JP2831577B2 - 感光ドラム用アルミニウム管の製造方法 - Google Patents

感光ドラム用アルミニウム管の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、レーザープリンタ
ー、LEDプリンター、液晶プリンター、レーザーファ
クシミリ、複写機等の電子写真装置の感光ドラムとして
用いられるアルミニウム管の製造方法に関する。
【0002】なお、この明細書において、アルミニウム
の語はアルミニウム及びアルミニウム合金の両方を含む
意味で用いる。
【0003】
【従来の技術及び解決しようとする課題】一般に、電子
写真用の感光ドラムはアルミニウム基体の表面に感光層
が被覆されたものに構成されるが、かかる感光層として
セレン等の無機系光導電材料に代えて有機物系材料を用
いた有機感光体(いわゆるOPC感光体)が、成膜性、
軽量性、低価格性等の面で優れているところから用いら
れるようになっている。
【0004】そして、有機感光体の機能、特性を更に向
上させるために、近時、感光層を電荷発生層(CGL)
と電荷輸送層(CTL)を有するものに構成した積層型
の有機感光体が提供されている。そして、高感度の積層
型感光ドラムを得るため、前記電荷発生層を0.2〜
0.3μmの薄膜に塗工することも行われるようになっ
てきている。
【0005】ところで、感光ドラム表面に一様帯電させ
る方法に関して、従来はコロナ帯電方式が採用されてい
たが、オゾンの発生を伴うという問題があるため、ロー
ラー帯電、ブラシ帯電等の直接帯電方式が多く採用され
るようになってきた。
【0006】しかし、直接帯電方式では、従来のコロナ
帯電の際に絶縁層として働いていた空気層がなくなるた
め、感光ドラムへの負荷が大きくなり、アルミニウム管
表面の局部的かつ微細な凸部を起点としてリーク(漏
電)が発生し、感光層を焼損させるという不都合が生じ
ている。このため、直接帯電方式を採用しても、一様帯
電の際にリークが発生しないように、表面に凸状欠陥の
ないアルミニウム基体が望まれている。
【0007】もとより、アルミニウム管の表面を電荷発
生層の厚み以下の表面粗さとなるように高精度で鏡面切
削することによって、リークを防止可能な平滑性を確保
することはできるが、このような鏡面仕上げは精度と熟
練を要することから時間がかかると共にコスト高につく
という問題があった。
【0008】この発明は、このような技術的背景に鑑み
てなされたものであって、高精度な鏡面切削を必要とす
ることなく表面の微細凸部を抑制し、これによって直接
帯電方式による感光ドラムの一様帯電の際のリークを防
止し得る感光ドラム用アルミニウム管の製作提供を目的
とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、この発明は、アルミニウム引抜管の表面を、Rmax
(最大高さ)0.5〜3μmに切削したのち、表面にバ
ニシング加工を施すことを特徴とする感光ドラム用アル
ミニウム管の製造方法を要旨とする。
【0010】この発明において、アルミニウム引抜管を
用いるのは、アルミニウム管を引抜くことによってある
程度良好な表面粗さを得ることができ、引抜後に行う切
削加工をより簡易にかつ短時間にするためである。一般
には、アルミニウム押出管を引抜いて得られたものが用
いられる。なお、引抜ダイスとしてベアリング長さの短
い特殊なものを用いることにより、引抜き後の表面粗さ
をさらに高精度にした無切削ED管が存在するが、この
表面にはササクレ状の微細突起が存在し、引抜きのまま
では前記微細突起を起点としてやはりリークが生じてし
まう。
【0011】引抜後に施す切削は、アルミニウム管の表
面がRmax 0.5〜3μmの粗さとなるように行う。R
max 0.5μm未満の表面粗さとなるまで切削を行うと
加工に手間を要するとともに、切削の困難性が増大する
からである。一方、Rmax 3μmを越える表面粗さで
は、後述するバニシング加工を行っても微細な凸部が平
坦化されにくく、感光ドラムに適用したときにこの凸部
においてリークを生じてしまうからである。切削によっ
て得るべき特に好ましい表面粗さの上限値はRmax 2μ
mである。
【0012】切削後、アルミニウム管の表面にバニシン
グ加工を施す。バニシング加工は、硬質の工具をアルミ
ニウム管の表面に押し付けながら摩擦することにより、
アルミニウム管の表面に塑性変形を生じさせて、平滑な
精度の高い面を得る加工方法である。アルミニウム管の
表面に押し付ける工具として、ローラを用いるのが、円
筒形であるアルミニウム管に対する作業の容易性の点
や、より平滑な面が得られる点で望ましい。かかるバニ
シング加工によって、図1(a)に模式的に示すアルミ
ニウム管(1)の表面における断面三角形状の微細凸部
(2)の鋭角的な頂点部分(切削バリ)(2a)が押し潰
されて同図(b)のようになだらかになり、表面全体が
平坦化される。このようなバニシング加工を施さず、R
max 0.5〜3μmの表面粗さに切削しただけでは、微
細凸部(2)の鋭角的な頂点部分(2a)でリークを生じ
る。
【0013】バニシング加工の終了後、表面を洗浄し感
光層を被覆形成して、所期する感光ドラムとなす。感光
層の種類は特に限定されないが、本願発明によれば均一
