JP2841902B2 - ダイナミック・シミュレータの制御装置 - Google Patents

ダイナミック・シミュレータの制御装置

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JP2841902B2
JP2841902B2 JP3059668A JP5966891A JP2841902B2 JP 2841902 B2 JP2841902 B2 JP 2841902B2 JP 3059668 A JP3059668 A JP 3059668A JP 5966891 A JP5966891 A JP 5966891A JP 2841902 B2 JP2841902 B2 JP 2841902B2
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英俊 海田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電動機やエンジン等の
原動機の模擬負荷として使用されるダイナミック・シミ
ュレータの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図6に示すように、原動機101の模擬
負荷として使用されるダイナミック・シミュレータ10
2は、発電機107と、この発電機107を制御する電
力変換器103と、この電力変換器103を制御する制
御手段104と、発電機107(原動機101)の速度
を検出する速度検出器105と、発電機107の電流を
検出する電流検出器106とから構成されている。ここ
で、上記原動機101とは電動機、エンジン等をいい、
発電機107とは直流機、誘導機、同期機等をいう。こ
のダイナミック・シミュレータ102は、発電機107
の制御によって原動機101から見た機械系の特性が図
7に示す1慣性系や図8に示す2慣性系その他の機械モ
デルと同等であり、制御可能な範囲内でモデルのパラメ
ータを調節できるようになっている。なお、図7及び図
8において、201は駆動側慣性(時定数TM)、20
2は弾性を持った軸(時定数TS)、203は負荷側慣
性(時定数TL)、204は負荷抵抗(定数bL)、20
5は負荷側機械系モデルを示している。
【0003】ここで、模擬しようとする駆動側慣性20
1の時定数TM、原動機101の速度ωM、原動機101
の駆動トルクτd、軸トルクτSの間には、以下の数式1
に示す関係がある。なお、数式1においてsはラプラス
演算子である。
【0004】
【数1】τd−τS=sTMωM
【0005】また、原動機101及び発電機107の慣
性の和の機械時定数をTMG、電流による発電機107の
トルクをτaとすると、次の数式2に示す関係がある。
【0006】
【数2】τd−τa=sTMGωM
【0007】上記数式1及び数式2から、数式3が得ら
れる。なお、数式3におけるτSは負荷側機械系205
のモデルによって与えられるとすると、τdが得られれ
ば原動機101が駆動する慣性(原動機を含む)がTM
になった場合と等価にすることができる。
【0008】
【数3】
【0009】上記τdを推定する手段として、負荷トル
クのステップ状変化を推定するインパクトドロップ・オ
ブザーバを適用した第1の従来技術が、図9に示す1慣
性系ダイナミック・シミュレータの制御ブロック図であ
る。なお、この例ではτS=0としてある。機械時定数
が可変である原動機101から見たみかけの駆動側慣性
201は、機械時定数がTMGである原動機101及び発
電機107に対し、τdを推定するインパクトドロップ
・オブザーバ301及び帰還ゲインK1=(TM−TMG
/TMによって電流制御手段302に与えられるトルク
指令τa*(以下、便宜上、指令値には「*」を付して示
す)は、次の数式4に示すとおりとなる。ここで、τd
の上部に付した記号「∧」は推定値を示す(以下、各数
式において同様とする)。
【0010】
【数4】
【0011】電流制御手段302と電力変換器103の
変換ゲインK2とによって決まる電流制御系の伝達特性
をh(S)、発電機107の磁束鎖交数をφとし、τa*か
