JP2894249B2 - 吸音体及び吸音ユニット - Google Patents

吸音体及び吸音ユニット

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JP2894249B2
JP2894249B2 JP7171465A JP17146595A JP2894249B2 JP 2894249 B2 JP2894249 B2 JP 2894249B2 JP 7171465 A JP7171465 A JP 7171465A JP 17146595 A JP17146595 A JP 17146595A JP 2894249 B2 JP2894249 B2 JP 2894249B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、室内の天井及び壁面用
途の音響設計、屋外の騒音防止としての防音壁及びトン
ネル内装等の用途において、吸音構造の表面に配置する
のに適した吸音体及びその吸音体を用いた吸音ユニット
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、天井や壁面等に設ける吸音板とし
て、岩綿やガラスウール等の繊維マット板が使用されて
いる。しかしながら、これらの繊維マット板では中高音
域の吸音効果は有るものの、低周波数域での吸音特性に
劣るという欠点がある。そこで、低周波数域での吸音特
性に優れた吸音構造として、空気室の前に、平板に多数
の貫通孔を設けて有孔構造とした吸音板を配置したもの
が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の有孔
構造の吸音板は、平面に多数の孔を開口させた形状であ
るので、これを天井や壁面の表面に配置すると、平面に
開口した多数の孔が見えてしまい、壁表面に視点が合わ
なくなり、ちらちらして不快感を与えるという問題があ
った。また、平面に多数の孔を開口しただけの単純な形
状であるため、意匠的な限界があった。更に、多数の孔
が汚れて外観を悪くするとか、吸音特性を劣化させると
いう問題もあった。
【0004】本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなさ
れたもので、空気室の前に配置して良好な吸音特性を備
えた吸音構造を形成するために使用でき、しかも良好な
外観を与えることの可能な有孔構造の吸音体を提供する
ことを目的とする。
【0005】また、本発明は、その吸音体を用いた吸音
ユニットを提供することも目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本願請求項1の発明は、
上記問題点を解決するため、空気室の前に配置され、該
空気室と共に吸音構造を構成する吸音体の構造を、前記
空気室とは反対側に突出するように且つ前記空気室に連
通する共鳴空間を形成するように設けられ、先端に向か
って拡がった断面形状の部分を有する複数のリブと、該
リブの間に形成された基底部とを有するものとし、前記
リブの側面及び基底部の少なくとも一方に前記空気室に
連通する複数の貫通孔を形成したことを特徴とするもの
である。
【0007】請求項2の発明は、上記の吸音体に、更
に、前記リブの間の基底部の内面若しくは外面の少なく
とも一方に吸音材を配置するという構成としたものであ
る。
【0008】また、請求項3の発明は、上記の吸音体の
前記リブ及び基底部の少なくとも一方の裏面に、背後の
空気室を、所望の共鳴周波数の容積となるように分割す
る仕切壁を設けるという構成を備えたものである。
【0009】本願請求項4の発明は、空気室の前に配置
され、該空気室と共に吸音構造を構成する吸音体の構造
を、前記空気室とは反対側に突出するように且つ前記空
気室に連通する共鳴空間を形成するように設けられた複
数のリブと、該リブの間に形成された基底部とを有する
ものとし、前記リブの側面及び基底部の少なくとも一方
