JP2845443B2 - 植物培養における二次代謝産物生産の誘導方法及びその手段 - Google Patents

植物培養における二次代謝産物生産の誘導方法及びその手段

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Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は植物由来の二次代謝産物に関し、そしてさら
に詳しくは、これらの代謝産物を生産するために植物細
胞を誘導する方法及び手段に関する。 背景技術 植物により生産される多くの化学物質が、それらが細
胞機能に必須であるために一次代謝産物として分類され
ている。一次代謝産物は植物集団中に普遍的に存在し、
そして植物により生産される化学物質の大部分を構成す
るが、他の化合物は二次代謝産物として分類され、そし
てそれらの種々の用途のため、科学的研究及び商業的利
用の両者の焦点となっている。 幾つかの場合において、二次代謝産物は、例えば微生
物感染、UV照射、機械的損傷により、並びに有機物質及
び無機物質による処理により誘導されるストレスに応答
して幾つかの植物において生産される。この様なストレ
ス条件下で生産される二次代謝産物のバラエティーは多
様であり、そしてアルカロイド類、テルペノイド類、フ
ラボノイド類、カロチノイド類、フェノール系化合物類
及びグリコシド類を包含する。一層重要な、医薬として
有用な二次代謝産物にはアルカロイド類、ステロイドホ
ルモン類、強心配糖化及び抗生物質類があり、この内イ
ンドールアルカロイド類が特に興味深い。アルカロイド
は多くの化合物を包含し、その内の少なくとも幾つかは
医薬的価値を有することが知られている。例えば、イン
ドールアルカロイドであるアジマリシン(ajmalicine)
は抗高血圧剤/精神安定剤として機能することが知られ
ている。さらに、ビンクリスチン(vincristine)及び
ビンブラスチン(vinblastine)は癌の治療において許
容される。ビンブラスチン及びビンクリスチンの両者の
前駆体であるカサランチン(catharanthine)または二
次代謝産物として生産され、そしてそれらの化合物の製
造における出発材料として価値がある。 しかしながら、すべての二次代謝産物がすべての植物
により大量に生産されるわけではない。代謝産物の種類
は植物の種に大きく依存する。例えば幾つかのインドー
ルアルカロイドは最も一般的にカサランサス・ロゼウス
Catharanthus roseus)〔マダガスカル・ツルニチソ
ウ(Madagascar periwinkle)、ビンカ・ロゼア(Vinca
rosea)及びロクネラ・ロゼア(Lochnera rosea)と
しても知られている〕から抽出される。さらに、モルフ
ィナン(morphinan)アルカロイド、例えばモルフィン
(morphine)及びコデイン(codeine)はケシ〔パパベ
ール・ソムニフェルム(Papaver somniferum)〕から
抽出され、そしてシンコナ(Cinchona)アルカロイド、
例えばキニン(quinine)及び関連するキノリンアルカ
ロイドはシンコナ・サクシルブラ(Cinchona succirub
ra)及び類縁種に由来する。明らかな通り、二次代謝産
物がそれに由来する植物は該代謝産物を遺伝的に発現す
ることができなければならず、そして該代謝産物の合成
に携わるために特定の代謝刺激物質に対して感受性でな
ければならない。 現在、二次代謝産物は本来の植物から抽出される。し
かしながら、しばしば、目的とする代謝産物は通常低い
濃度で存在し、このことが化学的抽出工程を退屈で且つ
冗長なものとしており、これがこれらの化合物の幾つか
の比較的高いコストに反映している。例えば、インドー
ルアルカロイド類は典型的には乾燥したカサランサス・
ロゼウス植物中に存在し、該アルカロイド類はこれらの
植物から通常約0.0003%(乾燥重量基準)の濃度で誘導
される。ビンクリスチン及び/又はビンブラスチンをこ
れらの植物から抽出するコストは、これらの化合物の販
