JP2875686B2 - 高純度シリカガラス質発泡体及びその製造方法 - Google Patents

高純度シリカガラス質発泡体及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高純度シリカガラス質
発泡体に関し、特に、軽量で繰り返しの温度変化にも低
熱膨張性及び剛性を維持し、また、高温においても断熱
性、不燃性、高温形状安定性を有する各種技術分野に有
用な耐久性の優れたガラス質発泡体及びその好適な製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ガラス質発泡体は軽量にして、不
燃性及び断熱性に優れているので、建材用や耐熱構造材
として使用されてきた。また、環境産業や宇宙産業、核
融合等のエネルギー産業においては、想定される過酷な
状況、例えば高温や急激な温度変化が発生する状況にも
充分耐え得る精密軽量構造部材が求められており、この
ため軽量にして、ある程度化学的に安全で不燃性と耐熱
性を持ったガラス質発泡体の利用が注目されている。
【0003】一般にガラス質発泡体は、所定の粒度に粉
砕されたガラス粉末と発泡剤としてカーボンと酸化助剤
を混合し、これを 700℃〜 800℃の温度範囲に数時間加
熱して、カーボンを酸化、気化させて発泡体を得る方法
が知られている。しかし、この方法に使用されるカーボ
ンは、高純度のものが得られ難いため、どうしても若干
の不純物を含むのでガラス中にそれらの不純物が残留
し、あるいは、発泡加熱処理後にカーボン自体がガラス
中に残留して、これらが温度変化を伴う環境において酸
化し、不要なガス発生の要因となり、また残留不純物や
カーボンとガラス素地との膨張率の違いによるクラック
の発生のもとになるなど軽量断熱材としても軽量構造材
としても使用上甚だ問題があった。
【0004】また、尿素やその他の有機物、あるいは特
公平3-17794 号公報の様に金属炭酸塩を発泡剤として加
熱発泡を行う方法も知られているが、これらの方法はい
ずれも、加熱、気化処理後に残留炭素や残留金属が残
り、それらの残留物とガラス素地との反応による不要な
ガスの発生が避けられないという欠点がある。更に残留
金属が存在すると、ガラス質の主成分である酸化珪素分
の結晶化が促進され、非晶質部分との熱膨張率の差に基
づく歪が発生し、また転移によって局部的に体積が変わ
ったり変形し、あるいは上記と同様にマイクロクラック
が発生して最悪の場合には、破壊が起るという重大な問
題があった。
【0005】一方、半導体工業等に広く使用される高純
度のシリカガラスは、化学的な安定性と高温においての
形状安定性及び精密さを維持する低い熱膨張性を合わせ
もつ優れた耐熱素材と言われて来た。特に、例えばアル
ミナやSiC等のセラミックスに比較して比重が軽く、
剛性と低熱膨張性にも優れており、中軽量構造材として
も適した性能を有している。
【0006】ところが、従来のガラス質発泡体において
は、高粘度で発泡が難しい純シリカをベースとしたもの
は、連通気孔を伴った機械的な強度の弱い焼結体やスー
ト等の多孔質体を除いては皆無に等しい。かかる多孔質
体は、高温において耐熱性が劣ったり、あるいは膨張率
が大きいために急激な温度変化により反りや変形、更に
は破壊を起こすなど、通常の建材にはどうにか使用でき
ても、過酷な条件での精密な形状維持性が要求される軽
量断熱材や軽量構造材としては好適とは言えなかった。
【0007】一方、例えば、特開平1-308846号公報に
は、水酸基(OH基)含有量が100ppm以上の多孔質石英
ガラス母材をアンモニアと反応させた後に、これを 1,5
00℃〜1,700 ℃の高い温度に加熱して溶融発泡させるこ
とにより、高純度の石英(シリカ)ガラス発泡体を得る
ことが提案されている。この方法は、比較的高純度のシ
リカ発泡体を得ることができるが、得られた発泡体は、
例えば 1,000℃以上に保つと熱変形や収縮を起こし易
く、耐熱性や形状安定性に劣り、耐久性と寿命に問題が
ある。また、発泡後の気泡の形や大きさが不均一で、更
に気泡の独立性が充分でない為、特に気泡の大きな粗の