に前記空気室に連通する複数の貫通孔を形成し、更に、
前記リブ及び基底部の少なくとも一方の裏面に、背後の
空気室を、所望の共鳴周波数の容積となるように分割す
る仕切壁を設けたことを特徴とするものである。
【0010】請求項5の発明は、上記の吸音体に設ける
複数のリブの大きさを2種類以上とし、各リブが形成す
る共鳴空間の容積が少なくとも2種類存在する構成とし
たものである。
【0011】請求項6の発明は、上記した吸音体と、そ
の背後に空気室を形成するように間隔を開けて背板を配
置し、その吸音体と背板とを一体構造としてユニット化
したものである。
【0012】
【作用】本願請求項1の発明の吸音体は、これを空気室
の前面に取り付けて吸音構造を形成した時、複数のリブ
が前面となるため、多数のリブが並んだ外観となり、貫
通孔はそのリブの側面やリブ間の基底部に形成されてい
るためあまり目立つことがなく、従って、その貫通孔に
よるちらつきがなく、不快感を与えることがない。しか
も、リブが、先端に向かって拡がった断面形状の部分を
有しているので、そのリブが、基底部或いはリブ側面に
形成した貫通孔を隠す効果が大きく、外観が良くなると
共にその貫通孔へのごみやほこりの付着を防止する効果
もあり、長期間に渡って、貫通孔の詰まりを防止でき
る。また、吸音体は多数の貫通孔を備えた有孔構造であ
るので、空気室との組み合わせにより低周波数域での吸
音特性の良い吸音構造を形成でき、しかもその際リブ内
の空間が共鳴空間として作用するので吸音特性が良く、
従来の多孔板を用いる場合に比べて、吸音構造を薄くす
ることが可能である。更に、リブの間隔や幅を適宜変え
ることにより、種々な外観を与えることができ、種々な
意匠に変更できる。また、複数のリブは補強の作用も果
たしており、吸音体の強度を向上できる。
【0013】請求項2の発明では、上記の吸音体に、更
に、前記リブの間の基底部の内面若しくは外面の少なく
とも一方に吸音材を配したことにより、共鳴周波数域を
拡げることができ、広い周波数範囲における吸音特性を
向上できる。
【0014】また、請求項3の発明は、上記の吸音体の
前記リブ及び基底部の少なくとも一方の裏面に、背後の
空気室を、所望の共鳴周波数の容積となるように分割す
る仕切壁を設けたことにより、所望周波数の吸音率を高
くすることができ、換言すれば、独立した小室の容積を
所望の共鳴周波数に対応した値に設計することで、容易
に所望の吸音特性の吸音構造を設計できる。
【0015】請求項4の発明も請求項3の発明と同様
に、吸音体に設けているリブ及び基底部の少なくとも一
方の裏面に、背後の空気室を、所望の共鳴周波数の容積
となるように分割する仕切壁を設けたことにより、所望
周波数の吸音率を高くすることができ、換言すれば、独
立した小室の容積を所望の共鳴周波数に対応した値に設
計することで、容易に所望の吸音特性の吸音構造を設計
できる
【0016】請求項5の発明は、上記の吸音体に設ける
複数のリブの大きさを2種類以上とし、各リブが形成す
る共鳴空間の容積が少なくとも2種類存在する構成とし
たことにより、共鳴周波数を複数とすることができ、広
い周波数範囲での吸音特性を向上できる。
【0017】請求項6の発明は、上記した吸音体と、そ
の背後に空気室を形成するように間隔を開けて背板を配
置し、その吸音体と背板とを一体構造としてユニット化
したことにより、単にこの吸音ユニットを並べるのみ
で、所定の吸音特性の壁面を形成でき、施工現場での吸
音構造の製造を容易とできる。
【0018】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例を説明する。図
1は本発明の一実施例による吸音体を用いて構成した吸
音構造の概略斜視図、図2はその吸音構造の概略断面図
であり、1は壁面、2は空気室、3はその空気室2の前
に位置するよう、壁面1に対してスペーサ4を介して取
り付けられた吸音体であり、壁面1、空気室2と共に吸
