JP2897502B2 - 金属系材料の熱処理装置 - Google Patents

金属系材料の熱処理装置

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JP2897502B2
JP2897502B2 JP3347443A JP34744391A JP2897502B2 JP 2897502 B2 JP2897502 B2 JP 2897502B2 JP 3347443 A JP3347443 A JP 3347443A JP 34744391 A JP34744391 A JP 34744391A JP 2897502 B2 JP2897502 B2 JP 2897502B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属系材料の熱処理装
置に係わり、特に、金属系材料への水素の吸蔵およびこ
の水素を吸蔵した金属系材料からの水素の放出を行うこ
とにより、前記金属系材料の組織を変更して物性調整あ
るいは金属系材料の破砕を行うようにした熱処理装置に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば金属系材料の物性調整等
(例えば、希土類(R)ーFeーB系合金の結晶粒の微
細化による磁気特性の向上、あるいは、Ti系合金の組
織の粗大化による疲労強度や耐クリープ特性の改善)を
行う一方法として、前述したように、ある処理温度下
で、前記金属系材料に水素を吸蔵させたのちに再度その
水素を放出させることにより、金属組織を変更すること
が行われており、その熱処理装置として従来において
は、図4に示す構造のものが検討されている。
【0003】この熱処理装置1は、金属系材料Wが搬入
されるとともに、この金属系材料Wを所定の処理温度に
加熱する熱処理炉2と、この熱処理炉2に給気路3を介
して接続され、反応用の水素を貯蔵する水素ボンベ4
と、前記熱処理炉2に接続され、この熱処理炉2内の気
体を吸引して排気する排気手段5と、この排気された気
体を焼却処理して大気へ放出する排気処理手段6とを備
えた構成となっている。
【0004】そして、この熱処理装置1においては、金
属系材料Wを前記熱処理炉2内に搬入して真空引きを行
ったのちに、前記水素ボンベ4から熱処理炉2内に水素
を供給するとともに、この熱処理炉2内の温度を500
℃〜1000℃に保持することにより、前記金属系材料
Wを水素ガス雰囲気中において所定温度に加熱して水素
を吸蔵させ、次いで、熱処理炉2内の温度を前記温度に
保持しつつ、熱処理炉2内を真空状態まで減圧すること
により、水素を吸蔵した金属系材料Wから水素を放出さ
せるようにしている。
【0005】また、金属系材料Wから放出された水素
は、排気手段5によって排気され、後段の排気処理手段
6において燃焼させられたのちに装置外へ放出されるよ
うになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前述の従来
の技術においては、金属系材料の熱処理に用いられる水
素は、水素ボンベ4から熱処理炉2へ供給されたのちに
排気処理手段6を経て大気へ放出されるものであるか
ら、一処理工程毎に新たな水素を供給しなければなら
ず、この結果、水素の消費量が膨大なものとなってしま
い、加えて、この水素を貯蔵するために、大容量の水素
ボンベ4が必要となるといった問題点を有している。
【0007】一方、このような問題点への対処方法とし
て、例えば、熱処理炉2から排出される水素を供給側の
水素ボンベ4へ戻すことが考えられる。
【0008】しかしながら、このような方法において
も、一旦気化した水素を液体に戻す液化処理施設が必要
となり、これによって熱処理装置が全体として大型化す
るとともに、処理施設の建設コストの高騰を招いてしま
い、有効な解決手段とはなり得ていない。
【0009】そして、特に、前記熱処理を複数の熱処理
炉を用いて行う場合には、水素の供給系を各熱処理炉毎
に設けなければならないことから、設備の一層の大型化
を招く。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、前述した従来
の技術における問題点を有効に解消し得る金属系材料の
熱処理装置を提供せんとするもので、請求項1記載の金
属系材料の熱処理装置は、金属系材料に水素を吸蔵させ
る水素吸蔵処理、および、前記水素を吸蔵した金属系材
料から水素を放出させる水素放出処理を行なう複数の熱
処理炉と、これらの熱処理炉へ給排される水素を貯蔵す
る水素吸蔵合金からなる水素貯蔵手段と、前記各熱処理
炉と前記水素貯蔵手段とを連通させて、これらの間に水
素流通用の閉回路を形成する複数の連通路と、これらの
複数の連通路の一つを選択的に前記水素貯蔵手段へ連通
させる切り換え手段と、これらの熱処理炉および水素貯
蔵手段のそれぞれに設けられ、これらの内部圧力および
内部温度を測定する圧力センサーならびに温度センサー
と、これらの各センサーの検出信号に基づき、熱処理炉
および水素貯蔵手段の内部圧力あるいは温度を調整する
ことにより、前記熱処理炉の処理状態に応じて、熱処理
炉への水素の供給および排出を行う制御手段とを具備し
てなることを特徴とする。
