JP2809638B2 - 合成樹脂組成物 - Google Patents

合成樹脂組成物

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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明はフェライトを含有する合成樹脂磁石組成物の
成形において、耐熱安定性を向上させ、かつ成形品の再
利用を可能とする合成樹脂磁石組成物に関するものであ
る。
(従来の技術) 無機充填材を含有する合成樹脂組成物として各種の樹
脂が用いられているが、特にポリアミド樹脂は機械的強
度にすぐれ、かつ比較的安価であることから多用されて
いる。
しかしながら、従来のポリアミド樹脂を用いた無機充
填合成樹脂組成物は、 (1) 耐熱性が悪く、高い熱負荷をうけると流動性が
大きく低下し、成形安定性に劣る。
(2) 高い熱負荷をうけた成形品は回収、再使用する
ことができない。
という問題があった。
(問題点を解決するための手段) 本発明者らは耐熱安定性の向上に関して熱劣化の現象
につき詳細な検討を行なった結果、次のような知見を得
た。即ち、 (1) 射出成形条件と同じ温度の250℃〜300℃で従来
のポリアミド樹脂磁石組成物の溶融粘度を計測すると、
5〜20分後に急激に粘度上昇し、極端な場合には全く流
動性を示さなくなる。
(2) 成形体を回収し、再使用品を未使用品と10〜30
重量%で混合したものの250〜300℃での溶融粘度は、未
使用品での粘度上昇(上項で説明)よりも短い時間で生
じ、再使用品混入率が大きいほど短時間となる。
(3) ポリアミド樹脂磁石組成物を製造するにあた
り、フェライトとポリアミドとの混練において、剪断力
の強い混練機ほど磁石組成物の粘度上昇は大きく、かつ
短時間に生ずる。
上記知見より、熱劣化のメカニズムはポリアミド樹脂
磁石組成物が高温で溶融され、ブレードやシリンダーな
どで混練された時、溶融の初期にフェライトとポリアミ
ド樹脂が固く結合したミクロゲルが生成し、これが経時
とともにマクロゲルへと成長し、これが鎖状、環状につ
ながってゆくために著しい粘度上昇が生ずるものと推定
される。
これらの知見、メカニズムの推定のもとに更に鋭意研
究を進めた結果、無機充填材の表面処理材として特定な
分子構造をもつシラン系カップリング剤を用いることに
より上記の問題が解決しうることを見出し、γ−ウレイ
ドプロピルエトキシシランを表面処理剤として用いるこ
とを先に提案した(特願昭62−171097号)。しかしなが
ら上記γ−ウレイド系シラン表面処理剤を用いた場合に
は、確かに耐熱安定性が改良されたトルク値の上昇がな
い、すなわち増粘を生じない合成樹脂組成物を得られた
が、溶融トルクのレベルが高く、溶融流動性については
十分満足し得るものではなかった。
本発明者らはさらに鋭意研究を重ねた結果、耐熱安定
性が良好でかつ溶融流動性にすぐれたフェライト充填合
成樹脂磁石組成物が得られるシラン系表面処理剤を見出
した。
すなわち本発明を詳しく述べればフェライトの表面処
理剤として一般式: あるいは (式中、R1、R2及びR3はいずれも低級アルコキシル基で
あるか、あるいはR1、R2及びR3のうち1個又は2個が低
級アルコキシ基、残余が低級アルキル基を示し、R4はC1
〜C20の飽和アルキルアシル基、アルキルアミノアシル
基を示す)で表わされるシラン系カップリング剤をフェ
ライト100重量部に対し、0.1〜5.0重量部、好ましくは
0.5〜2.0重量部の範囲で使用することにより、耐熱安定
性が良好でありかつ溶融トルク値の小さい、すなわち溶
融流動性にもすぐれたポリアミド樹脂磁石組成物が得ら
れる。
本発明に係るシラン系カップリング剤が先に提案した
ものよりも溶融トルク値が低下するのは、末端基として
アルキルアシル基あるいはアルキルアシルアミノ基を導
入することによりバインダー成分であるポリアミド樹脂
との相溶性が改良されるためであると推定される。
なお表面処理剤を0.1重量部以下とすると表面処理剤
本来の効果である溶融粘度の低下が認められなくなり、
また5.0重量部以上とすると効果の向上が期待できず、
また過剰の表面処理剤の存在は衝撃強度等の物性を低下
させ好ましくない。
上記表面処理剤の添加方法は特に制限されないが、予
めフェライト粉末に塗布する方法が好ましい。塗布の方
