JP2895748B2 - ドライブピニオン用スペーサの製造方法 - Google Patents

ドライブピニオン用スペーサの製造方法

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JP2895748B2 JP6130916A JP13091694A JP2895748B2 JP 2895748 B2 JP2895748 B2 JP 2895748B2 JP 6130916 A JP6130916 A JP 6130916A JP 13091694 A JP13091694 A JP 13091694A JP 2895748 B2 JP2895748 B2 JP 2895748B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両のドライブピニオ
ンの前後の軸受間に介設されるスペーサの製造方法の関
するものである。
【0002】
【従来の技術】プロペラシャフトを備えた車両では一般
に、該シャフトの回転はドライブピニオンを介してディ
ファレンシャルに伝達されるようになっている。
【0003】図7はその構造の代表例を示すもので、ド
ライブピニオン1は軸部11の一端にベベルギヤ12を
備え、ギヤ12がディファレンシャルのリングギヤ2に
噛合し、軸部11の他端に図略のプロペラシャフトの一
端がスプライン結合されている。
【0004】軸部11の外周には、これに嵌合された前
後のテーパ状の内輪軸受4A,4B間にスペーサ3が装
着されている。一方、ケーシング10には上記内輪軸受
4A,4Bと対向してテーパ状の外輪軸受4C,4Dが
設けてあり、対向する内外輪軸受間に多数のコロ5が介
設され、ドライブピニオン1は回転自在に支持されてい
る。
【0005】スペーサ3は一般に、周方向に山形の膨出
部31を形成したものが用いられる。スペーサ3は膨出
部31のスプリングバック作用により軸受間の間隔の誤
差を吸収するもので、ドライブピニオン1を組付けるに
は、前後の内輪軸受4A,4B間にスペーサ3を装着
し、対向する内外輪軸受4A,4Cおよび4B,4D間
にコロ5を介設した状態で、外周にネジを形成した軸部
11の端部からナット6を締込む。スペーサ3の長さは
所定値よりも若干長くしてあり、膨出部31の弾性変形
により軸方向に圧縮され、そのスプリングバックにより
内輪軸受4Aはべベルギヤ31に押付けられ、内輪軸受
4Bはスペーサ3とナット6で挟まれることにより位置
決め固定される。
【0006】ところで、ナット締込み時に、締付け荷重
が過少では軸受にガタが生じ、またリングギヤ2とベベ
ルギヤ12との噛合にズレが生じて異音が発生する。一
方、締付け荷重が過多ではナット6とシャフト11のネ
ジ締め部に変形が生じるので好ましくない。このため、
上記のような不都合が生じない適正な荷重範囲で締付け
る必要があるが、その調整が極めてむづかしい。従っ
て、所定の荷重範囲に確実に調整するには、スペーサ3
としては 図6の線Aで示すように、ナットを所定量締
込むとき、予め決められた適正な荷重範囲(T1
2 )まで荷重が上昇して上限に達し、その後膨出部の
若干の屈曲で最大荷重に近い荷重が維持されるのが望ま
しい。一方、線Bに示すように、最大荷重に達して後、
膨出部の座屈で荷重が急降下し、上記荷重範囲からはず
れるものは望ましくない。なお、最適荷重は車種により
異り、ほぼ3.5ton〜7.5tonである。要求さ
れる荷重が大きいものでは肉厚の厚いスペーサを使用す
る。各車種について許容される荷重範囲(T1 〜T2
は最適荷重の上下0.5ton程度である。
【0007】ところで、スペーサは板厚3mm程度で、一
般に鋼管を液圧プレスすることで製造されている。しか
しながら液圧プレスは装置が大型でコスト高となる。
【0008】一方、スペーサを機械プレスで製造するこ
とも考えられるが、通常の機械プレスでは製品の膨出部
の形状にバラツキが出て、各製品の特性にバラツキがあ
り実用に供し得ない。この点液圧プレスでは、膨出部の
形状が一定で均一厚さの製品が得られるが、山形の膨出
部は荷重がある値に達するとその頂部で座屈が急激に発