ら電流指令への電流変換ゲインを1/φ,電流検出値か
らトルクへのトルク変換ゲインをφとすると、τaは数
式5によって表すことができる。
【0012】
【数5】τa=φ・h(S)・τa*/φ=h(S)・τa*
【0013】また、オブザーバ301のτdに対する伝
達特性をg(S)とすると、前記数式4から、τaは次の数
式6のように表すことができる。
【0014】
【数6】
【0015】この制御方法の特性根の実部は必ず負で安
定であることが明らかにされているが、g(S)は一般に
零点を持たず、h(S)にも伝達遅れがあるので、τdに周
期的変化がある場合、τaは振幅の減衰及び位相遅れを
生じることになる。
【0016】一方、前記数式3を変形して数式7とする
と、同様に原動機101が駆動する慣性をTMに等しく
することができる。
【0017】
【数7】τa=(TM−TMG)・sωM+τS
【0018】上記の例として、図10に第2の従来技術
である2慣性系ダイナミック・シミュレータの制御ブロ
ック図を示す。この例において、トルク指令τa*は微分
器401、帰還ゲインK3及び負荷側機械系模擬手段4
02によって与える。まず、駆動側慣性制御についてみ
ると上記数式7における右辺第1項の速度の微分は実現
困難なので、微分器401を用い、1次のハイパスフィ
ルタまたは差分による等価的な微分g′(S)を使用して
数式8に示す演算によりトルク指令τa*を与える。な
お、数式8における(TM−TMG)は帰還ゲインK3であ
る。
【0019】
【数8】τa*=(TM−TMG)・g′(S)ωM+τS*
【0020】このとき、発電機107のトルクτaは数
式9によって示される。
【0021】
【数9】 τa=h(S){(TM−TMG)・g′(S)ωM+τS*}
【0022】微分器401に1次のハイパスフィルタを
使用する場合は、ハイパスフィルタの極とh(S)の影響
により、第1の従来技術と同様にτdの周期的変化に対
してτaの振幅の減衰及び位相遅れを生じる。また、差
分を使用すると等価的な微分g′(S)は次の数式10の
ようになり、微分器401に不安定零点を持つようにな
るから、τdの周期的変化に対してτaの振幅の減衰及び
位相の変化だけでなく、条件によっては制御系の安定性
が損なわれる。
【0023】
【数10】
【0024】次に、軸トルク指令τS*を与える負荷側機
械系模擬手段402は、軸(時定数TS)モデル40
3、負荷側慣性(時定数TL)モデル404及び粘性抵
抗などの負荷抵抗(定数bL)モデル405によって構
成されている。いま、負荷側速度をωLとすると、軸ト
ルクτSに関して数式11、数式12が成立する。
【0025】
【数11】sTSτS=ωM−ωL
【0026】
【数12】sTLωL=τS−bLωL
【0027】従って、軸トルク指令τS*を数式13、数
式14のようにする。模擬する機械系の軸トルクτS
電流制御手段302の伝達特性によってh(S)τS*とな
るから、理想的な状態に対して位相遅れを持つことにな
る。
【0028】
【数13】
【0029】
【数14】
【0030】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の技術による
と、まず第1の課題として、原動機の駆動トルク及び速
度は運転状態によって複雑に変化するにもかかわらず、
図9に示したように駆動側慣性補償トルクの演算にイン
パクトドロップ・オブザーバを使用した場合、オブザー
バと電流制御手段の伝達特性の影響で軸トルク、速度の
振動成分の周波数が高くなるほど推定したトルクあるい
は慣性補償トルクの振幅及び位相の誤差が大きくなり、
駆動側慣性が周波数に対して変化するという問題があっ
た。
【0031】第2の課題として、図10に示したように
駆動側慣性トルクの演算に1次のハイパスフィルタある
いは差分を微分器として使用した場合、微分器と電流制
御手段の伝達特性の影響で軸トルク、速度の振動成分の
周波数が高くなるほど推定したトルクあるいは慣性補償
トルクの振幅及び位相の誤差が大きくなり、駆動側慣性
