以下に、図面を参照して、この発明の一実施の形態に係る空缶殺菌装置について説明する。図1は無菌状態の雰囲気内で、空缶を殺菌して殺菌済みの食品または飲料(以下、単に飲料という)を充填し、殺菌した蓋で密封する無菌充填ラインにおける空缶殺菌装置の概略構成を説明する説明図である。尚、無菌充填ラインとは、空缶の供給から詳しくは図示しない空缶の加熱炉へと向う間の生産ライン、及び加熱後の空缶に殺菌済み飲料を充填する生産ラインを総称したものであり、図1に示す空缶殺菌装置の各構成要素は、無菌充填ラインの前者の一部を構成する。
図1に示す空缶殺菌装置1は、空缶供給手段11、空缶搬送手段21、缶胴外周面薬液噴霧手段SP1(図4、図5参照)、缶内面薬液噴霧手段SP2(図4、図5参照)、落下缶排出手段65(図5参照)、空圧手段71(図6参照)、アプローチ搬送手段81、及び、缶外底面薬液噴霧手段SP3を備えて構成されている。
空缶供給手段11は、例えば電動モータで回転する前後一対の回転ホイル(スプロケットホイルともいう)12にベルトコンベア(以下、供給コンベアという)13を掛け回して構成されている。供給コンベア13は、図示の場合、反時計方向に回転して、上方の空缶搬送面14が、缶外底面を上にし開口部を下向きにした空缶Ecを整列して図示左方向に搬送する。
供給コンベア13は、図示しない上下移動手段により空缶搬送面14の高さ調節が可能である。空缶搬送面14の高さは、空缶Ecの高さサイズに応じて調節され、空缶Ecの高さサイズより僅かに低く調節される。なお、上下の高さ調整は、空缶搬送手段21を供給コンベア13に対して上下移動させる構成でもよい。一方、供給コンベア13の図示下方の戻り側の一部には、供給コンベア13の弛みを防止する弛み防止ローラ15が設けられている。
供給コンベア13の下向きの各空缶Ecの搬送方向の先端側には、例えば螺旋状の雌ねじ状の凹溝が形成されたタイミングスクリュー16が配設されている。空缶搬送面14上を搬送された各空缶Ecは、タイミングスクリュー16の回転に伴う雌ねじ状の凹溝に送られて搬送タイミングを調整される。
空缶搬送手段21は、供給コンベア13の搬送方向の先端側において、その上方に離間されて配置されており、例えば電動モータ23の駆動とともに回転する図示左側の駆動スプロケットホイル24と、図示右側の従動ホイル25と、駆動スプロケットホイル24及び従動ホイル25の間にかけ回された無端状のチェーン26と、チェーン26に遊嵌された複数のチェーンローラ(図2参照)27及びその軸31と、各チェーンリンクプレート33に対し後述する各部材を介し装着された複数の吸着パッド28とを備えて構成されている。
すなわち、図1,2に示すように、空缶搬送手段21は、チェーン26に遊嵌された各チェーンローラ27、チェーンローラ27同士を連接するチェーンリンクプレート33に対し個々に吸着パッド28を備え、これにより複数の吸着パッド28を搬送方向に無端状に縦列させ一定速度で移動させる構成となっている。
各吸着パッド28は、駆動スプロケットホイル24の回転に伴うチェーン26の図示時計方向の回転に伴って回転する各チェーンローラ27とともに、図示時計方向に回転移送されて、タイミングスクリュー16から供給されてくる下向きの空缶Ecの缶外底面を負圧(吸引力)の発生で吸着して保持し、図示左方向すなわち図示矢印A方向の一直線上の方向に各下向きの各空缶Ecを搬送する。各吸着パッド28の矢印A方向の一直線状の方向に並ぶ領域は、各下向きの空缶Ecを一直線状の左方向に搬送する空缶搬送領域(この発明の搬送エリアに相当)Ceを構成する。
各吸着パッド28は、左右一対に配列された無端状のチェーン26の内側に配設されたバキュームチャンバ29との空間的な連通を介し吸引方式で、空缶Ecの缶外底面を吸着する。空缶搬送領域Ceを通過し終えた吸着パッド28は、バキュームチャンバ29との空間的な連通が遮断されて負圧の発生がなくなり、その結果、空缶Ecの吸着を解除し空缶Ecを離脱(自然落下)させる。詳しくは後述する。