部分や気孔、気泡の連通部分では、断熱性の低下や機械
的な強度が低下するので、軽量断熱材や軽量構造材とし
て充分な性能を有しているとは言えなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記の
ような従来技術による問題点を解決するために、特に、
例えばパイレックス等の他のガラスやアルミナやSiC
等のセラミックスに比較して低熱膨張性に優れている高
純度シリカガラスに着目すると共に、高温断熱及び構造
用の工業材料として優れた特性を持った発泡体部材につ
いて種々の実験研究を重ねた。
【0009】従って、本発明の課題は、機械的な強度を
損なうことが無く、軽量性、均一性、不燃性及び断熱性
に優れ、過酷な高温条件下においても変形しない形状及
び寸法安定性を合わせもつ耐久性、長寿命性の優れた高
純度シリカガラス質発泡体を提供することにある。ま
た、他の課題は高純度のシリカガラスを構成物質とし、
前記断熱及び構造用の工業材料として優れた特性を持っ
た高純度シリカガラス質発泡体を工業的に有利に製造す
る方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、
記請求項1及び2に記載された要件から成る高純度シリ
カガラス質発泡体及びその好適な製造方法を提供するも
ので、大きな比表面積を有する高純度シリカガラス粉末
をアンモニア化させ、そのアンモニア化されたシリカ母
材を、あるいは、更にこれにアンモニア化されていない
非晶質シリカ粉体を均一に混合した混合物を毎分 0.5℃
以上の昇温速度で 1,350℃以上の温度にまで加熱したの
ち、1,350 〜 1,800℃の範囲内の温度で溶融発泡させる
点が特徴的である
【0011】本発明の発泡体を構成するシリカは、高純
度の非晶質シリカガラスであって、金属含有量の合計が
100ppm以下であることが重要である。シリカガラスに金
属不純物が含有されていると、含有された金属不純物が
核となり、シリカガラスの結晶化を促進し、結晶質の部
分と非晶質(ガラス質)の部分では膨張率が大きく異な
るので、膨張歪を発生しクラックや破壊を起こす原因と
なる。また、軽度の結晶化によるマイクロクラックであ
っても独立気泡の独立性を犯すのには充分であり、機械
的な強度や断熱性を低下させるという問題がある。更
に、結晶化による歪の発生は、軽量構造体としての形状
精度を損なう。かかる不都合を可及的に抑制し、実用上
の不利益を実質的に回避するには、金属不純物の合計含
有量は100ppm以下に抑制される。
【0012】一般に、シリカガラスに含まれれるあらゆ
る金属不純物は結晶化を促進するが、実質的にシリカガ
ラスに多く含有され結晶化を促進する金属不純物として
は、例えば、Na、K、Li、Ca、Ni、Fe、C
e、Al、Cu、Zn、Mg、B、Ti等が挙げられ
る。これらの金属不純物のうち、特にNa、K、Li、
Ni、Fe、Ce、Cu、B等は、その拡散が早く結晶
化に寄与しやすいのでそれぞれの含有量が1ppm 以下で
あることが望ましい。
【0013】また、本発明のシリカガラス発泡体は、実
質的に独立気泡から構成されているが、本発明において
実質的とは、独立気泡体積が連通する気孔を含む全気泡
の体積の約60%以上を意味する。独立気泡がより少ない
と、構成シリカガラスの気泡間の隔壁が3次元格子構造
として確立されにくく、あらゆる方向からの力に対して
等しい抵抗性を有する発泡体とならないので望ましくな
い。更に、熱が加わる断熱体としても、発泡体気孔の外
部との連通部が多いと連通部にダストや異物が残留し易
く、加熱時にこれがガス化し悪影響を及ぼすので好まし
くない。また、独立気泡内の残留ガスは、活性の小さい
窒素ガスや二酸化炭素等の安定なガスが望ましく、アン
モニア,塩素,ふっ素等の活性の高いガスの残留がない
ことが重要である。
【0014】また、発泡体の断熱構造体としての耐熱性
を考慮した場合、発泡体を構成するシリカガラス中に
は、窒素が0.01重量%以上含まれ、水酸基の含有量は10
0ppm以下であることが極めて望ましい。これは、発泡体
のような格子構造のシリカガラス隔壁からなる構造の場
