JP2807105B2 - 卵殻膜分解物 - Google Patents

卵殻膜分解物

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JP2807105B2 JP3255083A JP25508391A JP2807105B2 JP 2807105 B2 JP2807105 B2 JP 2807105B2 JP 3255083 A JP3255083 A JP 3255083A JP 25508391 A JP25508391 A JP 25508391A JP 2807105 B2 JP2807105 B2 JP 2807105B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、卵殻膜分解物に関す
る。
【0002】
【従来の技術】卵殻膜は、古くから創傷の治療などに利
用されてきた。この卵殻膜をいろんなものに添加して使
用し易くするため、また異臭(硫黄臭)などのないもの
を作るため、本発明者は、先にアルカリ性の含水有機溶
媒中で卵殻膜を加水分解して卵殻膜分解物を得る方法を
発明し、特許出願した(特開平1−275512)。
【0003】ところで、この方法では、加水分解の好ま
しい温度条件は30〜60℃であり、本発明者らがゲル
濾過法で加水分解物の構成を調べたところ、最も多く含
まれていた加水分解物の分子量は約14×103 であっ
たが、この分子量が前記の値より一段と小さいと卵殻膜
分解物はまた違った用途・適性が考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、卵殻膜の加
水分解物の中で、最も多く含まれる加水分解物の分子量
が約14×103 よりも一段と小さいものとなる、新規
な卵殻膜分解物を提供することを目的としてなされたも
のである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の目的
を達しようと鋭意研究した結果、本発明を完成した。す
なわち、本発明は卵殻膜分解物に関し、卵殻膜の加水分
解物においてゲル濾過法による測定で分子量6×103
〜8×103 の範囲の加水分解物が加水分解物中で最も
多く含まれることを特徴とするものである。
【0006】以下、本発明を詳細に説明する。本発明で
いう卵殻膜の加水分解物とは、鳥卵の卵殻の内側にある
卵殻膜を加水分解したものをいう。卵殻膜の代表的な例
として鶏卵の卵殻膜が挙げられる。また、ゲル濾過法に
よる測定とは、分子篩の機能のある充填剤を詰めたカラ
ムに、求める物質を含む溶液を展開した時にカラムから
流出してくる物質の時間位置と、分子量が既知の物質を
溶解した標準溶液を展開し、この分子量既知物質が流出
してくる時間位置との相関関係から(分子量の大きさ
を)計算して求める測定をいう。
【0007】分子量6×103 〜8×103 の範囲の加
水分解物が加水分解物中最も多く含まれるとは、上記の
ゲル濾過法による測定で分子量がこの範囲に入る卵殻膜
の加水分解物が最も多く含まれることをいう。より具体
的に言い換えるならば、カラムに流入する溶液の流速
(容量/時間)を一定としたときの溶液流出の経過時間
をよこ軸とし、流出液についての経過時間ごとの280
nm(蛋白質、又はペプタイドの存在で吸収される波
長)の紫外線吸光値をたて軸として、流出液の紫外線吸
光度曲線を描いたときに、最大吸光値(曲線の最大ピー
ク)に対応する卵殻膜分解物の分子量が6×103 〜8
×103 の範囲にあることをいう。
【0008】なお、充填剤、分子量既知蛋白質の種類な
どの条件により分子量の測定結果が異なって出る場合に
は、本発明の下記試験例の条件に従い測定して得られる
値を採用する。本発明の卵殻膜分解物は、化粧品、医
薬、食品などの原料として使用することができる。
【0009】以下、本発明の卵殻膜分解物の代表的製造
方法について述べる。まず、殻付鶏卵を割卵して卵液を
除去して卵殻を得、この卵殻を水洗した後、破砕してか
