JP2878000B2 - 底付開口容器の乾燥設備 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、ツーピース缶の胴部
のように底部と側壁部とを一体に形成した底付開口容器
を乾燥させる設備に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】ツーピース缶は飲料用容器として多用さ
れるようになってきており、その胴部は、一般には、錫
メッキ鋼板やアルミニウム合金板などのプレス素材に絞
り・しごき加工または深絞り加工を施した後に、開口端
側のひれ取り加工を行い、また絞り加工やしごき加工時
の潤滑油を除去するために、水洗い、酸洗い、脱イオン
水による洗浄ならびに乾燥、さらには内外面の被覆処理
などの工程を経て製造している。上記の水や酸あるいは
脱イオン水による洗浄の後の乾燥工程で使用する装置の
一例が特開昭４７−３３３４８号公報に記載されてい
る。その概略を説明すると、加熱空気を循環させる装置
の内部を通過するようネットコンベヤが配置されてお
り、洗浄工程を経た容器胴部は、そのネットコンベヤ上
に開口端を下向きにして載せられて装置内に送り込まれ
る。またこの装置の内部では、ネットコンベヤの上側か
ら下方に向けて所定温度に加熱した空気がジェット流と
して流れており、その加熱空気がネットコンベヤ上の容
器胴部の外面に沿って流れるとともに、容器胴部の開口
端のエッジに沿った部分が低圧となることにより、容器
胴部の内面に沿った下降流を生じさせ、これにより内外
面の乾燥を行うようになっている。

【０００３】また特開昭５０−７７４４０号公報には、
脱イオン水で洗浄した倒置状態の容器に空気を吹き付
け、これにより過剰の水分を吹き飛ばすとともに、少量
の水分を容器に残す設備が記載されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】前述した特開昭４７−
３３３４８号公報に記載された装置は、前段階の洗浄工
程から送り出された容器胴部をネットコンベヤに移送
し、その容器本体に乾燥用加熱空気を上側から吹き付け
る構成であるから、容器胴部は多量の洗浄水が付着した
まま乾燥用空気流の中に送り込まれることになる。した
がって倒置状態の容器胴部の外面に付着している水滴
は、乾燥用空気のジェット流によって幾分かは吹き飛ば
されて除去されることもあるが、容器本体の内側に生じ
る空気流は緩慢な流れであるから、容器胴部の内壁に付
着している水滴は、空気流によっては積極的には除去さ
れず、したがって洗浄工程で容器本体の内面に付着した
水分のほぼ全量を加熱による蒸発によって除去すること
になる。そのため特開昭４７−３３３４８号公報に記載
された装置では、蒸発させて除去すべき水分量が多くな
るので、乾燥に要する時間が長くなり、ひいては容器の
生産性の向上が阻害されるおそれがあった。

【０００５】また前掲の特開昭５０−７７４４０号公報
に記載された設備では、対象とする容器に少量の水分を
残すよう乾燥を行うために、空気流による水分の吹き飛
ばしを行うよう構成しているが、ツーピース缶の胴部の
ような所謂有底円筒状容器にあっては、その内側に空気
を吹き込んでも充分には水分を除去することができず、
したがって特開昭５０−７７４４０号公報に記載されて
いる設備は、水分をほぼ完全に除去する必要のある乾燥
を行う場合には採用することができないものであった。

【０００６】この発明は上記の事情を背景としてなされ
たもので、乾燥に要する熱エネルギーを節減し、乾燥時
間を短縮し、ひいては容器の生産ラインを短くすること
のできる乾燥設備を提供することを目的とするものであ
る。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この発明は、上記の目的
を達成するために、洗浄液による洗浄工程を経た底付開
口容器を所定方向に搬送しつつその容器に所定温度の送
風を行って乾燥させる底付開口容器の乾燥設備におい
て、洗浄された前記容器を、その開口端を下向きにして
底面側で吸着して吊り下げ搬送する吸着コンベヤと、そ
の吸着コンベヤの下方でかつ前記送風を行う箇所よりも
容器の搬送方向での後方側に、前記吸着コンベヤで吊り
下げた容器の開口端に接近する位置に先端部を臨ませて
配置され、該容器の内外面に付着しかつ前記容器の側壁
に沿って流下して前記容器の開口端に集まっている前記
洗浄液の液滴を吸引する１または２以上の吸引ノズルと
を具備していることを特徴とするものである。

