JP2895744B2 - 植物生育用支持体および植物の栽培方法 - Google Patents

植物生育用支持体および植物の栽培方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、土壌が漏出せず、微生
物や害虫が繁殖せず、および土壌臭が抑制されるなど清
潔感に優れ、しかも日持ちのよい植物鑑賞用として優れ
た植物生育用支持体に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、生活に潤いをもたらす活動や商品
が注目されており、生活の洋風化も相俟って、花によっ
て生活環境を美化しようとする動きが個人、法人を問わ
ず盛んになっている。中でも、各種の花を組み合わせた
洋風の生け花、即ちフラワーアレンジメントは特に注目
され、オフィスや商店、一般家庭の装飾用として定着し
つつある。
【0003】しかしながら、フラワーアレンジメントは
切り花であるため、花の寿命(1週間程度)を過ぎると
急速に観賞価値がなくなるという問題がある。
【0004】このため、鉢植えの花や観葉植物によるア
レンジメントも考えられるが、鉢植えは、即ち、鉢の表
面や土壌表面に繁殖した細菌類,カビ類,苔類,または
藻類による美観・清潔感の喪失,鉢が転倒したときに漏
出する土壌の室内汚染,土壌中からの各種昆虫類の発
生,および土壌臭の発生等の根本的な欠点があり、室内
に持ち込むことを躊躇する人が多い。このため、清潔感
の高い植物用鉢植えが求められている。
【0005】鉢型以外のものとしては、苗を育成するた
めの培養土を充填した袋が公知であるが、これは、苗の
育成を目的とするものであって、本栽培時には土壌上に
設置するため、鉢植えの場合と同様、上記の欠点を有し
ている。また、この袋は土壌に設置した後は、分解され
ることが望ましいため、布の素材として腐食性繊維が使
用されており、数カ月にわたる長期間の栽培及び観賞に
耐えず、また「腐る」ため悪臭が発生するという欠点が
ある。
【0006】さらに、鉢容器を使用した鉢植えは、輸送
時の転倒により商品価値が著しく低下するため、近年定
着しつつある鉢物の通信販売において大きな問題となっ
ている。鉢の開口部をビニールシートやスポンジシート
で覆い、ひもやゴムバンド等で押さえる等により土壌の
漏出を防いでいるが、これは全て人手によって行われる
ため作業効率が低く、コストアップにつながる欠点があ
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の目的と
するところは、土壌が漏出せず、微生物や害虫の侵入お
よび繁殖が抑制され、更には土壌臭が抑制されるなど清
潔感に優れ、植物観賞用に適した植物生育用支持体を提
供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上述の目的は、植物用土
壌を有する植物生育用支持体であって、該土壌を閉塞状
に覆う被覆層が、通気性,通水性,および非腐食性を有
し、且つ該被覆層が抗菌剤,抗カビ剤,防虫剤,消臭剤
からなる群より選ばれる少なくとも一種以上を含有する
ことを特徴とする植物生育用支持体および、(a)通気
性、通水性、および非腐食性を有する素材からなり、
(b)抗菌剤,抗カビ剤,防虫剤,消臭剤からなる群よ
り選ばれる少なくとも一種以上を含有し、(c)植物用
土壌全体を閉塞状に被覆している被覆層に、穿孔または
スリットを施し、該穿孔またはスリットに、一部または
全体が弾力性素材で覆われた植物体の、弾力性素材部分
を挿着することを特徴とする、植物の栽培方法によって
達成される。
【0009】以下、本発明の構成の詳細について説明す
る。
【0010】なお、本発明において通気性があると言う
場合には、KES法による通気度が2000kPa・s
/m以下であることを意味する。
【0011】また、本発明において通水性があると言う
場合には、JIS L−1099A−1法による透湿度
が5000g/m2 ・24h以上であることを意味す
る。
【0012】本発明において被覆層の素材として用いら
れる、通気性,通水性および非腐食性を有する素材とし
ては、織編布,不織布,陶器,合成樹脂,フィルム等が
挙げられるが、中でも織編布および不織布が加工性,植
物の生育性に優れるため好ましく、具体的にはポリエス
テル,レーヨン,ナイロン,アクリル,耐腐食加工を施
した天然繊維(綿,絹,羊毛,麻)等が挙げられる。
