JP2893212B2 - ニオブ酸リチウム単結晶薄膜 - Google Patents

ニオブ酸リチウム単結晶薄膜

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JP2893212B2 JP24717990A JP24717990A JP2893212B2 JP 2893212 B2 JP2893212 B2 JP 2893212B2 JP 24717990 A JP24717990 A JP 24717990A JP 24717990 A JP24717990 A JP 24717990A JP 2893212 B2 JP2893212 B2 JP 2893212B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、薄膜導波路型SHG素子を始めとして、各種
光学材料に好適な膜厚のニオブ酸リチウム単結晶薄膜に
関する。
(従来の技術) 近年の光応用技術の進展に伴って、レーザ光源の短波
長化が要求されている。
これは、短波長化により、記録密度、感光感度を向上
させることができるためであり、光ディスク、レーザー
プリンタ等の光機器分野への応用が考えられる。
このため、入射するレーザ光の波長を1/2に変換でき
る第2高調波発生(SHG)素子の研究が行われてきた。
かかる、第2高調波発生(SHG)素子としては、従来
高出力のガスレーザを光源として、非線形光学結晶のバ
ルク単結晶が用いられてきた。しかし、光ディスク装
置、レーザプリンタ等の装置を小型化する要求が強いこ
と、ガスレーザは、光変調のため、外部に変調器が必要
であるのに対して、半導体レーザは、直接変調が可能で
あること、安価であることなどのために、ガスレーザに
代えて半導体レーザが主として用いられるようになって
きた。このめ、数mW〜数十mWの低い光源出力で高い変換
効率を得る必要から、薄膜導波路型のSHG素子が必要と
なってきた。
このような薄膜導波路型SHG素子用の非線形光学材料
としては、従来ニオブ酸リチウム単結晶バルクにTi等を
拡散させることにより、屈折率を変化させた層を導波路
としたものや、タンタル酸リチウム基板上に高周波スパ
ッタ法により形成させたニオブ酸リチウム薄膜を導波路
としたものなどが知られているが、何れも結晶性に優れ
たニオブ酸リチウム薄膜を得ることが困難で、高い変換
効率を得ることができなかった。
ところで、結晶性に優れた単結晶薄膜を製造する方法
として、液相エピキタシャル法が好適であると考えられ
る。
ニオブ酸リチウム薄膜を得るための液相エピタキシャ
ル法としては、例えば、 1)Applied Physics Letters,Vol.26、No.1,January 1
975 p8〜10には、タンタル酸リチウムを基板として、Li
2O、V2O5をフラックスとして、液相エピタキシャル成長
法により光導波路用ニオブ酸リチウム薄膜を形成して、
光を導波させた例が記載されている。
また、2)特公昭51−9720号公報には、タンタル酸リ
チウムを基板として、Li2O、V2O5をフラックスとして、
液相エピタキシャル成長法により、光導波路用ニオブ酸
リチウム薄膜を形成する方法が記載されている。
更に、3)特公昭56−47160号公報には、Li2O、V2O5
をフラックスとして、エピタキシャル成長法により基板
上に、Mgを含有したニオブ酸リチウム・タンタル酸リチ
ウム固溶体薄膜単結晶を形成する方法が記載されてい
る。
しかしながら、従来知られた液相エピタキシャル法で
は、結晶性に優れたニオブ酸リチウム単結晶が、タンタ
ル酸リチウム基板上に得られないばかりでなく、特にSH
G素子を製造するのに必要な膜厚のニオブ酸リチウム単
結晶を得ることが、困難であり、薄膜導波路型のSHG素
子が実用化されたという例は知られていない。
前記薄膜導波路型のSHG素子を製造するのに必要な膜
厚とは、即ち入射させるレーザ光と第2高調波との位相
整合を行うため、波長λの基本波長光と波長λ/2の第2
高調波との実効屈折率を一致させる事のできる膜厚のこ
とであり、特に、タンタル酸リチウム基板上に形成され
たニオブ酸リチウム薄膜を用いて、半導体レーザ用SHG
素子を作成する場合、実効屈折率を一致させるために
は、5μm以上の厚さのニオブ酸リチウム薄膜が必要で
ある。
また、高出力の薄膜導波路型SHG素子を得るために
は、基板と薄膜導波層との屈折率差を大きくしなければ
ならず、基板の屈折率を低下させる研究が行われてお
り、 例えば、 4)特公昭S63−27681号公報には、タンタル酸リチウ
ム基板に五酸化バナジウムを拡散させて、3〜6μmの
低屈折率の拡散層を形成し、その上にタンタル酸リチウ
ム単結晶層をエピタキシャル成長させる技術が開示され
ている。
また、5)特公昭S60−34722号公報には、酸化マグネ
シウム、五酸化バナジウムを同時にタンタル酸リチウム
基板に添加し、タンタル酸リチウム単結晶層をエピタキ
シャル成長させる技術が開示されている。
しかし、これらの技術は、薄膜導波層としてタンタル
酸リチウムを用いており、タンタル酸リチウム基板にニ
オブ酸リチウム薄膜を形成する技術ではない。
以上のように、これでは、タンタル酸リチウム基板上
に形成され、SHG素子の光学デバイスを作成するために
必要な膜厚で、しかも光学特性の優れたニオブ酸リチウ
ム単結晶薄膜は存在しなかった。
そこで本発明者等はこのような問題点を解決するため
に種々研究した結果、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜とタ
ンタル酸リチウム基板を格子整合させることにより、SH
Gデバイスなどの光学デバイスを作成するために必要充
分な膜厚を有し、かつ光損傷(強い光を照射すると結晶
の屈折率が変化すること)及び光伝搬損失が極めて小さ
いなど光学特性の極めて優れたニオブ酸リチウム単結晶
薄膜を実用的に得ることができることを新規に知見し、
またタンタル酸リチウム基板に種々の異種元素を含有さ
せ、屈折率を変えて、このタンタル酸リチウム基板とニ
オブ酸リチウム単結晶薄膜とを格子整合させることによ
り、光学特性が極めて優れ、基板と薄膜導波層との屈折
率差の大きなニオブ酸リチウム単結晶薄膜が実用的に得
られることを見出し、本発明を完成するに到った。
(課題を解決するための手段) 本発明は、タンタル酸リチウム基板上に形成されたニ
オブ酸リチウム単結晶薄膜であって、前記ニオブ酸リチ
ウム単結晶薄膜はタンタル酸リチウム基板の(0001)面
に形成されてなり、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜のa軸
の格子定数がタンタル酸リチウム基板のa軸の格子定数
の99.92〜100.07%の範囲内になることにより格子整合
されてなり、光伝搬損失が1.4dB/cm以下であることを特
徴とするニオブ酸リチウム単結晶薄膜を提案し、上述の
問題点を解決するものである。
(作用) 本発明のニオブ酸リチウム単結晶薄膜は、タンタル酸
リチウム基板上に形成され、タンタル酸リチウム基板と
格子整合されてなることが必要である。この理由は、ニ
オブ酸リチウム単結晶薄膜とタンタル酸リチウム基板と
格子整合されることにより極めて優れた光学的特性を有
するニオブ酸リチウム単結晶薄膜が従来技術では知られ
ない厚い膜厚にて形成されるからである。形成されたニ
オブ酸リチウム単結晶薄膜が極めて優れた光学特性を有
する理由は、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜とタンタル酸
リチウム基板とが格子整合されることにより基板と一体
化し、格子の歪や結晶の欠陥などが極めて少なく結晶性
に優れ、かつマイクロクラックなどのない高品質の膜で
あるからである。
従来技術においては、基板との格子整合がとれた薄膜
を作製するとができなかったため、薄膜の結晶性が悪く
また薄膜中にはマイクロクラックの発生がみられた。そ
のため、基板材料表面および薄膜表面を研磨あるいは化
学エッチング等により平滑にするか、あるいは不純物混
入割合の少ない高純度原料を使用することで基板界面お
よび薄膜表面における散乱損失、および不純物混入によ
る吸収損失をある程度低減させても、結晶粒界での吸収