図2は空缶搬送手段21の各構成要素を説明する一部破断説明図である。以下、図2を参照して説明する。各チェーン26は、左右一対に二つ設けられており、各々のチェーンローラ27は、軸31を中心として回転可能に装着されている。各チェーンローラ27は、チェーン26の回転軌跡に沿うガイドレール32上を、チェーン26の回転に引かれて転動する。
各チェーンローラ27の内側には、所謂L字状のチェーンリンクプレート33が装着されており、各チェーンリンクプレート33の水平部分は、連結板34を固定している。具体的には、各チェーンリンクプレート33は、連結板34と連結板34上に固定される押え部35との間に保持されて一定姿勢を保ち各チェーンローラ27を強固に支持する。
連結板34は、両端の底面側に一対のローラ装着部36を備えており、各ローラ装着部36の外側面及び外底面に、吸着パッド28の移動精度を安定化する補助ローラ37,38が回転可能に装着されている。各ローラ装着部36の外側面の補助ローラ37は第2ガイドレール39の上面に沿って縦方向に転動し、各ローラ装着部36の外底面の補助ローラ38は当該第2ガイドレール39の内側面に沿って横方向に転動する。
第2ガイドレール39は、ガイドレール32の下方の固定部41に固定されており、補助ローラ37,38を当接させることで連結板34の移動精度を高精度に保ち、これにより連結板34とともに移動する吸着パッド28の移動精度を高精度に保つ。
連結板34の中央には、例えば円形開口が形成されており、この円形開口内に対し吸着パッド28の保持部材42が垂直下方へ向けて固定されている。保持部材42は、例えば円柱状に構成されており、連結板34の底面に装着された支持盤43により連結板34に対する強固な固定が維持されている。
保持部材42の下方の先端側の外周には、ベアリング44を介し吸着パッド28と共に回転するロータ部45が回転自在に装着されている。ロータ部45の先端側には吸着パッド28の下方移動を規制する係止部46が形成されており、係止部46に対し吸着パッド28がコイルバネ47を介し上下方向に摺動自在に装着されている。これにより、タイミングスクリュー16によって供給される空缶Ecを上から押さえ込んで、確実に空缶Ecを吸着パッド28に吸着させることができる。吸着パッド28は、コイルバネ47の弾発力によってロータ部45と一緒に鉛直軸で回転する。保持部材42に対するロータ部45の取り付けは、本例の場合、例えばロータ部45の円周状の上端にベアリング44のリング状の上端に係合するリング状係合部45aを装着することで可能となる。
上記空缶搬送領域Ce内における各チェーンローラ27の回転軌跡(移送軌跡)の内側、すなわち一対のチェーン26間の位置で若干上方側の位置には、上記空缶搬送領域Ce内の全長分の長さを有するバキュームチャンバ29が配設されている。バキュームチャンバ29の底面側には、その長手方向に沿って長手支持体29aが設けられており、長手支持体29aの底面側には、その長手方向に沿う外吸引ガイド48、及び外吸引ガイド48内に進入する内吸引ガイド(ロングパッド)49が装着されている。内吸引ガイド49の底面には、その長手方向に沿って二本の直線状のレール49aが構成されており、かつ内吸引ガイド49は、バネ(図示せず)で下方へ付勢されている。連結板34の上面には、内吸引ガイド49の二本のレール49aを摺動自在に受け入れる二本の直線状の凹溝(ラビリンス)34aが形成されている。
バキュームチャンバ29、長手支持体29a、外吸引ガイド48、及び、内吸引ガイド49の各々の長手方向に沿う中央には、互いに空間的に連通する長手吸引開口51が形成されている。保持部材42の中心軸線に沿う縦の中央、及び吸着パッド28の中央にも、長手吸引開口51に空間的に連通可能である吸引孔52が形成されている。上記空缶搬送領域Ce内を連結板34とともに移送される保持部材42、及び吸着パッド28の各吸引孔52は、上記空缶搬送領域Ce内を移送中の間、常にバキュームチャンバ29側の長手吸引開口51に空間的に連通する。