【0013】また上記の素材を組み合わせた複合材料,
例えば透湿性フィルムと不織布を貼り合わせたものやウ
レタンコーティングした不織布・織編布等を用いること
もできる。
【0014】これらの被覆層素材の中でも、通気性フィ
ルムや、繊度が0.02d以下のマイクロファイバー製
の不織布または織編布を用いると、通気性を保ったまま
水分の蒸発が適度に抑制され、しかも長時間放置しても
植物支持体表面からの水の漏出が殆ど無いため、室内が
汚れにくいという点で好ましい。またマイクロファイバ
ー製の不織布および織編布を用いた場合、外観に高級感
を出すことができ、例えば植物で覆われていない部分が
見えても、美観を損ねる心配が無いという点でも好まし
い。さらに、マイクロファイバー製の不織布および織編
布は、同じ目付の通常の不織布および織編布と比べて、
単位面積当たりの表面積が大きく、保温性に優れてお
り、土壌温度を高く維持することが可能である。従っ
て、生育速度が通常より速まる傾向にあり、夜温が低す
ぎる時期や場所でも生育障害が起こりにくく、暖房費の
低減が可能である等の利点も有している。
【0015】本発明に用いられる不織布の目付は、特に
限定されるものではないが、支持体の強度,剛性,通気
性,通水性,土壌の流出防止,加工性,あるいは苗の植
え付け易さ等の観点から、100〜500g/m2 の範
囲が好ましく、特に好ましくは150〜300g/m2
である。
【0016】これらの被覆層素材には、更に、抗菌性,
抗カビ性,防虫性,消臭性を付与すると、より一層衛生
的であり好ましい。
【0017】抗菌性,抗カビ性,防虫性を付与するに
は、亜酸化銅,ジエチルトルアミド,抗菌性ゼオライ
ト,芳香族エステル等の薬剤を、素材に直接噴霧するか
或いは、素材を製造する段階で原料と共に混合すればよ
い。
【0018】また、消臭性を付与するには、酸化亜鉛,
金属フタロシアニン誘導体等を用いて同様に行うことが
できる。
【0019】本発明においては、上記の素材を組み合わ
せて被覆層を形成することも可能であり、例えば土壌を
覆っている不織布の一部が合成樹脂で置き換えられてい
てもよい。
【0020】本発明の植物生育用支持体に充填する植物
用土壌は、一般に用いられる植物栽培用のものでよく、
例えば赤土,黒土,ピートモス等の天然培養土の他、バ
ーミキュライト,パーライト,ロックウール等の人工培
養土,水苔,ポリビニルホルマールスポンジやポリビニ
ルアセタールスポンジ等のスポンジ類等の吸水性素材,
及びこれらを組み合わせた調合培養土が使用できるが、
軽量のものが、吊り下げや移動に適しているため好まし
い。
【0021】これらの植物用土壌には、抗菌性を付与す
ることが衛生面から好ましい。抗菌性を付与するには、
例えば針葉樹(桧,杉)の粉末や抗菌性ゼオライト(鐘
紡製)等を土壌に配合すればよい。
【0022】また、本発明の植物生育用支持体は、被覆
層が通気性に富む素材で形成されているため、培養土と
被覆層との間に、吸水性素材からなる植物用土壌を配
し、保水層を形成させるかまたは、土壌中に高分子性保
水剤を均一にまたは一部にまとめて配置することが、乾
燥を防ぐ点から好ましい。
【0023】この保水層の厚さは、植物生育用支持体の
大きさによって異なり、一概に規定できるものではない
が、例えば1〜10mm程度でよい。
【0024】高分子性保水剤としては、例えば、デンプ
ン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物,デ
ンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物,アクリル
酸エステル−酢酸ビニル共重合体のケン化物,架橋ポリ
ビニルアルコール変性物,部分中和ポリアクリル酸塩架
橋体,架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体等が
使用され、特に部分中和ポリアクリル酸塩架橋体が、架
橋体が吸水・吐水性,機械的強度に優れるという点で好
ましい。高分子性保水剤の配合量は、0.05〜5重量
%が好ましい。
【0025】本発明の植物生育用支持体には、芳香剤を
配合することが好ましい。用いられる芳香剤としては、
一般に使用される天然香料,合成香料,これらの調合香
料等が挙げられるが、各種配糖体,リン酸エステル誘導
体,アミノ酸誘導体,カルボン酸誘導体等の香料誘導体
