JP2807144B2 - コレステリック系液晶化合物及びこれを利用した高分子分散液晶表示素子 - Google Patents

コレステリック系液晶化合物及びこれを利用した高分子分散液晶表示素子

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Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、高分子液晶分散系にて
両親媒性を有するコレステリック系液晶、及びこのコレ
ステリック系液晶を透明ガラス電極の表面処理並びに液
晶セル内の相転移誘発体として使用することによって分
散系の特性、特にメモリー性とコントラストを最大に向
上させた高分子分散液晶表示素子に関する。
【０００２】
【従来の技術】液晶物質は外部の刺激、例えば電場、磁
場、機械的力によって一定の方向に配列しようとする固
有の特性を持っていることから、各種の平板表示素子に
広く利用されている。
【０００３】液晶物質のこのような特性は液晶分子の異
方性に基因する。異方性とは分子の配列方向によって物
理的特性が方向毎に異なる現象を云う。液晶表示素子は
既存のブラウン管に比べて軽く、駆動電圧が非常に低い
ばかりでなくコントラストが高いという特長がある。
【０００４】液晶を平板表示素子に利用するためには偏
光を使用しなければならないので必ず偏光板を必要とす
る。この場合、偏光以外の光も吸収されるので、発生す
る熱を除去するための冷却装置が同時に必要となる。最
も重要なことは、ガラス電極表面に液晶を初期配向させ
るための配向処理が必ず要求されることである。このよ
うな一連の前処理工程が表示素子としての液晶セル製造
の経済性を減少させ、表示品位の低下や不良率の増加を
誘発している。
【０００５】このような従来の液晶表示素子の問題点を
解決すべく、最近は高分子樹脂に液晶を分散させた液晶
高分子分散系を表示素子として利用しようとする研究開
発が非常に活発に進行中である。高分子前駆体に低分子
液晶を混合して重合させることにより、分子量が増加す
るにつれて液晶が高分子と相分離し、高分子マトリック
スに低分子液晶が独立した液晶粒子の形態で分散され
る。このような状態で液晶セルのガラス電極に電圧を印
加すると、液晶粒子内の液晶が電場方向に配列するので
光は散乱しないでそのまま透過し、透明状態が維持され
るが、電圧を印加しない時は、光が高分子樹脂の中を通
過する時に液晶粒子内の液晶の屈折率が粒子毎に異なる
ので散乱されて不透明になる。
【０００６】上記のような散乱−透過モードを利用する
と、既存の液晶セルとは異なり、偏光板が必要無く、冷
却装置も必要無い。最も大きな長所は、液晶配向処理が
全く要求されないばかりでなく、工程が単純化されるの
で経済性が向上し、不良率を低減することができる。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の液晶高
分子分散系は、駆動電圧が非常に高く、電圧非印加時の
わずかな透過光によりコントラストが低くなる欠点を持
っている。
【０００８】本発明者は、高分子液晶分散系を表示素子
として利用するにあたり、従来の欠点であった低コント
ラストと高駆動電圧とを改善し、特にメモリー性を利用
して単純駆動方式を可能にすべく長期間研究を重ねた結
果、特殊な構造式を持つ両親媒性コレステリック液晶(a
mphiphilic cholesteric liquid crystal)を見出し、本
発明を完成するに至ったものである。
【０００９】本発明の目的は、メモリー性とコントラス
トを向上させた高分子分散液晶表示素子を提供すること
にある。
【００１０】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記構造式