【0011】また、請求項2記載の金属系材料の熱処理
炉は、金属系材料に水素を吸蔵させる水素吸蔵処理、お
よび、前記水素を吸蔵した金属系材料から水素を放出さ
せる水素放出処理を行う複数の熱処理炉と、これらの熱
処理炉へ給排される水素を貯蔵する水素吸蔵合金からな
る水素貯蔵手段と、前記各熱処理炉と前記水素貯蔵手段
とを連通させるとともに、各熱処理炉から放出される水
素を水素貯蔵手段へ送り込む排気路と、前記水素貯蔵手
段から各熱処理炉へ水素を供給する供給路と、前記排気
路に連設されて、前記各熱処理炉内の気体を吸引して水
素貯蔵手段へ送り込む真空排気手段と、前記供給路に連
設されて、前記各熱処理炉へ供給される水素の圧力を調
整する圧力調整手段と、これらの複数の排気路および供
給路の一つを選択的に前記水素貯蔵手段へ連通させる切
り換え手段と、前記熱処理炉および水素貯蔵手段のそれ
ぞれに設けられ、これらの内部圧力および内部温度を測
定する圧力センサーならびに温度センサーと、これらの
各センサーからの検出信号に基づき、熱処理炉および水
素貯蔵手段の温度ならびに真空排気手段の作動を調整す
ることにより、前記各熱処理炉の処理状態に応じて、各
熱処理炉への水素の供給および排出を行う制御手段とを
具備してなることを特徴とする。
【0012】
【作用】請求項1記載の金属系材料の熱処理装置におい
ては、熱処理炉が金属系材料へ水素を吸蔵させる工程に
ある場合に、制御手段によって制御される圧力制御手段
および温度制御手段により、水素貯蔵手段内の温度が所
定温度に保持されかつ所定圧力に減圧されるとともに、
熱処理炉内の温度が所定温度に保たれかつ所定圧力に加
圧される。
【0013】これによって、水素貯蔵手段を構成する水
素吸蔵合金において、吸蔵されていた水素が放出される
現象が生じるとともに、熱処理炉内において金属系材料
への水素の吸蔵現象が生じる。
【0014】ここで、水素貯蔵手段から放出された水素
が熱処理炉へ順次送られると、金属系材料の水素吸蔵処
理が行われる。
【0015】また、熱処理炉が金属系材料から水素を放
出させる工程にある場合には、制御手段によって制御さ
れる圧力制御手段と温度制御手段により、熱処理炉内の
温度が所定温度に保持されかつ所定圧力まで減圧される
とともに、水素貯蔵手段内の温度が所定温度に保持され
かつ所定圧力まで加圧される。
【0016】これによって、熱処理炉内において金属系
材料からの水素の放出現象が生じ、かつ、水素貯蔵手段
の水素吸蔵合金において水素の吸蔵現象が生じる。
【0017】ここで、金属系材料から放出された水素
が、水素貯蔵手段へ送り込まれると、この水素が水素吸
蔵合金に順次吸収されて回収される。
【0018】これによって、水素は水素貯蔵手段と熱処
理炉との間で循環させられることとなる。
【0019】そして、一つの熱処理炉における水素放出
処理が完了し、処理に用いられた水素が水素貯蔵手段へ
吸蔵されると、切り換え手段によって水素貯蔵手段が他
の熱処理炉へ連通させられ、かつ、前述した制御手段の
作用によりこの他方の熱処理炉へ水素が供給されるとと
もに、他方の熱処理炉において水素吸蔵処理が行われ
る。
【0020】このような水素貯蔵手段と複数の熱処理炉
との接続状態の切り換えによって、一つの水素貯蔵手段
によって複数の熱処理炉への水素の給排が行われ、か
つ、複数の熱処理炉が平行して稼働させられる。
【0021】また、請求項2記載の金属系材料の熱処理
装置は、熱処理炉が金属系材料へ水素を吸蔵させる工程
にある場合には、まず、制御手段によって制御される温
度制御手段により、熱処理炉および水素貯蔵手段の内部
温度が所定温度に保持される。
【0022】一方、前記水素貯蔵手段は水素を吸蔵した
状態に保持されて、加圧状態となされており、また、熱
処理炉は減圧状態となされていることから、圧力調整手
段が作動させられることにより、水素貯蔵手段内の水素
が熱処理炉へ流れ込み、水素貯蔵手段の内部圧力が低下
し、熱処理炉の内部圧力が上昇する。
【0023】これによって、水素貯蔵手段の水素吸蔵合
金において水素の放出現象が生じ、また、熱処理炉にお
いて金属系材料による水素吸蔵現象が生じる。
【0024】この結果、水素貯蔵手段から熱処理炉へ水
素が順次送り込まれ、熱処理炉において金属系材料の水
素吸蔵処理が行われる。
【0025】また、熱処理炉が金属系材料から水素を放
出させる工程にある場合には、制御手段によって制御さ
れる温度制御手段により、熱処理炉および水素貯蔵手段
の内部温度が所定温度に保持され、かつ、真空排気手段
が作動させられて、熱処理炉内の気体が吸引されて水素
貯蔵手段へ送り込まれることにより、前記熱処理炉の内
部が減圧されるとともに水素貯蔵手段内が加圧される。
【0026】これによって、熱処理炉内において金属系
材料からの水素の放出現象が生じ、かつ、水素貯蔵手段
の水素吸蔵合金において水素の吸蔵現象が生じる。
【0027】この結果、金属系材料から放出された水素
が、水素貯蔵手段へ順次送り込まれて、この水素貯蔵手
段内の水素吸蔵合金に吸収されて回収される。
【0028】そして、この場合においても、水素は水素
貯蔵手段と熱処理炉との間を循環させられる。
【0029】そして、一つの熱処理炉における水素放出
処理が完了し、処理に用いられた水素が水素貯蔵手段へ