が好ましく、中でも各種配糖体が、土壌中の微生物およ
び植物体中の内在性酵素(グルコシダーゼ等)によって
分解されて初めて芳香が発生するため、自然な香を賦与
することができるため特に好ましい。
【0026】具体的には、アルコール類(メタノール,
エタノール,シス3−ヘキセノール,ゲラニオール,
ネロール,リナロール,シトロネロール,ファルネソー
ル等の脂肪族アルコール類,メントール,ターピネオー
ル,イオノール,ヒドロキシダマスコン等の脂環族アル
コール類,ベンジルアルコール,2−フェニルエチルア
ルコール,シンナミルアルコール等の芳香族アルコール
類,アニスアルコール,バニリルアルコール等のフェノ
ール類),チオール類(メチルメルカプタン,エチルメ
ルカプタン,チオリナロール,チオメントール等)をア
グリコンとした単糖類,二糖類,多糖類還元糖との配
糖体,アルキル,アルケニル,アルキニル,アラルキル
を香料成分として持つホスフェート,ピロホスフェート
等のリン酸エステル,システイン,アラニン,グルタミ
ン酸とのアミノ酸誘導体,および上記アルコール類を香
料成分として持つキナ酸,カフェ酸等のカルボン酸との
誘導体等が挙げられる。
【0027】芳香剤の配合量は、植物の生育に害のない
程度で、好みなどにより適度に調整することができる
が、支持体の体積1000cm3 当り1mg〜1gが好ま
しい。これらの芳香剤は、直接土壌に配合しても良い
が、カプセル化してから配合すると、香が持続するため
好ましい。また、被覆層に付着させるか練り込むことも
できる。非耐熱性または変性しやすい芳香剤の場合は、
マイクロカプセル化し、バインダー中に分散させ、繊維
に付着させるかまたは天然樹脂,石油系ワックス等に混
入し、支持体の被覆層を構成する繊維をコーティングす
るのが好ましく、リン酸エステル等の耐熱性のある芳香
剤の場合は、ポリオレフィンに混入し、これを芯部とし
てポリエステル等が鞘部となるように溶融紡糸した繊維
を素材とする織編布や不織布を使用するのが好ましい。
【0028】本発明の植物生育用支持体には、植物生長
調整剤を配合することもできる。植物生長調整剤として
は、一般に農業用に使用されるものであれば何れも使用
可能であり、例えば、オーキシン(インドール酢酸,イ
ンドール酪酸,ナフタレン酢酸等),サイトカイニン
(ベンジルアデニン,カイネチン,ゼアチン等),ジベ
レリン(GA3 ,GA4 ,GA7 等),矮化剤(B−ナ
イン,サイコセル,スリートーン,アトリナール,ボン
ザイ等)が使用できるが、矮化剤が、植物のサイズを支
持体に合わせて制御できるため好ましい。
【0029】植物生長調整剤の配合量は、植物の生育状
態に合わせて、適宜調整することができるが、土壌1リ
ットルあたり1mg〜10gが好ましい。
【0030】これらの植物生長調整剤は、直接土壌に配
合しても良いが、カプセル化してから配合しても良い。
また、被覆層に付着させるか練り込むこともできる。非
耐熱性または変性しやすい植物生長調整剤の場合は、マ
イクロカプセル化し、バインダー中に分散させ、繊維に
付着させるかまたは芳香剤の場合と同様に樹脂加工によ
って付着させるのが好ましく、耐熱性のある植物生長調
整剤の場合は、被覆層に練り込むのが好ましい。
【0031】本発明の植物生育用支持体には、害虫忌避
性物質を配合することができる。害虫忌避性物質として
は、クエン酸銅,タンニン酸(ナメクジ用),ピレスト
ロイド系ペルメトリン(アリ,ゲジゲジ用),及びジエ
チルトルアミド等が挙げられる。
【0032】害虫忌避性物質の配合量は、通常使用され
る範囲で適度に調整することができる。
【0033】これらの害虫忌避性物質は、被覆層あるい
は植物用土壌に予め混合または塗布すれば良い。被覆層
に塗布しておくと忌避効果が大きいが、被覆層の素材自
体に混入させるか植物用土壌に混合すると、害虫忌避物
質が長期間保持されるため、好ましい。
【0034】本発明の植物生育用支持体の形態は、例え
ばボール状(図1),半球状(図7),三角すい,円す
い,四角すい,円筒,枕状(図2),直方体,シート
状,板状,鉢状,皿状,円柱状(図6)等が挙げられ、
植物生育用支持体完成時に土壌を閉塞的に被覆するもの
であればどのような形や大きさでも良い。
【0035】本発明の被覆層が、不織布,織編布である
場合には、そのままで用いることもできるが、支持体の
全部または一部を加熱圧縮等により成形加工して用いて