合、独立気泡による3次元格子構造化も重要であるが、
隔壁自体の高温における粘度が、特に気泡のないバルク
体に比較して、耐熱性に大きく影響するためである。ま
た、水酸基濃度や窒素濃度はシリカガラス内の分子間の
結合の状態に影響があり、結果として耐熱性を決める重
要な要因である粘度を変化させ、特にそれぞれ水酸基濃
度が低く、窒素濃度が高いほど高い粘度と耐熱性が得ら
れることから、この条件を2つとも満足することにより
シリカガラス質の発泡体の著しい耐熱性の向上が得られ
る。しかし、含有される窒素が多すぎると、使用中に窒
素が放出されるので、実質的には、窒素含有量は0.01重
量%〜 0.5重量%の範囲が望ましい。
【0015】これらの技術的要件を合わせ持つ発泡体製
品に関する技術は、これまで公表されている技術には全
く認められず、これらの特徴的構成要件をもつ本発明の
シリカガラス質発泡体により、はじめて高い形状寸法安
定性と耐久性、精密な断熱性を要求される用途に使用可
能なガラス質発泡体が提供されたのである。
【0016】このような、本発明のシリカガラス質発泡
体は、好適には、水酸基を含有し、比表面積が6m2/g以
上の非晶質シリカ母材を 600℃〜 1,300℃のアンモニア
ガスを含んだ雰囲気で熱処理し、ついで 1,350℃〜 1,8
00℃の範囲の温度で加熱発泡させる方法により効果的に
提供される。上記構成を有する本発明の方法は、特に、
アンモニア化処理した非晶質シリカ母材を毎分 0.5℃以
上の早い昇温速度で加熱し、望ましくは減圧雰囲気にて
保って加熱、溶融発泡させることが特徴的である。
【0017】本発明の発泡体の製造に用いられるシリカ
母材は、例えば、CVD法で気相合成されたス−ト体や
ゾルゲル法で得られたシリカ乾燥多孔質ゲル等の合成シ
リカ非晶質や高純度シリカガラス塊を粉砕した非晶質
シリカガラス粉であって、粉体であっても多孔質体であ
っても良いが、6m2/g以上の比表面積を有すること及
びアンモニア化に要求される水酸基を、例えば50〜100p
pm以上含有することが有用である。シリカ母材の比表面
積が6m2/g未満では、充分な水酸基の置換除去が進ま
ず、水酸基が残留してしまい耐熱性が低下し、また同時
にアンモニアの置換及び吸着導入量も減少する為、最終
的な含有窒素も減少し、さらに耐熱性を低下させるので
好ましくない。また、シリカ母材の比表面積が小さい
と、発泡時において独立気泡が形成されにくく望ましく
ないので、粉末形成の実情及びハンドリング様も考慮す
ると本発明の方法に用いられるシリカ母材は、比表面積
が10〜100m2/g程度で、粒径5〜 500μmの多孔性粉
体が実用好ましい。
【0018】また、本発明の方法に用いられる出発原料
としての非晶質のシリカ母材は、比表面積が大きいため
にたとえCVD法やゾルゲル法にて得られたシリカ母材
であっても合成工程や仮焼、粉砕の後処理工程において
不純物に汚染され易く、特にシリカ母材のアンモニア化
処理及び発泡処理直前までの汚染を回避する必要があ
る。よって、本発明の方法に用いられる出発原料として
の非晶質のシリカ母材は、金属不純物、例えばNa、
K、Li、Ca、Ni、Fe、Ce、Al、Cu、Z
n、Mg、B、Ti等をできるだけ含まないことが望ま
しく、得られる発泡体の使用実体からもその合計量は10
0ppm以下であることが重要である。そのうち、特にN
a、K、Li、Ni、Fe、Ce、Cu、B等は拡散が
早く結晶化に寄与しやすいので、それぞれの含有量を1
ppm 以下とすることが好ましい。これらの金属不純物に
よる結晶化促進は発泡加熱時においては結晶化部分では
発泡による気泡の形成が抑制され、発泡体の不均質の原
因となるので好ましくない。
【0019】本発明の方法においては、上記のような高
い比表面積を有する非晶質シリカ母材をまずアンモニア
化処理し、ついで、より高温に加熱昇温し発泡処理され
る。アンモニア化処理は、該母材をアンモニア雰囲気中
で 600〜 1,300℃の範囲の温度に加熱して、アンモニア
を反応、あるいは吸着させる。このアンモニア化反応
は、閉じた反応室内に充分量のアンモニアガスを存在さ
