JP2895824B1 - NiTi系形状記憶合金製釣り糸とその製造方法 - Google Patents

NiTi系形状記憶合金製釣り糸とその製造方法

Info

Publication number
JP2895824B1
JP2895824B1 JP946398A JP946398A JP2895824B1 JP 2895824 B1 JP2895824 B1 JP 2895824B1 JP 946398 A JP946398 A JP 946398A JP 946398 A JP946398 A JP 946398A JP 2895824 B1 JP2895824 B1 JP 2895824B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fishing line
shape memory
memory alloy
niti
stress
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP946398A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH11196732A (ja
Inventor
魁助 城山
宏 堀川
義明 菊地
吉英 荻野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Furukawa Techno Material Co Ltd
Original Assignee
Furukawa Techno Material Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Furukawa Techno Material Co Ltd filed Critical Furukawa Techno Material Co Ltd
Priority to JP946398A priority Critical patent/JP2895824B1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2895824B1 publication Critical patent/JP2895824B1/ja
Publication of JPH11196732A publication Critical patent/JPH11196732A/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Metal Extraction Processes (AREA)

Abstract

【要約】 【課題】 魚の釣り糸に要求される諸特性とともに、特
に魚が掛かった時の感触がより敏感な、いわゆる「手応
え」のよい釣り糸を開発すること。 【解決手段】 NiTi系形状記憶合金製の細線であっ
て、23〜25℃(室温)において、その細線の応力
(σ)−ひずみ(ε)曲線における応力に対するひずみ
が漸増傾向を示し、且つその細線の機械的性質が、引張
強さ170kgf/mm2 以上、伸び7〜15%の特性
を有することを特徴とするNiTi系形状記憶合金製釣
り糸。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、釣り糸に要求され
る「手応え」「しなやかさ」「真直度」「強さ」「結び
易さ」等の全てを満足するNiTi系形状記憶合金製釣
り糸とその製造方法に関するものであり、特に従来の形
状記憶合金製釣り糸の欠点とされた魚を釣り上げた時の
敏感な感触、いわゆる「手応え」が悪い点を大幅に改善
したものである。
【0002】
【従来の技術】近年、強度、耐食性に優れ、使用時の縮
れを防止し、岩などに接触した時に傷がつきにくい等の
特徴を有するNiTi系合金製の釣り糸が提案され、鮎
の友釣りなどで好評を得ているが、これらの釣り糸には
いくつかの問題点がある。この問題点については、後に
詳しく述べることとして、先ず、これらの釣り糸の従来
技術について述べる。
【0003】特公平5−70408号公報には、形状記
憶合金の細線材からなる釣り糸が提案されており、道糸
の先端に接続される仕掛け部や、ハリス糸に使用できる
とされている。また、形状記憶合金の低温相(マルテン
サイト相)あるいは高温相(オーステナイト相)のいず