音構造を構成する。この吸音体3は、金属、プラスチッ
ク、木材等の板材によって作られており、空気室2とは
反対側に突出するように且つその空気室2に連通する共
鳴空間5を形成するように設けられた複数のリブ6と、
そのリブ6の間に形成された基底部7とを有し、その基
底部7に空気室2に連通する複数の貫通孔8が形成され
ている。
【0019】この吸音構造では、外部からの音波が表面
の吸音体3にぶつかり、その貫通孔8を通って背後の空
気室2及びリブ6内の共鳴空間5内に入り、その空気室
2及び共鳴空間5による共鳴効果によって吸音される。
この際、後述する実施例〜による吸音実験の結果か
ら分かるように、この吸音構造は、特に低周波数域の吸
音効果が高いという特性を備えている。また、リブ6内
に共鳴空間5を設けたことにより、単に空気室の前に多
孔板を配置した従来の吸音構造に比べて、吸音効果が高
く、吸音構造の厚みを著しく小さくすることができると
いう特性も備えている。
【0020】ここで、吸音体3に形成する多数の貫通孔
8は、空気室2への音の進入を容易とするために設けた
ものであり、この開口率、孔径、ピッチ等は、空気室2
及び共鳴空間5との組み合わせによる吸音の周波数特性
を考慮して定めればよい。一般的には、開口率としては
0.2〜10%程度が好ましい。また、孔径としては、
3〜15mm程度が好ましい。なお、孔ピッチは上記し
た開口率及び孔径の範囲に一致するように適当に定めれ
ばよい。また、吸音体3に形成するリブ6の幅や高さ
(従って、リブ6内の共鳴空間5の容積)も、空気室2
及び貫通孔8との組み合わせによる吸音の周波数特性を
考慮して定めればよく、例えば、リブ6の最も広い部分
の幅としては40〜100mm程度が、高さは50〜1
00mm程度が好ましい。吸音体3に設けている複数の
リブ6の幅は、一定としてもよいし、異なる幅としても
よい。例えば、2種類の幅のリブ6を交互に配置する構
成としてもよい。このリブ6の幅は吸音周波数に影響す
るので、異なる幅のリブを使用すると、異なる周波数域
で高い吸音効果が得られる。また、リブ6の高さについ
ても同様である。吸音体3の背後に形成する空気室2の
厚さも吸音の周波数特性を考慮して定めるものであり、
例えば、20〜100mm程度が好ましい。
【0021】吸音体3は吸音構造の前面に配置されてお
り、従ってリブ6を有する側の表面が見られる状態とな
る。従って、吸音構造の表面は、複数のリブ6が並んだ
状態となっており、リブ6間の溝9の奥に位置する基底
部7に形成されている貫通孔8はほとんど見えず、多数
の貫通孔8を有しているにもかかわらず、その貫通孔8
によるちらつきはなく、リブ6が並んだ縞状の好ましい
外観となる。このため、見る人に不快感を与えることが
なく、好印象を与えることができる。また、複数のリブ
6は補強の作用を果たすので、単に平板状の多孔板に比
べて強度が大きく、このため、壁1に対して空気室2を
形成するよう間隔を開けて吸音体3を取り付けるための
支持部材(スペーサ4等)を簡略化できる。更に、貫通
孔8が溝9の奥に位置しているため、汚れやごみの付着
が防止され、貫通孔8が塞がることを長期間に渡って防
止できる。
【0022】上記実施例では、リブ6間の基底部7の中
央に貫通孔8を形成しているが、この貫通孔8の形成位
置はこの位置に限らず、適宜変更可能である。すなわ
ち、貫通孔8は内部の空気室2或いは共鳴空間5に連通
する位置で、且つ外部から見えにくい位置であればよ
く、例えば、図3(a)に示すように、基底部7の角の
部分に形成するとか、(b)に示すように基底部7に隣
接したリブ6の側面に形成してもよい。
【0023】リブ6は上記したように、共鳴空間5を形
成して吸音特性を向上させると共に貫通孔8を見えにく
くするために設けるものであるが、この断面形状は種々
変更可能であり、意匠も考慮して適宜設計すればよい。
図1の実施例では、リブ6の先端側が拡がった矩形状と
