JP2840178B2 - 射出成形靴用軟質塩化ビニル樹脂組成物 - Google Patents

射出成形靴用軟質塩化ビニル樹脂組成物

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JP2840178B2
JP2840178B2 JP5208693A JP20869393A JP2840178B2 JP 2840178 B2 JP2840178 B2 JP 2840178B2 JP 5208693 A JP5208693 A JP 5208693A JP 20869393 A JP20869393 A JP 20869393A JP 2840178 B2 JP2840178 B2 JP 2840178B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、射出成形により製造さ
れる靴の原料である軟質塩化ビニル樹脂組成物に関し、
特に、母体となる合成樹脂として塩化ビニル樹脂のみを
使用して射出成形上重要な要因である優れた流動特性を
得ることができる軟質塩化ビニル樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術およびその問題点】靴底、胛被、その他の
靴部材を射出成形により製造する際の原料となる合成樹
脂は、一般に、射出により金型に接触した際に、金型に
熱が奪われて固化し、流動性を失い、注入不良や、とき
には射出不能を生じることがある。したがって、射出成
形用の合成樹脂には、特に優れた流動特性を付与すべ
く、種々の工夫がなされている。
【0003】その1つとして、重合度の異なる2種以上
の塩化ビニルホモポリマー(以下、「ポリ塩化ビニル樹
脂」と記す)を混合したものが知られている。しかし、
この混合体は、優れた流動特性を備えてはいるものの、
例えば、ヒール、シャンクバネ、月型などの硬質の靴部
材を得るために開発された組成物であって、この組成物
から軟質の靴部材を得ることはできない。
【0004】他の1つとして、エチレンと塩化ビニルモ
ノマーとの共重合体(以下、「エチレン−塩化ビニル共
重合体」と記す)を使用したものが知られている。この
エチレン−塩化ビニル共重合体は、内部が可塑化されて
いるため、加工時の溶融粘度が低く、射出により金型に
接触した際に、熱が奪われ難く、したがって固化し難
く、流動特性が失われ難い。
【0005】このため、このエチレン−塩化ビニル共重
合体による発泡射出成形靴底などは、薄いスキン層を、
注入不良などを生じることなく、良好な状態で製造する
ことができ、一般のポリ塩化ビニル樹脂による発泡体よ
りも低比重の靴部材を得ることもできる。また、このエ
チレン−塩化ビニル共重合体によれば、多色靴底などの
ような配合の種類を変えた原料を、数回に分けて各部位
に射出して得られる製品において、各部位の接着性が良
好である。このような利点を有することから、このエチ
レン−塩化ビニル共重合体は、現在、優れた射出成形用
原料として広く使用されている。
【0006】ところで、このようなエチレン−塩化ビニ
ル共重合体を使用する以外に、ポリ塩化ビニル樹脂のみ
を使用することによっても軟質の靴部材を射出成形によ
り製造し得る技術の開発が試みられ、前述の硬質の靴部
材の原料についての検討が加えられてきた。
【0007】本発明の目的は、このような事情の下で、
ポリ塩化ビニル樹脂のみで軟質の靴部材を得ることがで
きる射出成形靴用軟質塩化ビニル樹脂組成物を提供する
ことにある。
【0008】
【目的を達成するための手段】本発明者は、上記目的を
達成するために研究を重ねた結果、特定範囲の高い重合
度を有する特定の塩化ビニル樹脂と、特定範囲の低い重
合度を有する特定の塩化ビニル樹脂とを、特定の割合で
混合した組成物を用いたところ、(1)加工(射出成
形)時の樹脂温度の低下、(2)射出時間の短縮、
(3)溶融粘度の低下、(4)動的熱安定性の向上など
の加工性の改良効果があること(すなわち、優れた流動
特性を有すること)、しかも軟質の製品を、射出成形に
より、良好な状態で製造することができることの知見を
得た。
【0009】本発明は、この知見に基づいてなされたも
ので、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンから選ばれ
る少なくとも1種の塩化ビニル樹脂であって、平均重合
1400〜2500の塩化ビニル樹脂(以下、「高
