JP3394323B2 - 高純度シリカガラス質発泡体の製造方法 - Google Patents

高純度シリカガラス質発泡体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、高純度シリカガラス質
発泡体の製造方法に関し、詳しくは軽量で高温における
断熱性、不燃性、形状安定性を有し、かつ耐久性の優れ
たシリカガラス質発泡体の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、ガラス質発泡体は、軽量にして不
燃性及び断熱性に優れているところから、建材用や耐熱
構造材として使用されてきた。ところが、最近、ガラス
質発泡体の有する化学的安定性、純度、耐熱性が注目さ
れ出し、それらの特性を利用した部材が、例えば半導体
製造分野で使用されうようになってきた。 【0003】上記ガラス質発泡体は、所定の粒度に粉砕
したガラス粉末に、カーボン発泡剤と酸化助剤を加えて
加熱発泡させるか、あるいは前記ガラス粉末に尿素、そ
の他の有機物、または金属炭酸塩の発泡剤を加え、それ
を加熱発泡させて製造されている。特に、高温耐熱性の
要求されるガラス質発泡体の製造法としては、前記ガラ
ス粉末に、アルミナ、ジルコニア、チタニア、ボロン酸
化物または、炭化珪素等のセラミックス粉を配合し、そ
れをアンモニア化したのち加熱発泡する方法が採られて
いる。しかしながら、これらの製造方法で得られたガラ
ス質発泡体は、そのいずれにも、残留未反応の窒素分
や、アンモニア分や、炭素や金属不純物が残存し、それ
が原因で不要なガスが発生したり、あるいは不純物とガ
ラスとの熱膨張率差によってガラス中に歪が生じ、変形
やクラックが発生する等の欠点があった。また、前記セ
ラミックス粉の含有量が、1wt%以上となると、金属
不純物が焼結助剤として作用し、十分な発泡が得られな
いという欠点があった。 【0004】上記ガラス質発泡体を半導製造用部材とし
て使用するには一層の高純度化が必要であるが、かかる
高純度ガラス質発泡体の製造方法として、水酸基(OH
基)含有量が100ppm以上の高純度の多孔質石英ガ
ラス母材をアンモニアと反応させた後に、これを1,5
00〜1,700℃の温度に加熱して溶融発泡させるも
のがある(特開平1−308846号公報参照)。この
ガラス質発泡体の製造方法では、アンモニアが高温で腐
食性および爆発性が強いために危険性が非常に高く、ま
た手間、コストも非常に高いなど製造上大きな問題点が
あった。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】こうした現状を踏まえ
て、本発明者等が鋭意研究を重ねた結果、不透明石英ガ
ラス体を減圧下にて加熱発泡させることにより上記欠点
のないシリカガラス質発泡体が得られることを見出し、
本発明を完成したものである。 【0006】すなわち、本発明は、気泡が独立気泡で、
しかもその分布が均一で断熱性に優れ、かつ半導体汚染
物質の放出がなく、過酷な高温条件下においても寸法安
定性が高く、耐久性に優れた高純度シリカガラス質発泡
体を工業的に有利に製造する方法を提供することを目的
とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明は、比重が1.7〜2.18g/cm3、気泡直径が
10〜200μm、気泡総体積が1〜30%の不透明石
英ガラス体を減圧下、1,400℃〜2,000℃の温
度範囲で加熱発泡することからなる高純度シリカガラス
質発泡体の製造方法に係る。 【0008】上記製造方法に用いられる不透明石英ガラ
ス体は、高純度の天然石英結晶粉をカーボン鋳型中に充
填し不活性ガス雰囲気の大気圧下で、室温から1,50
0℃までは、20℃/min以下の昇温速度で、1,5
00℃から1,700℃までの温度までは、10℃/m
in以下の昇温速度で昇温し、1,700℃から1,8
00℃の温度範囲で加熱溶融することによって得られ
る。得られた不透明石英ガラス体は比重1.7〜2.1
8g/cm3、気泡直径10〜200μm、気泡総体積
1〜30%であって、微細な気泡が均一に分散している
不透明石英ガラス体である。前記不透明石英ガラス体は
不活性雰囲気中で高温に加熱されて製造されるところか
らガラス中に水酸基が完全に除去されたガラス体であ
る。 【0009】上記高純度天然結晶石英粉とは、鉱山から
産出したシリカ原料を幾種類かの洗浄工程を経たのちナ
トリウム、カリウム濃度が各々0.5ppm以下、その
他の不純物、例えば、Al濃度が20ppm以下、Ca
濃度が1ppm以下、Li濃度が1ppm以下の天然結
晶石英粉とし、さらに米国特許第4,983,370号
明細書に記載の方法にて化学的に純化し、ナトリウム、
カリウム濃度が各々0.2ppm以下、Fe濃度が0.