売価格を約5,000ドル/gに上昇せしめ(1983)、キニン
及びコデインはそれぞれ約100ドル/及び650ドル/kgと
評価される。 アルカロイドを抽出する方法の効率を改良する方法が
考案されているが、植物組織培養の出現が有用な対替技
法を提供した。植物組織培養(ptc)法を使用すること
によって、二次代謝産物を生産する植物細胞の能力を操
作し、そしてそれ由に本来の植物収穫物に基礎を置く労
働力を要する抽出工程を軽減することができる。 植物組織培養は、培養物全体に栄養を循環せしめる必
要性と植物細胞の壊れやすさとの間の均衡を達成するレ
ベルの撹拌を用い、栄養培地中に浮遊した植物細胞の集
団の増殖を伴う。しかしながら、すべての植物がこの手
法に対して従順なわけではなく、そしてまた培地条件も
この方法の成功における重要な因子である。ptc技法の
利点は、明確にされた環境、栄養条件等の増殖条件に対
して制御を実施することができる点にある。さらに、培
養液内に刺激物質を循環させることができることによ
り、刺激物質をカルスに適用することにより最も外側の
細胞のみが効果を受けるのに比べて、刺激物質がより多
数の個々の細胞又は細胞塊に接触することができる。 ptcを用いて、所望の二次代謝産物を生産するように
幾つかの植物種を誘導する可能性が研究されている。例
えば、“Phytochemistry"Vol.20,No.8,pp1841−1843(1
981),Lee等は、ある種のインドールアルカロイドを生
産するC.ロゼウス培養物の能力に対する2−ジエチルア
ミノエチル−2,4−ジクロロフェニルエーテルを包含す
る特定のアミンの効果を開示している。アジマリシン及
びカサランチンの生産の増加が注目された。しかしなが
ら、アルカロイド誘導剤として使用される5種類の非常
に関連する化学物質の内、3種類のみが有意な有用性を
示したことに注目するのが有意義である。これらの密接
な構造の類似性にもかかわらず、5種類の誘導剤の内2
種類は実質的に無視できる結果を示した。さらに、上記
のアミンは5ppm以下の濃度では良好な結果を示したが、
より高い濃度は増殖阻害を生じさせ、そしてアルカロイ
ドの合成を減少せしめた。 Planta Medica(1984)において、Eilert等はルタ・
グラベオレンス(Ruta graveolens)の浮遊培養から
の、抗微生物アルカロイドであるルタクリドンエポキシ
ド(rutacridone epoxide)及びヒドロキシルタクリド
ンエポキシド(hydroxyrutacridone epoxide)の生産を
誘導する試みを開示している。生きている遊離の又は固
定化された酵母の、あるいは死んだロドトルラ・ルブラ
Rhodotorula rubra)の細胞又はその粗細胞壁画分の
懸濁液の添加により、これらは注目の抗微生物化合物の
生産の増加を示す。キトサン及びアルギン酸は他の系に
おいては誘導剤として有用であることが証明されている
が、いずれも目的とする応答を誘導することができなか
ったという結果が注目される。 Plant Cell Physiology 26:1101−1110(1985)にお
いて、ハットリ及びオータは、特にバナジン酸ナトリウ
ム(Na3VO4)の存在下でレッドビーン(Red Bean)〔ビ
ンガ・アングラリス(Vinga angularis)〕の浮遊培養
物を増殖せしめる実験の結果を開示している。彼らは、
バナジン酸化合物がイソフラボングルコシド(isoflavo
ne glucoside)、ジアドゼインジグルコシド(diadzein
diglucoside)の生産を増強するこができることを示す
結果を示している。しかしながら、他の化合物は目的の
結果を生じさせることができず、そしてなお他のものは
二次代謝産物の生産に抑制効果を示した。 従って、種々の植物種と組み合わせて多数の誘導剤が
研究されているが、これらの結果は、現在のところ活性
のいずれのパターンも予想することができないという結
論を示している。このことは、限定的ではないが、C.ロ
ゼウスがインドールアルカロイドを生産する様に誘導さ
れる系において特に明らかである。 発明の開示 この発明の1つの目的は適当な植物細胞による二次代