上記空缶搬送領域Ce内におけるバキュームチャンバ29に図示しない吸引ブロアー等の駆動で負圧(例えば、5.3〜6.0KPa)が生じると、バキュームチャンバ29側の各長手吸引開口51から、各連結板34の保持部材42及び吸着パッド28の各吸引孔52にかけて負圧が発生する。吸着パッド28は、吸引孔52を介する負圧の発生で空缶Ecの缶外底面を吸着する。
各連結板34が吸着パッド28とともに上記空缶搬送領域Ceに進入する際は、バキュームチャンバ29側の内吸引ガイド49の二本のレール49aが各連結板34の上面の二本の凹溝34a内に進入し、かつ内吸引ガイド49が下方の連結板34へ付勢されるため、内吸引ガイド49の長手吸引開口51と各保持部材42及び吸着パッド28の各吸引孔52との密着連通性が高まり、その結果、吸着パッド28の吸着面に負圧を発生させる効率も高まる。
尚、空缶搬送領域Ce内においては、各々の連結板34の移送方向の前後の側面が互いに密接するという構成も、内吸引ガイド49の長手吸引開口51に余分な隙間を生じさせず、その結果、内吸引ガイド49の長手吸引開口51と搬送中の各保持部材42の吸引孔52との密着連通性をより高めて、搬送中の各吸着パッド28の吸引効率をより向上させる。
各連結板34が保持部材42及び吸着パッド28とともに上記空缶搬送領域Ceを通り抜けた場合は、保持部材42の吸引孔52がバキュームチャンバ29の長手吸引開口51との空間的な連通がなくなり、あるいは遮断され外気に通じる。その結果、吸着パッド28からの負圧の発生がなくなり、吸着パッド28から空缶Ecが離脱(自然落下)する。
ところで、吸着パッド28の吸着面は例えば樹脂製であり、当該吸着面には、前記吸引孔52の中心軸線を中心として空缶の複数サイズの缶外底面のリム部(この発明の接触径に相当)に係合する複数サイズの径の環状溝を形成することで、当該いずれかの環状溝で所定サイズの空缶Ecの缶外底面の吸着性を個々に高めてもよい。環状溝の形成は、回転しながら搬送される空缶Ecに薬液が噴霧されるときに、噴霧圧や空缶の遠心力で空缶Ecが吸着パッド28の吸着面の回転中心からずれたり、離脱し落下するのを防止するのに有効である。
各環状溝の深さは、例えば0.8mm〜1.0mm程度が好ましい。環状溝の深さが0.8mmよりも浅いと、空缶Ecの位置決め効果が少なく、吸引力を高めても落下缶が発生する場合がある。環状溝の深さを1.0mmよりも深くすると、この環状溝に入り込んだ薬液を除去し難くなり、環状溝に残った薬液により続いて供給される空缶Ecにコントロールされない薬液が付着して不良缶が発生し易くなるので好ましくない。
尚、吸着パッド28の吸引性を維持し、空缶Ecがずれたりすることが防止できるものであれば、吸着パッド28の材質や環状溝は特定されない。しかし、ソフトな材質にし過ぎると耐久性が低下したり、位置が安定しにくくなるので好ましくない。
一方、吸着パッド28とロータ部45とは各保持部材42に回転自在に保持され、ロータ部45の外周には、回転付与手段53の一構成要素であるロープ54が接触されている。各ロータ部45は、例えばロープ54の相対的に逆方向へ向かう移送の接触により回転力を得て回転し、吸着パッド28で吸着している空缶Ecを同時に回転させる。
回転付与手段53は、図3に示すように、空缶搬送手段21の所定のフレームの所定位置に取付けた各プーリ55,56,57,58,59,60にロープ54を掛け回して構成されている。各プーリ55,56,57,58,59,60は、各々同一の高さ位置で水平方向の回りに回転することが好ましい。このうち複数のプーリ58は、上記空缶搬送領域Ce内の領域位置において各保持部材42の移送軌跡に直交する方向に板バネ(図示せず)で付勢されており、上記空缶搬送領域Ce内でロープ54を各ロータ部45に押し付ける作用がある。他のプーリ55,56,60は、上記空缶搬送領域Ce内に順次進入する各ロータ部45及び吸着パッド28の移送を遮らぬよう上記空缶搬送領域Ce外の位置にある。
例えばプーリ55または60は、電動モータの駆動により能動的に回転して、ロープ54を各吸着パッド28の搬送方向とは例えば逆の方向に走行させる。複数のプーリ58からの付勢力を伴うロープ54の走行は、上記空缶搬送領域Ce内を搬送中の各ロータ部45を吸着パッド28と共に回転させる。