も良い(図6,7)。この様な成形加工は縫製や結束等
の作業を省くことができるため、製造の機械化による高
能率化や低コスト化が可能となる。
【0036】本発明の植物生育用支持体の内部には、給
水のための容器を取り付けることが、美観を損ねないと
いう点や、給水機構が簡単であるため好ましい。給水用
容器の容積は、植物生育用支持体容積全体の1/5〜1
/20が好ましい。給水用容器の材質は特に制限されな
いが、一部または全体を素焼き製にすることで、給水が
より容易となる。素焼き製でない場合は容器から給水紐
によって土壌中に給水する。支持体の下部から余剰の水
が漏出する場合には、支持体下部に水受けを設け、さら
にその水受けに排水孔を設けるのが好ましい(図4参
照)。
【0037】本発明に用いられる植物の種類は特に限定
されるものではないが、一般に装飾または鑑賞用に利用
されている植物等が挙げられる。例えば、一年生草花で
あれば、ペチュニア,マリーゴールド,ヒマワリ,コリ
ウス,インパチェンス,アサガオ,カスミソウ,スイー
トピー,パンジー,ロベリア,ワスレナグサ等,多年草
であればアナナス,ゼラニウム,カンパニュラ,カラン
コエ,セントポーリア,フクシア,ベゴニア,ポインセ
チア,カーネーション,芝類,セージ,タイム,チャイ
ブ,トウガラシ,ラベンダー,ローズマリー,バジル
等,球根植物であれば、アネモネ,クロッカス,ムスカ
リ,アマリリス,カラー,ジンジャー,カラジウム,ス
ノードロップ等,花木であれば、アジサイ,クチナシ,
バラ,エリカ,ランタナ等,観葉植物であれば、アスパ
ラガス,アンスリウム,カラテア,クロトン,フィカ
ス,ペペロミア,シダ類等が挙げられる。
【0038】本発明に用いられる植物体としては、種
子,球根,苗等が挙げられ、これらは土壌栽培したプラ
グ苗として使用することもできるが、植物生育用支持体
に植え付ける際の作業能率を向上させるためには、植物
体の一部(具体的には根や茎等)または全体(種子,球
根等)を、後述する弾力性素材で覆ったものが好まし
い。
【0039】弾力性素材としては、ウレタンスポンジ等
の発泡体やポリエステルクッションのような繊維状クッ
ション,織編布,不織布等が挙げられる。これらの弾力
製素材で植物体を覆うには、これらをプラグトレーに土
壌の代わりに充填し、種子を蒔いて苗を生産するかまた
は、これらをシート状にして、植物体の一部に巻き付け
れば良い。
【0040】本発明の植物生育用支持体に植物を植え付
けるには、例えば次のようにして行うことができる。
【0041】被覆層素材が陶製であれば、植え付ける植
物の茎が収まる程度の必要最小限の穴をあける。素材が
織編布または不織布であれば、土壌を充填前または後に
適宜間隔をあけて穿孔するか、スリット状の切り込みを
入れる。穴またはスリットをあける間隔は、植え付ける
植物、美観によって調節すればよいが、2cm〜30c
mの範囲が好ましい。この時、内部から土壌が漏出しな
いように必要最小限の穴または切り込みにとどめる。
【0042】素材が織編布または不織布の場合には、苗
の植え付け後、織編布または不織布のもつ復元力で穴及
びスリットは小さくなり、植物の茎と密着することによ
り土壌の漏出を防ぐことが出来る。
【0043】また、植えける植物の茎及び/又は根を
スポンジ、織編布または不織布などの弾力性のある素材
で包み植物生育用支持体に植え付けるのも良い。これら
の穴や切り込みに、弾力性素材をピンセット等で圧縮し
た植物体を植え付ける。植え付け後、弾力性素材の形状
が復元することによって、支持体内部から栓がされた
状態になり、内部からの土壌の漏出が防止される。
【0044】本発明の植物生育用支持体は、複数を互い
に連結することによって、複合支持体とすることもでき
る。複合支持体は、例えばプラスチック製,木製,金属
製或いは陶器製の外枠(支持体ホルダー)の中に、複数
の支持体を、互いに密着するように挿入したり、密着さ
せた支持体を紐や針金等で固定する等して作成すること
ができる。この時、支持体同士は通気,通水可能な部分
で連結することが慣用である。
【0045】複合支持体は、部屋のレイアウトや好みに
合わせて、様々な形状とすることができる。また、互い
に通気,通水可能な部分で連結しているため、一つの支
持体に給水するだけでよいという利点を有している。こ
の時、各支持体が、通水性に富む外枠や紐によって連結
されていると、より好ましい。
【0046】複合支持体とする場合には、被覆層は不織