ら水中にいれ、卵殻膜を卵殻から分離・浮遊させて回収
する。なお、卵殻膜は上記のように回収されたものを使
用してもよいが、それをさらに乾燥・保存したものを用
いてもよい。
【0010】次に、卵殻膜をアルカリ性含水有機溶媒に
添加し、所定時間加温する。アルカリ性含水有機溶媒と
は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ
剤と、メタノール、エタノール、アセトン、プロパノー
ル、ブチレングリコールなどの有機溶媒とを水の存在の
もとに混合したものをいう。有機溶媒は、前記のように
水溶性のものが好ましい。
【0011】アルカリ性含水有機溶媒は、一般的に有機
溶媒の濃度を10〜90%、望ましくは30〜60%と
し、アルカリ剤の濃度を0.2〜3.0N、望ましくは
0.5〜1.5Nとすればよい。有機溶媒の濃度がこの
範囲より低いと卵殻膜が分解されにくい傾向となり、こ
の範囲より高いと分解した卵殻膜が溶媒中に溶け込み難
くなる傾向となるからである。また、アルカリ濃度につ
いては、この範囲より低いと卵殻膜が分解されにくい傾
向となり、この範囲より高いと卵殻膜が分解されすぎ、
ひいては望む分子量の加水分解物を多く有する加水分解
物を得にくい傾向となるからである。
【0012】卵殻膜の添加割合としては、卵殻膜とアル
カリ性含水有機溶媒の比率に直して、1:1000〜
1:5くらい(重量基準:卵殻膜は乾燥重量基準)とす
ればよい。加温の温度は50〜95℃、望ましくは60
〜80℃とし、またその時間は1〜72時間、望ましく
は4時間以上とすればよい。
【0013】温度を前記の温度範囲より低くすると、処
理の時間を長くしても最も多く含まれる加水分解物の分
子量が約10×103 以上となり、分子量が6×103
〜8×103 の範囲の加水分解物を分解物中最も多くす
ることがでにくい傾向となる。このようにして得られた
卵殻膜の加水分解物は、分解物が溶液中に存在したまま
としてもよいが、通常溶解していない成分と分離するた
めのフィルター濾過や遠心分離、酸剤を添加してのpH
調整(中和処理)、ミクロフィルターによる除菌処理、
電気透析などの脱塩処理などを行って精製する。さら
に、必要に応じて乾燥して製品とする。
【0014】
【作 用】本発明の卵殻膜の加水分解物がいかなる理由
により、すぐれた生理効果を発揮するのか定かではない
が、先の出願の方法(加水分解の温度:30〜60℃)
によって得られる卵殻膜の加水分解物中には、一番多く
含まれていた分解物は分子量13×103 〜14×10
3 の範囲のものであったが、本発明の卵殻膜の加水分解
物では、これが減少し、代わって、前記の分解物の約半
分の分子量6×10 3 〜8×103 の範囲の物質が増加
しており、おそらく低分子のため皮膚への浸透性がより
よくなることなどにより、卵殻膜の有する生理作用が発
現されやすくなっているからではないかと推察される。
【0015】以下、本発明の実施例、試験例について説
明する。
【実施例】
実施例 鶏卵を割卵して卵液を除き、得られた卵殻を水洗してか
ら1〜3mm大に破砕して水中に入れ、水流により卵殻か
ら卵殻膜を分離・浮遊させて、これを回収し、乾燥させ
た。次に、乾燥した卵殻膜2kgに、水酸化ナトリウム
濃度を1Nに調整したアルカリ性含水エタノール(エタ
ノール濃度40%)40リットルを加え、攪拌しながら
70℃で5時間加水分解処理をした。得られた処理液を
氷酢酸を用いてpH8に調整し(ほぼ中和)、不溶物を
フィルターを用いて除去した後、電気透析により脱塩し
て卵殻膜の加水分解物溶液を得た。さらにこの溶液から
溶媒であるエタノールと水を蒸発させて、本発明の卵殻
膜分解物(乾燥品)を得た。
【0016】
【試験例】
試験例 <分解物の組成の調査>実施例で得られた卵殻膜分解物
(本発明品)と、対照として分解処理温度のみ70℃で
はなく40℃とした他は実施例と同じ条件で処理して製
した卵殻膜分解物(対照品)を使用し、下記の条件でゲ
ル濾過を行なって、流出する液について時間経過にとも