1ppm以下、Mg濃度が0.05ppm以下、Zr濃
度が0.1ppm以下、Al濃度が20ppm以下、C
a濃度が1ppm以下、Li濃度が1ppm以下の結晶
石英粉をいう。 【0010】本発明は、上記不透明石英ガラス体を再度
カーボン鋳型中に設置して減圧下に、1,400〜2,
000℃の温度範囲に加熱し、前記不透明石英ガラス体
に含まれている気泡を膨張させ発泡させるシリカガラス
質発泡体の製造方法である。前記発泡時の雰囲気の圧力
は、不透明石英ガラス体製造時の圧力以下であればよい
が、大きな発泡状態を得るには、減圧度が低ければ低い
程好ましい。また、加熱発泡温度は、1,400℃〜
2,000℃、好ましくは1,500〜1,850℃が
好適であり、該温度が1,400℃未満では、充分な発
泡体が得られず、また加熱温度が2,000℃を超える
と、溶融が進行し、透明化してしまう。発泡状態の調整
は、不透明石英ガラス体の気泡状態、発泡成形時の圧
力、温度条件を任意に設定することにより所望の密度、
気泡サイズ、気泡数の発泡体を製造することができる。 【0011】本発明の製造方法で特に高温耐熱性に優れ
たシリカガラス質発泡体を製造するには、不透明石英ガ
ラス体製造用シリカ粉末に、アルミナ、ジルコニア、チ
タニア、ボロン酸化物、窒化珪素または炭化珪素等のセ
ラミックス粉を1wt%以上を配合するのが良い。 【0012】 【実施例】次に本発明を具体例によりさらに詳細に説明
するが、以下で使用する結晶粉は、原料結晶粉とその1
80μm以上の粒度の粒子を除去した結晶粉Aであり、
それらの粒度分布(使用した結晶粉を篩い分けした際
に、メッシュ開口が表中の粒径欄に示す篩い上に残った
重量割合を言う)を表1に示す。 【0013】 【表1】注)表中、数値は重量%である。 【0014】また、各例の物性値の測定は以下の方法に
よる。 (1)独立気泡含有率:発泡体の見かけ密度と発泡体を
構成するシリカガラス自体の密度を測定し、その多孔性
発泡体を液体に浸漬して得られる連通気孔の体積から算
出される全気孔体積に占める独立気泡の含有率。 (2)金属不純物濃度:原子吸光法による測定。 (3)含水酸基濃度:FT−IRによる拡散反射スペク
トル法による測定。 (4)平均熱膨張率:25℃〜700℃の膨張率をLI
X−1(レーザ熱膨張計)で測定した平均値。 (5)熱伝導率:比熱を断続型連続法で、熱拡散率をレ
ーザーフラッシュ法で測定し、熱伝導率=比熱×密度×
熱拡散率の式から求めた値。 (6)圧縮強さ:直径10mm×高さ10mmの発泡体
を毎秒1kg/cm2の速度で圧縮力を加えた圧縮破壊
試験の値。 (8)気泡径:発泡体の気泡を石英ガラスの屈折率に合
わせたマッチングオイル中で、顕微鏡観察した値。 (9)比重:アルキメデス法による測定 (10)独立気泡中の気体の分析:ガスクロマトグラフ
質量分析法による測定。 【0015】実施例1 結晶粉Aを内径200mmφ×高さ200mmの高純度
カーボン容器に深さ200mmまで充填し、それを真空
炉内に設置し、窒素をフローさせながら温度を室温から
1,500℃までは、20℃/minの昇温速度で1,
500℃から1,750℃の温度までは、10℃/mi
nの昇温速度で昇温し、1,750℃で60分間保持し
加熱溶融した。得られた不透明石英ガラスブロックから
サンプルを切り出し、このサンプルについて、気泡密
度、気泡体積、気泡断面積、比重を測定した。その結
果、気泡密度は478,200個/cm3、気泡体積は
8.8%、比重は2.115g/cm3であった。 【0016】上記石英ガラスブロックを外径200mm
φ×高さ100mmに切り出し、それを内径200mm
φ×高さ500mmの高純度カーボン容器内に設置し、
該容器を真空炉内に移動し、10ー1torr以下の真空