【０００８】またこの発明では、容器の底部内面に向け
て送風を行う送風ノズルを、前記吸引ノズルよりも、容
器の搬送方向での後方側に配置することができる。

【０００９】

【作用】この発明の乾燥設備においては、洗浄の終了し
た容器は、開口端を下向きにして吸着コンベヤによって
吸着されて吊り下げられる。この吊り下げられた容器
は、熱風の送風を行う箇所に至る前に水切り用の吸引ノ
ズルの上方を通過し、その場合に、容器の開口端と吸引
ノズルの先端部とが接近するので、容器の内外側壁面を
伝って開口端まで流れ落ちた水滴が、吸引ノズルによっ
て吸い取られて容器から除去される。したがって熱風乾
燥の区域に運ばれる水分の量が少なくなり、換言すれば
蒸発させて除去する水分量が少なくなるので、短時間で
乾燥を完了することができ、また熱風の送風量の削減が
図れる。さらに、容器を吊り下げた状態で搬送し、乾燥
させるので、容器の開口端がいずれの部材にも接触せ
ず、接触による汚れの付着やそれに起因する後工程での
塗料等の被覆工程に悪影響が生じることを防ぐことがで
きる。

【００１０】また吸引ノズルの手前で容器の底部内面に
送風ノズルから送風を行えば、容器の底部内面に付着し
ている水滴が、送風によって側壁側に吹き寄せられ、側
壁を伝って開口端まで積極的に流下する。その結果、吸
引ノズルによって除去される水分量が多くなるので、乾
燥に要する時間が短縮される。

【００１１】

【実施例】つぎにこの発明の実施例を図面を参照して説
明すると、図１はこの発明の一実施例を示す模式図であ
って、洗浄工程１から連続的に送り出されるツーピース
缶胴部（以下、これを容器と記す）２を、倒置状態に吊
り下げて水切りおよび温風乾燥するよう構成されてい
る。すなわち容器２は図２に倒置状態の断面図を示すよ
うに、絞り加工としごき加工とによって底壁と側壁部と
を一体に形成した底付開口容器であって、洗浄工程１か
らは開口部を下向きにして送り出され、これを吸着コン
ベヤ３によって吊り下げられて搬送されるようになって
いる。この吸着コンベヤ３は、図３に模式的に示すよう
に、長円形状の吸引孔４を搬送方向に沿って複数列形成
したベルト５の背面側から真空吸引して容器２を吊り下
げて搬送するものであって、図示の例では３つの吸引ヘ
ッド６，７，８が設けられている。第１の吸引ヘッド６
は、水切り工程用のものであって、搬送方向での始端部
（図１の左端部）から所定の範囲に亘ってベルト５の背
面側に開口して設けられるとともに、排気ブロアー９に
ダクト１０を介して接続されており、ベルト５に形成し
た前記吸引孔４から吸気することにより、ベルト５の表
面（図１では下面）に、容器２の底面側を吸着して容器
２を吊り下げるようになっている。

【００１２】この第１の吸引ヘッド６の下方には、水切
り用の吸引ノズル１１が配置されている。吸引ノズル１
１は水切りブロアー１２にダクト１３を介して接続して
ある吸引ボックス１４から上方に向けて突設されかつ前
記ベルト５の幅方向に沿う細いスリット状のノズルであ
って、その先端部は、ベルト５に吸着して吊り下げた容
器２の開口端に接近する高さに位置するとともに、容器
２の搬送方向に所定の間隔をあけて複数配置されてい
る。その配列状態を図４に模式的に示す。

【００１３】なお、図４に鎖線で示す部材は、必要に応
じて設けられるブローノズル１５である。このブローノ
ズル１５は空気を上方に向けて吹き出す丸ノズルであっ
て、ベルト５に複数列になって吸着されている容器２の
各列ごとに対応して設けられ、かつ前述した吸引ノズル
１１の間に配置されている。そして容器２が図２に断面
形状を示すようにその底部内面（倒置状態では天井部
分）に窪みがあることにより、ここにブローノズル１５
から空気を吹き付けることにより、その窪み部分に溜っ
ている水滴を側壁側に吹き飛ばす（または吹き寄せる）
ようになっている。なお、吹き飛ばした水滴が開口端に
まで流れ落ちる時間を確保する（換言すれば、吹き飛ば
された水滴が開口端に到達したころに容器２が吸引ノズ
ル１１の上方を通過するようにする）ために、ブローノ
ズル１５は容器２の搬送方向で後方側（図１および図４
では左側）の吸引ノズル１１に接近させて設けることが
好ましい。

