JP2853504B2 - 内燃機関の燃料噴射装置 - Google Patents

内燃機関の燃料噴射装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】この発明は、所定燃料圧力に調圧
した燃料を燃料噴射弁から噴射供給する内燃機関の燃料
噴射装置の改良に関する。
【０００２】
【従来の技術】電磁式燃料噴射弁の開弁時間つまり駆動
パルス信号のパルス幅でもって燃料供給量を計量するよ
うにした燃料噴射装置では、開弁時間と噴射量との比例
関係を保つために、燃料噴射弁に導かれる燃料圧力を一
定に調圧する必要がある。詳しくは、燃料は大気圧中で
はなく、絞弁下流側の吸気ポート近傍など吸気管圧力の
下で噴射されるので、この吸気管圧力と燃料圧力との圧
力差が一定値に保たれる必要があり、そのため、セット
スプリングを備えた一方の圧力室内に吸気管圧力を導く
ようにしたプレッシャレギュレータが従来から用いられ
ている。図５は、プレッシャレギュレータ３１を用いた
従来の燃料噴射装置の燃料系統を示したもので、燃料タ
ンク３２内に燃料ポンプ３３が配設され、燃料供給通路
３４へ燃料を圧送している。燃料供給通路３４には、燃
料フィルタ３５が介装され、その下流に複数の燃料噴射
弁３６が接続されている。そして、燃料供給通路３４の
燃料噴射弁３６下流に、吸気管圧力と燃料圧力との圧力
差が所定の基準圧となるように燃料圧力を調圧するプレ
ッシャレギュレータ３１が配置されており、該プレッシ
ャレギュレータ３１からリリーフされた余剰の燃料がリ
ターン通路３７を介して燃料タンク３２に戻るようにな
っている。
【０００３】また、特開昭６３−１２０８４８号公報等
には、リターン通路３７を介して燃料タンク３２へ戻る
リターン燃料を少なくするために、燃料ポンプ３３にて
燃料供給通路３４へ圧送する燃料量を機関運転条件に応
じて可変制御するようにした構成が示されている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】図５に示したような従
来の構成においては、燃料ポンプ３３の吐出能力は機関
の最大要求燃料流量を考慮して十分な余裕を持った形で
設定されており、燃料噴射弁３６から噴射されなかった
余剰の燃料がプレッシャレギュレータ３１からリターン
通路３７を経由して燃料タンク３２へと循環することに
なる。従って、一般的な運転条件の下では、内燃機関の
近傍で加熱された燃料がリターン燃料となって多量に戻
るようになり、燃料タンク３２内の燃料温度が上昇し易
い。そのため、燃料蒸発ガスが増加し、あるいは燃料系
統でのベーパロックが発生し易くなる。
【０００５】また特開昭６３−１２０８４８号公報に記
載のように燃料供給量を可変制御するには、複雑な制御
システムが必要となり、かつ過不足なく燃料を供給する
ことが難しい。しかも、耐熱再始動時には、燃料供給量
を必要最小限とすることで逆に燃料噴射弁３６近傍の燃
料温度が上昇し易くなり、始動性が悪化する。
【０００６】
【課題を解決するための手段】この発明に係る内燃機関
の燃料噴射装置は、燃料供給通路に接続された電磁式燃
料噴射弁と、燃料タンクから吸入した燃料を上記燃料噴
射弁へ向けて圧送する燃料ポンプと、この燃料ポンプ吐
出側と上記燃料噴射弁との間に位置し、かつ第１設定圧
でもって開弁する第１プレッシャレギュレータと、この
第１プレッシャレギュレータから排出される余剰燃料を
燃料タンクへ戻す第１リターン通路と、上記燃料供給通
路の燃料噴射弁より下流側に位置し、かつ上記第１設定
圧よりも高い第２設定圧でもって開弁する第２プレッシ
ャレギュレータと、この第２プレッシャレギュレータか
ら排出される余剰燃料を燃料タンクへ戻す第２リターン
通路と、上記第１リターン通路に介装され、所定の始動