・散乱損失あるいはマイクロクラックによる散乱損失が
極めて大きくなるため、光伝搬損失は3〜5dB/cm程度と
大きく、光学的用途に使用できるものではなかった。
本発明において、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜とタン
タル酸リチウム基板を格子整合される手段は特に限定さ
れるものではないが、一般にニオブ酸リチウムのa軸の
格子定数は、5.148Å、タンタル酸リチウムa軸の格子
定数は、5.154Å程度であるため、格子整合の手段とし
ては、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜に異種元素を含有さ
せるか、あるいはニオブ酸リチウム単結晶中のLi/Nbの
モル比を変えることにより格子定数を大きくするか、逆
にタンタル酸リチウム基板に異種元素を含有させること
により、格子定数を小さくする方法が有利である。
本発明において、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜とタン
タル酸リチウム基板を格子整合させるための異種元素と
してはナトリウムとマグネシウムが有利である。
この理由はナトリウムとマグネシウムのイオン又は原
子はニオブ酸リチウムの結晶格子に対する置換あるいは
ドープにより、ニオブ酸リチウムの格子定数(a軸)を
大きくする効果を有するため、ナトリウムとマグネシウ
ムの組成を調整することにより、容易に前記タンタル酸
リチウム基板とニオブ酸リチウム単結晶との格子整合を
得ることができ、さらにナトリウムやマグネシウムは光
学特性を何らそこなうことがないだけでなく、マグネシ
ウムについては光学損傷を防止するという重要な効果を
も有するからである。また、前記ナトリウム、マグネシ
ウムを含有させる場合、その含有量は、それぞれニオブ
酸リチウム単結晶に対して、0.1〜14.3モル%、0.8〜1
0.8モル%であることが望ましい。その理由は、ナトリ
ウムの含有量が、0.1モル%より少ない場合は、マグネ
シウムの添加量の如何に関わらず、タンタル酸リチウム
基板と格子整合できるほと格子定数が大きくならず、ま
た14.3モル%を越える場合は、逆に格子定数が大きくな
りすぎ、いずれの場合もタンタル酸リチウム基板とニオ
ブ酸リチウム単結晶との格子整合が得られないからであ
る。
また、マグネシウムの含有量が、0.8モル%より少な
い場合は、光損傷を防止する効果が不十分であり、10.8
モル%越える場合は、ニオブ酸マグネシウム系の結晶が
析出してしまうため、含有させることができない。
前記ナトリウムおよびマグネシウムの含有量は、それ
ぞれ0.3〜4.8モル%および3.5〜8.6モル%であることが
好ましく、さらに、0.8〜3.2モル%および4.5〜5.7モル
%であることが好適である。
また、本発明においては、ニオブ酸リチウム単結晶中
のLi/Nbのモル比率を変えることにより、a軸の格子定
数を大きくすることができる。
前記Li/Nbのモル比率は、41/59〜56/44であることが
望ましい。
その理由は、上記範囲外ではLiNb3O8、Li3NbO4等の結
晶も析出するため、光学特性に優れたニオブ酸リチウム
単結晶が得られないからである。
本発明においてタンタル酸リチウム基板のa軸の格子
定数を小さくする方法としては、Tiを含有させることが
望ましい。
この理由は、Ti原子あるいはイオンは、タンタル酸リ
チウム基板のa軸の格子定数を小さくする効果を有する
からである。
前記Ti原子あるいはイオンを含有させる場合、その含
有量は、タンタル酸リチウム単結晶に対して0.2〜30モ
ル%であることが好ましい。
その理由は、Tiの含有量が0.2モル%より少ない場合
は、ニオブ酸リチウム単結晶と格子整合できるほど格子
定数が小さくならず、また30モル%を越える場合には、
逆に格子定数が小さくなりすぎ、いずれの場合もタンタ
ル酸リチウム基板とニオブ酸リチウムとの格子整合が得
られないからである。
また、本発明においてニオブ酸リチウム単結晶薄膜
を、a軸の格子定数が5.128〜5.150Åの範囲の六方晶構
造の単結晶基板と格子整合させる場合は、ニオブ酸リチ
ウム単結晶薄膜中にTiを含有させることが望ましい。
この理由は、Ti原子あるいはイオンはニオブ酸リチウ
ム基板のa軸の格子定数を小さくする効果を有し、基板
と格子整合させることができるからである。
前記基板は、a軸の格子定数が5.128〜5.150Åの範囲
に調整されたタンタル酸リチウム基板であることが有利
である。
ところで、前記ナトリウムの含有に関しては、6)Jo
urnal of Crystal Growth 54(1981)572−576に、ニオ
ブ酸リチウムにナトリウムを添加し、液相エピタキシャ
ル成長法によりY−カットのニオブ酸リチウム基板上に
膜厚20μmのナトリウム含有ニオブ酸リチウム薄膜単結
晶を形成した例が、 また7)Journal of Crystal Growth 84(1987)409−4
12にはニオブ酸リチウムにナトリウムを添加し、液相エ
ピタキシャル成長法によりYカットのタンタル酸リチウ
ム基板上にナトリウム含有ニオブ酸リチウム薄膜単結晶
を形成した例が記載されている。
しかし、これらの文献にはナトリウム含有によりニオ
ブ酸リチウム単結晶の格子定数が変化することは記載さ
れているものの、SAW(Surface Acoustic Wave)デバイ
スに関する技術であり、光学特性やタンタル酸リチウム
基板と格子整合させると光学特性に優れた膜が得られる
ことについては何ら記載されていない。またこれらの文
献に示されたニオブ酸リチウム単結晶薄膜はSAWデバイ
ス用であり、前者の文献に記載された薄膜は基板にニオ
ブ酸リチウムを用いていること、また、後者の文献に記
載の薄膜は、タンタル酸リチウム基板に形成されている
ものの薄膜と基板との格子整合がなされていないなどに
より、いずれも本願の目的とする光学材料としては使用
することができない。
また、8)米国特許4093781号には、リチウムフェラ
イト膜を基板上に液相エピタキシャル成長法で形成する
際、リチウムをナトリウムで置換し、格子定数を基板に
マッチングさせ、歪みのないリチウムフェライト膜を形
成する方法が記載されている。
しかしながら、これは、リチウムフェライトに関する
技術であって、本願の目的とする光学材料用として使用
することはできない。
また、9)特開昭S52−142477号には、結晶の開始を
極めて緩やかにすることにより、無理なく結晶を徐々に
成長させ、格子歪みのない液相エピタキシャル結晶を得
る技術が記載されている。
しかしこの技術は、半導体薄膜に関する技術であり、
光学材料に関するものではない。
このように、前記5)〜9)に挙げた技術では、本願
の目的とする光学特性に優れたニオブ酸単結晶薄膜に関
するものではない。
本発明において使用される基板は、結晶構造が六方晶
であり、a軸の格子定数が5.128〜5.173Åなる範囲であ
れば使用でき、また、その形状も平板状、棒状、繊維状
などの基体であってもよい。
前記基板としては例えば、Al2O3,ZnO,MgO,Gd3Ga
5O12,タンタル酸リチウムなどが使用できるが、特にタ
ンタル酸リチウムが有利である。
この理由は、前記タンタル酸リチウム基板の結晶系
は、ニオブ酸リチウム単結晶に類似しておりエピタキシ
ャル成長させやすく、さらに前記タンタル酸リチウム基
板は市販されているため、品質のよいものが安定して入
手できるからである。
また、本発明に用いるタンタル酸リチウム基板として
は、種々の元素を含有させ格子定数、屈折率などを変化
させたもの、あるいは表面を化学エッチングなどにより
処理したものなどを用いることができる。
タンタル酸リチウム基板のニオブ酸リチウム単結晶薄
膜形成面の面粗度は、JIS B0601、Rmax=300〜1000Åで
あることが望ましい。この理由は、Rmaxの値を300Åよ
り小さくすることは極めて困難であり、またRmaxの値が
1000Åより大きくなると、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜
の結晶性が低下するからである。
前記タンタル酸リチウム基板のa軸の格子定数は、5.