が周波数に対して変化するだけでなく、設定によっては
安定性が低下するという問題があった。
【0032】第3の課題として、従来の制御方法では、
負荷側機械系のモデルで計算した軸トルクを軸トルク指
令として電流制御手段に与えていたため、電流制御遅れ
の影響で周波数に対するモデルのパラメータ変化、共振
周波数及びダンピングの変化を生じるという問題があっ
た。
【0033】 第1〜第4の発明は上記第1〜第3の課
題を解決するためになされたもので、その目的とすると
ころは、駆動側慣性を広い周波数帯域にわたって一定値
に保つことができ、更に、電流制御系の遅れを解消して
軸トルクを正確に模擬することができるダイナミック・
シミュレータの制御装置を提供することにある。
【0034】
【課題を解決するための手段】 前記第1及び第3の課
題を解決するために、第1の発明は、軸を介して原動機
により駆動される発電機と、この発電機を制御する電力
変換器と、発電機電流を検出する電流検出器と、発電機
の速度を検出する速度検出器と、前記電流検出器及び速
度検出器の出力に基づいて前記電力変換器を制御する制
御手段を備えたダイナミックシミュレータにおいて、発
電機電流によるトルク及び速度の検出値から原動機によ
る駆動トルク及びそのn(n≧1)階までの時間微分値
を推定するオブザーバと、このオブザーバの出力と、
ねじりのある機械系を模擬した負荷側機械系模擬手段か
ら出力される軸トルク指令とに基づいて駆動側慣性の制
御に必要な慣性補償トルク指令を演算する慣性補償トル
ク演算手段と、前記軸トルク指令と慣性補償トルク指令
とを加算した結果を発電機のトルク指令として電力変換
器の電流制御手段に与える手段とを備え、機械系モデル
の軸両端の速度差から得られる軸トルク演算値の微分値
を電流制御手段の伝達遅れを補償するためのゲインを介
して軸トルク演算値に加算することにより前記軸トルク
指令を生成することを特徴とする。
【0035】 前記第1及び第3の課題を解決するため
に、第2の発明は、軸を介して原動機により駆動される
発電機と、この発電機を制御する電力変換器と、発電機
電流を検出する電流検出器と、発電機の速度を検出する
速度検出器と、前記電流検出器及び速度検出器の出力に
基づいて前記電力変換器を制御する制御手段を備えたダ
イナミックシミュレータにおいて、発電機電流によるト
ルクの検出値及び軸トルク指令並びに速度の検出値から
駆動側慣性に与えられるトルク及びそのn(n≧1)階
までの時間微分値を推定するオブザーバと、このオブザ
ーバの出力に基づいて駆動側慣性の制御に必要な慣性補
償トルク指令を演算する慣性補償トルク演算手段と、
ねじりのある機械系を模擬した負荷側機械系模擬手段か
ら出力される軸トルク指令と前記慣性補償トルク指令と
を加算した結果を発電機のトルク指令として電力変換器
の電流制御手段に与える手段とを備え、機械系モデルの
軸両端の速度差から得られる軸トルク演算値の微分値を
電流制御手段の伝達遅れを補償するためのゲインを介し
て軸トルク演算値に加算することにより前記軸トルク指
令を生成することを特徴とする。
【0036】 前記第1及び第3の課題を解決するため
に、第3の発明は、軸を介して原動機により駆動される
発電機と、この発電機を制御する電力変換器と、発電機
電流を検出する電流検出器と、発電機の速度を検出する
速度検出器と、前記電流検出器及び速度検出器の出力に
基づいて前記電力変換器を制御する制御手段を備えたダ
イナミックシミュレータにおいて、電力変換器の電流制
御手段と同一の伝達特性を持ち、駆動側慣性の制御に必
要な慣性補償トルク指令に基づき慣性補償トルクを推定
するフィルタと、このフィルタの出力及び発電機の速度
の検出値から駆動側慣性に与えられるトルク及びそのn
(n≧1)階までの時間微分値を推定するオブザーバ
と、このオブザーバの出力に基づいて前記慣性補償トル
ク指令を演算する慣性補償トルク演算手段と、軸ねじり
のある機械系を模擬した負荷側機械系模擬手段から出力
される軸トルク指令と前記慣性補償トルク指令とを加算
した結果を発電機のトルク指令として電力変換器の電流
制御手段に与える手段とを備え、機械系モデルの軸両端