謝産物の生産を誘導することができる物質を固定するこ
とである。 この発明の他の目的は植物の細胞による二次代謝産物
の生産を増強することができる方法を提供することであ
る。 この発明の他の目的は、植物細胞からの二次代謝産物
の生産を誘導し、そして次に回収する方法を提供するこ
とである。 培養懸濁物に添加された場合に培養された植物細胞中
での二次代謝産物の合成を誘導するのに十分な浸透圧を
もたらす化合物はこの発明の範囲内である。種々の浸透
圧により惹起されるストレスは合成の増加に寄与すると
信じられる。 浸透圧ストレスを生じさせるために植物細胞懸濁物に
添加される化合物は非常に広範囲の化合物から選択され
得る。一般に、これらの化合物はイオン性ストレス誘導
化合物及び有機ストレス誘導化合物として分類される。
いずれの場合にも、浮遊液へのこれらの添加の最終結果
は細胞と周囲培地との間の浸透圧ストレスの発生であ
る。 イオン性ストレス誘導剤は好ましくは溶液中でイオン
化することができるハロゲン塩である。さらに好ましく
はこれらの塩は周期律表におけるI族又はII族のハロゲ
ン塩である。 有機ストレス誘導剤には糖アルコール及び糖酸が包含
され、これにはガラクチノール、キシリトール、グリセ
ロール、マンニトール及びイノシトール並びにその種々
の誘導体が包含され、これにはホスファチジルイノシト
ール、フィチン酸及びそのエステル、シリトール(scyl
litol)、フィトール、アルドン酸、アルダル酸(aldar
ic acid)、ウロン酸、そして特にソルビトールが含ま
れる。ソルビトールは特に、二次代謝産物の有意な収量
を誘導し、そしてそれ故に好ましい。 また、浸透圧ストレスによってではない手段によって
二次代謝産物を誘導するために作用する化合物もこの発
明の範囲内にある。この発明のこの観点は、種々の植物
生長調節化合物及び化学構造において又は生化学的機能
において関連する化合物の任意の1つ又は組み合わせが
補充された浮遊液中で植物細胞を培養することを含んで
成る。アブシジン酸(abscissic acid;ABA)が特に有用
であるが、使用され得る他の関連化合物には抗−ジベレ
リン化合物、例えば2′−イソプロピル−4′−(トリ
メチルアンモニウムクロリド)−5′−メチルフェニル
ピペリジンカルボキシレート、β−クロロエチルトリメ
チルアンモニウムクロリド及びトリブチル−2,4−ジク
ロロベンジルホスホニウムクロリドが含まれる。この発
明において有用な他のABA−関連化合物にはN−(ジメ
チルアミノ)桂皮酸、4′−ジヒドロパセイン酸(4′
−dihydrophaseic acid)、パセイン酸(phaseic aci
d)及びルヌラリン酸(lunularic acid)が含まれる。 従って、この発明の1つの観点から、植物細胞に浸透
圧的にストレスを与えることを含んで成る、植物細胞に
よる二次代謝産物の合成を誘導する方法が提供される。 この発明に従う条件下で植物細胞を培養した後、生化
学抽出分野において今日確立されている化学的手順を用
いて、目的とする一又は複数の代謝産物を回収すること
ができる。 幾つかの代謝産物は植物細胞により増殖培地に分泌さ
れるので、これらの代謝産物は、遠心分離及び濾過のご
とき常用技術を用いて細胞を濃縮することにより細胞自
体から簡単に分離することができる。次に、代謝産物を
含有する液は、透析のごとき技法により代謝産物をさら
に濃縮するために処理することができ、あるいは標準的
化学的抽出技法を直接使用した後に作用することができ
る。目的とする代謝産物が植物細胞によって発現される
がしかしそれから分泌されない場合、例えば大気圧又は
浸透圧の上昇した圧力を用いて植物細胞を破壊し、又は
破砕する。次に、代謝産物を適当な溶剤中に抽出するこ
とができ、そして目的の二次代謝産物の化学的抽出に先
立って上に記載した手順を用いて幾分濃縮することがで
きる。使用されるべき特定の化学的抽出手順は回収され
るべき代謝産物の化学的性質に依存するであろう。但
し、一般にこの様な手順は溶剤、pH等の逐次的変化を含