プーリ56,57間に掛けられる部分のロープ54には、一方の一端にコイルバネSの収縮力を受けて例えば中間位置を支点にロープ54の方向に回動可能である付勢アーム61の他方の先端に対し装着したプーリ62が押し付けられている。ロープ54は、プーリ62が環状のロープ54の内側に向けて押し付けられていることにより常時一定の張力が付与されており、これによりロープ54の弛みの発生が防止されている。
図3に示す構成は、二つの回転付与手段53を左右対称に設けるとともに、各回転付与手段53の外側に上述の空缶搬送手段21を備えるという、所謂二列の空缶搬送手段21を備えた場合を例示している。双方の空缶搬送手段21の各吸着パッド28による空缶Ecの搬送方向は、双方ともに平行をなす同一の方向であり、双方の各吸着パッド28の移送速度も双方ともに同一である。そして、双方の空缶搬送手段21を背中合わせに配置し、双方の空缶搬送手段21毎の駆動スプロケットホイル24を一定速度で回転させる電動モータ23を兼用させることにより、駆動制御の合理化、省スペース化を達成することができる。
一方、図1に示すように、空缶搬送手段21の上記空缶搬送領域Ceの例えば上流側には、各吸着パッド28が搬送する下向きの各空缶Ecの缶胴外周面に殺菌用の薬液(例えば過酸化水素水5重量%の水溶液、以下同様)を噴霧する缶胴外周面薬液噴霧手段SP1が配設されている。缶胴外周面薬液噴霧手段SP1は、薬液を適宜の噴霧圧(例えば200KPa〜400KPa)で側方に噴霧する複数の横吹きノズル(横吹きノズル群)Pn1を搬送中の一部空缶Ecの例えば中心高さ位置に位置合わせして備えた構成である。
各横吹きノズルPn1は、図4に示すように、斜め前方の位置から、若干後方の位置に順次搬送されてくる各空缶Ecの方向へ向けて薬液を噴霧するように設置角度を設定することも重要である。すなわち、各横吹きノズルPn1は、斜め方向からの連続噴霧となり搬送中の空缶Ecの回転方向と同一方向、時には逆方向に薬液を噴霧でき空缶Ecに対する薬液の噴霧時間をより長く確保することができるため薬液の細粒化が図れ均一な薬液噴霧を行うことができる。また、後述する缶内面薬液噴霧手段SP2の薬液の噴霧パターン(薬液の噴霧エリア)と干渉するのも防止することができる。更に、薬液が空缶Ecの間を通り抜けてしまうロスがなくなり効率的な薬液噴霧が行える。
空缶搬送手段21の上記空缶搬送領域Ceの例えば複数の横吹きノズルPn1の下流側には、各吸着パッド28が搬送する下向きの各空缶Ecの缶内面に殺菌用の薬液を噴霧する缶内面薬液噴霧手段SP2が配設されている。缶内面薬液噴霧手段SP2は、薬液を適宜の噴霧エアで上方に噴霧する複数の上吹きノズル(上吹きノズル群)Pn2を搬送中の空缶Ecに対して、上吹きノズルPn2の真上を通過する位置に合わせ間欠噴霧が行われるように構成されている。このようなタイミングを合わせて間欠噴霧することにより気流の巻き込みを防ぎ、薬液を缶内底面まで均一に噴霧することが可能となる。(連続噴霧する横吹きノズルと大きく異なる点である。)
尚、複数の横吹きノズル(横吹きノズル群)Pn1と複数の上吹きノズル(上吹きノズル群)Pn2の設置位置は、上述の場合と逆の設置関係にしてもよい。この場合、各横吹きノズルPn1の薬液の噴霧方向は、空缶搬送領域Ceの下流側へ向けて、各上吹きノズルPn2の薬液の噴霧エリアと干渉させないようにする必要がある。
図4及び図5にも示すように、各横吹きノズルPn1、及び各上吹きノズルPn2は、吸着パッド28から不慮に落下した落下缶を前記薬液の噴霧エリア外に排出させる落下缶排出手段65の一部を構成する落下缶収容体66に対し装着されている。
落下缶排出手段65は、図4及び図5に示すように、複数の上吹きノズル(上吹きノズル群)Pn2の直下位置に配設する落下缶収容体66と、複数の保護バー67とを備えて構成されている。各保護バー67は、各上吹きノズルPn2の薬液の噴霧エリアに対応する位置の落下缶収容体66の内側の開口縁に装着されている。