れでも使用でき、直線状に記憶しておくことが好ましい
とされている。
【0004】本技術の実施例においては、細線の製造方
法としてNiTi系形状記憶合金素線を焼鈍後、減面率
10%以上の冷間加工を施して線径0.1mmとし、3
50〜550℃、望ましくは400〜500℃の温度範
囲で、形状記憶処理することが示されている。そして、
この線材の強度については、特に記載がない。
【0005】また、特許第2635737号公報には、
強さ及びしなやかさの特性を合わせ持つ釣り糸として、
体温以下の温度でオーステナイト相となっており、引張
強さ(破断強度)が80〜120kgf/mm2 の釣り
糸が、提案されている。この釣り糸の製造方法は、Ni
Ti系形状記憶合金素線を、冷間加工と焼鈍を繰り返し
て、線径0.05〜0.3mmの細線とし、これを40
0〜500℃の温度範囲で数分〜1時間程度保持して、
これを冷却する形状記憶処理が開示されている。
【0006】また、本技術の実施例においては、原子%
で50.84%:49.16%(重量%で55.9%:
44.1%)からなるNi−Ti合金を、冷間加工と焼
鈍を繰り返して細径の線材とし、これを更に冷間加工に
より、線径0.1mmの糸状に加工した後、450℃で
30分間熱処理(形状記憶処理)を施して、これを常温
まで冷却して製造することが記載されている。そして、
この細線の金属組織は、100%オーステナイト相であ
り、Af点は25℃、引張強度(破断強度)は105k
gf/mm2 前後であることが、記載されている。
【0007】また、本技術の別の実施例においては、原
子%で50.94%:49.06%(重量%で56%:
44%)からなるNi−Ti合金を、前記と同様に冷間
加工と焼鈍を繰り返して細径の線材とし、これを更に冷
間加工により、線径0.1mmの糸状に加工した後、4
50℃で30分間熱処理(形状記憶処理)を施して、こ
れを常温まで冷却して製造することが記載されている。
そして、この細線の金属組織は100%オーステナイト
相であり、Af点は15℃、引張強さ(破断強度)は9
6kgf/mm2 前後であることが、記載されている。
【0008】更に、実開平1−146868号公報で
は、超弾性的性質を有する形状記憶合金で構成したこと
を特徴とする魚釣り用道糸が提案されており、線材の耐
食性がよく、線材の伸びが超弾性的に大きいことがメリ
ットであるとされている。なお、この線材の「伸びが超
弾性的に大きいこと」の特徴は、同公報の第2図でも説
明されているように、線材Bの荷重(応力)−伸び(ひ
ずみ)曲線において、ある一定の荷重に対して大きく伸
びること、いわゆるカーブに平坦部があることを意味し
ている。言い換えると、このことは、荷重(応力)に対
して伸びが、常に漸増傾向を示さないことでもある。以
上が、従来のNi−Ti系形状記憶合金製の釣り糸であ
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】既に述べたように、従
来のNi−Ti系形状記憶合金製の釣り糸には、多くの
優れた点があり、特に鮎の友釣りに採用され好評を得て
いる。しかしながら、一部の釣りの愛好家から、前記従
来の釣り糸は、「釣り上げる時に軟らか過ぎる」、「ゆ
るみを感じる」、「頼りない」等、いわゆる釣り上げる
時の「手応え」に関する今一層の改善を求める声が寄せ
られている。また、魚が掛かった時の感触が、より敏感
に感得できる釣り糸の開発が望まれている。
【0010】本発明の課題は、釣り糸に対する前記のこ
の「手応え」であるとか「魚が掛かった時の敏感な感
触」という感応的な要求に、材料の特性面から改善する
こと、若しくはこの問題を解決することである。本明細
書においては、前記の「手応え」若しくは「魚が掛かっ
た時の敏感な感触」という感応特性を、以下まとめて
「手応え」と表現することとし、従って本発明の課題
は、釣り糸に要求される種々の特性の改善とともに、特
にこの「手応え」のよいNi−Ti系形状記憶合金製釣
り糸の開発とその製造方法を見出すことである。
【0011】この「手応え」のよい釣り糸を開発するに
際し、発明者らは、まず従来の釣り糸を調査し、考察を
行った。調査の対象になった釣り糸は、いわゆるNiT
i系超弾性合金製の釣り糸であり、室温でオーステナイ
ト相となっているもの(前記特公平5−70408号公
報、特許第2635737号公報、実開平1−1468
