする。属マンガンまたはフェロマンガン塊また
は粒子に、酸素ガスもしくは酸素アセチレンガスや酸素
LPGガスを吹き付けて、上記のようにして回収した微
粒子状酸化マンガン。
【0016】このようなマンガン酸化物を酸処理材料と
して用いる理由は、上記のようにして得た微粒子状マン
ン酸化物は、平均粒径が0.1 〜5μm の微細な球状粒
子であること、そして、主成分が四酸化三マンガンであ
るために、後述する酸で処理したときに全Mn分に対し約
2/3 相当のMn2+成分のみが溶解し、Mn4+成分が無数の突
起を有する粒子となって残る性質を有するからである。
即ち、このことによって二酸化マンガンの比表面積が大
きなものになるのである。しかも、もともと微粉である
ことから、粉砕工程が不要になるため、不純物混入す
るおそれもなく高純度のものが製造できる。
【0017】次に、本発明製造方法においては、上述し
たマンガン酸化物(Mn3O4)を、常温もしくはそれ以上の
温度,(例えば50℃以上) に加熱した硫酸, 塩酸等の酸に
浸漬して酸処理し、これによってMn2+成分および不純物
成分等を溶解・除去してMnO2を網状に残すことによって
最終製品(活性化二酸化マンガン)とする。
【0018】以上説明したような方法によって製造され
る本発明にかかる活性化二酸化マンガンは、発明者らが
調査し測定したところによれば、製造条件にかかわらず
出発原料の性状に依存して、常に二酸化マンガンを主成
分とし、平均粒径が0.1 〜5μm で、表面に多数の突起
を有して凸凹表面を形成し、内部は開気孔を形成してMn
O2を網状に残すほぼ球状の多孔質となり、しかもその比
表面積(BET値)が50m2/g以上、好ましいものでは15
0 m2/g以上の球状微粒子となる。
【0019】なお、本発明製造方法において、上記酸処
理は常温以上の温度で行われる。この処理に用いる酸
は、1wt%以上で、酸化マンガンと等モル以上の重量の
塩酸、硫酸または硝酸であればいずれも使用が可能であ
り、1種類あるいは2種類以上を混合して用いても良
く、その濃度も任意に選択できる。この酸処理について
は、常温常圧下で2時間程度、好ましくは50℃以上で4
時間以上行うことが好ましい。そして、この酸処理後
は、濾過をしたり、さらにアルカリ溶液で中和してもよ
い。
【0020】
【実施例】実施例 容器内に収容したフレーク状金属マンガンに、酸素ガス
を吹き付けて得た酸化マンガン粒子 250gに、20%塩酸
1100ccを常温常圧下で徐々に添加し、攪拌しながら70℃
で2時間加熱した後、濾過を行なった。この濾過後の不
溶物に対し、さらにもう一度、20%塩酸1200ccを添加
し、同様の操作を繰り返した後、不溶物をアルカリ溶液
で中和し、再び、濾過、洗浄して120 ℃で乾燥した。こ
のようにして得られた活性化二酸化マンガン粉末の、化
学成分を表4に、粒度分布を表5に、そして比重および
比表面積(BET値)を表6に示す。また、ここで得ら
れた活性化二酸化マンガンの電子顕微鏡写真(×20000)
をそれぞれ、図1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の製造方法
の下で得られた二酸化マンガンは、超微粒子表面に無数
の突起を有する凸凹表面になっているために、比表面積
が大きく、それ故に、脱臭等の空気浄化、重金属を含む
廃水の無害化処理、地熱水あるいは海水からのLi, Au等
有価金属の回収、その他一般に吸着剤が有効な分野、及
び一般に二酸化マンガンが有効な分野に好適に用いられ
る。しかも、その製造も極めて容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】製品二酸化マンガンの粒子形状を示す電子顕微
鏡写真である。
フロントページの続き (72)発明者 松波 幸男 山形県西置賜郡小国町大字小国町字滝ノ 二重2の232 日本重化学工業株式会社 小国工場内 (56)参考文献 特開 平2−145431(JP,A) 特開 平2−145432(JP,A) 特開 平6−92639(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C01G 45/02 B01J 20/06

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面が凸凹で開気孔率が20〜70%の気孔
    を有し、かつ平均粒径が0.1 〜5μm で、比表面積(B
    ET値)が50m2/g以上である、ほぼ球状の多孔質体から
    なる活性化二酸化マンガン。
  2. 【請求項2】 金属マンガンもしくはマンガン合金の塊
    もしくは粒子に対し、酸素ガスまたは酸素アセチレンガ
    ス, 酸素LPGガスである酸化性ガスを吹きつけること
    により、Mn3O4 を主成分とするほぼ球状のマンガン酸化
    物を形成し、このマンガン酸化物を酸処理して、Mn2+
    分および他の不純物成分を溶解・除去して骨格状にMnO2
    を残すことを特徴とする活性化二酸化マンガンの製造方
    法。
  3. 【請求項3】 上記酸処理に当たっては、塩酸、硫酸お
    よび硝酸のいずれか少なくとも1種以上の酸もしくはそ
    れらの混酸を用いることを特徴とする請求項に記載の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 上記酸処理に当たっては、酸処理の温度
    を常温もしくは常温を超える温度で処理することを特徴
    とする請求項2〜のいずれか1項に記載の製造方法。
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