各保護バー67は、落下缶収容体66の内側の開口縁から下方に傾斜し、上吹きノズルPn2先端付近の位置で一部水平となり、その先が下方に傾斜するという所謂S字的形状を有する。各保護バー67は、特に、一部水平の部分が各上吹きノズルPn2からの薬液の噴霧を遮らぬように、各上吹きノズルPn2の真上の位置を避ける位置に空缶搬送領域Ceに沿って適宜間隔に並べて配設されている。各保護バー67は、各上吹きノズルPn2を避けて空缶搬送領域Ceの下方を横断する構成である。
各保護バー67の一部水平の部分は、各上吹きノズルPn2先端の高さ位置付近に位置する。このため、各保護バー67は、各上吹きノズルPn2から噴霧される薬液の噴霧エリアを遮らず、その結果、空缶Ecの缶内面への薬液の噴霧効率を最大限に活かすものである。不慮の落下缶は、真下の保護バー67上に落下して、保護バー67に沿って下方に転がり、落下缶収容体66内に排出(収容)される。
尚、上記空缶搬送領域Ceにおける横吹きノズルPn1の薬液の噴霧エリアを通過する吸着パッド28から落下する落下缶を排出(収容)する場合は、その落下缶は他に悪影響を及ぼすことはなく、したがって保護バー67を使用せずに、そのまま直下位置にある落下缶収容体66内等に排出すればよい。この場合、落下缶収容体66は、少なくとも、各上吹きノズルPn2の薬液の噴霧エリア分の底面積分、及び各横吹きノズルPn1の薬液の噴霧エリア分の底面積分を含む底面積の大きさに構成するという態様もあるが、双方を別々に分けた二つの落下缶収容体を用いる等してもよいことは勿論である。
図1に示すように、空缶搬送手段21における空缶搬送領域Ceに対向する上側の各吸着パッド28の戻り水平移送領域Chの一部(特許請求の範囲に記載の搬送エリア外に相当)には、空圧手段71が配設されている。
空圧手段71は、図6に示すように、エアジェット72と、吸引ダクト77とを備えて構成されている。エアジェット72は、例えば空気のコンプレッサーの駆動により供給される高圧エア(例えば、400KPa以上)を溜めるエアダクト74、及び、エアダクト74から高圧エアの供給を受けるとともに高圧エアを噴出するジェットノズル75を各々起立支持体73に対し上下移動可能に装着して構成されている。ジェットノズル75は、起立支持体73に交差する横支持体76を介して戻り水平移送領域Chに直交する方向に前後移動することも可能である。
吸引ダクト77は、戻り水平移送領域Chを移送される各吸着パッド28を空間的に挟むようにして、エアジェット72の対向側に配設されている。ジェットノズル75からの高圧エアは、戻り水平移送領域Chを移送された吸着パッド28及びその周辺部(ロータ部45を含む)に付着した薬液を吹き飛ばして除去する。吸引ダクト77は、除去後の高圧エアを吸引して図示しない排出部に排出する。
尚、図6に示す吸着パッド28及びロータ部45等を移送する各チェーンローラ27は、戻り水平移送領域Chに配設され、もしくは図示しない案内ガイド上を無端状のチェーン(図1参照)26に引かれて転動する。
アプローチ搬送手段81は、図1に示すように、例えば電動モータの(図示せず)駆動で回転する前後一対の回転ホイル82にベルトコンベア(以下、アプローチコンベアという)83を掛け回して構成されている。アプローチコンベア83は、図示上流側の一部が、上記空缶搬送領域Ceの下流側の一部分の真下の位置において、空缶搬送領域Ceを搬送される空缶Ecから適宜下方に離間する位置に配設されている。アプローチコンベア83は、図示の場合、反時計方向に回転して、上記空缶搬送領域Ceから離脱した缶外底面を上にした下向きの各空缶Ecを、上方の空缶搬送面84上で受け止め、当該下向きの各空缶Ecを整列させて図示左方向の図示しない加熱炉(加熱オーブン)側に向けて搬送させる。
尚、アプローチコンベア83も、図示しない上下移動手段を備えることで、空缶搬送面84の高さを調節することが可能となるようにしてもよい。また、空缶Ecを吸着搬送することが搬送の安定性、高速化の点で好ましい。
アプローチコンベア83の各空缶Ecを搬送する各空缶の搬送ライン上の所定位置には、搬送中の下向きの各空缶Ecの缶外底面に向けて下方に殺菌用の薬液を噴霧する缶外底面薬液噴霧手段SP3が配設されている。缶外底面薬液噴霧手段SP3は、薬液を適宜の高圧エアで下方に噴霧する複数の下吹きノズル(下吹きノズル群)Pn3を搬送中の一部空缶Ecの真上位置に位置合わせして備えた構成である。