な薄膜塗工が可能となる点で、電荷発生層の薄膜化が好
ましい積層型のものを用いるのが良い。
【0014】
【作用】Rmax 0.5〜3μmの表面粗さに切削するこ
とによって、表面の平滑性がある程度確保されるととも
に、切削によって生じたアルミニウム管(1)の表面に
おける断面三角形状の微細凸部(2)の鋭角的な頂点部
分(2a)が、バニシング加工によって押し潰されてなだ
らかになり、表面全体がさらに平坦化される。従って、
直接帯電型の感光ドラムに用いられたときに、微細凸部
の鋭角的な頂点部分において生じていたリークが抑制さ
れる。
【0015】また、切削はアルミニウム管の表面がRma
x 0.5〜3μmの粗さとなるように行うから、加工に
手間を要することなく比較的簡易に行うことができると
共に、バニシング加工による平滑効果が確実に得られ
る。しかも、切削はアルミニウム引抜管に対して行うか
ら、引抜によってRmax 0.5〜3μmに近い表面粗さ
が既に得られており、切削作業が簡易となる。
【0016】
【実施例】A3003−H14からなるアルミニウムを
用い、これを押出したのち引抜いて、外径30mm×長
さ260.5mmの複数本のアルミニウム素管を製作し
た。なお、引抜きは引抜きダイスを変えて行ない、素管
の表面粗さは表1に示すとおりであった。
【0017】次に、表1に示す各種の加工法によって表
面加工を行った後、あるいは行うことなく、各アルミニ
ウム管に電荷発生層と電荷輸送層とを有する感光層を以
下のようにして被覆形成した。即ち、電荷発生層は、無
金属フタロシアニンをテトラヒドロフランにて4%に希
釈して、膜厚が約0.3μmになるように塗工し乾燥し
て形成した。次に、CT剤(ヒドラゾン化合物)とCT
樹脂(ポリカーボネート)を1:2の比率で塩化メチレ
ンに溶解して、膜厚が20μmになるように塗工し乾燥
して電荷輸送層とした。
【0018】次に、これら感光ドラムを、ローラー帯電
器を用いて直接帯電方式によって−1000Vの電圧で
帯電させ、リークの発生状況を調べた。その結果を表1
に示す。
【0019】
【表1】 表1の結果からわかるように、本発明実施品(No7〜
10)は、リークの発生が全く認められなかったか極め
て抑制されたものであった。特に、Rmax 2μm以下に
切削したもの(No7〜9)はリーク防止効果が高いこ
とがわかる。これに対し、引抜管の表面をRmax 1μm
に切削しその後のバニシング加工を施さなかったもの
(No1)は、リークが時々発生したが、これは切削バ
リによるものと推測される。また、無切削ED管を表面
加工することなくそのまま用いたもの(No3)はリー
クが多発したが、これは表面のササクレ状の微細突起に
よるものと推測される。また、無切削ED管をセンタレ
ス研磨したものやさらに超仕上加工したもの(No4〜
6)もリークが多発したが、これは表面に食い込んでそ
のまま残存した研磨時の砥粒や研磨バリ(研磨による鋭
角的な突起)が原因と推測される。この場合、研磨後に
バニシング加工を実施してもリークは防止できない(N
o6)。また、引抜管の表面をRmax 0.3μm未満に
切削しその後のバニシング加工を施さなかったもの(N
o2)は、リークはほとんど発生しなかったが、切削加
工の困難性が増し加工に時間を要するものであった。
【0020】
【発明の効果】この発明は、上述の次第で、アルミニウ
ム引抜管の表面を、Rmax 0.5〜3μmに切削したの
ち、表面にバニシング加工を施すことを特徴とするもの
であるから、Rmax 0.5〜3μmの表面粗さに切削す
ることによって、表面の平滑性をある程度確保できると
ともに、切削によって生じたアルミニウム管の表面にお
ける断面三角形状の微細凸部の鋭角的な頂点部分が、バ
ニシング加工によって押し潰されてなだらかになり、表
面全体をさらに平坦化できる。従って、直接帯電型の感
光ドラムに用いられたときに、微細凸部の鋭角的な頂点
部分を起点として生じていたリークを抑制することがで
き、高品質の感光ドラムを提供できる。
【0021】また、切削はアルミニウム管の表面がRma
x 0.5〜3μmの粗さとなるように行うから、加工に
手間を要することなく比較的簡易に行うことができると
共に、バニシング加工による平滑効果を確実に得ること
ができる。しかも、切削はアルミニウム引抜管に対して
行うから、引抜によってRmax 0.5〜3μmに近い表
面粗さが既に得られており、切削作業が簡易となる効果
もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)はアルミニウム引抜管の表面切削後の模
式的断面拡大図、(b)は同じくバニシング加工後の模
式的断面拡大図である。
【符号の説明】
1…アルミニウム管 2…微細凸部

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム引抜管の表面を、Rmax
    (最大高さ)0.5〜3μm(1.5μm以上を除く
    の表面粗さに切削したのち、表面にバニシング加工を施
    すことを特徴とする感光ドラム用アルミニウム管の製造
    方法。
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