128〜5.173Åなる範囲が望ましい。
この理由は、上記範囲を外れた場合、格子整合が困難
になるからである。
本発明のニオブ酸リチウム単結晶薄膜は、タンタル酸
リチウム基板上に形成され、前記タンタル酸リチウム基
板は、少なくとも表面の一部に異種元素が含有されてな
ることが望ましい。
この理由は、異種元素を含有させることにより、基板
の屈折率を変化させることができ、基板と薄膜導波層と
の屈折率差を大きくすることができるからである。
前記異種元素とは、基板を構成する元素とは異なる元
素を指す。
前記異種元素は、金属元素が望ましい。
前記異種元素は、マグネシウム(Mg)、チタン(T
i)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ニ
ッケル(Ni)、ネオジム(Nd)などから選ばれる少なく
とも1種が望ましい。
本発明において、前記タンタル酸リチウム基板の特定
箇所に異種元素を添加して、導波路形成部分に、屈折率
が非形成部分に比べて相対的に低いパターンを形成する
ことにより、該基板にニオブ酸リチウム単結晶薄膜をス
ラブ状に形成するだけで、前記パターン部分に形成され
たニオブ酸リチウム単結晶薄膜が導波路となり、導波路
形成のための加工工程を省くことができる。
前記導波路形成部分の基板屈折率を、非形成部分に比
べて相対的に低くする方法としては、導波路形成部分の
基板屈折率を下げるか、非形成部分の基板屈折率を上げ
ることが望ましい。
前記タンタル酸リチウム基板の屈折率を上げる作用を
有する異種元素としては、Ti,Cr,Nd,Fe,Niなどが、また
屈折率を下げる作用を有する異種元素としては、Mg,Vな
どが有利である。
これらの元素は、基板の薄膜形成に影響する特性、例
えば表面粗度などを殆ど変化させずに、その表面屈折率
のみを変えられるため、通常の基板と同時の特性を有す
る薄膜を同様の条件にて製造することができる。
また、前記異種元素の表面部分での含有量は、以下に
示す組成範囲が望ましい。
Ti;0.2〜30モル% Cr;0.02〜20モル% Fe;0.02〜20モル% Ni;0.02〜20モル% Nd;0.02〜10モル% Mg;0.1〜20モル% V;0.05〜30モル% 上記の含有量は、 異種元素/(LiTaO3+異種元素) ×100、 で計算されたものである。
前記組成範囲が好ましい理由は、上記範囲より組成割
合が多いと、基板の結晶性が低下してしまい、また、上
記範囲より組成割合が少ないと屈折率が変化しないため
である。
さらに、前記異種元素の含有量は、以下に示す範囲が
好適である。
Ti;1.0〜15モル% Cr;0.2〜10モル% Fe;0.2〜10モル% Ni;0.2〜10モル% Nd;0.5〜5モル% Mg;2.0〜10モル% V;1.0〜15モル% 上記の含有量は、 異種元素/(LiTaO3+異種元素) ×100、 で計算されたものである。
また、前記異種元素は、タンタル酸リチウム基板に、
原子、イオン、酸化物など種々の形態で含有させること
ができる。
また、特に本発明においては、ニオブ酸リチウム単結
晶薄膜の成長膜として、タンタル酸リチウム基板の(00
01)面を使用することが望ましい。
前記タンタル酸リチウム基板の(0001)面は、タンタ
ル酸リチウムのc軸に垂直な面を指す。ニオブ酸リチウ
ム単結晶薄膜の成長面として、タンタル酸リチウム基板
の(0001)面を使用することが望ましい理由は、前記タ
ンタル酸リチウムは、結晶構造が六方晶(第1図参照)
であり、前記(0001)面はa軸のみで構成されるため、
a軸の格子定数を変えるだけでニオブ酸リチウム単結晶
薄膜と、格子整合させることができるからである。
本発明のニオブ酸リチウム単結晶薄膜は、プリズム結
合方による測定で0.83μmの半導体レーザ光に対する光
伝搬損失が1.4dB/cm以下であることが必要である。
この理由は、伝搬損失が1.4dB/cmを越えると本願の目
的とする種々の光学材料として使用できないからであ
る。
光伝搬損失とは、光が薄膜中を導波する際の、光の進
行方向単位長さ当りの光強度低下割合を示すものであ
り、これには散乱損失と吸収損失が含まれる。散乱損失
は、基板と薄膜との界面の状態、薄膜の表面状態および
薄膜中のマイクロクラック等に依存する。
一方、吸収損失は薄膜の特性にのみ関与するものであ
り、薄膜の結晶性や不純物混入割合等に依存する。
更に、前記ニオブ酸リチウム単結晶薄膜の格子定数
(a軸)は、前記タンタル酸リチウム基板の99.92〜10
0.07%であることが必要である。
例えば、タンタル酸リチウム基板の格子定数が、5.15
3Åである場合、5.150〜5.155Åであることが望まし
い。
この理由は、前記格子定数の範囲を外れた場合、タン
タル酸リチウム基板とニオブ酸リチウム単結晶薄膜の格
子定数を整合させ難く、光学材料として使用可能な光学
特性の優れたニオブ酸リチウム単結晶薄膜を充分に厚く
形成することができないからである。
また、前記ニオブ酸リチウム単結晶薄膜の厚さは、5
μm以上が望ましく10μm以上が特に望ましい。
また、本発明のニオブ酸リチウム単結晶薄膜には、屈
折率などの光学特性を必要に応じて変化させるためにク
ロム(Cr)、ネオジム(Nd)、ロジウム(Rh)、亜鉛
(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、チタン(T
i)、バナジウム(N)から選ばれる少なくとも1種を
含有することが望ましい。
前記Rhの含有量は、0.05〜20mol%であることが望ま
しい。この理由は、前記Rhの含有量が20mol%を越える
場合は、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜の光学的特性が低
下するからであり、また0.05mol%より低い場合、屈折
率が殆ど変化しないからである。前記Rhの含有量は、な
かでも0.1mol%〜10mol%が好適である。
前記Znの含有量は、0.02〜30mol%であることが望ま
しい。この理由は、前記Znの含有量が30mol%を越える
場合は、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜の光学的特性が低
下するからであり、また0.02mol%より低い場合、屈折
率が殆ど変化しないからである。前記Znの含有量は、な
かでも0.5mol%〜15mol%が好適である。
前記Niの含有量は、0.10〜20mol%であることが望ま
しい。この理由は、前記Niの含有量が20mol%を越える
場合は、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜の光学的特性が低
下するからであり、また0.10mol%より低い場合、屈折
率が殆ど変化しないからである。前記Niの含有量は、な
かでも1.0mol%〜10mol%が好適である。
前記Coの含有量は、0.05〜20mol%であることが望ま
しい。この理由は、前記Coの含有量が20mol%を越える
場合は、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜の光学的特性が低
下するからであり、また0.05mol%より低い場合、屈折
率が殆ど変化しないからである。前記Coの含有量は、な
かでも0.1mol%〜10mol%が好適である。
前記Crの含有量は、0.02〜20mol%であることが望ま
しい。この理由は、前記Crの含有量が20mol%を越える
場合は、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜の光学的特性が低
下するからであり、また0.02mol%より低い場合、屈折
率が殆ど変化しないからである。前記Crの含有量は、な
かでも0.2mol%〜10mol%が好適である。
前記Tiの含有量は、0.2〜30mol%であることが望まし
い。この理由は、Tiの含有量が30mol%を越える場合
は、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜の光学的特性が低下す
るからであり、また0.2mol%より低い場合、屈折率が殆
ど変化しないからである。前記Tiの含有量は、なかでも
1.0mol%〜15mol%が好適である。
前記Ndの含有量は、0.02〜10mol%であることが望ま
しい。この理由は、Ndの含有量が10mol%を越える場合
は、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜の光学的特性が低下す
るからであり、また0.02mol%より低い場合、屈折率が
殆ど変化しないからである。前記Ndの含有量は、なかで
も0.5mol%〜5mol%が好適である。
前記Vの含有量は、0.05〜30mol%であることが望ま
しい。この理由は、前記Vの含有量が30mol%を越える
場合は、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜中に構造の異なる
結晶が析出して光学的特性が低下するからであり、また
0.05mol%より低い場合は屈折率が殆ど変化しないから
である。前記Vの含有量は、なかでも1.0mol%〜15mol
%が好適である。
なお、前記含有量はニオブ酸リチウム単結晶に対する
異種元素のmol%で表わされている。
ところで、前記ニオブ酸リチウム単結晶薄膜に前記C