吸蔵されると、切り換え手段によって水素貯蔵手段が他
の熱処理炉へ連通させられ、かつ、前述した制御手段の
作用によりこの他方の熱処理炉へ水素が供給されるとと
もに、他方の熱処理炉において水素吸蔵処理が行われ
る。
【0030】このような水素貯蔵手段と複数の熱処理炉
との接続状態の切り換えによって、一つの水素貯蔵手段
によって複数の熱処理炉への水素の給排が行われ、か
つ、複数の熱処理炉が平行して稼働させられる。
【0031】
【実施例】以下、請求項1記載の発明の一実施例につい
て、図1および図2を参照して説明すれば、図中、符号
10は本実施例の金属系材料Wの熱処理装置を示し、こ
の熱処理装置10は、前記金属系材料Wに水素を吸蔵さ
せる水素吸蔵処理、および、前記水素を吸蔵した金属系
材料Wから水素を放出させる水素放出処理を行なう複数
の(本実施例においては2つの場合を示した)熱処理炉
11(11a・11b)と、これらの熱処理炉11(1
1a・11b)へ給排される水素を貯蔵する水素吸蔵合
金Mからなる水素貯蔵手段12と、前記各熱処理炉11
(11a・11b)と前記水素貯蔵手段12とを連通さ
せて、これらの間に水素流通用の閉回路を形成する複数
の連通路13(13a・13b)と、これらの複数の連
通路13(13a・13b)の一つを選択的に前記水素
貯蔵手段12へ連通させる切り換え手段14と、これら
の熱処理炉11および水素貯蔵手段12のそれぞれに設
けられ、これらの内部圧力および内部温度を測定する圧
力センサー15ならびに温度センサー16と、これらの
各センサー15・16の検出信号に基づき、熱処理炉1
1および水素貯蔵手段12の内部圧力あるいは温度を調
整することにより、前記熱処理炉11の処理状態に応じ
て、熱処理炉11への水素の供給および排出を行う制御
手段17とを具備した概略構成となっている。
【0032】次いで、これらの詳細について説明すれ
ば、前記熱処理炉11は、グラファイト、タングステ
ン、あるいは、モリブデン等からなる真空容器内にヒー
ター18を備えた内熱式や、カンタル、シリコニット等
の真空容器外にヒーター18を備えた外熱式のものが用
いられ、本実施例においては、外熱式の熱処理炉11を
示した。
【0033】そして、これらの外熱式および内熱式の熱
処理炉11は、処理対象となる金属系材料Wの種類によ
って適宜変更されるものである。
【0034】前記水素貯蔵手段12は、図2に示すよう
に、外殻を形成する圧力容器19と、この圧力容器19
内に、その内周面と所定間隔をおいて配設された良熱伝
導体材料からなる伝熱容器20と、この伝熱容器20の
中央部に配設された多孔質体からなるサポートチューブ
21と、このサポートチューブ21と前記伝熱容器20
との間に形成された空間部に充填された水素吸蔵合金M
と、前記伝熱容器20を取り囲んで設けられたヒーター
22とによって構成されている。
【0035】前記水素吸蔵合金Mとしては、RーNi系
合金(Rは希土類元素)、TiーFeーMn系合金、T
iーMn系合金等、常温付近で水素吸蔵および放出速度
の大きい合金が用いられている。
【0036】一方、前記圧力容器19の壁部には、この
壁部を貫通して前記サポートチューブ21の内部へ位置
させられた連通管23と、圧力容器19の内部圧力と内
部温度、すなわち、水素吸蔵合金M周りの圧力および温
度を測定する前記圧力センサー15および温度センサー
16が設けられている。
【0037】また、前記ヒーター22には、このヒータ
ー22に供給する電流を制御することにより、その発熱
量を制御して、前記圧力容器19内の温度を調整する温
度制御手段24が接続されている。
【0038】さらに、前記圧力容器19に接続された連
通管23の途中には、前記水素貯蔵手段12および熱処
理炉11内の圧力を制御する圧力制御手段25が設けら
れており、この圧力制御25は、前記両連通路13(1
3a・13b)へ前記切り換え手段14を介して接続さ
れるとともに、この切り換え手段14の作用により、前
記各連通路13(13a・13b)を介しての前記各熱
処理炉11への選択的な連通およびその遮断がなされ、
かつ、前記連通管23に設けられた開閉弁26によって
前記水素貯蔵手段12との連通およびその遮断がなされ
るようになっている。
【0039】また、前記圧力制御手段25は、これらの
容積を増減させる構成でかつ装置外部との気体の交換の
ない構成のもの、例えば、シリンダー等が用いられてお
り、前記制御手段17により前記各熱処理炉11(11
a・11b)と圧力容器19とに選択的に連通させられ
るようになっており、連通させられたこれらの容積を拡
大することにより前記各熱処理炉11(11a・11
b)あるいは圧力容器19内を減圧して、その内部の水
素を取り込み、また、容積を減少させることにより、各
熱処理炉11(11a・11b)あるいは圧力容器19
内を昇圧するとともに、その内部に水素を送り込むよう
になっている。
【0040】そして、前記各熱処理炉11(11a・1
1b)には、前記水素貯蔵手段12と同様の温度制御手
段27(27a・27b)が設けられており、これらの
各温度制御手段27(27a・27b)は、前記制御手
段17へ接続されて、この制御手段17からの制御信号
