JP2806665B2 - 波うちを防止したレンタル用靴拭きマット - Google Patents

波うちを防止したレンタル用靴拭きマット

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、波うちを防止したレン
タル用靴拭きマットに関するもので、より詳細には長期
にわたって使用再生を反復した場合にもマット面の波う
ち現象が防止されたレンタル用マットに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、戸外のダスト類が靴底等に付着し
て、屋内に侵入するのを防止するため、ダストコントロ
ール用(靴拭き用)マットが広く使用されている。この
ダストコントロール用マットは、一定期間を限って需要
者に貸与されて、玄関等の人の出入する場所に敷設して
使用された後、回収され、洗浄、油剤処理等により再生
され、再び需要者に貸与されるレンタルシステムで運用
されている。
【0003】レンタル用マットには、特公昭59ー74
50号公報に記載されている通り、ゴム製の額縁状ベー
スにパイルの有るマットを着脱自在に取り付けたセパレ
ート型のものと、パイルのあるマットの裏側にゴムシー
トを固着させた一体化型のものとが知られているが、後
者のものが付設したときの安定性や見栄えの点で好まれ
る傾向にある。
【0004】
【発明が解決しようとする問題点】上記一体化型マット
はマットとゴムシートとの結合が強固であり、通常の使
用や洗濯に際して剥離や破損を生じることはないが、比
較的短期間のレンタルサイクルでマット面に波うちを生
じ、レンタルマットの商品価値を損ない、マット上の歩
行性や除塵性能を損なうという問題がある。
【0005】即ち、従来の一体化マットでは、長期使用
中におけるマット基布とゴムシートとの剥離やパイルの
抜け落ちを防止するため、専ら基布とゴムとの接着を強
固にすることに努力が払われているが、基布とゴムシー
トとは化学組成も物性も著しく相違することから、製造
中や使用中或は再生中に寸法差を生じ易く、これが波う
ちの原因となるのである。例えばマット基布にゴムシー
トを熱融着させる際ゴムシートは既に熱で伸びており、
この熱で伸びた分だけが製造後に縮むので、両者の間に
寸法差を生じ、波うちを生じる。また、洗浄時にもゴム
は非収縮であるのにたいして、基布は収縮して寸法差を
生じ、やはり波うちを生じることになる。この寸法差は
熱、光、水蒸気ないし水が作用する使用条件下でも同様
に生じることになる。
【0006】従って、本発明の目的は、従来の一体化マ
ットにおける上記欠点を解消し、製造中は勿論のこと、
使用中や洗浄、再生中での寸法差による波うちの発生を
防止したレンタル用靴拭き一体化マットを提供するにあ
る。
【0007】本発明の他の目的は、製造中、使用中、再
生処理中に於ける波うちの発生がマット基布とゴムシー
トとの剥離やパイルの抜け落ち等を生じることなしに防
止することが可能であり、しかもパイルの植え込みに際
しても基布が切断等による損傷を受けることがなく、優
れた強度に維持されているレンタル用靴拭きマットを提
供するにある。
【問題点を解決するための手段】
【0008】本発明によれば、基布と、該基布に植え込
まれたマットパイルと、基布の非パイル面に一体化され
たゴムバッキングとから成るレンタル用マットにおい
て、前記基布が1インチ(2.54cm)当たり3回以
下の撚数を有する実質上無撚のマルチフィラメント糸を
経糸及び緯糸として交織した織布からなることを特徴と
する波うちを防止したレンタル用靴拭きマットが提供さ
れる。
【0009】
【作用】本発明のレンタル用マットでは、パイルを有す
る基布とゴムシートとが一体化されて成るが、この基布
として、1インチ(2.54cm)当たり3回以下の撚
数を有するマルチフィラメント糸を経糸及び緯糸として
交織した織布を用いたことが顕著な特徴であり、これに
より使用再生を反復した場合におけるマットの波打ち現
象を防止することができる。
【0010】本発明において使用する1インチ(2.5
4cm)当たり3回以下の撚数を有するマルチフィラメ
ント糸を経糸及び緯糸として交織した織布は、パイルを
植え込み、次いでゴムシートでバッキングさせた場合に
も、面方向の収縮を生じないという予想外の利点をもた
らす。
【0011】従来レンタル用マットに使用されているポ
リエステル基布で、波打ち現象が発生するのは、使用及
び洗浄再生を反復した場合に、この基布が収縮し、非収
縮性のゴムシートとの間に寸法差を生じ、この寸法差が
波立ちとして現れることによる。即ち、従来の基布で