の速度差から得られる軸トルク演算値の微分値を電流制
御手段の伝達遅れを補償するためのゲインを介して軸ト
ルク演算値に加算することにより前記軸トルク指令を生
することを特徴とする。
【0037】 前記第2及び第3の課題を解決するため
に、第4の発明は、軸を介して原動機により駆動される
発電機と、この発電機を制御する電力変換器と、発電機
電流を検出する電流検出器と、発電機の速度を検出する
速度検出器と、前記電流検出器及び速度検出器の出力に
基づいて前記電力変換器を制御する制御手段を備えたダ
イナミックシミュレータにおいて、発電機の速度の検出
値から慣性補償トルクを演算するハイパスフィルタ(分
母・分子多項式はp次、p≧2)と、このハイパスフィ
ルタの出力と帰還ゲインとを組み合わせて慣性補償トル
ク指令を演算する慣性補償トルク演算手段と、軸ねじり
のある機械系を模擬した負荷側機械系模擬手段から出力
される軸トルク指令と前記慣性補償トルク指令とを加算
した結果を発電機のトルク指令として電力変換器の電流
制御手段に与える手段とを備え、機械系モデルの軸両端
の速度差から得られる軸トルク演算値の微分値を電流制
御手段の伝達遅れを補償するためのゲインを介して軸ト
ルク演算値に加算することにより前記軸トルク指令を生
することを特徴とする。
【0038】
【0039】
【作用】第1の発明において、原動機の駆動トルクτd
とトルク電流で制御される発電機のトルクτaと発電機
(原動機)の速度ωMとの間には、次の数式15に示す
関係がある。
【0040】
【数15】
【0041】原動機と負荷機械系との組合せにおける各
部の速度及び軸トルクは、一定値あるいは振動成分を含
む場合共に、一般に時間tの級数で展開することができ
る。いま、τdはn(n≧1)次の時間微分まで可能で
あるとすると、τdからそのn次の時間微分値τd(n)
(微分次数(n)は本来、上付き文字にて表記すべきであ
るが、便宜上、本文中ではこのように表記する)までを
オブザーバにより推定することが可能である。ここで、
τaを入力u、ωM及びτd(i)(i=0,1,2,……,
n)を状態変数xとし、τdは未知の外乱としてこれら
の関係を式で示すと、数式16のようになる。
【0042】
【数16】
【0043】出力yはωMであるから、数式17が成り
立つ。ただし、x(0)≠0とする。
【0044】
【数17】y=Cx=(1,0,……,0)x
【0045】上記数式17に対してxの推定値を得るた
めのオブザーバ(同一次元または最小次元)は、一般に
次の数式18、数式19、数式20で与えられる(オブ
ザーバの設計は、Gopinathの方法等による)。
【0046】
【数18】
【0047】
【数19】
【0048】
【数20】
【0049】ただし、数式18ないし数式20におい
て、zはオブザーバの状態変数であり、また、A,B,
J,C,Dの各推定値はパラメータ行列、Aの推定値の
全ての特性根の実部は負である。
【0050】これらの式を解いて次の数式21、数式2
2で示されるオブザーバ出力が得られる。
【0051】
【数21】
【0052】
【数22】
【0053】数式22のτaの影響は出力に現われない
ので、τd(i)(i=0,1,2,……,n)の行列xd
は数式23のようになる。
【0054】
【数23】
【0055】駆動側慣性に与えられるトルクτMは、次
の数式24によって表される。なお、数式24におい
て、h(S)は電流制御系の伝達特性である。
【0056】
【数24】τM=τd−h(S)τS*
【0057】そこで、τM及びそのn階までの微分値τM
(n)の推定値は、オブザーバから得られるτd及びそのn
階までの微分値τd(n)の推定値から、数式25で表され
るフィルタF(S)を通したτS*を減算して求める。
【0058】
【数25】
【0059】τM(i)(i=0,1,……,n)の行列x
Mの推定値は、数式26となる。
【0060】
【数26】
【0061】数式26において、次の数式27を前提と
した結果を帰還ゲインK(=k0,k1,……,kn)を
通して数式28に示す慣性補償トルク指令ΔτM*とし、