み、そして当業者によりよく知られている。 従って、この発明の第二の観点は、この発明の誘導方
法により生産された化合物を回収することを含んで成
る、植物細胞由来二次代謝産物を提供する方法を構成す
る。 この発明の方法及び誘導剤を用いて植物細胞培養系中
で生産される二次代謝産物の内、セコロガニン(secolo
ganin)及びトリプトファン−由来ストリクトシジン(s
trictosidine)、アジマリシン、ヨヒンビン(yohimbin
e)、タベルソニン(tabersonine)、ビンドリン(vind
oline)及びカサランチン並びにトリプタミンを包含す
るカサランシス・ロゼウスから得られるインドールアル
カロイド;パパベール・ソムニフェニム(Papaver som
niferum)からのチロシン−由来モルフィン及びコデイ
ン;パセリの細胞培養からのクマリンのごときフェニル
アラニン−由来化学物質;並びにジギタリス・プルプレ
ア(Digitalis purpurea)又はD.ラナタ(D. lanat
a)からのサポニンのごときメバロン酸−由来化学物
質、例えばジギタリス、が挙げられる。 この列挙は排他的なものとして提出されるのではな
い。他の二次代謝産物の生産が、それらが生来的である
植物細胞中で誘導され得るようである。この発明は好ま
しい観点においてC.ロゼウス由来のインドールアルカロ
イドであるカサランチン、アジマリシン、タベルソニン
及びビンドリンに関する。 この発明において使用される誘導物質アブシジン酸は
次の構造式を有する: アブシジン酸は脱離促進(abscission−acceleratin
g)植物ホルモン、すなわち植物部分の分離、例えば秋
期における茎からの葉の分離、を促進するホルモンであ
る。これは、その化学名称が5−(1−ヒドロキシ−2,
6,6−トリメチル−4−オキソ−2−シクロヘキセン−
1−イル)−3−メチル−2,4−ペンタジエン酸である
ドルミン(dormin)としても知られている商業的に入手
可能な商品である。この薬剤の合成形及び種々のシス−
トランス異性体もまた商業的に入手可能であり、そして
この発明において使用され得る。 前記のごとく、植物細胞の培養技法は知られており、
そして好ましくはこの発明において使用される。従っ
て、常用の方法が使用され、この方法においては生きて
いる植物材料、例えば葉材料、茎材料、又は分裂組織が
汚染防止のために表面殺菌され、そして個々の細胞又は
細胞群の小さい塊が、それらが適当な液体栄養に移され
るまで、増殖プレート中の寒天栄養基上で培養される。
懸濁液が培養フラスコ中で連続的に撹拌されそして最後
にバイオリアクターに移される。撹拌は“エアーリフ
ト”法により適切に達成され、この方法においては培養
物が上昇する気泡の穏和な作用により混合される。 誘導剤を培地に添加するため、所望により誘導物質の
溶液を適切にあらかじめ調製し、増殖維持培地中の該物
質の均一性を増強する。例えば、添加に先立ってこの発
明のすべての物質を水と混合することができる。アスコ
ルビン酸は水、及びKOHのごとき塩基数滴と混合して必
要であれば溶解を助けることができる。 痕跡量又は低レベルの目的二次代謝産物はこの発明の
誘導剤の不存在下で培養された植物細胞により一般に生
成されるであろうが、低い収量はすでに知られている方
法と比較して改良された抽出収量を可能にしない。さら
に、誘導剤の不存在下では、これらの代謝産物の生産の
ために必要とされる時間は比較的長く、30日まで、又は
45日でさえある。これに対して、この発明の誘導剤の存
在下での植物細胞の培養は生産される二次代謝産物の量
を増加せしめ、そしてその特定量を得るために必要とさ
れる時間を有意に短縮することができる。 発明を実施するための最良の形態 培養細胞が由来するC.ロゼウス系は、自明のことでは
あるが、植物組織培養をしなければならない。この様な
系を得ることは当業者間でよく知られており、そして幾
つかのこの様な系が現在存在すると信じられる。このこ
とは、その細胞培養環境内で耐えそして機能する能力を
有する植物を提供する必要性を減ずるものではない。こ
の能力を付与する特徴は当業界においてよく定義されて