なっており、従って、リブ6の間の溝9は先端側が狭ま
った形状で、基底部7の貫通孔8を隠す効果が大きい利
点を有している。この他の形状としては、例えば、図4
(a)〜(g)に示すようなものを挙げることができ
る。これらの図において、いずれも下側が空気室とな
り、従って上側が外面(吸音構造の前面)となる。図4
(a)〜(g)に示す吸音体3はいずれも、そのリブ6
が、先端に向かって拡がった断面形状の部分を有してお
り、基底部7或いはリブ側面に形成した貫通孔(図4で
は図示を省略)を隠す効果が大きく、外観が良くなると
共にその貫通孔へのこみやほこりの付着を防止する効果
もある。また、図5(a)、(b)に示すような単純な
断面形状のリブ6を用いることも可能である。この場合
には、吸音体3の製造が容易となる利点が得られる。
【0024】図2に示す実施例の吸音体3は、単に複数
のブリ6とそのリブ6間の基底部7のみで構成されてお
り、取付に当たっては、壁面1に対してスペーサ4を介
して取り付けている。しかしながら本発明の吸音体3は
この構成に限らず、取付用の脚を一体に設けた構成とす
る事も可能である。図6はその場合の吸音体3Aを示す
ものであり、前面に複数のリブ6とその間の基底部7を
有し、その両端に脚11を一板構造として有している。
この吸音体3Aでは、両端の脚11を利用して壁面1に
取り付けることにより、壁面1との間に所定厚さを空気
室2を形成できる。
【0025】図7は本発明の吸音体3と空気室とをユニ
ット化した吸音ユニット13を示すものである。すなわ
ち、この吸音ユニット13は、前面に配置された吸音体
3と、その背後に空気室2を形成するように間隔を開け
て配置された背板14とを一体構造としたものである。
吸音体3としては、上記したものを適宜使用可能であ
る。この吸音ユニット13は単に並べるのみで、一定の
吸音特性を有する吸音壁を容易に形成できる利点を有し
ている。
【0026】以上に説明した実施例の吸音体3では、背
後の空気室2が一つの大きい空間となっているが、これ
を複数の小室に分割することも可能である。図8はその
場合の実施例を示すものであり、図8(a)に示す吸音
ユニット13Aは、前面に配置した吸音体3が幅の異な
る2種類のリブ6a、6bを交互に且つ間隔の異なる溝
9a、9bをはさんで配置しており、基底部7の一方の
端部の裏面に、従ってリブ6a、6bの一方の側面の延
長線上に、仕切り壁15を設けて空気室を複数の小室2
a、2bに分割している。このような構成とすると、空
気室が複数の容積の空気室2a、2bに分割されること
となり、一方の空気室2aが或る周波数の音を吸音し、
他方の空気室2bがそれとは異なる周波数の音を吸音す
ることとなり、吸音周波数域が拡がる利点が得られる。
また、図8(b)に示す吸音ユニット13Bは、仕切り
壁15がリブ6a、6b内に設けられている。この場合
も、図8(a)と同様の効果が得られる。なお、図8に
示す実施例では、複数に分割した空気室の容積が異なる
構成としているが、この代わりに同じ容積に分割する構
成としてもよい。空気室を小容積の複数の室に分割する
と、分割した空気室の容積に応じた狭い周波数域の音に
対する吸音特性が向上し、従って、発生する騒音の周波
数が狭い領域に限られている場合に有効である。
【0027】図8の吸音ユニット13A、13Bでは、
前面の吸音体3のリブ6a、6bが単に矩形状のもので
あるが、前面の吸音体3の形状はこれに限らず、図1〜
図5に示したような各種の形状のものを使用可能であ
る。すなわち、図1〜図5に示す吸音体3に対しても背
面に、図8に示す仕切り壁15を設けて、空気室を複数
に分割する構成としてもよい。また、このような仕切り
壁15を設ける際、背板14は必ずしも設けておく必要
はなく、吸音体3を壁面1(図1参照)に取り付けた際
に、その仕切り壁15がその壁面に突き当たり、吸音体
3と壁面との間の空気室を複数に分割する構成としても
よい。
【0028】以上の実施例では、板材で作られたリブ6