なう280nmにおける紫外線吸光度を測定した。その
結果の吸光度曲線は図1に示すとおりである。既知分子
量の蛋白質〔オボアルブミン(分子量43000)、キ
モトリプシノーゲンA(同25000)、およびリボヌ
クレアーゼA(同13700)の3種、ファルマシア社
製品を使用〕を卵殻膜分解物の展開に用いるのと同じ展
開溶液で展開し、溶出時間(位置)を求め、その時間
(位置)と分子量の相関関係を描き、本発明卵殻膜分解
物の最大吸光度に対応する卵殻膜分解物の分子量を求め
たところ約7.1×103 となり、6×103 〜8×1
3 の範囲内であることが確認された。
【0017】ゲル濾過の計測条件は次の通りである。 FPLCシステム使用 カラム Superrose12 HR10/30 流速 0.5ml/分 展開溶液 50mMリン酸・100mM塩化ナトリウム
水溶液 (pH7.5) 展開溶液中の卵殻膜分解物濃度は、10%とした。
【0018】なお、図中、43Kはオボアルブミンの、
25KはキモトリプソノーゲンAの、13.7Kはリボ
ヌクレアーゼAの各流出(時間)位置を、また、7.1
Kは本発明品の最大ピークの位置を各々示す。また、本
発明と対照の吸光度曲線は、溶出液の時間単位を同一と
した際のピーク位置が比較して見易いように意図的に上
下にずらしてある。
【0019】<化粧品での使用結果>肌あれで悩んでい
る20〜50才の女性7人をパネラーとし、本発明品
(実施例で得たもの)と対照品(試験例で得たもの)と
の卵殻膜分解物を各別に配合した下記の配合の化粧用ク
リーム(2種類)を調製した。本発明品クリームと対照
品クリームを片方を1ヶ月使用すると1ヶ月休止期間を
設け、次にもう片方を1ヶ月使用するという形で各々延
べ2ヶ月使用し、その使用感の評価をした。評価の方法
は、使用後の肌あれ改善効果が対照品クリームと比べ本
発明クリームの方が良いと思うものには、悪いと思うも
のには×、どちらとも言えないと思うには△とした。そ
の結果を表1に示す。
【0020】 (化粧用クリームの配合) 原料の種類 配合割合(重量%) 配合A ミツロウ 6.0 セタノール 5.0 還元ラノリン 8.0 スクワラン 37.5 脂肪酸グリセリン 4.0 親油性モノステア リン酸グリセリン 2.0 ポリオキシエチレンソルビタン 2.0 香料 0.5 メチルパラペン 0.2 配合B 卵殻膜分解物(乾燥物) 2.0 コンドロイチン硫酸A 0.2 プロピレングリコール 5.0 精製水 27.6 合計(配合Aと配合Bの和) 100.0 配合Aと配合Bの各原料を各々加熱溶解した後、両者を
混合して乳化させ、冷却して化粧用クリームとした。
【0021】
【表1】 表より、本発明の卵殻膜分解物を用いた方が、使用感上
の評価が格段に高いことが理解できる。
【0022】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、従来に
ない組成を有する新規な卵殻膜分解物が提供される。さ
らに、化粧品などの原料として用いれば、従来品に比べ
肌あれ改善効果などの高い化粧品を製造することができ
る。
【0023】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の卵殻膜分解物と対照の卵殻膜
分解物の、ゲル濾過による計測結果を示す。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07K 14/47 C07K 1/12 C07K 1/34 A61K 7/00 A61K 35/54

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 卵殻膜の加水分解物において、ゲル濾過
    法による測定で分子量6×103 〜8×103 の範囲の
    加水分解物が加水分解物中で最も多く含まれることを特
    徴とする卵殻膜分解物。
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