数式29に示すようにΔτM*とτS*とを加算してトルク
指令τa*とする。
【0062】
【数27】F(S)=G(S)(S)
【0063】
【数28】
【0064】
【数29】
【0065】このとき、トルク電流による発電機のトル
クτaと速度ωMとは、次の数式30及び数式31によっ
て表される。
【0066】
【数30】 τa=h(S)τa*=h(S){KG(S)τM+τS*}
【0067】
【数31】
【0068】また、駆動側慣性TMは、軸トルク指令の
値に関わらず次の数式32により表される。
【0069】
【数32】
【0070】ここで、G(S)はτdのn階微分までの項を
導出する構造となっているため、KG(S)に1つ以上、
(n−1)以下の零点を持たせることができる。そこ
で、h(S)に対してゲインK及びG(S)の伝達特性を最適
に設定し、h(S),KG(S)の周波数に対するゲイン変化
と位相遅れとが最小になるようにすると、駆動側慣性T
Mは数式33のようになり、広い周波数範囲にわたって
一定の値を保つことができる。
【0071】
【数33】
【0072】第2の発明において、前記数式15及び数
式26を数式27に代入すると、次の数式34が得られ
る。
【0073】
【数34】
【0074】これにより、フィルタF(S)を除去する代
わりに前記数式5と等しい伝達特性h(S)のフィルタに
τS*を通してτaから減算した結果(τa−h(S)τS*)
をτaの代わりにオブザーバに入力すれば、オブザーバ
はτM及びそのn階までの微分値τM(n)となり、上記数
式34で表される出力が得られる。そこで、これを用い
て慣性を制御すると、前記数式31、数式32が第1の
発明と同様に成立し、広い周波数帯域にわたって駆動側
慣性を安定して模擬することができる。数式34に数式
28、数式29を代入すると、オブザーバの出力は数式
35のようになり、第1の発明と同じ結果が得られる。
【0075】
【数35】
【0076】第3の発明において、上記のオブザーバへ
の入力(τa−h(S)τS*)を変形すると、次の数式36
が得られる。すなわち、帰還ゲイン出力を電流制御手段
と同一の伝達特性h(S)のフィルタに通してオブザーバ
に与えても、第1、第2の発明と同一の結果を得ること
ができる。
【0077】
【数36】
【0078】第4の発明において、上記第3の発明を変
形すると、数式35から次の数式37が得られる。
【0079】
【数37】
【0080】上記数式は、伝達特性が次の数式38によ
り表されるハイパスフィルタを示している。
【0081】
【数38】
【0082】このハイパスフィルタは、行列xMを推定
するオブザーバにほかならないから、数式39のように
書き替えると、ωMとTMは数式40及び数式41のよう
になる。なお、数式39において、p≧2,a0=1,
0=1であり、また、g′(S)sはハイパスフィルタの
伝達特性であって極、零点はp個ずつであり、零点の1
つはs=0である。更に、数式39ないし数式41にお
いて、k′は帰還ゲインを示す。
【0083】
【数39】
【0084】
【数40】
【0085】
【数41】TM={TMG+h(S)k′g′(S)
【0086】すなわち、フィルタの係数を最適に選ぶこ
とによって、オブザーバを用いた場合と同様に広い周波
数範囲にわたって駆動側慣性を模擬することができる。
【0087】第4の発明の前提として、軸トルクを模擬
する場合、電流制御手段の遅れが入り、機械系モデルの
演算結果を軸トルク指令としたのでは正確な模擬を行な
うことができないので、電流制御の遅れを打ち消すよう
な軸トルク指令を与えなくてはならない。負荷側機械系
模擬手段は、時定数TSの軸に接続された負荷側の第1
の慣性の速度演算値をωL1とすると、次の数式42に示
すように軸トルクは軸両端の速度差を積分して得ること
ができる。
【0088】
【数42】
【0089】従って、軸両端の速度差は軸トルクの1次
微分値の推定値に比例する。そこで、軸トルク指令τS*
を次の数式43によって与える。
【0090】
【数43】
【0091】h(S)がh(S=0)=1であるとすると、h