【００１４】第２の吸引ヘッド７は、熱風乾燥炉の一部
をなすものであり、前記第１の吸引ヘッド６に続けて設
置されている。すなわちこの第２の吸引ヘッド７の下方
には、これに対向して送風ヘッド１６が配置され、これ
らの吸引ヘッド７と送風ヘッド１６とが、フィルター１
７およびヒータ１８ならびにブロアー１９を介装した一
連のダクト２０によって接続されて熱風循環路を形成し
ており、吸引ヘッド７によってベルト５の表面に容器２
を吸着させるとともに、吸い込んだ熱風をフィルター１
７によって除塵した後、ヒータ１８で所定の温度（例え
ば２３０℃）に保持し、さらにブロアー１９を経て送風
ヘッド１６から、吊り下げた容器２に向けて上方に吹き
出させるようになっている。この送風ヘッド１６の一例
を示せば図５のとおりであって、容器２の搬送方向に沿
う細長いスリット状の複数の熱風ノズル２１が、温風の
供給されるチャンバー２２から上方に突出して形成さ
れ、その上端は、吊り下げられた容器２の開口端とほぼ
同一高さに達しており、さらに各熱風ノズル２１は、容
器２の直径以上の間隔をあけて搬送方向とは直交する方
向に複数列配列され、そして容器２の外面に沿って熱風
を吹き上げるようになっている。すなわち容器２の内部
には積極的には熱風を吹き込まないようになっている。

【００１５】そして第３の吸引ヘッド８は第２の吸引ヘ
ッド７に連続して設けられた送り出し部の吸引ヘッドで
あって、第１の吸引ヘッド６と同様に、排気ブロアー２
３にダクト２４を介して接続され、ベルト５の吸引孔４
から吸気することにより容器２をベルト５の表面に吸着
するようになっている。

【００１６】したがって図１に示す乾燥設備では、各ブ
ロアー９，１２，１９，２３を駆動した状態で吸着コン
ベヤ３を動作させることにより、以下のようにして容器
２の乾燥が行われる。すなわち洗浄工程１から複数列に
並んで連続的に送り出される容器２は、第１の吸引ヘッ
ド６によってベルト５の吸引孔４を介した吸気を行って
いることにより、その底面側でベルト５に吸い付けら
れ、開口部を下向きにした倒置状態で吊り下げられる。
ベルト５が走行していることにより容器２が水切り工程
での吸引ノズル１１の上方を通過すると、容器２の側壁
内面を伝って開口端に流れ落ちてきている水滴が、各吸
引ノズル１１ごとに吸い取られる。すなわち倒置状態の
容器２の底部外面側は図２に示すように凹面となってい
るので、洗浄工程１ではこの凹面部分に溜っている水を
吹き飛ばすために一旦空気を吹き付け、それに伴って容
器２の外面の水滴の多くはその際に除去されており、し
たがって水切り工程での吸引ノズル１１は、容器２の内
面側の水滴を主に吸い取って除去する。また前述したブ
ローノズル１５を設けてある場合には、容器２の底部に
溜っている水が吹き飛ばされて側壁内面を伝って開口端
に流れ落ちるので、その水滴も吸引ノズル１１によって
吸い取られる。その結果、熱風乾燥工程に送られる水分
が可及的に減らされて、熱風乾燥工程での負荷が軽減さ
れる。

【００１７】水切り工程を通過した容器２は、第２の吸
引ヘッド７においても同様に吸引を行っていることによ
り、従前の吊り下げ状態を維持して送風ヘッド１６の上
方を通過する。その場合、熱風ノズル２１から所定温度
に昇温された熱風が、容器２の側壁外面に沿って吹き上
げられるので、容器２は外面側から加熱されて乾燥させ
られる。この熱風による乾燥工程では、流れ落すことの
できなかった少量の水分を蒸発させて除去することにな
るので、短時間で容器２をほぼ完全に乾燥させることが
できる。なお、吹き上げた熱風の大半は吸引ヘッド７に
吸い込まれて循環させられるので、熱損失は極めて少な
い。

【００１８】以上のようにして乾燥させられた容器２
は、第３の吸引ヘッド８による吸着および吊り下げ部分
を経て冷却工程（図示せず）に受け渡される。

【００１９】したがって上述した乾燥設備では、水滴の
まま除去できる水分のほとんどを吸引ノズル１１によっ
て吸い取り、しかる後、熱風による乾燥を行うから、熱
風による乾燥時間が従来よりも大幅に短縮され、その結
果、乾燥工程で要する時間を短くし、それに伴いライン
の全長を短縮することできる。また上述した乾燥設備に
おいては、容器２がほぼ完全に乾燥するまでの間にその
開口端がいずれの箇所にも接触することがないので、汚
れの付着やそれに起因する後工程での塗料等の被覆工程
に悪影響が生じるなどのことがない。