せて行われるが、不活性のキャリアガス、例えば、窒素
ガスで2〜3倍程度に希釈した一定濃度のアンモニアガ
スを一定の流速で反応室内に連続的に送り込むことが実
用的である。
【0020】上記アンモニア化の反応温度は、600 ℃よ
り低いと反応速度が遅すぎて実用的でなく、また 1,300
℃を超えると、置換反応によって結合したアンモニア又
は窒素含有ガスが再び遊離し、続く発泡体の成形に悪影
響を与えるので不都合である。好ましい反応温度は 800
〜 1,000℃である。また、そのアンモニア化処理技術
は、得ようとする発泡体の発泡倍率により、あるいはガ
ラスの水酸基の含有量及び反応温度によって異なるが、
通常、1〜5時間程度である。
【0021】このアンモニア化処理されたシリカ母材
は、ついで、加熱発泡処理される。その処理は、通常、
100torr 以下の減圧炉内条件下に、毎分 0.5℃以上の昇
温速度で 1,350℃以上に加熱される。この加熱昇温は、
例えば、抵抗加熱式の減圧電気炉の高純度カーボン、S
iC、窒化珪素等からなる耐熱型または耐熱ケース内で
行われ、続いて 1,350〜 1,800℃の範囲の温度に保持さ
れて発泡処理される。この発泡処理温度において、アン
モニアまたは窒素含有ガスが遊離し発泡に寄与するが、
一部は発泡体構成シリカガラス内に窒素として残留す
る。
【0022】発泡処理温度が 1,350℃より低温であると
充分な発泡を行なわれないだけでなく、独立気泡内に活
性なアンモニアガスが熱分解されずに残留し、1,800 ℃
より高温であると発泡が進行しすぎて気泡間が連通化し
気泡の独立性が低下するので、発泡処理温度は 1,350℃
〜1,800 ℃の温度範囲であることが有用である。また、
耐熱性の型やケースは、発泡体の仕上げ形状を規定する
型材の目的に使用することもあるが、これらの耐熱材を
周囲に配置することにより、均熱性を高め均質な発泡を
促進するので望ましい。
【0023】本発明の方法においては、所定の温度範
囲、少なくとも 1,350℃までを昇温速度を毎分 0.5℃以
上となるように加熱し、好ましくは、その加熱雰囲気は
減圧にされる。 1,350℃まで急速加熱された非晶性シリ
カ母材は 1,800℃までの適切な発泡温度に加熱保持さ
れ、溶融発泡化される。出来上がった発泡体の気泡内部
のガス圧力を発泡体の実用温度 1,300℃以下の範囲にお
いて減圧に保つことがよく、そのためには発泡時の外圧
を大気圧より小さい条件下で発泡させることが望まし
い。
【0024】加熱、溶融発泡における減圧は、窒素置換
雰囲気で 100torr以下が望ましいが、 1,400℃において
0.5kg/cm2(約 500torr)より低い圧力でないと充分な
1,300℃以下の温度での減圧が確保された気泡の発泡が
行われないので好ましくない。また、密度や気泡サイズ
の制御は、発泡処理時の温度や時間を高くまたは長くす
ると低密度、大泡となり、低くまたは短くすると高密
度、小泡となることにより行うことが出来る。更に、シ
リカ母材の比表面積は、大きければ大きいほど微細で単
位体積当りの独立気泡数の多い発泡体が得られ、また、
シリカ母材が粉体の場合はアンモニア処理されてない別
のシリカ母材を所定の量、例えば、10〜50重量%程度を
混ぜることにより、密度の高い発泡体を得ることが出来
る。本発明の方法においては、実際には、上記の組合せ
条件を選択して、所定の密度、気泡サイズ、気泡数の発
泡体を自由に得ることができる。
【0025】本発明の方法によって得られるシリカガラ
ス質発泡体は、その用途に応じて見かけ密度0.1 〜1.2g
/cm3、気泡径50μm〜 8,000μmの範囲に調製される
が、独立気泡径が小さく、密度が高いほど3次元構造の
格子が良く発達し機械的な強度の高い発泡体が提供され
る。他方、軽量性が重視される場合には、強度を犠牲に
して低い見かけの密度に発泡されるが、0.2 〜0.4g/cm3
の見かけ密度及び気泡径100 〜 2,000μmの範囲の発泡
体が実用上好ましい。
【0026】
【作用】本発明に係る発泡体は軽量化とその軽量化に伴
う機械的強度の低下が高度に抑制された高い実用性の部