68号公報に記載のもの)である。前記超弾性合金製の
釣り糸の代表的な応力(σ)−ひずみ(ε)曲線は、図
1に示す通りである。図1において、yは降伏点、Mは
回復限界点、Tは引張破断点、Fは魚が掛かった時のバ
ランス点である。図1に示す特性の釣り糸で、いま降伏
応力(σy )に相当する重さPy (糸の断面積A×
σy )以上の魚を釣り上げたとする。その重さをP
F (相当する応力σF )とすると、図1のF点(σF
εF )でバランスすることになる。
【0012】この時、仮に釣り糸の長さがL=3mであ
ったとすると、伸びΔL=L×εFであり、εF を10
%とすると、ΔL=3000mm×0.1=300mm
も伸びることになる。しかも、この変形の過程で、同一
応力(σy )のもとで、一気に6〜8%(図1のεM
6〜8%)も伸びることになり、前記の例でみると、糸
の長さ3mに対し、ΔL=3000mm×0.06〜
0.08=180〜240mm伸びることになる。
【0013】本発明者らは、前記の従来の釣り糸が、
「釣り上げる時に軟らか過ぎる」、「ゆるみを感じ
る」、「頼りない」、「魚が掛かった時に敏感な感触が
ない」等、いわゆる釣り上げる時の「手応え」の欠点
は、前記のごとく同一応力(σy )のもとで、一気に大
きく伸びる点にあるとの知見を得た。本発明は、この知
見に基づいて、なされたものである。即ち同一応力(σ
y )のもとで、一気に大きく伸びない、言い換えると応
力(荷重)に対してひずみ(伸び)が、漸増傾向を示す
材料を見出すことにより、本発明を完成した。
【0014】なお、本明細書において、細線の応力
(σ)−ひずみ(ε)曲線における「応力」は、「荷
重」と同義語であり、又「ひずみ」は「伸び」と同義語
であり、従って、応力の代わりに荷重、ひずみの代わり
に伸びと表現することもある。
【0015】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の請求項1の発明は、NiTi系形状記憶合金製の細線
であって、23〜25℃(室温)において、その細線の
応力(σ)−ひずみ(ε)曲線における応力に対するひ
ずみが漸増傾向を示し、且つその細線の機械的性質が、
引張強さ170kgf/mm2 以上、伸び7〜15%の
特性を有することを特徴とするNiTi系形状記憶合金
製釣り糸である。
【0016】また、請求項2の発明は、前記、機械的性
質が、引張強さ190kgf/mm 2 以上、伸び10〜
15%の特性を有することを特徴とする請求項1に記載
のNiTi系形状記憶合金製釣り糸である。
【0017】更に、請求項3の発明は、伸線工程におい
て、焼鈍後、減面率40%以上の冷間加工を加えて線径
0.03〜0.2mmの細線とし、これを100〜34
0℃の温度範囲で、張力をかけながら熱処理することを
特徴とする請求項1または請求項2に記載のNiTi系
形状記憶合金製釣り糸の製造方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】まず、請求項1の発明について説
明する。ここでいうNiTi系形状記憶合金とは、従来
から知られているNi−Ti系形状記憶合金をいい、具
体的には、NiとTiの合金組成比が原子%で50:5
0近傍のNi−Ti合金、例えばNiとTiとからなる
Ni50.75原子%(55.8重量%)とTi49.
25原子%(44.2重量%)のようなNi−Ti合金
や、このNi−Ti合金のNi又はTiの一部を、わず
かなZr、Au、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、
Pd等で置換したNi−Ti系合金である。 なお、本
発明の釣り糸は、各種の特性を得るため強度を高位に保
つのが大きな特徴であるが、このため合金組成的には、
Ni−Ti合金において、Niがリッチ、即ち50.7
原子%以上とするのがより好ましい。
【0019】また、ここでいう釣り糸は、釣りでいう道
糸、幹糸、ハリス糸を含む。釣り糸としての細線の径
は、これに限定されるものではないが、例えば0.03
〜0.2mm程度であり、線径は、釣る魚の種類、重さ
等により選定される。本発明は、このNi−Ti系形状
記憶合金製の細線からなる釣り糸で、23〜25℃(室
温)において、その細線の応力(σ)−ひずみ(ε)曲