いない。植物組織培養が可能な細胞の存在はほとんど試
行錯誤法によってのみ確認される。従って、以後、この
発明を例示するために本発明者により与えられた名称を
有する特定のセルラインが使用されるが、この発明の範
囲はこれらの特定の植物系に限定されるものではないこ
とを認識すべきである。現在存在するか、又は容易に創
製されそして試験され得るタイプの他の系が、この明細
書において報告するのと同一の一般的効率をもって機能
するであろう。この発明における好ましいC.ロゼウス系
はJWM,JOH及びLBE−1命名される。系JWM及びJOHは
Plant Biotechnology Institute,Saskatoon,Sasketchew
an,カナダにおいて開発された。系LBE−1はAllelix In
c.,Mississauga,Ontario,カナダにおいて開発された。
すべての系はもともとC.ロゼウス(C. roseus)の葯か
ら単離されたものである。 C.ロゼウスは、すべての必要な代謝産物を含有する任
意の液体培地中で培養することができ、その例にはSH培
地、LS培地及びMS培地が含まれ、このすべてが当業界に
おいて知られている。LS培地(Linsmair及びSkoog)はP
hys.Plantarum(18)1964 pp.100−127に、その成分に
より記載されている。この発明において使用するために
好ましいSH培地(Shenck−Hilderbrandt)の成分はCan.
J.Bot.50:195−204(1972)に記載されている。この発
明において好ましい培地であるMS倍地(Murashige及びS
koog)の成分は当業者によく知られている。この培地に
シュークロース又はラクトースのごとき炭素源が添加さ
れる。3%又は4%のシュークロースの添加が好ましい
が、類似の濃度のラクトースを使用することもできる。
SH培地に添加される唯一の増殖調節剤は2mg/の濃度の
α−ナフタレン酢酸である。この培地はまた、細胞分裂
における機能する合成サイトカイニンであるカイネチン
(6−フルフリルアミノプリン)を含有するのが適当で
ある。 植物細胞は、選択された誘導剤調製物の誘導効果に対
してそれらが一層感受性であると予想される直線増殖期
又は初期定常増殖期に集団が達するまで、ストレスを減
少しそして光により誘導される二次代謝経路(例えば色
素の形成)から栄養をチャンネリング(channel)させ
るために暗所で、あるいは好ましくは光の中で増殖せし
める。すなわち、C.ロゼウス細胞懸濁液を、誘導剤の不
存在下で好ましくは3〜10日間、さらに好ましくは4〜
6日間、試験された条件下で増殖せしめる。交互する増
殖条件が用いられる場合、直線増殖期又は初期定常期の
開始を特定するために細胞集団をモニターすることがで
きる。さらに、誘導は後期対数期及び他の増殖期におけ
る添加によって増強され得るから、誘導剤を添加する前
に直線期又は初期定常期に達することは絶対的に必須で
はないことが理解されよう。アルカロイドの収量を最大
にするためにはできるだけ大きな細胞集団を維持するの
が望ましい。 C.ロゼウスの浮遊液が所望の増殖期に達した後、培養
液中の所望の濃度を達成するのに十分な量で誘導物質を
導入する。 この発明において好ましい誘導物質は、イオン性浸透
圧ストレス誘導剤としてのNaCl,KCl及びFeCl3;有機浸透
圧ストレス誘導剤としてのソルビトール、及び植物生長
調節誘導剤としてのアブシジン酸(ABA)である。 使用のために選択された場合、NaCl又はKClの最終培
地濃度は最低の望ましいレベルとして約0.1Mが適当であ
る。より低いレベルは誘導目的に役立つことができる
が、より高い濃度により得られる短縮された時間内に増
強された収量をもたらさないようである。NaCl又はKCl
の許容される上方濃度レベルは、その存在が培養された
細胞内で生じさせる浸透圧により指定される。すなわち
言い換えれば、高い濃度で短い時間処理しても高収量は
得られない。従って、上限は原形分離を生じさせる濃度
よりわずかに低いものである。さらに好ましくは、NaCl