は、織布の強度に専ら重点が置かれ、基布を構成する経
糸及び緯糸としては撚糸が使用されてきた。ところが、
この基布では各糸がその長さ方向に収縮するため、ゴム
シートとの間に前述した面方向の寸法差を生じるのであ
る。
【0012】本発明において、基布の織製に使用する無
撚マルチフィラメント糸も、勿論使用及び洗浄再生を反
復した場合に、個々のフィラメントは収縮するが、この
収縮は経糸及び緯糸の長さ方向には現れないという予想
外の特性を示すことがわかった。
【0013】本発明の原理を説明するための図1におい
て、同デニールの無撚糸(A)及び有撚糸(B)の洗浄
前、連続洗浄後の模型(図中の数字は長さ及び径の相対
的な値を示している)が示されている。図1において、
有撚糸11に対し無撚糸(無撚マルチフィラメント糸)
10は、同デニールにおける断面密度が小さいため、有
撚糸よりも単糸間の断面距離が大きい。そのため、無撚
糸10では、連続洗浄による収縮は、その隙間に逃げ、
全長には影響を与えない。一方、有撚糸11は、断面密
度が大きいために、その隙間が少なく、全長に影響を与
え、収縮する。その結果として、有撚糸の基布では面方
向の収縮が生じるのに対して、無撚糸を用いた基布では
面方向の収縮がなく、従来の一体化マットの欠点であっ
た波うちの発生が防止されることになる。
【0014】本発明で用いる無撚糸は、マルチフィラメ
ントからなるため、繊維のバラケによる脱落がないと共
に、パイル糸条の植え込みに際しても顕著な利点を与え
ることがわかった。この無撚糸は断面密度が小さいた
め、横方向への自由度が大きく、径の大きいフックを刺
してパイルの植え込みを行う際にも、著しく小さい抵抗
で、しかも糸切れを全く或いは殆ど発生することなく、
フックの刺し込みが行われる一方で、容易に元の形態に
復元するという利点を与える。
【0015】
【発明の好適態様】本発明のレンタル用一体化マットの
一例を示す図2において、このマットは、基布1と、該
基布1にタフト化されたマットパイル2と、基布の非パ
イル面3に施されたゴムバッキング4とから成ってい
る。
【0016】基布の織り組織を示す図3において、この
基布は無撚マルチフィラメント糸から成る経糸5と、無
撚マルチフィラメント糸から成る緯糸6とが交織されて
成っており、図3に示す具体例では、この基布は平織り
である。
【0017】基布の経糸或いは緯糸を構成する無撚マル
チフィラメント糸は、任意の合成繊維、例えばポリエス
テル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、超高分子量
ポリオレフィン繊維等から成っていてよいが、高分子量
の熱可塑性ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレ
ート、或はエチレンテレフタレートを主体とする熱可塑
性コポリエステルから成っているのが最も好ましい。こ
のマルチフィラメント糸は、それ自体公知の方法で紡糸
し、次いで延伸してその引っ張り強度を向上させ、更に
必要により熱固定したものが使用される。このマルチフ
ィラメント糸における単糸(フィラメント一本の)繊度
は、一般に1乃至30デニール、特に2乃至25デニー
ルの範囲にあるのがよい。一方、マルチフィラメント糸
のトータルの繊度は、一般に300乃至2000デニー
ル、特に500乃至1500デニールの範囲にあるのが
よい。この無撚マルチフィラメント糸は、文言通り無撚
であることが好ましいが、1インチ(2.54cm)当
たり3回以下の撚数であれば、撚がかけられていてもよ
い。
【0018】織布の織り組織は特に制限はないが、平織
りで十分であるが、所望によっては、綾織り、その他の
変形織り等であっても何等差しつかえない。織布の目付
け量は、マットの重量等によっても相違するが、一般に
100乃至500g/平方米の範囲に有るのが好まし
い。
【0019】基布に打ち込むパイル糸としては、木綿繊
維、レーヨン繊維、ポリビニルアルコール繊維、アクリ
ル繊維、ナイロン繊維、その他の合成繊維の一種或は二
種以上からなる紡績糸やマルチフイラメント糸を用いる
ことができる。パイル糸の植え込みは、タフテイング、
ミシン縫い、刺繍、フック等のそれ自体公知の任意の方
法で行うことができ、特に従来出来なかったような著し
く太いデニールのパイルをフックで打ち込んだ場合に
も、基布に損傷を与えないことが本発明の顕著な利点で
ある。植え込むパイル長は一般に4乃至30mmの範囲
にあるのがよく、パイルの種類はカットパイルでもルー
プパイルでもよく、また捲縮でも、未捲縮でもよく、パ
イル長も一定でも互いに異なっていてもよく、例えば、