と基底部7とからなる吸音体3を示したが、この吸音体
3に対して吸音材を組み合わせて使用することも可能で
ある。図9(a)、(b)、(c)はその例を示すもの
である。すなわち、図9(a)では、吸音体3の内面
(空気室側の面即ち背面)に、板状の吸音材17を配し
ており、図9(b)では、吸音体3のリブ6間の基底部
7の外面に吸音材18を配している。また、図9(c)
では、リブ6間に形成されている溝9内に円筒状の吸音
材19を配している。ここで使用する吸音材17、1
8、19は、それ自身で吸音効果のある材料であり、通
常、グラスウール、ロックウール、繊維マット材等の多
孔質材、帆布等の膜材等が使用される。このような吸音
材を併用すると、吸音周波数域を拡げることが可能とな
る。
【0029】〔実施例〜〕以下に、本発明の実施例
による各種の吸音体の吸音特性を測定した結果を示す。
使用した吸音構造は図10の〜に示すものであり、
図中に示す寸法の単位はmmである。の吸音体3は
の吸音体3に吸音材17を追加したもの、、の吸音
体3は、の吸音体3の背後の空気室の厚さを変え、且
つ吸音材17、18を追加したものである。〜に示
す吸音体3では、基底部7の中央に直径9mmの貫通孔
8をピッチ50mmで1列形成している。の吸音体3
はの吸音体3に吸音材18を追加したものであり、
、に示す吸音体3では、基底部7の中央に直径10
mmの貫通孔8をピッチ100mmで1列形成してい
る。の吸音体3はの吸音体3に吸音材18を追加し
たものであり、、に示す吸音体3では、狭い方の溝
9aの底面の基底部7の中央に直径9mmの貫通孔8を
ピッチ50mmで1列形成し、広い方の溝9bの底面の
基底部7の中央に、直径10mmの貫通孔8をピッチ1
00mmで1列形成している。また、使用した吸音材1
7、18はグラスウールである。図10に示す各吸音構
造について、それぞれ吸音率を測定し、統計入射吸音率
を求めた。その結果を表1に示す。なお、表1に示す統
計入射吸音率の単位は%である。
【0030】〔比較例1〜3〕図11に示すように、壁
面1の前に300mmの空気室2を形成するように孔あ
きせっこうボード20を配置したもの(比較例1)、そ
の孔あきせっこうボード20の背面に厚み25mmのロ
ックウール吸音フェルト22を配置したもの(比較例
2)、壁面1の前に300mmの空気室2を形成するよ
うに孔あき珪酸カルシウム板23を配置し、その背面に
厚み25mmのロックウール吸音フェルト22を配置し
たもの(比較例3)についての吸音結果も表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】表1の結果を、図12〜図14のグラフに
示す。この表1及び図12〜図14のグラフから良く分
かるように、実施例、では比較的狭い周波数範囲で
はあるが、高い吸音率を示す領域があり、特に実施例
では125〜160Hzという低周波数域に吸音率のピ
ークがある。従って、リブ6の幅や空気室2の深さを適
当に設計することにより、所望の低周波数域での吸音率
を高くした吸音構造を得ることができる。また、実施例
では複数の周波数域に吸音率の高いピークが存在して
いる。従って、複数の周波数域での吸音が要求される用
途に好適である。更に、吸音材17又は18を併用した
場合と、併用しない場合とを比較すると、ピークの吸音
率はあまり変わりないが、併用した場合(実施例、
、、、)の方が広い周波数範囲で吸音率が向上
している。従って、騒音の周波数範囲が広い場合には、
吸音材の併用が好ましい。また、実施例との結果を
比較すると、実施例の吸音特性の方が優れている。従
って、吸音特性のみを考慮すれば、吸音材18を吸音体
3の外面に配置することが好ましい。
【0033】一方、比較例1では全体的に吸音効果が低
く有効とは言えない。比較例2、3では、吸音効果がか
なり向上するが、主として周波数が200Hz以上で効
果を発揮しており、160Hz以下というような低周波