法を具体的に述べれば、該物質をそのまま、あるいは適
当な希釈剤を用いて希釈したのち、回転刃ミキサー、V
ブレンダー、リボンブレンダーなどの既に知られている
混合法でフェライト粉末上にロートによる滴下あるいは
スプレーにより混入し、均一混合する。なお希釈剤を使
用した場合は、処理後に減圧あるいは加熱等により希釈
剤を除去することが望ましい。
本発明で用いられるポリアミド樹脂としては、フェラ
イト充填合成樹脂磁石組成物として用いられるものであ
れば良く、特に制限はない。幾つかの例を示せば、環状
脂肪族ラクタムの開環系であるポリアミド6、12、脂肪
酸と脂肪族アミンの縮重合系であるポリアミド66、61
0、612、MXD6あるいはアミノ酸の縮重合系であるポリア
ミド11、またはそれら1種以上からなるコポリマー、ポ
リマーアロイ化物などが挙げられる。ポリアミド樹脂の
フェライト充填磁石組成物における成分比率は5〜90重
量パーセントの範囲で選択することができる。また、必
要に応じて成形助剤、耐候性安定剤を添加することは一
向に差支えない。
粒状のフェライトを1種あるいは2種以上組合せて利
用することができる。なお、フェライトの成分比率は10
〜95重量%の範囲内で選択することができる。
本発明に係わる当該フェライト充填樹脂磁石組成物の
成形方法は、組成物を加熱し溶融した状態で射出、押出
し、プレス等の各種成形法にて成形することができる。
なお、ポリアミド樹脂磁石組成物の溶融粘度の評価は
東洋精機製作所(株)社製のラボプラストミル20C200型
機を用いた。試験条件は該物質を50cm3(重量約170gr)
計量し、予め300℃に加熱してあるラボプラストミルの
試験チャンバーに投入する。R−60Hローラー型ブレー
ドを用い300℃に加熱下、20分間50rpmの回転数で溶融物
のトルク値の変化を測定した。本測定ではトルク値が高
いほど溶融物の粘度は高く、流動性が悪いということを
示す。
(実施例) 以下に本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、
本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものでは
ない。
実施例1〜7 フェライト粉末(平均粒径1.2μ)を回転刃ミキサー
内に所定量計量して投入する。室温にてミキサーを回転
させながら、メチルアルコールと水の1:1(重量比)の
混合溶液で50wt%とした表1に示す表面処理剤を所定量
添加した。5分間ミキサーを回転させたのち100℃のオ
ーブンで加熱乾燥し、メチルアルコール、水などの揮発
性成分を除去する。ついで所定量のポリアミド樹脂と乾
燥させたフェライト粉末の所定量を再び回転刃ミキサー
内に投入し、ミキサーを回転させながら均一に混合し
た。このようにして得られた粉末混合物をラボプラスト
ミルに所定量投入し、20分間、300℃で加熱溶融させて
トルク値の変化を測定し、最小のトルク値を表1に示し
た。なお、実施例1〜7はいずれも測定の途中からトル
クが上昇しピークを示すものはなかった。また、実施例
6のトルク値の経時変化挙動を第1図に示した。
実施例9〜15 ポリアミド樹脂としてポリアミド12を使用したこと以
外、実施例1〜7で述べたと同じ配合条件、表面処理条
件、混合条件でフェライト粉末とポリアミド12の均一混
合物を作製した。これらの混合物の溶融トルク値におけ
る最小トルク値について表1に示した。また、実施例9
〜15はいずれもピーク値を示さなかった。なお、実施例
14についてはそのトルク値の経時変化挙動を第2図に示
した。
参考例17〜28 表2に示した配合組成、配合内容にしたがって、実施
例1〜7で述べたと同じ表面処理条件、混合条件で無機
充填材粉末とポリアミド樹脂の均一混合物を作製した。
これらの混合物の溶融トルク値における最小トルク値に
ついて表2に示した。また、参考例17〜28のいずれもピ
ーク値を示さなかった。
参考例1〜3 ポリアミド樹脂としてポリアミド6を用い、表面処理
剤として比較例1ではγ−アミノプロピルトリエトキシ
シラン、比較例2ではγ−ウレイドプロピルトリエトキ
シシラン、比較例3ではN−β−(アミノエチル)−γ
−アミノプロピルトリメトキシシランを使用し、実施例
1〜7で述べたと同じ配合条件、表面処理条件、混合条
件でフェライト粉末とポリアミド6の均一混合物を作製
した。これらの混合物の溶融トルク値における最小トル