及びKClは、0.01M〜1.0M、そして理想的には約0.5Mの培
地濃度を達成するように添加される。 塩化第二鉄は、10〜500ppm、より好ましくは20〜200p
pm、そして理想的には約50ppmの最終濃度を達成するよ
うに浮遊培地に添加するのが適当である。 ソルビトールの培地濃度は、NaCl及びKClの添加に関
して検討したように、約0.05Mから原形質分離が生ずる
濃度よりわずかに低い最高濃度までである。好ましい培
地濃度は0.1M〜0.5Mの範囲であり、そして理想的には約
0.2Mである。 後記の実験条件下で、アブシジン酸の理想的な濃度は
懸濁液60ml当り0.1mg〜0.5mgの範囲である。誘導応答は
不都合に低いが、0.01mgという低い濃度を使用すること
ができる。0.5mg/60mlにおいて見られる効果の増強はほ
とんどないようであるが、0.5mg/60mlより高い濃度を使
用することもできる。 いずれかの誘導剤の添加の後、C.ロゼウスの細胞を一
定時間培養して、誘導剤が細胞と接しそしてインドール
アルカロイドの生産を刺激するようにする。2〜5日間
の期間が好ましい。但し、特に条件がこの明細書に記載
する通りでない場合、この好ましい期間の変更が許容さ
れる。培養物の増殖は好ましくは暗所で又は光の中で続
けられる。 培養期間の後、細胞を回収し、そして常用の技法を用
いてアルカロイドを抽出する。特定の技法は、回収され
るべき特定の物質に依存するが、すべては当業界におい
て標準的なものである。 次に、例に言及しながら発明の具体的な態様を開示す
る。これらの例において、60mlの細胞懸濁培養物を、3w
/v%シュークロース、2mg/のα−ナフタレン酸及び0.
1mgのカイネチンを含有する基本MS増殖培地に維持す
る。培養物を、照射されたロータリーシェーカー(120r
pm)上の250mlエルレンマイヤーフラスコに維持し、そ
して1:5稀釈により1週間ごとに継代培養する。 アブシジン酸及びD−ソルビトールはシグマ社から入
手し、そしてNaCl,KCl及びFeCl3はフィッシャー・サイ
エンティフィック社から得た。 すべての誘導剤は蒸留水に溶解したストック溶液とし
て調製し、その濃度は、1mlのストック溶液を細胞懸濁
培養物に添加した場合に所望の最終濃度が得られるよう
にした。 特にことわらない限り、各誘導剤は細胞懸濁液に、増
殖サイクルの5日間に無菌濾過溶液として添加し、そし
て細胞を3日後に回収した。細胞からインドールアルカ
ロイドを抽出するために標準的抽出法を使用した。カサ
ランチン及びアジマリシンの収量はHPLC分析により定量
した。他のアルカロイドの存在は、TLC分離の後に硫酸
セリウムアンモニウムにより可視化することにより定性
的に決定した。 例1.(参考例)ABAによる誘導 99%純度の合成アブシジン酸を0.1〜2.0mg/60ml培養
物の濃度範囲で導入した。得られた結果を第1表〜第4
表に示す。第1表は、細胞系JOHに適用する場合に誘導
過程に対してABAのタイプ及び濃度が有する効果を示
す。99%純度の(±)シス−トランス合成異性体が卓越
した結果を示したが、ABAのすべての形が好ましい誘導
性を示した。 第2表は系JWMに対する誘導応答へのABA濃度の効果
を示す。0.5mg/60mlの培養物において最大応答が起こ
り、濃度の増加に伴う変化はわずかであることが注目さ
れよう。 下記の第3表において、細胞齢とABAへの暴露との関
係を示す。3日以上の培養増殖が最良の結果をもたら
し、アジマリシンの濃度はその後低下することが注目さ
れよう。しかしながら、カサランチンの収量は培養増殖
の6日目においても上昇し続ける。第3表の結果は細胞
系JOH及び4日の誘導期間によるものである。 下記の第4表は1mgのABAによる誘導に対する種々のセ
ルラインの応答を示す。各セルラインはAllelix Inc.又
はPlant Biology Institute(Saskatoon)(前記)から
入手することができる。すべてがC.ロゼウスに由来す
る。これらの結果から、系JOH及びLBE−1が好ましいよ
うである。 おそらくまだラグ誘導期にあると思われるわずか1日