下に保持して、温度を室温から1,500℃までは、2
0℃/minの昇温速度で1,500℃から1,750
℃の温度までは、10℃/minの昇温速度で昇温し、
1,750℃で60分間保持し加熱溶融した。得られた
高純度シリカガラス質発泡体は、外径200mmφ×高
さ400mmの寸法を有し、その見かけ密度は約0.5
g/cm3であった。得られたシリカガラス質発泡体ブ
ロックはブロック体全域に渡り。均一な発泡状態であ
り、密度のばらつきは0.45〜0.55g/cm3
あった。このブロック体からサンプルを切り出し、独立
気泡含有率、金属不純物濃度、含水酸基濃度、平均熱膨
張率、熱伝導率、圧縮強度および気泡径を測定した。そ
れらの結果を表3、4に示す。 【0017】次に、残った外径200mmφ×高さ20
0mmの発泡体を大気雰囲気の電気炉にて室温と1,2
00℃の間において昇温、降温を20℃/minで約4
00回繰り返し加熱耐久試験を行ったっその結果、変
形、クラックは、全く見られなかった。また、発泡体片
を破壊し、気泡からでてきた気体を分析したところ、主
成分の窒素ガス以外は、検出限界以下の値であった。 【0018】実施例2 原料結晶粉を石英ガラス管を炉芯管とする電気炉内に設
置し、塩化水素/窒素の50/50の雰囲気下、1,2
00℃で1時間熱処理し、金属不純物の純化を行った。
この純化結晶粉を原料として実施例1の製造方法で気泡
密度270,000個/cm3、気泡の総体積7.8
%、比重2.125g/cm3の不透明石英ガラス体を
作成し、該不透明石英ガラス体を実施例1と同様に発泡
を行った。得られた高純度シリカガラス質発泡ブロック
は、外径200mmφ×高さ290mmの寸法を有し、
その見かけ密度は約0.7/cm3であった。この高純
度シリカガラス質発泡体ブロックはブロック全域に渡り
気泡が均一に分布し、気泡密度の分散は0.65〜0.
75g/cm3の範囲であった。前記シリカガラス質発
泡体ブロックからサンプルを切り出し、実施例1と同様
に各物性値の測定を行った。その結果を表3、4に示
す。 【0019】また、発泡体片を破壊し、気泡からでてき
た気体を分析したところ、主成分の窒素ガス以外は、検
出限界以下の値であった。 【0020】比較例1 天然結晶粉を粗粉砕し、これに炭酸カルシウムと酸化セ
リウム及びカーボン粉を約2.5重量%だけ加え、アル
ミナ製のボールミルにて混合微粉砕した。これを内径2
00mmφ×高さ200mmのカーボン性鋳型中に高さ
200mmまで充填し、さらに重量6kgの落とし蓋を
載せ、それを真空炉内に設置して、10ー2torr以下
の真空下に保持して、温度を室温から1,500℃まで
は、20℃/minの昇温速度で1,500℃から1,
750℃の温度までは、10℃/minの昇温速度で昇
温し、1,750℃で60分間保持し加熱溶融した。室
温まで冷却したところで取りだした。得られたシリカガ
ラス発泡体は、内径200mmφ×高さ200mmで、
見かけ密度は約0.3g/cm3であった。この発泡体
について各物性を実施例1と同様に求めた。その結果を
表3、4に示す。 【0021】本例の発泡体中の金属不純物濃度は高く、
この素材で半導体用治具を作成したところ、半導体の歩
留まりの低下や、シリコンウエハー中に欠陥が多くみら
れた。更に実施例1と同様の繰返し加熱耐久試験を行っ
たところ、約200回目で表面に多数のマイクロクラッ
クとひび割れや剥離物が観察され、約400回目には、
発泡体に大きなひび割れと網み目状のクラックの進行が
起こり一部が崩壊した。 【0022】比較例2 四塩化珪素を酸水素火炎中で加水分解しこれを棒状ター
ゲット状に堆積させ直径80mmφ、長さ100mmの
多孔質シリカガラス体を得た。次いでこの多孔質シリカ
