JP2873354B2 - 紡機用リング - Google Patents

紡機用リング

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JP2873354B2
JP2873354B2 JP2418690A JP41869090A JP2873354B2 JP 2873354 B2 JP2873354 B2 JP 2873354B2 JP 2418690 A JP2418690 A JP 2418690A JP 41869090 A JP41869090 A JP 41869090A JP 2873354 B2 JP2873354 B2 JP 2873354B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高速精紡において優れ
た機能を発揮する紡機用リングの構成に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来の紡機用リングは、一般に低炭素鋼
が用いられ、表面硬化処理として浸炭焼入れ処理が行わ
れている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記リングで
は、スピンドル回転数が20,000rpm以上(現在
の高速回転は、17,000rpm〜18,000rp
m)では、リングとトラベラの摩擦抵抗の増大と摩擦熱
の急激な上昇のため、トラベラが早期に焼付き飛散し、
連続運転が出来なかった。
【0004】このため、フランジの表面に硬質微粒子を
共析物質とした複合メッキを施したものが考えられてい
る。しかし、この種のリングは、高速条件下で要求され
る高速特性としてのより優れたなじみ性に課題がある。
【0005】本発明の目的は、上記従来技術の課題を解
決した初期なじみと高速運転時の耐摩耗性を向上した紡
機用リングを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の紡機用リングは、素材の炭素鋼を切削加工
して所要形状に形成し、熱処理・表面研磨処理を施した
リングの少くともトラベラに接触するフランジ表面に、
粒子径が0.2μ〜3μの硬質微粒子を共析物質とし、
その含有率を2〜15%(重量%)の範囲とし、ニッケ
ル・リンを含有するニッケル合金をマトリックスとする
厚さ5μ〜30μの複合メッキの下層を形成する。次
に、粒子径が0.2μ〜3μのフッ素樹脂微粒子を共析
物質とし、その含有率を0.5〜10%(重量%)の範
囲とし、ニッケル・リンを含有するニッケル合金をマト
リックスとする厚さ3μ〜10μの複合メッキの上層を
形成する。そして、350℃〜480℃の温度で40〜
100分の時間をかけて熱処理を行って、硬度をHv6
50〜800にした上層とHv800〜1100の高硬
度にした下層とからなる二層複合メッキ層を形成する。
【0007】さらに、トラベラが接触、摺動する表面に
研磨加工を施すことにより、表面粗さRa0.2μ以下
にして二層複合メッキ層の有する良好な耐摩耗性、耐焼
付性、なじみ性を十分に発揮させることができ、スピン
ドル回転の高速条件下においてもトラベラとの摩擦抵抗
を十分に抑制することが可能となる。上記マトリックス
として用いるニッケル合金は、ニッケル・リン合金、ニ
ッケル・タングステン・リン合金などがある。
【0008】ところで、フツ素樹脂微粒子は、粒径が3
μを越えると、メッキ層からの脱落が早くなり、0.2
μ未満ではなじみ性が劣る。また含有率は0.5〜10
%(重量%)としたが、0.5%未満では十分ななじみ
性が得られず、10%を超えると耐摩耗性が劣る。
【0009】また、硬質微粒子としては、炭化ケイ素,
炭化タングステン,酸化アルミニウムなどがある。硬質
微粒子は、粒径が3μをこえると、メッキ層からの脱落
が早くなり、0.2μ未満では耐摩性が劣る。また、含
有率を2〜15%(重量%)としたが、2%未満では十
分な耐摩性が得られず、15%を超えると、二層複合メ
ッキ層の表面における硬質微粒子の占める割合が大きく
なり摺動性に劣る。
【0010】さらに、二層複合メッキ層は、上層の厚さ
を3〜10μ、下層の厚さを5〜30μと上層を薄く、
下層を厚くしたが、上層は、なじみ性を与えるためであ
り、3μ未満では十分ななじみ性が得られず、10μを
越えると均一に摩耗しにくく、表面が荒れ、トラベラが
スムーズに摺動しにくくなるので、好ましくない。下層
は、高速条件下において上層で与えられた初期のなじみ