r,Nd,Ti,V,Rh,Zn,Ni,Coなどの異種元素を含有させた場
合、前記ニオブ酸リチウム単結晶薄膜の格子定数と屈折
率が同時に変化するため、必要に応じて前記異種元素の
含有量を調整することが望ましい。
本発明においては、格子定数の測定は、通常の粉末X
線回折により行われる。
格子定数は、Cu−2θ=45〜90°に検出されるニオブ
酸リチウムの15本のピークの2θの値とその面指数を用
い最小二乗法により算出する。なお測定においてはSiを
内部標準として使用する。
次に本発明の製造方法について簡単に説明する。
本発明のニオブ酸リチウム単結晶薄膜の製造方法とし
ては、液相エピタキシャル成長法、スパッタ法、蒸着法
などが望ましいが、特に液相エピタキシャル成長法が好
適である。
この理由は、結晶性に優れた均質な膜が得やすく、そ
の結果、光伝搬損失が少なく光導波路として好適な、し
かもニオブ酸リチウム単結晶の非線形光学効果、電気光
学効果、音響光学効果などを充分生かせる優れた特性を
持ったニオブ酸リチウム単結晶薄膜が得られ、さらに生
産性にも優れているからである。
前記液相エピタキシャル成長法としては、Li2O,Nb2O
5,V2O5,Na2O,MgOなどからなる溶融体にタンタル酸リ
チウム基板を接触させ、エピタキシャル成長によりニオ
ブ酸リチウム単結晶薄膜のa軸の格子定数をタンタル酸
リチウム基板のa軸の格子定数に整合させる方法を用い
るのが、高品質の結晶が得られるので望ましい。
本発明においては、タンタル酸リチウム基板の少なく
とも表面の一部に異種元素を添加した後、タンタル酸リ
チウム基板と格子整合されたニオブ酸リチウム単結晶薄
膜を形成することが望ましい。
前記異種元素の添加方法としては、熱拡散、イオン交
換、イオン注入法などの他に、液相エピタキシャル成長
法、タンタル酸リチウムバルク単結晶の原料中に予め異
種元素を混合しておく方法、(原料添加法)などを用い
ることができる。
また、前記熱拡散、イオン交換、イオン注入法を使用
した場合は、異種元素の拡散層が形成されるが、前記拡
散層の厚さは、0.01〜20μmが望ましい。
この理由は、拡散層の厚さが0.01μm未満の場合、異
種元素が拡散されていない基板部分にまで広がる導波光
の割合が多くなるため、基板として要求される屈折率を
満足することができず、また20μmを越える場合、結晶
生が低下するため、光導波路として十分な特性が得られ
ないからである。
前記異種元素の熱拡散のために基板を加熱した後、加
熱状態のまま、液相エピタキシャル成長用の溶融体に接
触させることが望ましい。
この理由は、熱拡散の後冷却させ、再度液相エピタキ
シャル成長のために基板を加熱すると、基板の結晶性が
低下するからである。
前記熱拡散は、溶融体の加熱時に同一炉内にて、予備
加熱を利用して行うことが好ましい。
前記熱拡散は、850℃〜1000℃であることが望まし
い。
この理由は、850℃より低い温度では、拡散が起き
ず、また、1000℃より高い温度では、基板の結晶生が低
下し、またLiの外拡散が生じるからである。
前記熱拡散に要する時間は、0.5〜20時間が望まし
い。
本発明の製造方法においては、基板を溶融液に接触さ
せる前に、タンタル酸リチウム基板を予め予備加熱して
おくことが望ましい。この理由は、前記タンタル酸リチ
ウム基板は、非常に熱衝撃に弱いからである。
前記予備加熱時間は、20〜60分であることが望まし
い。
また前記予備加熱は、溶融液表面から5〜15mmの位置
にて行うことが望ましい。
本発明の溶融体の原料成分としては酸化物、もしく
は、加熱により酸化物に変化する化合物が望ましく、例
えばNa2CO3、Nb2O5、Li2CO3、V2O5、MgO、NaNbO3、NaVO
3、LiNbO3、LiVO3の組成物等が挙げられる。
前記原料成分は、600〜1300℃で空気雰囲気下或いは
酸化雰囲気下で加熱溶融されることが望ましい。前記溶
融体を過冷却状態とした後、タンタル酸リチウム基板を
接触させ、育成させることが好ましい。
前記溶融体を過冷却状態とするための冷却速度は、0.
5〜300℃/時であることが望ましい。
本発明においては、液相エピタキシャル成長終了後の
冷却速度は、0.5〜300℃/時であることが望ましい。ま
た、冷却は、400℃から指数関数的に冷却させることが
好ましい。
また、タンタル酸リチウム基板のキュリー点の温度で
は、一定時間温度を保つか、0.1〜5℃/分の速度で冷
却させることが望ましい。
この理由は、前記キュリー点における結晶の相転移に
伴うクラックの発生を防止できるからである。
前記タンタル酸リチウム基板のキュリー点は、異種元
素を含有させることにより変化するが、一般には650℃
である。
又、前記育成のための温度は600〜1250℃であること
が望ましい。この理由はニオブ酸リチウムの融点が1250
℃であり、これ以上の温度では結晶が晶出せず、又、60
0℃は、溶融剤の融点であるため、これより低い温度で
は原料を溶融体とすることができないためである。
前記育成の際には、タンタル酸リチウム基板を回転さ
せることが望ましい。これは、タンタル酸リチウム基板
を回転させることにより、特性及び膜厚が均一な結晶が
できるからである。
前記基板の回転は、水平状態で行われることが望まし
い。
前記回転速度は、50〜150rpmであることが望ましい。
また、前記タンタル酸リチウム基板は、少なくとも片
面は、光学研磨されその後、化学エッチング処理されて
いることが望ましい。
前記タンタル酸リチウム基板のエッジは面取りされて
いることが望ましい。
この理由は、タンタル酸リチウム基板が面取りされて
いない場合、エッジの微細なキズにより、熱衝撃による
クラックが発生しやすいからである。
前記面取りは、R面、C面いずれでもよい。
前記タンタル酸リチウム基板の厚みは0.5〜2.0mmであ
ることが望ましい。
この理由は、0.5mmより薄い基板は、クラックが発生
しやすく、2.0mmより厚い基板は、焦電効果(加熱によ
る放電効果)が問題となり、加熱や研磨により帯電する
ため、研磨屑などが付着してスクラッチが発生し易いか
らである。
タンタル酸リチウム基板上に晶出する本発明のニオブ
酸リチウム単結晶薄膜の厚みは、タンタル酸リチウム基
板と溶融体との接触時間、溶融体の温度を適当に選択す
ることにより、制御することができる。
本発明のニオブ酸リチウム単結晶薄膜の成長速度は、
0.01〜1.0μm/分が望ましい。
1.0μm/分より速い場合、ニオブ酸リチウム単結晶薄
膜にうねりが発生し、また、0.1μm/分より遅い場合、
薄膜の育成に時間がかかるためである。
本発明においては液相エピタキシャル成長の後、タン
タル酸リチウム基板、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜の表
面からフラックスを除去することが望ましい。
フラックスが残留すると、膜厚が不均一になるからで
ある。
前記フラックスの除去は、タンタル酸リチウム基板に
形成されたニオブ酸リチウム単結晶薄膜を100〜10000rp
mで回転させることにより行われることが望ましい。
前記回転に要する時間は、5〜60分であることが好ま
しい。
前記溶融体の攪拌時間は、6〜48時間であることが望
ましい。この理由は、攪拌時間が短い場合、溶融体中に
溶解しきらない結晶核が発生し、この結晶核を中心に結
晶成長が起こるのでニオブ酸リチウム単結晶薄膜の表面
に凹凸が発生するからである。
本発明においては、溶融体組成として、Nb2O5,V
2O5,Li2O,Na2OとMgOに加えて、Nd,Rh,Zn,Ni,Co,Tiな
どから選ばれる元素の酸化物を使用することができる。
また、本発明において、ニオブ酸リチウム単結晶中の
Li/Nbのモル比率を変えることにより、ニオブ酸リチウ
ム単結晶薄膜とタンタル酸リチウム基板を格子整合させ
る方法としては、液相エピタキシャル成長法を用い、こ
のための溶融体として少なくともK2O,V2O5,Li2O,Nb2
O5からなる組成物を使用することが有利である。
この理由を以下に説明する。
前記K2O,V2Oは溶融剤(フラックス)として作用す
る。溶融剤としてK2O,V2Oを使用することにより溶融剤
からのLiの供給を防止できるため、原料物中のLi2O,Nb
2O5の組成比を変えることにより、析出してくるニオブ
酸リチウム単結晶のLi/Nbのモル比を変えることができ
る。
前記Li/Nbのモル比率が変わると、a軸の格子定数も
変わるため、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜のa軸の格子
定数を原料物中のLi2O,Nb2O5の組成比を制御すること
により制御でき、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜とタンタ
ル酸リチウム基板を格子整合させることができる。
また、前記K2O,V2O5,Li2O,Nb2O5からなる溶融体
に、Na2OやMgOを添加してもよい。
この理由は、MgOやNa2Oを添加することにより、ニオ
ブ酸リチウム単結晶薄膜のa軸の格子定数を大きくする
ことができるからである。
また、MgOは光損傷を防止できる。
前記溶融体組成は、モル比でLi2O/Nb2Oが43/57〜56/
44であることが望ましく、43/57〜50/50が好適である。
この理由は、上記範囲を外れる場合、ニオブ酸リチウ
ム単結晶とは結晶構造の異なるLiNb3O8などの結晶が析
出するからである。