時に該第１リターン通路を閉塞する制御弁とを備えたこ
とを特徴としている。
【０００７】
【作用】通常の運転状態では、上記制御弁が開状態とな
っており、第１プレッシャレギュレータから第１リター
ン通路を経由して燃料の排出が可能となる。つまり、第
１プレッシャレギュレータによる調圧作用が可能な状態
となり、電磁式燃料噴射弁近傍の燃料圧力は第１設定圧
に調圧される。このとき、第２プレッシャレギュレータ
の第２設定圧は、第１設定圧よりも高く設定されている
ため、第２プレッシャレギュレータは実質的に作用せ
ず、燃料供給通路先端を該第２プレッシャレギュレータ
が閉塞した状態となる。従って、燃料噴射弁側へ圧送さ
れた燃料は、全量が噴射供給され、燃料タンクへは戻ら
ない。尚、第１プレッシャレギュレータから第１リター
ン通路を経由して戻るリターン燃料は、機関の熱を比較
的受けないので、燃料タンクへ流入する熱量が抑制され
る。
【０００８】また耐熱再始動時など所定の始動時には、
制御弁が第１リターン通路を閉塞する。これにより第１
プレッシャレギュレータの調圧作用が阻止され、燃料噴
射弁近傍の燃料圧力は第２プレッシャレギュレータによ
り第２設定圧に維持されるようになる。この状態では、
余剰燃料が第２プレッシャレギュレータから第２リター
ン通路を経由して燃料タンクへ戻るようになり、その燃
料流により燃料噴射弁近傍のベーパロックが抑制され
る。
【０００９】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図面に基づいて
詳細に説明する。
【００１０】図１は、この発明に係る燃料噴射装置の燃
料系統を示したもので、燃料タンク１内に燃料ポンプ２
が配設され、燃料供給通路３へ燃料を圧送している。燃
料ポンプ２としては電動式ポンプが用いられている。燃
料供給通路３には、燃料フィルタ４が介装されており、
その下流の燃料ギャラリ部３ａに、複数の電磁式燃料噴
射弁５が接続されている。この燃料噴射弁５は、図示せ
ぬ吸気通路の絞弁下流、詳しくは各気筒の吸気ポート近
傍へ向けて燃料を噴射するようになっている。
【００１１】上記燃料供給通路３の燃料噴射弁５上流
側、詳しくは燃料フィルタ４と燃料ポンプ２との間に、
吸気管圧力と燃料圧力との圧力差が第１設定圧Ｐ１とな
るように燃料圧力を調圧する第１プレッシャレギュレー
タ６が介装されており、該第１プレッシャレギュレータ
６からリリーフされた余剰の燃料が第１リターン通路７
を介して燃料タンク１に戻るようになっている。
【００１２】また、上記燃料供給通路３の燃料噴射弁５
下流側、詳しくは燃料ギャラリ部３ａの下流側の端部に
は、吸気管圧力と燃料圧力との圧力差が第２設定圧Ｐ２
となるように燃料圧力を調圧する第２プレッシャレギュ
レータ８が配置されており、該第２プレッシャレギュレ
ータ８からリリーフされた余剰の燃料を燃料タンク１に
戻すように第２リターン通路９が設けられている。ここ
で、上記第２設定圧Ｐ２は、第１プレッシャレギュレー
タ６の第１設定圧Ｐ１よりも高く設定されており、例え
ば第１設定圧Ｐ１が２．５５ｋｇ／ｃｍ2、第２設定圧
Ｐ２が３．０５ｋｇ／ｃｍ2程度となっている。
【００１３】上記第１プレッシャレギュレータ６から燃
料タンク１へ至る第１リターン通路７の通路途中には、
該第１リターン通路７を開閉するソレノイドバルブから
なる制御弁１０が介装されている。この制御弁１０は、
マイクロコンピュータシステムを用いたコントロールユ
ニット１１により開閉制御されるもので、上記コントロ
ールユニット１１には、イグニッションキースイッチ１
２の信号と燃料温度センサ１３の検出信号とが入力され
ている。
【００１４】上記第１プレッシャレギュレータ６および
第２プレッシャレギュレータ８は、基本的には同一の構
成を有するもので、それぞれ図２および図３に示すよう