の増殖後においてさえ、植物細胞はABAへ暴露に対して
アルカロイド生産の増加によって正に応答することが観
察された。しかしながら、アルカロイドの蓄積はある程
度バイオマスに関連するので、バイオマスのある程度の
増加の後に細胞を誘導するのが好ましい。 例2. NaClによる誘導 塩化ナトリウム濃度の範囲(0.1〜1.0g/60mlフラス
コ)を下記の第5表の系JOHにおけるアルカロイドの蓄
積に対するそれらの効果について試験した。高濃度のNa
Clはバイオマスを減少せしめ、従ってアルカロイドの収
量を減少せしめ、他方バイオマスに対する一層低い濃度
の効果はカサランチン生産の促進により相殺される。 例3. 塩化カリウムよる誘導 系JOHの細胞に0.1又は0.2gのKClを添加した。アルカ
ロイドの収量に対する効果を第6表に示す。 例4. 塩化第二鉄による誘導 アルカロイドの蓄積に対する3mg/のFeCl3の効果を
第7表に示す。系JOHを使用した。例5.(参考例)ソルビトールによる誘導 ソルビトール濃度の範囲を、アルカロイドの蓄積に対
するそれらの効果について試験した(最終濃度0.1〜0.5
M;1.1〜5.5g/60ml培養物)。系JOHに対するそれらの効
果を下の第8表に示す。 この発明に従って細胞培養物を誘導することにより得
られる主たる利点は、アルカロイド(特にカサランチ
ン)の収量がわずか8日間で、非誘導細胞であれば達成
するのに非常に長時間かかるであろうレベルに達するこ
とができ、時間及びコストの両方が節約されることであ
る。 アルカロイドの生産をスケールアップするためにわず
かな変更が必要とされるに過ぎない。例えば、MS培地
は、1mg/のα−ナフタレン酢酸及び0.1mg/のカイネ
チンと共に、小スチールでは3%溶液が使用されるのに
対して4%(w/v)シュークロースにより好適に強化さ
れる。すべての細胞系及び化学物質は同じままである。 例6.(参考例)より大規模な誘導プロセス ABAを使用する30バッチのため、好ましくは最終培
養液中8.33mg/となるように溶液が調製される。1
の蒸留水中に溶液を調製し、無菌濾過し、そして無菌ビ
ンから発酵槽に注入する。NaClの溶液を1の蒸留水中
に調製し、培養物中の最終濃度が33.33g/となるよう
にする。溶液を無菌濾過し、そして無菌ビンから培養物
に加える。 誘導は通常、培養期間の5〜7日目に行う。促進は通
常24時間以内に起こり、そして7日まで続くことができ
る。 検出法は小規模研究のそれと同じである。
フロントページの続き (72)発明者 三沢 正愛 カナダ国,オンタリオ エム9アール 4エー4,ウェストン,ダウンパトリッ ク クレセント,12 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12P 17/18 C12N 5/00 CA(STN)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.培地中濃度0.01−1.0Mを達成するようにNaCl又はKC
    lを添加するか、あるいは培地中濃度10−500ppmを達成
    するように塩化第二鉄を添加して細胞を浸透圧的にスト
    レスすることを含んでなる、カサランサス・ロゼウス
    (Catharanthus roseus)の細胞によるカサランチン及
    び/又はアジマリシンの合成を誘導する方法。
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CA1283874C (en) 1991-05-07
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FI881491A0 (fi) 1988-03-30
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KR900004437B1 (ko) 1990-06-25

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