（Ｉ）で示される液晶前駆体、及びこれを重合して高分
子化したコレステリック系液晶化合物である。
【００１１】
【化２】
【００１２】（式中、ｎは１０〜２０の整数、Ｘはハロ
ゲン、Ｙは水素、酸素、硫黄および窒素の少なくとも一
種を含む炭素数１個以上の炭化水素基である。）また、
本発明は、透明電極を形成した２枚のガラス基板の表面
に上記コレステリック系液晶化合物を５０〜１０００Å
の厚さに塗布した後、ネマチック液晶と高分子ゲルの前
駆体を注入し、紫外線を照射して光重合させて得た高分
子分散液晶表示素子である。
【００１３】本発明において、上記一般式（Ｉ）で示さ
れる液晶前駆体は、水との親和性が非常に低い、すなわ
ち疎水性を持つコレステロールグループ（尾部分）と、
水との親和性が非常に良好な４価のアンモニウム塩グル
ープ（頭部分）とを同一分子内に備えた両親媒性分子で
あることが特徴であり、分子構造中親水性位置（頭部
分）にフリーラジカル開始剤又は紫外線光によって重合
が可能な二重結合を持っているのが又ひとつの特徴であ
る。
【００１４】上記一般式（Ｉ）の液晶前駆体は、例えば
次のような経路により製造することができる。すなわ
ち、コレステロールと１１−ブロモウンデカン酸とを各
々１モルずつ取り、トルエンに溶解させた後、冷却装置
と、反応が進行するにつれて発生する水を除去する装置
とを具備した反応槽にてに徐々に加熱し、トルエンを還
流させながら２０〜３０時間反応させる。減圧下でトル
エンを除去して再結晶させ、白色の中間体を得た後、
０．５モルのＮ、Ｎ’−ジメチルアミノエチルメタクリ
レートと重合防止剤であるヒドロキノン少量を一緒に加
え、アセトニトリル溶媒にて還流加熱させながら２０〜
３０時間反応させる。反応後溶媒を減圧下にて除去し、
得られた白色固体をクロロホルムに溶解させ、シリカゲ
ルを利用して高純度に精製する。
【００１５】本発明の一般式（Ｉ）の液晶前駆体である
両親媒性分子は、水に溶解した時に熱力学的に安定した
構造を持つため親水性の頭部分と疎水性の尾部分とが互
いに集まろうとする性質を持っている。従って一般式
（Ｉ）のコレステリック液晶前駆体の薄膜を作るには、
先ず非常に清潔に洗浄したガラス基板の表面を蒸留水で
洗い、このガラス基板表面に水を１〜５μｍの厚さにコ
ーティングした後、一般式（Ｉ）の両親媒性液晶前駆体
を有機溶媒であるジエチルエーテル５ｍｌに５０〜１０
０ｍｇ程度に溶かしたものをガラス基板の表面に徐々に
一滴ずつ落として水層上にエーテル層がコーティングさ
れるようにする。これを約２〜３時間かけて常温でエー
テルを完全に蒸発させた後、ガラス基板表面の水層に膜
を作っている液晶前駆体に３６５ｎｍの紫外光線を照射
して高分子化させることにより、コレステリック系液晶
高分子を製造する。この時、光の強さは１０〜１００ｍ
Ｊ／ｃｍ2 とし、光照射時間は３０分乃至２時間にする
のが望ましい。ガラス基板表面に残っている水は約−２
０℃〜−３０℃で急速に凍らせ、液晶前駆体が水面上で
配列状態を変化させないようにして高真空下にて蒸発さ
せる。このような操作を反復することにより、必要とす
る液晶層の厚さを調節することができる。
【００１６】上記のようにして作製された２個のガラス
基板をスペイサーを利用して厚さを一定に調節してセル
を形成した後、ここにネマチック液晶と重合により高分
子ゲルを形成することができるモノマーとを一緒に混合
した液晶混合物を毛細管現象を利用してセルの間に注入
する。続いて、セルを３６５ｎｍの紫外光を利用して重
合させることにより、最終的に完成されたコレステリッ
ク系液晶により表面処理された液晶セルを得ることがで
きる。
【００１７】
【作用】本発明の液晶セルをより詳細に説明する。従来