【００２０】前述したブローノズル１５は水切り工程に
特に設ける必要はないのであって、ブローノズル１５を
設けない場合には、熱風ノズル２１を図６および図７に
示すように、ベルト５によって吊り下げられた容器２の
直下に配置して、容器２の内部にも熱風を送り込むよう
にすればよい。

【００２１】なお、上述した実施例は、ツーピース缶胴
を対象とするものであるが、この発明の設備で乾燥する
容器は、上記の実施例で示したものに限定されないので
あって、開口部を下向きにして吊り下げられる容器であ
れば、上記の実施例におけると同様にして乾燥させるこ
とができる。

【００２２】

【発明の効果】以上説明したようにこの発明の乾燥設備
によれば、熱風の送風による水分の除去に先立って、吸
着して吊り下げた容器から滴下する水滴を、吸引ノズル
で吸い取って除去するから、送風によって除去すべき水
分量が少なくなって、ほぼ完全に乾燥させるまでに要す
る時間を短縮でき、熱風の送風量削減による省エネルギ
ー化が図れるとともに乾燥装置を小型化でき、ひいては
容器の生産ラインの短縮化を図ることができる。また吸
引ノズルで水滴を吸い取るに先立って、吊り下げた容器
の底部内面に向けて送風ノズルによって送風を行えば、
容器の内側に付着している水滴を開口端まで積極的に流
下させることができ、その結果、吸引ノズルによって除
去できる水分量が、より多くなり、換言すれば、後工程
で蒸発させて除去すべき水分量が、より少なくなるので
乾燥時間を大幅に短縮できるとともに省エネルギー化が
図れ、さらに乾燥装置の小型化も図れる。さらに、容器
を吊り下げた状態で搬送し、乾燥させるので、容器の開
口端がいずれの部材にも接触せず、接触による汚れの付
着やそれに起因する後工程での塗料等の被覆工程に悪影
響が生じることを防ぐことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施例を示す模式図である。

【図２】乾燥対象物である容器の形状を示す概略的な断
面図である。

【図３】熱風ノズルおよびベルトにおける吸引孔の配列
を示す斜視図である。

【図４】吸引ノズルの配列状態を示す模式的な断面図で
ある。

【図５】容器の外面側に送風する熱風ノズルの配列状態
を示す模式的な断面図である。

【図６】容器の内部に向けて送風する熱風ノズルの例を
示す斜視図である。

【図７】図６のＶＩＩーＶＩＩ線に沿う概略的な断面図
である。

【符号の説明】

２…容器、 ３…吸着コンベヤ、 １１…吸引ノズル、
１５…ブローノズル、 ２１…熱風ノズル。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭47−33348（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−71874（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−70616（ＪＰ，Ａ) 特開 昭52−95541（ＪＰ，Ａ) 実開 平２−124933（ＪＰ，Ｕ) 実開 平３−18493（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B08B 9/08 - 9/46 B01D 43/00 B65G 15/58 B65G 23/18 B65G 47/91 B67C 3/00 F26B 15/18 F26B 21/00

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 洗浄液による洗浄工程を経た底付開口容
   器を所定方向に搬送しつつその容器に所定温度の送風を
   行って乾燥させる底付開口容器の乾燥設備において、 洗浄された前記容器を、その開口端を下向きにして底面
   側で吸着して吊り下げ搬送する吸着コンベヤと、その吸
   着コンベヤの下方でかつ前記送風を行う箇所よりも容器
   の搬送方向での後方側に、前記吸着コンベヤで吊り下げ
   た容器の開口端に接近する位置に先端部を臨ませて配置
   され、該容器の内外面に付着しかつ前記容器の側壁に沿
   って流下して前記容器の開口端に集まっている前記洗浄
   液の液滴を吸引する１または２以上の吸引ノズルとを具
   備していることを特徴とする底付開口容器の乾燥設備。
2. 【請求項２】 少なくとも１個の吸引ノズルの後方側に
   吊り下げた前記容器の底部内面に向けて送風を行う送風
   ノズルが配置されていることを特徴とする請求項１に記
   載の底付開口容器の乾燥設備。