材を提供する。特に、低い熱膨張率化によってヒートシ
ョックによる破損や温度差による歪の発生が効果的に防
止され、恒久的な高温形状安定性が確保されて、これま
での技術に見られないような耐久性の高い高純度シリカ
ガラス質発泡体が提供される。また、本発明の方法によ
れば、実質的に独立気泡からなる気泡均質性の高い高純
度の非晶質軽量発泡体が安定に形成され、含有金属不純
物量、含有窒素濃度、含有水酸基濃度がコントロールさ
れた高純度シリカガラス質発泡体が効果的に製造され
る。
【0027】
【実施例】つぎに本発明を具体例により更に詳細に説明
する。 実施例1 四塩化珪素を酸水素火炎中で加水分解するCVD法によ
り、非晶質のシリカスート粉を得た。このシリカスート
粉の比表面積は、BET法による測定で、48m2/gであ
り、また、光拡散法で測定した平均粒径は、約8μmで
あった。更に、このスート粉中に含有される金属不純物
を分析(ICP法)したところ、Na、K、Li、C
a、Ni、Fe、Ce、Mg、Al、Cu、B、Ti及
びZnは、いずれもすべて0.5ppm以下であった。またこ
のシリカスート粉の光拡散法で粒径を調べたところ、平
均粒径が8μmであった。
【0028】次に、このスート粉約6kgをシリカガラス
製の容器に入れ、石英ガラス炉管とアンモニア、窒素ガ
ス導入排出管を備えた内容積1m3の電気炉にて、毎分 3
00mlのキャリヤ窒素ガスに毎分 200mlのアンモニアガス
を混ぜて流しながら 800℃の温度雰囲気中で4時間加熱
反応させアンモニア化した。
【0029】つぎに、アンモニア化したシリカスート粉
を 5.3kgだけシリカガラス容器から取り出し、内径 300
mm、深さ 300mm、肉厚20mmのカーボン製の耐熱容器に移
し、その上から外径 295mm、厚さ約 100mm、重量約10kg
の重石兼落し蓋を載せ抵抗加熱式の減圧炉に入れた。炉
内を、最初に1x 10-2torrまで減圧し、ついで常温から
1,650℃の温度まで毎分5℃の速度で加熱昇温させ、1,
650 ℃の温度に60分間保持した後、常温まで10時間かけ
て降温させた。処理終了後、炉及び耐熱容器から取り出
したシリカガラス質発泡体は、外径 300mm、高さ 250m
m、重量約 5.2kgで見かけ密度約0.3g/cm3であった。
【0030】得られた発泡体の高さ10mm分を採り、諸物
性調査を行ったところ、次のような結果が得られた。 (1)独立気泡含有率;発泡体の見かけ密度と発泡体を
構成するシリカガラス自体の密度を測定し、その多孔性
発泡体を液体に浸漬して得られる連通気孔の体積から算
出される全気孔体積に占める独立気泡含有率は約80%で
あった。 (2)含有金属不純物;ICP法によって含有金属を分
析した結果、Na、K、Li、Ca、Ni、Fe、C
e、Mg、Al、Cu、Zn、B、Tiは、それぞれ各
0.5ppm以下で、これらの金属不純物の合計含有量は2pp
m であった。
【0031】(3)含有水酸基;FT−IRによる拡散
反射スペクトル法により、含有水酸基を分析した結果、
10ppm の定量下限以下であった。 (4)含有窒素;不活性ガス融解熱伝導度法によって分
析した窒素含有量は、0.2 重量%であった。
【0032】(5)独立気泡中のガス;得られた発泡体
片を破壊し、気泡からでてきた気体をガスクロマトグラ
フ質量分析計で分析した結果、主成分の窒素(N、N
2 )ガスと若干のCO2 ガスが検出された。 (6)熱膨張率;JIS C2141 に準じて測定した結果、25
℃〜 1,000℃における平均線膨張係数が、約6.6 x 10-7
1/℃であった。
【0033】(7)熱伝導率;ASTMに準じて21℃にて測
定した結果、0.12kcal/m・hr・℃であった。 (8)圧縮強度;得られた発泡体を直径10mmx 高さ10mm
に成形し、毎秒1kg/cm2速度で圧縮力を加えて圧縮破壊
試験を行ったところ、その発泡成形体は、約30kg/cm2
破壊した。 (9)気泡径;得られた発泡体の気泡を石英ガラスの屈
折率に合わせたマッチングオイル中で、顕微鏡観察をし
たところ、気泡径は 100μm〜 1,000μmの範囲に分布