重合度塩化ビニル樹脂」と記す)95〜70重量部と、
平均重合度400〜600の塩化ビニル樹脂(以下、
「低重合度塩化ビニル樹脂」と記す)5〜30重量部と
を含んでなることを特徴とする射出成形靴用軟質塩化ビ
ニル樹脂組成物を要旨とする。
【0010】本発明における塩化ビニル樹脂は、ポリ塩
化ビニル、ポリ塩化ビニリデンから選ばれる少なくとも
1種であり、ポリ塩化ビニル樹脂とは、前述の通り塩化
ビニルホモポリマーを指し、ポリ塩化ビニリデン樹脂と
は、塩化ビニリデンホモポリマーを指す
【0011】本発明の組成物においては、高重合度塩化
ビニル樹脂が、主として組成物自体の物性(動的熱安定
性、ゲル化特性、可塑剤吸収性など)や射出成形により
得られる製品の物性(耐熱性、機械的強度、耐久性、他
の靴材料との接着性、耐摩耗性、耐汚染性、反撥弾性な
ど)を良好にし、低重合度塩化ビニル樹脂が、主として
射出成形時の流動特性(射出成形時の樹脂温度の低下、
溶融粘度の低下、射出時間の短縮など)を良好にする
が、これらの両塩化ビニル樹脂が相乗して、これらの加
工性および製品特性を著しく向上させる作用をなす。
【0012】このような作用をなす高重合度塩化ビニル
樹脂は、平均重合度が低すぎると、組成物自体の物性お
よび製品の物性(以下、両物性をまとめて単に「物性」
と記す)を良好にすることができず、逆に高すぎると、
低重合度塩化ビニル樹脂を上記の割合で配合しても、良
好な流動特性を得ることができなくなる。したがって、
本発明では、高重合度塩化ビニル樹脂として、平均重合
度が1400〜2500、好ましくは1420〜180
0のものを使用する。
【0013】一方、低重合度塩化ビニル樹脂は、平均重
合度が高すぎると、良好な流動特性を得ることができ
ず、逆に低すぎると、高重合度塩化ビニル樹脂を上記の
割合で配合しても、物性を良好にすることができない。
したがって、本発明では、低重合度塩化ビニル樹脂とし
て、平均重合度が400〜600、好ましくは450〜
550のものを使用する。
【0014】上記の高重合度塩化ビニル樹脂の配合量
は、多すぎれば、相対的に低重合度塩化ビニル樹脂の配
合量が少なくなりすぎて、優れた流動特性を得ることが
できなくなり、逆に少なすぎれば、所望の物性を得るこ
とができなくなる。したがって、本発明では、高重合度
塩化ビニル樹脂の配合量は、95〜75重量部、好まし
くは95〜90重量部とする。
【0015】一方、上記の低重合度塩化ビニル樹脂の配
合量は、多すぎれば、相対的に高重合度塩化ビニル樹脂
の配合量が少なくなりすぎて、所望の物性を得ることが
できなくなり、逆に少なすぎれば、優れた流動特性を得
ることができなくなる。したがって、本発明では、低重
合度塩化ビニル樹脂の配合量は、5〜25重量部、好ま
しくは5〜10重量部とする。
【0016】本発明の組成物においては、以上の高重合
度塩化ビニル樹脂および低重合度塩化ビニル樹脂を母体
として、この母体樹脂に、塩化ビニル樹脂に通常使用さ
れている可塑剤が配合される。具体的には、ジオクチル
フタレート、ジブチルフタレート、フタル酸ジ−2−エ
チルヘキシルエステル、フタル酸ジイソノニルエステ
ル、フタル酸ブチルベンジルエステル、フタル酸ジイソ
デシルエステル、フタル酸ジウンデシルエステルなどの
フタル酸エステル系可塑剤や、アジピン酸ジオクチルエ
ステル、大日本インキ社製商品名ポリサイザーW−40
00、W−2600、W−2300、W−1200、W
−305ELS、W−360ELS、W−340、大日
精化社製商品名ファインサイザーNS−1014、NS
−2020、NS−2023、NS−2528、NS−
2900、三菱化成ビニール社製商品名ダイヤサイザー
D−645、D−625、アデカ・アーガス化学社製商
品名PN−150、PN−220、PN−250、PN
−280、PN−310などのアジピン酸ポリエステル
系可塑剤などが使用される。
【0017】これらの可塑剤は、単独で、あるいは2種
以上が混合されて使用され、その配合量は、上記の高重
合度塩化ビニル樹脂と低重合度塩化ビニル樹脂との合計
量100重量部に対し、フタル酸エステル系可塑剤で5
0〜100重量部、アジピン酸ポリエステル系可塑剤で
20〜60重量部とすることが好ましい。両可塑剤がこ
の範囲から外れて配合されるときは、上記のように、流
動特性などの加工性を向上させることが不可能となる
か、極めて困難となる。
【0018】また、本発明の組成物においては、上記の