ク値を表1に示した。また、測定途中からトルクが上昇
し、ピークを示すものについてはそのピークにおけるト
ルク値も表1に示した。なお、比較例2および3につい
てはそのトルク値の経時変化挙動を第1図に示した。
比較例4〜6 ポリアミド樹脂としてポリアミド12を用い、表面処理
剤として比較例4ではγ−アミノプロピルトリエトキシ
シラン、比較例5ではγ−ウレイドプロピルトリエトキ
シシラン、比較例6ではN−β−(アミノエチル)−γ
−アミノプロピルトリメトキシシランを使用し、実施例
1〜7で述べたと同じ配合条件、表面処理条件、混合条
件でフェライト粉末とポリアミド12の均一混合物を作製
した。これらの混合物の溶融トルク値における最小トル
ク値と、ピークを示すものはピークにおけるトルク値を
表1に示した。なお、比較例5および6についてはその
トルク値の経時変化挙動を第2図に示した。
比較例7〜18 表2に示した配合組成、配合内容にしたがって、実施
例1〜7で述べたと同じ表面処理条件、混合条件で無機
充填材粉末とポリアミド樹脂の均一混合物を作製した。
これらの混合物の溶融トルクにおける最小トルク値とピ
ークを示すものはピークにおけるトルク値を表2に示し
た。
(発明の効果) 第1及び2図で示したごとく、本発明に係わる末端が
飽和アルキルアシル基、飽和或いは不飽和アルキルアミ
ノアシル基等のシラン系表面処理剤を用いた実施例6,14
の溶融時のトルク変化は20分経時してもトルク上昇、す
なわち粘度上昇傾向を示さず、溶融トルク値も低い。一
方、先に特願昭62−171097号にて提案したγ−ウレイド
プロピルトリエトキシシランを表面処理剤として使用し
た比較例2及び5の溶融トルクレベルは、実施例6,14よ
りも劣るものである。また、末端にアミノ基を有する表
面処理剤を用いた比較例3及び6は経時とともに顕著に
トルクレベルが上昇していることが判る。表1及び表2
に実施例、参考例、比較例をまとめて示したが、実施例
1〜15はいずれも急激な粘度上昇による最大トルク(ピ
ーク)を示さず、また、溶融トルクレベルが低いもので
あり、熱安定性にすぐれかつ溶融流動性もすぐれたもの
であり、本発明の効果は顕著である。さらに、本発明の
合成樹脂磁石組成物はそれに充填されているフェライト
に起因して優れた磁石作用を示す。
また、本発明に係わるフェライト充填合成樹脂磁石組
成物は、上記した熱安定性がすぐれることによりバイン
ダーであるポリアミド樹脂の劣化がなく、とくにアイゾ
ット衝撃強度にもすぐれていることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
添付図面中、第1図および第2図はいずれも本発明によ
るフェライト充填合成樹脂磁石組成物及び従来の無機充
填合成樹脂組成物のトルク値の経時変化挙動を示すグラ
フである。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭53−42232(JP,A) 特開 昭60−208323(JP,A) 特公 昭47−50774(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08L 77/00 - 77/12

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】フェライト、ポリアミド樹脂及び表面処理
    済を含み、該フェライトの表面処理剤として一般式: あるいは (式中、R1、R2及びR3はいずれも低級アルコキシル基で
    あるか、あるいはR1、R2及びR3のうち1個又は2個が低
    級アルコキシ基、残余が低級アルキル基を示し、R4はC1
    〜C20の飽和アルキルアシル基、飽和或いは不飽和アル
    キルアミノアシル基を示す)で表わされるシラン系カッ
    プリング剤をフェライト100重量部に対し、0.1〜5.0重
    量部の範囲で使用することを特徴とする合成樹脂磁石組
    成物。
  2. 【請求項2】前記合成樹脂磁石組成物を溶融したときの
    ラボプラストミル混練トルク値が、300℃の加熱下、20
    分間50rpmの回転数において実質上昇しないことを特徴
    とする請求項1記載の合成樹脂磁石組成物。
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