体を毎分400mlのキャリア窒素ガスに毎分2,50
0mlのアンモニアガスを混ぜて流しながら1,000
℃の温度雰囲気中で2時間反応させた後、これを大気中
で毎分10℃の速度にて1,600℃まで昇温し、さら
に1,600℃にて10分保持し発泡処理を行った。得
られた発泡体の1部を採取し、各物性を実施例1と同様
に求めた。その結果を表3、4に示す。 【0023】比較例3 実施例1と同様な結晶粉Aを使用して不透明石英ガラス
体を作成するに当たり、1,800℃まで10℃/mi
nで昇温し、1,800℃で60分間保持し溶融した。
得られた不透明石英ガラス体中の含有気泡分布は、不均
一で特にブロック中央部付近に径の大きな気泡が分布し
た。この中央部の気泡径は最大約5mmであった。この
不透明石英ガラス体を用いて、発泡を実施例1と同様に
行った。得られた発泡体は、中央部付近に大きく粗な部
分が発生していた。粗の部分の大きさは直径が最大30
mmφであり、中央部付近は発泡体として使用不可能で
あった。この発泡体について各物性を実施例1と同様に
求めた。その結果を表3、4に示す。 【0024】比較例4 実施例1と同様な方法で得られた不透明石英ガラス体
を、発泡するに当たり、真空度が、50mmHgである
外は、実施例1と同様の発泡を行った。得られた発泡体
は、充分な発泡が得られず、内径200mmφ×高さ1
50mmで、見かけ密度は約1.9g/cm3であっ
た。見掛け密度の分散は1.85〜1.95g/cm3
であった。この発泡体について各物性を実施例1と同様
に求めた。その結果を表3、4に示す。 【0025】比較例5 実施例1と同様な方法で得られた不透明石英ガラス体
を、発泡するに当たり、溶融温度が1,350℃である
外は、同様な発泡を行った。得られた発泡体は、充分な
発泡が得られず、内径200mmφ×高さ150mm
で、見かけ密度は約1.9g/cm3であった。この発
泡体について各物性を実施例1と同様に求めた。その結
果を表3、4に示す。 【0026】 【表2】 【0027】 【表3】【0028】上記表3、4から明らかなように本発明の
シリカガラス質発泡体は、熱伝導率が小さく、圧縮強度
が高く、繰返加熱を行う加熱耐久試験によっても変形、
クラックの発生がない。 【0029】 【発明の効果】本発明は、不透明石英ガラスを単に減圧
下で加熱発泡することにより実質的に独立気泡からなる
発泡体を製造でき、しかも得られた発泡体は軽量で、断
熱性、高温における寸法安定性、耐久性に優れ、半導体
工業で要求される要件を充分満たし半導体処理用治具素
材として有用な発泡体である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木村 博至 福井県武生市北府2丁目13番地60号 信 越石英株式会社 武生工場内 (56)参考文献 特開 平7−69661(JP,A) 特開 平7−61827(JP,A) 特開 平1−308846(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C03B 8/00 - 8/04 C03B 19/00 - 20/00 C03C 1/00 - 14/00

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】比重が1.7〜2.18g/cm3、気泡
    直径が10〜200μm、気泡総体積が1〜30%の不
    透明石英ガラス体を減圧下、1,400℃〜2,000
    ℃の温度範囲で加熱発泡することを特徴とする高純度シ
    リカガラス質発泡体の製造方法。
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