に基づき各ヒーター18・22への供給電流を制御する
ようになっている。
【0041】前記制御手段17は、中央演算回路(以下
CPUと称す)28と、このCPU28の作動プログラ
ムが記憶されたリードオンリーメモリ(以下ROMと称
す)29と、熱処理炉11の制御プログラムが記憶され
たランダムアクセスメモリ(以下RAMと称す)30
と、これらのCPU28、ROM29、および、RAM
30にバスラインを介して接続されて、前記各圧力セン
サー15、温度センサー16、温度制御手段24・2
7、および、圧力制御手段25との信号の授受を行うI
/Oインターフェース31とによって構成されている。
【0042】ここで、本実施例において熱処理の対象と
される金属系材料Wの組成の一例について示せば、以下
のとおりである。
【0043】その一つは、RーFeーB系合金(Rは希
土類元素)で次のような組成を有する。 R :10〜20at% B : 3〜10at% Fe:残部および不可避不純物 また、必要に応じて次の組成が添加される。 Co:0.1〜50at% M :0.001〜5.0at% 但し、MはAl、Si、Ga、Ti、V、Cr、Zr、
Nb、Mo、Hf、Ta、W、C、Nの内の1種又は2
種以上である。
【0044】また、他の一つは、Ti系合金の構造材で
あり、例えば次の合金組成が挙げられる。
【0045】1)Al:6.5wt%、Sn:1.4w
t%、Zr:1wt%、Mo:2.9wt%、Cr:
2.1wt%、Fe:1.7wt%、および、残部がT
iである合金 2)Al:6wt%、V:4wt%、および、残部がT
iである合金 3)Al:6wt%、Sn:2wt%、Zr:4wt
%、Mo:2wt%、および、残部がTiである合金 4)V:10wt%、Fe:2wt%、Al:3wt
%、および、残部がTiである合金
【0046】他に、希土類ーNi系合金、ZrーCo系
合金等の水素吸蔵合金の活性化処理や、粉末化処理とし
ても使用できる。
【0047】前述のように構成された本実施例の熱処理
装置10において金属系材料Wの熱処理を行う場合の具
体例について説明すれば、以下のとおりである。
【0048】(実施例1)まず、熱処理に用いられる金
属系材料Wとして、前者のRーFeーB系合金を用いた
実施例について説明する。
【0049】表1の1〜4に示す組成のRーFeーB系
合金を、プラズマ・アーク溶解炉にて溶解鋳造したのち
に、それぞれAr雰囲気中で1130℃、20時間の条
件で均質化処理を行う。この金属系材料Wは、粒径12
0μm程度の粗大な強磁性相を有する。
【0050】
【表1】
【0051】このような金属系材料Wが一方の熱処理炉
11a内に設置されると、熱処理炉11a内の大気が図
示しない機器によって真空引きされたのち、制御手段1
7により両温度制御手段22へ制御信号が出力されて、
熱処理炉11aおよび水素貯蔵手段12の加熱が開始さ
れる。
【0052】一方、前記熱処理炉11aおよび水素貯蔵
手段12の内部温度が、それぞれに設けられている温度
センサー16によって検出されて、制御手段17へフィ
ードバックされており、このフィードバック信号に基づ
き、各温度制御手段24・27へ出力される制御信号が
補正されることにより、熱処理炉11aが約850℃の
所定温度に保持され、また、水素貯蔵手段12の内部温
度が約70℃の所定温度に保持される。
【0053】これより制御手段17から開閉弁26へ駆
動信号が出力されて、この開閉弁26が開放されること
により、前記水素貯蔵手段12が圧力制御手段25へ連
通させられる。ここで、前記切り換え手段14は各連通
路13と圧力制御手段25との連通を遮断した状態に保
持されている。
【0054】続いて、前記制御手段17から圧力制御手
段25へ制御信号が出力されて、この水素吸蔵手段12
の水素ガスを前記圧力制御手段25へ吸い込むように作
動させられることにより、水素貯蔵手段12の圧力容器
19内の圧力が減少させられ、これによって、水素貯蔵
手段12内の水素吸蔵合金Mから水素が放出されるとと
もに、この水素が前記圧力調整手段25へ吸引される。
【0055】次いで、制御手段17から開閉弁26へ駆
動信号が出力されて、この開閉弁26が閉塞されるとと
もに、切り換え手段14が作動させられることにより、
水素吸蔵処理が行われる一方の熱処理炉11aと前記圧
力制御手段25とが連通させられる。
【0056】これより制御手段17から圧力制御手段2
5へ制御信号が出力されて、この圧力制御手段25が吸
い込んだ気体を熱処理炉11aへ送り出すように作動さ
せられることにより、熱処理炉11aの内部圧力が上昇
させられるとともに、水素貯蔵手段12から吸引された
水素が熱処理炉11aへ送り込まれる。
【0057】ここで、熱処理炉11aの内部圧力は、圧
力センサー15によって検出されて制御手段17へフィ
ードバックされており、このフィードバック信号に基づ
いて、前記圧力制御手段25の作動量が制御されること
により、前記熱処理炉11a内の水素ガス圧力が約1a
tmに保持される。
【0058】このような水素の供給が完了した後に、熱
処理炉11a内の温度が制御手段17によって約830
℃に調整されて、前記金属系材料が前記温度下において
約3時間保持され、これによって、金属系材料Wに水素