生する傾向がある。しかも各鋼管には不可避的にわずか
な組成のバラツキがあり、バラツキによっては図6の線
Bで示す製品となる。かかる製品は使用できず無駄にな
ってしまう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ドライブピ
ニオンの外周に設けたスペーサを軸受を介して軸方向に
押込む過程で、最大荷重が所定の範囲に達した後の荷重
の下降が緩かで、荷重が所定範囲内に長く維持されるス
ペーサを機械プレスにより製品のバラツキなく製造し得
る方法を提供することを課題としてなされたものであ
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、外周に山形の
膨出部を有するドライブピニオン用スペーサを製造する
素材たる鋼管に膨出部の一方の傾斜部を予備加工し(第
1のバルジ工程)、続いて予備加工された一方の傾斜部
を所定の傾斜角度に加工するとともに厚さを他の部分よ
りも薄く加工し(第2のバルジ工程)、膨出部の他の部
分およびこれに連なる筒部を加工し(ネッキング工
程)、最後に上記筒部を仕上加工する(リストライク工
程)ことによりスペーサを得るものである。上記第2の
バルジ工程では上記一方の傾斜部の厚さを他の部分の6
5〜85%に加工する。
【0011】
【作用】本発明により得られたスペーサでは、スプリン
グバック作用は主として薄くした上記一方の傾斜部でな
される。この部分はスペーサに軸方向の荷重が加えられ
たとき、膨出部の頂部のような急速な座屈が生じない部
分である。従ってこの部分は第2のバルジ工程で、所定
の形状や厚さに正確に加工することで、図6の線(A)
のように所定の荷重範囲で平坦な荷重−圧縮特性を有す
るスペーサを、各製品について特性にバラツキなく得る
ことができる。
【0012】
【実施例】図1ないし図5に本発明の実施例を示す。ス
ペーサ製品3は図1(E)に示すように軸方向中央部に
なだらかな山形断面形状の膨出部31を有する。
【0013】図1(A),(B)に示すように鋼管3A
をその中央部で拡径して膨出部31の一方の傾斜部31
aを予備加工する(第1のバルジ工程)。予備加工は図
2に示すように予備バルジ型の下型7A内に挿置のスプ
リング8Aにて支持されたガイドピン9の上端に鋼管3
Aを取付け、上型7Bのパンチ10を鋼管3Aに押し込
み、下型ダイ71とパンチ10とで加工することにより
なされる。この場合、上記一方の傾斜部31の開き傾
斜角度は製品のそれよりも若干小さくする。そして鋼管
3Aをスプリング8Bの反発力でパンチ10より離し、
ガイドピン9より取出す。
【0014】次に、図1(C)に示すように一方の傾斜
31aを、製品としての所定の傾斜角度および他の部
分よりも臼井所定の厚さに加工する(第2のバルジ工
程)。本工程は図3に示すように第1のバルジ型とは下
型7Aのダイ72およびパンチ10の成形面角度を変え
たバルジ型により行なう本工程では、一方の傾斜部
1aは、既に予備加工されているので、正確に所定の形
状に加工でき、かつパンチ10の押込量を厳格に規制す
ることで正確に所定の厚さに加工できる。
【0015】次に図1(D)に示すように頂部31bを
含む他の傾斜部31cおよびこれに続く筒部32を加工
する(ネッキング工程)。本工程は図4に示すように上
型7Bのダイ73により鋼管3Aの上半部外周を規制
し、スプリング8Cに抗してパンチ10を押込み、パン
チ10と上型7Bのダイ73により膨出部の頂部31
b、他の傾斜部31cおよび筒部32を加工する。そし
てスプリング8Cの反発力でパンチ10より鋼管3Aを
離し、ガイドピン9より取出す。
【0016】次に図1(E)に示すように鋼管の筒部3
2を仕上げ加工する(リストライク工程)。本工程では
図5に示すように上型7Bのダイ74により筒部32の
外周を規制し、スプリング8Dに抗してパンチ10を押
込んでダイ74とパンチ10とで筒部32の歪みを矯正
する。なお、最終的には得られたスペーサ製品3を所定
の長さに切削する。
【0017】上記第2のバルジ工程における一方の傾斜
部31aの厚さは、所定の材質、寸法形状の鋼管につ