布が好ましい。
【0047】種子,球根,苗等を植え付けた支持体への
灌水は、じょうろで支持体の表面へ直接与えることも出
来るが、支持体上の適当な場所に開けた小穴からの点滴
灌水(図3)や、支持体の底部に取付けた給水紐や給水
棒による底面給水(図1)による方法などが効果的であ
る。複合支持体の場合は、一つの支持体に給水してもよ
い。また、内部に給水用容器を持つ場合には、時々
器に水を補給してやるだけで良い。
【0048】本発明の植物生育用支持体は、そのまま床
や専用台に設置してもよいが、天井や壁に吊り下げる
と、支持体全面に植物を繁茂させ、支持体を植物で覆い
隠すことができるため、鑑賞価値が上がり、好ましい。
この他、シート状または板状の支持体を用いれば、蔦や
ポトス等のつる状の植物でなくとも、壁や天井を植物で
装飾することができる。
【0049】土壌を充填した植物生育用支持体はそのま
ま使用できるが、土壌伝染病や害虫駆除のため加熱処理
や薬剤処理を施してから使用してもよい。
【0050】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に詳細に説
明する。
【0051】実施例1 ポリエステル不織布(目付120g/m2 でポリエステ
ルステープル100%からなりポリエステルステープル
の物性は、繊度13d,強度2.5g/d,伸度132
%,170℃熱収縮率2%)を使用し、内部にピートモ
ス,バーミキュライト,パーライトを等量ずつ、さらに
緩効性の粒状化成肥料を適量混合した培養土500gを
充填し、半径8cmの球状の支持体を作製した。
【0052】この支持体の周囲に、10〜15cm間隔
にピンセットで6〜10個の小さな穴を開け、インパチ
ェンス,コリウス,アキメネスの各植物を植え付けた。
インパチェンスは播種3週間後で本葉が3枚ほど展開し
た苗を使用し、穴から培養土が漏出しないように茎の周
囲にスポンジシートを巻き付け支持体の穴と密着させ
た。コリウスは、葉を2〜3枚つけた挿し穂を使用し挿
し木した。アキメネスは球根を、支持体の穴から発芽出
来るようにピンセットで埋め込んだ。植物の植え付け後
温室内に吊り下げ、点滴灌水により栽培したところ、2
カ月後、生育した植物により支持体が覆われ観賞可能と
なった。植物は次々と開花、生長し約5カ月間観賞する
ことができた。
【0053】この間、培養土中からの昆虫類の発生は全
く認められず、観賞終了後支持体を分解し培養土を肉眼
で観察したが、培養土中にも昆虫類は観察されなかっ
た。
【0054】 実施例2 培養土に、さらに芳香剤として、配体であるβ−フェ
ニルエチルグルコサイド0.2容量%水溶液100ml
を配合する以外は、実施例1と同様に行った。この支持
体からは、実施例1よりも強いが自然な芳香が発生し、
観賞価値の高い植物を提供することができた。
【0055】実施例3 培養土に、さらに保水剤としてアクリル酸系のポリマー
であるアクリホープ(日本触媒製)1重量%を配合する
以外は、実施例1と同様に行った。この支持体は、実施
例1よりも保水性に優れていた。
【0056】 実施例4 培養土に、さらに植物生長調剤として、矮化剤である
B−ナイン0.1容量%水溶液100mlを配合する以
外は、実施例1と同様に行い、インパチェンス,コリウ
スを栽培したところ、何れも通常必要な摘をすること
なく均整のとれた球状に生育・繁茂した。
【0057】 実施例5 B−ナインをサイコセルに代え、また植物をポインセチ
アに代える以外は実施例4と同様に行ったところ、生長
調剤無添加の場合には、30cm以上になるこの植物
の草丈が、5cm以下となり、また全体として均整のと
れた球状に生育し、観賞価値を高めることができた。
【0058】実施例6 支持体内部に図4に示すような給水用容器を取り付ける
以外は、実施例1と同様に行った。この支持体は、給水
が簡単であるという利点を有していた。
【0059】実施例7 通常プラグ苗生産に使用される406穴のプラグトレー
(輸入元;日新トレーディング)に、2cm×2cm×
2.5cmの直方体にカットしたウレタンスポンジ
(0.015g/cm3 )を充填し、浸水後、インパチ
ェンス,コリウスの種子を1粒ずつ播種して支持体に植
え付けるための挿着用植物体を作製した。2ヶ月間毎日
液体肥料(ハイポネックス,Hyponex社製)の1
000倍希釈液を散布した。
【0060】実施例1で作製した支持体の周囲に、ピン