は、図１に示すように、２枚のガラス基板１',１' の内
側にＩＴＯ透明電極２',２' を形成した後、その上に配
向膜３',３' を形成し、このガラス基板１',１' の間に
ネマティック液晶と少量のコレステリック液晶及び高分
子ゲルを一緒に混合注入して高分子分散液晶表示素子を
製造していた。そのため、セル全体を通じてネマティッ
ク液晶がコレステリックテクスチュア（又はポカルコニ
ックテクスチュア）４' を持つようになり、駆動電圧が
上昇するという問題点があった。
【００１８】これに対し、本発明の両親媒性コレステリ
ック液晶は、その親水性基により容易に水に溶けるの
で、図２に示すように、ＩＴＯ透明電極２を形成した２
枚のガラス基板１，１の間にＬＢ膜を良好に形成するこ
とができる。すなわち、高分子化されたコレステリック
液晶の高分子主鎖４の親水性部位３をＩＴＯ透明電極２
の表面にだけ存在するようにし、疎水性部位５をネマチ
ック液晶分子６及び高分子ゲル７と境界するようにす
る。
【００１９】これにより、図３に示すように、セルのＩ
ＴＯ透明電極２の表面側にのみポカルコニックテクスチ
ュア８が形成され、中央側にネマチック液晶６が存在す
るようになるので、駆動電圧はネマチック液晶６の水準
まで低くし、散乱性(contrast)はポカルコニックテクス
チュアのように高い値を持つようにすることができる。
【００２０】以上のようにして得られる本発明の液晶セ
ルは、コントラストと駆動電圧の性能が飛躍的に向上す
るばかりでなく、特にメモリー性を利用した単純駆動方
式が可能になるという効果を発揮する。
【００２１】
【実施例】以下、実施例を挙げながら本発明をより詳細
に説明する。
【００２２】（実施例１）コレステロール３８６．６６
ｇ（１モル）と１１−ブロモウンデカン酸２６５．１９
ｇ（１モル）とをトルエンに溶かし、冷却装置と、反応
によって生じる水を除去するディン−スタック装置とを
備えた１リットルの３口フラスコに入れた。徐々にフラ
スコを加熱しながらトルエンを還流させて２４時間反応
させた。反応後減圧下にてトルエンを除去した後、再結
晶して高純度の白色結晶（中間体）を得、これを徹底的
に乾燥させた。
【００２３】Ｎ−Ｎ’−ジメチルアミノエチルメタクリ
レート７９．６ｇ（０．５モル）と上記中間体とを冷却
器が装着された５００ｍｌの１口フラスコに入れ、重合
防止剤であるヒドロキノン１０ｍｇを加え、アセトニト
リル溶媒と共に還流加熱させながら２４時間反応させ
た。反応後溶媒を減圧下にて除去し、得られた白色の固
体をクロロホルムに溶かした後、シリカゲルを満たした
板に流して高純度に精製されたコレステリック液晶モノ
マーを得た。
【００２４】この合成されたコレステリック液晶モノマ
ー１００ｍｇをジエチルエーテル５ｍｌに溶かして透明
な溶液を作った。ＩＴＯ透明電極が蒸着されたガラス基
板を合成洗剤にて１次洗浄した後、アセトンとヘキサン
にて徹底的に洗浄して表面を乾燥させた。この洗浄した
ガラス基板の表面にイオンを除去した蒸留水を塗布した
後、ジエチルエーテルに上記コレステリック液晶モノマ
ーを溶かした溶液をマイクロ注射器を通じて徐々に蒸留
水の上に滴下した。エーテルが水層の上に薄く塗布され
た後、室温にて約２時間放置して完全に揮発させた。水
層の上にコレステリック液晶モノマーの薄い膜が形成さ
れたら、これに紫外光を照射して高分子化されたコレス
テリック液晶を作製した。この時の照射時間は２時間、
紫外光の強さは７０ｍＪ／ｃｍ2 であった。続いて、約
−２０℃の温度にてガラス基板表面を急激に凍らせた
後、高真空（0.0001Torr）下にて水を完全に除去した。
【００２５】上記と同一の方法でガラス基板の表面に高
分子化されたコレステリック液晶層を作り、１個はセル
の下層として、他の１個はセルのカバーとして利用し