数域ではさほど効果が向上していない。これに対して、
本発明の実施例〜では160Hz以下の低周波数域
でかなりの吸音効果を発揮しており、しかも、吸音構造
全体の厚さは、比較例1〜3の300mmに対し、15
0mmと半分の厚さでよく、十分な吸音効果をあげてい
る。これは、リブ6に形成した共鳴空間5による効果と
思われる。
【0034】
【発明の効果】以上に説明したように、本願請求項1の
発明の吸音体は、空気室とは反対側に突出するように且
つ前記空気室に連通する共鳴空間を形成するように設け
られた複数のリブと、該リブの間に形成された基底部と
を有し、そのリブの側面及び基底部の少なくとも一方に
前記空気室に連通する複数の貫通孔を有する構成とした
ことにより、空気室との組み合わせにより低周波数域で
の吸音特性の良い吸音構造を形成でき、しかもその際リ
ブ内の空間が共鳴空間として作用するので吸音特性が良
く、従来の多孔板を用いる場合に比べて吸音構造を薄く
することが可能で、例えば、多孔板を用いた場合の30
0mmに対してその半分の150mmとすることが可能
であり、更に、その外観は、複数のリブが前面に並び、
貫通孔がほとんど目立たない状態となるので、その貫通
孔によるちらつきがなく、従って不快感を与えることが
なく、また、リブの間隔や幅を適宜変えることにより、
種々な外観を与えることができ、種々な意匠に変更で
き、更にそのリブによる補強効果によって吸音体の強度
を向上できる等、種々な効果を有している。また、上記
の吸音体に設けるリブを、先端に向かって拡がった断面
形状の部分を有する構造としているので、そのリブが、
基底部或いはリブ側面に形成した貫通孔を隠す効果が大
きく、外観が良くなると共にその貫通孔へのごみやほこ
りの付着を防止する効果もあり、長期間に渡って、貫通
孔の詰まりを防止できるという効果も有している。
【0035】請求項2の発明は、上記の吸音体に、更
に、前記リブの間の基底部の内面若しくは外面の少なく
とも一方に吸音材を配置したことにより、共鳴周波数域
を拡げることができ、広い周波数範囲における吸音特性
を向上できるという効果を有している。
【0036】また、請求項3の発明は、上記の吸音体の
前記リブ及び基底部の少なくとも一方の裏面に、背後の
空気室を、所望の共鳴周波数の容積となるように分割す
る仕切壁を設けたことにより、所望周波数の吸音率を高
くすることができ、容易に所望の吸音特性の吸音構造を
設計できるという効果を有している。
【0037】請求項4の発明も請求項3の発明と同様
に、吸音体に設けているリブ及び基底部の少なくとも一
方の裏面に、背後の空気室を、所望の共鳴周波数の容積
となるように分割する仕切壁を設けたことにより、所望
周波数の吸音率を高くすることができ、容易に所望の吸
音特性の吸音構造を設計できるという効果を有してい
る。
【0038】請求項5の発明は、上記の吸音体に設ける
複数のリブの大きさを2種類以上とし、各リブが形成す
る共鳴空間の容積が少なくとも2種類存在する構成とし
たことにより、共鳴周波数を複数とすることができ、広
い周波数範囲での吸音特性を向上できるという効果を有
している。特に、この構成の吸音体に吸音材を併用する
ことにより、広い周波数範囲での吸音特性を向上でき、
広い周波数範囲の騒音を吸収できるという効果が得られ
る。
【0039】請求項6の発明は、上記した吸音体と、そ
の背後に空気室を形成するように間隔を開けて背板を配
置し、その吸音体と背板とを一体構造としてユニット化
したことにより、単にこの吸音ユニットを並べるのみ
で、所定の吸音特性の壁面を形成でき、施工現場での吸
音構造の製造を容易とできるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による吸音体を用いて構成し
た吸音構造の概略斜視図
【図2】その吸音構造の概略断面図
【図3】(a)、(b)はそれぞれ、上記実施例とは異
なる位置に貫通孔を設けた実施例を示す概略断面図