次に、本実施の形態の空缶殺菌装置1の動作について説明する。本例の無菌充填ライン(飲料缶詰製造ライン)では、供給コンベア13により供給されてくる各下向きの空缶Ecの上方を移動する各吸着パッド28で順次吸着保持して空缶搬送領域Ceの下流側へ順次に連続して搬送し、当該空缶Ecへの薬液の噴霧を、1.空缶外面(缶外側面)、2.空缶内面(缶内面)、3.缶外底面の順に行ってゆく。
すなわち、図1に示すように、まず、各空缶Ecは、空缶供給口(図示せず)を通して缶外底面を上にし開口部を下向きにした状態で供給コンベア13上を縦列状態に移送される。当該各空缶Ecは、スクリューコンベア16の螺旋状の凹溝の回転により等間隔に整列された状態で更に進む。
一方、図2に示すように、左右一対のチェーン26に対し、連結板34、及び保持部材42等を介して装備された外方に向く各吸着パッド28は、電動モータ23の駆動に伴う駆動スプロケットホイル24及び従動ホイル25の回転とともに回転する無端状のチェーン26に引かれる各一対のチェーンローラ27のガイドレール32上の転動とともに回転移送されており、各吸着パッド28は、順次に空缶搬送領域Ce内に進入する。
空缶搬送領域Ce内に進入する各吸着パッド28は、バキュームチャンバ29の長手吸引開口51に対し保持部材42及び吸着パッド28の通気孔52が密着連通する。その結果、各吸着パッド28は、順次、バキュームチャンバ29内の負圧とともに、次々に保持部材42及び吸着パッド28の通気孔52を介してその吸着面に負圧を生じさせる。
このとき、スクリューコンベア16の回転とともに等間隔に整列された各空缶Ecは、空缶搬送領域Ceに続けて進入してくる各吸着パッド28の移送に同期されており、スクリューコンベア16の先端側に進む空缶Ecが、順次に続けて、各吸着パッド28の負圧に吸引されて、各吸着パッド28の吸着面に缶外底面を吸着させ保持されるとともに、各吸着パッド28の回転に伴って回転しながら、各吸着パッド28の水平移送に伴って空缶搬送領域Ceの下流側へと搬送される。
吸着時の空缶Ecは、その中心軸線が、空缶搬送領域Ce内を移送する吸着パッド28の中心軸線と同一の一直線上にある。このため、吸着時には当該空缶Ecの缶外底面のリム部が吸着パッド28の吸着面に予め形成された同一サイズの環状溝に係合し、その係合で、当該空缶Ecは吸着パッド28の吸着面に対し高い吸着性をもって中心軸線上に吸着保持されている。各空缶Ecの高い吸着性により、空缶搬送領域Ceを水平移送中の吸着パッド28から空缶Ecが不慮に落下する確率は極めて低い。
空缶搬送領域Ceを各吸着パッド28とともに搬送される下向きの各空缶Ecは、次に横吹きノズルPn1から噴霧される薬液の噴霧エリア内に順次に進入し、かつ各空缶Ecは、横吹きノズルPn1の薬液の噴霧エリア内を約2〜3回転しながら順次に通過する。その結果、各空缶Ecは、順次にその空缶外面(缶外側面)の全面に亘り適正量の薬液が付着されてゆく。各空缶Ecの缶外側面は横吹ノズルPn1に対して一様に垂直にあるか、あるいは曲面を含めても傾斜しているが、回転しているため、しかも斜め前方から薬液は缶外側面に拡散して噴霧されるため均一に分散付着する。しかも、その分散付着は、各空缶Ecが空缶搬送領域Ce内を搬送中に連続して行われる。
空缶搬送領域Ceを各吸着パッド28とともにさらに搬送を続ける下向きの各空缶Ecは、次に上吹きノズルPn2から上方に間欠的に噴霧される薬液の噴霧エリア内に順次に進入し、かつ各空缶Ecは、上吹きノズルPn2の薬液の噴霧エリア内を適宜回転しながら順次に通過する。その結果、各空缶Ecは、順次にその空缶内面(缶内面:缶内側面、缶内底面)の全面に亘りタイミングよく適正量の薬液が分散付着されてゆく。