しており、その平均は約 800μmであった。
【0034】次に、残った外径 300mm、高さ 235mmの本
実施例1の発泡体を、大気雰囲気の電気炉にて繰り返し
加熱耐久試験を行った。試験は、常温(約25℃)と 1,2
00℃の間において、昇温、降温を20℃/minで約 400回繰
り返し、発泡体の状態を観察した。その結果、変形、ク
ラックは全く見られなかった。
【0035】実施例2 実施例1と同様に、四塩化珪素を酸水素火炎中で加水分
解するCVD法により得られた平均粒径が約8μmでB
ET法による比表面積が約48m2/gの非晶質シリカスート
粉をアンモニア化し、次いで、このアンモニア化粉を1
x 10-2torrの減圧条件下に毎分 0.5℃の昇温速度で 1,6
50℃まで加熱し、更に急速に加熱して、1,750 ℃の温度
に60分間保持して発泡させ、気孔の60%が独立気泡から
なる見かけ密度0.1g/cm3の発泡体を得た。得られた発泡
体のその他の諸物性を後記具体例のそれらと共に後掲表
1及び2にまとめて示す。なお、この実施例の発泡体
は、実施例1の発泡体に比べて圧縮強さは劣るが、熱伝
導率が極めて小さく断熱性に優れていることが確認され
た。また、400 回の加熱−冷却繰り返し耐久試験では同
様にに変形やクラックは全く見られなかった。
【0036】実施例3 CVD法により四塩化珪素を酸水素火炎中で加水分解し
て得られたスート粉を、1,300 ℃の温度にて仮焼し、平
均粒径が約 100μm、BET法による比表面積が30m2/g
の非晶質シリカ粉を得た。これを実施例1と同様なアン
モニア化処理及び発泡処理を行って、見かけ密度0.9g/c
m3で、水酸基及び窒素含有量がそれぞれ10ppm 以下及び
0.01重量%のシリカガラス質発泡体を得た。得られた発
泡体について前記の諸物性を調査したところ、実施例1
の発泡体より熱伝導率が大きく断熱性がやや劣るが、圧
縮強さに優れていることが確認された。また、得られた
発泡体を実施例1と同様な繰り返し加熱耐久試験を行な
ったところ変形、クラックは全く見られなかった。
【0037】実施例4 CVD法により四塩化珪素を酸水素火炎中で加水分解し
て得られたスート粉を、1,300 ℃の温度にて仮焼し、平
均粒径が約 200μm、BET法による比表面積が10m2/g
の非晶質シリカ粉を得た。これを実施例1と同様なアン
モニア化処理及び発泡処理を行い、更に発泡化処理にお
いて、温度プログラムを 1,650℃まで毎分10度の速度で
昇温させ、更に加熱して1,750 ℃にて60分だけ保持する
ように変更して発泡処理を行い、発泡体を得た。
【0038】得られた、発泡体の諸物性の調査を行った
ところ、水産基含有量が多く、窒素含有量が少ない発泡
体で、実施例1より熱伝導率が大きく、断熱性がやや劣
るものの、実施例1とほぼ同等の圧縮強さの発泡体であ
ることが確認された。しかし、実施例1と同様な繰り返
し加熱耐久試験を行なったところ、若干の変形と、試験
前の見かけ体積に対して約10%程度の体積収縮が見られ
た。
【0039】実施例5 実施例1と同様に、CVD法により四塩化珪素を酸水素
火炎中で加水分解し得られた平均粒径が約8μmでBE
T法による比表面積が約48m2/gの非晶質シリカスート粉
をアンモニア化処理し、更に実施例1と同様な発泡処理
において、1,650 ℃まで毎分 0.5℃にて昇温し、1,750
℃の温度で60分間保持して発泡処理を行い発泡体を得
た。得られた発泡体の諸物性の調査を行った結果、水酸
基含有量及び、窒素含有量とも小さく実施例1より熱伝
導率が大きく断熱性が大きく劣る発泡体が得られた。
【0040】得られたシリカガラス質発泡体の諸物性の
調査結果を後記表1及び2に各具体例のそれらと共にま
とめて示した。更に実施例1と同様な繰り返し加熱耐久
試験を行った結果、部分的な変形と、試験前の見かけ体
積に対して約5%の体積収縮も見られた。また、気泡の
分布を観察したところ、発泡体中心付近から帯状の気泡
の少ない透明な層が多数みられ、密度も含めて分布が不
均質であることが分かった。
【0041】比較例1 水晶粉の酸水素火炎溶融により得られた公知の天然シリ