ハイカット−ロウループ等であってもよい。パイルの繊
度も大幅に変化でき、300乃至20000デニールの
範囲にある。パイルの打ち込み条件は公知のものでよ
く、ゲージは2乃至20(1インチ当たり)、ステッチ
は2乃至20(1インチ当たり)の範囲にあるのがよ
い。
【0020】バッキングとなるゴムシートとしては、各
種エラストマー重合体、例えばニトリル−ブタジエンゴ
ム(NBR),スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、
クロロプレンゴム(CR)、ポリブタジエン(BR)、
ポリイソプレン(IIB)、ブチルゴム、天然ゴム、エ
チレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピ
レン−ジエンゴム(EPDM)、ポリウレタン、塩素化
ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、軟質塩化ビニル
樹脂等をもちいることができる。耐油性、耐侯性等の見
地からは、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)が好ま
しい。ゴムシートを形成するに当たって、それ自体公知
の配合剤、例えば硫黄系或は有機系の加硫剤、加硫促進
剤、軟化剤、老化防止剤、充填剤、分散剤、可塑剤、着
色剤等をそれ自体公知の配合量で配合することができ
る。
【0021】一体化マットの製造に際しては、上記ゴム
組成物をロール、バンバリーミキサー等を用いて混練
し、この組成物をシートに成形し、このシートにタフト
化マットを重ね合わせ、加圧型中で加熱、加圧して、接
着と加硫とを同時に行う。ゴムシートと基布との接着を
高めるために、基布の非パイル面にゴムシートと同種の
ゴムのラテックスを塗布したり、エチレン酢酸ビニル共
重合体等の接着剤或は接着促進剤を予め塗布しておくこ
とができる。ゴムシートの目付け量は、400乃至50
00g/平米の範囲にあるのがよく、ゴムシートの端縁
が基布の端縁よりも若干外側にはみ出すように両者を一
体化するのがよい。加硫接着は140乃至190℃の温
度で且つ0.5乃至20kg/cm2 の圧力で行なうの
がよい。
【0022】ゴムシートとして、軟質塩化ビニール樹脂
を使用する場合には、塩化ビニール樹脂のプラスチゾル
をパイル植え込み基布の非パイル面に塗布し、次いで塩
化ビニール樹脂のプラスチゾル層を加熱によりゲル化さ
せればよい。また、ゴムシートとして、ポリウレタンを
使用する場合には、二液型のポリウレタン樹脂組成物を
パイル植え込み基布の非パイル面に塗布し、次いでこの
ポリウレタン樹脂組成物層を加熱等によりキュアさせれ
ばよい。
【0023】本発明に使用するゴムシートは、基布と一
体化された状態において、低倍率の発泡体となっている
ことが、洗濯繰り返し時における波うちの発生を完全に
抑制する上で一層望ましい。ゴムシートの発泡倍率は、
一般に1.2乃至5.0倍、特に1.5乃至4.0倍の
範囲にあるのがよい。ゴムシートの発泡は、ゴムシート
形成用の組成物中に、その加硫乃至キュア温度で分解す
る化学発泡剤を含有させることにより行うことが出来
る。勿論、組成物中に予め気体状の発泡剤を含浸或いは
分散させて、発泡を行ってもよい。
【0024】本発明のマットのパイル糸は、靴底等に付
着するダスト類を吸着し、保持する作用をおこなう。こ
の作用を一層高めるために、パイル糸にダスト吸着性油
剤を塗布乃至含浸させておくことができる。ダスト吸着
性液体としては、流動パラフイン、スピンドル油、アル
キアルベンゼン油、ジエステル油、ひまし油等の鉱物
油、合成油、植物油系の油剤や、特公昭53−1019
号公報、特公昭53−37471号公報等に記載されて
いる水性ダスト吸着剤をあげることができる。吸着剤の
塗布量は一般に5乃至70g/m2 平米の範囲がよい。
【0025】
【実施例】本発明を次の実施例により更に詳細に説明す
る。 実施例1 パイル植え込み用基布として次の3種類のものを使用し
た。 基 布 1:BCF無撚ポリエステル平織布 2000d 15本/m×15本/m 目付け 200g/m2 2:ストレート無撚ポリエステル 1000d(2本引揃え織) 16本/m×16本/m 目付け 210g/m2 3:ストレート有撚ポリエステル 2000d 15本/m×15本/m 目付け 190g/m2 4:ポリエステルスパンポンド不織布 目付け 120g/m2
【0026】基布に植え込むパイル糸としては、次の2
種類のものを使用し、次の条件でタフト化及びフックに
よる植え込みを行った。 規格A(タフト) BCF原着ナイロン 1300d/2 ステッチ 8/インチ ゲージ 1/8 パイル高さ 10mm 目付け 850g/m2 カットパイル 規格B(フック) BCF原着ナイロン 1050d/2×5本 ステッチ 7/インチ ゲージ 1/8 パイル高さ 10mm 目付け 950g/m2
【0027】上記材料組み合せマット:A−1、A−
2、A−3、A−4、B−1、B−2、B−3、B−4
を作製し、次のプレコート層 プレコート NBRラテックス 200g/m2 (固型分) (目止め) メラミン樹脂 3重量%配合 を施した後、これを150℃、20分間乾燥した。これ
らのマットを70×85cmに切断して、次の要領で一
体マットを作製した。
【0028】加硫剤(硫黄)1重量%及び加硫促進剤
(2−メルカプトベンゾチアゾール)1重量%を配合し
た厚さ3mmの未加硫NBRシート上に上記寸法で切断
したマットをのせ、150℃で15分間5kg/cm2
の圧力で接着、加硫を行い、ナイロンパイルの一体化マ
ットを作製した。
【0029】これらのマットを通常の一体化マットの洗
浄再生処理を行う。この操作を30回繰り返し行った
後、マットの収縮率を測定し、表1に示した。また、使
用前及び使用再生10回後のマットの波打ちの程度を波
打ちの高さ(mm)及び個数で表1に示した。
【0030】実施例2 実施例1と同組合せの一体化マットと通行人数2000
人/日の場所に3日間敷設した後、通常の一体化マット
の洗浄再生処理を行う。この繰り返しを30回行った
後、波打ちを測定した結果、基布1、2で作製されたマ
ットはいづれも波打ちは見られなかった。
【0031】以上実施例1〜2で示したように無撚基布
を用いた一体マットは波打ちの発生を防止することがで
きた。
【0032】
【表1】
【0033】
【発明の効果】本発明では、パイルを有する基布とゴム
シートとが一体化してマットを形成する際、基布とし
て、1インチ(2.54cm)当たり3回以下の撚数を
有するマルチフィラメント糸を経糸及び緯糸として交織
した織布を用いることにより、使用及び洗濯再生を反復
した場合におけるマットの波打ち現象を有効に防止する
ことができた。また、製造中、使用中、再生処理中に於
ける波うちの発生がマット基布とゴムシートとの剥離や
パイルの抜け落ち等を生じることなしに防止することが
可能であり、しかもパイルの植え込みに際しても基布が
切断等による損傷を受けることがなく、優れた強度に維
持されているレンタル用靴拭きマットを提供することが
できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の原理を説明するための説明図であっ
て、同デニールの無撚糸(A)及び有撚糸(B)の洗浄
前、連続洗浄後の模型を示す。
【図2】 本発明のレンタル用一体化マットの一例を示
す断面図である。
【図3】 基布の織り組織の一例を示す平面図である。
【記号の説明】 1は基布、2はマットパイル、3は基
布の非パイル面、4はゴムバッキング4、5は経糸、6
は緯糸、10は無撚マルチフィラメント糸、11は有撚
糸。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A47L 23/22 D03D 15/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基布と、該基布に植え込まれたマットパイ
    ルと、基布の非パイル面に一体化されたゴムバッキング
    とから成るレンタル用マットにおいて、前記基布が1イ
    ンチ(2.54cm)当たり3回以下の撚数を有する実
    質上無撚のマルチフィラメント糸を経糸及び緯糸として
    交織した織布からなることを特徴とする波うちを防止し
    たレンタル用靴拭きマット。
  2. 【請求項2】前記マルチフィラメント糸は、単位断面積
    1mm^2当たりの繊度が100乃至6000デニールの
    範囲にあるマルチフィラメントである請求項1記載の靴
    拭きマット。
  3. 【請求項3】前記マルチフィラメント糸は、捲縮または
    未捲縮のポリエステルマルチフィラメント糸である請求
    項1記載の靴拭きマット。
  4. 【請求項4】前記基布がトータル繊度500乃至400
    0デニールのマルチフィラメント糸を経糸密度10乃至
    22本/インチ及び緯糸密度10乃至22本/インチと
    なるように織成したものである請求項1記載の靴拭きマ
    ット。
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