可塑剤の外に、必要に応じて、ジブチル錫マレート系安
定剤、ジブチル錫マレートラウレート系安定剤、ジブチ
ル錫ラウレート系安定剤、ジブチル錫メルカプト系安定
剤、ジオクチル錫マレート系安定剤、ジオクチル錫ラウ
レート系安定剤、ジオクチル錫カルボキシレート系安定
剤、ジオクチル錫メルカプト系安定剤などの有機錫系安
定剤、バリウム・亜鉛系安定剤、バリウム・亜鉛・錫系
安定剤、カルシウム・亜鉛系安定剤などの有機金属液状
安定剤などの安定剤が配合される。この安定剤の配合割
合は、上記の両塩化ビニル樹脂の合計量100重量部に
対し、2.5〜4重量部配合することが好ましい。
【0019】なお、これらの安定剤と共に、亜鉛・亜リ
ン酸エステル系、カルシウム・亜鉛・亜リン酸エステル
系、トリフェニルホスファイトなどの安定化助剤を併用
することもできる。
【0020】さらに、必要に応じて、各種の着色顔料
を、適宜の量で配合することができる。
【0021】加えて、上記のような各種の添加剤ととも
に、アゾジカルボンアミド、P,P−オキシビスベンゼ
ンスルフォニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレン
テトラミンなどの発泡剤をも配合することができる。こ
れらの発泡剤の配合割合は、上記の両塩化ビニル樹脂の
合計量100重量部に対し、0.2〜1.2重量部とす
ることが好ましい。
【0022】以上の配合からなる本発明の組成物により
靴部材を射出成形するには、前述した従来のエチレン−
塩化ビニル共重合体による靴部材の射出成形機(ノズル
を1個のみ備えているもの、複数個のノズルを備えてい
るのものなど)と同様のものを使用することができ、か
つ射出条件もほぼ同様とすることができる。
【0023】本発明の組成物は、このような射出成形技
術により、靴底、胛被、その他の靴部材はもとより、一
般用あるいは各種のワーク用ブーツ、透明の胛被や靴
底、多色靴底など、種々の靴本体、靴部材用の素材とし
て好適に使用することができる。
【0024】
【作用】本発明の組成物では、前述したように、高重合
度塩化ビニル樹脂が主として組成物自体および製品の物
性を向上させる作用をなし、低重合度塩化ビニル樹脂が
主として組成物の流動特性などの加工性を向上させる作
用をなすとともに、これら両樹脂が相乗して加工性およ
び製品特性を著しく向上させる作用をなす。
【0025】このとき、高重合度塩化ビニル樹脂および
低重合度塩化ビニル樹脂それぞれの重合度や配合割合
を、前述の範囲内において適宜調整することにより、組
成物自体の物性、製品の物性、あるいは加工性を適宜の
ものに自在にコントロールし得る作用を発現する。
【0026】具体的には後述の実施例の結果から明らか
なように、本発明の組成物では、平均重合度1420の
高重合度塩化ビニル樹脂を約87重量部、平均重合度5
00の低重合度塩化ビニル樹脂を約13重量部とした場
合において、前述した従来の軟質の靴製品の合成樹脂原
料として使用されていたエチレン−塩化ビニル共重合体
の平均重合度1300の場合と、ほぼ同等の組成物自体
および製品の物性を得ることができる。
【0027】
【実施例】
実施例1〜5,比較例1〜3,参考例1 表1〜表2に示す配合で本発明の組成物と、比較のため
の組成物と、参考のためのエチレン−塩化ビニル共重合
体を使用した組成物とを調製した。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】表1および表2に示す各組成物について、
図1に要部のみを概略的に示すDESMA704型射出
機を用い、表3に示す条件にて射出成形を行った。
【0031】図1中、1はホッパーで、ここに表1およ
び表2に示す各組成物が投入され、シリンダー2および
ノズル3を介して、図示省略の金型内に射出され、靴底
が成形される。なお、表3中のゾーン1,2,3は、図
1のシリンダー2内を長さ方向に3等分したときののゾ
ーン1,2,3を指している。
【0032】
【表3】
【0033】以上の射出成形工程において、金型内に射
出される直前の樹脂温度(すなわち、図1のノズル部で
の組成物の温度)、射出に要した時間(すなわち、ノズ
ル3を開口させ、金型内に組成物を射出させ充満させる
までの時間)、溶融粘度、動的熱安定性を測定するとと
もに、成形品についての硬度、接着強度(胛被と靴底と
の接着強度)、耐熱性、比重を測定した。これらの結果