また、K2O,V2O5の組成割合は、K2O,V2O5からなる溶
融剤(KVO3換算)/原料組成から析出可能なニオブ酸リ
チウム単結晶の理論量の値が、モル比率で25/75〜75/25
を満たす範囲であることが望ましい。
この理由は、上記範囲を外れる場合、析出するニオブ
酸リチウム単結晶の結晶構造が変化してしまい、光学特
性が低下するためである。
さらに、前記MgOの組成割合は、MgO/原料組成から析
出可能なニオブ酸リチウム単結晶の理論量の値が、モル
比率で0.01/100〜30/100を満たす範囲であることが望ま
しい。
この理由は、上記モル比率を外れる場合、ニオブ酸マ
グネシウム系の結晶が析出するからである。
また、K2O,V2O5の組成割合は、モル比率でK2O/V2O5
=1/1が有利である。
また、本発明においては、タンタル酸リチウム基板の
a軸の格子定数を、異種元素を添加して調整することに
より、ニオブ酸リチウム結晶のa軸の格子定数に合わせ
ることにより格子整合を行うことができる。
前記異種元素が添加されa軸の格子定数が調整された
タンタル酸リチウム基板の製造方法としては、CZ(チョ
クラルスキー)法が望ましい。
また、原料としては、例えば炭酸リチウム、五酸化タ
ンタル、酸化チタン、五酸化バナジウムが挙げられる。
前記原料を、イリジウムるつぼあるいは、白金−ロジ
ウムるつぼ中で加熱溶解させ、タンタル酸リチウム単結
晶を引き上げることが有利である。
前記るつぼは、イリジウムの方が、光学材料の作成に
は望ましい。
この理由は、結晶中に不純物が混入しないからであ
る。
また、前記タンタル酸リチウム基板のa軸の格子定数
は、ナトリウムなどの異種元素の添加により大きくする
ことができる。
さらに、前記ニオブ酸リチウム単結晶薄膜と前記タン
タル酸リチウム基板のa軸の格子定数を同時に変化さ
せ、格子整合させることが好ましい。
この理由は、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜のa軸に格
子定数を大きくし、またタンタル酸リチウム基板のa軸
の格子定数を小さくすることにより、基板や薄膜に含有
される異種元素の量を低減させることができ、結晶性を
向上させることができるからである。
また、本発明においては、ニオブ酸リチウム単結晶薄
膜を、a軸の格子定数が5.128〜5.150Åの範囲の六方晶
の単結晶基板と格子整合させる場合には、ニオブ酸リチ
ウム単結晶薄膜中にTiを含有させることが望ましい。
このための方法としては、溶融体として、主としてLi
2O、V2O5、Nb2O5、TiO2からなる組成物を用い、この溶
融体に基板を接触させることにり、液相エピタキシャル
成長を行い、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜のa軸の格子
定数と基板のa軸の格子定数を整合させる方法が有利で
ある。
前記Li2O、V2O5、Nb2O5の組成割合としてはLi2O−V2O
5−Nb2O5の3成分系の三角図において、A(88.90,2.2
2,8.88)、B(55.00,43.00,2.00)、C(46.50,51.50,
2.00)、D(11.11,80.00,8.89)、E(37.50,5.00,57.
50)の5組成点で囲まれる領域で示される組成範囲内に
あることが望ましい。
また、前記TiO2の量は、溶融体組成から析出可能なニ
オブ酸リチウム単結晶の理論量に対して0.2〜60モル%
添加することが好ましい。
また、特に本発明のニオブ酸リチウム単結晶薄膜を、
SHG素子として使用する場合には、前記ニオブ酸リチウ
ム単結晶薄膜の常光屈折率n0、異常屈折率neは、波長が
0.83μmのレーザー光源(基本波長)に対して、それぞ
れ2.25≦n0≦2.40の範囲、2.0<ne<n0−0.01なる範
囲、又、発生する第2高調波波長(0.415μm)に対し
て異常屈折率neが前記第2高調波に対する常光屈折率n0
より小さい範囲であることが望ましい。
ところで、SHF素子を始めとする光学デバイスの構成
材料にニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウム単結晶を
使用するためには、前記ニオブ酸リチウムやタンタル酸
リチウム単結晶が、電気光学効果、非線形光学効果など
光学的に有用な諸特性を有することが必要である。
前記ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウム単結晶に
電気光学効果、非線形光学効果などの特性を持たせるた
めには、その製造工程にて、結晶をキュリー点以上の温
度に加熱して電界をかけ、結晶をポーリング(分極)さ
せなければならない。
また、異種元素を含有させたニオブ酸リチウムやタン
タル酸リチウムなどの単結晶は容易にポーリングできな
いことが知られている。
しかしながら、本発明のニオブ酸リチウム単結晶薄膜
は、基板であるタンタル酸リチウムが分極状態であって
も、また分極反転により電気的に中和されていても、常
に分極された状態にあり、極めて優れた電気光学効果、
非線形光学効果などの諸特性を示す。
このため、本発明のニオブ酸リチウム単結晶薄膜とタ
ンタル酸リチウム基板は、ポーリング工程を必要としな
いため、製造工程が簡単で、またポーリング工程が不要
であることから従来は使用が困難であった異種元素を含
有したタンタル酸リチウム基板を使用できるという利点
を持つ。
次に本発明の実施例について説明する。
実施例1 (1)Na2CO320モル%,Li2CO330モル%,V2O540モル
%,Nb2O510モル%,MgOをLiNbO3に対して2モル%添加
した混合物を白金ルツボに入れ、エピタキシャル成長育
成装置中で空気雰囲気下で、1100℃まで加熱してルツボ
の内容物を溶解した。
(2)溶融体を1時間当りに60℃の冷却速度で912℃ま
で徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(0001)面
を光学研磨した後、化学エッチングしたものを基板材料
として溶融体中に100rpmで回転させながら12分間浸漬し
た。
(3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000rpm
で30秒間溶融体上で溶融体を振り切った後、室温まで徐
冷し、基板材料上に約12μmの厚さのナトリウム、マグ
ネシウム含有ニオブ酸リチウム単結晶薄膜を得た。
(4)得られたニオブ酸リチウム単結晶薄膜中に含有さ
れていたナトリウム、マグネシウムの量は、それぞれ3
モル%,2モル%であった。又、薄膜の格子定数(a軸)
は5.156Å、入射光波長1.15μmで測定した屈折率は2.2
35±0.001であった。
実施例2 (1)Li2CO350モル%,V2O540モル%,Nb2O510モル
%,Na2CO3をLiNbO3に対して、45モル%添加、MgOをLiN
bO3に対して、7モル%添加した混合物を白金ルツボに
入れ、エピタキシャル成長育成装置中で空気雰囲気下
で、1100℃まで加熱してルツボの内容物を溶解した。
(2)溶融体を1時間当り60℃の冷却速度で920℃まで
徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(0001)面を
光学研磨したものを基板材料として溶融体中に100rpmで
回転させながら10分間浸漬した。
(3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000rpm
で30秒間溶融体上で、溶融体を振り切った後、室温まで
徐冷し、基板材料上に約38μmの厚さのナトリウム、マ
グネシウム含有ニオブ酸リチウム単結晶薄膜を得た。
(4)得られたニオブ酸リチウム単結晶薄膜中に含有さ
れていたナトリウム、マグネシウムの量は、それぞれ2
モル%,6モル%であった。又格子定数(a軸)は5.155
Å、入射光波長1.15μmで測定した屈折率は、2.231±
0.001であった。
実施例3 (1)Na2CO312モル%,V2O540モル%,Nb2O510モル
%,Li2CO3を38モル%,MgOをLiNbO3に対して、5モル%
添加した混合物を白金ルツボに入れ、エピタキシャル成
長育成装置中で空気雰囲気下で1100℃まで加熱してルツ
ボの内容物を溶解した。
(2)溶融体を1時間当り60℃の冷却速度で938℃まで
徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(0001)面を
光学研磨したものを基板材料として溶融体中に100rpmで
回転させながら20分間浸漬した。
(3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000rpm
で30秒間溶融体上で、溶融体を振り切った後、室温まで
徐冷し、基板材料上に約23μmの厚さのナトリウム、マ
グネシウム含有ニオブ酸リチウム単結晶薄膜を得た。
(4)得られたニオブ酸リチウム単結晶薄膜中に含有さ
れていたナトリウム、マグネシウムの量は、それぞれ1
モル%,6モル%であった。又格子定数(a軸)は5.153
Å、入射光波長1.15μmで測定した屈折率は、2.231±
0.001であった。
実施例4 (1)Na2CO312.8モル%,Li2CO337.2モル%,V2O540.0
モル%,Nb2O510.0モル%,Nb2O3をLiNbO3に対して、0.