き、スペーサとして図6の線Aに可及的に近い特性を示
すものとして予め実験的に決められた厚さとする。厚さ
は一般部の厚さの65〜85%の範囲できめられる。6
5%以下では加工量が多いので加工後の板厚にバラツキ
が生じやすい。85%以上の厚さでは、他の部分との板
厚差が少ないので、この部分のみでスプリングバック作
用を規制することができなくなる。
【0018】しかして本発明により得られた製品は、図
1(F)に示すように一方の傾斜部31aが他の部分よ
りも薄く形成され、荷重特性はこの一方の傾斜部で決ま
るから、この傾斜部を正確に加工することで、膨出部の
他の部分に若干のバラツキが生じても、各製品について
バラツキのない一定の荷重特性が得られる。
【0019】図6の線Cは厚さ2.9mm、内径31(±
0.2)mmのSTKM鋼管(HV140±10)から本
発明により上記一方の傾斜部の厚さを2.0mmに加工し
て製造した長さ56.75(±0.15)mmの多数のス
ペーサを軸方向に圧縮してテストした荷重特性の平均を
示すものである。鋼管の硬度や寸法等に若干のバラツキ
があってもドライブピニオンに用いて内輪軸受を介して
ナットで締め込んだとき、締付け荷重は所定範囲内にあ
る。一方、線Dは上記と同一の鋼管から液圧プレスで製
造した多数のスペーサの上記と同一テストの結果を示す
ものである。液圧プレスで得られた製品は板厚が全部分
ほぼ均一である。そして最大荷重に達すると急激に弾性
がなくなり、荷重の低下は急激である。従って鋼管のバ
ラツキによってはスペーサの締付け荷重は所定範囲外と
なり、あるいは弾性を失ってスペーサとし作用せず、取
換えが必要となって無駄が多い。
【0020】
【発明の効果】本発明はドライブピニオン用スペーサを
機械プレスで製造するから、従来の液圧プレスに比べ製
造コストを低減することができる。また本発明によれ
ば、各製品にバラツキなくほぼ一定の荷重でドライブピ
ニオンの軸受を締付け固定できるスペーサが製造でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A)〜(E)は本発明により鋼管が機械
プレスされてスペーサが得られる過程を示す図、図1
(F)は図1(E)の要部拡大断面図である。
【図2】第1のバルジ工程を示す図である。
【図3】第2のバルジ工程を示す図である。
【図4】ネッキング工程を示す図である。
【図5】リストライク工程を示す図である。
【図6】各種スペーサの荷重−圧縮曲線を示す図であ
る。
【図7】スペーサを備えたドライブピニオンの組付状態
を示す図である。
【符号の説明】
1 ドライブピニオン 11 軸部 3 スペーサ 31 膨出部 31a 一方の傾斜部 31b 頂部 31c 他方の傾斜部 32 筒部 4A,4B 軸受 6 ナット
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F16H 57/00 B21D 15/06 B21D 19/08 F16C 3/02

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両のドライブピニオンの軸部外周に装
    着されて前後の軸受を位置決めするドライブピニオン用
    スペーサであって、鋼管にスプリングバック作用をなす
    山形の膨出部が周方向に形成されたドライブピニオン用
    スペーサを機械プレスにて製造する方法において、鋼管
    に上記膨出部の一方の傾斜部を予備加工する第1のバル
    ジ工程と、予備加工された傾斜部を所定の傾斜角度に加
    工すると同時に該傾斜部の板厚を他の部分よりも薄く成
    形する第2のバルジ工程と、膨出部の他方の傾斜部およ
    びこれに続く筒部を成形するネッキング工程と、上記筒
    部を仕上加工するリストライク工程とからなり、上記第
    2のバルジ工程において、上記一方の傾斜部の板厚を他
    の部分の65〜85%に加工するドライブピニオン用ス
    ペーサの製造方法。
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