(S)・(1−L・s)≒1となる(h(S)が1次遅れの時
は完全に打ち消せる)ように補償ゲインLを設定すると
き、数式44のようになり、τSとその推定値とを一致
させることができる。
【0092】
【数44】
【0093】
【実施例】 以下、図に沿って各発明の実施例を説明す
る。図1は第1の発明の実施例にかかるダイナミック・
シミュレータの制御ブロック図である。この実施例は、
オブザーバ502と、フィルタ503と、帰還ゲインK
と、電流制御手段302と、電流変換ゲイン1/φと、
トルク変換ゲインφと、負荷側機械系模擬手段501と
により、変換ゲインがK2である電力変換器及び磁束鎖
交数がφである発電機を制御するように構成されてい
る。
【0094】ここで、オブザーバ502は、原動機によ
る駆動トルクτd及びそのn階微分値を推定する働きを
するように、前記数式18ないし数式20に従い、数式
23に示す出力xd(S)を得るように設計する。フィルタ
503は数式27の構造とし、軸トルク指令τS*から数
式26のτM及びそのn階微分であるxMを演算するため
に設ける。このxMは帰還ゲインK(=k0,k1,…
…,kn)を通り、慣性補償トルク指令ΔτM*として軸
トルク指令τS*に加算され、発電機のトルク指令τa*と
なる。実現しようとする駆動側慣性(時定数TM)は、
オブザーバ502及びフィルタ503の伝達特性の設定
と、帰還ゲインKの調整により、広い周波数帯域にわた
って一定に制御されることになる。
【0095】一方、軸トルク指令τS*を与える負荷側機
械系模擬手段501は、軸ねじり及び負荷側慣性の部分
のみの構成を示してある。ここでは第5の発明の実施例
として、軸両端の速度差から得られる軸トルク演算値τ
Sの微分値を補償ゲインLに通した後、τSに加算してτ
S*を生成している。なお、補償ゲインLはトルク指令に
対する伝達特性を打ち消すように設定してあり、駆動側
慣性とは独立して、模擬しようとする任意の個数の慣性
を持った機械系と等価な軸トルクを実現している。
【0096】 次に、図2は第2の発明の実施例にかか
るダイナミック・シミュレータの制御ブロック図であ
る。この実施例は、オブザーバ601と、前記フィルタ
503の代わりとして伝達特性がh(S)であるフィルタ
602と、帰還ゲインKと、電流制御手段302と、電
流変換ゲイン1/φと、トルク変換ゲインφと、負荷側
機械系模擬手段501とにより、変換ゲインがK2であ
る電力変換器及び磁束鎖交数がφである発電機を制御す
るように構成されている。ここで、フィルタ602を通
したτS *をτaから減算した結果が入力されるオブザー
バ601は、図1の実施例と同一の構成であるが、得ら
れる出力はxMとなっている。このxMを、図1の実施例
と同様に帰還ゲインKを介して慣性補償トルク指令Δτ
M *に変換し、軸トルク指令τS *に加算することにより、
発電機のトルク指令τa *を生成する。
【0097】図3は図2の実施例の変形例であり、負荷
側機械系模擬手段701における軸トルク演算値τS
発電機のトルクτaから直接減算して慣性補償トルク指
令ΔτM*を演算するもので、この例においても図2の実
施例と同様の特性を得ることができる。
【0098】 図4は第3の発明の実施例にかかるダイ
ナミック・シミュレータの制御ブロック図である。この
実施例では、伝達特性がh(S)であるフィルタ801に
より帰還ゲインKの出力から慣性補償トルクを演算し、
オブザーバ601にてこの慣性補償トルク演算値と速度
ωMとからxMを推定する構造とする。オブザーバ601
及び帰還ゲインKは図2の実施例と同一であり、作用効
果においても同等となる。
【0099】 図5は第4の発明の実施例が適用される
ダイナミック・シミュレータの制御ブロック図である。
この実施例では、ハイパスフィルタ901及び帰還ゲイ
ンK’のパラメータを最適設定することによって慣性補
償トルク指令ΔτM *を得、上記各実施例と同様に各種の
機械系を広い周波数帯域にわたって安定に模擬するよう
にした。
【0100】
【発明の効果】以上のように第1ないし第3の発明によ