8モル%添加した混合物を白金ルツボに入れ、エピタキ
シャル成長育成装置中で空気雰囲気下で1100℃まで加熱
してルツボの内容物を溶解した。
(2)溶融体を1時間当り60℃の冷却速度で925℃まで
徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(0001)面を
光学研磨した後、化学エッチングしたものを基板材料と
して溶融体中に100rpmで回転させながら5分間浸漬し
た。
(3)溶融体から基本材料を引き上げ、回転数1000rpm
で30秒間溶融体上で、溶融体を振り切った後、室温まで
徐冷し、基板材料上に約8μmの厚さのナトリウム、ネ
オジム含有ニオブ酸リチウム単結晶薄膜を得た。
(4)得られたニオブ酸リチウム単結晶薄膜中に含有さ
れていたナトリウム、ネオジムの量は、それぞれ1.2モ
ル%,0.4モル%であった。又格子定数(a軸)は5.153
Å、入射光波長1.15μmで測定した屈折率は、2.232±
0.001であった。
実施例5 (1)Na2CO327.2モル%,Li2CO322.8モル%,V2O540.0
モル%,Nb2O510.0モル%,TiO2をLiNbO3に対して、12.
0モル%添加した混合物を白金ルツボに入れ、エピタキ
シャル成長育成装置中で空気雰囲気下で1100℃まで加熱
してルツボの内容物を溶解した。
(2)溶融体を1時間当り60℃の冷却速度で896℃まで
徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(0001)面を
光学研磨した後、化学エッチングしたものを基板材料と
して溶融体中に100rpmで回転させながら9分間浸漬し
た。
(3)溶融体から基本材料を引き上げ、回転数1000rpm
で30秒間溶融体上で、溶融体を振り切った後、室温まで
徐冷し、基板材料上に約6μmの厚さのナトリウム、チ
タン含有ニオブ酸リチウム単結晶薄膜を得た。
(4)得られたニオブ酸リチウム単結晶薄膜中に含有さ
れていたナトリウム、チタンの量は、それぞれ4.6モル
%,5.0モル%であった。又、格子定数(a軸)は5.153
Å、入射光波長1.15μmで測定した屈折率は、2.241±
0.001であった。
実施例6 (1)Na2CO320モル%,Li2CO330モル%,V2O540モル
%,Nb2O510モル%,MgOをLiNbO3に対して2モル%添加
した混合物を白金ルツボに入れ、エピタキシャル成長育
成装置中で空気雰囲気下で、1100℃まで加熱してルツボ
の内容物を溶解した。
(2)溶融体を1時間当りに60℃の冷却速度で914℃ま
で徐冷した。タンタル酸リチウム単結晶の(0001)面を
光学研磨した後、RFスパッタ法により、膜厚500ÅのV
膜を形成した後、1000℃にて熱拡散させた後、化学エッ
チングしたものを基板材料とした。この基板材料は、V
を拡散させない基板材料に比べて常光屈折率が1×10-3
減少していた。この基板材料を溶融体中に100rpmで回転
させながら13分間浸漬した。
(3)溶液体から基板材料を引き上げ、回転数1000rpm
で30秒間溶融体上で溶融体を振り切った後、室温まで徐
冷し、基板材料上に約11μmの厚さのナトリウム、マグ
ネシウム含有ニオブ酸リチウム単結晶薄膜を得た。
(4)得られたニオブ酸リチウム単結晶薄膜中に含有さ
れていたナトリウム、マグネシウムの量は、それぞれ3
モル%,2モル%であった。又、薄膜の格子定数(a軸)
は5.156Å、入射光波長1.15μmで測定した屈折率は2.2
35±0.001であった。
実施例7 (1)Li2CO350モル%,V2O540モル%,Nb2O510モル
%,Na2CO3をLiNbO3に対して、45モル%添加、MgOをLiN
bO3に対して、7モル%添加した混合物を白金ルツボに
入れ、エピタキシャル成長育成装置中で空気雰囲気下で
1100℃まで加熱してルツボの内容物を溶解した。
(2)溶融体を1時間当り60℃の冷却速度で918℃まで
徐冷した。タンタル酸リチウム単結晶の(0001)面を光
学研磨した後、フォトリソグラフィーおよびRFスパッタ
法により、膜厚1000Å、幅5μmのMgO膜を形成した
後、1000℃にて熱拡散させ、幅5μmのMgO拡散チャン
ネルをもつものを基板材料とした。このチャンネル部分
は、MgOを拡散させない部分に比べて常光屈折率が15×1
0-3減少していた。この基板材料を溶融体中に100rpmで
回転させながら9分間浸漬した。
(3)溶液体から基板材料を引き上げ、回転数1000rpm
で30秒間溶融体上で、溶融体を振り切った後、室温まで
徐冷し、基板材料上に約37μmの厚さのナトリウム、マ
グネシウム含有ニオブ酸リチウム単結晶薄膜を得た。
(4)得られたニオブ酸リチウム単結晶薄膜中に含有さ
れていたナトリウム、マグネシウムの量は、それぞれ2
モル%,6モル%であった。又格子定数(a軸)は5.155
Å、入射光波長1.15μmで測定した屈折率は、2.231±
0.001であった。
(5)得られたニオブ酸リチウム単結晶薄膜を、幅5μ
mのMgO拡散チャンネルに対して垂直に端面研磨を施し
て、レーザ光を端面入射させ、出射光のニアフィールド
パターンを観察したところ、レーザ光が幅5μmのMgO
の拡散チャンネル上で良好に閉じ込められていることが
確認できた。
実施例8 (1)Na2CO312モル%,V2O540モル%,Nb2O510モル
%,Li2CO3を38モル%,MgOをLiNbO3に対して、5モル%
添加した混合物を白金ルツボに入れ、エピタキシャル成
長育成装置中で空気雰囲気下で1100℃まで加熱してルツ
ボの内容物を溶解した。
(2)溶融体を1時間当り60℃の冷却速度で938℃まで
徐冷した。タンタル酸リチウム単結晶の(0001)面を光
学研磨した後、フォトリソグラフィーおよびRFスパッタ
法により、膜厚5μmの窓部をもつ膜厚400ÅのTi膜を
形成した後、1000℃にて熱拡散させ、幅5μmのTi未拡
散チャンネルをもつものを基板材料とした。Ti拡散部分
は、チャンネル部分に比べて常光屈折率が2×10-3増大
していた。この基板材料を溶融体中に100rpmで回転させ
ながら15分間浸漬した。
(3)溶液体から基板材料を引き上げ、回転数1000rpm
で30秒間溶融体上で、溶融体を振り切った後、室温まで
徐冷し、基板材料上に約17μmの厚さのナトリウム、マ
グネシウム含有ニオブ酸リチウム単結晶薄膜を得た。
(4)得られたニオブ酸リチウムの単結晶薄膜中に含有
されていたナトリウム、マグネシウムの量は、それぞれ
1モル%,6モル%であった。又格子定数(a軸)は5.15
3Å、入射光波長1.15μmで測定した屈折率は、2.231±
0.001であった。
(5)得られたニオブ酸リチウム単結晶薄膜を、幅5μ
mのTi未拡散チャンネルに対して垂直に端面研磨を施し
て、レーザ光を端面入射させ、出射光のニアフィールド
パターンを観察したところ、レーザ光が幅5μmのTi未
拡散チャンネル上で良好に閉じ込められていることが確
認できた。
実施例9 (1)Na2CO312.8モル%,Li2CO337.2モル%,V2O540.0
モル%,Nb2O510.0モル%,Nb2O3をLiNbO3に対して、0.