を、表4〜表6にまとめて示す。
【0034】また、表1〜表2に示す配合において、着
色顔料を2種類づつにしたものをそれぞれ調製し、上記
と同様の射出機(ただし、図1中のホッパー1は、組成
物を各色毎に投入できるように2個を装備し、ノズル3
も、組成物を各色毎に射出できるように2本を装備した
もの)を使用して、上記と同様の条件にて多色靴底の射
出成形を行い、各色部分の接着強度を測定した。この結
果を、表4〜表6に合わせて示す。
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】表4〜表6中、*1の溶融粘度は、キャピ
ログラフ(東洋精機製作所社製)を使用し、測定条件を
ノズル径1mm、長さ10mm、バレル径9.55m
m、試料充填量20g、予熱時間3分、予熱温度180
℃、専断速度60.8s−1として行った。 *2の動的熱安定性は、ラボプラストミル(東洋精機製
作所社製のミキサータイプR−60)を使用し、サンプ
ル量55g、試験温度200℃、回転数100rpmに
て測定した。 *3の胛被との接着強度は、JISK−6301ショッ
パー式試験機を使用して胛被と靴底とが剥離した時の強
度を示している。 *4の硬度は、JISK−6301に従い、スプリング
式A型試験機を使用して測定した靴底の硬度を示してい
る。 *5の耐熱性は、靴を200℃で15分間保持した後に
肉眼で靴底の変色を観察し、○は変色が全くないもの
を、△は変色が生じたものを示している。 *6の各色の接着強度は、JISK−6301ショッパ
ー式試験機を使用し、一次、二次ソールの境界面が剥離
した時の強度を示している。
【0039】表4〜表6から明らかなように、実施例1
〜5に示す本発明の組成物によれば、比較例1〜3はも
とより、参考例1のエチレン−塩化ビニル共重合体を使
用する場合に比べても、加工(射出成形)時の組成物温
度が低下し、かつ溶融粘度も低下しており、射出時間の
短縮が図れていることが判る。また、動的熱安定性も向
上し、加工性が大幅に改良されていることが明らかであ
る。さらに、実施例1〜5の靴底は、胛被との接着性、
各色部分の接着性が良好で、かつ優れた耐熱性をも有し
ていることが判る。
【0040】実施例6〜8,比較例4〜6,参考例2 表7〜表8に示す配合で調製した本発明の発泡性の組成
物と、比較のための発泡性の組成物と、参考のためのエ
チレン−塩化ビニル共重合体を使用した発泡性の組成物
とを使用する以外は、実施例1〜5,比較例1〜3,参
考例1と同様に実施した。この結果は、実施例1〜5,
比較例1〜3,参考例1のソリッドのもの(すなわち、
表4〜表6に示すもの)と同様であったが、比重につい
てはそれぞれ異なっていたため、従来のエチレン−塩化
ビニル共重合体(参考例2)による場合の靴の重量を1
00としたときの各靴の重量を表7〜表8に合わせて示
した。
【0041】
【表7】
【0042】
【表8】
【0043】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の組成物に
よれば、優れた加工性(射出成形性)を有しており、射
出成形作業を改善することができるのみならず、従来の
エチレン−塩化ビニル共重合体に比して、動的熱安定性
や耐熱性の向上、材料コストおよび製造コストの削減を
も図ることができ、射出成形靴用の材料として極めて優
れていることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で使用した押出機の要部を概略
的に示す図である。
【符号の説明】
1 ホッパー 2 シリンダー 3 ノズル

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリ塩化ビニル ポリ塩化ビニリデンか
    ら選ばれる少なくとも1種の塩化ビニル樹脂であって、
    平均重合度1400〜2500の塩化ビニル樹脂95
    〜70重量部と、平均重合度400〜600の塩化ビ
    ニル樹脂5〜30重量部とを含んでなることを特徴とす
    る射出成形靴用軟質塩化ビニル樹脂組成物。
JP5208693A 1993-07-30 1993-07-30 射出成形靴用軟質塩化ビニル樹脂組成物 Expired - Lifetime JP2840178B2 (ja)

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