に、略円筒上のケーシング１５内にダイヤフラム１６が
配置され、該ダイヤフラム１６によって燃料室１７と圧
力室１８とが隔成されている。燃料室１７は、側面に燃
料入口１９を有し、かつ第１リターン通路７もしくは第
２リターン通路９に接続される燃料排出口２０が底面に
設けられている。そして、この燃料排出口２０に通じる
リリーフポート２１が、ダイヤフラム１６に支持された
弁体２２によって開閉されるようになっている。また圧
力室１８には、圧力導入口２３から吸気管圧力が導かれ
ているとともに、該圧力室１８内に、ダイヤフラム１６
に所定の荷重を付与するセットスプリング２４が収容さ
れている。尚、図２に示す第１プレッシャレギュレータ
６は、燃料供給通路３の通路途中に介装される形式であ
るため、燃料入口１９と常時連通する燃料出口２５がケ
ーシング１５側面に設けられている。
【００１５】上記実施例の構成においては、通常の運転
状態では制御弁１０が開状態となっており、第１リター
ン通路７が第１プレッシャレギュレータ６と燃料タンク
１とを連通している。従って、第１プレッシャレギュレ
ータ６による調圧作用が可能な状態となり、燃料噴射弁
５を備えた燃料供給通路３内の燃料圧力が第１プレッシ
ャレギュレータ６によって第１設定圧Ｐ１に調圧され
る。このとき、第２プレッシャレギュレータ８は、その
設定圧Ｐ２が第１設定圧Ｐ１よりも高く設定されている
ことから、常に閉状態となる。つまり、燃料供給通路３
の端部を第２プレッシャレギュレータ８が実質的に閉塞
した状態となり、第１プレッシャレギュレータ６を経て
燃料噴射弁５側へ圧送された燃料の全量が内燃機関へ噴
射供給される。従って、内燃機関の近傍を通って燃料タ
ンク１へ戻る高温のリターン燃料が発生せず、燃料タン
ク１内の燃料温度の上昇が回避される。尚、燃料ポンプ
２により圧送された燃料の中で余剰となる燃料は第１プ
レッシャレギュレータ６から第１リターン通路７を経由
して燃料タンク１に戻るが、このリターン燃料経路はシ
リンダヘッド等の高温部の近傍を通らない上流側に構成
し得るので、燃料タンク１に流入する熱量は非常に少な
くなる。
【００１６】一方、耐熱再始動時など所定の始動時に
は、上記制御弁１０が閉状態となり、第１リターン通路
７を閉塞する。この状態では、第１プレッシャレギュレ
ータ６から燃料がリリーフされないため、第１プレッシ
ャレギュレータ６の調圧作用が実質的に停止する。従っ
て、燃料供給通路３内の燃料圧力は、第２プレッシャレ
ギュレータ８の調圧作用により第２設定圧Ｐ２に調圧さ
れるようになる。そして、該第２プレッシャレギュレー
タ８において余剰となった燃料は、第２リターン通路９
を通して燃料タンク１に戻る。従って、燃料ポンプ２に
より圧送された燃料の一部が燃料供給通路３および第２
リターン通路９を経由して燃料タンク１へと循環するよ
うになり、燃料ギャラリ部３ａ付近に滞留していた高温
燃料を速やかに排除できるとともに、燃料噴射弁５近傍
でのベーパロックの発生が防止される。また、この状態
では、燃料供給通路３内の燃料圧力が、通常時の第１設
定圧Ｐ１よりも高く与えられるため、この点からもベー
パロックが発生しにくくなる。
【００１７】図４は、上記制御弁１０の開閉制御の一例
を示すフローチャートであって、イグニッションキース
イッチ１２がＯＮとなると、ステップ１に示すタイマＴ
Ｍがカウントを開始する。このカウンタＴＭの値が所定
値ＴＭ１以上である場合、つまり始動から所定時間経過
した後は、ステップ１からステップ３へ進み、制御弁１
０を開状態とする。タイマＴＭの値がＴＭ１以下の間
は、ステップ１からステップ２へ進み、燃料温度センサ
１３により検出された燃料温度Ｔの判定を行う。この燃
料温度Ｔが所定の温度範囲Ｔ１〜Ｔ２である場合には、
やはりステップ３へ進み、制御弁１０を開状態とする。