8モル%添加した混合物を白金ルツボに入れ、エピタキ
シャル成長育成装置中で空気雰囲気下で1100℃まで加熱
してルツボの内容物を溶解した。
(2)溶融体を1時間当り60℃の冷却速度で927℃まで
徐冷した後、タンタル酸リチウム単結晶の(0001)面を
光学研磨した後、RFスパッタ法により、膜厚400ÅのNi
膜を形成した後、1000℃にて熱拡散させた後、化学エッ
チングしたものを、基板材料とした。この基板材料は、
Niを拡散させない基板材料に比べて常光屈折率が1×10
-3増大していた。この基板材料を溶融体中に100rpmで回
転させながら7分間浸漬した。
(3)溶液体から基板材料を引き上げ、回転数1000rpm
で30秒間溶融体上で、溶融体を振り切った後、室温まで
徐冷し、基板材料上に約11μmの厚さのナトリウム、ネ
オジウム含有ニオブ酸リチウム単結晶薄膜を得た。
(4)得られたニオブ酸リチウム単結晶薄膜中に含有さ
れていたナトリウム、ネオジムの量は、それぞれ1.2モ
ル%,0.4モル%であった。又格子定数(a軸)は5.153
Å、入射光波長1.15μmで測定した屈折率は、2.232±
0.001であった。
実施例10 (1)Na2CO327.2モル%,Li2CO322.8モル%,V2O540.0
モル%,Nb2O510.0モル%,TiO2をLiNbO3に対して、12.
0モル%添加した混合物を白金ルツボに入れ、エピタキ
シャル成長育成装置中で空気雰囲気下で1100℃まで加熱
してルツボの内容物を溶解した。
(2)溶融体を1時間当り60℃の冷却速度で896℃まで
徐冷した。タンタル酸リチウム単結晶の(0001)面を光
学研磨した後、フォトリソグラフィーおよびRFスパッタ
法により、膜厚800Å、幅5μmのMgO膜と、この幅5μ
mのMgO膜以外の部分に膜厚400ÅのCu膜を形成した後、
1000℃にて熱拡散させ、幅5μmのMgO拡散チャンネル
をもつものを化学エッチングし、基板材料とした。MgO
を拡散させたチャンネル部分およびチャンネル部以外の
Cuを拡散させた部分は、何も拡散させない基板材料に比
べて、常光屈折率はそれぞれ10×10-3減少および1×10
-3増大していた。この基板材料を溶融体中に100rpmで回
転させながら11分間浸漬した。
(3)溶液体から基板材料を引き上げ、回転数1000rpm
で30秒間溶融体上で、溶融体を振り切った後、室温まで
徐冷し、基板材料上に約7μmの厚さのナトリウム、チ
タン含有ニオブ酸リチウム単結晶薄膜を得た。
(4)得られたニオブ酸リチウムの単結晶薄膜中に含有
されていたナトリウム、チタンの量は、それぞれ4.6モ
ル%,5.0モル%であった。又、格子定数(a軸)は5.15
3Å、入射光波長1.15μmで測定した屈折率は、2.241±
0.001であった。
(5)得られたニオブ酸リチウム単結晶薄膜を、幅5μ
mのMgO拡散チャンネルに対して垂直に端面研磨を施し
て、レーザ光を端面入射させ、出射光のニアフィールド
パターンを観察したところ、レーザ光が幅5μmのMgO
拡散チャンネル上で良好に閉じ込められていることが確
認できた。
実施例11 (1)実施例6で得られたLiNbO3単結晶薄膜の表面を鏡
面研磨し、このLiNbO3薄膜を導波層とするスラブ型導波
路を作成した。
(2)前記スラブ型導波路の膜厚をイオンビームエッチ
ングにより、位相整合膜2.50μm±0.05μmに調整し
た。
(3)前記(1)及び(2)で得られたスラブ型導波路
をフォトリソグラフィーにより、幅10μm、膜厚2.50μ
m±0.05μm、段差1μmのリッジ型チャンネル型導波
路を作成した。
(4)(3)で得られたチャンネル型導波路の両端面を
バフ研磨により、鏡面研磨して端面からの光入出射を可
能とし、第二高調波発生(SHG)素子とした。
(5)上記(4)で作成した、チャンネル型導波路から
なるSHG素子を、半導体レーザの発光領域とチャンネル
型導波路の一方の端面とを向合わせて精密に位置合わせ
した後、シリコンブロック上に、半導体レーザチップと
SHG素子を紫外線硬化樹脂を用いて固定した。
さらに半導体レーザの上下面の電極にワイアをボンデ
ィングして、駆動電力を供給できるようにした。
(6)このようにして半導体レーザとSHG素子を一体化
した後、金属製の気密封止パッケージの中に入れ、外部
ピンとワイヤを電気的に接続して外部ピンにより動作電
力を供給できるようにすると共に、波長選択性のガラス
窓を設けたキャップを被せて、内部を高純度窒素ガス雰
囲気で気密封止した。
このようにして本発明のLiNbO3薄膜からなるSHG素子
を用いて作成した気密封止パッケージ型素子に半導体レ
ーザからの出力が48.0mWとなる動作電圧を加えた時、ガ
ラス窓から出射する第二高調波の出力は、2.0mW、また
半導体レーザの出力は、0.1mWとなり、第二高調波を効
率良く取り出すことができた。
実施例12 (1)Na2CO3 31モル%、Li2CO3 19モル%、V2O5 40モ
ル%、Nb2O5 10モル%、MgOを前記溶融物組成から析出
可能なLiNbO3の理論量に対して5モル%添加(MgO/Nb2O
5=10/95)した混合物を白金ルツボにいれ、エピタキシ
ャル成長育成装置中で空気雰囲気下で1100℃まで加熱し
てルツボの内容物を溶解した。
(2)溶融体を1時間当り60℃の冷却速度で908℃まで
徐冷した。ナトリウムを含有させたタンタル酸リチウム
単結晶の(0001)面を光学研磨した後、化学エッチング
したものを基板材料とした。この基板材料に含有されて
いたナトリウムの量は4モル%であった。また、基板材
料の格子定数(a軸)は、5.163Aであった。この基板材
料を溶融体中に100rpmで回転させながら8分間浸漬し
た。
(3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000rpm
で回転させながら30秒間溶融体上で溶融体を振り切った
後、室温まで徐冷し、基板材料上に約7μmの厚さのナ
トリウム、マグネシウム含有ニオブ酸リチウム単結晶薄
膜を得た。
(4)得られたニオブ酸リチウム単結晶薄膜中に含有さ
れていたナトリウム、マグネシウムの量は、それぞれ7
モル%、6モル%であった。また、単結晶薄膜の格子定
数(a軸)は5.163A、入射光波長1.15μmで測定した屈
折率は、2.232±0.001であった。
実施例13 (1)Na2CO3 5モル%、Li2CO3 45モル%、V2O5 40モル
%、Nb2O5 10モル%、MgOを前記溶融物組成から析出可
能なLiNbO3の理論量に対して5モル%添加(MgO/Nb2O5
=10/95)、TiO2を前記溶融物組成から析出可能なLiNbO
3の理論量に対して12モル%添加した混合物を白金ルツ
ボにいれ、エピタキシャル成長育成装置中で空気雰囲気
下で1100℃まで加熱してルツボの内容物を溶解した。
(2)溶融体を1時間当り60℃の冷却速度で935℃まで
徐冷した。チタンを含有させたタンタル酸リチウム単結
晶の(0001)面を光学研磨した後、化学エッチングした
ものを基板材料とした。この基板材料に含有されていた
チタンの量は9モル%であった。また、基板材料の格子
定数(a軸)は、5.146Aであった。この基板材料を溶融
体中に100rpmで回転させながら18分間浸漬した。
(3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000rpm