セットを用いて10〜15cm間隔で小さな穴を6〜1
0個開け、インパチェンス,コリウスの挿着用植物体を
植え付けた。インパチェンスは播種8週間後で本葉が5
〜6枚ほど展開した苗を使用し、コリウスは、本葉が4
〜5枚展開した苗を使用した。植え付けは、ピンセット
でスポンジ部を圧縮するように保持し、不織布の穴に埋
め込むようにして行った。植え込み後、支持体内部でス
ポンジが復元し、穴からの土壌の漏出を防ぐことができ
た。この方法では、土壌中で生育させた挿着用植物体を
用いるよりもかなり植え付け効率が向上した。
【0061】このようにして製造された植物生育用支持
体を、温室内に吊り下げ、点滴灌水により栽培したとこ
ろ、2ヶ月後、植物により支持体が覆われ、観賞可能と
なった。
【0062】実施例8 培養土に、さらに杉のおがくず50gを混ぜる以外は、
実施例1と同様にして行った。2ヶ月間栽培したとこ
ろ、植物は次々と開花し、約5ヶ月間観賞することがで
きた。
【0063】この間、培養土の表面には、かびなどの生
育は全く見られず、観賞終了後支持体を分解して肉眼で
観察したが、培養土中にも昆虫類は観察されなかった。
【0064】実施例9 実施例1のポリエステルステープルを、亜酸化銅(添加
率5%)を練り込んだシスコアタイプのポリエチレン・
ポリエステル繊維を素材とした不織布に変え、同様の支
持体を作製、栽培を行った。
【0065】植物の生育になんら影響することなく実施
例1と同様の栽培、観賞が可能であった。
【0066】また、本実施例では、長期使用後も、通常
の栽培容器に見られるような藻類及びカビの発生が認め
られなかった。
【0067】実施例10 実施例1のポリエステルステープルを酸化亜鉛を練り込
んだポリエステル繊維を素材とした不織布(鐘紡株式会
社製・商品名「パスカルE」)に変更、また、植物をミ
ニバラ,ハーブ(香草)の一種であるパイナップルミン
ト,及びクリーピングタイムに変更し、同様の支持体を
作製、栽培を行った。
【0068】植物の生育になんら影響することなく実施
例1と同様の栽培、観賞が可能であった。
【0069】本実施例では、通常の栽培において問題と
なる土壌臭がほとんど無く、ミニバラ及びハーブの香り
を長期間(5カ月間)楽しむことが出来た。
【0070】実施例11 市販のプラスチック製(直径15cm)の植木鉢を使用
し、鉢内部に実施例1と同じ培養土を充填した後、中央
部にカラジウムの球根を1個植え付けた。その後、直径
17cmの円形に裁断し、更に中心に長さ1cmのスリ
ットをつけた実施例2の不織布で鉢の開口部を覆い、接
着剤で鉢の周囲に完全に接着した。
【0071】2週間後より球根からの発芽がみられ、そ
の後は順調に生育した。不織布表面での藻類及びカビの
発生は認められず、また、鉢が転倒したときも培養土の
散逸が無く非常に清潔感の高い鉢植えとなった。
【0072】実施例12 ピートモス,バーミキュライト,パーライトを等量ず
つ、さらに緩効性の粒状化成肥料を適量混合した培養土
250gにナメクジの忌避剤であるクエン酸銅を0.5
g混ぜたものを用いる以外は、実施例11と同様にし
て、インパチェンスを栽培したところ、3ヶ月後に開花
した。その間時々鉢の底を調べたが、ナメクジは認めら
れなかった。
【0073】実施例13 土壌中にピレストロイド系ペルメトリンを0.1重量%
配合する以外は、実施例1と同様にして、支持体を作製
した。
【0074】この支持体の周囲に、10〜15cm間隔
にピンセットで5〜7個の小さな穴を開け、パンジー,
ペチュニアを植え付けた。点滴灌水により栽培したとこ
ろ、2カ月後開花した。その間、支持体および植物にア
リは認められなかった。
【0075】実施例14 ポリエステル不織布に、ピレストロイド系ペルメトリン
が繊維の重量当り0.1重量%付着するよう、ピレスト
ロイド系ペルメトリン溶液を塗布し、乾燥させる以外、
実施例1と同様にして、支持体を作製した。
【0076】実施例13と同様に、パンジー,ペチュニ
アを植え付け、点滴灌水により栽培したところ、2カ月
後開花した。その間、支持体および植物にアリは認めら
れなかった。
【0077】実施例15 実施例1で用いたポリエステル不織布の内部に、ピート
モス,バーミキュライト,パーライトを等量ずつ、さら
に緩効性の粒状化成肥料を適量混合した培養土250g
を充填し、半径5cmの円柱状の支持体を3個作製し
た。これを相互に側面で密着させ、針金で固定して、植