れば、原動機駆動トルクまたは原動機及び発電機に与え
られるトルク及びそのn階(n≧1)微分をオブザーバ
により推定し、最適な帰還ゲインを通して慣性補償トル
ク指令を電流制御手段に与えることにより、原動機側
(駆動側)慣性を広い周波数帯域にわたって安定して制
御することができる。
【0101】第4の発明によれば、速度をp(p≧2)
個の極・零点を持つハイパスフィルタと最適な帰還ゲイ
ンとに通して慣性補償トルク指令を電流制御手段に与え
ることにより、上記各発明と同様に原動機側慣性を広帯
域にわたって安定して制御することができる。
【0102】 また、上記各発明では、負荷側機械系模
擬手段により軸両端の速度差を重み付けして軸トルク演
算値に加算して軸トルク指令としたことにより、正確な
軸トルクを模擬することができる。
【0103】 更に、第1〜第4の発明において、駆動
側から見た機械的な共振周波数が原動機側慣性制御の周
波数帯域と負荷側機械系が模擬できる周波数帯域に入っ
ている場合は、安定して共振周波数、ダンピングファク
タを模擬する機械系の特性に等しい特性を得ることがで
きる等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の発明の実施例を示す制御ブロック図で
ある。
【図2】 第2の発明の実施例を示す制御ブロック図で
ある。
【図3】 図2の実施例の変形例を示す制御ブロック図
である。
【図4】 第3の発明の実施例を示す制御ブロック図で
ある。
【図5】 第4の発明の実施例を示す制御ブロック図で
ある。
【図6】 ダイナミック・シミュレータの構成を示すブ
ロック図である。
【図7】 模擬する1慣性系機械系モデルの説明図であ
る。
【図8】 模擬する2慣性系機械系モデルの説明図であ
る。
【図9】 第1の従来技術である1慣性系ダイナミック
・シミュレータの制御ブロック図である。
【図10】 第2の従来技術である2慣性系ダイナミッ
ク・シミュレータの制御ブロック図である。
【符号の説明】
101 原動機 102 ダイナミック・シミュレータ 103 電力変換器 104 制御手段 105 速度検出器 106 電流検出器 107 発電機 201 駆動側慣性 202 弾性を持った軸 203 負荷側慣性 204 負荷抵抗 205 負荷側機械系 302 電流制御手段 501,701 負荷側機械系模擬手段 502,601 オブザーバ 503,602,801 フィルタ 901 ハイパスフィルタ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H02P 5/00 - 5/52 H02P 7/00 - 7/80 H02P 9/00 - 9/48 G01M 15/00 - 17/10

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軸を介して原動機により駆動される発電
    機と、この発電機を制御する電力変換器と、発電機電流
    を検出する電流検出器と、発電機の速度を検出する速度
    検出器と、前記電流検出器及び速度検出器の出力に基づ
    いて前記電力変換器を制御する制御手段を備えたダイナ
    ミックシミュレータにおいて、 発電機電流によるトルク及び速度の検出値から原動機に
    よる駆動トルク及びそのn(n≧1)階までの時間微分
    値を推定するオブザーバと、 このオブザーバの出力と、軸ねじりのある機械系を模擬
    した負荷側機械系模擬手段から出力される軸トルク指令
    とに基づいて駆動側慣性の制御に必要な慣性補償トルク
    指令を演算する慣性補償トルク演算手段と、 前記軸トルク指令と慣性補償トルク指令とを加算した結
    果を発電機のトルク指令として電力変換器の電流制御手
    段に与える手段とを備え、機械系モデルの軸両端の速度差から得られる軸トルク演
    算値の微分値を電流制御手段の伝達遅れを補償するため
    のゲインを介して軸トルク演算値に加算することにより
    前記軸トルク指令を生成 することを特徴とするダイナミ
    ック・シミュレータの制御装置。