カガラスを、金属製のハンマーにて粗粉砕し、これに炭
酸カルシウムと酸化セリウム及びカーボン粉を約 5/200
重量%だけ加え、アルミナ製のボールミルにて混合微粉
砕し、平均粒径が約10μmでBET法による比表面積が
4m2/gの混合非晶質シリカ粉を得た。これを実施例1と
同様な発泡処理において 1,750℃まで毎分15℃にて昇温
し、更に1,750 ℃にて60min だけ保持するようにして、
炭酸カルシウムを分解気化させるとともに、カーボンも
酸化気化させて発泡処理を行い発泡体を得た。
【0042】得られた発泡体の諸物性の調査を行ったと
ころ、特に含有金属不純物の分析(ICP法)におい
て、Cu、Zn、Mg、B、Tiがそれぞれ約0.5ppm、
Na、K、Li、Niがそれぞれ約2ppm 、Feが約10
ppm 、Al、Ca、Ceがそれぞれ約30〜50ppm であ
り、OH基含有量が多く、窒素含有のほとんどない発泡
体であった。また、熱膨張率は、他の実施例に比較して
極めて大きいものになっており構造体と寸法精度に純度
の影響が大きいことがわかる。さらに実施例1と同様な
繰り返し加熱耐久試験を行ったところ、約 200回目で表
面に多数のマイクロクラックとひび割れや剥離物が観察
され、約 400回目には、発泡体に大きなひび割れと編目
状のクラックの進行により一部が崩壊した。
【0043】また、繰り返し試験後の発泡体は、大きな
変形と試験前の見かけ体積に対して約60%以上の体積収
縮も見られた。更に繰り返し試験後の発泡体の一部を剥
し、X線回折法で調査したところ、結晶質のクリストバ
ライトが検出され、耐久性低下に金属不純物と結晶化が
悪影響を及ぼしていることがわかった。
【0044】比較例2 四塩化珪素を酸水素火炎中で加水分解し、これを棒状タ
ーゲット上に堆積させ、比表面積が5m2/gで、直径80m
m、長さ 100mmの多孔質シリカガラス母材を得た。次い
でこの多孔質シリカ母材を毎分 400mlのキャリア窒素ガ
スに毎分 2,500mlのアンモニアガスを混ぜて流しなが
ら、1,000 ℃の温度雰囲気中で2時間反応させたのち、
これを大気中で毎分10℃の速度にて 1,600℃まで昇温
し、さらに1,600 ℃にて10分保持し発泡処理を行い発泡
体を得た。
【0045】得られた発泡体の1部を採取し、諸物性の
調査を行なったところ、水酸基の含有量が多く、窒素含
有量が少ないだけでなく、独立気泡含有率が30%と低
く、他の実施例に比較して、熱伝導率が大きく、断熱性
圧縮強さともに劣っていることが確認された。また、実
施例と同様な繰返し加熱耐久試験を行なったところ、変
形と約30%の堆積収縮が見られた。以上の実施例1、
2、3、4、5及び比較例1の発泡体の物性測定結果を
表1及び表2にまとめて示した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】つぎに短冊状のサンプルを作製し、本実施
例と従来の石英ガラス体及び多孔質体との耐熱性につい
て比較を行った。
【0049】実施例6 実施例3と全く同様に製作した発泡体を切り出して、肉
厚8mm、幅15mm及び長さ85mmの短冊片を製作した。これ
を長さ方向の中央から40mm(80mmスパン)の2点を支点
とし、大気雰囲気の電気炉にて 1,280℃にて20時間加熱
した時の自重による中央のたわみ熱変形量を測定したと
ころ、約 1.9mmの変形が観察された。
【0050】比較例2 四塩化珪素を酸水素火炎中で加水分解し、ゆっくりと堆
積させることにより直接透明な高純度合成石英ガラスを
製造する直接法にて得られた、窒素を殆ど含まず、OH
が約700ppmのシリカガラスインゴットから、実施例6と
同様な肉厚8mm、幅15mm、長さ85mmの短冊片を製作し、
実施例6と同様に加熱試験したところ、約 2.9mmの変形
が観察された。
【0051】比較例4 比較例3と同様な合成シリカガラスインゴットを、シリ
カガラスのボールミルにて粉砕し、粒径60〜 300μmの
粉体を得た。このシリカガラス粉体を 1,350℃にて2時
間焼結し、見かけ密度0.9g/cm3の多孔質焼結体を製造