た。この時、準備したガラス基板の上のコレステリック
液晶層の厚さは約１００Åであった。
【００２６】一方、ネマチック相を持つマク社のＥ４８
液晶８０重量％と、ウレタン系ジアクリレートモノマー
２０重量％とに光重合開始剤としてアセトフェノン誘導
体０．００１重量％を添加して均一に混合し、液晶混合
物を準備した。前記のガラス基板から厚さ１５μｍのス
ペイサーを使用してセルを作り、上記液晶混合物を毛細
管現象を利用して注入した。注入が完了した後、紫外光
を５００ｍＪ／ｃｍ2の強さで１０分間照射して重合さ
せ、液晶セルを製造した。その後、通常の方法によりコ
ントラスト、駆動電圧及び応答速度を評価し、表１に示
す結果を得た。
【００２７】（実施例２〜４）実施例１と同様にして液
晶セルを製造したが、コレステリック液晶表面層の厚さ
を２５０Å（実施例２）、５００Å（実施例３）及び１
０００Å（実施例４）にした。これらの液晶セルの物性
を前記実施例１と同様に評価し、表１に示す結果を得
た。
【００２８】（比較例１）コレステリック液晶で表面処
理するのを省略した以外は実施例１と同様にして液晶セ
ルを製造した。この液晶セルの物性を前記実施例１と同
様に評価し、表１に示す結果を得た。
【００２９】
【表１】
【００３０】
【発明の効果】上記表１から明らかなように、本発明の
コレステリック系液晶化合物を用いた液晶表示素子は、
ポカルコニックテクスチュアがセルの表面にだけ誘発さ
れるので、既存の液晶セルよりもコントラストが向上
し、駆動電圧をネマチック液晶の水準まで低下させるこ
とができ、応答速度も向上した。
【図面の簡単な説明】
【図１】従来のネマチック液晶とコレステリック液晶が
混合された高分子分散液晶表示素子の断面を模式的に示
す図である。
【図２】本発明のコレステリック液晶により表面処理さ
れた液晶セル構造の断面を模式的に示す図である。
【図３】図２の液晶セル構造の断面をより詳細に示す図
である。
【符号の説明】
１ ガラス基板 １' ガラス基板 ２ ＩＴＯ透明電極 ２' ＩＴＯ透明電極 ３ 親水性部位 ３' 配向膜 ４ コレステリック液晶の高分子主鎖 ４' コレステリックテクスチュア（ポカルコニックテク
スチュア） ５ 疎水性部位 ６ ネマチック液晶分子 ７ 高分子ゲル ８ ポカルコニックテクスチュア
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6，ＤＢ名) C09K 19/36 C09K 19/38 ＣＡ（ＳＴＮ) ＲＥＧＩＳＴＲＹ（ＳＴＮ)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 下記構造式（Ｉ）を持つコレステリック
    系液晶化合物及びこれらの重合により高分子化されてな
    ることを特徴とするコレステリック系液晶化合物。 【化１】 （式中、ｎは１０〜２０の整数、Ｘはハロゲン、Ｙは水
    素、酸素、硫黄および窒素の少なくとも一種を含む炭素
    数１個以上の炭化水素基である。）
  2. 【請求項２】 透明電極を形成した２枚のガラス基板の
    表面に請求項１記載のコレステリック系液晶化合物を５
    ０〜１０００Åの厚さに塗布した後、ネマチック液晶と
    高分子ゲルの前駆体を注入し、紫外線を照射して光重合
    させることにより形成されてなることを特徴とする高分
    子分散液晶表示素子。
JP5150355A 1992-09-24 1993-06-22 コレステリック系液晶化合物及びこれを利用した高分子分散液晶表示素子 Expired - Lifetime JP2807144B2 (ja)

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