線における、応力(σ)に対するひずみ(ε)が、図2
(b)に示すごとく漸増傾向を示すことが必要である。
このことは、図1、図2(c)に示す従来のいわゆる超
弾性的な釣り糸のごとく、略同一応力のもとで、一気に
大きく伸びることとは逆に、図2(b)に示すように、
一気に大きく伸びないことであり、言い換えると応力
(荷重)に対してひずみ(伸び)が、漸増することを意
味している。釣り糸の特性をこのようにするのは、魚が
掛かった時の「手応え」をよくするためである。
【0020】また、本発明は、その細線の破断引張試験
において、細線の機械的性質が、引張強さ170kgf
/mm2 以上、伸び7〜15%の特性を有することが必
要である。この細線の引張強さは、釣りの際の特性であ
る「手応え」のよしあしに関係し、引張強さが170k
gf/mm2 未満では、この「手応え」が良くない。従
って本発明では、引張強さを170kgf/mm2 以上
とした。また、細い糸で大きなものを釣り上げるために
は、釣り糸の強度は、できるだけ強い方がよいのはいう
までもないことである。従来の釣り糸の強度は、前述の
ごとく、引張強さが120kgf/mm2 程度までであ
るが、本発明の釣り糸では、この点でも改善されてい
る。また、この細線の伸びは、釣り糸に必要な特性であ
る「結び易さ」「しなやかさ」「真直度」のよしあしに
関係する。本発明において、伸びを7〜15%としたの
は、伸びが7%未満では、前記の「結び易さ」等の特性
が劣るからであり、又伸びが15%を越えるように加工
すると必要な引張強さ(170kgf/mm2 以上)が
得られないからである。
【0021】本発明に係わるNi−Ti系形状記憶合金
製の釣り糸は、以上の構成からなるもので、釣り糸に要
求される種々の特性(手応え、しなやかさ、真直度、引
張強さ、糸の結び易さ等)を満たすものである。また、
本発明の釣り糸は、特に、最大の課題である釣りの際の
「手応え」の特性について大幅に改善したものである。
本明細書の説明及び実施例においては、主として鮎釣り
の場合を上げたが、本発明に係わる釣り糸を、鮎以外の
他の魚例えば、鮭、鱒、はや等の川魚に適用しても、又
海の魚に適用しても、同様の効果を奏するのは言うまで
ももない。なお、本発明に係わる釣り糸は、魚が掛かっ
た時ないしは魚を糸から外すまでは、糸に荷重(応力)
がかかり、その荷重(応力)に応じて伸び(ひずみ)が
漸増するが、荷重を取り除けば、伸びはもとに戻り、繰
り返し長期に使用することができるのは、言うまでもな
い。
【0022】次に、請求項2の発明は、前記釣り糸の好
ましい実施態様であり、特に細線の機械的性質を、引張
強さ190kgf/mm2 、伸び10〜15%としたも
のである。このようにすることによって、前記の種々の
特性を満たすとともに、特に手応えと糸の結び易さがよ
り向上する。
【0023】次に、請求項3の発明について説明する。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の釣り糸の
製造方法に関するものであり、伸線工程において、焼鈍
後、減面率40%以上の冷間加工を加えて、線径0.0
3〜0.2mmの細線とし、これを100〜340℃の
温度範囲で、張力をかけながら熱処理することを特徴と
する。
【0024】本発明の最も特徴とするところは、強い冷
間加工を加えて、低温度で熱処理することである。本発
明の製造方法において、焼鈍後減面率40%以上の冷間
加工を加えるのは、減面率が40%未満では、必要な高
い引張強さ(170kgf/mm2 以上)が得られない
からである。なお、ここでいう焼鈍は、Ni−Ti系形
状記憶合金の一般的焼鈍条件でよく、例えば600〜7
50℃で数秒間〜数分間程度の熱処理である。本製造方
法では、この冷間加工した細線を、次に100〜340
℃の温度範囲で、張力をかけながら熱処理するものであ
る。
【0025】熱処理温度範囲を100〜340℃とした
のは、処理温度が100℃未満では、伸線時のくせがと
れにくく、伸び(7〜15%)がでない。また、340
℃を越えると、必要な引張強さ(170kgf/mm2
以上)が得られないからである。なお、この処理温度
は、引張強さと伸びのいずれも高くする場合は、200
〜320℃とするのがより好ましい。また、ここで張力
をかけながら熱処理するのは、数個の引抜ダイスにより