し、実施例4と同様な短冊片を製作した。これに同様な
加熱試験を行ったところ、約16mm以上の変形が観察され
た。
【0052】上記実施例6、及び従来の比較例3及び4
から、本発明のシリカガラス質発泡体は、従来の無孔質
のシリカガラス体と同等以上の耐熱性を維持しながら、
軽量を兼ね備えることが可能な部材であることが判る。
【0053】
【発明の効果】本発明に係るシリカガラス質発泡体は、
不燃性、保温断熱性、耐熱変形性という軽量断熱材とし
ての優れた特性と耐荷重性、低熱膨張性及び形状安定性
等の軽量構造体としての優れた特性を兼ね備え、しかも
金属不純物をほとんど含まない非晶質シリカガラスをベ
ースとする高い耐久性、非汚染性を有する耐熱性部材を
提供する。急昇降温、高温電気炉や超精密部材等の断熱
部材や構造部材に広く利用される軽量素材として、その
工業的な利用価値は著しく高い。また、本発明の方法
は、上記のようなシリカガラス質発泡体を容易に且つ効
果的に製造することができ、低コストで提供できるので
工業的に極めて有利である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 笠原 孝幸 福井県武生市北府2−13−60 信越石英 株式会社 武生工場内 (72)発明者 藤ノ木 朗 福島県郡山市田村町金屋字川久保88 信 越石英株式会社 石英技術研究所内 (72)発明者 松谷 利勝 福島県郡山市田村町金屋字川久保88 信 越石英株式会社 石英技術研究所内 (72)発明者 稲木 恭一 福島県郡山市田村町金屋字川久保88 信 越石英株式会社 石英技術研究所内 (72)発明者 岩谷 富士雄 福島県郡山市田村町金屋字川久保88 信 越石英株式会社 石英技術研究所内 (72)発明者 嶋田 敦之 福島県郡山市田村町金屋字川久保88 信 越石英株式会社 郡山工場内 (72)発明者 加藤 俊幸 福島県郡山市田村町金屋字川久保88 信 越石英株式会社 郡山工場内 (56)参考文献 特開 平4−59632(JP,A) 特開 昭60−235743(JP,A) 特開 平4−224135(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C03C 11/00 C03B 20/00 C03C 3/06

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 含有金属不純物が100ppm以下で、0.01重
    量%以上の窒素及び100ppm以下の水酸基を含有する非晶
    質シリカガラスで構成され、且つ見掛け密度0.1〜1.2g
    /cm3を有する実質的に独立気泡から成る高純度シリカ
    ガラス質発泡体。
  2. 【請求項2】 水酸基を含有し、比表面積が6m2/g以
    で含有金属不純物100ppm以下の非晶質シリカ母材をア
    ンモニア雰囲気中で 600〜1,300 ℃の範囲の温度に加熱
    してアンモニア化させ、そのアンモニア化されたシリカ
    母材を毎分0.5 ℃以上の昇温速度で 1,350℃以上の温度
    に加熱したのち、1,350 〜1,800 ℃の範囲の温度で発泡
    させることを特徴とする高純度シリカガラス質発泡体の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 水酸基を含有し、比表面積が6m 2 /g以
    上で含有金属不純物100ppm以下の非晶質シリカ母材をア
    ンモニア雰囲気中で 600〜1,300 ℃の範囲の温度に加熱
    してアンモニア化させ、且つ5〜 500μmの粒度の粉体
    に調整された非晶質シリカ母材に、アンモニア化されて
    いない同様な粒度に調整された非晶質シリカ粉体を均一
    に混合して、該混合物を毎分0.5 ℃以上の昇温速度で
    1,350℃以上の温度に加熱した後、1,350 〜1,800 ℃の
    範囲の温度で発泡させることを特徴とする高純度シリカ
    ガラス質発泡体の製造方法。
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