が吸蔵される。
【0059】次いで、前記熱処理炉11a内の温度を8
30℃に、また、水素貯蔵手段12の温度を10℃に保
持した状態で、圧力制御手段25へ制御信号が出力され
て、この圧力制御手段25が熱処理炉11内の気体を吸
引するように作動させられる。
【0060】これによって、熱処理炉11a内の圧力が
減少させられることにより、金属系材料Wに吸蔵されて
いた水素が放出されるとともに、この水素が圧力調整手
段25へ吸引され、これによって前記金属系材料Wの脱
水素が行われる。そして、この時の前記熱処理炉11a
内の圧力は、圧力センサー15および制御手段17によ
る圧力制御手段25の作動量の制御により、1×10-1
Torr以下に保持される。
【0061】次いで、制御手段17からの駆動信号によ
り、切り換え手段14が作動させられて、圧力制御手段
25と一方の熱処理炉11aとの連通が遮断されるとと
もに開閉弁26が開放され、この後に、圧力制御手段2
5が作動させられることにより、この圧力制御手段25
によって吸引された水素が水素貯蔵手段12の圧力容器
19内へ送り込まれる。
【0062】この操作に伴い、前記圧力容器19内の水
素圧力が上昇させられることにより、送り込まれた水素
が水素貯蔵合金Mによって吸蔵され回収される。
【0063】次いで、熱処理炉11b内の大気が図示し
ない機器によって真空引きされ、この熱処理炉11b内
に前記金属系材料Wが搬入されて、この炉内温度が前述
と同様の操作によって所定温度に保持されているとき
に、圧力制御手段25によって水素貯蔵手段12から水
素が取り込まれ、これより、前記切り換え手段14が作
動させられることにより、前記他方の熱処理炉11bが
水素吸蔵手段12へ連通させられる。
【0064】次いで、圧力制御手段25が作動させられ
て、その内部の水素が他方の熱処理炉11bへ送り込ま
れ、この他方の熱処理炉11bにおいて前述と同様の水
素吸蔵処理が行われる。
【0065】このように他方の熱処理炉11bにおいて
水素吸蔵処理がなされている間、前記一方の熱処理炉1
1aでは、熱処理を終えた金属系材料Wの冷却、搬出、
あるいは新たな金属系材料Wの搬入操作が行われてい
る。
【0066】以上の操作が反復して行われることによ
り、金属系材料Wの熱処理が、各熱処理炉11a・11
bにおいて交互に行われる。
【0067】ちなみにこの処理を行った後の前記各組成
のNdーFeーB系合金は、400μm以下に粉砕さ
れ、かつ、粉末内部に0.2〜0.4μmのNd2Fe
14Bの再結晶粒からなる組織を有するとともに、所望
の磁気特性を有することが確認された。
【0068】このように、本実施例の熱処理装置10に
おいては、金属系材料Wの熱処理に用いられる水素が、
水素貯蔵手段12と各熱処理炉11(11a・11b)
との間で授受されて、水素の装置外への放出が抑制され
るから、水素の使用量が大幅に削減されるとともに、排
気処理系の諸設備が不要であるから、装置の大型化ない
しは設備費用の高騰が抑制される。
【0069】そして、2基の熱処理炉11を、それぞれ
の処理サイクルをずらして稼働させることにより、1基
分の必要水素が各熱処理炉11において交互に用いら
れ、この結果、熱処理炉11が増設された場合において
も、水素の使用量の増加が抑制されるとともに、装置の
大型化が最小限度に抑えられる。
【0070】しかも、水素貯蔵手段12として用いた水
素吸蔵合金Mが、同容量の従来のボンベに比較して、3
倍ないし4倍の水素貯蔵能力があることから、この点か
らも装置の小型化が図られる。
【0071】ここで、本実施例の熱処理装置10におい
て、水素貯蔵手段12における初期の水素貯蔵量を35
Nm3とし、前記各組成の金属系材料Wに対してそれぞ
れ10回の処理を行った後の水素の減少量を測定した結
果を表2の左欄に示す。
【0072】
【表2】
【0073】そして、前記表2の右欄は、比較のため
に、同様の前記各金属系材料Wについて、従来の装置に
よって熱処理を行った際の水素の減少量を示すものであ
る。
【0074】この結果からも明らかなように、本実施例
によれば、殆ど水素の減少が見られず、極めて大きな効
果が得られる。
【0075】(実施例2)次いで、金属系材料Wとして
後者のTi系合金を用いた実験例について説明する。
【0076】まず、表3の1.2で示す組成を有し、平
均粒径120μmのTi系合金粉末のそれぞれについ
て、温度750℃、2000atm、および、3時間保
持の条件下で熱間静水圧プレスを行い、所定形状の金属
系材料Wとしての構造部材を作成した。
【0077】
【表3】
【0078】この金属系材料Wを内熱式のグラファイト
・ヒーター備えた熱処理炉11内に設置し、この熱処理
炉11内の大気を図示しない機器によって真空引きした
のちに、熱処理装置10の各構成要素を制御手段17に
よって作動させることにより、前記実施例と同様にして
850℃、1atmの雰囲気下で前記金属系材料Wに水
素を吸蔵させ、その後に、850℃、1×10-4Tor
rの条件下で前記金属系材料Wの脱水素処理を行った。
【0079】このような熱処理によって、粗大なα+β
相を有するTi系合金が得られ、このような組成のTi
系合金は、高サイクル疲労強度や耐クリープ特性に優れ
ている。