に加えて、その後の耐摩耗性を与えるためであり、5μ
未満では耐摩耗性において不十分であり、30μを越え
ると処理時間が極めて長くなり、コストアップになるの
で、好ましくない。
【0011】
【実施例】以下本発明の一実施例を図面を用いて説明す
る。
【0012】円筒状のS15CK材を所要のリング形状
に切削加工し、浸炭焼入、表面処理を施して、図1に示
すようなリング1を形成する。上記リング1は、硬質微
粒子として粒径1μの炭化ケイ素2を共析物質として、
その含有量が重量パーセントで約4%となるように無電
解ニッケル・リン複合メッキを行い、リング表面に、ニ
ッケル・リン合金3をマトリックスとし、炭化ケイ素を
共析物質とする複合メッキの下層4を形成する。
【0013】次に、上記下層4の上に、フッ素樹脂微粒
子5として粒径1μのポリテトラフルオロエチレン(P
TFE)を共析物質として、その含有量が重量パーセン
トで約1%となるように無電解ニッケル・リン複合メッ
キを行い、ニッケル・リン合金3をマトリックスとし、
ポリテトラフルオロエチレンを共析物質とする複合メッ
キの上層6を形成する。
【0014】次いで、熱処理炉において約400℃で約
1時間加熱し、熱処理することにより、上層6は約Hv
750、下層4は約Hv1000の硬度の二層複合メッ
キ層をリング1表面に形成する(図2)。
【0015】更に、トラベラの接触、摺動するフランジ
表面7には、ラッピング等の研磨加工を施して、表面粗
さをRa0.2μ以下の平滑な表面に形成して本発明の
紡機用リングを構成する。
【0016】次に、上記本発明の紡機用リングAと従来
の低炭素鋼に浸炭焼入れを行ったリングBと炭化ケイ素
を共析物質として複合メッキ処理した比較用リングCを
用いて次の条件にて比較テストを行った。 糸 :エステル/綿 45番手 リング:3.2mmF 41mmφ×57.5mmφ トラベラ:YS−2/hf 11/0(ニッケルメッキ
品) スピンドル回転数:16,000rpm〜30,000
rpm 図3は、上記紡出条件での各スピンドル回転数でのトラ
ベラとリングの摩擦抵抗指数を示す。
【0017】スピンドル回転数が18,000rpmを
超えると、従来リングBの摩擦抵抗指数は上昇し始め、
22,000rpm以上になるとトラベラの焼付き、摩
耗が進行し、連続紡出が不可能となる。これに対し、本
発明のリングAは、スピンドル回転数16,000rp
mにおいても、従来リングB、比較用リングCよりも摩
擦抵抗指数が低く、20,000rpm以上の高速域に
おいても低く、トラベラの摩耗もほとんどなく、安定し
た連続紡出が可能となった。
【0018】
【発明の効果】本発明は、上記構成になしたので、次の
効果を奏する。
【0019】スピンドル回転数24,000rpm以上
の超高速域においても紡出初期のなじみがよく、連続運
転中の耐摩耗性もあり、トラベラ焼けが発生せず、トラ
ベラ寿命も延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】紡機用リングの一実施例を示す一部破断断面図
である。
【図2】要部拡大説明図である。
【図3】スピンドル回転数と摩擦抵抗指数との関係を示
す曲線図である。
【符号の説明】
1 リング 2 硬質微粒子 3 ニッケル・リン合金 4 下層 5 フッ素樹脂微粒子 6 上層 7 トラベラの摺動面

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少くともトラベラと接触するフランジ表
    面に、フッ素樹脂微粒子を共析物質とし、ニッケル・リ
    ン合金をマトリックスとする複合メッキの上層と、硬質
    微粒子を共析物質とし、ニッケル・リン合金をマトリッ
    クスとする複合メッキの下層とからなる二層複合メッキ
    層を設けたことを特徴とする紡機用リング。
  2. 【請求項2】 フッ素樹脂微粒子の含有率が重量パーセ
    ントで0.5〜10%であり、硬質微粒子は炭化ケイ
    素、炭化タングステン、酸化アルミニウムの少くとも1
    種からなり、その含有率が重量パーセントで2〜15%
    である請求項1記載の紡機用リング。
JP2418690A 1990-12-28 1990-12-28 紡機用リング Expired - Lifetime JP2873354B2 (ja)

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