【図4】(a)〜(g)はそれぞれ、異なる断面を備え
た吸音体の実施例を示す概略断面図
【図5】(a)、(b)はそれぞれ、上記実施例とは更
に異なる断面を備えた吸音体の実施例を示す概略断面図
【図6】他の実施例による吸音体を示す概略断面図
【図7】本発明の実施例による吸音ユニットの概略断面
【図8】(a)、(b)はそれぞれ、本発明の他の実施
例による吸音ユニットの概略断面図
【図9】(a)、(b)はそれぞれ、本発明の他の実施
例による吸音体を示す概略断面図
【図10】実施例〜の断面構造を示す概略断面図
【図11】比較例1〜3の断面構造を示す概略断面図
【図12】実施例、、、、の吸音特性を示す
グラフ
【図13】実施例、、、の吸音特性を示すグラ
【図14】実施例、の吸音特性を示すグラフ
【符号の説明】
1 壁面 2 空気室 2a、2b 小室 3 吸音体 4 スペーサ 5 共鳴空間 6、6a、6b リブ 7 基底部 8 貫通孔 9、9a、9b 溝 11 脚 13、13A、13B 吸音ユニット 14 背板 15 仕切り壁 17、18、19 吸音材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田崎 豊 神奈川県中郡二宮町中里2−34−16 (72)発明者 三神 貴 埼玉県所沢市中新井1−41−2 日東紡 績株式会社日東寮 (56)参考文献 特開 昭52−4615(JP,A) 実開 昭63−8309(JP,U) 実開 昭52−109313(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) E04B 1/86 G10K 11/172

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 空気室の前に配置され、該空気室と共に
    吸音構造を構成する吸音体であって、前記空気室とは反
    対側に突出するように且つ前記空気室に連通する共鳴空
    間を形成するように設けられた複数のリブと、該リブの
    間に形成された基底部とを有し、前記リブの側面及び基
    底部の少なくとも一方に前記空気室に連通する複数の貫
    通孔を有し、更に、前記リブが、先端に向かって拡がっ
    た断面形状の部分を有することを特徴とする吸音体。
  2. 【請求項2】 更に、前記リブの間の基底部の内面若し
    くは外面の少なくとも一方に配置された吸音材を具備す
    ることを特徴とする請求項1記載の吸音体。
  3. 【請求項3】 更に、前記リブ及び基底部の少なくとも
    一方の裏面に、背後の空気室を、所望の共鳴周波数の容
    積となるように分割する仕切壁を設けたことを特徴とす
    る請求項1又は2記載の吸音体。
  4. 【請求項4】 空気室の前に配置され、該空気室と共に
    吸音構造を構成する吸音体であって、前記空気室とは反
    対側に突出するように且つ前記空気室に連通する共鳴空
    間を形成するように設けられた複数のリブと、該リブの
    間に形成された基底部とを有し、前記リブの側面及び基
    底部の少なくとも一方に前記空気室に連通する複数の貫
    通孔を有し、更に、前記リブ及び基底部の少なくとも一
    方の裏面に、背後の空気室を、所望の共鳴周波数の容積
    となるように分割する仕切壁を設けたことを特徴とする
    吸音体。
  5. 【請求項5】 前記複数のリブが形成する共鳴空間の容
    積が、少なくとも2種類あることを特徴とする請求項1
    から4のいずれか1項記載の吸音体。
  6. 【請求項6】 請求項1から5のいずれか1項に記載の
    吸音体と、その背後に空気室を形成するように間隔を開
    けて配置された背板とを一体構造として有することを特
    徴とする吸音ユニット。
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