【0080】そして、この場合にも、熱処理に用いられ
る水素は、水素貯蔵手段12と熱処理炉11との間で授
受されることにより、装置外への水素の漏洩が抑制され
る。
【0081】ここで、初期状態の水素貯蔵量を35Nm
3とした本実施例の装置によって、前記処理を各Ti系
合金に対してそれぞれ20回行った際の水素の減少量を
測定した結果を表4の左欄に示し、また、表4の右欄に
は、比較のために、本実施例の各Ti系合金に対して従
来の装置を用いて熱処理を行った場合における水素の減
少量を示した。
【0082】
【表4】
【0083】この結果からも明らかなように、本実験例
においても水素の減少はなく、従来装置に比して、大幅
な改善がなされている。
【0084】次いで、本発明の請求項2記載の一実施例
について図3を参照して説明すれば、以下のとおりであ
る。なお、以下の説明中、前記実施例と同様のものにつ
いては同一符号を用いて説明を間略化する。
【0085】本実施例に係わる金属系材料の熱処理装置
40は、金属系材料Wに水素を吸蔵させる水素吸蔵処
理、および、前記水素を吸蔵した金属系材料から水素を
放出させる水素放出処理を行う複数の熱処理炉11(1
1a・11b)と、これらの熱処理炉11(11a・1
1b)へ給排される水素を貯蔵する水素吸蔵合金Mから
なる水素貯蔵手段12と、前記各熱処理炉11(11a
・11b)と前記水素貯蔵手段12とを連通させるとと
もに、各熱処理炉11(11a・11b)から放出され
る水素を水素貯蔵手段12へ送り込む排気路41(41
a・41b)と、前記水素貯蔵手段12から各熱処理炉
11(11a・11b)へ水素を供給する供給路42
(42a・42b)と、前記排気路41(41a・41
b)に連設されて、前記各熱処理炉11(11a・11
b)内の気体を吸引して水素貯蔵手段12へ送り込む真
空排気手段43と、前記供給路42(42a・42b)
に連設されて、前記各熱処理炉11(11a・11b)
へ供給される水素の圧力を調整する圧力調整手段44
と、これらの複数の排気路41(41a・41b)およ
び供給路42(42a・42b)の一つを選択的に前記
水素貯蔵手段12へ連通させる切り換え手段45と、前
記各熱処理炉11(11a・11b)および水素貯蔵手
段12のそれぞれに設けられ、これらの内部圧力および
内部温度を測定する圧力センサー15ならびに温度セン
サー16と、これらの各センサー15・16からの検出
信号に基づき、各熱処理炉11(11a・11b)およ
び水素貯蔵手段12の温度ならびに真空排気手段43の
作動を調整することにより、前記各熱処理炉11(11
a・11b)の処理状態に応じて、各熱処理炉11(1
1a・11b)への水素の供給および排出を行う制御手
段17とを具備した概略構成となっている。
【0086】前記各真空排気手段43(43a・43
b)は、例えば真空ポンプであってその前後に開閉弁を
具備しており、本実施例においては各熱処理炉11(1
1a・11b)毎に設けられ、それぞれの吸引部が前記
各熱処理炉11(11a・11b)へ接続され、また、
排気部が前記切り換え手段45を介して前記水素貯蔵手
段12へ接続されており、これらの間に形成されている
前記排気路41は、気密に保持されている。
【0087】前記圧力調整手段44(44a・44b)
は、本実施例においては前記熱処理炉11(11a・1
1b)毎に設けられいるとともに、それぞれ開閉弁と減
圧弁とが具備されており、通常時においては開閉弁によ
って前記供給路42を閉塞して、水素貯蔵手段12と各
熱処理炉11(11a・11b)との連通状態を遮断
し、また、各熱処理炉11(11a・11b)への水素
の供給を行う場合には、前記減圧弁によって、各熱処理
炉11(11a・11b)へ供給される水素の圧力を1
atm以下に保持するようになされている。
【0088】なお、真空排気手段43、圧力調整手段4
4は、必ずしも各熱処理炉11毎でなくてもよく、切り
換え手段45をさらに加えることにより、複数の熱処理
炉11で兼用できる。
【0089】前記切り換え手段45は、前記各熱処理炉
11a・11b毎に設けられた真空排気手段43a(4
3b)と圧力調整手段44a(44b)が接続される流
路切り換え弁45a・45bと、これらの流路切り換え
弁45a・45bが接続されてこれらを選択的に前記水
素貯蔵手段12へ連通させる流路切り換え弁45cとに
よって構成されており、これらの各流路切り換え弁45
a・45b・45cの作動位置の組み合わせにより、次
のような4系統の水素の流路を形成するようになってい
る。
【0090】A;水素貯蔵手段12→流路切り換え弁4
5c→流路切り換え弁45a→圧力調整手段44a→一
方の熱処理炉11a B;一方の熱処理炉11a→真空排気手段43a→流路
切り換え弁45a→流路切り換え弁45c→水素貯蔵手
段12 C;水素貯蔵手段12→流路切り換え弁45c→流路切
り換え弁45b→圧力調整手段44b→他方の熱処理炉
11b D;他方の熱処理炉11b→真空排気手段43b→流路
切り換え弁45b→流路切り換え弁45c→水素貯蔵手
段12
【0091】また、本実施例においては、前記流路切り
換え弁45cと水素貯蔵手段12との間に、水素ボンベ
46が開閉弁47を介して連設されており、稼働初期に
おける水素の充填、あるいは、漏洩等による水素減少時
における補充用として用いられるものである。
【0092】前記開閉弁47は、前記真空排気手段43
および圧力調整手段44とともに前記制御手段17へ接
続されて、この制御手段17から出力される制御信号に
よって作動が制御されるようになっている。
【0093】一方、本実施例の熱処理装置40における
処理対象金属系材料Wは、前述の実施例において示した
ものと同様である。
【0094】そして、本実施例に係わる熱処理装置40
において、例えば、一方の熱処理炉11a内に金属系材
料Wが設置されて装置が起動されると、制御手段17に
よって制御される各温度制御手段24により各加熱ヒー
ター18・22が発熱させられ、かつ、各温度センサー
16により各熱処理炉11および水素貯蔵手段12内の
温度情報が制御手段17へフィードバックされることに
より、前記熱処理炉11および水素貯蔵手段12の圧力
容器19内が所定の温度に保持される。
【0095】これより、前記各流路切り換え弁45a・
45b・45cが制御手段によって作動させられて、前
記Aで示した水素の流路が形成され、水素貯蔵手段12
から水素が、その圧力が圧力調整手段44aの減圧弁の
作用によって1atm以下に保持されつつ熱処理炉11
aへ供給される。
【0096】以上の操作によって、前記熱処理炉11a
内において、金属系材料Wへの水素の吸蔵処理が行われ
る。
【0097】金属系材料Wへの前述した水素吸蔵処理が
完了した後に、制御手段17によって流路切り換え弁4
5aが作動させられ、前記Bの流路が形成され、かつ、
圧力調整手段44の開閉弁が閉じられるとともに、真空
排気手段43aが作動させられることにより、前記熱処
理炉11a内の水素が吸引されて前記水素貯蔵手段12
へ送り込まれる。
【0098】これによって前記熱処理炉11a内が減圧
されかつ水素貯蔵手段12内が加圧され、熱処理炉11
において水素の放出現象が発生し、また、水素貯蔵手段
12の水素吸蔵合金Mにおいて水素の吸蔵現象が発生す
る。
【0099】この結果、熱処理炉11a内において金属
系材料Wへの脱水素処理が行われるとともに、金属系材
料Wから放出された水素が、排出路41aを経て水素貯
蔵手段12の水素吸蔵合金Mへ回収される。
【0100】このような操作が、両熱処理炉11a・1
1bにおいて交互に行われて、前記実施例と同様に、単
一の水素貯蔵手段12に蓄えられる水素が、各熱処理炉
11a・11bで交互に使用される。
【0101】そして、熱処理の繰り返しによって、ある
いは、点検等により系を外気へ開放させることによって
水素量が減少した場合には、本実施例に於ては、開閉弁
47が作動させられて、水素ボンベ46から所望量の水
素が装置へ補給される。
【0102】本実施例の熱処理における熱的条件や圧力
条件等は、前述した実施例とほぼ同様であり、また、熱
処理を行った金属系材料Wの特性についても前記実施例
とほぼ同様の結果が得られた。
【0103】そして、こような本実施例の熱処理におい
ても、熱処理に用いられる水素は、水素貯蔵手段12と
各熱処理炉11(11a・11b)との間で授受され、
装置外への漏洩が抑制されるから、水素の使用量が少な
くてすみ、かつ、2基の熱処理炉11(11a・11
b)が単一の水素貯蔵手段12により、1基の熱処理に
必要な水素量で稼働させられ、これにより装置の大型化
が最小限度に抑えられる。
【0104】しかも本実施例においては、熱処理炉11
(11a・11b)内の水素を直接水素貯蔵手段12へ
送り込むようにしたから、熱処理炉11内の減圧と水素
貯蔵手段12内の加圧、ならびに、水素貯蔵手段12へ
の水素の送り込み操作とが同時に行われ、操作系の簡略
化が図られる。
【0105】また、供給路42に圧力調整手段44を設
けたことにより、水素貯蔵手段12から熱処理炉11へ
供給する水素の圧力が精度よく制御され、安定した熱処
理が行われる。
【0106】なお、前記実施例においては、水素貯蔵手
段12内の加圧が真空排気手段43によって行われてい
るが、さらに、前記真空排気手段43と水素貯蔵手段1
2との間に加圧手段を設けて、この加圧手段によって水
素貯蔵手段12内の圧力をさらに上昇させることも可能
である。
【0107】これは、水素貯蔵手段12内に貯蔵される
水素量を増加させる際に有効な手段となるものである。
【0108】なお、前記各実施例において示した各構成
部材の諸形状や構成、あるいは、処理条件等は一例であ
って、適用する金属系材料の組成や設計要求等に基づき
種々変更可能である。
【0109】例えば、前記各実施例においては、熱処理
に水素ガスを用いた例について示したが、これに代え
て、不活性ガスとの混合気体を用いることも可能であ
り、この場合には、水素分圧を圧力制御の制御因子とす
ればよい。
【0110】また、熱処理炉11を2基設けた例につい
て示したが、これに限定されるものではなく、熱処理炉
11の工程のサイクルが重なり合わない範囲内であれ
ば、3基以上の熱処理炉11を設けることも可能であ
る。
【0111】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の請求項1
記載の金属系材料の熱処理装置によれば、次のような優