  2. 【請求項2】 軸を介して原動機により駆動される発電
    機と、この発電機を制御する電力変換器と、発電機電流
    を検出する電流検出器と、発電機の速度を検出する速度
    検出器と、前記電流検出器及び速度検出器の出力に基づ
    いて前記電力変換器を制御する制御手段を備えたダイナ
    ミックシミュレータにおいて、 発電機電流によるトルクの検出値及び軸トルク指令並び
    に速度の検出値から駆動側慣性に与えられるトルク及び
    そのn(n≧1)階までの時間微分値を推定するオブザ
    ーバと、 このオブザーバの出力に基づいて駆動側慣性の制御に必
    要な慣性補償トルク指令を演算する慣性補償トルク演算
    手段と、軸ねじりのある機械系を模擬した 負荷側機械系模擬手段
    から出力される軸トルク指令と前記慣性補償トルク指令
    とを加算した結果を発電機のトルク指令として電力変換
    器の電流制御手段に与える手段とを備え、機械系モデルの軸両端の速度差から得られる軸トルク演
    算値の微分値を電流制 御手段の伝達遅れを補償するため
    のゲインを介して軸トルク演算値に加算することにより
    前記軸トルク指令を生成 することを特徴とするダイナミ
    ック・シミュレータの制御装置。
  3. 【請求項3】 軸を介して原動機により駆動される発電
    機と、この発電機を制御する電力変換器と、発電機電流
    を検出する電流検出器と、発電機の速度を検出する速度
    検出器と、前記電流検出器及び速度検出器の出力に基づ
    いて前記電力変換器を制御する制御手段を備えたダイナ
    ミックシミュレータにおいて、 電力変換器の電流制御手段と同一の伝達特性を持ち、駆
    動側慣性の制御に必要な慣性補償トルク指令に基づき慣
    性補償トルクを推定するフィルタと、 このフィルタの出力及び発電機の速度の検出値から駆動
    側慣性に与えられるトルク及びそのn(n≧1)階まで
    の時間微分値を推定するオブザーバと、 このオブザーバの出力に基づいて前記慣性補償トルク指
    令を演算する慣性補償トルク演算手段と、軸ねじりのある機械系を模擬した 負荷側機械系模擬手段
    から出力される軸トルク指令と前記慣性補償トルク指令
    とを加算した結果を発電機のトルク指令として電力変換
    器の電流制御手段に与える手段とを備え、機械系モデルの軸両端の速度差から得られる軸トルク演
    算値の微分値を電流制御手段の伝達遅れを補償するため
    のゲインを介して軸トルク演算値に加算することにより
    前記軸トルク指令を生成 することを特徴とするダイナミ
    ック・シミュレータの制御装置。
  4. 【請求項4】 軸を介して原動機により駆動される発電
    機と、この発電機を制御する電力変換器と、発電機電流
    を検出する電流検出器と、発電機の速度を検出する速度
    検出器と、前記電流検出器及び速度検出器の出力に基づ
    いて前記電力変換器を制御する制御手段を備えたダイナ
    ミックシミュレータにおいて、 発電機の速度の検出値から慣性補償トルクを演算するハ
    イパスフィルタ(分母・分子多項式はp次、p≧2)
    と、 このハイパスフィルタの出力と帰還ゲインとを組み合わ
    せて慣性補償トルク指令を演算する慣性補償トルク演算
    手段と、軸ねじりのある機械系を模擬した 負荷側機械系模擬手段
    から出力される軸トルク指令と前記慣性補償トルク指令
    とを加算した結果を発電機のトルク指令として電力変換
    器の電流制御手段に与える手段とを備え、機械系モデルの軸両端の速度差から得られる軸トルク演
    算値の微分値を電流制御手段の伝達遅れを補償するため
    のゲインを介して軸トルク演算値に加算することにより
    前記軸トルク指令を生成 することを特徴とするダイナミ
    ック・シミュレータの制御装置。
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