伸線加工されている間に、形成された加工ぐせ(巻きぐ
せを含む)を少しでも除去して、釣り糸としての使用に
不都合を生じさせないためである。この張力は、これに
限定されるものではないが、例えば20kgf/mm2
程度である。
【0026】なお、この冷間加工工程と熱処理工程は、
別々のラインで製造してもよいし、連続した1ラインで
製造してもよい。以上が、製造方法に係わる発明の構成
要件であり、このように製造することにより、請求項1
または請求項2に係わる釣り糸が得られる。
【0027】
【実施例】
(1)以下に、本発明の実施例を、比較例、従来例とと
もに、具体的に説明する。Ni51原子%(56.06
重量%)とTi49原子%(43.94重量%)からな
るNi−Ti系合金鋳塊を製造し、これを熱間圧延して
太径の線材に加工した後、冷間加工と焼鈍を繰り返して
細径の線材とした。これを670℃で10秒間焼鈍し、
続いてこれに減面率50%の冷間加工を加えて、直径
0.055mmの細線を得た。次に、この細線につい
て、(a)最終の熱処理を加えないもの〔比較例〕、
(b)最終の熱処理(320℃×5sec)を加えたも
の〔本発明例〕、(c)最終の熱処理(520℃×5s
ec)を加えたもの〔従来例〕の3種の試験材を作り、
これらについて引張試験を行い、線材の機械的性質であ
る破断引張強さと破断伸びを求めた。この結果を表1に
示す。
【0028】
【表1】
【0029】また、この試験材(a)、(b)、(c)
について、応力(σ)−ひずみ(ε)曲線を求めた。こ
れらの結果を図2、(a)、(b)、(c)に示す。
【0030】一方、前記試験材(a)、(b)、(c)
の細線を、釣り糸(道糸)として、実際に釣り具を用意
し、数人の釣り愛好家で、試し釣り等の試験を行い評価
した。評価項目は、釣り糸に要求される「手応え」「し
なやかさ」「真直度」「強さ」「結び易さ」である。評
価は、非常に良好なもの○、良好なもの△、劣るもの×
とし、全ての項目について○又は△のものを合格、一つ
でも×があるものは不合格とした。これらの結果を表2
に示す。
【0031】
【表2】
【0032】なお、表2の「手応え」「強さ」は、表1
の引張強さに関係する項目であり、表2の「しなやか
さ」「真直度」「結び易さ」は、表1の伸びに関係する
項目である。また、表2の「手応え」は、図2の
(a)、(b)、(c)の応力(σ)−ひずみ(ε)曲
線に関係し、図2の(a)、(b)のように、応力に対
してひずみが漸増する特性を示すものが優れており、図
2の(c)のように、応力に対してひずみが漸増する特
性を示さない、即ち一定の応力に対して大きく伸びる特
性を示すものは、「手応え」はよくない。
【0033】表2の結果から明らかなように、釣り糸に
要求される「手応え」「しなやかさ」「真直度」「強
さ」「結び易さ」の全てを満足する釣り糸は、本発明例
の試験材(b)であることがわかる。即ち、細線の応力
−ひずみ曲線は、図2より、試験材(a)、(b)が適
合するが、試験材(a)は表1より伸びが不足する。従
って、本発明の全ての要件を満足するものは、本発明例
である試験材(b)であることが確認された。
【0034】(2)本実施例に対する考察 前記試験材(a)、(b)、(c)の細線を、釣り糸
(道糸)として使用して、鮎釣りをしたと仮定する。こ
の場合、釣り上げる時の鮎の重さ(友釣りでは2尾の重
量)と糸の伸びについて、再度図2(a)、(b)、
(c)で見ることとする。2尾で350grであったと
すると、直径0.055mmの糸には、応力σ(荷重)
として142.3kgf/mm2 が負荷されることにな
る。この点を図2の曲線上に、Fで示す。
【0035】図2の曲線(a)、(b)、(c)におい
て、F点に対応するひずみε(伸び)を測ると、(a)
はε=2.7%、釣り糸の長さL=2mとすると、ΔL
=54mm(b)はε=4.0%、釣り糸の長さL=2
mとすると、ΔL=80mm(c)はε=10.6%、
釣り糸の長さL=2mとすると、ΔL=212mmとな
り、従来の超弾性型の釣り糸(c)の伸びが、極端に大
きくなることがわかる。このことは、表2の釣り糸の特
性である「手応え」の結果とよく一致している。即ち、
「手応え」の特性をよくするには、釣り糸の応力(σ)
−ひずみ(ε)曲線において、応力(σ)に対するひず
み(ε)が漸増傾向示すことが必要であると言える。
【0036】
