JP2829893B2 - 自発伸長性ポリエステル太細フィラメント糸およびその製造方法 - Google Patents
自発伸長性ポリエステル太細フィラメント糸およびその製造方法Info
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Description
ポリエステルフィラメント糸およびその製造方法に関す
る。本発明のポリエステルフィラメント糸は、高収縮性
フィラメント糸と組合せてフィラメント混繊糸とし、嵩
高性に優れ、ソフトで膨らみ感に富む新規風合の織編物
を提供することができる。
編物は、絹を越えた風合いを持つフィラメント糸として
「新合繊」の名で上市されている。しかし、近年、消費
者は、さらに高級な風合い、すなわち、より高い膨らみ
感や新規風合を求めており、フィラメント混繊糸を構成
する高収縮成分と低収縮成分の収縮差をより大きくする
ことが求められている。収縮差をより大きくする方法と
して、高収縮フィラメント糸の収縮率を大きくする方法
と低収縮フィラメント糸の収縮率を小さくする方法があ
る。前者については、上記共重合成分の添加量を大きく
する手段が有効であるが、得られるポリマーは結晶化速
度が低下し乾燥工程でのペレット間の融着、染色仕上工
程での織編物の収縮による製品としての歩留低下等、問
題点は多い。また、高収縮フィラメント糸の収縮率を高
くすることは、織編物布帛全体を縮めることとなり、風
合的には硬くなる方向である。一方、後者の低収縮フィ
ラメント糸の収縮率を小さくする方法としては、収縮率
が高収縮成分より低く、望ましくは伸長する特性を有す
るフィラメント糸が必要である。
テルフィラメント糸に関しては、特公昭41−1205
2号公報で、ポリエチレンテレフタレートポリマーを溶
融紡糸・延伸して得られる結晶化度が35%以下のフィ
ラメント糸を、20%以上の加熱収縮を行なうことで、
その後の加熱処理により自発伸長するポリエステルフィ
ラメント糸が開示されている。また特公昭63−461
67号公報では、ポリエステル未延伸フィラメント糸を
ガラス転移温度以上で収縮熱処理した後、ガラス転移温
度以下の温度で延伸することにより、沸水収縮率が高い
のに再熱処理で自発伸長するフィラメント糸が提案され
ている。さらに、特開平3−193948号公報では、
複屈折率Δnが20〜90×10-3の範囲にある高配向
未延伸フィラメント糸を低張力下、125〜145℃の
温度範囲で乾熱処理を行い、次いで、Tg以上の温度で
1.3倍以上延伸熱処理を行う自発伸長フィラメント糸
の製造方法が開示されている。
の方法で得られる自発伸長性フィラメント糸は、湿熱下
で収縮させ、その後の乾熱処理で自発伸長するフィラメ
ント糸である。このようなフィラメント糸を高収縮フィ
ラメント糸と混繊して嵩高性に優れた織編物しても、湿
熱下で収縮するので、染色斑が発生し易く、織編物の品
位を低下させる。または、このような自発伸長性フィラ
メント糸を先に湿熱下で一旦収縮させておいてから、高
収縮フィラメント糸と混繊させなければならない。従っ
て、湿熱下(すなわち、沸水処理時)で伸長するフィラ
メント糸が望まれていた。
一の要旨は、沸水処理時の伸長率が0〜5%であり、沸
水処理したフィラメント糸を引き続き130℃以上で乾
熱処理した時、さらに1〜4%の非可逆的な伸長を示
し、且つ、シック部とシン部が構成フィラメント間及び
フィラメント糸長手方向に分散していることを特徴とす
る自発伸長性ポリエステル太細フィラメント糸である。
nが30〜70×10-3の範囲にあるポリエステルの高
配向未延伸フィラメント糸を下記〜式を同時に満た
す条件で延伸し、シック部とシン部が構成フィラメント
間及びフィラメント糸長手方向に分散した太細フィラメ
ント糸とし、引き続いて、式を同時に満足する条件
で緩和熱処理することを特徴とする自発伸長性ポリエス
テル太細フィラメント糸の製造方法。 DR1 =MDR×(0.4〜0.5)>1.0 DR2 =1.03〜1.40 HR1 =Tg〜(Tg+20)℃ HR2 <Tc+ RR>5.0% HP>(HR2 +50)℃ ここで、DR1 は1段目延伸域の延伸倍率、DR2 は2
段目延伸域の延伸倍率、MDRは予熱温度85〜90℃
で測定した最大延伸倍率、HR1 は1段目延伸域の引取
りローラーの表面温度、HR2 は2段目延伸域の引取り
ローラーの表面温度、RRは緩和熱処理域の緩和率、H
Pは緩和熱処理域の緩和温度、Tc+は結晶化温度であ
る。
発明で使用するポリエステルとは、固有粘度[η]が
0.50〜0.72の範囲内にある、主たる繰返し単位
がエチレンテレフタレートであるポリエステルである。
本発明に関わるフィラメント糸の断面形状は、丸断面で
あっても異形断面であってもよい。
〜5%であることにより、高収縮フィラメント糸と混繊
すると、染色仕上げ工程で嵩高性を示し、しかも、染色
斑の少ないフィラメント混繊糸となる。また、シック部
とシン部が構成フィラメント間及びフィラメント糸長手
方向に分散した太細フィラメント糸であることによっ
て、自発伸長における長周期的な伸長斑が小さくなり、
より微妙な風合いを発現し、しかも、染色斑の少ないフ
ィラメント糸となる。さらに、沸水処理したフィラメン
ト糸を引き続き130℃以上で乾熱処理すると、さらに
1〜4%の非可逆的な伸長を示し、より嵩高性が発現し
たフィラメント糸となる。
ント糸とは、複屈折率△nが30〜70×10-3の範囲
にあるフィラメント糸であり、さらに好ましくは、複屈
折率△nが40〜60×10-3の範囲にあるフィラメン
ト糸である。また、本発明でいう複屈折率△nは、偏光
顕微鏡により、丸断面フィラメント糸を用いて測定され
る値であり、異形断面フィラメント糸の複屈折率△n
は、密度勾配管を使用して測定した密度の値から、下記
関係式により算出される値である。なお、関係式
は、△nが15〜60×10-3の範囲にある丸断面フィ
ラメント糸について測定した△nと密度(ρ)の関係か
ら、一次式として近似法により求めた式である。 △n=3.33×ρ−4.44
は、得られる太細糸フィラメント糸の沸水収縮率は大き
く、目的とする沸水処理時の自発伸長特性は得られな
い。この理由は定かでないが、太細フィラメント糸とし
た時、太部である未延伸部の配向が低すぎるため、沸水
処理時の熱エネルギーによる配向非晶部における分子構
造の安定化は、結晶化ではなく無定形への構造変化とな
り、結果的にフィラメント糸は収縮するためと考えれ
る。
は、最大延伸倍率が低く、1段目延伸域の延伸倍率(D
R1 )が1以下となり、太細フィラメント糸となる延伸
条件は得られず未延伸フィラメント糸の緩和熱セットフ
ィラメント糸となる。その結果、沸水処理後の乾熱処理
時の伸長性は認められるが、沸水処理時の自発伸長性は
ない。また、収縮斑に起因する染斑が発生し染品位に劣
る。
囲にある高配向未延伸フィラメント糸を、室温の給糸ロ
ーラーとTg〜(Tg+20)℃に加熱された引取りロ
ーラーから構成される一対のローラー間で延伸倍率が
1.0より大きく、かつ予熱温度85〜90℃で測定し
た最大延伸倍率(MDR)の40〜50%に設定された
延伸倍率で延伸することにより、延伸は引取りローラー
上で延伸点が微小に変動する不均一延伸となる。この結
果、太部と細部が構成フィラメント間そしてフィラメン
ト糸長手方向に分散した太細フィラメント糸が得られ
る。
晶化温度(Tc+)以下の温度で延伸倍率が1.03〜
1.40であるような緊張熱処理を施すことにより、結
晶化の進行を極力抑えつつ、未延伸部である太部の配向
を高め、後処理工程において結晶化しやすい状態とする
ことができる。この段階で得られる太細フィラメント糸
は、延伸部である細部に延伸による構造歪みが残ってお
り、沸水収縮率は5〜7%と自発伸長性能は有していな
い。この緊張熱処理を受けた太細フィラメント糸を引き
続いて、5.0%より高い緩和率と(緊張熱処理時の処
理温度+50)℃より高い温度条件下で緩和熱処理する
ことにより、細部の構造歪みは緩和され、沸水収縮率
が、0〜−5%[マイナス値は伸長を表す]である自発
伸長特性を有する太細フィラメント糸となる。ここで、
延伸工程と緩和熱処理工程は、連続した一工程で実施し
ても、独立した二工程で実施してもよい。 この自発伸
長性太細フィラメント糸は、沸水処理した後、130℃
以上の乾熱処理を施すことによりさらに1〜4%の非可
逆的な伸長が認められる。上記延伸条件の範囲を外れた
条件で延伸を行なった場合は、自発伸長性能が発現しな
かったり、自発伸長性能が認められても、太部と細部の
分散が悪く、染斑が発生した染品位に劣るものとなる。
さらに自発伸長特性についても、フィラメント糸長手方
向に斑のある品質的に問題のあるフィラメント糸とな
る。
ラメント糸は、通常、フィラメント混繊糸されて使用さ
れるが、フィラメント混繊糸の一方の高収縮フィラメン
ト糸として延伸時に熱処理を施さない、いわゆる一般的
なポリエチレンテレフタレート高収縮フィラメント糸、
あるいはさらに収縮特性に優れたイソフタル酸または2,
2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン
等を共重合した改質ポリエステルフィラメント糸が使用
することができる。
説明する。実施例および比較例における沸水収縮率、乾
熱収縮率は下記の方法により測定した。
0gの張力下で試長1mの10回巻カセを準備し1デニ
ールあたり2/3gの荷重を負荷して初期カセ長(L0)を
測定する。そのカセを無荷重状態で沸騰水中に30分間
浸漬した後、再び荷重をかけて測定カセ長(L1)を測定
し、次式より算出する。 沸水収縮率=(L0−L1)/L0×100 %
は、沸水収縮率を測定した後、測定後のカセサンプルを
雰囲気温度180℃の中に無荷重状態で10分間放置
し、測定カセ長(L2)を測定し、次式により算出する。 乾熱収縮率=(L0−L2)/L0×100 %
+ の値は示差走査熱量測定機(セイコー電子工業株式会
社製DSC220)にて測定した。
あるポリエチレンテレフタレートを、孔径0.2mmの
孔を72孔配設した紡糸口金を使用して、紡糸温度29
0℃で溶融紡糸し、2700m/分で巻き取って、12
0d/72fの未延伸フィラメント糸を製造した。得ら
れた未延伸フィラメント糸のMDRは2.55、△n=
53×10-3、Tg=70℃、Tc+ =110℃であっ
た。この未延伸フィラメント糸を下記の延伸条件で延
伸、緩和熱処理して太細フィラメント糸を製造した。 一段目延伸倍率(DR1)=MDR×0.41、 二段目延伸倍率(DR2)=1.10 一段目引取りローラー温度(HR1)=82℃ 二段目引取りローラー温度(HR2)=110℃ 緩和率=10%、 緩和温度=190℃ この太細フィラメント糸の沸水収縮率は−1.1%、1
80℃の乾熱収縮率は−3.4%であり沸水処理後、引
き続いて実施した乾熱処理により、2.3%の伸長を示
したことになる。得られた自発伸長性太細フィラメント
糸とイソフタル酸を8.0モル%共重合した改質ポリエ
ステルを使用して製造した75d/18fの高収縮フィ
ラメント糸とをエアー混繊し、190d/90fのフィ
ラメント混繊糸を製造、平織織物を作成し減量・染色
後、175℃で1分の乾熱処理を実施した。得られた織
物の評価結果を表1に示すが、得られた織物は嵩高性に
優れ、膨らみ感のあるソフトな風合を有していた。
ィラメント糸の△n、断面形状、延伸条件、緩和条件を
表1のように種々変更して得られた太細フィラメント糸
の収縮特性、および実施例1と同様、高収縮フィラメン
ト糸とのフィラメント混繊糸を作成し、このフィラメン
ト混繊糸を使用した織物について嵩高性・風合を評価し
た。結果を表1に示す。
よれば、沸水処理及び乾熱処理で伸長する染め斑のない
太細フィラメント糸が得られる。該太細フィラメント糸
を高収縮性フィラメント糸と組合せてフィラメント混繊
糸とすると、嵩高性に優れ、ソフトで膨らみ感に富む新
規風合の織編物を提供することができる。
Claims (2)
- 【請求項1】 沸水処理時の伸長率が0〜5%であり、
沸水処理したフィラメント糸を引き続き130℃以上で
乾熱処理した時、さらに1〜4%の非可逆的な伸長を示
し、且つ、シック部とシン部が構成フィラメント間及び
フィラメント糸長手方向に分散していることを特徴とす
る自発伸長性ポリエステル太細フィラメント糸。 - 【請求項2】 複屈折率△nが30〜70×10-3の範
囲にあるポリエステルの高配向未延伸フィラメント糸を
下記〜式を同時に満たす条件で延伸し、シック部と
シン部が構成フィラメント間及びフィラメント糸長手方
向に分散した太細フィラメント糸とし、引き続いて、
式を同時に満足する条件で緩和熱処理することを特徴
とする自発伸長性ポリエステル太細フィラメント糸の製
造方法。 DR1 =MDR×(0.4〜0.5)>1.0 DR2 =1.03〜1.40 HR1 =Tg〜(Tg+20)℃ HR2 <Tc+ RR>5.0% HP>(HR2 +50)℃ ここで、DR1 は1段目延伸域の延伸倍率、 DR2 は2段目延伸域の延伸倍率、 MDRは予熱温度85〜90℃で測定した最大延伸倍
率、 HR1 は1段目延伸域の引取りローラーの表面温度、 HR2 は2段目延伸域の引取りローラーの表面温度、 RRは緩和熱処理域の緩和率、 HPは緩和熱処理域の緩和温度、 Tc+は結晶化温度である。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5001244A JP2829893B2 (ja) | 1993-01-07 | 1993-01-07 | 自発伸長性ポリエステル太細フィラメント糸およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP5001244A JP2829893B2 (ja) | 1993-01-07 | 1993-01-07 | 自発伸長性ポリエステル太細フィラメント糸およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH06200439A JPH06200439A (ja) | 1994-07-19 |
JP2829893B2 true JP2829893B2 (ja) | 1998-12-02 |
Family
ID=11496045
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP5001244A Expired - Lifetime JP2829893B2 (ja) | 1993-01-07 | 1993-01-07 | 自発伸長性ポリエステル太細フィラメント糸およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2829893B2 (ja) |
-
1993
- 1993-01-07 JP JP5001244A patent/JP2829893B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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JPH06200439A (ja) | 1994-07-19 |
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