物生育用複合支持体を作成した。
【0078】この支持体の周囲に、5〜7cm間隔にピ
ンセットで3〜5個の小さな穴を開け、インパチェン
ス,コリウス,アキメネスの各植物を各々別の支持体に
植え付けた。インパチェンスは播種3週間後で本葉が3
枚ほど展開した苗を使用し、穴から培養土が漏出しない
ように茎の周囲にスポンジシートを巻き付け支持体の穴
と密着させた。コリウスは、葉を2〜3枚つけた挿し穂
を使用し挿し木した。アキメネスは球根を、支持体の穴
から発芽出来るようにピンセットで埋め込んだ。植物の
植え付け後温室内に吊り下げ、点滴灌水により栽培した
ところ、2カ月後、バランス良く生育したそれぞれの植
物により支持体が覆われ観賞可能となった。植物は次々
と開花、生長し約5カ月間観賞することができた。
【0079】この間、培養土中からの昆虫類の発生は全
く認められず、観賞終了後支持体を分解し培養土を肉眼
で観察したが、培養土中にも昆虫類は観察されなかっ
た。
【0080】実施例16 実施例15と同様に作成した3個の円柱状支持体を、金
属製の外枠の中に、相互に密着するように挿入して、植
物生育用複合支持体を作成した。露出しているそれぞれ
の支持体表面に、約5cm間隔にピンセットで3〜5個
の小さな穴を開け、インパチェンス,コリウス,アキメ
ネスの各植物を各々別の支持体に植え付けた。実施例1
5と同様に栽培したところ、2カ月後、バランス良く生
育したそれぞれの植物により支持体が覆われ観賞可能と
なった。植物は次々と開花、生長し約5カ月間観賞する
ことができた。
【0081】実施例17 多孔製ポリエステルフィルムとポリウレタン不織布(直
径30ミクロン程度のポリウレタン繊維から成り、目付
50g/m2 ,破断強度400g/cm2 ,破断伸度5
00%)を張り合わせて製造した透湿性フィルム(透湿
度7732g/m・24h,通気度1020.8Pa・
s/m)を使用した以外は実施例1と同様にしてインパ
チェンス,コリウスを栽培したところ、3ケ月後に開花
した。これを上下逆さにして保持した時の、水の漏出量
は1ml/10h未満であった。この支持体は水の漏出
がほとんどなく室内が汚れることがない点(水受皿を設
けないで使用することもできる)と、比較的安価での製
造が可能であるという点の、2つの利点を有していた。
【0082】実施例18 ナイロン・ポリエステル分割繊維のマイクロファイバー
(繊度0.01d)によって製造した織編布(透湿度1
1503g/m・24h,通気度27.1kPa・s/
m)を使用した以外は実施例1と同様にしてインパチェ
ンス,コリウスを栽培したところ、3ヶ月後に開花し
た。これを上下逆さにして保持した時の、水の漏出量は
1ml/10h未満であった。この支持体は、水の漏出
がほとんどなく室内が汚れることがない点(水受皿を設
けないで使用することもできる),外観に高級感を出す
ことができる点,の2つの利点を有していた。
【0083】実施例19 ポリエステル不織布(目付300g/m2 でポリエステ
ルステープル100%からなりポリエステルステープル
の物性は、繊度13d、強度2. 5g/d、伸度132
%、170℃熱収縮率2%)を加熱圧縮によって直径2
0cm,高さ4cmの深皿型に成形した。この成形不織
布内に実施例1と同様の培養土500gを充填し、上面
に円盤状の熱圧縮不織布を接着した。更にこの円盤状不
織布中央に小穴を開けて給水紐を挿入することによっ
て、支持体を作成した(図6)。この支持体を、給水紐
を下にして使用した以外は実施例1と同様にしてインパ
チェンス,コリウスを栽培したところ、3ケ月後に開花
した。この支持体は組立が容易である上、機械化による
製造の高効率化や低コスト化が可能であるという利点を
有していた。
【0084】実施例20 ポリエステル不織布(目付300g/m2 でポリエステ
ルステープル100%からなりポリエステルステープル
の物性は、繊度13d、強度2. 5g/d、伸度132
%、170℃熱収縮率2%)の苗植え付け予定部位以外
を加熱圧縮することにより、苗植え付け部位の不織布が
柔らかいまま成形したものと、合成樹脂を組み合わせて
植物生育用支持体を作成した(図7)。加熱圧縮の際に
は雄型と雌型それぞれの苗植え付け予定部位に凹みを作
ることによって、苗植え付け予定部位の不織布が圧縮さ
れることを防いだ。以上のようにして作成した支持体を
使用した以外は実施例1と同様にして、インパチェン