【発明の効果】以上、詳述したごとく、本発明は、釣り
糸に要求される「手応え」「しなやかさ」「真直度」
「強さ」「結び易さ」の全ての特性を満足するものであ
り、特に従来のNi−Ti系形状記憶合金製の釣り糸の
欠点とされる、魚を釣り上げる時の、伸び過ぎることに
よる敏感な感触がない点、いわゆる「手応え」がよくな
い点を大幅に改善したものである。本発明は、特に、釣
りの愛好家から熱望されていた魚が掛かった時の感触
が、より敏感に感得できる、いわゆる「手応え」のよい
釣り糸とその製造方法を提供するものであり、フィシン
グ界において大きな効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のNiTi系形状記憶合金製釣り糸の代表
的な応力(σ)kgf/mm2 −ひずみ(ε)% 曲線である。
【図2】実施例で使用したNiTi系形状記憶合金製の
細線であって、試験材(a)、(b)、(c)の応力
(σ)kgf/mm2 −ひずみ(ε)% 曲線である。ここで、
(a)は、比較例であり、焼鈍、冷間加工後、最終の熱
処理を加えないもの。(b)は、本発明に該当するもの
であり、焼鈍、冷間加工後、最終の熱処理(320℃×
5sec)を加えたもの。(c)は、従来例であり、焼
鈍、冷間加工後、最終の熱処理(520℃×5sec)
を加えたもの。
【符号の説明】
y 降伏点 M 回復限界点 T 引張破断点 σy 降伏点応力 σT 破断強さ εy 降伏点ひずみ εT 破断ひずみ εM 回復限界ひずみ F(σF 、εF ) 魚が掛かった時のバランス点
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22F 1/00 630 C22F 1/00 630L 673 673 694 694A 694B (72)発明者 菊地 義明 神奈川県平塚市東八幡5丁目1番8号 株式会社古河テクノマテリアル内 (72)発明者 荻野 吉英 東京都東久留米市前沢3丁目14番16号 ダイワ精工株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A01K 91/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 NiTi系形状記憶合金製の細線であっ
    て、23〜25℃(室温)において、その細線の応力
    (σ)−ひずみ(ε)曲線における応力に対するひずみ
    が漸増傾向を示し、且つその細線の機械的性質が、引張
    強さ170kgf/mm2 以上、伸び7〜15%の特性
    を有することを特徴とするNiTi系形状記憶合金製釣
    り糸。
  2. 【請求項2】 前記、機械的性質が、引張強さ190k
    gf/mm2 以上、伸び10〜15%の特性を有するこ
    とを特徴とする請求項1に記載のNiTi系形状記憶合
    金製釣り糸。
  3. 【請求項3】 伸線工程において、焼鈍後、減面率40
    %以上の冷間加工を加えて線径0.03〜0.2mmの
    細線とし、これを100〜340℃の温度範囲で、張力
    をかけながら熱処理することを特徴とする請求項1また
    は請求項2に記載のNiTi系形状記憶合金製釣り糸の
    製造方法。
JP946398A 1998-01-21 1998-01-21 NiTi系形状記憶合金製釣り糸とその製造方法 Expired - Fee Related JP2895824B1 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP946398A JP2895824B1 (ja) 1998-01-21 1998-01-21 NiTi系形状記憶合金製釣り糸とその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP946398A JP2895824B1 (ja) 1998-01-21 1998-01-21 NiTi系形状記憶合金製釣り糸とその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2895824B1 true JP2895824B1 (ja) 1999-05-24
JPH11196732A JPH11196732A (ja) 1999-07-27