れた効果を奏する。
【0112】水素貯蔵手段と熱処理炉との間に水素の授
受を行う閉回路を形成して、前記水素を水素貯蔵手段と
熱処理炉との間で授受させて繰り返し使用可能とし、こ
れによって、水素の使用量を大幅に削減することができ
る。
【0113】また、複数の熱処理炉を単一の水素貯蔵手
段により、かつ、1基の熱処理に必要な水素量で稼働さ
せることができ、これによって生産性を向上させること
ができるとともに、水素の使用量の増加を抑制し、さら
には、装置の大型化を最小限度に抑えることができる。
【0114】さらに、水素貯蔵手段に水素吸蔵合金を用
いることにより、水素貯蔵能力を大きくして、水素を貯
蔵する容器等の小型化を可能とし、装置全体の小型化を
図ることができる。
【0115】一方、本発明の請求項2記載の金属系材料
の熱処理装置によれば、請求項1記載の熱処理装置に加
えて、次のような優れた効果を奏する。
【0116】熱処理に用いられた水素を、真空排気手段
によって熱処理炉から直接水素貯蔵手段へ送り込むこと
により、前記熱処理炉内の減圧操作、水素貯蔵手段内の
加圧操作、ならびに、水素の搬送操作を同時に行うこと
により、熱処理装置の操作系の簡略化を図ることができ
る。
【0117】また、熱処理炉への水素の供給を、圧力調
整手段を介して行うようにしたから、熱処理炉へ供給さ
れる水素の圧力をきめ細かく制御することができ、安定
した熱処理を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の請求項1記載の金属系材料の熱処理炉
の概略を示すブロック図である。
【図2】本発明の請求項1ならびに請求項2記載の金属
系材料の熱処理炉に用いられる水素貯蔵手段を示す一部
を破断した斜視図である。
【図3】本発明の請求項2記載の金属系材料の熱処理炉
の概略を示すブロック図である。
【図4】従来の金属系材料の熱処理炉を示すブロック図
である。
【符号の説明】
10 熱処理装置 11 熱処理炉 12 水素貯蔵手段 15 圧力センサー 16 温度センサー 17 制御手段 19 圧力容器 24 温度制御手段 25 圧力制御手段 40 熱処理装置 41 排気路 42 供給路 43 真空排気手段 44 圧力調整手段
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21D 1/00,1/74 C21D 1/76,6/00 C22F 1/02 F27D 7/06 H01F 1/053

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属系材料に水素を吸蔵させる水素吸蔵
    処理、および、前記水素を吸蔵した金属系材料から水素
    を放出させる水素放出処理を行なう複数の熱処理炉と、
    これらの熱処理炉へ給排される水素を貯蔵する水素吸蔵
    合金からなる水素貯蔵手段と、前記各熱処理炉と前記水
    素貯蔵手段とを連通させて、これらの間に水素流通用の
    閉回路を形成する複数の連通路と、これらの複数の連通
    路の一つを選択的に前記水素貯蔵手段へ連通させる切り
    換え手段と、これらの熱処理炉および水素貯蔵手段のそ
    れぞれに設けられ、これらの内部圧力および内部温度を
    測定する圧力センサーならびに温度センサーと、これら
    の各センサーの検出信号に基づき、熱処理炉および水素
    貯蔵手段の内部圧力あるいは温度を調整することによ
    り、前記熱処理炉の処理状態に応じて、熱処理炉への水
    素の供給および排出を行う制御手段とを具備してなるこ
    とを特徴とする金属系材料の熱処理装置。
  2. 【請求項2】 金属系材料に水素を吸蔵させる水素吸蔵
    処理、および、前記水素を吸蔵した金属系材料から水素
    を放出させる水素放出処理を行う複数の熱処理炉と、こ
    れらの熱処理炉へ給排される水素を貯蔵する水素吸蔵合
    金からなる水素貯蔵手段と、前記各熱処理炉と前記水素
    貯蔵手段とを連通させるとともに、各熱処理炉から放出
    される水素を水素貯蔵手段へ送り込む排気路と、前記水
    素貯蔵手段から各熱処理炉へ水素を供給する供給路と、
    前記排気路に連設されて、前記各熱処理炉内の気体を吸
    引して水素貯蔵手段へ送り込む真空排気手段と、前記供
    給路に連設されて、前記各熱処理炉へ供給される水素の
    圧力を調整する圧力調整手段と、これらの複数の排気路
    および供給路の一つを選択的に前記水素貯蔵手段へ連通
    させる切り換え手段と、前記熱処理炉および水素貯蔵手
    段のそれぞれに設けられ、これらの内部圧力および内部
    温度を測定する圧力センサーならびに温度センサーと、
    これらの各センサーからの検出信号に基づき、熱処理炉
    および水素貯蔵手段の温度ならびに真空排気手段の作動
    を調整することにより、前記各熱処理炉の処理状態に応
    じて、各熱処理炉への水素の供給および排出を行う制御
    手段とを具備してなることを特徴とする金属系材料の熱
    処理装置。
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