で回転させながら30秒間溶融体上で溶融体を振り切った
後、室温まで徐冷し、基板材料上に約20μmの厚さのナ
トリウム、マグネシウム、チタン含有ニオブ酸リチウム
単結晶薄膜を得た。
(4)得られたニオブ酸リチウム単結晶薄膜中に含有さ
れていたナトリウム、マグネシウム、チタンの量は、そ
れぞれ0.3モル%、6モル%、5モル%であった。ま
た、単結晶薄膜の格子定数(a軸)は5.146A、入射光波
長1.15μmで測定した屈折率は、2.240±0.001であっ
た。
実施例14 (1)Na2CO3 12モル%、Li2CO3 38モル%、V2O5 40モ
ル%、Nb2O5 10モル%、MgOを前記溶融物組成から析出
可能なLiNbO3の理論量に対して5モル%添加(MgO/Nb2O
5=10/95)した混合物を白金ルツボにいれ、エピタキシ
ャル成長育成装置中で空気雰囲気下で1100℃まで加熱し
てルツボの内容物を溶解した。
(2)溶融体を1時間当り60℃の冷却速度で931℃まで
徐冷した。アルミナ(α−A1203)単結晶の(0001)面
を光学研磨した後、化学エッチングしたものを基板材料
とした。この基板材料にを溶融体中に100rpmで回転させ
ながら13分間浸漬した。
(3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000rpm
で回転させながら30秒間溶融体上で溶融体を振り切った
後、室温まで徐冷し、基板材料上に約15μmの厚さのナ
トリウム、マグネシウム含有ニオブ酸リチウム単結晶薄
膜を得た。
(4)得られたニオブ酸リチウム単結晶薄膜中に含有さ
れていたナトリウム、マグネシウムの量は、それぞれ1
モル%、6モル%であった。また、単結晶薄膜の格子定
数(a軸)は5.153A、入射光波長1.15μmで測定した屈
折率は、2.231±0.001であった。
実施例15 (1)Li2CO3 27.7モル%、Nb2CO5 29.3モル%、K2CO3
21.5モル%、Vb2O5 21.5モル%、MgOをニオブ酸リチウ
ムの理論量に対して5モル%添加した混合物を白金ルツ
ボに入れ、エピタキシャル成長育成装置中で空気雰囲気
下で1100℃まで加熱してルツボの内容物を溶解した。
(2)溶融体を1時間当り60℃の冷却速度で896℃まで
徐冷した。タンタル酸リチウム単結晶の(0001)面を光
学研磨した後、フォトリソグラフィーおよびRFスパッタ
法により、膜厚800Å、幅5μmのMgO膜と、この幅5μ
mのMgO膜以外の部分に膜厚400ÅのCu膜を形成した後、
1000℃にて熱拡散させ、幅5μmのMgO拡散チャンネル
をもつものを化学エッチングし、基板材料とした。MgO
を拡散させたチャンネル部分およびチャンネル部分以外
のCuを拡散させた部分は、何も拡散させない基板材料に
比べて、常光屈折率はそれぞれ10×10-3減少および1×
10-3増大していた。この基板材料を溶融体中に100rpmで
回転させながら11分間浸漬した。
(3)溶融体から基板材料を引き上げ、回転数1000rpm
で30秒間溶融体上で、溶融体を振り切った後、室温まで
徐冷し、基板材料上に約7μmの厚さのMgO含有ニオブ
酸リチウム単結晶薄膜を得た。
実施例絵1〜15(11は除く)で得られた本発明のニオ
ブ酸リチウム単結晶薄膜についてプリズム結合法により
波長0.83μmの半導体レーザー光に対する光伝搬損失を
測定し、その結果を第1表に示した。
また、第3図に、本発明のニオブ酸リチウム単結晶薄
膜のX線回折図の一例を記載し、本発明のニオブ酸リチ
ウムに特有の15本のピーク(〜)の2θの値と、従
来のニオブ酸リチウムの2θの値の比較を第2表に示
す。
これらの値は従来技術では全く得られなかった極めて
優れた特性を示すものである。
ただし、LiNbO3のa軸の格子定数(従来) =5.1483Å LiNbO3のa軸の格子定数(本発明) =5.1535Å (発明の効果) 本発明によればタンタル酸リチウム基板上に、従来得
られなかった極めて優れた光学特性を持つと同時に、光
学デバイスに用いるのに必要な充分厚いニオブ酸リチウ
ム単結晶薄膜を実用的に形成できるため、薄膜導波路型
SHG素子の構成材料として最適であるだけでなく、光変
調器、マルチモードの光学デバイスの構成材料として有
用である。
【図面の簡単な説明】
第1図はニオブ酸リチウム単結晶薄膜結晶の成長面であ
るタンタル酸リチウム基板の(0001)面を示す模式図で
ある。 第2図は、タンタル酸リチウム単結晶基板上に形成され
たニオブ酸リチウム単結晶薄膜の破断面の電子顕微鏡写
真である。 格子整合は、電子顕微鏡では確認できないが、写真中に
見られる縞模様は、タンタル酸リチウム単結晶基板側と
ニオブ酸リチウム単結晶薄膜側で連続的に見られ、も
し、格子整合されていなければ、タンタル酸リチウム単
結晶基板側とニオブ酸リチウム単結晶薄膜側で不連続と
なるため、この写真は間接的にタンタル酸リチウム単結
晶基板とニオブ酸リチウム単結晶薄膜の良好なる格子整
合を証明するものである。 第3図は、本発明のニオブ酸リチウム単結晶薄膜のX線
回折図である。 第4図は、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜のa軸の格子定
数とNa2CO3の置換量の関係を示した図。 第5図は、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜のa軸の格子定
数とLi/Nbのモル比との関係を示した図。 第6図は、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜のa軸の格子定
数と溶融体中のTiO2の濃度の関係を示した図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C30B 1/00 - 35/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】タンタル酸リチウム基板上に形成されたニ
    オブ酸リチウム単結晶薄膜であって、前記ニオブ酸リチ
    ウム単結晶薄膜はタンタル酸リチウム基板の(0001)面
    に形成されてなり、ニオブ酸リチウム単結晶薄膜のa軸
    の格子定数がタンタル酸リチウム基板のa軸の格子定数
    の99.81〜100.07%の範囲内になることにより格子整合
    されてなることを特徴とするニオブ酸リチウム単結晶薄
    膜。
  2. 【請求項2】前記タンタル酸リチウム基板のa軸の格子
    定数は、5.128〜5.178Åである請求項1に記載のニオブ
    酸リチウム単結晶薄膜。
  3. 【請求項3】前記タンタル酸リチウム基板は少なくとも
    表面の一部に異種元素を含有してなる請求項1に記載の
    ニオブ酸リチウム単結晶薄膜。
  4. 【請求項4】前記異種元素は、マグネシウム(Mg)、チ
    タン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(F
    e)、ニッケル(Ni)、ネオジム(Nd)から選ばれる少
    なくとも1種である請求項3に記載のニオブ酸リチウム
    単結晶薄膜。
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