各吸着パッド28が空缶搬送領域Ceを通り抜けると、順次に、各吸着パッド28の保持部材42の通気孔52がバキュームチャンバ29の長手吸引開口51外に移行して外気に開放される結果、順次に、各吸着パッド28の負圧が消滅して、各吸着パッド28の吸着面から各空缶Ecの缶外底面が離脱する。その離脱した各空缶Ecは、アプローチコンベア83上に垂直姿勢を保って受け渡され、下向きの一定姿勢のまま、図示左方向の加熱炉(図示せず)の方向に向かって搬送されてゆく。各吸着パッド28の吸着面への空缶Ecの着座位置は高精度であり、かつ吸着面は高精度に水平状態を維持しており、したがって吸着面から離脱する各空缶Ecはきちんと姿勢を保って縦列された状態で受け渡される。このため、離脱した空缶Ecが、アプローチコンベア83上で転倒する確率は極めて低い。しかも、搬送中の空缶Ecの下方開口端からアプローチコンベア83の空缶搬送面84までの離間間隔も必要以上に大きくはなく、この点も空缶Ecの転倒する確率を極めて低くする要因となっている。なお、アプローチコンベア83には、転倒缶防止のためバキューム手段、マグネット手段を併用してもよい。
アプローチコンベア83上に移行し縦列して搬送される下向きの各空缶Ecは、次に下吹きノズルPn3から下方に噴霧される薬液の噴霧エリア内に順次に進入し、その結果、各空缶Ecは、順次にその缶外底面の全面に亘り適正量の薬液が付着されてゆく。下吹きノズルPn3の下向きの薬液の噴霧エリアを通過する各空缶Ecは、アプローチコンベア83とともに、さらに下流側の加熱炉(加熱オーブン)に向けて搬送される。
加熱炉に到達した各空缶Ecは、加熱炉内の高温(例えば250℃程度)の熱風で加熱されて、その内外の表面(空缶外面(缶外側面)、空缶内面(缶内面)、缶外底面)に付着した薬液が完全蒸発させられる。これにより各空缶Ecの殺菌処理が完了する。
加熱炉から搬出された殺菌済み空缶Ecは、クリーンエアによりその周辺の空気が清浄化された後、無菌水の噴霧を受けて内容物としての飲料等の充填温度付近にまで冷却される。冷却後の殺菌済み空缶Ecは、適宜のタイミングで缶外底面を下にする上向きの状態に姿勢を変えられて、無菌雰囲気(例えば空気清浄度がクラス100以下)のクリーンブース内の飲料充填機(フィラー:図示せず)に供給される。上向きの各空缶Ecは、飲料殺菌装置で高温短時間に加熱殺菌されて充填温度まで冷却された殺菌済み飲料が、殺菌された供給管を通して、飲料充填機(図示せず)から充填される。飲料充填後の缶Ecは、無菌雰囲気(例えば空気清浄度がクラス100以下)のクリーンブース内で、蓋巻締機(図示せず)により殺菌済みの缶蓋が巻締められて密封された後、飲料缶詰の殺菌済み製品として、コンベア(図示せず)でクリーンルーム外の所定の場所に搬出される。
一方、空缶搬送領域Ceを通り抜けた各吸着パッド(ロータ部45等を含む)28は、無端状のチェーン26に引かれて回転移送を続け、図1に示す戻り水平移送領域Chに到達してくる。そして、各吸着パッド28及びロータ部45等は、戻り水平移送領域Ch内の移送途中で、空圧手段71のジェットノズル75からの高圧エアが吹き付けられて吸着パッド28及びその回りに付着した薬液が除去され、その後、再び、チェーン26の継続回転に伴う回転移送で空缶搬送領域Ce内に進入する。以下、上述の動作(殺菌処理)サイクルを繰り返す。
空缶搬送領域Ceの全長分に亘る長寸のバキュームチャンバ29を構成したことで、各吸着パッド28は、空缶搬送領域Ceを水平移送の間、常時、バキュームチャンバ29の全長分の長手吸引開口51を通して負圧を発生し続け、空缶Ecの缶外底面を吸着保持し続けることができる。各吸着パッド28は、無端状のチェーン26の回転とともに回転移送を続け、巡回を繰り返すため、結果的に大量の空缶を搬送することが容易である。
バキュームチャンバ29の下面の内吸引ガイド(ロングパッド)49は、バネ(図示せず)の付勢力で移動中の連結板34に摺接するため、内吸引ガイド49と連結板34との摺接面で搬送上のガタを吸収する。このため、吸着パッド28の吸引力が低下することを防止することができ、しかもより滑らかに空缶Ecを搬送することができる。更には、吸引効率が向上することで、クリーンルーム内の外気圧に対する圧力バランスを維持させ、クリーンルーム空調機の外気導入エアー量をより少なくすることができるという効果もある。