Family

ID=11720978

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP946398A Expired - Fee Related JP2895824B1 (ja) 1998-01-21 1998-01-21 NiTi系形状記憶合金製釣り糸とその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2895824B1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003089834A (ja) * 2001-09-19 2003-03-28 Furukawa Electric Co Ltd:The 高剛性型の可逆変形を有するNi−Ti系合金
KR100807393B1 (ko) * 2006-06-05 2008-02-28 경상대학교산학협력단 Ti-Ni계 경사기능 합금의 제조방법 및 그로부터제조된 Ti-Ni계 경사기능 합금

Also Published As

Publication number Publication date
JPH11196732A (ja) 1999-07-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN106460098B (zh) Cu-Al-Mn系合金材料及其制造方法、以及使用了该合金材料的棒材或板材
JP3300684B2 (ja) 形状記憶特性及び超弾性を有する銅系合金、それからなる部材ならびにそれらの製造方法
US5958159A (en) Process for the production of a superelastic material out of a nickel and titanium alloy
US5951793A (en) Ni-Ti-Pd superelastic alloy material, its manufacturing method, and orthodontic archwire made of this alloy material
KR20080064994A (ko) 형상 기억성 및 초탄성을 가지는 철계 합금 및 그 제조방법
JPH0684594B2 (ja) 釣 糸
JPH0762472A (ja) 高加工性銅系形状記憶合金とその製造方法
JP2895824B1 (ja) NiTi系形状記憶合金製釣り糸とその製造方法
JPS6152333A (ja) ボンデイングワイヤ−
JP2002256395A (ja) 捻回特性に優れた高強度低熱膨張合金およびその合金線
JPS58157935A (ja) 形状記憶合金
KR960019114A (ko) 내마모성과 고투과율을 갖는 합금, 그의 제조방법 및 자기 기록 재생 헤드
JP2000169920A (ja) 形状記憶特性及び超弾性を有する銅系合金及びその製造方法
JP2002069555A (ja) NiTi系合金ワイヤおよびその製造方法
JP2635737B2 (ja) 釣り糸
JP2737965B2 (ja) ピアノ打弦用軟銅線
JP3657674B2 (ja) 白色系金合金
JPH08199308A (ja) インバー系合金線材とその製造方法
JP3141328B2 (ja) 超弾性バネ合金の製造方法
JPS63127225A (ja) 眼鏡部品
JPH0241426A (ja) ラケット用糸
JPH0860277A (ja) NiTi基合金
JP4711282B2 (ja) 傾斜機能合金およびそれを用いたガイドワイヤ
JP3344946B2 (ja) 傾斜機能合金及びその製造方法
JP2979420B2 (ja) 歯列矯正器具

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080305

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090305

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100305

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110305

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110305

Year of fee payment: 12

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130305

Year of fee payment: 14

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130305

Year of fee payment: 14

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140305

Year of fee payment: 15

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees