JP2819671B2 - ソフトコンタクトレンズの染色方法 - Google Patents

ソフトコンタクトレンズの染色方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、ソフトコンタクトレンズへの染色方法に関
する。さらには、染色工程が簡略化されて、かつ強固な
染着性を有するソフトコンタクトレンズの新規な染色方
法に関するものである。
[従来の技術] 着色されたソフトコンタクトレンズは、保存容器等の
中でレンズの有無や識別を容易にするほか、万一紛失し
たとき見つけ易い等の利点がある。
ところが、ソフトコンタクトレンズはその製品の特性
上常に水で膨潤している状態で使用し、煮沸等の消毒処
理を必要とするため、膨潤によって染色剤が溶出しない
ような強固な染着性が要求される。
従来、ソフトコンタクトレンズへの染色剤としてはバ
ット染料が広く用いられている。バット染料は一般に水
不溶性であるが、このバット染料を還元すればアルカリ
性で水可溶性となる。こうして得た可溶性バット染料溶
液にソフトコンタクトレンズを浸漬してレンズ内部に発
色成分を浸透または付着させた後、酸化剤溶液に浸漬し
たり、光で露光して光酸化反応を起こしたり、空気中で
空気酸化する等の操作によって水不溶化処理を行い染着
させていた。
この例として、特公昭59-43598号公報には可溶性バッ
ト染料ロイコ体を用いた染色方法が開示されている。こ
の染色方法では、樹脂体に可溶性バット染料ロイコ体を
浸透させた後、樹脂体を酸化剤水溶液中に浸漬したり、
感光性を有する可溶性バット染料ロイコ体を浸透させた
後、樹脂体を露光して酸化処理を行い染料を染着させて
いる。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、この方法では空気中で不安定なバット
染料は使用することができないという欠点がある。ま
た、特開昭63-264719号公報には膨潤状態のソフトコン
タクトレンズに発色成分としてバット染料および還元剤
を含有する染色剤を浸透または付着させた後、空気酸化
により不溶化し染着させる方法が開示されている。しか
し、この方法では操作が複雑でかつ染料の還元体が不安
定なため、染料溶液の寿命が短いという問題点を有す
る。
一方、前述の従来技術ではバット染料を還元剤で水可
溶性ロイコ体に変え(第1工程)、次にその水可溶性ロ
イコ体を溶解した染料溶液にソフトコンタクトレンズを
浸漬して発色成分をレンズ内部に浸透あるいは付着させ
た後(第2工程)、さらに酸化処理(第3工程)を行っ
て水不溶性に変換するという3つの工程が必要であっ
た。また、第1工程で染料溶液にアルカリを加える必要
があるが、一般にアルカリがソフトコンタクトレンズの
素材に対して悪影響を及ぼすという問題点を有する。
そこで、本発明はこのような問題点を解決するための
もので、その目的とするところはソフトコンタクトレン
ズに悪影響を及ぼす恐れのあるアルカリを用いた染料の
還元、酸化等の複雑で不安定な工程を省略し、さらには
工程の短縮化、生産性の向上を実現する方法を提供する
ところにある。
[課題を解決するための手段] 本発明のソフトコンタクトレンズへの染色方法は、膨
潤性のソフトコンタクトレンズの染色方法において、膨
潤状態のレンズを、水と、水に可溶で水より膨潤率の高
い溶液とから成る混合溶液に水不溶性のバット染料を分
散させた染料溶液中に浸漬した後、レンズを水の中に投
入することを特徴とする。
以下、本発明の詳細な説明をする。
染料溶液は、水と、水に可溶で水より膨潤率の高い溶
液とから成る混合溶液にバット染料を加え、これを温水
浴中で攪拌して染料を均一に分散させた溶液を使用す
る。この際用いうるバット染料の例としては、シーアイ
バット ブルー 6(C.I.Vat Blue 6)、シーアイ
バット ブルー 1(C.I.Vat Blue 1)、シーアイ バ
ット ブラック 1(C.I.Vat Black 1)、シーアイ
バット グリーン 1(C.I.Vat Green 1)等が挙げら
れる。この染料溶液に膨潤状態のソフトコンタクトレン
ズを浸漬して、レンズに染料を染着させた後、大量の水
の中へ投入してレンズを水洗いしレンズ表面に付着した
不要の染色剤を除去する。
[実施例] 以下実施例にて本発明をさらに詳しく説明する。
(実施例1) C.I.Vat Blue 6 0.5gをエタノールと水の混合溶液
(体重比 2/8)100mlに加え60℃の湯浴中で攪拌して分
散させ、これを染色液とした。あらかじめ、エタノール
と水の混合溶液(体重比 1/19)に浸漬して充分に膨潤
させた含水率約38%のソフトコンタクトレンズを上記の
染色液に浸漬してレンズに染料を染着させた。約2分間
浸漬した後レンズを取り出し、大量の水の中へ投入して
洗浄し表面に付着している不要な染色剤を除去した。得
られたソフトコンタクトレンズは青く均一に着色されて
いた。
この着色されたソフトコンタクトレンズについて、以
下の耐久性試験を行った。
(1)耐光試験 着色ソフトコンタクトレンズ1枚を生理食塩水の入っ
たガラス製透明バイアル瓶中に入れ、これをスガ試験機
(株)製サンシャインウェザーメーターに投入してレン
ズを80時間露光させ耐光試験を行った。なお色抜けの評
価には、日立製作所(株)製分光光度計を用いて耐光試
験前後の光線透過率を測定することによって行い、退色
の評価には処理していない対照レンズとの比較によって
行った。
(2)熱耐久試験 着色ソフトコンタクトレンズ1枚を生理食塩水の入っ
たガラス製透明バイアル瓶中に入れ、これを100℃空気
恒温槽中に投入して、最長200時間の連続加熱による熱
耐久試験を行った。なお色抜けの評価には、日立製作所
(株)製分光光度計を用いて加熱試験前後の光線透過率
を測定することによって行い、退色の評価には処理して
いない対照レンズとの比較によって行った。
以上の耐久性試験を行った結果、いずれの試験におい
ても色抜け、退色などの異常は認められなかった。
(実施例2) C.I.Vat Green 1 0.5gをグリセリンと水の混合溶液
(体積比 1/9)100mlに加え60℃の湯浴中で攪拌して分
散させ、これを染色液とした。あらかじめ、水に浸漬し
て充分に膨潤させた含水率約38%のソフトコンタクトレ
ンズを上記の染色液に浸漬してレンズに染料を染着させ
た。約3分間浸漬した後レンズを取り出し、大量の水の
中へ投入して洗浄し表面に付着している不要な染色剤を
除去した。得られたソフトコンタクトレンズは緑色に均
一に染色されていた。また、このレンズは実施例1と同
様に耐久性試験を行った結果、退色などの異常は認めら
れなかった。
[発明の効果] 以上述べたように本発明によれば、還元体を使わない
ため染料溶液の長期安定性が得られ、同時に染色工程を
減らすことにより生産性が向上するという効果があり、
また、ソフトコンタクトレンズに悪影響を及ぼす恐れの
あるアルカリを用いないことにより安全で品質の高い着
色ソフトコンタクトレンズが提供できるという効果を有
する。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】膨潤性のソフトコンタクトレンズの染色方
    法において、膨潤状態のレンズを、水と、水に可溶で水
    より膨潤率の高い溶液とから成る混合溶液に水不溶性の
    バット染料を分散させた染料溶液中に浸漬した後、レン
    ズを水の中に投入することを特徴とするソフトコンタク
    トレンズの染色方法。
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