供給コンベア13が供給する各空缶Ecは、タイミングスクリュー16で送りタイミングが調整されて、空缶搬送領域Ceに巡回する各吸着パッド28の移送に同期されながら進むため、各吸着パッド28で各空缶Ecを吸着保持する際は、移送中の各吸着パッド28の中心軸線に各空缶Ecの中心軸線を正確に一致させる位置合わせを行うことができる。
各空缶Ecの正確な位置合わせで、しかも確実に、吸着パッド28の缶サイズに適合する環状溝に各空缶Ecの缶外底面のリム部を係合させ、その係合で、各空缶Ecの吸着保持の効率をより高めることが可能となる。その結果、搬送中の各空缶Ecが落下する確率を大きく低減することができる。
各吸着パッド28は、空缶Ecの缶外底面を吸着保持して、下向きの空缶Ecを回転させながら搬送するため、空缶搬送領域Ceを搬送中の各下向きの空缶Ecに薬液を噴霧する際は、予め薬液の噴霧量が適正量に調整されていることとも相俟って、各空缶Ecに適正量の薬液を付着させることができる。すなわち、各空缶Ecは、下向きであってかつ噴霧中に適宜数回転しているため、搬送中に受ける気流に影響されることなく噴霧された薬液を分散付着させて、薬液噴霧の適量化を簡単な構成手段で容易に実現させる。空缶搬送領域Ceの下流側へのさらに続く搬送中にも、各空缶Ecは回転を継続するため、この間に薬液付着量の適正化や均一化はさらに向上する。
横吹きノズル(横吹きノズル群)Pn1は、斜め前方から、搬送中の空缶Ecに薬液を連続噴霧する位置に配設されているため、搬送中の各空缶Ecに対する薬液の噴霧時間をより長く確保することができるとともに、空缶Ecと空缶Ecとの間から薬液が通り抜けるのを防ぎ、薬液の付着効率を向上させることができる。しかも、横吹きノズルPn1の薬液の噴霧エリアが上吹きノズル(上吹きノズル群)Pn2の薬液の噴霧エリアと干渉するのを防止することができる。その結果、空缶Ecに薬液を均一に噴霧することができ、薬液の噴霧不良に起因する不良品の発生を防止することができ、しかも、空缶Ecの搬送速度の上昇とともに高速の殺菌処理が可能である。
尚、本実施の形態では、複数の横吹きノズル(横吹きノズル群)Pn1と複数の上吹きノズル(上吹きノズル群)Pn2の設置位置は、図1に示す場合と逆の設置関係にしてもよい。その場合、各横吹きノズルPn1の薬液の噴霧方向は、空缶搬送領域Ceの下流側へ向けて、各上吹きノズルPn2の薬液の噴霧エリアと干渉させないようにする必要がある。
また、本実施の形態では、図1等に示すように、円筒形の空缶を対象として殺菌処理を施す場合を例示しているが、円筒形缶の他、ボトル型缶等のリシール缶への適用も可能である。この場合、キャップを締めるネジ部が下向きに搬送される関係上、例えば当該ネジ部の開口が胴部の径よりも小さく転倒し易いボトル型缶の場合は、供給コンベア13及びアプローチコンベア83に、当該ネジ部の口部を逆さにしても転倒しないように所定の搬送用受け具を取り付けて間欠移動を行わせ、缶内面に薬液噴霧ノズルを挿入させて缶内面に薬液を噴霧する構成にすればよい。
1…空缶殺菌装置、 Ec…空缶、 Ce…空缶搬送領域、 SP1…缶胴外周面薬液噴霧手段、 Pn1…横吹きノズル、 SP2…缶内面薬液噴霧手段、 Pn2…上吹きノズル、 SP3…缶外底面薬液噴霧手段、 Pn3…下吹きノズル、 Ch…戻り水平移送領域、 11…空缶供給手段、 13…供給コンベア、 21…空缶搬送手段、 23…電動モータ、 26…チェーン、 27…チェーンローラ、 28…吸着パッド、 29…バキュームチャンバ、 32…ガイドレール、 33…チェーンリンクプレート、 34…連結板、 37,38…補助ローラ、 39…第2ガイドレール、 42…保持部材、 45…ロータ部、 46…係止部、 48…外吸引ガイド、 49…内吸引ガイド、 49a…レール、 53…回転付与手段、 54…ロープ、 65…落下缶排出手段、 67…保護バー、 71…空圧手段、 72…エアジェット、 75…ジェットノズル、 81…アプローチ搬送手段、 82…回転ホイル、 83…アプローチコンベア。