ス,コリウスを栽培したところ、3ケ月後に開花した。
この支持体は苗植え付け部位の不織布が柔らかいため、
植え付け時や生育過程での苗の傷みがほとんどないとい
う利点を有していた。
【0085】
【発明の効果】以上の通り、本発明により、土壌が漏出
することなく、衛生的で、植物鑑賞用として優れた植物
生育用支持体を提供できる。また、抗菌性,抗カビ性,
防虫性,消臭性素材を用いることによって、より鑑賞価
値が高いものとすることができる。更に、支持体の全面
に植物を生育させれば、容器を見せず、自然界に生育し
ている植物の雰囲気を醸し出すことができる。しかも、
切り花とは違い、根が付いたままであるため、生き生き
とした植物体を鑑賞することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】給水タンクをセットした容器と結合させた植物
生育用支持体を示す。
【図2】壁掛け装飾板にセットした植物生育用支持体を
示す。
【図3】植物生育用支持体の頭部にフックをつけてハン
ギングタイプにしたものを示す。
【図4】給水用容器を内蔵した植物生育用支持体を示
す。
【図5】植物生育用複合支持体を示す。
【図6】成形不織布を用いて作成した植物生育支持体
を示す。
【図7】苗植え付け部位の不織布が柔らかい成形不織布
と合成樹脂を組み合わせて作成した植物生育用支持体を
示す。
【符号の説明】
1 吊り下げ用フック 2 抗菌性不織布 3 軽量人工培養土 4 挿着用植物体 5 ジョイント兼水受皿 6 給水棒 7 水タンク 8 壁掛け装飾板 9 植物生育用支持体 10 灌水チューブ 11 持ち手 12 蓋 13 被覆層 14 給水用容器 15 給水紐 16 培養土 17 水受け 18 水抜き穴 19 栓 20 植物生育用支持体 21 支持体ホルダー 22 網 23 水 24 給水紐 25 水紐 26 円盤状の熱圧縮不織布 27 培養土 28 成形不織布 29 支持体ホルダー 30 水紐 31 合成樹脂製の底板 32 培養土 33 成形不織布 34 苗植え付け予定部位 35 合成樹脂製の不織布固定リング
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き 審査官 坂田 誠 (56)参考文献 特開 平5−41924(JP,A) 実開 平4−133165(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A01G 1/00 303

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 植物用土壌を有する植物生育用支持体で
    あって、該土壌を閉塞状に覆う被覆層が、通気性,通水
    性,および非腐食性を有し、且つ該被覆層が抗菌剤,抗
    カビ剤,防虫剤,消臭剤からなる群より選ばれる少なく
    とも一種以上を含有することを特徴とする植物生育用支
    持体。
  2. 【請求項2】 被覆層が100〜500g/m2 の目付
    けを有する不織布からなる請求項1記載の植物生育用支
    持体。
  3. 【請求項3】 被覆層が、繊度0.02d以下のマイク
    ロファイバー製の不織布,繊度0.02d以下のマイク
    ロファイバー製の織編布,通気性フィルムからなる群よ
    り選ばれる一種以上からなる請求項1記載の植物生育用
    支持体。
  4. 【請求項4】 内部に給水機構を備えた、請求項1〜請
    求項3のいずれかに記載の植物生育用支持体。
  5. 【請求項5】 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の
    植物生育用支持体を、複数連結してなる植物生育用複合
    支持体。
  6. 【請求項6】 (a)通気性、通水性、および非腐食性
    を有する素材からなり、(b)抗菌剤,抗カビ剤,防虫剤,消臭剤からなる群よ
    り選ばれる少なくとも一種以上を含有し、 (c) 植物用土壌全体を閉塞状に被覆している被覆層
    に、穿孔またはスリットを施し、該穿孔またはスリット
    に、一部または全体が弾力性素材で覆われた植物体の、
    弾力性素材部分を挿着することを特徴とする、植物の栽
    培方法。
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