つまり、この場合には、前述したように、第１プレッシ
ャレギュレータ６により調圧作用がなされ、かつ燃料ギ
ャラリ部３ａ側へ圧送された燃料の全量が噴射されるよ
うになる。
【００１８】ステップ２で燃料温度ＴがＴ２以上の耐熱
再始動時の場合、あるいはＴ１以下の極低温下での始動
時の場合には、ステップ４へ進み、制御弁１０を閉状態
とする。これにより、前述したように、第２プレッシャ
レギュレータ８による調圧作用に切り換えられ、第２リ
ターン通路９を経由して余剰燃料が循環するようにな
る。そして、この状態では、燃料圧力が高くなっている
ので、ステップ５へ進み、噴射量の補正、詳しくは噴射
パルス幅の補正を行う。
【００１９】尚、Ｔ１以下の低温時に制御弁１０を閉と
するのは、燃料圧力を高めて、燃料を可及的に微粒化さ
せ、始動性を向上させるためである。
【００２０】また、燃料温度センサ１３を具備しない場
合には、タイマにより始動後一定時間だけ常に制御弁１
０を閉状態に保つようにすれば良い。
【００２１】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、この発明
に係る内燃機関の燃料噴射装置によれば、通常の運転時
には、燃料ポンプに比較的近い位置に配置された第１プ
レッシャレギュレータを介して余剰燃料が燃料タンクへ
戻り、燃料噴射弁側へ圧送された燃料は、その全量が燃
料噴射弁から噴射されて燃料タンクへは戻らないように
なる。従って、燃料タンク内の燃料温度の上昇を大幅に
抑制できる。また、耐熱再始動時などには、制御弁の切
り換えにより、燃料圧力を高めることができると同時
に、燃料噴射弁近傍を燃料が循環するようになる。従っ
て、ベーパロックを確実に防止して良好な始動性を確保
できる。また、第１プレッシャレギュレータと第２プレ
ッシャレギュレータとの設定圧の差によって流路の切換
がなされるため、複雑な制御システムが不要であり、構
成が単純であるとともに、確実な動作が得られるという
利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明に係る燃料噴射装置の一実施例の構成
を示す構成説明図。
【図２】第１プレッシャレギュレータの構成を示す断面
図。
【図３】第２プレッシャレギュレータの構成を示す断面
図。
【図４】制御弁の開閉制御の一例を示すフローチャー
ト。
【図５】従来の燃料噴射装置の構成を示す構成説明図。
【符号の説明】
１…燃料タンク ２…燃料ポンプ ３…燃料供給通路 ５…燃料噴射弁 ６…第１プレッシャレギュレータ ７…第１リターン通路 ８…第２プレッシャレギュレータ ９…第２リターン通路 １０…制御弁

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 燃料供給通路に接続された電磁式燃料噴
    射弁と、 燃料タンクから吸入した燃料を上記燃料噴射弁へ向けて
    圧送する燃料ポンプと、 この燃料ポンプ吐出側と上記燃料噴射弁との間に位置
    し、かつ第１設定圧でもって開弁する第１プレッシャレ
    ギュレータと、 この第１プレッシャレギュレータから排出される余剰燃
    料を燃料タンクへ戻す第１リターン通路と、 上記燃料供給通路の燃料噴射弁より下流側に位置し、か
    つ上記第１設定圧よりも高い第２設定圧でもって開弁す
    る第２プレッシャレギュレータと、 この第２プレッシャレギュレータから排出される余剰燃
    料を燃料タンクへ戻す第２リターン通路と、 上記第１リターン通路に介装され、所定の始動時に該第
    １リターン通路を閉塞する制御弁とを備えたことを特徴
    とする内燃機関の燃料噴射装置。
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